法令・告示・通達

土壌ガス調査に係る採取及び測定の方法を定める件

公布日:平成15年03月06日
環境省告示16号

 土壌汚染対策法施行規則(平成十四年環境省令第二十九号)第五条第二項第一号及び第二号の規定に基づき、環境大臣が定める土壌ガス調査に係る採取及び測定の方法を次のように定める。

   土壌ガス調査に係る採取及び測定の方法を定める件

 土壌汚染対策法施行規則第五条第二項第一号に規定する土壌中の気体又は地下水の採取の方法及び同項第二号に規定する気体に含まれる調査対象物質の量の測定の方法は、次のとおりとする。

第1 採取方法

 1 採取孔

  (1) 採取孔

    直径15~30mm程度、深さ0.8~1mの裸孔で、鉄棒等の打込み等により穿孔したもの。地表面がアスファルト、コンクリート等で舗装されている場合にあっては、コアカッター、ドリル等で舗装面を削孔して設置する。

  (2) 保護管

    ステンレス管、アルミ管等の調査対象物質を吸着しない材質の管であって、底面又は下部側面に開口部を持ち、上部50cm以上が無孔管であり、管頭をゴム栓、パッカー等で密栓することができるもの。これを採取孔内に採取孔(舗装面を削孔して設置した採取孔にあっては、舗装面を含む。)と保護管との間を気体が通過しないように密閉して設置する。

 2 採取装置

  (1) 採取装置の構造

    捕集部を地上に置く場合にあっては試料を採取する位置から採取管、導管、捕集部、吸引装置の順に、地下に置く場合にあっては捕集部、導管、吸引装置の順に接続することとする。

  (2) 採取管

    材質は、ふっ素樹脂製管等の化学反応、吸着反応等によって土壌中の気体(以下「土壌ガス」という。)の分析結果に影響を与えず、かつ、土壌ガスに含まれる物質によって腐食されにくいものとする。保護管の内部がこの材質である場合にあっては、採取管は保護管を延長したものとすることができる。内径は、試料である土壌ガスの流量、採取管の強度、洗浄のしやすさ等を考慮して選ぶこととする。長さは保護管の開口部付近まで挿入できるものとする。
    一度使用した採取管を再度使用する場合には、よく洗浄(注1)した後に使用することとする。

  (3) 導管

    材質は、ふっ素樹脂製管等の化学反応、吸着反応等によって土壌ガスの分析結果に影響を与えず、かつ、土壌ガスに含まれる物質によって腐食されにくいものとする。内径は、採取管の外径に対し著しく細くないものとし、試料である土壌ガスの流量、導管の長さ、吸引ポンプの能力等を考慮して選ぶこととする。長さはできるだけ短くする。
    導管は採取管を延長したものとすることができる。

  (4) 捕集部

    ガラス製若しくはステンレス製の減圧捕集瓶、合成樹脂フィルム製の捕集バッグ又は調査対象物質を吸着する捕集濃縮管のいずれかとする。
    導管等との接続には、シリコーンゴム管、ふっ素ゴム管、軟質塩化ビニル管、肉厚ゴム管等を用いることとする。

   ア 減圧捕集瓶

     土壌ガスを気体の状態で捕集するための内容量11のガラス製の瓶又はステンレス製のキャニスターであって、絶対圧力1kPa(7.5mmHg)以下を1時間以上保持できるもの。

   イ 捕集バッグ

     土壌ガスを気体の状態で捕集するための内容量約1~31のふっ素樹脂、ポリプロピレン等の合成樹脂フィルム製のバッグで、調査対象物質の吸着、透過又は変質を生じないもの。

   ウ 捕集濃縮管

     ガラス製の管であって、内部をアセトン等で洗浄し乾燥した後、捕集剤を充てんし、両端をシリカウールでふさぎ、窒素気流中で加熱して分析の妨害となる物質を除去し(注2)、ふっ素樹脂栓で密栓したもの。
     捕集剤は、調査対象物質を吸着し、かつ、200℃前後で速やかに調査対象物質を放出する性能を持つもの(注3)とし、捕集効率が確認されたものを用いる。

