法令・告示・通達

地球温暖化防止行動計画

  • 公布日:平成2年10月23日
  • 地球環境保全に関する関係閣僚会議決定)

 「当面の地球温暖化対策の検討について」(平成二年六月一八日地球環境保全に関する関係閣僚会議申し合せ)に基づき、地球温暖化防止行動計画(以下、「行動計画」という。)を定める。

第一 行動計画策定の背景及び意義

  地球温暖化問題は、人類の生存基盤に深刻な影響を及ぼすおそれがある重大な問題である。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告によると、現状のままで温室効果ガスの排出が続けられるならば、過去一万年の間に例をみない急激な温度上昇が生じ、その結果、海面水位の上昇や気候の変化、人間の居住環境への脅威等自然、経済及び社会のシステムに重大な影響がもたらされると予測されている。
  将来の世代に、その生存と発展の基盤である良好な地球環境を引き継ぐことは、現在、地球環境の恩恵を受けている我々の世代の責務である。このような認識の下に、地球温暖化に関しては科学的に未解明な部分が残されているものの、その被害が顕在化し取り返しのつかない事態が生じないよう、世界各国が協調して直ちに実施可能な対策から着実に推進していく必要がある。
  こうした中で、我が国は、その経済力、技術力等を活用して、開発途上国への支援等国際的地位に応じた役割を積極的に果たしていかなければならない。
  我が国は、これまで官民挙げてエネルギーの効率的利用に努めてきた成果として、人口一人当たりの二酸化炭素排出量では、先進国中最も低いグループに属している。しかしながら、我が国は相当量の二酸化炭素を排出しており、また、近年の内需拡大を背景とした経済活動の好況や国民のライフスタイルの変化等により、その排出量は、ここ数年増大傾向に転じつつある。
  温室効果ガスの排出抑制については、持続可能な開発の考えに沿って経済の安定的発展を図りつつ、地球温暖化による影響の重大さ及びその抑制対策や適応対策の実施可能性等を総合的に勘案して実施すべきものであり、我が国としては、温室効果ガスの排出抑制のための国際的な共通の努力として、第一段階として、温室効果ガスの排出量の安定化を早急に達成する必要がある。
  また、二酸化炭素の吸収源としての森林については、地球規模での減少が生じており、我が国と世界の森林資源との関わりを踏まえ、持続可能な開発の考え方に沿つて、その減少の防止と保全造成に率先して取り組む必要がある。
  さらに、地球温暖化に係る不確実性を低減させ、科学的知見を踏まえた適切な対策を講じていくため、調査研究、観測・監視を推進するとともに、革新的技術を含め一層の技術開発とその普及に努めることが必要である。
  以上のような諸状況を踏まえ、地球温暖化対策を計画的総合的に推進していくための当面の政府としての方針及び今後取り組んでいくべき実行可能な対策の全体像を明確にし、もつて国民の理解と協力を得るとともに、我が国として国際的な枠組みづくりに貢献していく上で基本的姿勢を明らかにすべく行動計画を定める。

第二 地球温暖化対策の推進に当たり配慮すべき基本的事項

 一 環境保全型社会の形成

   地球温暖化の防止のためには、社会のあらゆる分野において広範かつ長期的に各般の対策を実施していくことが必要であり、この点についての国民の理解と積極的な協力が不可欠である。こうした国民の理解と協力に基づき、国内の都市機能、経済機能の過度の集中を防止する際に、国土全体での環境と人間活動の適切なバランスを図るとともに、温室効果ガスが排出されにくい都市構造や交通体系の形成等社会経済システムを幅広く見直し、環境倫理の確立を図りつつ、国民のライフスタイルを環境に配慮したものへと改めていくことにより、地球環境への負荷の少ない社会を形成していくことが必要である。

 二 経済の安定的発展との両立

   地球温暖化は、我々の生活や経済活動のあらゆる局面に関わる問題であり、その対策は、相互依存関係が深化した世界経済に様々な影響を及ぼす。従つて、地球温暖化問題の解決に当たつては、経済政策と環境政策の連携の強化や技術によるブレークスルー等を通じ、持続可能な開発の考えに沿つて経済の安定的発展との両立を図つていくことが必要である。

