環境省
VOLUME.63
2018年2月・3月号

エコロ塾

[ 今月の授業 ]
適応ビジネス

地球温暖化への対策には、温室効果ガスの排出を抑制する「緩和」のほかに、温暖化の影響による豪雨・渇水・土砂災害などに対して、自然や人間社会のあり方を調整する「適応」があります。今回は、この「適応」を、ビジネスに活かす取り組みについて考えましょう。

基礎編

1時間目「適応」と「ビジネス」に、どんな関係があるの?

気候変動は、市民生活だけでなく、さまざまな事業活動を行う企業にも影響をおよぼします。企業による適応の取り組みは、「気候リスク管理」と「適応ビジネス」に大別されます。このうち、気候リスク管理は「自社の事業活動において、気候変動から受ける影響を低減させることを目的とする」もの。例えば、生産拠点での被災防止策、サプライチェーンにおける大規模災害防止対策などが挙げられます。一方、適応ビジネスは、文字どおり適応を「ビジネス機会」として捉え「適応を促進する製品やサービスを提供する」ものです。具体例としては、災害の検知・予測システム、暑熱対策技術・製品、 節水・雨水利用技術などが挙げられます。環境省では、こうした企業の取り組みをはじめ、さまざまな適応の事例などを発信するポータルサイト「気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT)」を公開しています。気候変動への対策(適応策)を検討する際に、役立ててください。

気候変動に私たちの生活を適応させていくために役立つ情報を発信

気候変動に私たちの生活を適応させていくために役立つ情報を発信

2時間目どうやって適応をビジネスにつなげているの?

1時間目で解説したように、気候変動への適応をビジネス機会と捉え、顧客の適応策に貢献できる製品・サービスを開発・販売するのが「適応ビジネス」です。2時間目は、適応ビジネスに取り組む企業の具体例について見てみましょう。

CASE.01 ICT(情報通信技術)を活用した農業支援サービスの提供 株式会社NTTドコモ

気候変動は、農作物の生育不良・品質低下などの悪影響を及ぼします。NTTドコモでは、ICTを活用した農業支援サービスを提供。環境の変化に迅速に対応できるよう、栽培管理のサポートを行っています。具体的には、水稲向け水管理支援システム「PaddyWatch」や、農業生産者向けアプリケーションサービス「アグリノート」の導入により、遠隔地から水田の水温・水位を監視したり、農作物の生育状態を管理することによって、「農業経営の効率アップ」「収穫率の向上」を実現します。

「PaddyWatch」の画面。水位・水温をアプリで確認できる

↑「PaddyWatch」の画面。水位・水温をアプリで確認できる

CASE.02 建物内部への浸水リスクを把握し、リスクマネジメントに活用 大成建設株式会社

従来、洪水、津波などの水害の情報はハザードマップのように広域のもので、個々の建物での浸水被害の予測は困難でした。大成建設では、建物内部への浸水解析技術「T-Flood Analyzer」を開発。BIMを用いたこのシステムは解析結果を2次元・3次元でグラフィカルに表示できるため、浸水に伴う被害をリアルに想定することが可能です。想定される被害を適切な事前対策により軽減し、建物の機能・性能や資産性を維持するなど、リスクマネジメントに活用できます。

※コンピュータで3Dの建物情報モデルを構築すること

リスクマネジメントに貢献する「T-Flood Analyzer」。浸水リスクの評価、浸水対策の検討に役立つ

↑ リスクマネジメントに貢献する「T-Flood Analyzer」。浸水リスクの評価、浸水対策の検討に役立つ

CASE.03 屋内と屋外の両方の暑さ対策に有効で、
ガラス飛散も防止する熱線再帰フィルム アルビード
デクセリアルズ株式会社

従来の遮熱フィルムは、室内の省エネに効果を発揮する一方、熱線(近赤外線)を地面に向かって反射させるため、街路への吸熱や蓄熱を引き起こし、「ヒートアイランド現象」の一因となっていました。デクセリアルズの熱線再帰フィルム アルビードは、窓ガラスの内側に貼ることにより、室内に侵入する熱線を遮って室内の暑さを和らげるだけでなく、熱線を空に向けて反射することで、屋外の地表に向かう熱線も低減します。さらに、災害時などにガラス飛散を防ぐ効果もあります。

熱線再帰フィルム アルビード

熱線再帰フィルム アルビード

熱線再帰フィルム アルビードは、2016年度「グッドデザイン賞」受賞

↑ 熱線再帰フィルム アルビードは、2016年度「グッドデザイン賞」受賞

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