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自然冷媒機器開発秘話
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株式会社ノーリツ

株式会社ノーリツは、家庭用温水機器、システムバス、システムキッチン、ガスコンロ、太陽熱エネルギー等の住宅設備メーカーです。ノーリツの歴史は、1951年、能率風呂工業株式会社を創設したことに始まります。以降、「お風呂は人を幸せにする」という創業の原点のもとに、「お湯をつくる」「住まいづくりに貢献する」「温かさをつくる」ことで社会に貢献している企業です。

ガスと電気のええとこどり

-省エネ型自然冷媒機器の特徴について教えて下さい-

ノーリツで開発した省エネ型自然冷媒機器は、「家庭用ハイブリッド給湯・暖房システム」です。家庭でお湯を作る機器には、「瞬間式給湯器」と「ヒートポンプ給湯機」があります。「瞬間式給湯器」は、必要なときにすぐお湯が沸くという利点があるものの、化石燃料をそのまま利用し、高効率型でもエネルギー効率が100%を超えることはありません。一方、「ヒートポンプ給湯機」は、1日に使用するお湯の量を想定し、電気代の安い夜間に効率よく貯湯するという利点はあるものの、夜に貯湯してから使用するまでにタイムラグがある点やある程度余分にお湯を沸かすため、結果として、エネルギーをロスしているのが実態です(極寒の場合、ヒートポンプ給湯機のエネルギー効率はさらに下がり、マイナス6度に達すると瞬間式給湯器の方がエネルギー効率は高くなるとも言われています)。そこで、平成25(2013)年、ヒートポンプにて貯湯しても湯余りさせず *1、お湯が足りない場合は、バックアップとして瞬間給湯するという特徴を持つ「家庭用ハイブリッド給湯・暖房システム」を開発しました。ガス給湯器とヒートポンプ給湯機それぞれの長所を融合し、極めて高い省エネ効果を発揮しています。1年間の給湯光熱費は従来型ガス給湯器に比べて6万円程度削減でき、1年間の二酸化炭素排出量も43%削減できます *2

さらに、これまで販売されているハイブリッド給湯器には、冷媒として温室効果の高いフロン類(R410A)が使用されている点にも注目し、フロン類を使用せず、温室効果の低い炭化水素系冷媒を使用する機器の開発を進めました。研究開発の結果、数ある炭化水素系冷媒の中で、最も給湯に適しているプロパン冷媒(R290)を選択。プロパン冷媒は自然冷媒であり、これまで使用されていたR410Aと比べ格段に温室効果が小さい一方で、省エネ効果はほぼ変わりません。

イメージ:実際の商品プロパン冷媒は可燃性であるという問題がありましたが、現在の家庭用冷蔵庫の多くが、同じく可燃性の炭化水素系冷媒である「イソブタン」を使用しているため、技術的には対応可能だと考えました。開発に着手して苦労したこともありますが、プロパン冷媒を使用し、安全で、環境に優しい、省エネ効果に優れた機器を開発することができました。

*1 必要なときに必要な分だけお湯を作る「スマート制御」を導入し、余分な貯湯を減らすことで、エネルギーロスを少なくするとともに、タンクの小型化(従来比約25%)も実現しています。

*2 LPGの場合・温水暖房なし。『住宅事業建築主の判断基準』6地域の条件を参考にノーリツ独自調べ。関東エリア 4人家族、給湯負荷16.7GJ、LPG:463 円/m³、電気(東京電力):従来型ガス給湯器・ハイブリッド/従量電灯B

プロパン冷媒が最適

-プロパン冷媒を選定された理由および評価方法について教えて下さい-

平成19(2007)年から、プロパンを含めいろいろな自然冷媒の評価を行いました。地球温暖化係数やエネルギー効率、さらには耐圧、燃焼性、封入する量など、様々な指標を用意し、多面的に評価しました。冷媒によって、得意な温度帯、苦手な温度帯があります。家庭用冷蔵庫で使用されている「イソブタン」は、小型の冷凍・冷蔵という温度帯では十分な性能を発揮できますが、加熱における性能は「プロパン」の方が優れています。特にタンクの中に貯められているお湯を再加熱する場合など、プロパン冷媒は極めてエネルギー効率の高い冷媒だったため、最終的に、プロパン冷媒を使用することがもっとも良いという判断を行いました。