 三 国際的協調

   地球温暖化は、その原因と影響が地球規模で生じることから、各国の努力のみならず、国際的協調による取組が不可欠である。
   特に、二酸化炭素の排出は、今後の世界的な人口増加と経済発展に伴い、急激に増加することが予測されることから、我が国は、優れた技術力と環境保全の豊かな経験を背景に、国際協力を通じて世界の取組の先導的役割を果たしていく必要がある。
   また、かかる立場から、長期的視点に立つて、世界各国が協調して科学的基盤の整備、省エネルギー・省資源の推進、クリーンエネルギーの導入、革新的な環境技術の開発、温室効果ガス吸収源の拡大、次世代エネルギー技術の開発等に取り組む総合的かつ長期的ビジョン(地球再生計画)づくりの共同作業の必要性の国際的合意形成に努めてきたが、今後、行動計画を踏まえ、その具体化の促進に努めていく必要がある。

第三 行動計画の目標

  温室効果ガスの排出抑制目標は次のとおりとする。

  1.  (一) 二酸化炭素については、先進主要諸国がその排出抑制のために共通の努力を行うことを前提に、次の目標を定める。
    1.   ① 二酸化炭素の排出抑制のため、官民挙げての最大限の努力により、本行動計画に盛り込まれた広範な対策を実施可能なものから着実に推進し、一人当たり二酸化炭素排出量について二〇〇〇年以降概ね一九九〇年レベルでの安定化を図る。
    2.   ② 前記①の諸措置と相俟つて、さらに、太陽光、水素等の新エネルギー、二酸化炭素の固定化等の革新的技術開発等が、現在予測される以上に早期に大幅に進展することにより、二酸化炭素排出総量が二〇〇〇年以降概ね一九九〇年レベルで安定化するよう努める。
  2.  (二) メタンについては、現状の排出の程度を超えないこととする。また、亜酸化窒素等その他の温室効果ガスについても、極力その排出を増加させないこととする。
      また、二酸化炭素吸収源については、国内の森林・都市等の緑の保全整備を図るとともに、地球規模の森林の保全造成等に積極的に取り組むこととする。

第四 行動計画の期間

  行動計画の期間は、一九九一年(平成三年)から二〇一〇年(平成二二年)までとし、二〇〇〇年(平成一二年)を中間目標年次とする。その間、国際的な動向や科学的知見の集積等を踏まえつつ、必要に応じ行動計画の見直しを行い、機動的に対応していくこととする。

第五 講ずべき対策

  政府は、計画の目標達成に向けて、以下の対策を推進するものとし、実施可能な対策から順次着手する。また、その際、地球温暖化対策の実施が他の環境問題の惹起・拡大につながらないよう十分留意する。

 一 二酸化炭素排出抑制対策

   我が国の都市・地域構造、交通体系、生産構造、エネルギー供給構造、ライフスタイル等の在り方を幅広く見直すとともに、技術の開発・普及を促進し、以下の対策を総合的に推進する。

  一 二酸化炭素排出の少ない都市・地域構造の形成

    諸活動の集中する都市等を中心に、良好な居住環境の確保を図りつつ、二酸化炭素の排出がより少ない都市・地域構造の形成等を図る。

  1.    (一) 都市緑化の推進により、植物の持つ気温低減効果を利用し、ヒートアイランド現象をやわらげる等都市気象を緩和し、冷房に要するエネルギー需要を低減する。
  2.    (二) 住宅等建築物の断熱構造化の推進、パッシブソーラーハウス等の省エネ型の建築物の普及促進を図るとともに、建築物において太陽熱温水器、ソーラーシステム、太陽電池等による自然エネルギーの利用を積極的に促進する。
  3.    (三) NOX低減等の技術開発、既存電力システムとの整合性を図りつつ、エネルギー効率の向上につながる形での燃料電池をはじめとするコージェネレーション(熱電併給システム)の導入促進を図る。
  4.    (四) 地下鉄排熱、下水排熱等の都市活動に伴う低温排熱や河川や海等の持つ熱エネルギーをヒートポンプによつて冷暖房等の熱源として利用するとともに、これらを活用した地域の熱供給システム等を普及・促進する。
  5.    (五) 廃棄物の焼却処理に伴う余熱の供給、発電、下水汚泥のエネルギー利用等を積極的に促進する。また、ごみの輸送、上下水道関連施設等に要するエネルギーの利用の効率化を図る。

