法令・告示・通達

悪臭物質の測定の方法の一部改正について

公布日:平成5年09月08日
環大特95号

環境庁大気保全局長から都道府県知事・各指定都市長あて

 悪臭物質の測定の方法の一部を改正する告示(平成5年環境庁告示第72号)が平成5年9月8日付けで公布され、平成6年4月1日から適用されることとなった。本改正の概要及び測定に当たっての留意事項は下記のとおりであるので、貴職におかれては、改正の趣旨を十分理解され、悪臭物質の的確な測定に遺憾なきを期されたい。
 また、本通達の趣旨を貴管下市町村長に周知徹底されたい。
 なお、悪臭物質の測定に関する事務は、市町村長が執行することとなっているが、専門的な知識や経験を必要とするものであるので、都道府県知事におかれては、専門職員の確保及び養成、測定機器の整備等について、貴管下市町村長の指導に努められたい。
 また、今回の告示に伴い、「悪臭物質の測定について」(昭和47年12月22日付け環大特第70号環境庁大気保全局長通知)を廃止するとともに、「悪臭防止法施行令の一部を改正する政令の施行等について」(昭和51年10月14日付け環大特第135号環境庁大気保全局長通知)記の第3の3中(2)を削る。また、「悪臭物質の測定の方法の一部改正について」(昭和59年3月21日付け環大特第135号環境庁大気保全局長通知)記の第2の1中(2)及び(4)を削り、同通知の記の第3の1中(3)、(9)及び(10)を削る。

第1 改正の要点

 1 悪臭防止法施行令の一部改正(平成5年政令第201号)に伴う改正

   新たに悪臭物質に追加されたプロピオンアルデヒド、ノルマルブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ノルマルバレルアルデヒド及びイソバレルアルデヒド(以下「アルデヒド類」という。)並びにイソブタノール、酢酸エチル、メチルイソブチルケトン、トルエン及びキシレンの10物質(以下「追加10物質」という。)の測定方法を定めたこと。(悪臭物質の測定の方法(昭和47年5月環境庁告示第9号。以下「告示」という。)別表第4及び別表第5の全部改正、別表第6の別表第8への繰下げ並びに別表第6及び別表第7の追加)
   なお、既指定物質であるアセトアルデヒド及びスチレンについては、測定の効率化、分析法の進歩に応じて、それぞれ新たに追加されたアルデヒド類の測定方法(告示の別表第4)並びにトルエン及びキシレンの測定方法(告示別表第7)と同一の方法としたこと。

 2 試料ガスの採取方法に係る改正

   追加10物質に係る本年6月1日付け中央公害対策審議会答申中の付言を踏まえて、全悪臭物質について、悪臭物質の排出状況に応じ最適な時間で採気できるよう改めたこと。(告示別表第1から別表第3まで及び旧別表第6の一部改正)

 3 その他の改正

   計量法の改正に伴う単位等の改正を行ったこと。(告示別表第1から別表第3まで及び旧別表第6の一部改正)
   また、測定方法の精度の向上を図るため、注釈及び備考を追加したこと。さらに、トリメチルアミンの測定法の一部を改正したこと。(告示別表第1から別表第3までの一部改正)

第2 追加10物質等の測定方法について

 1 測定方法の概要

  1.   (1) アセトアルデヒド及び新たに追加されたアルデヒド類の測定方法は、ガスクロマトグラフ法又はガスクロマトグラフ質量分析法のいずれかによるものであること。
  2.   (2) 酢酸エチル及びメチルイソブチルケトン並びにトルエン、スチレン及びキシレンの測定方法はそれぞれ低温濃縮法又は常温吸着法のいずれかによるものであること。これらの方法は、改正前のスチレンの測定方法に準じたものであること。また、イソブタノールの測定方法は、常温吸着法では捕集が困難であるので、低温濃縮法のみによるものであること。

