法令・告示・通達

水質汚濁防止法等の一部を改正する法律の施行について

  • 公布日:平成2年8月1日
  • 環水規216号

(各都道府県知事・各総量規制地域関係政令市長あて環境事務次官通知)
 水質汚濁防止法等の一部を改正する法律(平成二年法律第三八号。以下「改正法」という。)は、第一一八回国会において成立し、平成二年六月二二日に公布され、三月を経過する同年九月二二日から施行されることとなつた。
 本改正法は、生活排水対策を推進するための制度的枠組みを水質汚濁防止法の体系の中に組み込んだものである。今回の改正により、水質汚濁防止法は、従前からの事業系排水規制への対応に加え、生活系の排水対策についても真正面から取り組むことになり、公共用水域の常時監視というチェックを介して、さらに一層、総合的な水質汚濁防止対策法としての体系を整えたことになつた。
 なお、今回の生活排水対策の法制化に際し、水質汚濁防止法の体系の中では初めて水質の保全を図るための市町村の積極的な役割を位置付けていることにかんがみ、貴職におかれては、左記事項を十分に御了知の上その施行に万全を期されることはもとより、貴管下市町村に対する周知、指導に遺漏なきように期されたい。
 以上、命により通達する。

第一 改正法制定の趣旨

  我が国の公共用水域の生活環境項目に係る水質の状況について、BOD又はCODでみた水質環境基準の達成率は、近年ほぼ横ばいであり、達成が遅れているが、この汚濁の見過ごすことのできない要因は、炊事、洗濯、入浴等の人の日常生活に伴い排出される未処理の生活排水にある。
  しかしながら、これまでの水質汚濁防止法(昭和四五年法律第一三八号。以下「法」という。)の取組においては、生活排水対策に係る制度的枠組みの整備が遅れており、必ずしも十分な取組がなされてきたとはいえない。
  今回の法改正は、このような背景の中で、生活排水対策を一層推進するための制度的枠組みを整備したものである。
  改正法の趣旨は、まず、生活排水対策を今後一層推進するためには、市町村、都道府県、国がそれぞれどのような役割分担の下で生活排水対策を推進すべきであるかを明らかにする必要があり、行政としての責務を明確にすることとしたことである。
  次に、これまで、生活排水の排出に関する一般的な法規定はなかつたが、発生源が家庭であり、国民の自覚、行政への協力がなくては生活排水対策の推進は望めないことから、はじめて、生活排水対策を推進するに当たつての、国民の心がけ、努力について規定を設けることとしたことである。
  加えて、生活排水対策を特に重点的に推進する必要のある地域について、市町村が総合的な推進計画を策定することとし、市町村において、生活排水対策に計画的・総合的に取り組む枠組みを設けることとしたことである。
  併せて、水質総量規制地域において特別に排水規制対象施設の拡大を図るための制度化を盛り込んでおり、総量規制地域の一層の水質改善に努めることとしたことである。

第二 目的規定の改正

  今回の法改正により、法の目的として、「生活排水対策の実施を推進すること」による公共用水域の水質の汚濁の防止を図ることが加えられた(法第一条)。
  改正前の法の目的規定では、「工場及び事業場から公共用水域に排出される水の排出及び地下に浸透する水の浸透を規制すること等」を手段として、公共用水域及び地下水の水質の汚濁の防止を図る旨規定していたが、生活排水対策の推進に係る制度の枠組みを法の体系に組み込んだことに伴い、目的規定においても、工場・事業場系排水規制と併せて、生活排水対策の実施の推進について明記したものである。

第三 生活排水等の定義

  「生活排水」とは、「炊事、洗濯、入浴等人の生活に伴い公共用水域に排出される水」であつて法第二条第四項に規定する排出水でないものをいう。概念的には、従来から慣用的に行政用語として用いられてきた生活雑排水及びし尿を含めて意味するものであるが、「公共用水域に排出される水」とあるように、公共用水域という環境との接点から捉えた定義である(法第二条第七項)。
  また、「生活排水対策」は、「公共用水域の水質の汚濁の防止を図るための必要な対策」と定義されており、当面は、生活排水の内でも現行の法体系において未処理での公共用水域への排出が禁止されているし尿及び一定の水質の確保がされている生活排水処理施設からの放流水以外のものについて、その未処理での排出による水質の汚濁を防止するための対策が中心となるものである(法第一四条の三第一項)。
  なお、この趣旨から、「生活排水処理施設」は、下水道、コミニティ・プラント、農業集落排水施設、合併処理浄化槽その他の公共用水域の水質に対する生活排水による汚濁の負荷を低減するために必要な施設を指すが、専らし尿のみを処理するし尿処理施設、単独浄化槽は含めないものである(法第一四条の三第一項)。

