法令・告示・通達

水質汚濁防止法施行令の一部を改正する政令等の施行について

  • 公布日:平成5年9月10日
  • 環水規255号

(各都道府県知事・政令市長あて環境庁水質保全局長通知)
 水質汚濁防止法施行令の一部を改正する政令(平成五年政令第二八一号。以下「改正政令」という。)、水質汚濁防止法施行規則の一部を改正する総理府令(平成五年総理府令第三九号。以下「規則改正府令」という。)、排水基準を定める総理府令等の一部を改正する総理府令(平成五年総理府令第四〇号。以下「基準改正府令」という。)、窒素含有量又は燐含有量についての排水基準に係る湖沼を定める件の一部を改正する件(平成五年環境庁告示第六六号。以下「湖沼改正告示」という。)及び窒素含有量又は燐含有量についての排水基準に係る海域を定める件(平成五年環境庁告示第六七号。以下「海域告示」という。)が平成五年八月二七日に公布され、これらの政令、総理府令及び告示は、いずれも同年一〇月一日から施行されることとなった。
 これら一連の制度改正等は、海域の富栄養化の防止を目的とする窒素及び燐の排水規制に関するものであり、その実施に当たっては「水質汚濁防止法の施行について」(昭和四六年七月三一日環水管第一二号環境事務次官通達)その他の通達によるほか、下記の事項に留意の上、水質汚濁防止法の円滑かつ適切な運用を図られたい。

第一 改正政令等の制定の趣旨

  我が国の内湾・内海においては、窒素及び燐の流入の増加に伴い海洋植物プランクトンの増殖が活発化し水質が悪化する富栄養化が進行している海域が見られる。これらの海域では、赤潮や青潮の発生等に伴い、漁業被害を始めとする様々な影響が生じており、このような状況を改善するため、海域の富栄養化の防止のための対策を推進することが急務となっていた。このため、本年六月一〇日の中央公害対策審議会答申「海域の窒素及び燐に係る環境基準等の設定について」を踏まえ、水質汚濁防止法(昭和四五年法律第一三八号。以下「法」という。)に基づく窒素及び燐の排水規制を海域についても実施することとし、水質汚濁防止法施行令(昭和四六年政令第一八八号)、水質汚濁防止法施行規則(昭和四六年総理府令・通商産業省令第二号)、排水基準を定める総理府令(昭和四六年総理府令第三五号)等につき必要な改正等を行ったものである。

第二 改正政令関係

  窒素又は燐は、「海洋植物プランクトンの著しい増殖」を通じて生活環境に係る被害を生ずることから、水質汚濁防止法施行令第三条第一項第一三号の「湖沼植物プランクトン」の次に「又は海洋植物プランクトン」を加える改正を行い、海洋植物プランクトンの著しい増殖をもたらすおそれがある場合の窒素又は燐についても法第二条第二項第二号の「水の汚染状態を示す項目」(生活環境項目)として定めた。
  また、「海洋植物プランクトンの著しい増殖をもたらすおそれがある場合」の局面限定の具体的内容については、湖沼植物プランクトンの場合と同様に、総理府令に委任して定めることとした。

第三 規則改正府令関係

  1.  (一) 窒素又は燐が海洋植物プランクトンの著しい増殖をもたらすおそれがある場合については、規則改正府令による改正後の水質汚濁防止法施行規則(以下「規則」という。)第一条の三において、窒素又は燐を含む水が工場又は事業場から次のいずれかの公共用水域に排出される場合とした(窒素、燐とも同じ。)。
    1.   ア 次の算式により計算した値が一・〇以上である海域(湖沼であって水の塩素イオン含有量が一リットルにつき九、〇〇〇ミリグラムを超えるものを含む。)その他の水が滞留しやすい海域
             (√(S・D1))/(W・D2)
          この式において、S、W、D1及びD2は、それぞれ次の値を表すものとする。
           S 当該海域の面積(単位 平方キロメートル)
           W 当該海域と他の海域との境界線の長さ(単位 キロメートル)
           D1 当該海域の最深部の水深(単位 メートル)
           D2 当該海域と他の海域との境界における最深部の水深(単位 メートル)
    2.   イ アの海域に流入する公共用水域
  2.  (二) なお、水の塩素イオン濃度が九、〇〇〇ミリグラム/一を超える湖沼については、内湾・内海で増殖する海洋植物プランクトンと同じ種の植物プランクトンが増殖することから、海域に含めて取り扱うこととした。

