法令・告示・通達

水質汚濁防止法の一部を改正する法律の施行について

  • 公布日:平成元年9月14日
  • 環水管188号

(都道府県知事・政令市長あて環境事務次官通知)
 水質汚濁防止法の一部を改正する法律(平成元年法律第三四号。以下「改正法」という。)は、第一一四回国会において成立し、平成元年六月二八日に公布され、同年一〇月一日から施行される(水質汚濁防止法の一部を改正する法律の施行期日を定める政令(平成元年政令第二三二号))。
 また、水質汚濁防止法施行令の一部を改正する政令(平成元年政令第二三三号)並びに水質汚濁防止法施行規則の一部を改正する総理府令(平成元年総理府令第四七号)及び水質汚濁防止法施行規則第六条の二に基づき環境庁長官が定める検定方法(平成元年環境庁告示第三九号。以下「告示」という。)がそれぞれ平成元年七月二八日、八月二一日に公布され、いずれも改正法の施行の日から施行される。
 本改正法は、有害物質による地下水汚染の未然防止及び有害物質の流出事故による環境汚染の拡大の防止を図るため、有害物質を含む汚水等の地下浸透規制、地下水の水質の監視測定、事故時の措置等に関する規定を整備するものであるが、貴職におかれては、左記事項に留意の上、改正法の施行に遺憾なきを期されたい。
 以上、命により通達する。

第一 改正法制定の趣旨

  地下水は、我が国の水使用量の約六分の一、都市用水の約三分の一を占め、水道を通じて全国約三、〇〇〇万人分に相当する飲料水となっているなど、身近にある貴重な水資源として広く活用されているほか、災害時等緊急時の水資源としても重要である。
  しかしながら、近年、トリクロロエチレン等の有機塩素化合物による広範な地下水の汚染が明らかとなっているが、地下水は、いったん汚染されるとその回復が困難なため、汚染の未然防止を図ることが何よりも重要である。また、有害物質の流出事故時における環境汚染の拡大の防止を図ることも重要な課題となっている。
  本改正法は、こうした状況に鑑み、有害物質による地下水汚染の未然防止及び有害物質の流出事故による環境汚染の拡大の防止を図るため、有害物質を含む汚水等の地下への浸透を禁止する等の措置を定めるとともに、地下水の水質の監視測定体制の整備、事故時の措置等に関して必要な措置を講ずるための規定を整備することとしたものである。

第二 目的規定の改正

  今回の法改正により、水質汚濁防止法(昭和四五年法律第一三八号。以下「法」という。)の目的として、「工場及び事業場から地下に浸透する水の浸透を規制すること等によって地下水の水質の汚濁の防止を図ること」が加えられた(法第一条)。
  改正前の法は、その目的として、「工場及び事業場から公共用水域に排出される水の排出を規制すること等によって公共用水域の水質の汚濁の防止を図ること」を主な内容としていたが、改正法では、地下水汚染の未然防止を図るための規定が格段に整備されたことから、法の目的として、「地下水の水質の汚濁の防止を図ること」を明記することとされたものである。
  改正法において「地下水」とは、社会通念上「地下に存在する水」をいい、通常、自然の状態として地下に存在する水をいう。このため、地下水に該当しない例としては、下水道法(昭和三三年法律第七九号)上の下水道施設内の水がある。
  また、「浸透」とは、改正前の法第一九条の「しみ込み」と同義であり、「自己の管理の及ばない部分に出すこと(本法上の「排出」のこと)」のうち、「地下へ出すもの」をいい、加圧注入によるものも含む。なお、浸透は排出の一形態であるから、従来の排出の考え方と同様意図的なものによるか、非意図的なものによるかを問うものではない。

