法令・告示・通達

浮遊粒子状物質に係る測定方法について

  • 公布日:昭和47年6月1日
  • 環大企88号

環境庁大気保全局長から各都道府県知事・政令市市長あて

 浮遊粒子状物質に係る環境基準(昭和47年環境庁告示第1号。以下「環境基準」という。)の設定およびその維持達成の方途については、貴職あて環境事務次官通知「浮遊粒子状物質に係る環境基準の設定について」(昭和47年2月14日環大企第27号)により示されたところであるが、このたび下記のとおり環境基準に係る測定方法を定めた。今後、貴職におかれては地域の浮遊粒子状物質による大気の汚染状態を的確に把握し、環境基準を可及的速やかに維持達成するための諸施策の実施に努められたい。
 なお、測定実務上留意する必要のある具体的な事項については別添「浮遊粒子状物質の測定方法について」〔省略〕を充分に参照されたい。

第1 大気中の粒子状物質について

  大気中に存在する粒子状物質には、工場・交通機関・家庭等より人為的な原因によつて発生するもののほか、土壌の舞上りや火山活動などの自然的な原因によつて発生するものが含まれている。これらの粒子状物質は、その発生原因により、化学的組成や物理的性質をことにするばかりでなく、地域・季節・時刻・気象等種々な要因の影響をうけ、その濃度および粒度分布もまた複雑に変動する。しかし、粗大な粒子は放出源の近くで比較的速やかに地表上に沈降するので、一般的には大気中に存在する粒子状物質は殆んどが粒径10ミクロン(μ)以下のものであるとされている。

第2 浮遊粒子状物質の測定にあたつての基本的考え方

  環境基準は、粒径10μ以下の粒子状物質(以下「浮遊粒子状物質」という。)の濃度条件を重量濃度(mg/m3)で定めたものである。
  従来比較的粒径の小さい粒子状物質の測定に広く用いられてきた方法としては、大別して大気中の粒子状物質を瀘紙に濾過して捕集することにより、その重量濃度を直接求める方法(以下「重量濃度測定方法」という。)および粒子状物質の重量濃度に対応する量を求める方法(以下「相対濃度測定方法」という。)がある。濾過捕集による重量濃度測定方法には単位時間あたりの採取する試料空気量により小容量法(いわゆるローボリウムエアサンプラーによる方法)および大容量法(いわゆるハイボリウムエアサンプラーによる方法)があり、相対濃度測定方法には、粒子状物質が光を散乱する性質を利用した散乱光光量積算計式記録装置(以下「デジタル粉じん計」という。)による方法および粒子状物質を瀘紙に濾過して捕集したときの瀘紙の反射光もしくは透過光の変化を利用したテープエアサンプラーによる方法がある。大気中の浮遊粒子状物質の濃度を評価するために行なわれる標準的な測定方法(以下「標準測定方法」という。)は、大気中に存在する粒子状物質からあらかじめ適切な方法によつて粒径10μ以下のものを分離する装置(以下「分粒装置」という。)を装着した重量濃度測定方法によつて行なうものとする。標準測定方法が満たすべき要件は第3に示すとおりであり、現段階でそれらの要件を満たす測定方法は多段型分粒装置もしくはサイクロン式分粒装置を装着した重量濃度測定方法(小容量法)である。
  しかし現段階においては、一般にこの方法によつて1時間平均濃度を連続的に測定することは著しく困難であるため、標準測定方法によつて測定された重量濃度と直線的な関係を有する量が得られることが確かめられている相対濃度測定方法により、その量の継時的変動を連続的に測定し、第5に示す方法によつて重量濃度へ換算することによつて大気中の浮遊粒子状物質の濃度を評価することが適当である。相対濃度測定方法が満たすべき要件は第4に示すとおりであり、現段階でそれらの要件を満たす測定方法はデジタル粉じん計による方法である。なお、このデジタル粉じん計による測定に際しては、装置のもつべき相対感度の較正と重量濃度への換算を、第5に示すとおり行なうことが必要であるので、貴職におかれてはこの点に関し特段の配慮をお願いする。

第3 浮遊粒子状物質の標準測定方法

  浮遊粒子状物質の標準測定方法は以下の要件のいずれをも満たすものでなければならない。

  1.  (1) 大気中に浮遊する粒子状物質からあらかじめ粒径10μをこえる粒子状物質を除去したうえで、粒径10μ以下の粒子状物質を濾過捕集による方法で捕集し、測定結果は捕集された粒子状物質の重量を吸引空気量で除した値をmg/m3で表して行なうこと。
  2.  (2) 分粒装置は、粒子状物質の粒径に応じた分粒の特性(以下「粒径―透過率特性」という。)の関数型が理論的に計算でき、実験との一致性が認められている装置であること。
  3.  (3) 分粒装置の粒径―透過率特性の関数型を理論的に求めることが困難である場合、または実験的な検討が行なわれていない場合には、(2)に示した条件を満たす装置との同時測定により、同一測定結果が得られることを確認できる装置であること。

