法令・告示・通達

スパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する法律の施行について

  • 公布日:平成2年7月3日
  • 環大自83号

環境事務次官から各都道府県知事あて
 先般第118回国会においてスパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する法律(平成2年法律第55号。以下「法」という。)が可決、成立し、平成2年6月27日に公布され、同日から施行された。
 法は、スパイクタイヤの使用を規制すること等により、スパイクタイヤ粉じんの発生を防止し、もつて国民の健康を保護するとともに、生活環境を保全するために制定されたものである。貴職におかれても、下記事項に留意の上、法の趣旨の周知徹底と円滑な施行に格段の御協力を願いたく、命により通達する。

第1 基本的事項

 1 法制定の趣旨

   近年、積雪寒冷地域においてスパイクタイヤを装着した自動車が道路を損傷することにより発生する粉じん(以下「スパイクタイヤ粉じん」という。)による大気汚染が深刻な社会問題となつている。スパイクタイヤ粉じんは、生活環境の悪化をもたらすのみならず、人の健康への影響についても調査結果が報告されており、その防止が緊急の課題となつている。
   スパイクタイヤ粉じん問題に対しては、従来から国、地方公共団体及び国民各層において各種の取組みがなされてきているが、問題の解決には至らず、依然として厳しい状況にある。
   法は、このような状況にかんがみ、スパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する国民並びに国及び地方公共団体の責務、指定地域におけるスパイクタイヤの使用規制等の措置等を定めることにより、スパイクタイヤ粉じんの発生を防止し、もつて国民の健康を保護するとともに、生活環境を保全しようとするものである。

 2 スパイクタイヤ粉じん問題解決のための基本的認識

   スパイクタイヤは、積雪又は凍結の状態にある道路における滑り防止に資するものであるが、粉じんの発生により環境に影響を及ぼすにもかかわらず、使用の都度着脱を必ずしも行わなくてすむというタイヤチェーンにはない利便性から、積雪寒冷地域を中心として冬期における常用タイヤとして普及したものである。
   スパイクタイヤ粉じん問題は、現在の社会生活に広く定着している自動車の使用に伴つて生じているものであるという点及び自動車の使用者は、スパイクタイヤ粉じんに関しては、被害者であると同時に加害者にもなつているという点で、生活型公害の典型であり、その解決のためには国民一人ひとりがスパイクタイヤ粉じんによる健康影響及び生活環境影響を認識し、スパイクタイヤを究極的にはなくしていこうとする脱スパイクタイヤ社会の実現に向けて努力していくことが肝要である。このため、全ての国民がスパイクタイヤ粉じんを発生させないように努めるべきとの責務を定めているものである。
   また、脱スパイクタイヤの実行を国民に求めていくためには、国及び地方公共団体においても、スパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する啓発及び知識の普及並びに関連の施策を推進、実施するように努めるべきとの責務を定めているものである。
   法は、このように国民と行政が脱スパイクタイヤに向けて努力すべきことを基本的考え方とする一方、スパイクタイヤ粉じんの発生の防止が特に必要である地域については、これを指定地域として指定し、当該地域において、スパイクタイヤの使用を禁止し、違反者に対しては罰則を適用することとしている。
   これらの責務規定と禁止・罰則規定の関係については、責務規定が公布の日から施行されるのに対し、禁止規定は平成3年4月1日から、罰則規定は平成4年4月1日から施行されることからも明らかなように、法の趣旨は、まず責務規定による国民の努力及び行政の施策により脱スパイクタイヤ社会を実現することとしており、取締りによることを基本としたものではないと解する。

第2 定義に関する事項

  定義規定のうち、法第2条第2項の「自動車」に関しては、原動機付自転車は、重量が小さいこと及びスパイクタイヤの普及状況からみて、原動機付自転車に係る粉じん問題は小さいと考えられることから対象から除外している点、並びに同条第5項の「道路」に関しては、道路交通法(昭和35年法律第105号)第2条第1項第1号に規定する「一般交通の用に供するその他の場所」は、設置されている場所等からみて、当該場所に係るスパイクタイヤ粉じん問題は小さいと考えられることから、対象から除外している点に留意する必要がある。

