法令・告示・通達

新幹線鉄道騒音に係る環境基準について

公布日:昭和50年10月03日
環大特100号

(環境庁大気保全局長から都道府県知事あて)

 新幹線鉄道騒音に係る環境基準(以下「環境基準」という。)は、昭和50年7月29日付け環境庁告示第46号をもって別添1のとおり設定されたところである。
 環境基準は、新幹線鉄道騒音につき生活環境を保全し、人の健康の保護に資するうえで維持することが望ましい基準として公害対策基本法(昭和42年法律第132号)第9条の規定に基づき定められたものであり、新幹線鉄道沿線地域における新幹線鉄道騒音による被害を防止するための音源対策、障害防止対策、土地利用対策等の各種施策を総合的に推進するに際しての行政上の目標となるべきものである。
 貴職におかれては、このような環境基準の設定の趣旨並びに環境基準達成のための施策の実施に関しては沿線住民及び関係地方公共団体の理解と協力が緊要であることにかんがみ、下記の事項に十分御留意のうえ、環境基準の地域類型をあてはめる地域の指定(以下「地域指定」という。)を行われたく通知する。また、障害防止対策の実施者による新幹線鉄道騒音の測定評価に際しては下記の測定方法等を参考としてこれに協力されたい。
 なお、地域指定を行った場合には、遅滞なく環境庁に報告されたい。
 おって、環境基準達成のための施策に関して、関係各省庁に対し、別添2の文書を送付したので念のため申し添える。

第1 地域指定

  1.  1 地域指定の権限は、公害対策基本法第9条第2項の規定に基づき制定された「環境基準に係る水域及び地域の指定権限の委任に関する政令(昭和46年政令第159号)」により、当該地域が属する区域を管轄する都道府県知事に委任されているので、貴職において地域指定を行うこと。
  2.  2 環境基準の地域類型をあてはめる地域は、新幹線鉄道騒音から通常の生活を保全する必要がある地域とすること。従って、工業専用地域、山林、原野、農用地等は、地域類型のあてはめを行わないものとすること。
  3.  3 地域類型のあてはめに際しては、当該地域の土地利用等の状況を勘案して行うこと。この場合において、都市計画法(昭和43年法律第100号)に基づく用途地域が定められている地域にあっては、第1種低層住居専用地域、第2種低層住居専用地域、第1種中高層住居専用地域、第2種中高層住居専用地域、第1種住居地域、第2種住居地域及び準住居地域を類型Ⅰにあてはめるものとし、その他を類型Ⅱにあてはめるものとすること。また、用途地域が定められていない地域にあっては、第1種低層住居専用地域、第2種低層住居専用地域、第1種中高層住居専用地域、第2種中高層住居専用地域、第1種住居地域、第2種住居地域及び準住居地域に相当する地域を類型Ⅰにあてはめるものとし、その他を類型Ⅱにあてはめるものとすること。
  4.  4 地域指定は、既設新幹線鉄道沿線区域及び工事中新幹線鉄道沿線区域にあっては速やかに、新設新幹線鉄道沿線区域にあっては建設線の工事実施計画の認可(全国新幹線鉄道整備法(昭和45年法律第71号)第9条に規定する認可をいう。)後速やかに行うこと。
  5.  5 地域指定を行ったときは、直ちに都道府県の公報に掲載するなどにより公示し、関係住民等に周知させるよう配慮すること。
  6.  6 新幹線鉄道沿線地域を含む地域に係る土地利用計画を決定し、又は変更しようとする場合は、この基準の維持達成に資するよう配慮すること。なお、地域指定の見直しは、概ね5年ごとに土地利用等の状況の変化に応じて行い、土地利用計画上の大幅な変更があった場合にも速やかに行うこと。

第2 測定方法等

  1.  1 測定は、新幹線鉄道の上り及び下りの列車を合わせて連続して通過する20本の列車について行うことが原則であるが、運行回数が少ないため4時間程度測定しても通過列車が20本に満たない場合には、その時間内に測定できる本数について測定すること。また、ピークレベルが上りと下りでそれぞれほぼ一定の値を示す場合には、最小限10本まで減じてよいこと。測定結果は、得られたピークレベルのうち上位半数の値についてパワー平均したものをもって評価すること。
  2.  2 測定は、当該地域において環境基準の達成状況を把握し、対策を講ずる上で必要と認められる地点であって建物等による遮音、反射等を考慮し、なるべく線路を見通せる場所等でできる限り暗騒音がピークレベルより10ホン以上低い地点を選定して行うこと。
       なお、測定に際しては、軌道構造、各列車ごとの新幹線鉄道騒音の継続時間、走行速度及び測定点における暗騒音のレベル(中央値、90パーセントレンジ上下端値)を併せて調査しておくことが望ましいこと。
       また、他の測定点との比較ができるよう、軌道中心線より25メートルの地点及び50メートルの地点を併せて測定することが望ましいこと。
  3.  3 測定は、年間を通じて平均的な新幹線鉄道騒音の状況を把握するに適当な測定時期を選定して行うこと。
  4.  4 測定は、屋外において原則として地上1.2メートルの高さで行うものとするが、線路に近接した高層住宅等の高い場所において新幹線鉄道騒音が問題となっている場合には、障害防止対策等に資するため、当該問題となっている高さにおいても併せて測定を行うことが望ましいこと。
  5.  5 防音工事の効果を測定する場合は、屋内においては居室の中央部で床上1.2メートルの高さで測定を行い、屋外においては窓又は外壁から1メートルの地点で測定を行うことが望ましいこと。
       なお、防音工事の効果の評価を行うときは、騒音レベルが80ホン以上85ホン未満の地域においては当該騒音レベルから25ホンを、騒音レベルが85ホン以上90ホン未満の地域においては当該騒音レベルから30ホンを減じた騒音レベルを目安とすること。

第3 その他

  1.  1 「新幹線鉄道騒音」とは、全国新幹線鉄道整備法(昭和45年法律第71号)第2条に規定する新幹線鉄道の運行に伴って発生する騒音をいうこと。
  2.  2 本環境基準は、午前6時から午後12時までの間の新幹線鉄道騒音に適用されるものであるが、運行の遅延等により当該時間以外の時間に発生する新幹線鉄道騒音に対しても準用するものとすること。
       なお、将来、当該時間以外の時間において新幹線鉄道が通常の形態として運行されることとなる場合においては、本環境基準は必要な改訂が行われるものであること。
  3.  3 新幹線鉄道の沿線区域の区分は、障害防止対策の実施者が環境基準の告示日以降速やかに特定するものであること。その場合において、貴職において当該沿線区域の住民又は障害防止対策の実施者の要請がある等必要と認めるときは、新幹線鉄道沿線区域の生活環境保全の見地から障害防止対策の実施者の行う測定評価に協力を行うこと。
  4.  4 新幹線鉄道の沿線区域の区分において、地域の類型Ⅰに該当する地域が連続する沿線地域内の区域とは、地域の類型Ⅰに該当する地域が新幹線鉄道の沿線1キロメートルにわたっておおむね連続して存在する区域をいうこと。