 2 留意事項

  1.   (1) 追加10物質、アセトアルデヒド及びスチレンは、いずれも試料採取袋における保存性が比較的低いので、試料ガスを採取した後、可及的速やかに分析の操作を行うこと。
  2.   (2) ポーラスポリマービーズを充填した試料捕集管については、「悪臭防止法施行令の一部を改正する政令の施行等について」(昭和51年10月14日付け環大特第135号環境庁大気保全局長通知)記の第3の3の(3)のイを参照すること。
  3.   (3) イソブタノール並びに酢酸エチル及びメチルイソブチルケトン並びにトルエン、スチレン及びキシレンの測定において用いるガスクロマトグラフ分析装置のカラムには、それぞれ告示に明示した充填剤と同等以上の性能を有するものを充填したパックドカラム又はキャピラリーカラムを用いてもよいこととしたこと。この場合において、妨害成分がなく、分離定量が可能な場合には、これら6物質(常温吸着法の場合にはイソブタノールを除く5物質)を同時に分析してもよいこととしたこと。
  4.   (4) キシレンについては、オルト、メタ及びパラの各異性体について濃度を求め、その総和をキシレンの濃度とすること。なお、事業場の塗装工程においては、キシレンとしてオルト、メタ及びパラの各異性体の混合物が使用されている場合が多いので、キシレンの分析に当たっては、各異性体について同時に分析を実施すること。

第3 事業場の敷地境界線における濃度の測定に係る試料ガスの採取方法について

 1 試料ガス採取方法の改正の背景

   本年6月1日付け中央公害対策審議会答申においては、追加10物質の測定について、採気時間は試料採取手法の向上に鑑み、悪臭物質の排出状況に応じ最適な時間で行うものとすることとされ、また既に指定されている12物質についても、悪臭物質の排出状況に応じ最適な時間で採気することが望ましいことが付言された。これは、試料採取のための装置及び器具の性能が向上し、作業性の向上が見込まれるため盛り込まれたものである。今般の改正は、本答申を踏まえて行ったものであること。

 2 試料ガスの採取方法の概要

   試料ガスの採取方法は、①従前のメチルメルカプタン等の試料採取装置又は②試料ガス採取用のカセット式ポンプ若しくは③試料ガス採取用吸引瓶を用いて、試料採取袋に、6秒以上30秒以内で試料ガスを採取するものであること。ただし、アンモニア、トリメチルアミン並びにプロピオン酸、ノルマル酪酸、ノルマル吉草酸及びイソ吉草酸については、原則として従来どおりの採取方法により5分間で採取することとし、試料の水分が少なく、吸着のおそれがないと考えられる場合に限り、試料採取袋に6秒以上30秒以内で試料を採取してもよいものであること。

 3 留意事項

  1.   (1) 試料ガスの採取にあたっては、「悪臭防止法の施行について」(昭和47年8月31日付け環大特第48号環境庁大気保全局長通知)記の第5の(1)及び(2)に示された場合及び地点において、被害が発生したときと同等又は類似しているとみとめられる強さの臭気が感じられること及びその変動状況をあらかじめ数分間確認したうえで、当該臭気が感じられるときに、試料ガスを採取すること。
  2.   (2) 試料ガスの採取は、悪臭物質の濃度が時間によって変動しうること、試料採取者がにおいを感じてから採取するまでに時間差が生じ得ること、さらに、試料採取者の嗅覚が対象とする臭気に順応する場合があること等から、複数回(例えば3~5回)試料を採取すること。
  3.   (3) 採取した試料ガスは、できるだけ効率よく分析を行うことが望まれることから、採取後に、嗅覚又は検知管等の手段を用いて、前記(2)により採取したいくつかの試料の中からにおいの強いものを選び、分析に供すること。
  4.   (4) 試料ガス採取用吸引瓶によった場合には、告示に定められた操作で試料の採取を行うことにより30秒以内で試料が採取できること。

第4 トリメチルアミンの測定方法の一部改正について

  従来の硫酸瀘紙による方法では、ブランクが高く、ばらつきが大きいため、硫酸溶液吸収法に改めたこと。本方法は、従来のトリメチルアミンの気体排出口に係る流量の測定方法と同様の方法であること。

第5 その他の留意事項

  指定された悪臭物質の数が増加したことに伴い、事業場の操業状況をあらかじめ十分把握した上で、排出されているおそれがある悪臭物質について測定を行うことにより、測定業務の効率化を図ること。