法令・告示・通達

農用地の土壌の汚染防止等に関する法律施行令の一部改正等について

公布日:昭和50年06月30日
環水土145号

(各都道府県知事あて環境庁水質保全局長通達)

 農用地の土壌の汚染防止等に関する法律(昭和四五年法律第一三九号。以下「法」という。)に基づく特定有害物質として、従来カドミウム及びその化合物並びに銅及びその化合物が指定されていたところであるが、今回、砒〈ひ〉素による土壌汚染防止対策を促進するため、去る四月四日に農用地の土壌の汚染防止等に関する法律施行令及び公害防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律施行令の一部を改正する政令(昭和五〇年政令第一〇三号)が公布、施行され、新たに砒〈ひ〉素及びその化合物が追加指定されるとともに、砒〈ひ〉素に係る農用地土壌汚染対策地域の指定要件が定められた。また、これに伴い農用地土壌汚染対策地域の指定要件に係る砒〈ひ〉素の量の検定の方法を定める総理府令(昭和五〇年総理府令第三一号。以下「砒〈ひ〉素に係る検定府令」という。)が同月八日に公布、施行されたので、左記事項に留意の上、これら法令の適切かつ円滑な運用に遺憾のないよう配慮されたい。

  1. 第一 砒〈ひ〉素に係る農用地土壌汚染対策地域の指定要件について
    1.  一 田に限り対象農用地としたのは、砒〈ひ〉素に係る農作物の生育阻害が特に湛水条件下において顕著であるためである。
    2.  二 その地域の自然的条件に特別の事情があり、土壌一キログラムにつき一五ミリグラムの値によることが当該地域内の農用地における農作物の生育の阻害を防止するため適当でないと認められる場合とは、その地域の農用地の土壌条件等の自然的立地条件が著しく特殊であり、土壌一キログラムにつき一五ミリグラムの値によることが当該地域の既往の調査結果及び農作物の生育阻害の実態等から判断して当該地域において砒〈ひ〉素による農作物の生育阻害を防止するための値として適当でないと認められる場合である。
    3.  三 都道府県知事が別の値を定めようとするときは、その地域内の農用地の土壌に含まれる砒〈ひ〉素の量及び水稲の収穫量等の調査結果をもとに、重回帰分析等の統計的手法により要因解析を行い、水稲の生育阻害の主要因が砒〈ひ〉素であることを確認した上で直接回帰式(土壌に含まれる砒〈ひ〉素の量を独立変数(横軸)、水稲の収穫量を従属変数(縦軸)とする。)を求め、当該回帰直線と基準収穫量(当該回帰直線の推定誤差を含む区間推定における五〇パーセント信頼区間の下限と縦軸との交点における水稲の収穫量)との交点における土壌に含まれる砒〈ひ〉素の量をもつて別の値とするものとする。
         なお、土壌に含まれる砒〈ひ〉素の量の測定については、砒〈ひ〉素に係る検定府令別表に掲げる方法による。
    4.  四 都道府県知事が環境庁長官の承認を受けようとするときは、別記様式に従い、申請するものとする。
  2. 第二 砒〈ひ〉素の量の検定の方法について
    1.  一 ほ場を選定する場合には、その地域の縮尺三、〇〇〇分の一程度の平面図をベースマツプとして、一区画がおおむね二・五ヘクタールとなるように方眼を組み、その交点を含むほ場を選ぶものとする。
         なお、当該地域の土地条件、水利状況等からみて調査の精度を確保するため必要と認める場合は、適宜、調査密度を高めることができるものとする。
    2.  二 試料としての土壌を採取する場合には、試料採取地点において、地表から地表下一五センチメートルまで(耕盤等が地表下一五センチメートル以内に出現する場合にあつては、耕盤等までとする。)の土壌を垂直に切り取り、これを十分混合して四分法により縮分して均一な土壌約一キログラムを採取するものとする。この場合において、ほ場の表面が畝立て等により不均一なときは、それを均一にならして採土するものとする。
    3.  三 検定を行う場合には、分析測定の過程で砒〈ひ〉素が混入することのないよう試薬の選定等に十分注意する等分析精度の確保に努めるものとする。
  3. 第三 特別地区等の指定について
      今回の砒〈ひ〉素及びその化合物の特定有害物質としての指定が農作物等の生育阻害の観点から行われたことにかんがみて、砒〈ひ〉素及びその化合物に係る農用地土壌汚染対策地域の区域内にある農用地について、法第八条の規定による特別地区及び指定農作物等の指定を行わないものとする。
  4. 第四 排水基準設定等のための措置について
      都道府県知事が砒〈ひ〉素及びその化合物に係る土壌の汚染防止の観点から行ういわゆる上乗せ排水基準等の設定又は変更は、農用地(田に限る。)の土壌に含まれる砒〈ひ〉素の量が土壌一キログラムにつき一五ミリグラム(都道府県知事が環境庁長官の承認を受けて別の値を定めたときはその値)未満であるような状態が維持されるため必要かつ十分な程度の許容限度を定めるよう行うものとする。