環境省
VOLUME.62
2017年12月・2018年1月号

2.Tokunoshima Island-徳之島/小さな島に息づく貴重な生き物たち

奄美群島に属する徳之島。井之川岳、天城岳などからなる山岳地帯の森には、トクノシマトゲネズミやオビトカゲモドキなど、希少でユニークな島の固有種がひっそりと息づいています。

2.Tokunoshima Island-徳之島/小さな島に息づく貴重な生き物たち

トクノシマトゲネズミ、イボイモリ、オビトカゲモドキ

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徳之島の自然遺産推薦地は面積が小さく、有人島にある自然遺産としては、世界最小になるのではないかと思います。そんな小さな島の小さな遺産推薦地は、すぐそばに3万年前の旧石器時代から続く人々の暮らしがあり、自然と人の営みが長い間共存共栄してきました。独特な島の成り立ちや気候、珍しく面白い固有の動植物をはじめとする豊富な生態系、どれもが特異であることはもちろん、今もなお変わらずその環境を保っていることも世界に誇れると思います。今、島の宝から世界の宝になろうとしている豊かで美しい自然は、私たち島民の1000年先の未来にもつなぎたい希望です。

RECOMMENDER-NPO法人 徳之島虹の会 事務局長 美延(みのべ)睦美さん

INTERVIEW 世界自然遺産登録に向けて

環境省自然環境局 自然環境計画課 世界自然遺産専門官 松永 暁道さん

環境省自然環境局 自然環境計画課 世界自然遺産専門官 松永 暁道さん

奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島の世界自然遺産としての価値は、数百万年スケールの島の成り立ちに由来します。この地域は、かつては大陸の一部でしたが、地殻変動によって大陸から分離しました。その際、もともと大陸にいた生物が取り残されることになりました。その後も分離や結合を繰り返しながら小さな島々が形成されていきますが、その過程で島ごとに隔離された種が独自の進化を遂げました。例えば、アマミノクロウサギは、約1000万年前に他のグループと分かれた、遺存固有種(大陸には近縁種が存在しない固有種)です。

また、ハナサキガエルの仲間は、島への隔離と侵入の結果、これらの島で4種にも種分化しています。これらはほんの一例であり、大陸から島が分離・結合する地史を背景として、独自の進化が起こったプロセスをさまざまな種で見ることができます。この点が、推薦の大きな価値といえます。

また、この地域には原生的な自然も残ってはいるものの、推薦地のすぐ近くに、人々の生活の場が存在します。生き物が独自の進化を遂げたように、各島でその自然を土台とした固有の文化が育まれていることも特徴です。自然と人との共生の形も大きな魅力といえます。

この地域が、小笠原諸島、知床と共に世界自然遺産の候補地になったのは2003年のことですが、その時点では西表島を除いて国立公園にも指定されていませんでした。地域の生活・文化とも密接に関わる貴重な自然を、後世に残していくにはどうしたらいいのか。国立公園や世界遺産を見据えつつも、地域の自然のあり方を関係者で真剣に議論してきた積み重ねが現在につながっています。そして今、地域の人からは、遺産登録はゴールではなく、スタートだという声が多く聞こえてきています。まさにこの言葉の通り、世界に誇る地域の宝を次世代へと引き継いでいけるよう、関係者みんなでより一層協力していくことが求められています。

~1163万年前ごろ/1163万年前ごろ~約200万年前ごろ/200万年前ごろ~現在

~1163万年前ごろ/1163万年前ごろ~約200万年前ごろ/200万年前ごろ~現在

イラスト/原田康平

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