第三 地下浸透規制の対象

  法第一二条による排水規制の対象となる水は、特定事業場から公共用水域に排出される水(法に規定する「排出水」)すべてであるが、法第一二条の三による地下浸透規制の対象となる水は、「特定地下浸透水」であり、特定事業場から地下に浸透する水すべてをいうものではない。
  このため、改正法において、地下浸透規制の対象となる「特定地下浸透水」を「法第二条第二項第一号に規定する物質(以下「有害物質」という。)を、その施設において製造し、使用し、又は処理する特定施設(以下「有害物質使用特定施設」という。)を設置する特定事業場(以下「有害物質使用特定事業場」という。)から地下に浸透する水で有害物質使用特定施設に係る汚水等(これを処理したものを含む。)を含むものをいう。」と定義したものである(法第二条第五項)。
  また、有害物質使用特定施設は、水質汚濁防止法施行令(昭和四六年政令第一八八号。以下「令」という。別表第一に掲げる施設のうち、有害物質の製造、使用又は処理を目的とする特定施設のことをいい、個別の特定施設ごとに判断されることとなる。ここにおいて、「製造」とは、当該特定施設において、有害物質を製品として製造することをいい、「使用」とは、当該特定施設において、有害物質をその施設の目的に沿って原料、触媒等として使用することをいい、「処理」とは、当該特定施設において、有害物質又は有害物質を含む水を処理することを目的として有害物質を分解又は除去することをいう。このため、有害物質使用特定施設に該当しない例としては、令別表第一第七三号に掲げる下水道終末処理施設(下水道法施行令(昭和三四年政令第一四七号)第九条の三第二号に係る処理施設で有害物質を処理するものは除く。)、令別表第一第七二号に掲げる屎尿処理施設がある。
  また、「汚水等」とは、改正前の法第五条第六号に規定する「汚水等」と同義であり、「特定施設から排出される汚水又は廃液」をいう(法第二条第四項)。

第四 特定地下浸透水の浸透の制限

  有害物質使用特定事業場から水を排出する者(特定地下浸透水を浸透させる者を含む。)は、有害物質を含むものとして総理府令で定める要件に該当する特定地下浸透水を浸透させてはならない(法第一二条の三)。
  本規定は、改正前の法第一四条第五項の規定の趣旨を継承するものである。具体的には、有害物質を含む特定地下浸透水の地下への浸透を禁止することとするものである。この場合、「浸透」とは、意図的な地下への浸透行為によるもののほか、非意図的な原因による地下への浸透も含まれる。非意図的な原因による地下への浸透の例としては、排水管の破損による汚水等の漏出による地下浸透、事業場床面、排水処理施設のひび割れによる汚水等の地下への浸透等がある。なお、有害物質使用特定施設からの汚水等を素掘の汚水ます、沈澱池等へ貯水する場合は、汚水等が通常自然の状態として地下に浸透することから意図的な特定地下浸透水の地下への浸透となる。
  「有害物質を含むものとしての要件」とは、有害物質の種類ごとに環境庁長官が定める方法により特定地下浸透水の有害物質による汚染状態を検定した場合において、当該有害物質が検出されることをいい(水質汚濁防止法施行規則(昭和四六年総理府・通商産業省令第二号。以下「規則」という。)第六条の二)、具体的には告示で検定方法が定められ、「検出」の判断基準値が示されている。
  本規定を遵守すべき者は、法第五条第二項の届出義務を有する者に限られるものではない。改正前の法第一四条第五項の「排出水を排出する者」だけでなく、下水道に水を排除する者を含め、有害物質使用特定事業場から水を排出する者(特定地下浸透水を浸透させる者を含む。)すべてをいう。すなわち、有害物質使用特定事業場の設置者が水を公共用水域に排出しているか、下水道へ排除しているか、地下へ浸透させているかを問わず、すべて本規定を遵守する必要がある。
  なお、本規定の違反については、法第一二条の違反と異なり、直ちには罰則は科されないが、第五から第七までの措置によりその実効性が担保されるものである。