  二 二酸化炭素排出の少ない交通体系等の形成

    増大する交通需要に対応し、人と物の円滑な移動性を確保しつつ二酸化炭素の排出を抑制するため、交通機関単体からの排出量の低減を図る。また、輸送機関の間の連携を図りつつ、自動車交通需要を軽減する方策を検討し、二酸化炭素排出の少ない交通体系の形成を図るため、実施可能なものから逐次導入する。

  1.    (一) 自動車の軽量化、走行抵抗の低減等により燃費改善を更に進めるとともに、ハイブリッドエンジン、超希薄燃焼方式、回生エネルギー利用技術等の開発・導入を積極的に推進することにより、自動車単体からの二酸化炭素の排出量を低減する。また、鉄道、船舶、航空機等についても、技術改良等により、エネルギー効率の向上を図るとともにエネルギー効率の良いものの導入を促進する。
  2.    (二) 自動車部門を中心に、二酸化炭素排出の少ないエネルギーの利用を促進することとし、電気自動車等の低公害車の導入を積極的に推進する。
  3.    (三) 貨物輸送については、中長距離の物流拠点間の幹線輸送において、積極的にモーダルシフト(鉄道輸送、内航海運等への誘導)を図るとともに、トラック輸送においても、営業用トラックの利用の促進、共同輸送の推進、情報システム、集約的物流拠点の整備等を推進することにより、輸送効率の向上を図る。
  4.    (四) 旅客輸送については、鉄道、バス、新交通システム等の公共輸送機関の整備を推進するとともに、それらの輸送機関におけるサービスの向上等を推進することにより大都市圏をはじめとして公共輸送機関の利用を促進する。
  5.    (五) 自動車交通の渋滞を緩和し、効率的で円滑な走行を確保することにより、走行中の二酸化炭素の排出量を低減するため、立体交差、交差点改良、バイパス、環状道路等の道路整備を行うとともに、交通管制システム等の整備及び高度化を推進する。

  三 二酸化炭素排出の少ない生産構造の形成

    製造業、農林水産業、建設業等の産業分野において、エネルギー利用の効率化、二酸化炭素の排出の少ない又は排出のないエネルギー源の導入等を積極的に推進する。

  1.    (一) 製造業においては、燃焼効率の向上、各種省エネルギー型の製造設備の普及促進、省エネに資するプロセスの導入促進等を推進する。そのため、例えば、溶融還元製鉄法、直接苛性化技術等の技術開発を推進し、その導入を図る。また、コンビナート等における工場間での排熱等の利用を推進する。
  2.    (二) 農林水産業においては、農業機械、漁船等のエネルギー利用効率の改善を図るとともに、施設園芸等の加温用・穀物等の乾燥用エネルギーとして自然エネルギー、バイオマスエネルギー等の利用を推進する。
  3.    (三) 建設業においては、建設機械のエネルギー利用効率の改善を図るとともに、高炉セメントの利用を促進する。

