法令・告示・通達

悪臭防止法の施行について

  • 公布日:昭和47年6月7日
  • 環大特31号

環境事務次官から各都道府県知事、各指定都市市長あて

 悪臭防止法(昭和46年法律第91号。以下「法」という。)は、第65回国会において成立し、昭和46年6月1日付けをもつて公布され、昭和47年5月31日から施行された(悪臭防止法の施行期日を定める政令(昭和47年政令第206号))。これに伴い、悪臭防止法施行令(昭和47年政令第207号。以下「令」という。)、悪臭防止法施行規則(昭和47年総理府令第39号。以下「規則」という。)および悪臭物質の測定の方法(昭和47年5月環境庁告示第9号)が昭和47年5月30日付けをもつて公布され、それぞれ同月31日から施行された。
 法は、近年における産業の発展、市街地の拡大等に伴い住民の日常生活に身近な公害として悪臭問題が全国的に取り上げられている状況にかんがみ、公害対策基本法の精神にのつとり、工場その他の事業場から発生する悪臭について必要な規制を行ない、悪臭問題の早急な改善とその防止対策の徹底を期することにより、生活環境を保全し、国民の健康の保護に資することを目的として制定されたものである。
 悪臭の防止を図り、良好な生活環境を保全することは、今日、国民の強く期待するところとなつており、本法の厳正な施行はこの期待に応えるものであると考える。貴職におかれては、下記の事項にご留意のうえ、本法の施行に格段のご尽力を願いたく、命により通達する。

第1 全般的事項

 1 法の施行体制の確立

  1.   (1) 法の施行に関する事務の大部分は、市町村長が執行することとなつているので、都道府県知事は、法および本通達の趣旨にそつて、管下市町村長の指導に遺憾なきを期されたいこと。
  2.   (2) 法の施行に関する事務は、専門的な知識や経験を必要とする新しい行政分野であるので、各都道府県、指定都市においては、専門職員の確保および養成、測定機器の整備等により、法の施行体制の早急な整備を図られたいこと。
  3.   (3) 悪臭公害の原因は、多種多様であり、かつ、その発生源が小規模な事業場である場合が多いので、法の円滑な施行を図るため、事業者および地域住民に対し、指導啓蒙を行なうことにより、法の趣旨の周知徹底に努められたいこと。
  4.   (4) 今後における悪臭防止対策の拡充強化に資するため、法の施行状況その他所要の事項について当庁に報告するなど連携体制の確立に努められたいこと。

 2 条例との関係

  1.   (1) 法は、全国的な見地に立つて、悪臭物質を指定するとともに、事業場からの悪臭物質の排出の規制等を行なおうとするものであるので、法に定めのない事項について、地域の実情に応じ地方公共団体が条例で必要な規制を行なうことを妨げるものではないこと(法第19条)。
  2.   (2) 法に定めのない事項について、地方公共団体が条例で規制を行なおうとするときは、その規制の方法等は、できるかぎり、法で定める規制の方法等に準じたものとされたいこと。
  3.   (3) 地方公共団体が悪臭を規制する条例を制定または改廃しようとする場合には、あらかじめ、当庁にその旨を連絡し、法と条例との関係について疑義を生じないようにされたいこと。

第2 悪臭物質

  法第2条に規定する悪臭物質としては、悪臭公害の主要な原因となつている物質であつて、その大気中の濃度を測定しうるものを選定し、令第1条に定める5物質としたものであること。
  なお、今後さらに悪臭公害の実態の究明、測定方法に関する研究開発の進展等に基づき、必要に応じ悪臭物質を追加指定していく予定であること。

第3 規制対象

  法による規制の対象は、工場その他の事業場であること(法第3条)。したがつて、自動車、航空機、船舶等の輸送用機械器具、建設工事、しゆんせつ、埋め立て等のために一時的に設置される作業場、下水道の排水管および排水渠その他一般に事業場の通念に含まれないものは、本法による規制の対象とならないから留意されたいこと。

第4 規制地域の指定

  1.  (1) 悪臭による被害は、人に不快感、嫌悪感を与えるにとどまること、一時的なものであつて蓄積性がないこと等の特殊性があることにかんがみ、規制地域としては、住民が集合している地域、学校、病院等の周辺その他悪臭を防止することにより住民の生活環境を保全する必要があると認められる地域を規制地域として指定し、当該地域について規制措置を講ずることとしているものであること(法第3条)。
  2.  (2) 工業専用地域については、その特殊性にかんがみ、規制地域に指定しないこととするが、当該地域内の事業場からの悪臭により当該地域外の規制地域内の住民の生活環境がそこなわれていると認められる場合については、所要の区域を規制地域として指定するものとすること。
  3.  (3) 規制地域の指定は、悪臭公害の実態を考慮し、関係市町村長の意見を聴取したうえ、早急に行なうよう格段の努力をされたいこと(法第3条、法第5条)。

