法令・告示・通達

大気汚染防止法に基づく硫黄酸化物の排出基準の改定等について

公布日:昭和51年10月14日
環大規226号

環境庁大気保全局長から各都道府県知事・各政令市市長あて
 昭和51年9月28日付けをもつて、大気汚染防止法施行令の一部を改正する政令(昭和51年政令第250号。以下「改正政令」という。)及び大気汚染防止法施行規則の一部を改正する総理府令(昭和51年総理府令第50号。以下「改正府令」という。)が制定公布され、同日から施行された。
 今回の改正は、硫黄酸化物の排出基準の改定、硫黄酸化物に係る総量規制基準を定める地域の追加指定及び季節による燃料使用基準を定める地域の追加指定に関するものであり、二酸化硫黄に係る環境基準を昭和52年度末に達成維持することを目途として行われたものである改正の基本方針、改正政令及び改正府令の内容並びに留意すべき事項は次のとおりであるので、法令の施行に遺漏なきを期されたい。

 第1 改正の基本方針

  今回の改正は、排出基準の改定、総量規制の実施及び季節によると燃料規制の実施それぞれ相俟つて、昭和52年度末に全国的に二酸化硫黄に係る環境基準を達成維持することを目途として行つたものである。したがつて、今回の改正は環境基準達成に向けてのほぼ最終的なものである。

  1 硫黄酸化物の排出基準の改定

   今回の排出基準の改定に当たつては、各地域における大気汚染の現況(昭和49年度)並びに各都道府県知事及び指定都市市長の協力を得て実施した硫黄酸化物排出実態調査等をもとに、昭和52年度までの原燃料使用量の動向等を勘案して、昭和52年度における環境基準の達成維持を目途として、排出基準強化を行つた。ただし、K値は3.0よりも小さく(厳しく)しないこととし、また、K値が3.0の地域は従来より増やさないこととし、今回の排出基準の強化の限度は3.5とした。なお、K値を3.5にしても環境基準の達成が困難な地域については、総量規制を実施することにより環境基準の達成維持を図ることとした。
   今回の排出基準の改定が、昭和52年度における環境基準の達成を目指したほぼ最終的なものであることにかんがみ、K値のランクを従来よりもさらにきめ細かくすることとした。その際、従来は最大着濃度をきりのよい数字にしてK値を決めていたが、今回は、K値をきりのよい数字とすることとした。なお、K値が6.42又は8.76の地域であつて、昭和52年度までの原燃料使用量の動向を勘案しても環境基準を超えるおそれがない地域については、きりのよい数字にすることが当該地域について必ずしも無視しえない程度の強化になつてしまうことを考慮して、当面は、そのままの形で残すこととした。

  2 総量規制基準を定める地域の追加指定

   硫黄酸化物の総量規制基準を定める地域としては、大気汚染防止法(以下「法」という。)上、工場又は事業場が集合している地域であつて、現行の排出基準のみによつては環境基準の確保が困難であると認められる地域を地域指定することになつているが、今回の改正から、K値を3.5にしても環境基準の確保が困難と認められる地域を指定することとした。

第2 改正の内容

 1 大気汚染防止法施行令関係

  (1) 政令特掲地域の追加等

    法第3条第2項第1号の規定に基づき、従来大気汚染防止法施行令(以下「令」という。)別表第3第100号に規定されていた地域のうち、青森市、盛岡市、山形市、渋川市、平塚市等、長岡市、長野市、松本市等、沼津市等、桑名市等、彦根市等、玉野市、鳴門市等、今治市、久留米市、熊本市、日向市、那覇市等及び糸満市等の19地域について特掲してより厳しい排出基準を適用することとし、既特掲地域のうち、金沢市等及び八代市の2地域については区域を拡大し、宇都宮市等については3地域に分割したこと(令別表第3の改正)。

  (2) 硫黄酸化物に係る総量規制基準を定める地域の指定

    法第5条の2第1項の規定に基づき、硫黄酸化物に係る総量規制基準を定める地域として、川口市等、京都市等、備前市、福山市及び大竹市の5地域を指定したこと(令別表第3の2の改正)。

  (3) 季節による燃料使用基準を定める地域の指定

    法第15条第1項の規定に基づき、季節による燃料使用基準を定める地域として、旭川市の中心地域を指定したこと(令別表第4の改正)。

 2 大気汚染防止法施行規則関係

   法第3条第1項の規定に基づき、K値の区分を細分化するとともに、改正後の令別表第3に掲げる120の特掲地域につき、全般的に排出基準を大幅に強化したこと(大気汚染防止法施行規則(以下「規則」という。)別表第1の改正)。