  四 二酸化炭素排出の少ないエネルギー供給構造の形成

    発電部門、都市ガス製造部門等のエネルギー転換事業部門においては、エネルギー転換効率の向上、二酸化炭素排出の少ない又は排出のないエネルギー源の導入等を推進する。

  1.    (一) 発電部門においては、
    1.     ① 二酸化炭素を排出しないエネルギーとして、安全性の確保を前提に原子力の開発利用を推進する。また、水力、地熱の利用を推進するとともに、技術開発を行いつつ、太陽光、風力の利用も併せて進める。さらに、二酸化炭素の排出の少ない燃料である天然ガス等の利用を推進する。
    2.     ② 発電効率の向上を図るため、コンバインドサイクル発電(複合発電)、超々臨界圧プラント等の開発・導入を促進する。
    3.     ③ 燃料電池、太陽電池等の分散型電源の導入を積極的に推進する。
  2.    (二) 都市ガスのLNG化、天然ガス導入基盤の整備等を推進する。
  3.    (三) 電気の負荷平準化を図るため、電力の負荷集中制御技術の確立等によるピーク時の需要の低減、エネルギー貯蔵等を推進するとともに、ガス冷房の普及等を促進する。

  五 二酸化炭素排出の少ないライフスタイルの実現

    家庭等において二酸化炭素の排出を少なくするライフスタイル等を形成するため、社会システムの整備、環境教育の充実を図る。

  1.    (一) 紙、缶、ビン等のリサイクルを推進するとともに、リサイクルしやすい製品、再生品の開発・普及等のためのシステムづくりを推進する。
  2.    (二) 過剰包装、自動販売機のエネルギー多消費形態、ダイレクトメールの氾濫等流通サービスの在り方を見直す。
  3.    (三) 環境マークの活用等により、二酸化炭素の排出の少ない製品等の普及促進を図る。
  4.    (四) サマータイムの導入について検討するとともに、夏季一斉休暇等の推進により労働時間の短縮を図る。
  5.    (五) 家庭、オフイス等において、冷暖房温度の適正化、エネルギー制御システムの導入、エネルギー効率の高い住宅用機器・OA機器の利用を促進する。

 二 メタンその他の温室効果ガス排出抑制対策

   大気中濃度が増加しているメタン、亜酸化窒素、対流圏オゾン等の二酸化炭素以外の温室効果ガスについても以下の対策を総合的に推進する。
   なお、フロン等のうち、成層圏オゾン層の保護の観点から、既に条約・議定書及び国内法に基づき所要の対策が講じられているものについては、本計画によらず引き続きそれらの制度に基づき対策の推進に努める。

  一 メタン対策

    メタン排出の抑制には、これまで行つてきた環境保全対策や今後の二酸化炭素排出抑制対策が寄与することから、これらの対策を一層推進する。更に、新たな対策の検討及び技術開発を進めつつ逐次対策の推進を図る。

  1.    (一) 廃棄物の処理における対策
    1.     ① 一般廃棄物について極力資源化を図り、その減量化を推進する。
    2.     ② 資源化及び他の方法による中間処理が行われない可燃ゴミについて、全量焼却に努め、未処理のまま埋立処分される有機物をなくすことにより、メタン排出量の大幅な削減を図る。なお、これらの対策の実行に際しては、焼却余熱の有効利用に努める。
    3.     ③ 産業廃棄物については、汚でい、木くず等の資源化・再利用や適正処理を推進する。
    4.     ④ 有機物を埋立処分する場合においても、メタン排出の少ない準好気性埋立を推進するとともに、メタンの回収、処理、利用を図る。
  2.    (二) 農業における対策
    1.     ① 水田については、放出実態の把握を行いつつ、排水の改良等の水管理の改善や施用有機物の適正管理等がメタン放出低減に資すると考えられることから、これらの対策について検討を進める。
    2.     ② 畜産については、家畜ふん尿の好気性発酵を主体とした対策を推進するとともに、家畜からの排出の実態把握に努める。
  3.    (三) エネルギーの生産・利用における対策
    1.     ① 石炭採掘については、保安対策として取り組まれているガス抜き回収・利用を今後とも進める。
    2.     ② ガス供給事業等については、ガス漏洩防止等の排出抑制対策を今後とも進める。
    3.     ③ 運輸部門等における燃料の燃焼については、エネルギーの有効利用等の対策を推進しつつ、排出量の実態の把握を行い、必要に応じ除去等の排出抑制対策についてその技術的可能性も含め検討を進める。