第五 特定施設設置前の措置

 (一) 有害物質使用特定施設の設置の届出

   工場又は事業場から有害物質使用特定施設に係る汚水等(これを処理したものを含む。)を含む水を地下に浸透させる者は、有害物質使用特定施設を設置しようとするときは、所要の事項を都道府県知事(法第二八条第一項に基づき事務の委任を受けた市の長を含む。第九の(二)を除き、以下同じ。)に届け出なければならない(法第五条第二項)。
   本規定は、有害物質を含む水の地下浸透を禁止する規定の実効性を担保するものであり、公共用水域に水を排出する者が特定施設を設置しようとする場合と同様有害物質使用特定施設に係る汚水等(これを処理したものを含む。)を含む水を地下に浸透させる者について、当該施設の設置に関し、事前届出制を設けるものである。
   届出(法第六条第一項による届出を含む。)を要する者は、意図的に地下に浸透させる者に限られている点に留意されたい。
   届出事項は、法第五条第二項に定める八事項についてであり、同条同項第八号に規定する事項としては、特定地下浸透水に係る用水及び排水の系統が定められている(規則第三条第二項)。
   特定地下浸透水を地下へ浸透させ、かつ、公共用水域にも水を排出する者にあつては、本規定及び法第五条第一項による届出の義務が生じる。この場合、記載内容が重複する届出事項にあつては、事業者にとって過重な負担とならないよう配慮し、図面等提出物は共通のものを使用して差し支えない。規則様式第一、様式第二、様式第三及び様式第四については、この趣旨を踏まえ様式変更したものである。

 (二) 計画変更命令等

   都道府県知事は、法第五条又は第七条の規定による届出があつた場合において、特定地下浸透水が有害物質を含むものとして総理府令で定める要件に該当すると認めるときは、その届出を受理した日から六〇日以内に限り、その届出をした者に対し、その届出に係る特定施設の構造若しくは使用の方法若しくは汚水等の処理の方法に関する計画の変更(法第七条の規定による届出に係る計画の廃止を含む。)又は法第五条の規定による届出に係る特定施設の設置に関する計画の廃止を命ずることができる(法第八条)。(「有害物質を含むものとしての要件」については第四を参照のこと。)
   本規定は、有害物質を含む水の地下浸透を禁止する規定の実効性を担保するためのものである。
   本規定の客体となる者は、法第五条又は第七条の届出をした者であるので、法第五条第一項の届出をした者についても、審査において、有害物質を含む水が地下へ浸透すると認めるときは、計画変更命令等を行うことができる。

第六 特定施設設置後の措置

 (一) 改善命令等

   都道府県知事は、法第一二条の三に規定する者、すなわち、有害物質使用特定事業場から水を排出する者(特定地下浸透水を浸透させる者を含む。)が、有害物質を含むものとして総理府令で定める要件に該当する特定地下浸透水を浸透させるおそれがあると認めるときは、その者に対し、期限を定めて特定施設の構造若しくは使用の方法若しくは汚水等の処理の方法の改善を命じ、又は特定施設の使用若しくは特定地下浸透水の浸透の一時停止を命ずることができる(法第一三条の二)。(「有害物質を含むものとしての要件」については第四を参照のこと。)
   本規定は、有害物質を含む水の地下浸透を禁止する規定の実効性を担保するためのものであり、法第一二条の三の規定と同様、漏出等非意図的な原因による地下への浸透の未然防止のためにも発令しうるものである点に留意されたい。
   本規定の客体となる者は、法第五条第二項の届出義務を有する者に限られるものではない。また、法第一二条及び改正前の法第一四条第五項の「排出水を排出する者」だけでなく、下水道に水を排除する者も含め、有害物質使用特定事業場から水を排出する者(特定地下浸透水を浸透させる者を含む。)(第四参照)すべてをいうものである。
   なお、本規定による改善命令等の適用に当たつては、法第一三条による改善命令等と十分に調整のとれたものとするとともに、下水道法第三七条の三による改善命令等とも十分調整のとれたものとすることが望ましい。