なお、温室効果の高いフロン類を選択するという考えはまったくありませんでした。これだけ地球温暖化問題に関心が集まっている中、社内には「いまさらフロンはないよね」という共通意識がありました。二酸化炭素、炭化水素、水、アンモニア、空気といった自然冷媒を使い、機器の特長もしっかり出したいと考えていました。また、経営陣が『これからはガスだけでは生き残れない。オールエネルギーに対応するならガス給湯器だけでなく、ヒートポンプ給湯機もやるべきだ』という姿勢を打ち出したことで、研究開発がさらに進み、2013(平成25)年9月に製品化に至りました。

安全性確保のための研究の連続

-どのような点が一番ご苦労されましたか-

イメージ:お湯を作る仕組みプロパン冷媒の採用を決定した後、どのように安全に制御し、省エネ効果に優れた機器とするか、研究開発は苦労を伴いました。これまでプロパン冷媒を使用する機器が無かったため、プロパン冷媒に対応する部品もありませんでした。そのため、部品選定のための研究も行いました。研究にあたっては、コンプレッサーメーカーと協力し、これまでフロン類を使用した機器で使われていた部品をもとにプロパン冷媒でも使えるように、双方の知恵を出し合い、研究を行ないました。ガス給湯器のメーカーでありながら、コンプレッサーの研究をすることは、会社としても新しいチャレンジであったと思います。

また、凝縮器も新規に開発しました。凝縮器の中には、冷媒が流れる冷媒通路、温める水が流れる水通路があります。万が一、冷媒通路が破損しても、冷媒通路に封入されている冷凍機油が水通路に入り込むことは、絶対あってはならないことです。そこで、冷媒通路、水通路を二重構造とし、冷媒、水が混ざらない設計にしました。さらに、接続部分を減らし、漏れてしまう可能性を徹底的に減らしています。また、部品の不具合による発火要因の分析、器具の外的事象による発火要因の分析、さらには機器の生産から廃棄までのライフサイクル全体において危険となる事象を分析し、安全性確保に向けた研究も行ない、対応しました。

お手本が無い中で、試行錯誤し、設計することは難しかったのですが、製品化してからこれまで、一度も漏洩に係わる問題は発生していません。

生活に寄り添う給湯を

-市場の反応はどうでしょうか-

イメージいままでの市場では、単にお湯が出れば良い、安い商品でも良いという考え方が全体を占めていました。しかし、最近では、環境や省エネといった観点から商品を選定される方も増えてきています。

今後も、環境に配慮しつつ、生活に寄り添う商品を作っていきますので、商品の意義や有用性を市場に理解していただければと思います。

担当者写真

株式会社ノーリツ 研究開発本部 新エネルギー商品開発部 
HP・ソーラー商品開発室 第1グループ リーダー
堀 紀弘

昭和62年入社 石油給湯器の開発設計、先行技術開発部門をへて、ヒートポンプの研究開発部門へ。ハイブリッド給湯暖房システム発売と同時にHP商品開発室発足。

担当者写真

株式会社ノーリツ 管理本部 総務部
環境推進グループ リーダー
亘 秀明

昭和62年入社 研究開発、CS、品質保証部門をへて、2003年から環境推進部門へ。 ノーリツグループ全体の環境推進を担当。

-編集後記-

今回のインタビューの最後に、「研究開発に対しての想い」について聞いてみました。

商品開発にはコストと納期があるので、大変な面はありますが、新しいことにチャレンジすることはワクワク感があります。また、多くの家電メーカーが、“いかに火を使わないか”を前提とした機器を開発する中で、ノーリツは、“いかに安全に火を使うか”を研究しています。だからこそ、可燃性という特性がある冷媒でもうまく活用し、今回のようなこれまでに無い商品を市場に出すことができたと思います。

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