  二 亜酸化窒素対策

    窒素肥料を施した土壌からの放出については、放出実態の把握を行いつつ、窒素施用の効率化に資する施肥管理技術、緩効性肥料の開発・使用等の放出抑制対策について検討を進める。また、化石燃料等の燃焼からの排出については、発生・排出の機構解明、排出量の定量的把握を行い、排出抑制対策の導入を目指して調査研究・技術開発を進める。

  三 その他の対策

    メタン及び対流圏オゾンの大気中濃度を増加させる一酸化炭素、非メタン炭化水素、窒素酸化物(NO及びNO2)について、地球温暖化への寄与を把握するとともに、これまで行つてきた対策の推進に努める。

  三 二酸化炭素の吸収源(森林等の緑)対策

    二酸化炭素の吸収源である森林・都市等の緑の適切な維持及び拡大を図るため、森林の生態的な多様性の保全と持続可能な利用に配慮しつつ、その量、質等を把握して、森林・都市等の緑の保全整備を総合的・計画的に推進する。
    また、併せて木材資源の利用の適正化を図る。

  一 国内の森林・都市等の緑の保全整備

  1.    (一) 森林の適切な保全整備
    1.     ① 自然性の高い森林から都市地域に残された森林に至るまで多様性を確保しつつ、体系的に保全するとともに、持続可能な森林の管理を推進する。
    2.     ② 林業生産体制の整備等に努め、間伐等の保育を適切に実施するなど森林の管理水準を向上させる。また、非皆伐、長伐期、複層林、育成天然林、天然生林施業等により、多様な森林の整備と持続可能な森林経営を推進する。
    3.     ③ ナショナルトラスト活動をはじめとする各種の森林の保全に係る民間活動を支援するとともに、地域住民の参加による里山や都市近郊における身近な森林の保全管理を推進する。
    4.     ④ 国民の参加、資金の拠出による森林の保全整備を推進する。
    5.     ⑤ 酸性雨等の環境汚染による森林への影響を把握し、適切な対策を推進する。
  2.    (二) 都市等における緑の保全創出
    1.     ① 公共公益施設や工場、事業所等の緑化を推進する。
    2.     ② 都市内あるいは都市をとりかこむ緑地、森林を相互に結びつけて、広域的かつ連続的に確保するため、都市公園や都市緑地の整備、保全等を図るとともに、宅地、ビルの屋上等における緑化を進めるなど、都市の緑化を総合的に推進する。
    3.     ③ 国民の参加、資金の拠出による緑化を推進する。

  二 木材資源利用の適正化

  1.    (一) 熱帯木材貿易の適正化
         持続可能な熱帯林の経営をめざした国際熱帯木材機関(ITTO)の活動に積極的に貢献することにより、熱帯木材貿易の適正化を図る。
  2.    (二) 木材資源の有効利用
         間伐材の利用促進を図るとともに、木材製品の耐久化や再利用、再生紙の利用を促進し、使い捨て型の利用を減らすなど資源の有効利用を総合的に推進する。

  四 科学的調査研究、観測・監視の推進

    「地球環境保全に関する調査研究、観測・監視及び技術開発の総合的推進について」(地球環境保全に関する関係閣僚会議申合せ)、「地球科学技術に関する研究開発基本計画」等を踏まえつつ、地球温暖化に関する調査研究、観測・監視を総合的に推進する。その際、地球圏・生物圏国際協同研究計画(IGBP)、世界気候研究計画等の国際共同研究計画などの国際プロジェクトに積極的に参画するとともに、研究交流を図る。
    特に、わが国としては、アジア・太平洋地域に重点をおいた調査研究、観測・監視を当該地域の研究者とも協力しつつ推進する。このため、調査研究、観測・監視の拠点等、研究体制の充実を図る。
    さらに、これらの成果をデータベース化及びネットワーク化することにより地球規模での共有化に努める。
    また、地球温暖化研究の関連する幅広い分野における研究者・技術者を育成する。