 (二) 立入検査、報告徴収

   都道府県知事は、有害物質を含む水の地下浸透を禁止する規定の実効性を担保するため、この法律の施行に必要な限度において、令第八条に定めるところにより、法第一二条の三に規定する者、すなわち、有害物質使用特定事業場から水を排出する者(特定地下浸透水を浸透させる者を含む。)に対し、特定施設の状況、汚水等の処理の方法その他必要な事項に関し報告を求め、又はその職員に、その者の特定事業場に立ち入り、特定施設その他の物件を検査させることができる。(法第二二条)。
   本規定の客体となる者は、法第五条第二項の届出義務を有する者に限られるものではない。また、法第一二条及び改正前の法第一四条第五項の「排出水を排出する者」だけでなく、下水道に水を排除する者も含め、有害物質使用特定事業場から水を排出する者(特定地下浸透水を浸透させる者を含む。)(第四参照)すべてをいうものである。
   立入検査の対象となる施設又は物件は、有害物質による地下水汚染の未然防止を図る観点から、有害物質使用特定事業場における特定施設、汚水等の処理施設及びこれらの関連施設(製造工程において特定施設に接続する機械又は装置、汚水等の導水施設、排水施設、地下浸透施設、排水口又は地下浸透施設までの排水路等である。)並びに特定施設において使用する原料(触媒等特定施設において使用する材料を含む。)及び関係帳簿書類等である(令第八条第二項)。
   法第一二条の三に規定する者に対し報告徴収できる事項は、有害物質使用特定施設の使用の方法、汚水等の処理の方法、特定地下浸透水の浸透の方法及び法第五条第二項第八号の規定に基づき総理府令で定める事項である(令第八条第一項)。具体的には、規則第三条第二項及び第五項に規定している事項である。

第七 特定地下浸透水の汚染状態の測定

  特定地下浸透水を浸透させる者は、総理府令で定めるところにより、当該特定地下浸透水の汚染状態を測定し、その結果を記録しておかなければならない(法第一四条第一項)。
  この場合、その測定義務を有する者は、法第五条第二項の届出義務を有する者と同様、特定地下浸透水を意図的に地下に浸透させる者に限られることに留意されたい。
  特定地下浸透水の汚染状態の測定は、告示に定める方法により行う(規則第九条第二号)。測定項目としては、主として、有害物質使用特定施設において製造し、使用し、又は処理する有害物質からみて、当該特定地下浸透水に含まれるおそれのある項目について測定することとなる。
  なお、測定に当たつては、浸透ます等の浸透施設において採水することとなる。
  測定の結果は、排出水の場合と同様水質測定記録表により記録し、その記録を三年間保存する必要がある(規則第九条第三号)。

第八 事故時の措置

  今回の法改正により、特定事業場の設置者は、当該特定事業場において、特定施設の破損その他の事故が発生し、有害物質を含む水が当該特定事業場から公共用水域に排出され、又は地下に浸透したことにより人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがあるときは、直ちに、引き続く有害物質を含む水の排出又は浸透の防止のための応急の措置を講ずるとともに、速やかにその事故の状況及び講じた措置の概要を都道府県知事に届け出なければならないこととされた(法第一四条の二第一項)。
  また、都道府県知事は、当該特定事業場の設置者が法第一四条の二第一項の応急の措置を講じていないと認めるときは、その者に対し、同項の応急の措置を講ずべきことを命ずることができるものとされた(法第一四条の二第二項)。

 (一) 事故の考え方

   「特定施設の破損その他の事故により、有害物質を含む水が当該特定事業場から公共用水域に排出され、又は地下に浸透したことにより人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがあるとき」は特定事業場の設置者はすべて都道府県知事への届出が必要である。この場合において、届出義務を有する者は、特定事業場の設置者すべてであり、事業場からの水を公共用水域に排出しているか下水道へ排除しているか、地下へ浸透させているかを問わない。
   また、この場合の「有害物質を含む水」とは、公共用水域への排水基準及び特定地下浸透水が有害物質を含むものとして総理府令で定める要件とは直接関係なく、当該事故により流出した水が有害物質を含むものである。
   「特定施設の破損その他の事故」については、人為的な事故に限らず、天災を含む不可抗力による事故を含む。