第四 基準改正府令関係

一 一般排水基準

  1.  (一) 法第三条第一項の規定に基づき総理府令で定められる窒素含有量及び燐含有量についての排水基準は、従来、湖沼についてのみ適用することとされていたが、今般の改正に伴い、海洋植物プランクトンの著しい増殖をもたらすおそれがある海域として環境庁長官が定める海域及びこれに流入する公共用水域に排出される排出水についても適用することとなった(基準改正府令による改正後の排水基準を定める総理府令(以下「府令」という。)別表第二の備考六及び七)。「海域及びこれに流入する公共用水域」とは、当該海域に流入する河川はもとより公共溝渠、かんがい用水路、湖沼及びこれに流入する公共用水域を含むものであることに留意されたい。ただし、規制の対象となる水域に人為的にその水の一部が導入されるいわゆる導水域については「海域及びこれに流入する公共用水域」には該当しないものとして取り扱うものとする。
  2.  (二) 一般排水基準については、湖沼に係る窒素含有量及び燐含有量の排水基準と同じ値が適用され、窒素含有量については最大値一二〇ミリグラム/一、日間平均値六〇ミリグラム/一、燐含有量については最大値一六ミリグラム/一、日間平均値八ミリグラム/一とした(府令別表第二)。また、これらの排水基準は、他の生活環境項目と同様に、一日当りの平均的な排出水の量が五〇立方メートル未満である工場又は事業場には適用しないこととしている(府令別表第二の備考二)。

二 暫定排水基準

  1.  (一) 一般排水基準に対応することが著しく困難と認められる一定の業種その他の区分に属する特定事業場については、基準改正府令の施行の日から五年間(平成一〇年九月三〇日まで)に限って適用する暫定的な基準(暫定排水基準)を設けた(基準改正府令附則第三項)。
  2.  (二) 暫定排水基準における業種その他の区分は、原則として、日本標準産業分類の区分によっている(基準改正府令附則別表第二)。一の特定事業場が同時に複数の業種その他の区分に属する場合には、当該業種その他の区分に係る排水基準のうち(最大値、日間平均それぞれについて)最大の許容限度のものを適用することとした(同表の備考四)。また、いわゆる共同処理場(改正政令による改正後の水質汚濁防止法施行令(以下「令」という。)別表第一第七四号の施設を有する事業場)については、その処理する水を排出する特定事業場の属する業種その他の区分に属するものとみなして、暫定排水基準を適用することとした(基準改正府令附則別表第二の備考五)。
  3.  (三) 暫定排水基準が適用される特定事業場の規模及び対象水域は、原則として一般排水基準と同様であるが、窒素含有量についての排水基準に係る湖沼及びこれに流入する公共用水域に排出水を排出する特定事業場については、海域の窒素含有量に係る暫定排水基準が適用されないことに留意されたい(同表の備考二)。燐含有量の暫定排水基準についても同様である(同表の備考三)。
  4.  (四) 暫定排水基準が適用される特定事業場については、基準改正府令の施行の日から五年後に一般排水基準に対応することができるように、必要な指導を行われたい。

