法令・告示・通達

いわゆる「放流同意問題」について

公布日:昭和63年10月27日
衛浄64号

(各都道府県・政令市浄化槽行政担当部(局)長あて厚生省生活衛生局水道環境部環境整備課浄化槽対策室長通知)

 浄化槽行政の推進については、かねてより種々御配慮をいただいているところである。
 さて、浄化槽法第五条第一項の浄化槽の設置等の届出を受理するに際して、浄化槽放流水の放流先の農業用水管理者、水利権者、地域住民等からの放流同意書を添付させている例が見られるところである。
 浄化槽の設置等の届出の際に放流同意書の添付を義務付けることが違法であることはいうまでもないが、かつて単独処理浄化槽等に付いてトラブルが多く、放流同意を求めることがその対応としてとられたものと解される。しかし、浄化槽の性能も向上し、浄化槽法の施行後三年経過して法規制の体制も整備されるとともに、小型合併処理浄化槽の普及により浄化槽を取り巻く社会的状況が著しく変化した今日においては問題点も多いので、今後、浄化槽について正しく理解されるよう住民に対する啓発に努められるとともに、下記の点を踏まえ、浄化槽法の円滑な運用を図られたい。

  1. 一 合併処理浄化槽については、一般に処理性能も良く、し尿に加えて生活雑排水の適正処理も行うことから、「放流同意書」の添付を一律に求めることは、違法の疑いが強いこと。
      なお、法令に基づき水路の管理者から水路の占用許可を得る必要がある場合、水路の管理者から法令に基づく協議が求められた場合等に法令上の手続きを行うよう指導することは、ここでいう「放流同意」とは異なるものであること。
      法令上の手続きの例としては、土地改良法第五六条(土地改良区の協議請求)、道路法第三二条(道路の占用の許可)、河川法第二六条(工作物の新築等の許可)等がある。
      この場合においては、合併処理浄化槽の、生活排水対策としての重要性にかんがみ、水路の管理者等の理解を求め、水路の占用許可等が円滑に得られるように努められたい。
  2. 二 単独処理浄化槽についても、一律に「放流同意書」の添付を求めることは特殊な事情がない限り不適切であること。
      ただし、単独処理浄化槽の場合は生活雑排水については無処理であるため、地域によつては、合理的範囲の者の同意を求める指導を行うことも許容される場合もあり得るが、このような場合には、むしろ合併処理浄化槽の設置について積極的な指導を行われたいこと。
  3. 三 地域住民の慣習として「放流同意」が存在する場合には、浄化槽に対する正しい理解、知識の普及を図り、不合理な「放流同意」の解消に努められたいこと。