法令・告示・通達

悪臭防止法施行令の一部を改正する政令の施行等について

公布日:昭和51年10月14日
環大特135号

[改定]

平成5年9月8日 環大特95号

環境庁大気保全局長から各都道府県知事、各指定都市市長あて

 悪臭防止法施行令の一部を改正する政令(昭和51年政令第242号。以下「改正政令」という。)が昭和51年9月18日に公布され、同年10月1日から施行された。
 これに伴い、悪臭防止法施行規則の一部を改正する総理府令(昭和51年総理府令第49号)が同年9月18日に公布され、また、悪臭物質の測定の方法の一部を改正する告示(昭和51年環境庁告示第47号)が同年9月22日に公布され、いずれも改正政令の施行日と同日から施行された。
 今回の改正は、悪臭防止の充実を図るため、悪臭防止法第2条に定める悪臭物質として新たに二硫化メチル、アセトアルデヒド及びスチレンの3物質を追加指定したものである。
 貴職におかれては、下記の事項に留意のうえ、改正政令等の円滑かつ適正な運用を図られたい。
 また、本通達の趣旨を管下市町村長に周知徹底し、指導に遺憾なきを期されたい。

第1 悪臭物質の追加指定の考え方

 1 追加指定の背景

   悪臭物質については、昭和47年5月悪臭防止法の施行の際、中央公害対策審議会の第一次答申を受けてアンモニア等5物質が政令で指定されたところであるが、同答申においても「5物質以外の物質についても、悪臭公害の実態の究明、測定方法に関する研究開発の進展に応じて、逐次、悪臭物質として追加指定していく必要がある。」ことが指摘されており、また、アンモニア等5物質の規制では悪臭苦情に十分対処しきれない実情にあり、悪臭物質の追加指定が強く望まれていたところである。
   このような背景のもとに環境庁においては、関係機関の協力を得て、悪臭公害の実態、悪臭物質の測定方法、悪臭防止技術・防止設備等について調査研究を進めてきたところであるが、今般、中央公害対策審議会の第二次答申を得て、これを基に政令等の改正を行い、3物質を追加指定したものである。

 2 追加指定の理由

   二硫化メチル等3物質は、①悪臭公害の主要な原因となつている物質であること、②大気中の濃度を測定し得るものであること、の二つの要件を満たす物質として選定したものである。
   今回の3物質の追加により、アセトアルデヒド製造工場、酢酸製造工場等の石油化学工場及びポリスチレン加工工場、FRP製品製造工場等のプラスチツク加工工場が新たに規制対象となるとともに、クラフトパルプ工場、化製場等についてもよりきめ細かく規制されることとなり、悪臭に係る苦情のほぼ半分に対処できることとなる。
   なお、今後も測定方法等に関する調査研究を進め、必要に応じ悪臭物質を追加指定していくとともに、悪臭を総合的には握できる官能試験法についても調査検討を進める予定である。

第2 改正の要点

 1 悪臭防止法施行令関係

   悪臭防止法第2条の政令で定める物質として、新たに二硫化メチル、アセトアルデヒド及びスチレンを追加したこと。(悪臭防止法施行令第1条の政正)

 2 悪臭防止法施行規則関係

   追加3物質について、工場その他の事業場の敷地境界線における規制基準の範囲を定めたこと。(悪臭防止法施行規則別表の改正)

 3 悪臭物質の測定の方法の告示関係

   追加3物質について、工場その他の事業場の敷地境界線における測定方法を定めたこと。

第3 留意すべき事項

 1 追加3物質の主要発生源について

   追加3物質を排出するおそれのある工場その他の事業場のうち主要なものとしては、おおむね別表に掲げるものがあるので、貴職の管轄区域内におけるこれらの事業場の所在地、数、操業等の実態のは握に努められたいこと。

 2 規制基準の設定について

  1.   (1) 敷地境界線における規制基準の範囲は、規制地域の住民の大多数が悪臭による不快感をもつことがないような濃度の範囲として定められたものであること。
        すなわち、規制基準の範囲としては、調香師による嗅覚試験を基礎として6段階臭気強度表示法によるものとし、その下限は、臭気強度2.5に対応する濃度とし、その上限は、地域の自然的、社会的条件により悪臭に対する順応のみられる場合があることを考慮し、臭気強度3.5に対応する濃度としたものであること。
  2.   (2) 敷地境界線における規制基準は、規制地域について、その自然的、社会的条件を考慮して、必要に応じ、当該地域を区分し、定めなければならないものとされているが、当該地域を区分する必要がある主な場合としては、当該地域のうちに主として工業の用に供されている地域その他悪臭に対する順応の見られる地域がある場合が該当すること。
        このような地域については、その土地利用の実態等に応じて、下表の区分に従つて区分し、規制基準は、それぞれに対応する右欄の範囲内で定めるものとすること。
        ただし、主として工業の用に供されている地域その他悪臭に対する順応の見られる地域内に存する事業場からの悪臭により他の規制地域内の住民の生活環境が損なわれていると認められる場合については、所要の区域を当該他の規制地域に係る規制基準を適用すべき地域として指定するものとすること。
    地域の区分
    規制基準(法第4条第1号)の範囲
    (単位ppm)
    主として工業の用に供されている地域その他悪臭に対する順応の見られる地域
    二硫化メチル
    0.03~0.1
    アセトアルデヒド
    0.1~0.5
    スチレン
    0.8~2
    上記(主として工業の用に供されている地域その他悪臭に対する順応の見られる地域)以外の地域
    二硫化メチル
    0.009~0.03
    アセトアルデヒド
    0.05~0.1
    スチレン
    0.4~0.8

 3 悪臭物質の測定の方法について

  1.   (1) 二硫化メチル
        メチルメルカプタン、硫化水素及び硫化メチルの測定方法に準じたものであること。
  2.   (2) 削除
  3.   (3) スチレン
        スチレンの測定方法は、低温濃縮法又は常温吸着法のいずれかによること。
    1.    ア 低温濃縮法について
           試料ガスの採取及び濃縮方法が、メチルメルカプタン等の測定方法に準じたものであること。
    2.    イ 常温吸着法について
           試料の採取と濃縮が同時にしかも常温で行い得るものであること。
      1.     (ア) 試料捕集管に充てんするポーラスポリマービーズは、テナツクス―GC等が適当であること。
              なお、ポーラスポリマービーズを反復使用すると、ビーズが崩壊し、試料捕集管の通気抵抗が大きくなるので、適当な時期にビーズをふるいにかけ、粒径を60~80メツシユに保つことが望ましいこと。
      2.     (イ) 試料捕集管の空焼きの時間は、捕集管調整時に12~24時間、その後は使用の都度5~10分程度が適当であること。
      3.     (ウ) 試料捕集管に注射針を装着する際、漏れを防ぐために、シールテープ等を使用することが望ましいが、加熱時に注射針が脱離する可能性があるので注意すること。

別表

悪臭物質
主要発生源事業場
二硫化メチル
クラフトパルプ製造工場、化製場、魚腸骨処理場、ごみ処理場、し尿処理場、下水処理場等
アセトアルデヒド
アセトアルデヒド製造工場、酢酸製造工場、酢酸ビニル製造工場、クロロプレン製造工場、たばこ製造工場、複合肥料製造工場、魚腸骨処理場等
スチレン
スチレン製造工場、ポリスチレン製造工場、ポリスチレン加工工場、SBR製造工場、FRP製品製造工場、化粧合板製造工場等