法令・告示・通達

水質汚濁防止法施行令の一部を改正する政令等の施行について

公布日:平成13年06月25日
環水管111号

(環境省環境管理局水環境部長から都道府県知事・水質汚濁防止法政令市市長あて通知)
 水質汚濁防止法施行令の一部を改正する政令(平成一三年政令第二〇一号。以下「改正政令」という。)、水質汚濁防止法施行規則の一部を改正する省令(平成一三年環境省令第二〇号。以下「改正施行規則」という。)及び排水基準を定める省令の一部を改正する省令(平成一三年環境省令第二一号。以下「改正排水省令」という。)が、平成一三年六月一三日に公布された。また、これに伴い水質汚濁防止法施行規則第六条の二の規定に基づき環境大臣が定める検定方法を定める件の一部を改正する件(平成一三年六月環境省告示第三五号)、水質汚濁防止法施行規則第九条の四の規定に基づき環境大臣が定める測定方法を定める件の一部を改正する件(平成一三年六月環境省告示第三六号)及び排水基準に係る検定方法を定める等の件の一部を改正する件(平成一三年六月環境省告示第三七号)も同日に公布された。これらの政令、環境省令及び告示は、いずれも平成一三年七月一日から施行されることとなる。
 今回の改正は、ほう素及びその化合物、ふっ素及びその化合物並びにアンモニア、アンモニウム化合物、亜硝酸化合物及び硝酸化合物について、排水規制、地下浸透規制等を行うこととするとともに、ほう素及びその化合物が有害物質に追加されたことに伴い、石炭を燃料とする火力発電施設のうち、廃ガス洗浄施設を特定施設に追加することにより、公共用水域及び地下水の水質汚濁を防止することを目的としたものである。その実施に当たっては、左記の事項を留意のうえ、今回の改正政令等の円滑かつ適切な運用を図られるようお願いする。

第一 水質汚濁防止法施行令等の改正の趣旨

  環境基本法(平成五年法律第九一号)第一六条第一項に基づく環境基準について、平成一一年二月二二日、水質汚濁に係る環境基準の一部を改正する件(平成一一年二月環境庁告示第一四号)及び地下水の水質汚濁に係る環境基準の一部を改正する件(平成一一年二月環境庁告示第一六号)が公布され、人の健康の保護に関する環境基準(以下「水質環境基準」という。)として、ほう素、ふっ素並びに硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素の三項目が設定された。
  これを踏まえ公共用水域又は地下水の水質汚濁を防止するため、平成一二年一二月一四日に、「水質汚濁防止法に基づく排出水の排出、地下浸透水の浸透等の規制に係る項目追加等について」が、中央環境審議会から答申された。
  このため、今般、この答申を踏まえ、必要な改正を行うこととしたものである。

第二 改正の内容

 一 有害物質の追加関係

  1.   (一) 有害物質の追加等
        水質汚濁防止法(昭和四五年法律第一三八号。以下「法」という。)第二条第二項第一号に規定する「人の健康に係る被害を生ずるおそれがある物質」(以下「有害物質」という。)として、ほう素及びその化合物、ふっ素及びその化合物並びにアンモニア、アンモニウム化合物、亜硝酸化合物及び硝酸化合物を水質汚濁防止法施行令(昭和四六年政令第一八八号。以下「令」という。)第二条に追加した。これに伴い、法第二条第二項第二号に規定する「水の汚染状態を示す項目」(以下「生活環境項目」という。)のうち、令第三条第一項第一一号に掲げる「弗〈ふつ〉素含有量」を削除した。(改正政令本則)
  2.   (二) 特定施設の追加
        ほう素及びその化合物が有害物質に追加されたことに伴い、これを排出する「石炭を燃料とする火力発電施設のうち、廃ガス洗浄施設」を法第二条第二項に規定する特定施設とし、令別表第一第六三号の三として追加した。(改正政令本則)

