法令・告示・通達

瀬戸内海環境保全臨時措置法の施行について

  • 公布日:昭和49年1月9日
  • 環水規5号

(瀬戸内海関係府県知事・各政令市市長あて環境事務次官通達)

 公共用水域の水質の汚濁の防止を図るため、第六十四回国会において、水質汚濁防止法(昭和四十五年法律第百三十八号。以下「防止法」という。)が制定され、その後厳しい排水規制を行つてきたところであるが、瀬戸内海においては、依然として赤潮が多発し、その範囲も広域化する等水質汚濁が深刻な問題となつている。このため、第七十一回国会において瀬戸内海環境保全臨時措置法(昭和四十八年法律第百二十号。以下「法」という。)が制定された。
 本法は、昭和四十八年十月二日に公布され、同年十一月二日に施行された。これに伴い瀬戸内海環境保全臨時措置法施行令(昭和四十八年政令第三百二十七号。以下「令」という。)、瀬戸内海環境保全審議会令(昭和四十八年政令第三百二十八号。以下「審議会令」という。)及び瀬戸内海環境保全臨時措置法施行規則(昭和四十八年総理府令第六十一号。以下「規則」という。)が、昭和四十八年十月二十九日にそれぞれ公布され、いずれも昭和四十八年十一月二日から施行された。
 今後の瀬戸内海の環境保全については、本法の運用に万全を期することが極めて肝要であると考えられるので、貴職におかれては、下記事項に十分御留意のうえ、瀬戸内海の環境保全行政に遺憾なきを期せられたい。
 以上、命により通達する。

一 本法の性格及び本法制定の趣旨

  本法は施行の日から三年以内の別の法律で定める日に効力を失う時限立法である(法附則第四条)。本法制定の趣旨は、この三年間のうちに政府に対し、瀬戸内海の環境保全の基本となるべき計画を策定すべきことを義務づけるとともに、当該計画が策定されるまでの間における瀬戸内海の環境の一層の悪化を防止するための当面の措置として、排水規制の強化、特定施設の設置の規制等に関し特別の措置を定めることである(法第一条)。

二 本法の規制対象範囲

 (一) 瀬戸内海の範囲

   本法が対象とする瀬戸内海の範囲は、法第二条第一項各号に掲げる直線及び陸岸によつて囲まれた海域(これは漁業法(昭和二十四年法律第二百六十七号)第百九条第二項に規定する瀬戸内海の範囲と同じである。)及びこの海域と一体的に環境の保全を図る必要がある海域として令第一条各号に掲げる直線及び陸岸によつて囲まれた海面であり、豊後水道及び響灘の一部がこれに含まれる。

 (二) 関係府県の範囲

   瀬戸内海の関係府県は、大阪府、兵庫県、和歌山県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、福岡県及び大分県の十一府県であるが、今後必要があれば、瀬戸内海の環境の保全に関係がある府県を追加する余地が残されている(法第二条第二項)。

三 基本計画の策定

  政府は、瀬戸内海の環境保全の重要性にかんがみ、瀬戸内海の環境保全上有効な施策の実施を推進するため、すみやかに、瀬戸内海の水質の保全、自然景観の保全等に関し、瀬戸内海の環境の保全に関する基本となるべき計画を策定しなければならないものとされている(法第三条)。
  この基本計画は、本法が三年以内の時限立法であることから法の失効する日までの可及的にすみやかな時期に策定しなければならないものである。なお、この基本計画が策定された段階において、既に策定された公害対策基本法(昭和四十二年法律第百三十二号)第十九条に定める公害防止計画は見直されるものである。

四 当面の措置

  三の基本計画が策定されるまでの間における当面の措置として、法は排出水の排出の規制の強化と特定施設の設置及び変更の許可制並びに埋立等についての特別の配慮に関する規定を定めている。

 (一) 排出水の排出の規制の強化

  ア 汚濁負荷量の割当て

    瀬戸内海の水質保全を図るため、瀬戸内海及びこれに接続する海域以外の公共用水域に排出される産業排水に係る化学的酸素要求量で表示した汚濁負荷量を、昭和四十七年当時の二分の一程度に減少させることを目途として、環境庁長官が関係府県ごとに汚濁負荷量の限度量を割り当てることとしている(法第四条第一項)。
    ここで産業排水とはいわゆる家庭排水以外の排水をいい防止法における規制対象業種に係る排水には限られない。環境庁長官は、昭和四十七年当時の汚濁負荷量の算定、関係府県への割当て等を瀬戸内海環境保全審議会における議を経て法の施行の日から三月以内に行わなければならない(法第四条第三項)。

