法令・告示・通達

自動車騒音の状況の常時監視に係る法定受託事務の処理基準について

公布日:平成12年05月18日
環大二53号

環境庁大気保全局長から北海道知事あて

 騒音規制法(昭和43年法律第98号)第18条に規定する自動車騒音の状況の常時監視の事務に関する処理基準が、内閣総理大臣により下記のとおり定められたので通知する。

 地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律(平成11年法律第87号)の制定に伴い、騒音規制法(昭和43年法律第98号)第18条に規定する自動車騒音の状況の常時監視の事務は、同法第26条の規定により地方自治法(昭和22年法律第67号)第2条第9項第1号に規定する第1号法定受託事務とされたので、地方自治法第245条の9の規定に基づき、貴都道府県にかかる当該法定受託事務を処理するに当たりよるべき基準を定めたものである。ついては、別添の事項に基づき、自動車騒音の状況の常時監視を行われたい。

(別添)

  1. 第1 定義等
    1.  1 特価騒音レベル(lacq,t)とは、ある時間範囲tについて、変動する騒音レベルをエネルギー的な平均値として表したものをいう。時間的に変動する騒音のある時間範囲tにおける等価騒音レベルは、その騒音の時間範囲tにおける平均二乗音圧と等しい平均二乗音圧をもつ定常音の騒音レベルに相当する。単位はデジベル(db)である。
    2.  2 単発騒音暴露レベル(lae)とは、単発的に発生する騒音の全エネルギーと等しいエネルギーをもつ継続時間1秒の定常音の騒音レベルをいう。単位はデジベル(db)である。
    3.  3 総合騒音とは、ある場所におけるある時刻の総合的な騒音をいう。
    4.  4 特定騒音とは、総合騒音の中で音響的に明確に識別できる騒音をいう。
    5.  5 残留騒音レベルとは、総合騒音から全ての特定騒音を除いた残りの騒音レベルのことをいう。
    6.  6 評価区間とは、交通条件、道路構造条件等が概ね等しく自動車騒音の影響を一定とみなすことのできる区間のことをいう。
    7.  7 騒音観測区間とは、評価区間のうち騒音を実際に測定する区間をいい、騒音非観測区間の騒音を把握するための代表区間ともなる。
    8.  8 騒音非観測区間とは、評価区間のうち交通条件、道路構造条件等が騒音観測区間と類似している区間をいう。
    9.  9 基準時間帯とは、昼間(6:00~22:00)と夜間(22:00~6:00)の2つの時間帯をいう。
    10.  10 観測時間とは、騒音レベルを測定する際の基本となる時間であり、騒音の状態を一定と見なすことができる時間をいい、観測時間の長さは1時間とする。
    11.  11 実測時間とは観測時間のうち実際に騒音を測定する時間をいう。
    12.  12 普通騒音計とは日本工業規格c1502に基づく騒音計をいう。
    13.  13 精密騒音計とは日本工業規格c1505に基づく騒音計をいう。
    14.  14 積分平均形騒音計とは、日本工業規格c1502又はc1505の附属書に基づく機能を備える騒音計のことをいう。
    15.  15 距離減衰量とは何ら障害物がない場合における、ある基準点位置からの距離による騒音の減衰量のことをいう。
    16.  16 建物群による減衰量とは、建物の遮蔽効果による騒音の減衰量のことをいう。
  2. 第2 測定・評価の範囲等について
    1.  1 測定・評価は評価区間を単位として行う。評価区間を騒音観測区間と騒音非観測区間に分類する。この際、評価区間を交通条件、道路構造条件等で類型化し、その区間類型に対応して騒音観測区間が適切に分布するよう選定するものとする。
         騒音観測区間においては、第3に示すとおり、騒音レベル及び騒音測定時の交通量、速度等の交通条件を測定する。騒音非観測区間については、交通条件、道路構造条件等が当該騒音非観測区間と類似している騒音観測区間を代表区間として、当該代表区間の騒音測定値から、騒音暴露状況を把握するものとする。
    2.  2 騒音暴露状況及び住居等の戸数などの沿道状況を把握すべき範囲は、原則として道路端から50mの範囲とする。この評価範囲は、騒音に係る環境基準(平成10年環境庁告示第64号。以下「環境基準」という。)にいう道路に面する地域の環境基準を適用する範囲を限定するものではない旨留意されたい。
         また、この範囲における騒音及び住居等の分布が把握できるよう、適切な距離帯ごとにデータを整理するものとする。
  3. 第3 測定について
    1.  1 対象とする騒音は自動車の運行に伴い発生する騒音とする。環境基準の適用外である航空機騒音、鉄道騒音及び建設作業騒音並びに環境基準に基づく評価の妨げとなる騒音は除外して測定を行うものとする。
    2.  2 除外すべき音の処理は以下のいずれかの方法により行うものとする。