三 適用猶予

  窒素含有量及び燐含有量についての排水基準(一般排水基準及び暫定排水基準)に係る法第一二条第一項の規定は、環境庁長官が府令別表第二の備考六又は七の海域を定めた後に新たに特定事業場となった事業場には直ちに適用されるが、海域を定めた際既に特定施設を設置(設置の工事をしているものを含む。)している特定事業場については、一定期間適用を猶予することとした。適用猶予の期間は、環境庁長官が当該海域を定めた日から六月間(令別表第三に掲げる施設又は指定地域特定施設を設置している特定事業場については一年間)である(基準改正府令附則第五項及び第七項)。
  ただし、環境庁長官が海域を定めた際既に地方公共団体の条例の規定で窒素含有量又は燐含有量に係る排水基準に関し法第一二条第一項の規定に相当するもの(当該規定の違反行為に対する罰則規定がないときを除く。)が適用されている特定事業場については、適用猶予の対象としないこととした(基準改正府令附則第五項ただし書及び第七項)。また、窒素含有量又は燐含有量についての排水基準に係る湖沼として環境庁長官が定めた湖沼の流域に既に立地しているため窒素含有量又は燐含有量についての排水基準が適用されていた特定事業場であって、環境庁長官が定める海域の集水域に位置するものについては、当該海域を定めた日から六月間又は一年間は、従前の排水基準に関し法第一二条第一項の規定が適用されることとした(基準改正府令附則第六項及び第七項)。

四 湖沼に係る暫定排水基準について

  湖沼に係る窒素含有量及び燐含有量の暫定排水基準並びにその適用期限に関しては、排水基準を定める総理府令の一部を改正する総理府令(昭和六〇年総理府令第三〇号)附則において定められていたところであるが、今回、この部分を削除し、基準改正府令附則において、改めて海域の暫定排水基準と併せて規定することとした(基準改正府令附則第二項)。なお、湖沼に係る暫定排水基準の業種及び値(基準改正府令附則別表第一)並びに適用期限は、従前のものと同一である。

第五 海域告示関係

一 海域の指定

  1.  (一) 窒素及び燐の排水規制に際しては、規制対象水域を明確にする必要があることから、湖沼の場合と同様に、対象となる海域を環境庁長官が定めることとした。これらの海域は、規則第一条の三第一項第二号の条件に該当する海域のうち、原則として、その面積が五キロ平方メートル以上であるものを指定し、規制対象水域は、これらの海域及びこれらの海域に流入する公共用水域とすることとした。
  2.  (二) 窒素含有量に関して対象となる海域と燐含有量に関して対象となる海域は同じであるので、海域については、窒素含有量及び燐含有量の両方の排水基準が適用されることとなり、どちらか一方のみの排水基準が適用されることはない。この点については湖沼の場合と異なっているので、留意されたい。
  3.  (三) 海域告示による海域の指定は、平成五年一〇月一日から施行される。これに伴い基準改正府令附則の規定により、新設事業場については同日から、既設事業場については平成六年四月一日(令別表第三に掲げる施設又は指定地域特定施設を設置している場合にあっては、平成六年一〇月一日)から、窒素含有量及び燐含有量に関する排水基準が適用されることとなる。

二 規制対象水域の周知

  1.  (一) 窒素及び燐の排水規制の円滑な実施を図るためには、規制対象となる特定事業場の設置者等に対し規制対象水域等の周知・徹底を図る必要があることから、各都道府県・政令市においては、次の措置を講じることとされたい。
    1.   ア 規制対象水域に排出水を排出する特定事業場に係る事業者に対しては、文書による通知、説明会の開催等により、排水規制の実施の周知を図ること。
    2.   イ 規制対象水域が属する地域(集水域)の範囲を示す地図(参考図)を海域告示の施行の日までに作成し、事業者の求めに応じ提示することができるようにすること。この場合において、原則として、国土地理院の五万分の一の地形図を用い、規制対象となる集水域について範囲を示すものとする。
  2.  (二) 規制対象水域等の周知に当たっては、特に、燐含有量についての排水基準に係る湖沼から流出する水が環境庁長官が定める海域に流入する場合、当該湖沼及びこれに流入する公共用水域に排出される排出水については、燐含有量のみならず、窒素含有量についての排水基準も適用されることに留意されたい。

