法令・告示・通達

悪臭防止法の一部を改正する法律の施行について

公布日:平成7年09月13日
環大企285号

環境事務次官から都道府県知事、指定都市市長あて

 悪臭防止法の一部を改正する法律(平成7年法律第71号。以下「改正法」という。)は、第132回国会において成立し、平成7年4月21日付けをもって公布され、平成8年4月1日から施行されることとなった。これに伴い、悪臭防止法施行令の一部を改正する政令(平成7年政令第322号)が平成7年9月8日付けをもって、悪臭防止法施行規則の一部を改正する総理府令(平成7年総理府令第42号。以下「改正規則」という。)が平成7年9月12日付けをもって、臭気指数の算定の方法(平成7年環境庁告示第63号)が平成7年9月13日付けをもってそれぞれ公布され、いずれも平成8年4月1日から施行されることとなった。
 貴職におかれては、下記の事項に留意の上、改正後の悪臭防止法(以下「新法」という。)の円滑かつ適切な運用を図られたい。

第1 全般的事項

1 改正の内容

  改正法の内容の第1は、従来の規制方法に加えて、人間の嗅〈きゆう〉覚を用いて悪臭を測定する方法(以下「嗅覚測定法」という。)による規制方式を導入したことである。これは、悪臭の原因となる特定の物質ごとの排出濃度に着目した従来の規制制度のみでは、ある発生源から複数の悪臭の原因となる物質が排出され、これらが相加、相乗される等して人の嗅覚に強く感じられる複合臭の問題に十分対応できないことや、悪臭の原因となる未規制の多種多様な物質への実効性のある対応が困難であることから、これらに適切に対応するためのものである。
  第2は、悪臭の防止に関する国、地方公共団体及び国民の責務を規定したことである。これは、近年、日常生活に伴う悪臭の苦情の割合が増加する傾向にあること等にかんがみ、関係者が適切な役割分担の下で、悪臭の防止を図っていく必要があることを明確にしたものである。

2 法の施行体制の充実

  新法の施行については、改正前の悪臭防止法(以下「旧法」という。)の場合と同様、規制等に係る事務の大部分は市町村長が執行することとなっている(法第21条及び改正後の悪臭防止法施行令第2条)ので、貴職におかれては、法及び本通達の趣旨に沿って、管下市町村長を指導されたい。

第2 嗅覚測定法による規制

1 規制の枠組み

  1.  (1) 悪臭の原因となる特定の物質の排出濃度に着目した従来の規制(新法第4条第1項。以下「物質濃度規制」という。)は、特定の物質を排出する工場その他の事業場に対しては効果的であり、代表的な悪臭の原因物質は既に規制対象となっていることから、悪臭の防止に相当の効果が得られている。したがって、既に社会的に定着している同規制を引き続き基本とし、複合臭等の問題があるために同規制によっては十分な規制効果が見込まれない区域に対しては、これに代えて、嗅覚測定法による規制を行うことができることとされた(新法第4条第2項)。
  2.  (2) 嗅覚測定法による規制の枠組みは、物質濃度規制の枠組みと同様であり、国が総理府令により規制基準の範囲等を設定し、都道府県知事は、市町村長の意見を聴いた上で、自然的、社会的条件から判断して必要に応じ規制地域内の区域を区分し、当該区分された区域ごとに具体的な基準値を設定するものである(新法第4条第2項及び第5条)。

2 規制基準

  1.  (1) 嗅覚測定法による規制の指標として、臭気指数(気体又は水に係る悪臭の程度に関する値であって、総理府令で定めるところにより、人間の嗅覚でその臭気を感知することができなくなるまで気体又は水の希釈をしたときの希釈倍数を基礎として算定されるもの)を用いることとされた(新法第2条第2項)。
  2.  (2) 臭気指数を用いた規制(以下「臭気指数規制」という。)の基準値は、物質濃度規制による場合と同様に、事業場の敷地境界線の地表における規制基準(以下「1号規制基準」という。)を総理府令で定める範囲内において定め、これを基礎として、各々総理府令で定める方法により、気体排出口における規制基準(以下「2号規制基準」という。)、排出水中における規制基準(以下「3号規制基準」という。)を定めるものである(新法第4条第2項)。
  3.  (3) ある区域について従来適用されていた物質濃度規制の基準値に代えて臭気指数規制の基準値を定める場合において、国が臭気指数に係る1号規制基準の範囲を総理府令で定めてから2号規制基準及び3号規制基準に係る算定方法を総理府令で定めるまでの間は、物質濃度規制及び臭気指数規制の両者に係る2号規制基準又は3号規制基準が存在しなくなるという不合理を避けるため、所要の経過規定が設けられた(改正法附則第3条)。

3 改善勧告及び改善命令

  改善勧告及び改善命令の手順等については基本的に旧法と同様であるが、改善勧告の要件の1つである「住民の生活環境がそこなわれていると認めるとき」との規定は、臭気指数規制の導入に伴い「その不快なにおいにより住民の生活環境が損なわれていると認めるとき」に改められた(新法第8条)。これは、罰則により担保される規制措置は、一定以上の強さの不快なにおいによって生活環境が損なわれている事態に対し発動されるものであるとの趣旨を明らかにしたものである。

4 その他

  1.  (1) 臭気指数規制の導入に伴い、物質濃度規制の対象物質たる旧法の「悪臭物質」を「特定悪臭物質」に改める等の用語の整理が行われた(新法第2条等)。
  2.  (2) 新法第8条の規定による改善勧告のための測定及び新法第11条に基づく規制地域での測定については、これらの測定を適正に行うことができる者として総理府令で定めるものに委託することができることとされた(新法第20条)。

第3 悪臭防止対策の推進

 近年、日常生活に伴う悪臭の苦情の割合が増加する傾向にあることにかんがみ、環境への負荷をできる限り少なくする等の行動がすべての者の公平な役割分担の下に自主的かつ積極的に行われることが必要である旨の環境基本法の基本理念に沿って、国民1人ひとりや国、地方公共団体その他の関係者が適切な役割分担の下で悪臭の防止を図っていくべきことを明らかにするため、悪臭の防止に関する国民の責務並びにこれに対する支援等を行う地方公共団体及び国の責務が規定された(新法第12条及び第15条)。
 この趣旨を踏まえ、貴職におかれては、悪臭防止のための住民の努力に対する支援、情報の提供その他の悪臭防止による生活環境の保全施策の一層の推進を図られたい。