第3 国民、国及び地方公共団体の責務に関する事項

 1 国民の責務

   国民の責務として、スパイクタイヤ粉じんを発生させないように努めるとともに、法第4条に定める国又は地方公共団体が実施するスパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する施策に協力しなければならないとしている。(法第3条)
   本規定の「スパイクタイヤ粉じんを発生させない」責務とは、自然人、法人の別なくスパイクタイヤ粉じん発生の直接的原因となる積雪又は凍結の状態にない道路の部分におけるスパイクタイヤの使用をしないようにすることはもちろんのこと、間接的原因となるスパイクタイヤの販売、輸入その他の供給をしないようにすること、積雪又は凍結の状態にある道路の部分におけるスパイクタイヤの使用をしないようにすること等を求めているものである。
   スパイクタイヤ粉じん問題のような生活型公害の抜本的解決のためには、国民自らがその問題を自覚し、ライフスタイルや事業活動のあり方の見直しも含む取組みを行うことが必要不可欠である。また、自動車の移動の広域性を考慮して、全国的に脱スパイクタイヤ社会を実現する必要がある。したがつて、スパイクタイヤを原則的に使用しないこと等を全国民に求める本規定は、本問題を解決するうえで極めて重要な意義を有している。

 2 国及び地方公共団体の責務

   国の責務として、スパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する啓発及び知識の普及、冬期における道路の環境の整備、スパイクタイヤに代替するタイヤ等の開発の支援、冬期における自動車の安全な運転のための教育等スパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する基本的かつ総合的な施策を推進するように努めるとともに、地方公共団体が実施するスパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する施策を推進するために必要な助言その他の措置を講ずるように努めなければならないとしている。(法第4条第1項)
   また、地方公共団体の責務として、当該地域の自然的、社会的条件に応じたスパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する施策の実施に努めなければならないとしている。(同条第2項)
   代替タイヤはスパイクタイヤとほぼ同程度の性能を有するものの、代替タイヤを使用した場合は、スパイクタイヤを使用した場合に比べ凍結路面における若干のスピードダウン、凍結した急勾配の坂道におけるチェーンの装着等、性能の違いに応じた運転者の努力が必要になる。スパイクタイヤ粉じん問題の解決のためには、国民がこれを受け入れて法第3条の責務を実行する必要があるが、他方で国及び地方公共団体においても、法第3条の円滑な実現を図る必要があるため、本規定を定めるものである。特に、脱スパイクタイヤについての住民に対する啓発及び知識の普及は、本問題の解決のための最も直接的かつ効果的な施策である。

第4 指定地域の指定に関する事項

 1 地域の指定

   環境庁長官は、住居が集合している地域その他の地域であつて、スパイクタイヤ粉じんの発生を防止することにより住民の健康を保護するとともに生活環境を保全することが特に必要であるものを指定地域として指定するとしている。(法第5条第1項)
   指定に当たつては、「住居が集合している地域その他の地域」におけるスパイクタイヤ粉じんによる健康影響又は生活環境影響に関する具体的な事例、降下ばいじん量、交通量、スパイクタイヤ装着率等を勘案し、総合的に判断することとする。

 2 指定の手続き

   指定地域の指定について、都道府県知事は法第5条第1項の指定の要件に該当すると認められるときには環境庁長官に対して指定の申出をすることができるとしている(同条第2項)ほか、環境庁長官による国家公安委員会その他関係行政機関の長との協議及び関係都道府県知事の意見聴取(同条第3項)、都道府県知事による関係市町村長の意見聴取(同条第4項)等の手続きを定めている。
   以上の手続規定は、指定地域の指定の変更又は解除についても準用される。

 3 都道府県知事及び市町村長の意見等

   地域指定の要件に該当するか否かを判断するために必要な事項は、基本的には指定を行う環境庁長官が主体的に把握していくこととなるが、都道府県知事は地方公共団体を代表する立場にあり、また、管轄する地域の実情をよく承知していると考えられることから、その意見を聴くことにより適切な地域の指定を行おうとするものである。都道府県知事は、意見を述べる際には、関係市町村長の意見を踏まえると同時に、各都道府県内での均衡及び指定地域の一体性に配慮する必要がある。
   また、指定の申出については、環境庁長官が指定しようとする、又は指定した地域以外に要件に該当する地域があると都道府県知事が認めた場合に、指定の申出をすることができることを定めたものである。なお、この場合においても、指定要件に該当するかどうかを環境庁長官が判断した上で、該当する場合は指定することとなる。
   さらに、市町村長は、管轄する地域の実情を詳細に承知していると考えられることから、都道府県知事が指定の申出をする、又は環境庁長官に対して意見を述べるときには、市町村長の意見を聴くこととし、適切な指定の申出又は意見の申し述べが行われるようにしたものである。

