法令・告示・通達

水質汚濁に係る環境基準についての一部を改正する件の施行等について

公布日:平成5年03月08日
環水管21号

環境庁水質保全局長から各都道府県知事・政令市長あて
 水質汚濁に係る環境基準についての一部を改正する件(平成5年3月環境庁告示第16号)の施行については、別途平成5年3月8日付け環水管第20号をもって貴職あて環境事務次官より通達されたところであるが、同通達によって別途通知することとされている事項については、下記により運用することとされたい。
 なお、告示に伴い、「水質汚濁に係る環境基準についての一部を改正する件の施行について」(昭和49年12月23日付け環水管第182号、環境庁水質保全局長通知)記の1中「が、その場合にあっても少なくとも年6回は測定を行うものとする」を削り、記の2中「ppm」を「mg/l」に改め、記の5中「2又は3」の後に「(削除)」を加え、記の3を削り、記の4を記の3とし、記の5を記の4とする。また、「水質汚濁防止法施行令の一部を改正する政令等の施行について」(平成元年4月3日付け環水管第52号、環水規第64号、環境庁水質保全局長通知)記の2を削り、記の3の(2)中「水質環境目標を勘案するとともに、これまでの行政指導の経緯を踏まえ、」を削り、記の5の(1)中「水質環境目標」を「水質汚濁に係る環境基準」に改め、記の3を記の2とし、記の4を記の3とし、記の5を記の4とする。

1 環境基準達成状況の評価について

  人の健康の保護に関する環境基準の項目(以下「環境基準健康項目」という。)の基準値が年間平均値とされたことから、公共用水域における環境基準の達成状況は、同一測定点における年間の総検体の測定値の平均値により評価する。その際、不検出の検体については、定量限界値を用いて平均値を算出することとする。
  ただし、全シアンについては基準値が最高値とされたことから、同一測定点における年間の総検体の測定値の最高値により評価する。また、アルキル水銀及びPCBについては、「検出されないこと」をもって基準値とされているので、同一測定点における年間のすべての検体の測定値が不検出であることをもって環境基準達成と判断する。さらに、総水銀に係る評価方法は、「水質汚濁に係る環境基準についての一部を改正する件の施行について」(昭和49年12月23日付け環水管第182号、環境庁水質保全局長通知)記の2に定めるとおりとする。

2 自然的原因による検出値の評価について

  水銀、鉛、砒〈ひ〉素等、人為的な原因だけでなく自然的原因により公共用水域等(地下水を含む。以下同じ。)において検出される可能性がある項目についても、一律の値を設定することとしたが、公共用水域等において明らかに自然的原因により基準値を超えて検出されたと判断される場合には、測定結果の評価及び対策の検討に当たってこのことを十分考慮することとされたい。
  なお、自然的原因とは、鉱床地帯等において岩石、土壌等からの溶出等の自然的要因による場合(水銀鉱床等において人為的要因(例えば休廃止鉱山)があり、それによる汚染がないように十分防止対策が講じられているにもかかわらず、当該地域の自然的要因による汚染が認められる場合を含む。)をいうものとする。

3 公共用水域等の監視の実施について

  環境基準健康項目については、水質汚濁防止法第15条に基づく都道府県知事による公共用水域及び地下水の常時監視の対象として位置づけ、水質の汚濁の状況の把握に努められたい。今回の改定によりこれまでよりかなり項目数が増えることから、監視体制の一層の充実を図られたい。なお、平成5年度は準備期間として暫定的な体制での監視で差し支えない。
  環境基準の達成状況等を適切に評価するため、測定計画の策定に当たっては、物質の特性、使用状況等を考慮し、年間を通した公共用水域等の状況が的確に把握できるよう配慮されたい。公共用水域の場合、水域を代表する各地点で各月1回以上の測定が望ましいと考えられるが、水質汚濁の状況、排出水の汚染状態等からみて汚染のおそれの少ない地点については測定回数を減じ、汚染のおそれがある地点の監視を強化すること等により効果的に監視を実施することとされたい。なお、公共用水域等の監視の実施に当たっては、関係機関との連携を図られたい。
  測定結果の報告方法については別途通知する。