  (5) 吸引装置

    吸引ポンプ及びガス流量計又は気密容器とする。

   ア 吸引ポンプ
     所定の流量を確保する能力を持ち、土壌ガスに接触する部分に調査対象物質に対して不活性で、かつ、土壌ガスに対して汚染源とならない材質のものを用いたもの。
   イ ガス流量計
     捕集濃縮管を用いて土壌ガスを採取する場合に使用する、ガスの積算流量又は吸引速度を測定する機器。吸引速度を測定する機器にあっては、土壌ガスの吸引時間を計測して流量を算出することとする。
   ウ 気密容器
     捕集バッグを用いて土壌ガスを採取する場合に使用する、その内部を減圧状態にすることにより内部に装着した捕集バッグに土壌ガスを吸入させる容器(注4)。

  (6) 注射筒

    日本工業規格(以下「規格」という。)T3201に定める容量100mlのもの。規格K0050の9.3.1(全量ピペットの校正方法)に準じて体積の器差付けがされたものを用いる。

  •    (注1) 洗浄方法の例としては、内径1~5mmの場合にはエアー洗浄又は加熱除去、内径5~25mmの場合にはエアー洗浄、加熱除去又は中性洗剤を使用した水洗浄及び乾燥の方法がある。
  •    (注2) 例えば、ポーラスポリマービーズ0.6gを充てんし、窒素気流中において230℃で約2時間加熱処理する方法がある。
  •    (注3) 捕集剤には、多孔性高分子型のもの(ポーラスポリマー)、吸着型のもの(活性炭、合成ゼオライト)等がある。
  •    (注4) 気密容器は、一般に全部又は一部が透明又は半透明の樹脂製のものが使用されている。

 3 試料の採取

   試料の採取は、表層から0.8~1m下の地点において、次のいずれかの方法により土壌ガスを採取して行うこととする。なお、雨天及び地上に水たまりがある状態の場合には行わないこととする。    また、雨天又は地上に水たまりがある状態以外の場合において、当該地点に地下水が存在することから土壌ガスの採取が困難であるときは、試料の採取は当該地点の地下水を適切に採取できる方法により採取して行うこととする。

  (1) 減圧捕集瓶法

   ア 採取孔の設置

     採取孔を削孔して孔内に保護管を挿入し、保護管の上部をゴム栓等で密栓した後、一定時間放置する。放置する時間は30分以上とし、地点による時間のばらつきをできる限り小さくすることとする。

   イ 減圧捕集瓶の準備

     減圧捕集瓶について漏れ試験(注5)を行う。また、一度使用した減圧捕集瓶を再度使用する場合には、分析の妨害となる物質を除去する。

   ウ 捕集部の組立て

     減圧捕集瓶を1kPa(7.5mmHg)以下に減圧し、導管に接続する。

   エ 採取管及び導管の取付け

     保護管上部の密栓を開封後、速やかに保護管内に採取管を挿入し、保護管の開口部付近から土壌ガスを採取できるように採取管を設置する。
     吸引ポンプ等により採取管の容量の約3倍の土壌ガスを吸引した後、採取管に導管を接続する。

   オ 土壌ガスの採取

     減圧捕集瓶の弁を開放し、導管を通じて土壌ガスを採取する。管径の大きい導管を用いる場合には、導管内に土壌ガスを満たした状態で行う。

  (2) 減圧捕集瓶を用いた食塩水置換法

   ア 採取孔の設置

     (1)アによる。

   イ 減圧捕集瓶の準備

     減圧捕集瓶について漏れ試験を行った後、飽和食塩水(脱気水11に対して食塩約360g以上を混合したものとする。)を充てんし、弁を閉じて密栓する。また、一度使用した減圧捕集瓶を再度使用する場合には、分析の妨害となる物質を除去する。