第5 指定地域における対策の実施に関する事項

  指定地域に係る都道府県は、当該指定地域のスパイクタイヤ粉じんの発生を防止するための対策として、当該指定地域の特性を考慮しつつ、知識の普及、住民の意識の高揚及び調査の実施に努めなければならないとしている。(法第6条)
  法第4条は、脱スパイクタイヤ社会の実現のためには、全国的な施策の展開が必要であるとの認識に立つて、全国的に関連の施策を実施すべきことを責務として定めているのに対し、本規定は、指定地域というスパイクタイヤ粉じんによつて健康影響若しくは生活環境影響が生じ、又は生じるおそれがある地域において、スパイクタイヤの使用禁止と併せて都道府県が地域の実情に応じた対策を実施するよう努めることにより、より円滑に脱スパイクタイヤ社会を実現しようという趣旨で定めているものである。

第6 スパイクタイヤの使用の禁止及び罰則に関する事項

  何人も、指定地域内の舗装道路の積雪又は凍結の状態にない部分において、スパイクタイヤを使用してはならないとし(法第7条)、これに違反した者は10万円以下の罰金に処するとしている(法第8条)。
  法は、全国的に国民の責務としてスパイクタイヤ粉じんを発生させないよう努めることとしており、脱スパイクタイヤ社会を実現することを基本的な考え方としているが、スパイクタイヤ粉じんによつて健康影響若しくは生活環境影響が生じ、又は生じるおそれがある地域については、特にスパイクタイヤ粉じん問題の確実な解決を図るため、これを指定地域として指定し、当該地域におけるスパイクタイヤの使用を原則として禁止し、違反者には罰金を科することとしたものである。
  なお、①積雪又は凍結の状態にある道路の部分においては、スパイクタイヤの使用は粉じんの発生を必ずしも伴うものではないことから、②消防用自動車、救急用自動車等については、公共性の高い業務のため緊急走行が求められること等から、③トンネル内の道路等については、積雪することがなく、スパイクタイヤを使用した場合不可避的に粉じん発生を伴うことから、いずれも禁止・罰則規定の対象からは除外している。
  以上のように、スパイクタイヤの使用をあらゆる場面で禁止・罰則規定の対象とすることとしなかつたのは、禁止・罰則による国民に対する制約は、法目的達成のために必要な範囲において行うべきとの考え方によつたものである。
  ただし、本規定により禁止・罰則規定の対象とならない場合においても、法第3条の規定からは、スパイクタイヤ粉じんを発生させないように努めるべき責務があり、スパイクタイヤの使用を容認する趣旨ではない点に留意する必要がある。また、スパイクタイヤを装着した自動車が積雪又は凍結の状態にある道路のみを走行すること及び路面の状況に応じてスパイクタイヤをその都度着脱することは極めて困難であるので、指定地域を走行する可能性のある自動車は予め代替タイヤを装着しておくことが、本規定を遵守するための現実的な方法である点に留意する必要がある。

第7 施行期日及び経過措置

  法は公布の日から施行されるが、スパイクタイヤは積雪寒冷地域等において冬期には多数の国民に利用されてきたという状況にかんがみ、脱スパイクタイヤ社会を実現するためには、法の内容の周知期間並びに国及び地方公共団体による施策が実施される期間を十分に置く必要があることから、スパイクタイヤの使用禁止規定は平成3年4月1日から、罰則規定は平成4年4月1日からそれぞれ施行するとしている。(法附則第1条)
  また、一定以上の大きさの自動車については、法の公布の日においてスパイクタイヤに代替するスタッドレスタイヤがまだ実用化していないことから、実用化すると考えられる政令で定める日まで、スパイクタイヤの使用禁止規定及び罰則規定の適用を猶予している。(同第3条)

第8 その他の留意事項

 1 公害等調整委員会の調停との関係

   公害等調整委員会の調停により、国内大手タイヤメーカー7社は、平成2年12月末日限り、スパイクタイヤの製造を中止し、平成3年3月末日限り、同タイヤの販売を中止することとなつている。
   一方、法は、国民の健康を保護するとともに生活環境を保全するため、国民の責務としてスパイクタイヤ粉じんを発生させないように努めることその他所要の規定を設ける等、全国的に脱スパイクタイヤを推進しようとするものである。したがつて、法を着実に施行することにより、調停の円滑な実施が図られるものである。
   なお、指定地域におけるスパイクタイヤの使用禁止規定の施行期日を平成3年4月1日としたことは、基本的には十分な周知期間を置くためであるが、公害等調整委員会の調停の実施期日にも配慮したものである。

 2 その他

   第4の1に関する指定地域の指定要件のさらに詳細な判断の方法等については別途通達する。

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