ビルは“ゼロ・エネルギー”の時代へ

コラム

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新築環境への配慮を内外に発信できたZEB化

久光製薬ミュージアムの外観の写真
久光製薬ミュージアムの外観
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佐賀県鳥栖市にある久光製薬株式会社の「久光製薬ミュージアム」は、全面にLow-Eペアガラスを採用、屋根の断熱強化、空調機の細分化による高効率運転、BEMSや各種センサーによる効率的な運転制御などパッシブ技術とアクティブ技術を組み合わせて省エネを徹底するとともに、屋根に太陽光パネルを設置して創エネを行うことによって、新築時に一次エネルギー量を103%削減し、佐賀県初の『ZEB』に認証されました。

今回は、「久光製薬ミュージアム」のZEB化について、久光製薬株式会社の矢野様(BU本部九州本社総務部 部長)、河端様(BU本部九州本社総務部庶務課長)、森崎様(BU本部文化事業・CSR推進室 室長)と、設計に携わられた株式会社安井建築設計事務所の小島様、施工に携わられた五洋建設株式会社の吉田様、白川様、小座野様にお話を伺いました。

※以後、法人格、敬称略

創業170周年(2017年)記念事業にふさわしい情報発信、CSR活動の一環

(司会者)

創業170周年記念事業として建てられたと伺いましたが、ZEBに取り組まれた経緯をお聞かせください。

(久光製薬)

当社は、ここ佐賀県鳥栖市が創業の地です。いくつか執り行なった170周年記念事業のうちの1つが、この久光製薬ミュージアムの建設です。計画当初、私たちの士気を高められるように、社の歴史や理念を解説パネルや映像にして展示する企業ミュージアムを作ってはどうか、という社内の声が上がり、このミュージアムを建てるきっかけになりました。名前自体はミュージアムと呼んでいますが、用途は社員の研修施設です。
基本デザイン構想はイタリアの彫刻家チェッコ・ボナノッテ氏に、設計を安井建築設計事務所様に、施工は五洋建設様に依頼しました。環境への配慮は当初の条件の1つでした。ZEBについては知りませんでしたが、五洋建設様からのZEBの技術提案を受けて取り組むことになりました。

(司会者)

ZEB化に取り組まれた際、どのような効果を期待されていましたか。

(久光製薬)

当社のバックアップ部門としましては、ISO14001に対応するために様々な環境に関する目標を掲げており、日々クリアしていくことに努めております。当社の省エネの取り組みの1つとして、今回のZEB建設をISO14001の定期審査時に評価してもらいたいという思いがありました。
当初は建物を公開する予定はありませんでしたが、完成した建物は経営陣にとってもバックアップ部門にとっても大変満足できるものになりましたので、社員だけではなく、隣接する工場に見学に来られた方を中心に一般の方にもご覧いただけるよう公開することにしました。これまで(2020年2月時点で)延べ5000名を超える方が見学されています。

(久光製薬)

この久光製薬ミュージアムが立っている場所は緑地帯なのですが、今ある自然環境を生かしつつ、さらにZEBという省エネ性の高い建物を造るということは、社会に貢献し、地球に優しい取り組みを行うという会社としてのCSRの姿勢を発信でき、企業価値も高まる機会になったと思っています。

会社の理念を具現化した建物の意匠デザインとZEB化技術の折り合い

(司会者)

ZEB化にあたって様々な課題があったかと思われますが、具体的にお聞かせください。

(久光製薬)

工事では定例会議が設置され、3社(久光製薬、安井建築設計事務所、五洋建設)が意思統一をはかりつつ、課題があれば共有し解決方法を探っていけたことは良かったです。各社から情報をいただきつつ、弊社の要望もお伝えし、週1回の会議で議論を重ねながら進めました。

屋根上の太陽光パネルの写真
屋根上の太陽光パネルは
地上からは見えないように設置されている

(五洋建設)

ZEB化にあたっては創エネが必要になります。創エネとして太陽光パネルを屋根においていますが、外観から見えないようにより水平に近く設置して意匠的な納まりに十分配慮しました。

(久光製薬)

施工にあたっては、五洋建設様にとてもご配慮いただきました。例えばガラス素材の場合、ボナノッテ氏の意匠デザイン上の色へのこだわりと設計・施工側の断熱性へのこだわりが素材や仕様などの選択で相容れない時期がありました。最終的に五洋建設様にご用意いただいたサンプルや原寸大のモックアップで確認しながら、互いに妥協なく進めていくことができました。

従来からある技術の最適な組み合わせの工夫でZEB化を実現

(司会者)

ZEB化にあたって技術的に工夫された点をお聞かせください。

Low-Eペアガラスの写真
全面にLow-Eペアガラスを採用

(安井建築設計事務所)

特別なことはしていません。創エネは太陽光発電パネル、パッシブでは全面にLow-Eペアガラスの採用、屋根の断熱強化など、アクティブ技術としては高効率の空調機やLED照明、昼光センサーを取り入れています。

(五洋建設)

空調機はこの建物の規模ですと通常は1台で十分ですが、あえて高効率なものを複数にして分散させることにより、建物全体での運転効率を高くすることができました。ZEBの普及を促進していくためには、特別な技術を導入せずともZEB化を実現できる方法を示したいという思いを持っており、今回はそのことが実践できたと思っています。

ランニングコストの削減を実感

(司会者)

ZEB化によるランニングコスト削減への効果についてお聞かせください。

(安井建築設計事務所)

これだけのガラスを使ったRC建物であれば断熱パネルを採用したとしてもかなりの空調代がかかってしまうかもしれないという心配がありましたが、全面にLow-Eガラスを採用することで熱負荷を大幅に軽減、全館LED照明化、空調の高効率化などさまざまな提案技術の採用でクリアしていきました。

(久光製薬)

ガラスを多用しているため、夏期の冷房使用にかかる電気代は増大する事が一般的ですが、ZEB化技術導入により、電気代を抑えることができ、省エネで快適であることを実感しています。運用開始して1年になりますが、発電した電力は自家消費しています。

ZEB化をきっかけに社内外への情報発信のシンボルに

(司会者)

「久光製薬ミュージアム」を利用されるお客さまや社員の方からの実際の反応についてお聞かせください。

(久光製薬)

まずお客さまですが、工場見学に来られた方に、この建物がZEBだということを必ず紹介しています。内部の見学を始める前に説明すると、お客さまはとても興味深く、「どういうところが省エネなんだろう?」という関心を持って見学していただけます。そのためにバックアップ部門の社員はZEBの概念と建物について説明できるよう勉強しています。
また竣工時に社員に対しても公開し、ZEBについてしっかりと説明しています。省エネルギーの建物であることと、当社の「世界の人々のQOL向上を目指す」という経営理念を具現化する取り組みの1つという考えを合わせた上で、社員の教育や研修などに活用していきたいと考えています。

(久光製薬)

久光製薬ミュージアムは意匠設計の素晴らしい建物というだけではなく、弊社の環境への配慮を具現化した取り組みでもあります。このことを社員にはもちろん、社外に発信をしていくことは、経営層の共通認識になっており、社内の各部門には、社内外から注目される施設として積極的に活用していこうと伝えています。
単に周年記念の節目の建物ではなく、将来にわたって、環境への配慮などの弊社のCSR意識を社内外へ発信するシンボル的な存在になるであろうと、強く感じています。

リーフレットの写真
独自に用意したリーフレット
ZEB説明のイメージ
来館された方には最初にZEBを丁寧に説明

(司会者)

久光製薬ミュージアムを核に環境への配慮に目を向けた取り組みが増えてきそうですね。ありがとうございました。

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