  これらの要件を満たす測定方法は、現段階では、多段型分粒装置またはサイクロン式分粒装置を装着した濾過捕集による重量濃度測定方法(小容量法)である。
  多段型分粒装置(別添第2章第2節1―2―1参照)は、その粒径―透過率特性が理論的に計算でき、実験においても一致した結果が得られているものである。
  また、サイクロン式分粒装置(別添第2章第2節1―2―2参照)は、通常の大気を採取した場合には分離捕集しうる粒子状物質の最大粒径を理論的に計算でき、上記多段型分粒装置との同時測定により同一測定結果が得られることが確認されているものである。
  濾過捕集による重量濃度測定方法(大容量法、別添第2章第2節2参照)については、上述の要件を満たす分粒装置を装着すれば上記小容量法と同様に標準測定方法として採用しうるものであるが、現在実用化されているサイクロン式分粒装置は、その粒径―透過率特性が理論的・実験的に確かめられているとはいえないので、この種の装置を用いる場合には粒径―透過率特性を実験的に確かめるか、あるいは粒径―透過率特性が明らかにされている分粒装置を装着した小容量法の装置との同時測定により、同一測定結果が得られることを確かめることが必要である。

第4 浮遊粒子状物質の相対濃度測定方法

  浮遊粒子状物質の相対濃度測定装置は以下の要件のいずれをも満たすものでなければならない。

  1.  (1) 大気中に浮遊する粒子状物質を重量濃度測定装置と同時に測定し、指示された相対濃度が重量濃度と直線的関係を示すこと。
  2.  (2) 重量濃度の0.01~5.00mg/m3の範囲の濃度を、感度切替を行なうことなく測定できること。
  3.  (3) 1時間平均濃度が表示される機構をそなえていること。
  4.  (4) 機種ごとに再現性のある人工粒子を標準として、それに対して装置がもつべき相対感度が指示値で一定の値となるように設定されており、装置の使用開始後定期的に相対感度の点検および設定値への調整のための技術的方法が確立されていること。
  5.  (5) 定期的な点検により、相対感度の恒常性が維持されること。
  6.  (6) 重量濃度測定装置との定期的な同時測定により、相対濃度から重量濃度へ換算しうるものであること。
      以上の要件を満たす測定方法は、現段階ではデジタル粉じん計(別添第3章第2節1参照)による方法がある。
      なお、テープエアサンプラー(別添第3章第2節2参照)による方法については、過去において大気汚染の指標を示すものとして広く用いられていた方法であり、今後も測定の目的によつては使用しうるものであるが、現在用いられている装定装置は広い範囲にわたつて重量濃度との間の直線的関係を求めることは困難であり、また相対感度の値づけとその恒常性を保持するための技術的方法が確立されているとはいえないので、現段階では環境基準の評価のために用いることは適当ではない。

第5 デジタル粉じん計の相対感度の較正および重量濃度への換算等について

  1.  1 相対濃度測定法は浮遊粒子状物質の重量濃度に対応する物理量の継時的変動を連続的に測定するものであるが、浮遊粒子状物質の粒度分布や化学的組成、物理的性質の相違により、同一重量濃度に対し同一の相対濃度を示さないことがある。このため、機種ごとに再現性のある人工粒子を基準として、それに対して装置がもつべき相対感度を指示値で一定の値となるように設定し、定期的な点検によつてその恒常性を保持するとともに、地域ごとに重量濃度測定装置との定期的な同時測定によつて重量濃度への変換係数を算出し、その係数を用いて重量濃度へ換算することが必要である。
  2.  2 デジタル粉じん計は、標準粒子(デジタル粉じん計の場合に用いられているものは平均粒径0.3μ:logσg=0.15以下の単分散ステアリン酸粒子)の濃度1.5μg/m3に対し1c.p.h.の感度をもつように調整し、おおむね4ケ月に1回較正を行なつて相対感度を保持するものとする。
       較正は、標準粒子を発生させ、重度濃度との同時測定を行なうか、あらかじめ標準粒子に対して同時測定を行ない、その相対感度を較正した較正用装置と比較測定して行なうものとする。
       また較正を行なうと同時に、(1) 光源球の交換または表面の清掃、(2) 高圧電源の電圧の点検、(3) 入気口及び検出器内部の清掃等を必要に応じて行ない、相対感度の保持に努める必要がある。
  3.  3 デジタル粉じん計の指示値Rを重量濃度Cへ換算する変換係数は次のようにして求めるものとする。
    1.   (1) 単位測定網(汚染の態様に応じ都市または地域)ごとに、デジタル粉じん計による連続測定が行なわれている測定点のうち1カ所以上において、標準測定方法との同時測定を行なう。重量濃度の測定に要したサンプリング時間がn(nは整数、通常24もしくはその整数倍)時間の場合、デジタル粉じん計は1時間ごとに相対濃度が得られるので、1時間値R1、R2、......Rnの、n時間の間の平均値Rを算出し、同一時間における重量濃度と相対濃度との比C/R=Ftを計算する。
    2.   (2) 当初の変換係数Fは、20回以上の同時測定から得られたFtの値の幾何平均値とする。
    3.   (3) その後少なくとも1カ月に1回以上の同時測定から得られたFtの値から移動平均を求め、Fの値を補正するものとする。
  4.  4 なお、デジタル粉じん計は、相対湿度が85%以上になると、指示値がその影響を受け、湿度の影響を除外したものに比べて高い値を示すので、指示値の評価に際しては充分注意する必要がある。
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