      1.   ① 測定員が監視していない観測時間については、分析時に実測時間を細かく区分して、除外すべき音が発生したときの時間区分のデータを除いて統計処理する。
      2.   ② 測定員が常に監視している場合は、除外すべき音が発生した時点で騒音計の一時停止ボタンを押す等により測定を一時停止させ、適切な時間が経過後、測定を再開、継続する。
    3.  3 測定は、基準時間帯ごとの全時間を通じて行うことを原則とするが、騒音レベルの変動等の条件に応じて、実測時間を短縮することもできることとする。この場合の実測時間は、連続測定を行った場合と比べて統計的に十分な精度を確保しうる範囲内とする。
    4.  4 交通量が少なく間欠的な場合は、観測時間別の残留騒音レベル及び自動車1台当たりの車種別単発騒音暴露レベルを測定することにより基準時間帯の特価騒音レベルを計算によって求める方法によることができる。
    5.  5 測定は、交通量が1年のうちで平均的となる日に行うこととし、騒音測定時の天候が降雨、降雪の場合や風雑音、電線その他による風切り音等により測定値に影響がある場合は測定を中止するものとする。
    6.  6 マイクロホンは、屋外に置くこととし、原則として建物から1~2メートルの距離にある地点に設置する。この場合、マイクロホンと建物との位置関係は、住居等の建物が騒音の影響を受けやすい面を考慮して、決定するものとする。また、当該建物による反射の影響が無視できない場合にはこれを避けうる位置で測定し、これが困難な場合には実測値を補正するなど適切な措置を行うものとする。
    7.  7 騒音計は普通騒音計、精密騒音計又はこれらと同等以上の性能を有する測定器のうち、計量法(平成4年法律第51号)第71条の条件に合格した特定計量器を使用する。特価騒音レベルの演算は、原則として積分平均形騒音計又はこれと同等の機能を有するレベル処理器を用いるものとする。
    8.  8 交通条件は、騒音レベルの実測時間内について、上下車線別・車種別交通量及び上下車線別平均走行速度を測定するものとする。
         なお、昼夜間とも環境基準を大幅に超過すると思われるような地点については昼夜間とも2観測時間以上交通条件の測定を行い、夜間のみ環境基準を大幅に超過すると思われるような地点については夜間のみ2観測時間以上交通条件の測定を行い、これらに該当しない地点については、昼間2観測時間以上交通条件の測定を行うものとする。
    9.  9 評価区間について、道路構造、車線数、幅員等の道路横断面を構成する要素、舗装種別、縦断勾配、遮音壁設置状況及びその他必要と思われる道路条件を調査するものとする。
         なお、これらの事項が変化した場合は可能な限り速やかにデータ等の更新を行うものとする。
  4. 第4 評価について
      評価方法等については、環境基準に定められている事項のほか次の事項についても留意されたい。
    1.  1 評価を行うための沿道条件の把握
      1.   (1) 評価を行うための沿道条件として、評価区間内に立地する住宅等戸数に加え、建物群による減衰量を含む騒音レベルを把握するため、距離帯ごとに騒音レベルを推計する場合は評価区間内の建物立地密度、個々の建物ごとに騒音レベルを推計する場合は建物からの道路の見込み角を把握するものとする。
      2.   (2) 評価区間内の建物の用途、建物位置の環境基準類型及び都市計画用途地域、建物が属する距離帯等、騒音暴露戸数を把握するための諸条件を調査する。
            大規模な集合住宅については、入居している住居等戸数を把握するとともに、道路からの距離が複数の距離帯にまたがる場合は、それぞれの距離帯ごとの戸数を把握する。
            なお、これらのデータの更新は、概ね5年ごとに行うものとするが、沿道建物状況に大幅な変更があった場合には速やかに更新するものとする。
    2.  2 評価の方法について
      1.   (1) 評価区間が騒音観測区間の場合は道路端における騒音測定結果から、また、評価区間が騒音非観測区間の場合は騒音推定結果から、道路端からの距離減衰量及び建物群による減衰量を差し引き、残留騒音測定結果などから把握した地域の残留騒音レベルを考慮することにより、個々の建物ごとまたは距離帯ごとの騒音レベルを推計するものとする。
      2.   (2) 評価は、原則として評価区間ごとに当該評価区間内の全ての住居等のうち、騒音レベルが環境基準を超過する戸数及び超過割合を算出して行うものとする。
  5. 第5 評価結果の活用
      敷地の騒音状況に関する情報提供や住宅の防音性能を入居者に対して明示させる方策等を確立するための基本的な情報として、騒音マップ等を作成し活用する。
  6. 第6 常時監視結果の報告について
      自動車騒音の常時監視の結果について、年に1度報告を行うものとする。