  一 科学的調査研究

  1.    (一) 機構解明及び将来予測
    1.     ① 地球温暖化の機構解明及び予測技術の向上のため、雲の影響、大気と海洋の相互作用を含む海岸の影響、雪氷の影響、生態系の寄与、古気候等の解明に努める。
            例えば、雲の放射過程、深層を含めた海洋変動及び極域氷床に関する調査研究の実施に努める。
    2.     ② 気候の形成及び気候変動に影響する主要な因子をモデルへより適切に組み込むとともに、モデルのメッシュ間隔の縮小に努める等、気候モデルの高度化を図る。
    3.     ③ 予測精度の向上及び総合的な温室効果ガス削減対策の推進に資するため、二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素等各種温室効果ガスの発生源・吸収源の特定、発生量・吸収量の定量的把握を行う。
            例えば、海洋等の二酸化炭素吸収能の把握に関する調査研究及びシベリア等高緯度地域におけるメタンの放出量に関する調査研究の推進に努める。
  2.    (二) 影響の評価
         地球温暖化が生態系、健康、水資源及び社会経済に与える影響、並びに沿岸域における災害等温暖化の様々な影響の評価の精緻化のため、影響評価モデルの開発を図る。また、影響の経済的評価及び環境資源勘定の手法の確立に努める。
  3.    (三) 対策の立案・評価
         地球温暖化対策技術の評価手法及び対策の経済的評価手法の確立に努める。また、環境保全型社会システム作りのための研究及び地球環境と調和する生活文化のあり方に関する研究を推進する。
  4.    (四) アジア・大平洋地域を対象とした総合的な地球温暖化研究
         アジア・太平洋地域における地球温暖化の影響・対策等に関する研究を重点的に推進する。このため、地球温暖化の機構の解明により、地域的気候変化の予測精度の向上を図るとともに、温室効果ガスの排出・吸収量の特定、地球温暖化影響の評価及び対策の立案・評価についてアジア・太平洋地域の各国との共同研究等により、わが国がアジア・太平洋地域において中核的な役割を果たしつつ、同地域における地球温暖化研究を総合的に推進する。

  二 観測・監視

    地球温暖化現象及びその影響の把握、並びに調査研究の推進のため、人工衛星、航空機、船舶、地上観測・監視施設等による温室効果ガス、温室効果関連ガス、気候、海洋、生態系等の変動に関するモニタリングを計画的に実施するとともに、これらの観測・監視データの流通に努める。また、より高度な観測・監視技術の研究開発を進める。
    例えば、温室効果ガス、気象・海象等のモニタリングにおいては、人工衛星による観測・監視が重要であることから、センサー等観測技術やデータ処理技術等の研究開発を推進するとともに、国際ネットワークのもとに全地球的な観測・監視に貢献する。

  五 技術開発及びその普及

    わが国は世界的に優れた省エネルギー技術等を有しており、前述の諸計画等を踏まえつつ、これら技術の一層の普及に加えて、より高度な省エネルギー技術、新エネルギー技術、二酸化炭素の回収・固定化技術等の開発の促進に努めるとともに、技術の普及を促進する社会システムの構築を図る。

  一 温室効果ガス排出抑制のための技術

  1.    (一) 温室効果ガスの排出を抑制するため、安全性確保を前提に原子力の開発利用を推進する。また、太陽、風力、波力等の自然エネルギー及び天然ガス等、二酸化炭素等を排出しない、あるいは二酸化炭素等の排出が少ない新・代替エネルギー技術の開発・利用を推進する。
  2.    (二) 高効率ガスタービンの開発、燃料電池等のエネルギー利用の効率化、生物機能を利用した製造技術等二酸化炭素等の排出の少ない製造技術の開発を行うとともに、住宅・民生機器における省エネルギー・省資源技術、下水道、河川、海、廃棄物処理等における未利用エネルギーの利用、高効率エネルギー利用技術、及び自動車等交通部門におけるエネルギー効率化のための技術・システムの開発を進める。
  3.    (三) 廃棄物の再生利用技術の開発・普及を推進する。