第四 市町村、都道府県及び国の責務

  生活排水対策を一層推進するためには、効率的に対策を推進するための行政における実施体制を明確にする必要がある。この観点から、市町村、都道府県、国が、それぞれ、どのような役割分担により生活排水対策を進めるべきかについて、その責務を明確にしたところである。
  生活排水対策については、住民の日常生活に極めて密接に関連する行政分野であり、住民の自覚と協力のもとに行政を進めるべきである。このような要請に対応するためには、特定事業場に対する排水規制を中心に、都道府県を中心とした実施体制を敷いてきたこれまでの水質汚濁防止法の体系では十分とはいえない。このため、住民に最も近い行政主体である市町村が積極的に生活排水対策の実施を推進していくことが必要であり、この観点から、水質汚濁防止法の体系において初めて市町村の責務を明定したものである。
  具体的には、生活排水処理施設の整備に関する市町村の責務については、まず、下水道等市町村自らが設置する施設の整備に努めなければならないが、市町村自らが設置するものではない個人の設置する施設の整備の推進にも努めなければならないものである。また、市町村は、いわゆる台所対策の普及等を推進するための指導員の育成その他地域の特性を生かした啓発事業の推進に努めるとともに、地域住民等の声を聴きながら生活排水対策を推進するために、市町村公害対策審議会の活用、地域の協議会の設置等生活排水対策を推進するための実施体系の整備に努めなければならないこととされた(法第一四条の三第一項)。
  次に、都道府県は、市町村の生活排水対策の推進の支援を含め、広域にわたる施策の実施及び市町村における生活排水対策の推進のための調整に努めなければならないこととされた(一四条の三第二項)。
  さらに、国は、国民に対する知識の普及に努めるほか、生活排水対策の推進のための知見の集積に努め、必要な技術的及び財政的な援助を与えるよう努めなければならないこととされた(法第一四条の三第三項)。

第五 国民の責務等

  生活排水対策は、市町村、都道府県及び国の行政における努力とともに、発生源である国民一人一人の自覚と協力があつて初めて効を奏するものである。このため、これまで、生活排水の排出に関する一般的な法規定はなかつたが、今般、生活排水対策を推進するに当たつて、国民も一定の水質保全のための心がけ、協力、努力が求められる旨の規定を設けたものである。
  法第一四条の四の規定は、一般的な国民の心がけについて規定したものであるが、公共用水域の水質の保全を図るためというこの規定の趣旨からは、特に下水道の処理区域等以外の生活排水が未処理排出されている家庭等に対して、本条の規定の趣旨の徹底が図られるべきである。
  法第一四条の五の規定は、生活排水を排出する者に対し、生活排水処理のための設備の整備に努めるべきことを規定している。公共下水道による生活排水の処理に関しては、既に下水道法に基づく義務規定があり、本条では、それ以外の生活排水の集合処理施設の整備事業への参加、合併処理浄化槽の設置等について、生活排水を排出する者の努力義務を規定しているものである(法第一四条の五)。

第六 生活排水対策重点地域の指定

  すべての市町村は、法第一四条の三の規定の趣旨を踏まえ、生活排水対策の実施の推進に努めなければならない責務を有するものであり、その点で、生活排水対策は全国的にその実施の推進が図られるべきものであるが、都道府県知事は、水質環境基準が確保されていない公共用水域等において生活排水対策の実施を推進する緊急性が高いと認めるときは、当該水域の水質の汚濁に関係がある地域を生活排水対策重点地域として指定し、特に重点的な対策の推進を図ることとしている(法第一四条の六第一項)。
  都道府県知事が、生活排水対策重点地域を指定する時は、あらかじめ、関係市町村長の意見を聴かなければならないこととされており、また、他の都府県の区域にわたる公共用水域に係る生活排水対策重点地域の指定を行おうとする場合は、当該都府県知事は当該他の都府県知事に通知することとされている(法第一四条の六第二項及び第三項)。さらに、都道府県知事は、生活排水対策重点地域の指定をしたときは、その旨を公表し、当該地域を区域に含む市町村(生活排水対策推進市町村)に通知しなければならないこととされている(法第一四条の六第四項)。
  なお、生活排水対策重点地域の変更については、生活排水対策重点地域の指定に準じた取扱いとされた(法第一四条の六第五項)。