  イ 上乗せ排水基準の設定

    関係府県は、現在の汚濁負荷量を法の施行の日から三年以内にアで割当てられた汚濁負荷量の限度まで段階的に減少させるため防止法第三条第三項の規定に基づく上乗せ排水基準を設定しなければならない(法第四条第二項)。
    既に上乗せ排水基準を設定している府県においては、アの割当てが行われた段階において見直しを行うこととなる。なお、上乗せ排水基準を新たに設定する場合、又はその見通しを行う場合には、アの割当てが行われてから可及的すみやかに行うこととし、汚濁負荷量の削減が確実に行われるよう措置されたい。

 (二) 特定施設の設置及び変更の許可制

   瀬戸内海の水質汚濁が深刻なことにかんがみ、(一)の排出規制の強化に加え今後の特定事業場の新規立地、増設を厳しく規制する必要があり、本法においては、特定施設の設置及び当該特定施設の構造等重要事項の変更については府県知事の許可を必要とすることとされた(法第五条第一項、第八条第一項)。

  ア 対象区域

    特定施設の設置変更につき許可を要する区域は、本法が瀬戸内海の環境の保全を図ることを目的とする法律であるところから、関係府県の区域のうち、日本海側等の区域を除いた区域とした(法第五条第一項、令第二条)。
    なお、許可を要する区域以外の区域における特定施設の設置、変更等は従来通り防止法の適用を受けることとなる。

  イ 特定施設

    許可を必要とする特定施設は、防止法第二条第二項にいう特定施設のうち「下水道終末処理施設」、「地方公共団体が設置するし尿処理施設」及び「地方公共団体及び廃油処理事業者が設置する廃油処理施設」の三施設を除いたものである(法第五条第一項、令第三条)。また、排出水の一日当たりの最大量が五十立方メートル未満である工場又は事業場に設置される防止法上の特定施設も本法の特定施設から除外されている(法第五条第一項)。

  ウ 設置の許可

    特定施設を設置しようとする者は申請書を府県知事に提出して許可を受けなければならない(法第五条第一項)。
    申請書の記載事項は防止法と同様であるが排出される汚濁負荷量の増大を抑制するとともに排出水の排出の規制の強化の規定を実効あるものにする必要から、排出水の一日当たりの最大量を特掲するとともに、これを変更する際には後述の許可を必要とすることとされた(法第五条第二項第七号)。

  エ 変更の許可

    ウの許可を受けた者が特定施設の構造、特定施設の使用の方法、汚水等の処理の方法及び排出水の一日当たりの最大量を変更しようとする際には、ウと同様関係府県知事の許可を受けなければならない(法第八条第一項)。
    なお、変更の事項のうち、軽微な部分については許可を要せず届出のみで足りることとしている(法第八条第一項。規則第七条第一項)。

  オ 事前評価
  1.    (ア) ウ及びエの許可を受けようとする者は、申請書に事前評価に関する事項を記載した書面を添付しなければならない(法第五条第三項、法第八条第三項)。
         この事前評価の制度は、当該特定施設の設置、変更を許可にかからしめたことから、その設置・変更によつて環境に著しい支障を生じさせないことを施設の設置又は変更をしようとする者が立証することを義務づけたものである。
  2.    (イ) 事前評価に関する事項については、当該特定事業場の排水口以降の状態について記載させることとした(法第五条第六項、法第八条第三項。規則第四条)。また、規則第四条第一項第二号又は第三号の事項に関する資料について設置・変更をしようとする者から要求があつた場合には、府県知事は、その資料を提供することとされたい。
         なお、事前評価すべき項目は当該水域の環境基準の項目、排水基準の項目とするが、これ以外の項目についても必要があれば事前評価を行なうことは当然である規則第四条第二項)。
  3.    (ウ) 告示・縦覧等
    1.     ① 府県知事は、申請書の概要をすみやかに告示するとともに事前評価の書面を三週間公衆の縦覧に供しなければならない(法第五条第四項、第八条第三項)。
    2.     ② また、府県知事は①の告示をしたときは、遅滞なく、その旨を関係府県知事及び関係市町村の長に通知するとともに期間を指定してその意見を求めなければならない(法第五条第五項、第八条第三項)。ここで関係市町村の範囲は、当該特定事業場の所在地のある市町村隣接市町村河川の下流域市町村等があげられるが、設置変更しようとする特定施設の種類、規模、それぞれの流域の実情等によつて範囲を考慮する必要がある。また、この期間は縦覧期間が三週間であることから少くとも三週間は必要である。なお、当該関係府県知事、関係市町村の長はできるだけすみやかに意見を提出するよう努められたい。
    3.     ③ 当該特定施設の設置変更に関し利害関係を有する者は、縦覧期間満了の日までに事前評価に関する事項についての意見書を府県知事に提出することができる(法第五条第六項、第八条第三項)。
  カ 許可の基準