第5 規制基準の設定

  1.  (1) 敷地境界線における規制基準の範囲は、規制地域の住民の大多数が悪臭による不快感をもつことがないような濃度の範囲として定められたものであること。
       すなわち、規制基準の範囲としては、調香師による嗅覚試験を基礎として6段階臭気強度表示法によるものとし、その下限は、臭気強度2.5に対応する濃度とし、その上限は、地域の自然的、社会的条件により悪臭に対する順応の見られる場合があることを考慮し、臭気強度3.5に対応する濃度としたものであること(法第4条第1号、規則第1条)。
  2.  (2) 規制基準の設定は、規制地域の指定と同時に行なうものであること。
  3.  (3) 敷地境界線における規制基準は、規制地域について、その自然的、社会的条件を考慮して、必要に応じ、当該地域を区分し、定めなければならないものとされているが、当該地域を区分する必要があるおもな場合としては、当該地域のうちに主として工業の用に供されている地域その他悪臭に対する順応の見られる地域がある場合が該当すること。
       このような地域については、その土地利用の実態等に応じて、下表の区分に従つて区分し、規制基準は、それぞれに対応する下表の範囲内で定めるものとすること。
       ただし、主として工業の用に供されている地域その他悪臭に対する順応の見られる地域内に存する事業場からの悪臭により他の規制地域内の住民の生活環境がそこなわれていると認められる場合については、所要の区域を当該他の規制地域に係る規制基準を適用すべき地域として指定するものとすること。
地域の区分
規制基準(法第4条第1号)の範囲
(単位ppm)
主として工業の用に供されている地域その他悪臭に対する順応の見られる地域
アンモニア
メチルメルカプタン
硫化水素
硫化メチル
トリメチルアミン
2~5
0.004~0.01
0.06~0.2
0.05~0.2
0.02~0.07
上記以外の地域
アンモニア
メチルメルカプタン
硫化水素
硫化メチル
トリメチルアミン
1~2
0.002~0.004
0.02~0.06
0.01~0.05
0.005~0.02
  1.  (4) 煙突等の気体排出口に係る規制基準の算出の方法は、最大着地濃度地域における大気中の濃度が事業場敷地境界線における規制基準値と等しくなるよう、気体排出口における悪臭物質の流量の許容限度を算出する方法として定められたものであること。
       なお、有効煙突高(He)が5m未満となる場合については、この方法を適用することについて理論的に難点があり、かつ、悪臭物質による影響が多くの場合において当該事業場の敷地境界線の内部において最大となるため、事業場敷地境界線における規制基準により十分に対処しうるものと認められるので、この方法を適用しないこととしたものであること。
       おつて、メチルメルカプタンおよび硫化メチルについては、大気中の拡散の過程において化学変化をおこすことにより、その量が著しく減少することが知られているが、その減少の割合等については現在のところ明らかでないため、これら物質についての気体排出口に係る規制基準については、当面これを定めないこととしたものであること(法第4条第2号、規則第2条)。
       なお、これらの算出の方法については、さらに調査研究を行ない、可及的すみやかに定めることとしているものであること。
  2.  (5) 排出水に係る規制基準の算出の方法については、排出水中の悪臭物質の濃度と大気中に蒸散した当該悪臭物質の濃度との関係が明確でないため、今回はこれを定めないこととしたものであること(法第4条第3号)。
       なお、この算出の方法については、さらに調査研究を行ない、可及的すみやかに定めることとしているものであること。

第6 改善勧告および改善命令

  1.  (1) 法第8条の改善勧告の発動に際しては、事業場から排出される悪臭物質の濃度または流量が規制基準に適合していないことおよびこれにより住民の生活環境がそこなわれていると認められることが必要であること(法第8条第1項)。
       なお、住民の生活環境がそこなわれているか否かは、当該地域の自然的、社会的条件の差異、住民からの苦情の申出などの状況に即して判断するものとすること。
  2.  (2) 改善勧告または改善命令の内容は、生活環境の悪化を除去するに必要な範囲に限るものとし、できるかぎり具体的な措置を指示するものとすること。
  3.  (3) 改善勧告または改善命令の内容には、事業場の移転または操業停止は、含まれないこと。
  4.  (4) 改善勧告または改善命令の発動にあたつては、当分の間、事前に都道府県知事に協議させ、その実効性を確保するよう市町村長を指導すること。
  5.  (5) 小規模事業者については、その技術力、資力等が必ずしも十分でない場合が多いことにかんがみ、改善勧告または改善命令の発動にあたつては、改善期限の延長、改善措置の段階的実施、必要な資金のあつせん等所要の配慮を加えられたいこと(法第8条第5項)。
  6.  (6) 改善命令の発動については、所要の経過措置が規定されているので留意されたいこと(法第8条第3項、同条第4項、法附則第2項、令第3条)。

第7 都道府県知事に対する要請

  悪臭問題がとくに地域性の強い問題であることにかんがみ、市町村長は、関係都道府県知事または関係市町村長に対し、規制地域の指定、規制基準の設定もしくは強化または改善勧告もしくは改善命令の発動を要請することができることとされていること(法第9条、法第18条、令第2条)。

第8 事故時の措置

  規制地域内の事業場において事故が発生し、悪臭物質の排出が規制基準に適合せず、または適合しないおそれが生じた場合については、当該事業場の設置者は、必要な応急措置および復旧措置を講ずることとされていること(法第10条)。
  なお、これらの措置が実施されず、または不十分に実施された場合については、法第8条の規定により、改善勧告または改善命令を発することができるものであること。

第9 悪臭の測定の方法

  法第4条の規制基準を適用する場合における悪臭物質の測定の方法については、悪臭物質の測定の方法(昭和47年5月環境庁告示第9号)に定めるところによることとされている(規則第3条)が、法第11条の悪臭物質の測定を行なう場合についても、同様の測定方法により行なわれたいこと。

第10 その他

  1.  (1) 下水溝〈こう〉、河川、池沼、港湾その他の汚水が流入する水路または場所の管理者は、これらの水域から発生する悪臭により、周辺住民の生活環境をそこなうことのないように、その水域を適正に管理する責務を有するものとされているので、この旨周知されたいこと(法第12条)。
  2.  (2) 事業者または一般の住民は、適切な焼却施設を備えることなく住居が集合している地域でゴム、廃油その他の燃焼に伴つて悪臭が生ずる物を野外で多量に焼却することが禁止されているので、この旨周知徹底されたいこと(法第13条)。

ページ先頭へ