第七 生活排水対策推進計画の策定

  生活排水対策推進市町村は、生活排水対策重点地域における生活排水対策の実施を推進するための生活排水対策推進計画を定めなければならないこととされた(法第一四条の七第一項)。
  市町村を計画策定の主体と位置付けたが、これは、生活排水処理施設の整備に関して、水域の状況、自然的条件、地域開発の見通し、人口見通し等の地域の実情を最も熟知しており、啓発事業の推進に関しても地域住民の特性、地域組織等について最も熟知しているのが市町村であること、また、公共下水道、コミニティ・プラント、農業集落排水施設、合併処理浄化槽等の整備事業が市町村の事業として推進されており、これらの施設の整備事業の主体である市町村が計画策定主体となることにより、計画の推進が一層責任をもつて行われるものと考えられることを踏まえたものである。
  生活排水対策推進計画においては、当該水域の目指すべき水質の目標、生活排水の処理の目標、生活排水対策の進め方の基本的な考え方等に関する「生活排水対策の実施の推進に関する基本的方針」、当該水域の水質の汚濁を防止する観点からの生活排水処理施設の整備の基本的考え方に関する「生活排水処理施設の整備に関する事項」、いわゆる台所対策の普及等地域住民の啓発事業の進め方に関する「生活排水対策に係る啓発に関する事項」及び「その他生活排水対策の実施の推進に関し必要な事項」について規定することとされた(法第一四条の七第二項)。
  また、生活排水対策重点地域内の生活排水対策推進市町村は生活排水対策推進計画を定める場合には相互に連携を図るものとされた(法第一四条の七第三項)。
  生活排水対策推進市町村は、生活排水推進計画を定めようとするときは、あらかじめ、都道府県知事に通知するものとし、通知を受けた都道府県知事は、当該市町村に対し、助言をし、特に必要があると認める場合は、勧告を行うことができることとされた(法第一四条の七第四項及び第五項)。
  さらに、生活排水対策推進市町村は、生活排水対策推進計画を定めたときは、その内容を公表しなければならないこととされた(法第一四条の七第六項)。
  なお、生活排水対策推進計画の変更については、生活排水対策推進計画の策定に準じた取扱いとされた(法第一四条の七第七項)。

第八 生活排水対策推進計画の推進等

  生活排水対策推進市町村は、生活排水対策推進計画に定められたところに従い、生活排水対策の実施に必要な措置を講ずるように努めなければならないこととされた。(法第一四条の八)。
  また、生活排水対策推進市町村の長は、生活排水対策推進計画を推進するために必要と認める場合には、生活排水対策重点地域において生活排水を排出するものに対し、指導、助言及び勧告をすることができることとされた(法第一四条の九)。

第九 指定地域特定施設制度の創設等

  政令で定める施設で、法第四条の二第一項に規定する指定地域(東京湾及び伊勢湾に係るいわゆる総量規制地域)において設置されるものを指定地域特定施設とし、地下水の水質の汚濁の防止のための措置に関するものを除き特定施設に準じた規制等の措置がとられることとされた(法第二条第三項)。
  また、瀬戸内海環境保全特別措置法第五条第一項に規定する区域(瀬戸内海区域)においては、同法第一二条の二の規定に基づき政令で定める施設について、これを指定地域特定施設とみなして、同様の措置がとられることとされた(瀬戸内海環境保全特別措置法第一二条の二等)。また、指定地域特定施設とみなされる施設は、瀬戸内海環境保全特別措置法第五条の府県知事の許可の対象とはならないことに留意されたい(同法第五条)。
  なお、湖沼水質保全特別措置法第三条第二項に規定する指定地域(指定湖沼地域)に設置される同法第一四条の規定に基づき政令で定める施設は、同じく指定地域特定施設とみなして同様の措置がとられることとされたが、その効果は、これまでのいわゆるみなし特定施設とまつたく同様である(湖沼水質保全特別措置法第一四条等)。

第一〇 施行日

  改正法の施行の日は、公布の日(平成二年六月二二日)から三月を経過した日、すなわち平成二年九月二二日から施行されることとされた(附則第一条)。
  なお、指定地域特定施設(瀬戸内海環境保全特別措置法に基づき指定地域特定施設とみなされる施設を含む。)に関する規制等の措置の施行日は、施設を指定する政令において定められるものである。

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