4 公共用水域等の汚染の防止のための方策について

  環境基準の維持・達成を図るため、水質汚濁防止法に基づく排水基準をはじめとする諸基準の設定を急ぐこととしているが、貴職におかれては、水質汚濁防止対策の緊要性にかんがみ、環境基準健康項目に係る排出の抑制及び地下浸透の防止が図られるよう必要な指導等に努められたい。
  今回、全シアン以外の項目の基準値は長期間摂取に伴う健康影響を考慮して設定されており、一時的にある程度この値を超えるようなことがあっても直ちに健康上の問題に結びつくものではないが、対策については、安全サイドに立って考え、基準値を超えることがないように進めることとされたい。
  基準値が年間平均値とされた項目であっても、一時的に基準値を超過した測定値が得られた場合には、必要に応じ関係機関との連携を図り、速やかにその原因の究明を行うとともにその後の推移を的確に監視しつつ適切な対策を検討することとされたい。特に水道水源として利用されている公共用水域等においては、この点に遺漏なきを期されたい。
  なお、1,1,1―トリクロロエタンについては、人の健康の保護の観点から基準値が設定されたが、水道水質に関する基準としては臭味防止の観点からより厳しい基準値が設定されているので、水道水源として利用されている公共用水域等については水質管理に当たって留意することとされたい。

5 測定方法について

  測定方法が1項目で2種類以上定められたものについては、測定機関が機器の整備状況等から最も妥当と判断される測定方法を選定し、測定を行うこととされたい。また、今回の改正により、極微量を定量する項目が追加されたことから、正確で信頼性の高い測定値を得るためには、十分な精度管理を行うことが必要であり、貴職におかれては精度管理体制の充実を図られたい。特に分析を委託により行っている地方公共団体にあっては、委託先の精度管理についても配慮されたい。
  環境基準健康項目の測定方法についての詳細は別途通知する。

6 要監視項目の設定について

  今回、環境基準健康項目に追加することが適当と判断された物質のほかに、人の健康の保護に関連する物質ではあるが、公共用水域等における検出状況等からみて、現時点では直ちに環境基準健康項目とせず、引き続き知見の集積に努めるべきと判断されるものについて、「要監視項目」として位置づけ、継続して公共用水域及び地下水の水質測定を行い、その推移を把握していくこととした。
  具体的な項目は別表に示したとおりであり、健康影響等に関する知見を踏まえ、我が国における生産・使用状況、水道水質に関する基準の設定状況、公共用水域等における検出状況等を勘案して25項目を選定するとともに、水質測定結果を評価する上での指針値を項目ごとに設定している。なお、指針値は、長期間摂取に伴う健康影響を考慮して算定された値であり、一時的にある程度この値を超えるようなことがあっても直ちに健康上の問題に結びつくものではない。
  要監視項目については、今後、国等において物質の特性、使用状況等を考慮し体系的かつ効果的に公共用水域等の水質測定を行うとともに、測定結果を国において定期的に集約し、その後の知見の集積状況を勘案しつつ、環境基準健康項目への移行等を検討することとしている。水質測定については、平成6年度以降に本格的に実施できるよう、その体制等について今後検討しあらためて通知するが、貴職におかれても、地域の実情に応じ必要と考えられる項目について環境基準健康項目の主要な測定地点等で水質測定を実施し、その結果を当職あて報告するとともに、必要に応じ公共用水域等の水質管理に遺憾なきを期されたい。
  要監視項目のうち、フッ素並びに硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素については、水道水質に関する基準が定められていることから、地域の実情に応じて速やかに、水道水源として利用されている公共用水域及び地下水を中心に水質測定を行うこととされたい。また、EPNについては、従来有機燐〈りん〉として環境基準健康項目とされていたことに留意し、当面、できる限り公共用水域の水質測定を行うよう配慮されたい。
  なお、こうした公共用水域等の水質測定に当たっては、関係機関との連携を図り、効率的に実施されたい。
  要監視項目の測定方法及び報告方法については別途通知する。

別表

項目
指針値
クロロホルム
0.06mg/l以下
トランス―1,2―ジクロロエチレン
0.04mg/l以下
1,2―ジクロロプロパン
0.06mg/l以下
p―ジクロロベンゼン
0.3mg/l以下
イソキサチオン
0.008mg/l以下
ダイアジノン
0.005mg/l以下
フェニトロチオン
0.003mg/l以下
イソプロチオラン
0.04mg/l以下
オキシン銅
0.04mg/l以下
クロロタロニル
0.04mg/l以下
プロピザミド
0.008mg/l以下
EPN
0.006mg/l以下
ジクロルボス
0.01mg/l以下
フェノブカルブ
0.02mg/l以下
イプロベンホス
0.008mg/l以下
クロルニトロフェン
0.005mg/l以下
トルエン
0.6mg/l以下
キシレン
0.4mg/l以下
フタル酸ジエチルヘキシル
0.06mg/l以下
ほう素
0.2mg/l以下
フッ素
0.8mg/l以下
ニッケル
0.01mg/l以下
モリブデン
0.07mg/l以下
アンチモン
0.002mg/l以下
硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素
10mg/l以下