    許可の申請に対し、府県知事は申請書及び事前評価の内容を審査し、また関係府県知事、関係市町村の長及び利害関係を有する者の意見を参考にして許可をするかどうかを判断することになる。この場合、当該特定施設が廃棄物の処理を目的とする工場又は事業場に係るものであるか又は当該特定施設からの汚水等の排出が瀬戸内海の環境を保全する上において著しい支障を生じさせるおそれがないものである場合でなければ許可をしてはならないとされている(法第六条第一項、第八条第三項)。また、府県知事は前者に係る特定施設について許可をする際にも当該特定施設を設置、変更することが環境に及ぼす影響について十分配慮しなければならない(法第六条第二項、法第八条第三項)。なお、これらの要件の判断は、上記事前評価の結果のほか、関係府県ごとの法第四条第一項の規定により定められる汚濁負荷量の限度量等を勘案しつつ行うべきであり、その結果、環境に悪影響を及ぼす場合には許可をしないこととなる。

  キ 違反に対する措置命令

    許可を受けないで特定施設を設置、変更した者に対して、府県知事は当該特定施設の除却、操業の停止その他、当該違反を是正するために必要な措置をとるべき旨を命ずることができる(法第十一条)。ここでその他の必要な措置とは原状回復を目指すものであり、当該特定施設の使用の停止が考えられる。

 (三) 埋立て等についての特別の配慮

   関係府県知事は、瀬戸内海における公有水面埋立法第二条第一項の免許又は同条第四十二条第一項の承認については、法第三条の瀬戸内海の特殊性につき十分配慮しなければならない(法第十三条第一項)。また、この規定の運用についての基本的な方針に関しては、瀬戸内海環境保全審議会において調査審議するものとされた(法第十三条第二項)。
   ここで、瀬戸内海の特殊性とは「瀬戸内海がわが国のみならず世界においても比類のない美しさを誇る景勝地として、また、国民にとつて貴重な漁業資源の宝庫として、その恵沢を国民がひとしく享受し、後代の国民に継承すべきものである」(法第三条)ことをいう。

 (四) 特定施設の届出

   本法においては、防止法の届出規定の適用を排除したことにより(法第十二条第一項)、許可を必要としない事項についての届出規定及び経過措置に係る届出規定が置かれている。

  ア 軽微な変更に係る届出

    特定施設の構造等の変更のうち、従来防止法により届出することとされていたその他参考となるべき事項についての変更は届出のみで足りる(法第八条第一項ただし書及び第四項。規則第七条)。

  イ 氏名等の変更・承継に係る届出

    氏名等の変更、特定施設の使用の廃止、承継については、防止法と同様の届出規定が置かれた(法第九条、第十条。規制第八条、第九条)。

  ウ 経過措置に係る届出
  1.    (ア) 特定施設の追加による経過措置
         一の施設が特定施設となつた際、当該特定施設を設置している者は、法第五条第一項の許可を受けたものとみなす(法第七条第一項)とともに、防止法第六条と同様の届出規定が置かれた(法第七条第二項、規則第五条)。
  2.    (イ) 鉱山等に係る経過措置
         本法の施行時に既に防止法第五条及び第六条の規定による届出をした者については、当該特定施設について法第五条の許可を受けたものとみなしている(法附則第二条第一項)。ただし、防止法第九条の実施の制限を受けている者については、その制限期間を経過したときに当該許可を受けたものとみなされる(法附則第二条第三項)。また、鉱山保安法第八条第一項に規定する建築物、工作物その他の施設である特定施設、電気事業法第二条第七項に規定する電気工作物である特定施設及び海洋汚染防止法第三条第九項に規定する廃油処理施設である特定施設については、従来、防止法第二十三条第二項により防止法の届出の規定の適用が排除されていたが、本法においてはこれらの施設はその一部を除き、設置、変更の許可が必要な特定施設であるとされたので、法の施行時に既にこれらの施設を設置しており、これらの法律による認可等を受けている者については、その経過措置として法第五条第一項の許可を受けたものとみなすとともに(法附則第二条第四項)、法の施行の日から三十日以内に法第五条第二項第五号から第七号までに掲げる事項を府県知事に届出させることとされた(法附則第二条第五項、規則第十条)。

 (五) 報告徴収・立入検査

   府県知事は、法第五条から第十一条までの規定の施行に必要な限度において、防止法第二十二条第一項に規定する報告徴収・立入検査の権限を有する(法第十二条第二項)。
   その他の分野については、防止法の規定に委ねられており防止法の施行として報告徴収、立入検査を行うこととなる。