   ウ 捕集部の組立て

     減圧捕集瓶を導管に接続し、減圧捕集瓶のセプタムに注射筒を刺す。

   エ 採取管及び導管の取付け

     (1)エによる。

   オ 土壌ガスの採取

     減圧捕集瓶の弁を開放し、飽和食塩水を注射筒内に吸引することにより、減圧捕集瓶内の飽和食塩水を土壌ガスに置換する。管径の大きい導管を用いる場合には、導管内に土壌ガスを満たした状態で行う。

  (3) 捕集バッグ法

   ア 採取孔の設置

     (1)アによる。

   イ 捕集バッグの準備

     捕集バッグについて、調査対象物質の吸着、透過又は変質を生じないこと及び漏れがないこと(注6)を確認する。一度使用した捕集バッグを再度使用する場合には、清浄乾燥空気(合成空気)等を充てんして乾燥し、赤外線ランプで40℃程度に加熱して吸着された気体を脱離した後、空気を排出する操作を数回繰り返す方法その他の方法により、分析の妨害となる物質を除去した後に使用することとする。

   ウ 捕集部の組立て

     脱気した状態の捕集バッグを気密容器に入れ、捕集バッグに付属する合成樹脂製のスリーブを導管に接続した後、気密容器を吸引ポンプに接続する。

   エ 採取管及び導管の取付け

     (1)エによる。

   オ 土壌ガスの採取

     吸引ポンプにより気密容器内を減圧し、土壌ガスを捕集バッグ内に採取する。管径の大きい導管を用いる場合には、導管内に土壌ガスを満たした状態で行う。
     土壌ガスを採取した後、スリーブをシリコーンゴム栓で密栓する。

  (4) 捕集濃縮管法

   ア 採取孔の設置

     (1)アによる。

   イ 捕集濃縮管の準備

     捕集剤を充てんし、分析の妨害となる物質を除去した後の捕集濃縮管を用意する。

   ウ 捕集部の組立て

     捕集部を地上に置く場合にあっては、捕集濃縮管の片側に導管を、反対側に吸引ポンプを接続する。捕集部を地下に置く場合にあっては、捕集濃縮管の片側に導管を接続し、その導管の先に吸引ポンプを接続する。

   エ 採取管及び導管の取付け

     (1)エによる。ただし、捕集部を地下に置く場合にあっては、採取管に導管を接続する前に土壌ガスを吸引することを要しない。

   オ 土壌ガスの採取

     吸引ポンプにより約100ml/分で一定量(100mlを標準とし、土壌ガス中の調査対象物質の濃度に応じて調節するものとする。)の土壌ガスを吸引し、土壌ガス中の調査対象物質を捕集濃縮管内の捕集剤に吸着させる。管径の大きい導管を用いる場合には、導管内に土壌ガスを満たした状態で行う。また、土壌粒子等が捕集濃縮管に混入しないように注意する。
     土壌ガスを採取した後、ふっ素樹脂栓で捕集濃縮管を密栓し、又は別の容器に密封して保管する。現地で分析を行わない場合には、デシケータの中に保管する。

  •    (注5) 絶対圧力1.33kPa程度まで減圧して1時間放置した場合の圧力変化が約0.67kPa以内であれば、漏れがないものとみなす。
  •    (注6) 捕集バッグに漏れがないことの確認の方法としては、容積の60~80%の清浄乾燥空気(合成空気)等を充てんし、水道水、蒸留水等の清浄水中に捕集バッグ全体を浸して軽く押し、気泡がなければ漏れがないと判断する方法等がある。

 4 試料の運搬及び保管

  (1) 運搬及び保管の方法

    採取した土壌ガスは、冷暗状態で容器の内側が結露しないように運搬及び保管する。土壌ガスの分析は、現地で行う場合には採取から24時間以内に、現地以外の分析室で行う場合には採取から48時間以内に行うこととする。