 (二) 事故の届出

   事故時の届出については、その緊急性に鑑み、当該事故発生後速やかに事故の状況及び講じた措置の概要を届け出ることを事業者に対し指導することとし、事故の発生の状況によつては、公共用水域及び地下水の水質の保全のため、当該事業者は応急の措置を講ずる前であつても速やかに都道府県知事に事故の状況を届け出るとともに、講じようとする措置についても届け出るよう指導し、事故対応の状況を把握するよう努められたい。
   なお、毒物及び劇物取締法(昭和二五年法律第三〇三号。以下「毒劇法」という。)第一六条の二の規定(毒劇法第二二条第四項及び第五項において準用する場合を含む。)により、毒物劇物営業者及び業務上取扱者は、毒物若しくは劇物又は毒劇法第一一条第二項に規定する政令で定める物についての事故の際の措置として、届出義務が課せられているところであるので、これに該当する場合には、各関係機関との連携を密にとり、事業者にとつて過重の負担とならないよう配慮されたい。

 (三) 応急措置及び応急措置命令

   「応急の措置」とは、事故が発生し、これによる引き続く有害物質を含む水の排出又は浸透の防止のための措置をいい、必ずしも原状復旧措置とは一致しない。具体的な応急措置の事例としては、破損した特定施設への有害物質の供給の停止、土のうの積み上げ等による公共用水域への流出の防止等の措置があげられる。
   また、「応急の措置を講じていないと認めるとき」とは、事故の内容に照らし、適切な応急措置が講じられていないと認める場合であり、何らかの応急の措置を講じている場合にあつても、その措置内容が適切なものでない場合には、適切な措置を講じるよう指導されたい。

 (四) 関係行政機関への連絡

   事故の届出を受けたときは、当該地域の河川管理者、下水道管理者、消防機関及び水道事業者等関係の各行政機関に直ちに通知するとともに、当該事故による水環境の汚染の状況によつては漁業団体等関係機関に対しても速やかに連絡することとされたい。
   また、事故により海域が汚染され、又は汚染されるおそれがあるときは、海上保安庁の事務所に直ちに通知されたい。
   このため、各自治体において従前より事故発生時の際の連絡体制を整備している場合は、今後ともこれを充実させることとし、未整備の自治体にあつては、早急に整備を図ることにより、関係行政機関と十分連携を保つて事案に対処されたい。

第九 地下水の水質の汚濁の状況の監視等

 (一) 都道府県知事による常時監視

   本改正法においては、公共用水域と同様、地下水の水質の汚濁の状況について都道府県知事に常時監視させることとしている(法第一五条)。これにより、地下水の水質の状況を把握し、汚染又は汚染の徴候の早期発見を行うとともに、汚染の広がり、経年変化等を把握し、地下浸透規制等の施策の効果を確認することとしたものである。
   ここでいう「常時監視」とは、従前の公共用水域における常時監視と同様、地下水の水質の監視義務が常に知事に帰属することを示す趣旨である。
   なお、この規定は、すべての測定を都道府県知事に義務付けるものではなく、具体的には、法第一六条第一項に基づき、各都道府県ごとに地域の実情に即して知事の作成する測定計画に従い、国、都道府県、市町村等が行う測定を当該都道府県知事のもとに集約するものであり、都道府県知事は、必要に応じ、対応可能な範囲内で測定を行うこととなる。
   また、常時監視に関する事務が、市長に委任された場合(法第二八条)にも、当該市の区域にある地下水につき当該都道府県知事が水質の測定を行うことを妨げるものではない。

 (二) 測定計画

   改正法においては、都道府県知事は、毎年、国の地方行政機関の長と協議して、国及び地方公共団体が行う地下水の水質の測定に関する計画(以下「地下水質測定計画」という。)を作成することとされている(法第一六条第一項)。これにより、都道府県知事が、各関係機関の行う地下水の水質の測定を統一的な観点から総合的に調整し、各関係機関の協力のもと統一的、効率的な常時監視を行うこととしたものである。
   地下水質測定計画に係る「国の地方行政機関」の範囲は、測定計画作成の趣旨に鑑み、地下水の水質の測定を実施する機関であるとして運用されたい。なお、「国の地方行政機関の長」には、建設省地方建設局長(北海道開発局長及び沖縄総合事務局長を含む。)等が含まれる。
   地下水質測定計画に定める測定すべき事項、測定の地点及び方法その他必要な事項については、別に通達するところによるものとする。
   地下水質測定計画の作成は、地下水の水質の汚濁の防止に関する重要事項であるので、都道府県公害対策審議会において、これについて審議するよう措置されたい。
   地下水質測定計画を作成したとき及び当該測定計画に従つて行われた測定の結果を取りまとめたときは、測定状況把握のため、遅滞なくその内容を、別に通達するところにより、水質保全局長あて通知されたい。