 二 排水基準関係

  1.   (一) 排水基準の追加等
        今回追加した物質については、公共用水域及び地下水の水質の汚濁の防止を図る観点から、法第三条第一項に基づく排水基準(以下「一般排水基準」という。)の値を、改正排水省令に示すとおりとした。なお、「アンモニア、アンモニウム化合物、亜硝酸化合物及び硝酸化合物」に係る許容限度は、アンモニア性窒素の量に〇・四を乗じたものと亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素の合計量であることに留意されたい。
        また、これに伴い、排水基準を定める省令(昭和四六年総理府令第三五号)別表第二の「弗〈ふつ〉素含有量」の項を削除するとともに、同表の備考四中「弗〈ふつ〉素含有量」を削除した。(改正排水省令本則)
  2.   (二) 暫定排水基準
    1.    ア 一般排水基準に対応することが著しく困難と認められる業種その他の区分に属する特定事業場に対しては、経過措置として、改正排水省令の施行の日から三年間(平成一六年六月三〇日まで)に限って適用する暫定的な排水基準(以下「暫定排水基準」という。)を設定した。(改正排水省令附則第二項)
    2.    イ 令別表第一第七四号いわゆる共同処理場に該当する施設を有する事業場等については、その処理する水を排出する特定事業場の属する業種その他の区分に属するものとみなして、暫定排水基準を適用することとした。(改正排水省令附則第三項)
    3.    ウ 一の特定事業場が同時に複数の業種その他の区分に属する場合には、当該業種その他の区分に係る排水基準のうち最大の許容限度のものを適用することとした。(改正排水省令附則別表備考一)
    4.    エ 下水道業に係るほう素及びその化合物の基準については、温泉を利用する旅館業に属する特定事業場から排出される水を受け入れている下水道終末処理施設を有する下水道業のうち、一定の要件を満たすものについて、暫定基準を適用することとした。(改正排水省令附則別表備考二)
    5.    オ 暫定排水基準が適用される特定事業場については、改正排水省令の施行の日から三年後に一般排水基準に対応することができるように、必要な指導等をお願いしたい。
  3.   (三) 適用猶予
    1.    ア ふっ素及びその化合物についての改正排水省令に基づく排水基準(一般排水基準及び暫定排水基準)は、改正排水省令施行の日以後新たに特定事業場となる事業場には直ちに適用されるが、改正排水省令施行の際現に特定施設を設置(設置の工事をしているものを含む。)している特定事業場については、改正排水省令施行の日から六月間(令別表第三に掲げる施設を設置している特定事業場については一年間)は適用せず、従前の排水基準が適用されることとした。(改正排水省令附則第五項)
    2.    イ ほう素及びその化合物並びにアンモニア、アンモニウム化合物、亜硝酸化合物及び硝酸化合物についての改正排水省令に基づく排水基準(一般排水基準及び暫定排水基準)は、改正排水省令施行の日以後新たに特定事業場となる事業場には直ちに適用されるが、改正排水省令施行の際現に特定施設を設置(設置の工事をしているものを含む。)している特定事業場については、法第一二条第一項の適用を一定期間猶予することとした。猶予期間は、改正排水省令施行の日から六月間(令別表第三に掲げる施設を設置している特定事業場については一年間)である。ただし、改正排水省令施行の際に、既に地方公共団体の条例の規定でこれらの物質に関し法第一二条第一項の規定に相当するもの(当該規定の違反行為に対する罰則規定がないときを除く。)が適用されている特定事業場については、適用猶予の対象としないこととした。(改正排水省令附則第六項)
  4.   (四) その他
        改正排水省令の施行前の行為であって、改正前の規定に基づき処罰されるものがあった場合及び施行後の行為であって、改正排水省令の附則においてなお従前の例によることとされる場合における罰則の適用については、従前の規定を適用することとした。(改正排水省令附則第七項)

 三 地下水関係

  1.   (一) 地下浸透規制
        今回追加した物質を含み、かつ、法第八条の環境省令で定める要件に該当すると判断される特定地下浸透水は、他の有害物質を含む特定地下浸透水と同様、法第一二条の三に基づき地下浸透を禁止することとした。この規制は既に設置されている特定施設に係る特定地下浸透水であっても、改正政令の施行の日から適用されることとなるので留意されたい。
  2.   (二) 浄化基準
        法第一四条の三第一項の規定に基づき、今回追加した物質に係る基準値を改正施行規則に示す値とした。なお、「アンモニア、アンモニウム化合物、亜硝酸化合物及び硝酸化合物」に係る基準値は、亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素の合計量であることに留意されたい。

 四 検定方法関係

   排出水、特定地下浸透水等に係る検定方法及び測定方法は、排出水、特定地下浸透水等の濃度が的確に定量できる方法であること、広く一般に利用できるような方法であり、原則として危険な操作等を含まないこと、既に定められている水質環境基準の測定方法等を考慮すること等の答申の考え方を踏まえ、「水質汚濁防止法施行規則第六条の二の規定に基づき環境大臣が定める検定方法を定める件の一部を改正する件」、「水質汚濁防止法施行規則第九条の四の規定に基づき環境大臣が定める測定方法を定める件の一部を改正する件」及び「排水基準に係る検定方法を定める等の件の一部を改正する件」に定める検定方法を採用することとした。

 五 事故時の措置

   今回追加した物質は、他の有害物質と同様、法第一四条の二の規定に基づき事故が発生した場合の応急の措置や、届出等の事故等の措置の規定が適用される。特定事業場に対し、この旨周知徹底を図ることにより、事故による公共用水域及び地下水の水質汚濁の未然防止が図られるよう協力をお願いしたい。

第三 その他の留意事項

 一 条例との関係

   これまで、ふっ素及びその化合物について、法第三条第三項の規定に基づき、条例で生活環境項目として排水基準を定めていた場合には、早急に改正政令に沿った所要の整理が必要となるので留意されたい。

 二 特定施設及び有害物質使用特定施設に係る届出事項

   「石炭を燃料とする火力発電施設のうち、廃ガス洗浄施設」が特定施設にされたことから、当該施設については、法第六条第一項に基づく届出手続が必要となり、さらに、当該施設が有害物質使用特定施設のうち地下に汚水等を含む水を浸透させる場合には、追加的な届出手続が必要となる。しかし、当該施設が、電気事業法第二条第一項第一四号に規定する電気工作物である特定施設に該当する場合は、法第二三条第二項の規定により電気事業法による届出等の手続きが行われることとなるので留意されたい。

 三 その他

  1.   (一) 硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素による公共用水域及び地下水の汚染については、発生源が多岐にわたること、有効な対策が地域ごとに異なること、汚染機構が複雑であることなどから、地域の自然的・社会的特性、汚染実態、発生源の状況等に応じた有効な対策を講ずることが必要である。対策の実施に当たっては、「硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素に係る水質汚染対策マニュアル」を別途送付することとしているので、これを参考にされたい。
  2.   (二) 畜産担当部局との連携
        今回追加した物質、特にアンモニア、アンモニウム化合物、亜硝酸化合物及び硝酸化合物についての法の円滑な施行を図るため、法担当部局は畜産担当部局との連携に留意されたい。なお、アンモニア等の排出に関して、家畜排せつ物の処理等については、家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律(平成一一年法律第一一二号)に基づき適宜実施されることとなるので、その実施に際し、畜産部局から協力を求められた場合は、実態を十分に把握した上で的確に対応されるよう留意されたい。