  (2) 運搬及び保管による濃度減少の評価

    現地以外の分析室で分析を行う場合には、以下の方法により運搬及び保管による濃度の減少の程度を評価する。

  1.    ア 現地で既知の濃度の試料(標準ガス等)を、採取した土壌ガスと同様の方法により減圧捕集瓶若しくは捕集バッグに保管し、又は捕集濃縮管内の捕集剤に吸着させたテスト用試料を2検体作成する。
  2.    イ テスト用試料を採取した土壌ガスと同じ状態で運搬及び保管し、分析する。
  3.    ウ テスト用試料の既知の濃度と分析結果の平均との差が±20%未満の場合には、土壌ガスの分析結果をそのまま土壌ガス中の調査対象物質の濃度とする。テスト用試料の既知の濃度と分析結果の平均との差が±20%以上の場合には、次式により求めた濃度を土壌ガス中の調査対象物質の濃度とする。
        濃度=土壌ガスの分析結果×(テスト用試料の既知の濃度/テスト用試料の分析結果の平均)

第2 測定方法

 1 分析方法

   分析方法は、光イオン化検出器を用いるガスクロマトグラフ法(GC―PID)、水素イオン化検出器を用いるガスクロマトグラフ法(GC―FID)、電子捕獲型検出器を用いるガスクロマトグラフ法(GC―ECD)、電気伝導度検出器を用いるガスクロマトグラフ法(GC―ELCD)、ガスクロマトグラフ質量分析法(GC―MS)のいずれかとする。各分析方法ごとの分析が可能な特定有害物質は、別表1のとおりとする。
   分析に当たっては、土壌ガスに含まれる調査対象物質の濃度の定量が可能であり、かつ、定量下限値が0.1volppm以下(ベンゼンにあっては0.05volppm以下)である方法を用いる。分析装置は、この定量下限値付近の変動係数が10~20%であることが確認されたものを用いる。
   なお、分析は精度が確保できる環境であれば、室内、車内又は野外のいずれにおいても実施することができる。

 2 試薬

  1.   (1) 混合標準液の原液
        すべての調査対象物質を1mg/ml含む混合標準液の原液。アンプルは冷暗所で保管する。これに代えて、国又は公的検査機関が濃度を保証するガス二次標準を使用して濃度を確認した混合標準ガスを使用することができる。
  2.   (2) 混合標準液
        混合標準液の原液1mlを容量20mlの全量フラスコにとり、メタノールを標線まで加えて20mlとし、すべての調査対象物質を50μg/ml含む混合標準液としたもの。調製は使用時に行うこととする。
  3.   (3) メタノール
        規格K8891に定める試薬。
  4.   (4) ヘリウム(純度99.999vol%以上)
  5.   (5) 窒素(純度99.999vol%以上)

 3 器具及び分析装置

  (1) 器具

   ア 検量線用ガス瓶

     内容量11のガラス製の瓶であって、絶対圧力1kPa(7.5mmHg)以下を1時間以上保持できるもの。規格K0050の9.3.2(全量フラスコの校正方法)に準じて内容量の測定がされたものを用いる。

   イ 検量線用捕集濃縮管

     第1の2(4)ウの捕集濃縮管と同様のもの。

   ウ ガスタイトシリンジ(注7)

     0.1~10mlを採取できるもの。精度の確認がされたものを用いる。

   エ マイクロシリンジ(注7)

     1~200μlを採取できるもの。精度の確認がされたものを用いる。

  (2) 分析装置

    次の分析装置のいずれかを用いることとする。

  1.    ア ガスクロマトグラフ
         光イオン化検出器(注8)を用いるガスクロマトグラフ、水素イオン化検出器を用いるガスクロマトグラフ、電子捕獲型検出器を用いるガスクロマトグラフ又は電気伝導度検出器を用いるガスクロマトグラフとする。2種類以上の検出器を組み合わせて用いるガスクロマトグラフとすることもできる。
  2.    イ ガスクロマトグラフ質量分析計
  •    (注7) ガスタイトシリンジ及びマイクロシリンジは、空試験用、低濃度測定用、高濃度測定用の3本(同一ロットのもの)を用意することが望ましい。
  •    (注8) 光イオン化検出器のUVランプは、調査対象物質を検出できるものとする。
          例:10.2eV、11.7eV