  二 温室効果ガス吸収・固定等のための技術

    吸収・吸着剤や分離膜による二酸化炭素等の回収技術の開発を行うとともに、人口光合成等による回収した二酸化炭素等の長期固定化及び再利用のための技術開発を行う。
    また、藻類、バイオテクノロジー、バイオマス等を利用した二酸化炭素の生物学的固定能力の向上のための技術開発を行う。
    さらに、二酸化炭素の吸収源としての森林の保全造成、砂漠化防止のための技術開発や森林の保全に資するためのパルプ代替資源利用の技術開発を行う。

  三 温暖化適応技術

    将来の温暖化による気温、日照、降水量等の変化に備え、環境に適応する品種の開発等の農林水産技術、降水パターンの変化に対応する治水・水利用技術、海岸の河川の保全・都市改造等の海面水位上昇対策技術、さらに気候の変動に対する植生・野生生物種の保全技術の開発に努める。

  六 普及・啓発

    地球温暖化対策の推進については、国民各界各層の幅広い合意と協力を得るとともに、事業者及び国民の地球環境保全に向けた足元からの取組を促進するため、行動計画の周知及び地球温暖化問題に関する最新の科学的知見に基づいた正確な情報の普及を図り、広く環境教育の推進に努めるとともに、その自主的取組に対する支援・助成を行う。

  1.    (一) テレビ等の各種メディアや環境週間等イベントを活用した普及・啓発、環境保護に関する講座の開催等環境教育の充実を図る。
  2.    (二) 学校教育においては、地球環境問題に関する学習や自然体験学習の拡充等環境教育カリキュラムの一層の充実に努めるとともに、教員の環境教育に関する指導力の向上を図る。
  3.    (三) 省資源・省エネルギー国民運動や緑化推進運動の推進体制の整備を図り、これら運動の一層の広がりに努めるとともに、各種地球環境保全活動・団体に対する支援・助成を行う。
  4.    (四) 調査研究等の成果の公表、地球環境保全活動の実践事例集等の各種マニュアル、ガイドラインの作成等を行う。

  七 国際協力の推進

    開発途上国における地球温暖化対策を強力に支援していくため、世界銀行の場における地球環境ファシリティに係る検討等開発途上国の支援に関する国際的取組に参加しつつ、政府開発援助の一層の充実等国際協力の推進に努める。また、調査研究、技術開発等の分野での先進国間の協力を積極的に推進する。
    この場合、特に、エネルギー効率の高い生産設備・技術や新・再生可能エネルギー技術等の地球温暖化防止に資する技術の開発途上国への移転及び世界の森林の四割を占める熱帯林を中心とした二酸化炭素吸収源の保全・造成に対する支援を積極的に推進する。

  一 地球温暖化防止対策の総合的支援

    地球温暖化に係る科学的知見に関する情報提供、観測・監視、影響評価、対策戦略の策定・実施、環境問題対処能力の向上等地球温暖化対策に関する開発途上国の取組に対する総合的な支援を積極的に行う。

  二 地球温暖化防止に資する技術の移転の推進

  1.    (一) エネルギー効率が低く、今後経済発展に伴い二酸化炭素排出量の急激な増加が見込まれる開発途上国に対し、エネルギー効率の高い生産設備・技術、交通施設や新・再生可能エネルギー技術等地球温暖化防止に資する技術の積極的な移転を推進する。
  2.    (二) 開発途上国に対する環境保全技術に関する情報提供、コンサルティング、研修等を行い技術移転を図ることを目的とした「UNEP地球環境保全技術センター」(仮称)の本邦への誘致を実現し、関連機関との連携を図ること等により、地球規模の取組を推進する。

