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地球環境審議官

地球環境審議官  

Q1:現代における国家の役割とは

写真1 通常、国内のルールメイキングが国家の役割ですが、現在は大きく二つの方向に動いていると考えています。一つは、温暖化や大気汚染の問題のように一国では決められない事象について、持続可能な社会づくりのための国際ルールを作り、アクションを統一する動きです。もう一つは、災害時のがれき処理のような、市町村や都道府県では対応できない事象への対応です。後者は生活に密着した課題ですが、直接国が関わっていく場面が増えています。この二つの方向への動きによって、国家が取り組む問題は国際的な方向にも生活に密着する方向にも極めて幅広くなってきています。一国で対応できない問題に多国間で取り組む動きがあり、他方で今まではローカルで処理されてきた問題がローカルではなくなっています。グローバライズとローカライズが同時に起こることで、従来の枠にとらわれない仕事が増えているのです。

Q2:これまでやってきた仕事と、そのやり甲斐

 役人生活の最初の15年くらいは廃棄物を主に担当し、大きく廃棄物行政が変わる時代を経験してきました。国の施策は、昭和45年の公害国会を契機として、「清掃」から「廃棄物処理」へと主眼を移していきました。(自身が入庁した)昭和50年代~60年代には、扱う廃棄物は重金属中心から感染性廃棄物や爆発性廃棄物へと広がっていきました。そして、今やごみが国境を越えて動く時代です。ごみ問題のエリアが拡大する一方で、国内でも個別リサイクル法を制定し3Rを推進するなど、新たな課題への対応にも着手されてきた。このような大きな転換期に廃棄物行政に携わることができました。

 写真2最近20年は気候変動対策に携わり、国際的な枠組みづくりに関与する醍醐味を味わうことが出来ました。現在はパリ協定が発効し、先進国も途上国も一緒に気候変動対策を推進しようという段階に来ていますが、それまでは「CO2を出す権利」という考え方までが主張され、責任を負うべきは先進国で、途上国は被害者という構図でした。途上国・先進国に関わらず人の活動の全てにおいてエネルギーが消費されており、化石エネルギーに頼る以上はCO2が発生し続けていることも事実です。そしてその被害は日本全国、更には世界中に及び得るのです。環境行政が対象とする人の活動はどんどん拡大しています。10年前、20年前はそのような問題はありませんでした。あったとしても気がつかなかった。回答も前例もなく、且つ非常に幅広い問題に挑戦し続けることが出来るというのは、他の仕事にはない特徴かもしれません。


Q3:これからの環境行政に求められること

 公害、健康被害、化学物質対策など、これまでの典型的な行政はとても大事ではありますが、他方で全ての人・企業の日常の活動をどう変えるか、ということも環境行政において進めなければなりません。個人、会社などすべての主体がそれぞれの思いで変わっていける環境を作ることが肝要です。そのためには情報の共有が何より重要だと考えています。

 例えば、気候変動対策を進めたいのであれば、気候変動とは何か、なぜ起こっているか、何をしたらよいか、ということを共有する必要があるでしょう。そして、環境に配慮した製品やサービスを推進したいのであれば、仮にそれが高い価格でもマーケットに支持される社会にしなければなりません。技術開発も大事ですが、誰かが買って、使って、初めて技術は価値を発揮します。その基盤を整備してこそ開発者は安心して技術開発に邁進することができます。

 このように、各主体の変革のアクションを支える社会的基盤を作る必要があることを思えばCOOL CHOICE(※1)は、単なるキャンペーンではなく、極めて重要な機能を持っていることに気がつきます。その推進の過程では、今後10年、20年、30年先を見据える必要があります。今では電化製品や車を買う時に省エネや燃費を考慮しない人はいないでしょう。しかし20年、30年前からずっとそうでしたでしょうか。これは大きな変革であり、この変革をもっと進めなければなりません。そのためには、比較検討を可能にする情報が必要です。例えば「この冷蔵庫に替えるとどれくらい電気代が下がる」というような情報を各社が提供するから、消費者は最適なものを選べるのです。

 加えて、環境にやさしい行動を評価する仕組みづくりも同時に必要です。例えば、炭素に価格を与えることは、新たな評価軸を与えることとなり、それが製品の価格に影響を与えます。原料費と同じ仕組みです。

 他にも、例えば金融の世界では、事業設立の投資をするに当たって環境の側面で優れた事業を優遇・評価する動きがあります。それは、決して銀行が慈善事業をやっているのではなく、将来性がある事業だからこそ投資をするのです。このように、環境という分野から、将来性のあるビジョンを持てる社会基盤を作ることが肝要です。

 環境行政においては直接的な規制だけでなく社会基盤づくりも重要であり、環境省は今までもその両方を進めてきました。そして、色々な人を巻き込んで色々な人が動きやすいためのシステムを作るカギは、「情報共有」なのです。

※1 COOL CHOICE

2030年度の温室効果ガスの排出量を2013年度比で26%削減するという目標達成のために、日本が世界に誇る低炭素型の製品・サービス・ライフスタイルなど、地球温暖化対策に資するあらゆる「賢い選択」を促す国民運動です。http://ondankataisaku.env.go.jp/coolchoice/


Q4:最後に、国家公務員を志望する方へのメッセージをお願いします。

 国には常に新しい課題があります。かつて気候変動問題がこんなに大きくなるとは思っていませんでしたし、英語で仕事をすることすら想定していませんでした。また、従来の課題であっても、常に変化し拡大していくものです。日々勉強で面白く、飽きる暇がありません。それが国で働く魅力です。だからこそ、好奇心旺盛な人間に挑戦してほしいと思います。有識者の先生や産業界の方など、さまざまな人に出会い、教えをいただけることは国家公務員の特権です。多くの人とディスカッションをする中で自分の考えが磨かれていく機会が常にあります。なぜだろう、どうしたらいいだろうと絶えず問い続けられる人にとっては、やりがいが山のようにある仕事だと思います。

写真3 世界を舞台に活躍する梶原(中央)

地球環境審議官 梶原成元写真4                                     1979年環境庁入庁。水質保全や廃棄物対策行政に携わる。国際連合アジア太平洋経済社会委員会への派遣も経験。その後地球温暖化対策課長等を歴任し、廃棄物・リサイクル対策部長、地球環境局長を経て、2016年6月より現職。海外を飛び回り、国際交渉の最前線に立っている。

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