 4 操作

  (1) 直接捕集法の場合

    減圧捕集瓶法、減圧捕集瓶を用いた食塩水置換法又は捕集バック法(以下「直接捕集法」という。)により土壌ガスを採取した場合には、その一定量を正確に分取して分析装置に導入し、分析結果を記録する。
    土壌ガスの導入量は0.2~1mlとし、5(1)により作成した検量線の範囲内に入るように調節する。ただし、0.2~1mlの導入量では検量線の範囲内に入らない場合には、調査対象物質を含まない空気により土壌ガスを希釈したものを分析装置に導入する。
    土壌ガス中の調査対象物質の濃度は、クロマトグラムから当該物質のピーク面積又はピーク高さを測定し、5(1)により作成した検量線と比較して求める。

  (2) 捕集濃縮管法の場合

    捕集濃縮管法により土壌ガスを採取した場合には、土壌ガスを採取した捕集濃縮管を気化導入管に接続し、熱脱着装置で気化させた気体の全量を分析装置に導入し、分析結果を記録する。ただし、この導入量では検量線の範囲内に入らない場合には、捕集濃縮管法による試料の採取を第1の3(4)オに定める方法より土壌ガスの吸引量を少なくして行うこと等により検量線の範囲内に入るようにして、再度の分析を行うこととする。なお、分析装置の分析条件はあらかじめ設定しておく。
    土壌ガス中の調査対象物質の濃度は、クロマトグラムから当該物質のピーク面積又はピーク高さを測定し、5(2)により作成した検量線と比較して求める。

 5 検量線の作成

  (1) 直接捕集法の場合

  1.    ア 検量線用ガス瓶について漏れ試験を行う。また、一度使用した検量線用ガス瓶を再度使用する場合には、分析の妨害となる物質を除去する。
  2.    イ 検量線用ガス瓶を1kPa(7.5mmHg)以下に減圧する。
  3.    ウ 混合標準液5μl(調査対象物質がベンゼンである場合には、3μl)をマイクロシリンジで量り採り、検量線用ガス瓶に注入する。
  4.    エ 検量線用ガス瓶の弁を開放し、調査対象物質を含まない空気を流入させて検量線用ガス瓶内の圧力状態を大気圧に戻した後、弁を閉じて密閉する。このとき、混合標準液は気化した状態となり、各第一種特定有害物質の濃度(0℃、1気圧換算)は別表2のとおりとなる。これを標準ガスとする。
  5.    オ ア~エと同様の操作により、エの標準ガスを上回る2水準以上の濃度(注9)の標準ガスを調製する。
  6.    カ エ及びオの計3水準以上の標準ガスを分析装置に導入し、調査対象物質についての検量線(気体の量とピーク高さ又はピーク面積との関係線)を作成する。検量線の作成は、土壌ガスの分析時に併せて行う。

  (2) 捕集濃縮管法の場合

  1.    ア 検量線用ガス瓶について漏れ試験を行う。また、一度使用した検量線用ガス瓶を再度使用する場合には、分析の妨害となる物質を除去する。
  2.    イ 検量線用ガス瓶を1kPa(7.5mmHg)以下に減圧する。
  3.    ウ 混合標準液の原液30μlをマイクロシリンジで量り採り、検量線用ガス瓶に注入する。
  4.    エ 検量線用ガス瓶の弁を開放し、調査対象物質を含まない空気を流入させて検量線用ガス瓶内の圧力状態を大気圧に戻した後、弁を閉じて密閉する。このとき、混合標準液の原液は気化した状態となり、これを検量線の作成のための標準ガスとする。
  5.    オ エの標準ガスを検量線用捕集濃縮管に1ml(調査対象物質がベンゼンである場合には、0.5ml)注入し、これを標準試料とする。このとき、標準試料中の各第一種特定有害物質の物質量及びこれが100mlの土壌ガスに含まれているとした場合の当該土壌ガス中の第一種特定有害物質の濃度は、別表3のとおりとなる。
  6.    カ ア~オと同様の操作により、オの標準試料を上回る2水準以上の濃度(注10)の標準試料を調製する。
  7.    キ オ及びカの計3水準以上の標準試料が注入された検量線用捕集濃縮管を気化導入管に接続し、熱脱着装置で気化させた気体の全量を分析装置に導入し、調査対象物質についての検量線を作成する。検量線の作成は、土壌ガスの分析時に併せて行う。