 (三) 測定の協力

   地方公共団体の長は、測定計画に基づく地下水の水質の測定を行うため必要があると認めるときは、井戸の設置者に対し、測定の協力を求めることができる旨を定めている(法第一六条の二)。
   本規定は、公共用水域の水質の測定の場合と異なり、地下水の水質の測定の実施に当たっては既存の井戸を用いて実施することが現実的であるため、民有の井戸について井戸の設置者の協力を得て実施することが必要となることから、地下水の常時監視を制度化するに当たって新たに設けられたものである。
   なお、井戸の設置者に対し、地下水の測定の協力を求める際には、その測定結果の公表方法を含めた取扱いについてあらかじめ提示し、了解を得るよう御配慮ありたい。

 (四) 公表

   都道府県知事は、測定計画に基づく測定の結果判明した地下水の水質の汚濁の状況については、国民がその状況を理解することが重要であることから、公共用水域と同様、これを公表しなければならない(法第一七条)。
   地下水の水質の測定は、井戸の設置者の協力を得て実施されるものが多いため、測定結果の公表に当たっては、今後の調査に支障をきたすこととならないよう井戸の所有者に対して測定結果の取り扱いについてあらかじめ了解を得る等の配慮が必要であるほか、汚染井戸の所有者が汚染原因者とは限らないことから、地下水の汚染状況が把握できる範囲で関係者の正当な利益の保護との関連も考慮し、適切な方法で行うことが必要である。
   具体的な地下水の水質の汚濁の状況の公表方法等については、別に通達するところにより、地域の実情を踏まえ適切に行われたい。ただ、測定計画を毎年作成することとされていることから、少なくとも年一回は公表する必要がある。

第一〇 適用除外

  1.  (一) 鉱山保安法(昭和二四年法律第七〇号)第八条第一項に規定する施設、電気事業法(昭和三九年法律第一七〇号)第二条第七項に規定する電気工作物又は海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律(昭和四五年法律第一三六号)第三条第一四号に規定する廃油処理施設である特定施設を設置する鉱山、工場又は事業場から排出水を排出し、又は特定地下浸透水を浸透させるものに関しては、法第五条から第一一条まで、第一三条の二第一項及び第一四条の二の規定を適用せず、それぞれ、鉱山保安法、電気事業法又は海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の相当規定によって地下浸透規制及び事故時の措置について措置させることとしている(法第二三条第二項)。
       地下浸透規制及び事故時の措置については、これら法律の許可制、届出制の体系の中で適切に行われるべきものと判断されたものである。
       この場合において、法第一二条の三、第一四条第一項及び第二二条第一項の規定については、本法の規定によるものとされていることに留意されたい。
  2.  (二) これらの法律を所管する国の行政機関の長と都道府県知事との間の事務の連携については、法第二三条第三項から第五項までに定められているが、今回の法改正に伴い、都道府県知事が法第一三条の二第一項の規定に相当する鉱山保安法又は電気事業法の規定による措置をとるべきことを要請することができるものとされた(法第二三条第四項)。

第一一 条例との関係

  今回の法改正により、法第二九条が改正されたが、これは、改正前の法第二九条において、地方公共団体が、工場・事業場等から排出される水に関し、条例で法による規制以外の必要な規制を定めることを妨げるものでないことを入念的に明らかにしていたことから、工場・事業場等から地下に浸透させる水についても、工場・事業場等から排出される水と同様に、条例で法による規制以外の必要な規制を定めることを妨げるものではないことを入念的に明らかにするため整理されたものである。なお、各号の規定は、条例で定めることのできる内容の例示であり、地方公共団体が有する条例制定権は各号の内容に限られるものではない。

