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環境事務次官

環境事務次官 森本 英香

Q1:現代における国家の役割とは

 今、日本が置かれている状況を鑑みると、少子高齢化や地方の過疎化などについてどう対応するか、しっかりと取り組んで国民の不安を解消することが役割としてあると思います。また、SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)に代表される地球規模の課題もあります。そして、その課題解決に環境省が担う役割は非常に大きい。

現代における国家の役割とは 具体的に言うと、環境リスクを減らし、人が「安全」にかつ「安心」して暮らしていける環境を確保していくことが環境省の一番のミッションです。化学物質が健康を害するおそれを減らしていく、公害や自然破壊のリスクを前もって減らしていく、そうしたことを通して人々が安心して暮らすことでができる基盤を作っていくことがまず求められています。
 二つ目は、良い環境を創造していくことを通じて日本が、そして世界が抱えている問題を同時解決していくことも重要なミッションだと考えています。すなわち、温暖化問題、生物多様性の保全、資源循環等の環境問題の解決によって、生活の質を高めていくような新しい成長が環境政策で打ち出せるはずだと考えています。

Q2:これまでやってきた仕事と、そのやり甲斐

 私が入省当時はまだ環境問題の外縁が非常に狭く、公害や狭い意味での自然保護が中心でした。それが今や廃棄物問題・地球環境問題・放射能問題・原子力規制など非常に守備範囲が広くなりました。その節目に関わることができたことは非常にありがたいことでした。

 まず、環境基本法やNGO・NPOの活動を支援する地球環境基金の創設に関わったのはやりがいを感じた仕事のひとつです。1992年にリオデジャネイロで行われた地球サミットで地球環境問題は大きく取り上げられ、気候変動枠組条約や生物多様性条約はそのときに決定されました。これを受けて、日本でも今までの公害・自然保護という狭い意味での環境問題から、地球環境問題を視野に入れた新しい枠組みが必要となりました。当時、自民党の重鎮である竹下登議員、橋本龍太郎議員、小渕恵三議員などが集まって環境基本問題懇談会というものが立ち上げられました。この懇談会で複数回ご議論をいただいて、公害対策基本法を改正して環境基本法を作る必要があると打ち出していただきました。その後、中央環境審議会(※環境大臣の諮問機関)で審議し、環境基本法をつくることになったのですが、経済的措置や環境アセスメント部分を入れ込むのが山場でした。他省庁を含めた関係者と議論を重ね、なんとか盛り込めたことは良い経験です。

これまでやってきた仕事と、そのやり甲斐 また、環境基本法と同時に地球環境基金を作りました。これはNGO等の民間団体に対して資金的支援をする仕組みなのですが、当時はまだ民間団体との協力体制が脆弱で、彼らの特徴を活かしきれていなかった。正直に言うと当時はNGOに対して良い印象を抱いている幹部が少なかったということもあります。そこで、環境大臣や当時の事務次官などを含めた環境省幹部と、NGO等の民間団体を集めた懇親会を開いたんです。その結果、これまであまり繋がりのなかった両者が密接に繋がるきっかけとなり、民間団体側にも、大臣や事務次官にも満足してもらえる会になった。自分が必要だと信じるものを強く押し進めたことが功を奏し、社会に貢献できる仕組み作りをできたことは今でも記憶に鮮明です。

 環境省や原子力規制委員会を作った仕事もとても印象深いです。省庁再編があった時には、行政改革本部に対応した特命チームが各省庁にありました。私はそこの室長として行政改革本部と種々の調整を行い、当時の厚生省から廃棄物行政を環境省に移管したり、化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律、厚生労働省、経済産業省との共管法律)の環境省所管を拡大したりすることで、より広義の環境保全をスコープにした役所を作ることができました。

 原子力規制委員会をつくった時は、個人名で非難されたり、重要な会議中に貧血で倒れたりすることもありました。"原子力"そのものが反発されていたので、原子力規制委員会を作るということ自体が批判されていました。他方で、重要な組織改編に携わり、後に原子力規制庁次長というポストも経験させていただき、インパクトのある仕事内容でした。

 そういえば、私はめぐりあわせでロゴマークを作ることが多く、環境省や原子力規制委員会のロゴマークを担当したのも、実は私なんですよ(笑)。

Q3:これからの環境行政に求められること

 これからの環境省には、最初の話とリンクしますが、大きく2つのことが求められていると思います。一つ目は、環境リスク管理をより推し進めるということ。公害が生じれば必要な規制を行う、自然が破壊されればそれを適切に防ぐ必要な規制を行う。「人と環境を守る」観点からそうした仕事は引き続き大きな柱です。

これまでやってきた仕事と、そのやり甲斐  もうひとつ、環境政策を進めることで色んな地球規模の社会問題を同時に解決できるはずだと強く信じています。途上国の貧困や飢餓、日本国内のお年寄りの生きがいや地方の過疎化をどうするのか、どんな社会問題にも環境政策は貢献できるはずです。
 実際に、既に芽は出始めています。例えば再生可能エネルギーの普及は日本国内のエネルギーポテンシャルを顕在化することで地域の産業興しになる。また、国富流出を防ぐことにもつながるということがあります。環境省が推し進めている「国立公園満喫プロジェクト」も、質の高い自然環境を維持することで、地域で暮らす人たちがちゃんと生活を営めるようにしなければいけない、地域作りと質の高い自然環境の保護は、一体的にできるはずだ、という強い意志をもって進めています。従来の狭義での"環境保護"は規制手法のみに頼っていましたが、地域に住んでいる方々が「この貴重な自然は自分たちのかけがえのない財産だ」と考えていただくことでそれを守り、かつ生活の糧ともなる、人々の生活の質を高めるような新しい成長を目指すものなのです。

Q4:最後に、国家公務員を志望する方へのメッセージをお願いします。

 今日、世界中で拡がる環境政策というのは新しいものをつくっていく、創造していく豊かなものになっています。例をあげると、ESG投資というものがありますが、これは日々の儲けにとらわれず、その先にある持続的な経営を目指す企業を育てていくという強いメッセージを持った環境投資であり、環境省はこれを推奨すること等を通じて「環境と経済の両立」に繋げていきます。

 振り返ると、これまでの60年は激しい公害や自然環境破壊をどう防ぐかが課題でした。私が今までやってきた仕事もどちらかと言うと、後始末の方が多かった。一方、これからの60年の環境政策は、新しい環境を創造していくというものです。ようやく今、おもしろくなってきている。今後の環境省はより多くを取り込んで、創造的な仕事をしていかなければなりません。若い皆さんの柔軟な発想に期待しています。

環境事務次官 森本 英香環境事務次官 森本 英香
1981年環境庁入庁。長官官房秘書課調査官として省庁再編の中、環境省設立に尽力。震災発生後は内閣官房内閣審議官として原子力規制庁発足に尽力し、2012年原子力規制庁次長。その後、環境省大臣官房長を経て2017年7月より現職。

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