  (3) 混合標準ガスを試薬として用いる場合

    混合標準液の原液に代えて混合標準ガスを試薬として用いる場合には、(1)又は(2)の方法に準じて、(1)又は(2)と同程度の3水準以上の濃度の標準ガス又は標準試料を作成し、これらについて調査対象物質についての検量線を作成することとする。

  •    (注9) 2水準とする場合の濃度は、(1)エの標準ガスの5倍及び50倍程度を目安として、分析装置の定量範囲内で設定する。
  •    (注10) 2水準とする場合の濃度は、(2)エの標準試料の5倍及び50倍程度を目安として、分析装置の定量範囲内で設定する。

 6 定量及び計算

   土壌ガス中の調査対象物質の濃度は、次式を用いて体積濃度(単位volppm)で算出し、有効数字を2桁として3桁目以降を切り捨てて表示する。定量下限値は、ベンゼン以外の調査対象物質については0.1volppm、ベンゼンについては0.05volppmとし、これらの濃度未満の場合を不検出とする。

    C=(Vc/Vs)×103
     C:土壌ガス中の調査対象物質の濃度(volppm)
     Vc:検量線から求めた土壌ガス中の調査対象物質の量(μl)
     Vs:分析に用いた土壌ガスの量(ml)

別表

特定有害物質 GC―PID(*) GC―FID GC―ECD GC―ELCD GC―MS
10.2eV 11.7eV
四塩化炭素 ×
1,2―ジクロロエタン ×
1,1―ジクロロエチレン
シス―1,2―ジクロロエチレン
1,3―ジクロロプロペン
ジクロロメタン
テトラクロロエチレン
1,1,1―トリクロロエタン ×
1,1,2―トリクロロエタン ×
トリクロロエチレン
ベンゼン × ×
  •  (*)GC―PIDについては、10.2eV及び11.7eVのUVランプの場合を例示している。
特定有害物質 混合標準液5μl注入時の濃度(volppm) 混合標準液3μl注入時の濃度(volppm)
四塩化炭素 0.036
1,2―ジクロロエタン 0.056
1,1―ジクロロエチレン 0.057
シス―1,2―ジクロロエチレン 0.057
1,3―ジクロロプロペン 0.050
ジクロロメタン 0.065
テトラクロロエチレン 0.033
1,1,1―トリクロロエタン 0.042
1,1,2―トリクロロエタン 0.042
トリクロロエチレン 0.042
ベンゼン 0.043
特定有害物質 検量線用捕集濃縮管に1ml注入時の物質量(μl) 検量線用捕集濃縮管に0.5ml注入時の物質量(μl) 100mlの土壌ガスに含まれる場合の濃度(volppm)
四塩化炭素 0.0036 0.036
1,2―ジクロロエタン 0.0056 0.056
1,1―ジクロロエチレン 0.0057 0.057
シス―1,2―ジクロロエチレン 0.0057 0.057
1,3―ジクロロプロペン 0.0050 0.050
ジクロロメタン 0.0065 0.065
テトラクロロエチレン 0.0033 0.033
1,1,1―トリクロロエタン 0.0042 0.042
1,1,2―トリクロロエタン 0.0042 0.042
トリクロロエチレン 0.0042 0.042
ベンゼン 0.0043 0.043