第一二 その他

 (一) 無過失責任

   今回の法改正により、法第一九条及び第二〇条が改正されたが、これは、改正法において「排出」と「浸透」の用語を並列の概念として用いることとしたため整理されたものであり、実質的意義の改正を伴うものではない。

 (二) 都道府県公害対策審議会

   今回の法改正により、都道府県公害対策審議会の調査審議事項として、「都道府県の区域にある地下水の水質の汚濁の防止に関する重要事項」が追加された(法第二一条)。具体的には、

  1.   ア 地下水質測定計画の策定に関すること(法第一六条第一項)
  2.   イ 地下浸透規制に関する条例の策定に関すること(法第二九条)等である。

 (三) 資料の提出の要求等

   今回の法改正により、都道府県知事は、地下水の水質の汚濁の防止を図る上で必要があると認めるときは、関係行政機関の長又は関係地方公共団体の長に対し、必要な資料の送付その他の協力を求め、又は地下水の水質の汚濁の防止に関し意見を述べることができることとされた(法第二四条第二項)。
   ここで、「地下水の水質の汚濁の防止に関し意見を述べることができる」のは、地下浸透規制の対象が有害物質であることに鑑み、有害物質による地下水の汚染についてであることに留意されたい。

第一三 罰則規定

  1.  (一) 有害物質を含む水の地下浸透の禁止措置(法第一二条の三)の実効性を担保するため各種規定が整備されたが、これに伴い改正法により新たに設けられた罰則規定は次のとおりである。
    1.   ア 法第一三条の二第一項の規定による改善命令等に違反した者は一年以下の懲役又は五〇万円以下の罰金に処する(法第三〇条)。
          また、従前の規定との関係から罰則が適用されることとなる者は次のとおりである。
    2.   イ 法第八条の規定による計画変更命令等に違反した者(法第三〇条、一年以下の懲役又は五〇万円以下の罰金)
    3.   ウ 法第五条又は第七条の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者(法第三二条、三月以下の懲役又は二〇万円以下の罰金)
    4.   エ 法第六条の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者(法第三三条第一号、一〇万円以下の罰金)
    5.   オ 法第九条第一項の規定に違反した者(法第三三条第二号、一〇万円以下の罰金)
    6.   カ 法第二二条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同条第一項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者(法第三三条第四号、一〇万円以下の罰金)
    7.   キ 法第一〇条又は第一一条第三項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者(法第三五条、一〇万円以下の過料)
  2.  (二) 今回の法改正により新たに設けられた事故時の措置(法第一四条の二)の規定に係る罰金規定は次のとおりである。
    1.   ア 法第一四条の二第二項の規定による応急措置命令に違反した者は、六月以下の懲役又は三〇万円以下の罰金に処する(法第三一条第一項第二号)。
  3.  (三) また、法第三四条の規定により、法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、上記(一)(ただしキを除く。)、(二)の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各条の罰金刑を科する(両罰規定)。

第一四 経過措置

 (一) 届出

   改正法の施行の際(平成元年一〇月一日)、現に法第二条第二項に規定する特定施設を設置している者であって、改正後の法第二条第五項に規定する特定地下浸透水を浸透させるものは、改正法施行の日から三〇日以内に、法第五条第二項各号に掲げる事項を都道府県知事に届け出なければならないものとされた(改正法附則第二条第一項前段)。
   なお、特定施設を設置している者であって特定地下浸透水を浸透させるもののうち排出水を排出するものにあっては、届出事項は法第五条第二項第七号及び第八号に掲げる事項に限ることとしている。これは、当該各号に掲げる事項以外については、法第五条第一項に規定する届出事項と重複し、既に届出がなされているものであることから事業者の負担を軽減するためである。
   また、瀬戸内海環境保全特別措置法(昭和四八年法律第一一〇号。以下「瀬戸内法」という。)第五条第一項に規定する特定施設である法第二条第二項に規定する特定施設を設置している者であって特定地下浸透水を浸透させるものであるときは、当該特定施設についてのこの届出は、瀬戸内法第五条第一項の許可を受けた府県知事に対しするものとされた(改正法附則第二条第一項後段)。
   上記の届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、一〇万円以下の罰金が適用されることとなる(改正法附則第二条第二項)。
   また、本経過措置の違反行為に対する罰金についても両罰規定が設けられた(改正法附則第二条第三項)。

