法令・告示・通達

汽水域等における「ふっ素」及び「ほう素」濃度への海水の影響程度の把握方法について

公布日:平成11年03月12日
環水企89-2・環水管68-2

環境庁水質保全局企画課地下水・地盤環境室長・水質管理課長から都道府県政令市環境担当部局長あて
 標記については、「水質汚濁に係る環境基準についての一部を改正する件及び地下水の水質汚濁に係る環境基準についての一部を改正する件の施行等について(平成11年2月22日付け環水企第58号・環水管第49号。以下「基準改正の通知」という。)」において別途通知するとしたところである。
 「ふっ素」及び「ほう素」は自然状態において海域に相当程度含まれており、今回の環境基準改正においても海域にはこれらの基準を適用しない旨明記されている。海水と陸水の混じり合う汽水域においては、形式上、環境基準を適用するが、下記の方法により海水の影響のみで基準値を超えると判断される測定点については、測定回数を減じても差し支えない。
 また、下記方法によらなくとも、過去の調査結果等により海水の影響により基準値を超えると判断される汽水域及び地下水については、測定回数を減じても差し支えない。

1 基本的考え方

  海水の影響を見るためには塩分濃度を測定することが最も正確であるが、ここではより簡便な方法として、電気伝導率(単位:μS/cm*1)及び水温を採水時に測定し、これらを大まかな海水の影響を見積もるための目安とする。
  なお、本方法による採水は満潮時(海水の影響が最も大きいと考えられる時間)に行うこととされたい。

  •    *1 μΩ/cmでも同じ。単位面積・単位長さあたりの抵抗値の逆値。

2 電気伝導率の温度による補正

  電気伝導率は水温により変化するため、電気伝導率の測定の際には同時に水温を測定し、以下の補正を行うことにより、15℃における電気伝導率とする。
  C15=(C×0.78)/(1+0.022×(T-25))
    C15:15℃における電気伝導率[μS/cm]
    C:電気伝導率(測定値)[μS/cm]
    T:水温(測定値)[℃]

3 海水影響の判断基準値

  上記2により求めた15℃における電気伝導率を以下の表の判断基準値に照らし、ふっ素、ほう素各々について、海水の影響により環境基準を超えている可能性を判断する。15℃における電気伝導率が判断基準値を超えている場合には、海水のみの影響によりふっ素、ほう素が環境基準を超える可能性があると判断される。

 
C15判断基準値[μS/cm]
ふっ素
23,000以上
ほう素
10,000以上

(参考)電気伝導率基準値の設定根拠について

 15℃における標準海水の電気伝導率は約40,000[μS/cm]、塩分濃度は約35である。ある試験水の塩分濃度S[‰」は、その試験水の15℃における電気伝導率比K15(「(試験水の電気伝導率)/(標準海水の電気伝導率)」で表される数値)を用いて以下の式により算出される。
  S=a0+a1K151/2+a2K15+a3K153/2+a4K152+a5K155/2(式1)
   a0=0.0080、a1=-0.1692
   a2=25.3851、a3=14.0941
   a4=-7.0261、a5=2.7081
 日本の通常の河川水では塩分濃度はほぼ0[‰」として良いので、海水の混入率は塩分濃度に比例し、塩分濃度35[‰」で100%となると想定される。
 また、ふっ素及びほう素の、河川水中の濃度、海水中の濃度、環境基準値を下表のとおりとする(単位:mg/1)。

 
河川水濃度
海水濃度
環境基準値
ふっ素
0
1.5
0.8
ほう素
0
4.5
1.0


 したがって、海水の影響によりふっ素及びほう素の濃度が環境基準値を超えると想定される海水混入率及び対応する塩分濃度は下表のように計算される。

 
海水混入率[%]
塩分濃度[‰]
ふっ素
53.33
18.67
ほう素
22.22
7.778


 以上と式1より、判断基準値を算出した。