  三 熱帯林等二酸化炭素吸収源の保全造成の支援

  1.    (一) ITTOがその設立目的を真に発揮し得る世界森林基金として活動できるよう支援を強化するとともに、国連食糧農業機関(FAO)の熱帯林行動計画(TFAP)の国際的推進に努める。
         なお、熱帯林行動計画は、森林保全と生態系保全を一層重視する形で、改革・強化されるよう、また、ITTOの行動計画は持続可能な森林経営を重視し市場の動きを改善するうえで強化されるよう、国際的協調を図りつつ、適切に対応する。
  2.    (二) 緑の地球を経営するという理念に沿つて、熱帯林保有国の主権を尊重しつつ、持続可能な森林経営、造林、生態系保全に対する支援等を推進する。また、国際森林憲章の制定に努めるとともに、その推進を通じ、森林に関する国際的な枠組みづくりに積極的に貢献する。
  3.    (三) 熱帯林のモニタリングと情報ネットワーク作りの支援等熱帯林を中心とする森林の保全造成、研究への協力に引き続き積極的に取り組む。
  4.    (四) ブラジル等熱帯林保有国の地域特性に応じた熱帯林保全プログラムの支援に努める。
  5.    (五) 新規開墾等焼畑に起因する熱帯林の減少を抑制するため、既存農地の生産性向上のための支援を行う。
  6.    (六) 温帯林についても、熱帯林と同様、国際機関との連携を図りつつ、総合的な保全対策を支援する。
  7.    (七) 世界的な森林の減少については、酸性雨等環境汚染の影響も重要であり、環境汚染対策としての公害防止技術の移転を図る。
  8.    (八) 国際機関との連携を図りつつ、砂漠化防止のための地域毎の行動計画の策定の支援、砂漠化防止に資する研究協力等砂漠化防止のための国際協力を推進する。

  四 研究協力、適正技術の開発を推進

  1.    (一) 地球温暖化に関する調査研究、観測・監視、二酸化炭素固定化・有効利用技術等革新的技術開発を中心とした技術開発について、先進国間での研究協力を積極的に推進する。
  2.    (二) 開発途上国においては、その技術、人材、経済力等を踏まえた適正な技術の導入が必要であり、開発途上国に対しその国情に応じ適用可能な技術の開発・普及に努める。その際、開発途上国の研究機関と積極的に研究協力を推進する。

  五 民間レベルでの国際協力の推進

    我が国の過去の公害防止努力を通じて、多くの環境保全技術が企業等民間部門において蓄積されていることから、民間レベルでの技術移転のための活動を支援する。また、持続可能な森林経営、造林対策等の森林保全・造成、債務・自然保護スワップ等の民間活動についても、支援に努める。

  六 国際協力プロジェクトに際しての地球温暖化防止への配慮

    開発途上国における開発が地球温暖化防止と両立し得る形で進められるよう、国際協力プロジェクトの実施に当たつては、必要に応じ、二酸化炭素の排出の少ない技術の活用等地球温暖化防止の観点に配慮する。また、熱帯林の保全は、周辺地域を含めた持続可能な開発の実現と密接不可分であることから、熱帯地域における国際協力プロジェクトの実施に当たつては熱帯林の保全のために、必要に応じ、環境、社会、経済、文化等総合的な観点に十分配慮する。

  第六 行動計画の推進

    政府は、行動計画の効果的かつ円滑な推進に努めるものとする。

  1.    (一) 各省庁は、国際的議論・検討も踏まえ、必要な政策について検討を行いつつ、「第五講ずべき対策」に定める事項を具体化するための必要な措置を講ずる。
  2.    (二) 地球環境保全に関する関係閣僚会議は、毎年度、二酸化炭素の排出総量等の外、対策の実施状況等について報告を受ける。また、必要に応じ、当該報告を踏まえ、行動計画の推進について検討する。
  3.    (三) 地方公共団体は、行動計画に沿つて可能な取組を行うことが期待される。国は、地方公共団体の必要な協力を得るため、地球温暖化対策に係る地方公共団体の取組に関し、情報提供や基本的方向の提示、対策の実施に当たつての条件整備等地方公共団体に対する支援措置を講ずる。
  4.    (四) 各省庁は、事業者等により行動計画に沿つた取組が積極的に行われるよう、所管の関係団体等を通じ、行動計画の周知徹底を図る外、情報提供等必要な支援措置を講ずる。


別表

 略

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