 (二) 地下浸透規制と改善命令

   有害物質を含む水の地下浸透禁止(法第一二条の三)及び同規定に違反するおそれのある場合の改善命令等(法第一三条の二第一項)の規定については、改正法の施行の際(平成元年一〇月一日)現に特定施設を設置している者の特定事業場から浸透する特定地下浸透水については、改正法施行の日から六月間適用を猶予する(改正法附則第三条第一項)。これは、これらの規定が最終的には罰則を伴う強制力を有する規定であることから、必要な施設の改善等を実施するため適切な猶予期間として経過措置を設ける必要があると判断されたものである。
   なお、法第一二条の三の規定が六月間適用を猶予されることに伴い、改正前の法第一四条第五項の規定は、なお六月間は効力を有するので留意されたい(改正法附則第三条第二項)。

第一五 関係諸法律の改正

 (一) 特定工場における公害防止組織の整備に関する法律関係

   特定工場における公害防止組織の整備に関する法律(昭和四六年法律第一〇七号。以下「管理者法」という。)第二条に規定する特定工場を設置している者は、管理者法第三条に定める公害防止統括者及び第四条に定める公害防止管理者を選任しなければならないこととされている。
   今回の法改正により、特定地下浸透水が規制対象となり、かつ、当該特定地下浸透水の汚染状態の自主測定が義務付けられたことに伴い、公害防止統括者及び公害防止管理者の行うべき業務として特定地下浸透水の汚染状態の測定を追加することとし、管理者法第三条及び第四条の改正を行うこととされた(改正法附則第四条)。

 (二) 瀬戸内海環境保全特別措置法関係

   今回の地下水汚染の未然防止を図るための諸措置については、すべて改正後の水質汚濁防止法に基づいて行うものとし、瀬戸内法に基づくものはないものとした。
   すなわち、地下水の水質の汚濁の防止を図ることについては、瀬戸内法の法目的の外であり、同法の枠組みの中で担保することはできない。このため、同法第五条第一項の許可が必要な施設であつて、特定地下浸透水を浸透させる者については、水質汚濁防止法第五条第二項等の届出を求めることとした。この場合、届出先を許可申請先と同様とする等事業者の負担が増加しないよう措置することとした。
   具体的には、瀬戸内法第一二条第一項において「排出水を排出する者で特定地下浸透水を浸透させない者に係る当該特定施設」については、水質汚濁防止法第五条等の届出に関連する規定のすべての適用を除外するものとし、瀬戸内法第一二条第二項において「排出水を排出する者で特定地下浸透水を浸透させる者に係る当該特定施設」については、水質汚濁防止法第五条第一項、第六条第二項及び第八条の二の規定を除き適用させることとし、瀬戸内法第一二条第三項において、この場合の適用について届出先等を同法第五条第二項の申請書を提出する府県知事とするとともに、公共用水域の排水規制関連の規定を除くものとするため所要の読み替え規定をおくこととした(改正法附則第五条)。

 (三) 湖沼水質保全特別措置法関係

   今回の地下水汚染の未然防止を図るための諸規定については、すべて改正後の水質汚濁防止法に基づくものとし、湖沼水質保全特別措置法(昭和五九年法律第六一号。以下「湖沼法」という。)に基づくものはないものとした。
   すなわち、湖沼法中水質汚濁防止法の規定を適用するものとされている「みなし特定施設」(湖沼法第一四条)については、湖沼の水質保全のために水質汚濁防止法の特定施設とみなして同法の規定を適用しているものであり、湖沼の水質とは直接に関係のない地下水の水質保全のための水質汚濁防止法上の規定は、湖沼法の目的からも適用しないものとした。このため、湖沼法のみなし特定施設については、水質汚濁防止法の特定地下浸透水の規制に関する部分は適用しないこととするため、所要の読み替え規定をおくこととした(改正法附則第六条)。

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