法令・告示・通達

水質汚濁防止法の施行について

公布日:昭和46年09月20日
環水管24号

[改定]
平成元年10月19日 環水規第281号

(環境庁水質保全局長から各都道府県知事あて(権限委任市長))

 水質汚濁防止法(以下「法」という。)の施行については、先に昭和46年7月31日付環水管第12号をもって環境事務次官名により通達したところであるが、同通達において別途通達することとされている事項および、その他の事項については、下記により運用することとされたい。

Ⅰ 総理府令で定める排水基準関係

 1 1日の排出水の平均的な汚染状態

   排出基準を定める総理府令(以下「府令」という。)別表第2の備考1(別表第3の備考3において準用する場合を含む。)中の「1日の排出水の平均的な汚染状態」とは、1日の操業時間内において排出水を3回以上測定した結果の平均値として取扱うこととする。この場合、操業開始直後および操業終了直前において排出水が排出されている時点を必らず含むものとする。
   なお、終日操業している場合は、1日につき夜間を含め3回以上測定するものとする。

 2 1日当たりの平均的な排出水の量

   府令別表第2の備考2(別表第3の備考3において準用する場合を含む。)中の「1日当たりの平均的な排出水の量」の算定は、次により行なうこととする。

  1.   (1) 正常に操業している時点において1日1回、週3日以上操業状態が異なる時期を含むようにして流量測定を行ない、次式により求めた量を1日当たりの平均的な排出水の量とする。
         なお、季節的に大巾に排水量が変動する場合は、通常の操業時期を対象とする。

       図:1日当たりの平均的な排出水の量の計算式

    Q:1日当たりの平均的な排出水の量(m3/day)
        qn:実測流量(m3/sec)
        tn:qnの測定を行なった日の実質操業時間(sec)
        n:測定回数

  2.   (2) 年間を通じてほぼ恒常的な操業を行ない、かつ、使用水が水道のみによる場合は、(1)にかかわらず、次式によることができる。

       図:年間を通じて操業を行なった場合の1日当たりの平均的な排出水の量の計算式

        QT:1ケ月間の水道使用量
        Qo:製造過程等で明らかに消費される水量(実測若しくは、生産量によって明らかに消費水量が把握できる場合に限る。)
        n:1ケ月間の操業日数

 3 「海域」および「湖沼」の範囲

   府令別表第2の備考4(別表第3において準用する場合を含む。)における海域および湖沼と海域および湖沼以外の公共用水域との境界については、概ね次により判断することとする。

  1.   (1) 海域と海域以外の公共用水域との境界
    1.     ア 海域と接続する海域以外の公共用水域が河川法(昭和39年法律第167号)第4条第1項の1級河川である場合には、同法施行令(昭和40年政令第14号)第5条第2項の河川現況台帳の図面に記載されているところをもって、海域との境界とする。
    2.     イ 当該公共用水域がアの河川以外の河川である場合にあっては、次による。
      1.      (ア) 河口において、突堤または防波堤が突出している場合は、両岸の突堤または防波堤の先端を結んだ線をもって、海域との境界とする。
      2.      (イ) 河口において河川護岸または河川堤防と海岸堤防とが明らかに区別できる場合は、両岸の河川護岸、または河川堤防の先端を結んだ線をもって、海域との境界とする。
      3.      (ウ) (ア)および(イ)に該当しない河川等にあっては、左右岸の河川堤防法線または河川部分の水際線を海域に延長した線と海岸部における通常の干潮時の汀線との交点を結んだ線をもって、海域との境界とする。
    3.     ウ 河口部が河川区域であると同時に港湾法(昭和25年法律第218号)第2条第3項の港湾区域または漁港法(昭和25年法律第137号)第2条の漁港である場合であって、港湾または漁港以外の河川区域に対し港湾区域または漁港である部分の巾が大巾に拡大し、流水が停滞性を示しているときは、上記、アおよびイにかかわらず、当該河口部は海域として取扱う。
  2.   (2) 湖沼と湖沼以外の公共用水域との境界
         (1)のイの(ウ)に準じて判断することとする。この場合において、湖沼の汀線は渇水時の汀線とする。なお、人造湖の場合にあっては、その上流端は、渇水時のバックウオーターの終端とする。
  3.   (3) 海域または湖沼に接続する公共用水域である公共下水道または都市下水路
         公共用水域である公共下水道または都市下水路から直接海域または湖沼に水が放流されている場合は、当該公共下水道または都市下水路は、海域または湖沼として取扱うこととする。

Ⅱ 上乗せ排水基準の設定の通知

  法第3条第5項の規定による環境庁長官への通知は、別記様式1により行なうこととする。

Ⅲ 排出水の汚染状態の届出

  特定施設の設置の際の届出事項のうち、排出水の汚染状態については、当該排出水に係る排水基準に定められた事項についてのみ届け出れば足りる(水質汚濁防止法施行規則第3条第3項第5条)。従って、府令別表第2に掲げる項目については、1日当たりの平均的な排出水の量が50立方メートル未満である工場または事業場にあっては、当該工場または事業場に上乗せ排水基準が設定されている場合を除き、当該項目に係る排出水の汚染状態を届け出る必要はない。この旨、十分指導されたい。