五 その他の当面の措置

 四で述べた措置が本法が定めている主要な当面の措置であるが、その他瀬戸内海の環境を保全するうえで重要な措置を講ずべきことを国等に義務づけている。

 (一) 下水道及び廃棄物の処理施設の整備等

   国及び地方公共団体は、瀬戸内海の汚染の現状にがんがみ、下水道及び廃棄物の処理施設の整備、汚でいのしゆんせつ、水質の監視又は測定のための施設及び設備の整備その他瀬戸内海の水質の保全のために必要な事業の促進に努めなければならない(法第十四条)。また、国は、この事業を実施する者に対し、財政上の援助、必要な資金の融通又はあつせんその他の援助に努めなければならないものとし(法第十五条)、瀬戸内海における各種の施設整備等について国等が特別に配慮すべき旨を定めている。

 (二) 瀬戸内海浄化のための事業に関する計画の設定

   政府は、瀬戸内海の水質の浄化のための大規模な事業に関する計画を設定するよう努めるものとし、そのための技術開発等を促進するとともに、必要な財政上の措置を講ずるものとし(法第十六条)、瀬戸内海の水質汚濁を根本的に解決できるような大規模事業のための技術開発の促進等を政府に義務づけている。

 (三) 技術開発の促進

   政府は赤潮の発生の防除技術、船舶内における油の処理技術等瀬戸内海の環境保全のための技術の開発に努め、その結果に基づき、必要な措置を講ずるものとし(法第十七条)、主として赤潮及び油による漁業被害をなくすための技術開発を政府に義務づけている。

 (四) 排出水に係る量規制の導入

   政府は、瀬戸内海及びこれに接続する海域以外の公共用水域において量規制の導入についてすみやかに必要な措置を講ずるものとされている(法第十八条)。

 (五) 赤潮等による漁業被害者の救済

   赤潮、油等による漁業被害を受けた者に対し、政府は、すみやかに救済のための必要な措置を講ずるものとし(法第十九条)、漁業被害救済のため積極的に必要な措置を講ずるよう政府に義務づけている。

六 勧告・助言

  環境庁長官は、本法の適正かつ円滑な運用を促進するために必要があると認められるときは、関係府県知事に対し、必要な勧告又は助言をすることができ、その勧告によつてとられた措置について、報告を求めることができることとされている(法第二十条)。

七 事務の委任

 (一) 市長への事務の委任

   本法においては、関係府県知事の権限に属する事務は、政令によつてこれをさらに市長に委任することができることとしている(法第二十三条)。
   本法が関係府県ごとの汚濁負荷量の限度量を達成・維持することができるようにすることもあつて、特定施設の設置等につき許可制を採用しているところから、府県と委任市との間で緊密な連絡をとる必要があるので、当面、府県と市との間でこの間の調整を了した市に対してのみ知事の権限を委任することとし、今回は、大阪市、神戸市及び北九州市の三市が委任市とされた(令第四条)。

 (二) 委任事務の範囲

   委任された事務の範囲は、本法による府県知事の権限に属する事務のすべてである(令第四条)。

 (三) 府県知事の指揮監督等

   本法の規定によつて府県知事の権限に属するものとされた事務は、いわゆる国の機関委任事務であり、従つて、事務が委任された市長に対しては、当該府県知事が指揮監督等を行なう(地方自治法第百四十六条第十二項)。

八 瀬戸内海環境保全審議会

  本法においては、瀬戸内海の環境保全に関する重要事項を調査審議するため、環境庁に、瀬戸内海環境保全審議会(以下「審議会」という。)を置くこととされた(法第二十三条第一項、第二項)。

 (一) 権限の範囲

   審議会は、環境庁長官又は関係大臣の諮問に応じ、瀬戸内海の環境の保全に関する重要事項を調査審議する(法第二十三条第二項)。また、当該重要事項について、環境庁長官又は関係大臣に意見を述べることができる(法第二十三条第三項)。
   重要事項とは、おおむね次に掲げる事項である。

  1.   ア 基本計画の策定(法第三条)
  2.   イ 汚濁負荷量の関係府県への割当て(法第四条第一項)
  3.   ウ 埋立てに関する基本的方針の策定(法第十三条第二項)
  4.   エ その他重要事項

 (二) 組織

   審議会は、①関係行政機関の職員、②関係府県知事、③関係市町村の長を代表する者及び④学識経験者のなかから内閣総理大臣が任命する四十人以内の委員で組織される(法第二十三条第四項)。また、委員は、非常勤である(法第二十三条第五項)。

九 経過措置

  本法の施行前にした行為及び防止法第八条の規定による命令又は同法第九条第一項の規定による実施の制限に関し本法の施行後にした行為に対する罰則の適用については、なお、従前の例によるものとされた(法附則第三条)。

一〇 本法の失効

  本法は施行の日から起算して三年以内(昭和五十一年十一月一日以前)に別に法律で定める日に失効する時限立法である(法附則第四条)。

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