 3 施行期日及び経過措置

  1.   (1) 改正政令及び改正府令は、公布の日(昭和51年9月28日)から施行すること(改正政令附則及び改正府令附則第1項)。
  2.   (2) 規則附則第2項の規定により、法による全国的規制の実施の際、地方公共団体の条例又は規則に定める数値が当分の間そのまま法によるK値とされた地域のうち、当該数値が今回の改定後のK値より小さく(厳しく)なくなつた地域については改定後のK値が適用されること(改正府令附則第2項)。
  3.   (3) 大気汚染防止法施行規則の一部を改正する総理府令(昭和46年総理府令第59号)附則第5項又は大気汚染防止法施行規則の一部を改正する総理府令(昭和49年総理府令第10号)附則第6項の規定により、その効力が存続することとされている旧特別排出基準の適用を受けるばい煙発生施設がある場合において、当該旧特別排出基準が今回の改正により当該ばい煙発生施設が設置されている地域に係る改定後の基準より厳しくなくなつたときは、当該ばい煙発生施設については改定後の基準が適用されること(改正府令附則第3項)。
  4.   (4) 改定後の基準は、法第13条第1項の規定に係る場合にあつては、本年9月28日現在設置されているばい煙発生施設については、本年12月25日(本年12月25日において次のいずれかに該当する施設については昭和52年9月25日)まで、適用が猶予されていること。
    1.    1 ばい煙発生施設に附属する硫黄酸化物処理施設の設置の工事がされている場合における当該ばい煙発生施設
    2.    2 中小企業者が設置しているばい煙発生施設であつて、排出口の実高さが20メートル未満のもののうち、当該ばい煙発生施設の排出口の実高さが20メートル以上にするための工事がされている場合における当該ばい煙発生施設
           なお、これらの工事が昭和52年9月25日以前に完了した場合には、法第13条第1項の適用猶予期間は、当該工事の完了した日までとすること(改正府令附則第4項)。

第3 留意すべき事項

 1 硫黄酸化物の排出基準の改定

  1.   (1) 第2の3の(2)に該当する地域がある場合には、この点誤解のないようにばい煙排出者に周知させるとともに、逆に、なお当分の間規則附則第2項の規定が適用になる地域にあつては、当該地域のK値として適用される数値を明確にし、ばい煙排出者に周知させること。
  2.   (2) 第2の3の(3)に該当するばい煙発生施設については、改定後の基準が適用されることを充分周知させること。
  3.   (3) 第2の3の(4)の適用猶予期間は、改定後の基準を遵守するための低硫黄原燃料への切替え、ばい煙処理施設の改善等に要する期間としては最小限となつているので、ばい煙排出者が最大限の努力を払い、改定後の基準を遵守するよう指導すること。
        特に、硫黄酸化物排出実態調査等からみて改定後の基準に不適合となるおそれのあるばい煙発生施設については、当該ばい煙排出者に対して早急にその旨を通知し、所定の期間内に所要の改善等の措置を講ずるよう指導すること。
        また、適用猶予となるのは法第13条第1項の規定に係る場合に限られるので、この期間内にあつても法第14条第1項(改善命令等)の規定は適用されるが、法第13条第1項の規定が適用猶予されている趣旨にかんがみ慎重に取り扱われたいこと。
        なお、この期間にあつても、「なお、従前の例による」(改正府令附則第4項)とされているとおり、改正前の基準に違反するばい煙排出者に対しては法第13条第1項の規定は適用されるあものであること。
  4.   (4) 改正府令附則第4項第2号の中小企業者とは、次に該当するものをいうものであること。
    1.    1 資本の額又は出資の総額が1億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人であつて、工業、鉱業、運送業その他の業種(次号に掲げる業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの
    2.    2 資本の額又は出資の総額が1千万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人であつて、小売業又はサービス業に属する事業を主たる事業として営むもの並びに資本の額又は出資の総額が3千万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人であつて、卸売業に属する事業を主たる事業として営むもの
  5.   (5) K値を6.42又は8.76のまま据え置いた地域については、できるだけ近い時点での改正で6.0、8.0等に改定する意向であるので、その際に対策を要することとなる施設については、あらかじめ所要の指導を行われたいこと。

 2 総量規制基準を定める地域の指定

  1.   (1) 今回地域指定された地域については、①昭和53年3月までに総量規制基準を適用しなければならないこと(令第7条の4第1項参照)、②総量規制基準の適用の前に6カ月程度以上の猶予期間を置いて総量規制基準を公示すべきであること(大気汚染防止法の一部を改正する法律の施行について(昭和50年1月30日環大規第12号。環境事務次官通知)第4の4の(2)参照)、③総量削減計画の公告の30日以上前に当該計画を環境庁長官に報告しなければならないこと(法第5条の3第3項及び規則第7条の6参照)等から、総量削減計画の作成のための期間が短かいため、早急に総量削減計画の作成に取り組み、昭和52年8月中に環境庁長官に報告されたいこと。
  2.   (2) 第1次及び第2次の指定地域に係る総量削減計画を環境庁長官に報告していない府県知事にあつては、総量削減計画作成の主要な段階ごとに当局と充分連絡をとりつつ、可及的速やかに総量削減計画を作成し、環境庁長官に報告されたいこと。

 3 今後の排出基準の改定等

   今回の改正により、昭和52年度末における環境基準の達成維持はほぼ可能であると予想しているが、今回の排出基準の改定の成果をみつつ、必要があると認められる場合には昭和52年末頃調整的な排出基準の強化を行うことを予定している。今回の排出基準の改定の効果は本年末頃から現われてくるので、昭和52年夏頃までのデータを整理される等調整的な強化を行うための実態の把握について格段の御協力を願いたい。
   なお、昭和53年度以降も原燃料使用量の動向等に応じて、環境基準を維持する観点から排出基準の改定を行つていく方針であるので、念のため申し添える。
   総量規制を行うべき地域は、今後は、K値を3.5にしても環境基準を達成することが困難な地域とし、その要件に該当する地域については、今後とも逐次指定していく方針である。また、季節により燃料の使用量に著しい変動のあるばい煙発生施設が密集している地域については、季節による燃料規制も活用している方針である。総量規制又は季節による燃料規制を行うべきと認められる地域を管轄する都道府県知事にあつては、データーを整理したうえ当局と協議されたい。