Ⅳ 他工場の排水路への排出

  他工場の排水路を利用して水を排出する工場または事業場についての特定施設の設置の届出および排水基準の適用関係は、次のとおりとする。

 (1) 特定施設の設置の届出

    法において、特定施設の設置の届出を要するのは、「公共用水域」に水を排出するときである。図において、乙工場が甲工場の排水路aに水を排出している場合、乙工場は直接には排水路aに水を排出しているが、排水路aを利用して公共用水域cに水を排出しているものとして取扱う。従って、乙工場も特定施設の設置の届出義務を負う。

 (2) 排水基準の適用

    排水基準は、排水口における排水の汚染状態につき適用される。従って、図において、排水基準は、水が公共用水域に排出される地点、すなわちA点において適用される。
    この場合、甲、乙両工場に同じ排水基準が適用されているときは、A点における測定によって違反の有無が確かめられ、甲、乙いずれの工場が違反していたかは、その時点における操業状態、排水処理の状況X点およびY点の汚染状態等を調査して判断される。
    甲乙両工場に異なる排水基準が適用されているときは、法律上はA地点において排水基準への適合の有無が判断されるが、実際上A地点において甲工場および乙工場の排出水の汚染状態をそれぞれ測定することは困難であるので、行政上の取締りとしては、X点およびY点における排水の汚染状態をもって排水基準への適合の有無を判断するものとする。X点およびY点における測点が困難な場合は、これに代る合理的な地点における測定を行なうことが必要である。これにより、甲工場または乙工場のA地点における汚染状態が推定される。
    なお、法第14条第1項の排出水の汚染状態の測定については、図の場合、甲、乙両工場ヘ適用される排水基準の如何にかかわらず、甲工場はX点に至るまでの地点、乙工場はY点に至るまでの地点において行なうことが、合理的であるので、この旨指導されたい。
(図)

   図:排水基準

    C (公共用水域)
    また、甲工場と乙工場の排水が合流した後の地点に汚水等の処理施設があるときは、当該処理施設自体本法上の特定施設であり(法施行令別表第1第74号)、(1)の場合、当該処理施設の設置者が届出義務を負い、(2)の場合、当該処理施設から排出される水が公共用水域に排出されるA地点において排水基準への適合の有無が判断される。

Ⅴ 測定計画および公表

  1.  1 法第16条第1項の測定計画の作成にあたっては、次の点に留意されたい。
    1.   (1) 測定の対象水域は、水質汚濁に係る環境基準について(昭和45年4月21日閣議決定。以下「水質環境基準」という。)に掲げる基準項目のうち、イの健康の保護に係る基準項目に関しては、当該基準項目に係る水質の汚濁が生ずるおそれのある全公共用水域とし、生活環境の保全に係る基準項目に関しては、水域類型へのあてはめが行なわれた水域を優先させることとし、このほか、公共用水域の水質の汚濁の状況、利水の状況等を勘案して、対象水域を選定することとする。
    2.   (2) 測定地点、測定項目、測定方法および検定方法については、水質環境基準の第2および別に定める水質調査方法によることを基本としつつ、次によることとする。
      1.     ア 測定地点
        1.      (ア) 測定地点は、公共用水域の水質の汚濁の状況の常時監視の観点から必要な地点を選定するものとする。
        2.      (イ) 測定地点の選定にあたっては、国の地方行政機関および市町村と事前に十分協議し著しい重複、偏向が生じないように配慮するものとする。
        3.      (ウ) 従来の測定により、著しい水質の汚濁が認められた地点については、引き続き測定を行なうものとする。
      2.     イ 測定項目
              測定計画により国または市町村が測定を行なうこととされた測定地点につき、測定を必要とする項目のすべてについての測定が行なわれることとされていない場合は、協議のうえ、必要に応じ同一地点につき、測定が行なわれることとされていない当該項目について都道府県で測定を行なうものとする。この場合、測定方法、測定時期等について、他項目との斉合性を保つものとする。
      3.     ウ 測定方法
              国または市町村が、水質環境基準の第2および別に定める水質調査方法と異なる測定方法により測定を行なおうとするときは、できる限りこれらの方法によるものとするよう要請を行なうものとし、当該要請がうけいれられない場合は、都道府県において別途測定を行なうものとする。
      4.     エ 検定方法
              ウを準用する。
    3.   (3) 2以上の都道府県の区域に属する公共用水域の水質の測定計画の場合にあっては、測定地点、測定項目、測定時期等について、関係都道府県知事と事前に連絡を行ない、水域全体として有効な測定が行なわれるようにすることとする。
    4.   (4) 国および地方公共団体が測定計画に従って行なった測定の結果の都道府県知事への送件の様式、方法等については、測定計画において適宜定めることとする。
  2.  2 測定計画を作成したときは、別記様式2により、水質保全局長あてすみやかに通知されたい。年度途中においてこれを変更した場合も同様とする。
  3.  3 測定計画に従って行なわれた測定の結果については、原則として1年に1回、別記様式3により水質保全局長あて通知されたい。ただし、水質環境基準の人の健康の保護に係る項目について、水質環境基準をこえる測定結果が得られたときは、すみやかに水質保全局長に通知するとともに、当該水域に関し、公共用水域および排出水の双方につき、追跡調査を行なうものとする。
  4.  4 測定結果の公表は、年間を通じて行なう測定については、最終の測定が終了した後少なくとも3ケ月以内に行なうものとする。

   前文(抄)(昭和58年12月15日環水規第228号)
 本通達は昭和58年度の水質測定結果の報告から適用する。
   前文(抄)(平成元年10月19日環水規第281号)
 本通達は平成2年度の水質測定結果の報告から適用する。