第六 湖沼改正告示関係

  府令別表第二の備考六及び七に基づき、窒素含有量又は燐含有量についての排水基準に係る湖沼が昭和六〇年環境庁告示第二七号により定められていたところであるが、今回、同告示の第一中「備考六の」の次に「窒素が湖沼植物プランクトンの著しい増殖をもたらすおそれがある湖沼として」を加え、第二中「備考七の」の次に「燐が湖沼植物プランクトンの著しい増殖をもたらすおそれがある湖沼として」を加えた。
  これは、府令別表第二の備考六及び七に基づき環境庁長官が定めるものとされた海域に含まれる塩素イオン濃度が九、〇〇〇ミリグラム/一を超える湖沼との区別を明確にするための改正であり、告示内容の実質的な変更を伴うものではない。

第七 検定方法

  海域の窒素含有量及び燐含有量についての排水基準に係る検定方法は、窒素含有量については、日本工業規格KO一〇二(工場排水試験方法。以下「規格」という。)四五(全窒素)のうち四五・一(総和法)又は四五・二(紫外線吸光光度法)に定める方法とし、燐含有量については、規格四六・三(全燐)に定める方法とした。
  なお、これらの方法は、従前の湖沼の窒素含有量及び燐含有量についての排水基準に係る検定方法と同一である。

第八 その他の重要事項

一 上乗せ排水基準の設定

  海域に係る窒素含有量及び燐含有量の排水基準については、他の排水基準項目と同様に上乗せ排水基準を設定することができる(法第三条第三項)。
  上乗せ排水基準の設定については、昭和四六年七月三一日付け環水管第一二号環境事務次官通達四(二)によることとなるが、その他、海域に係る窒素含有量及び燐含有量の上乗せ排水基準の設定に関しては、次の事項に留意されたい。

  1.   ア 窒素及び燐の発生原因は多岐にわたることから、海域の富栄養化の防止を図るためには、特定事業場に対する排水規制と併せて規制対象以外の発生原因に係る各種対策を推進することが必要であるので、上乗せ排水基準の設定に当たっては、当該海域に環境基準の類型指定を行ったうえで、将来の水質の見通しを明らかにしつつ、環境基準の維持・達成のための各種対策の総合的な推進の一環として上乗せ排水規制を位置付けること。
  2.   イ 上乗せ排水基準の設定に当たっては、排出実態等の地域の特性、排水処理技術レベル、排水処理施設の設置に要する準備期間等に配慮すること。また、暫定排水基準の適用される業種等について上乗せ排水基準を設定する場合には、当該業種等における対応可能性を検討すること。
  3.   ウ 上乗せ排水基準の設定に際しては、関係行政担当部局と調整を図るとともに、都道府県公害対策審議会の議を経ること。また、複数都道府県にまたがる海域の環境基準の維持・達成のために上乗せ排水基準を設定するときは、関係都道府県の上乗せ排水基準相互間に基準の設定時期又は基準の内容の著しい相違が生ずることのないよう、関係都道府県間で十分な調整を行うこと。
  4.   エ 上乗せ排水基準は、窒素又は燐の含有量が法第二条第二項第二号の生活環境項目となる範囲において設定できるものであるので、規則第一条の三の条件に該当しない公共用水域については、上乗せ排水基準を設定できないこと。

二 届出事務等

  窒素含有量又は燐含有量の排水基準の対象となる特定事業場について法第五条の届出がなされる場合には、排出水の汚染状態等の届出事項として窒素含有量及び燐含有量に係る項目が必要となる。なお、排水規制の実施前において受理された届出に係る事業場については、適宜、法第二二条の報告徴収等を行うことにより、これらの項目に係る汚染状態等の把握に努められたい。

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