中央環境審議会水環境・土壌農薬部会排水規制等専門委員会(第32回)議事録

日時

 令和4年1月31日(月) 10:00~11:22

場所

 WEB会議システムによる開催

議事

 (1)ほう素、ふっ素、硝酸性窒素等に係る暫定排水基準の見直しについて

 (2)その他

配布資料

 資料1   中央環境審議会水環境・土壌農薬部会排水規制等専門委員会委員名簿

 資料2   ほう素、ふっ素、硝酸性窒素等に係る暫定排水基準の見直し案について

 資料3-1 温泉分野の暫定排水基準の見直しに係る検討結果

 資料3-2 畜産分野の暫定排水基準の見直しに係る検討結果

 資料3-3 工業分野の暫定排水基準の見直しに係る検討結果

 資料3-4 下水道分野の暫定排水基準の見直しに係る検討結果

議事録

<午前10時00分 開会>

【町村係長】 それでは定刻になりましたので、第32回中央環境審議会水環境・土壌農薬部会排水規制等専門委員会を開会します。

 委員の皆様には、ご多用の中、ご参集いただきまして、誠にありがとうございます。

 本日は、ウェブ会議での開催としております。会議中、音声が聞き取りにくい等、不具合がございましたらチャット機能にてお知らせください。

 また、中央環境審議会の運営方針に基づき、本委員会は公開としており、環境省水環境課公式動画チャンネルでライブ配信を行っています。

 それでは、議事に先立ちまして、環境省水・大気環境局長の松澤よりご挨拶申し上げます。

【松澤局長】 おはようございます。水・大気環境局長の松澤でございます。

 第32回排水規制等専門委員会の開催に当たりまして、ご挨拶申し上げたいと思います。

 本日は、委員長の藤江先生、環境省にお越しいただきまして、議事進行をお願いすることにしております。ほかの委員の皆様方におかれましては、ウェブ方式でご出席いただきまして、誠にありがとうございます。また、平素から水環境行政の推進につきまして、様々ご指導をいただきまして、重ねて御礼を申し上げたいと思います。

 本日の専門委員会でございますが、本年6月30日に期限を迎えます、ほう素、ふっ素、硝酸性窒素等に関する暫定排水基準の見直し案について、ご議論をいただきたいと考えております。

 これらの物質に係る暫定排水基準につきましては、平成13年の設定当初の40業種から、現在は11業種まで対象業種が減ってきております。このように排水の改善に関する取組が、全体的に進んできているところでございます。残る11業種でございますが、幅広い分野にまたがっておりまして、今回は温泉、畜産、工業及び下水道、こういう4分野に分けて検討を進めてまいりました。

 本日は、各分野の検討結果についてご報告をさせていただき、できましたら、暫定排水基準の見直し案をパブリックコメントの手続にかけたいと考えておりますので、専門委員会報告案として、本日、お取りまとめいただければというふうに考えております。

 委員の皆様におかれましては、忌憚のないご意見をいただけますよう、どうぞよろしくお願いいたします。

【町村係長】本日は、委員総数10名中10名の委員にご出席いただいております。

 なお、浅見先生は、所用により、途中、ご退席されると伺っております。

 議事中、マイク機能は、委員長及び発言者以外はミュートに設定していただくようお願いします。ご発言の際は、挙手アイコンをクリックしてください。挙手アイコンを確認後、委員長からご指名いただきますので、マイクのミュートを解除していただき、ご発言をお願いします。ご発言後は、挙手アイコンをオフにしていただきますようお願いします。

 続きまして、資料確認に移ります。

 資料は、議事次第に記載されているとおりです。事前にメールにてお送りしておりますが、もし過不足等ございましたら、お申し出ください。

 それでは、以降の進行は藤江委員長にお願いいたします。

【藤江委員長】 藤江でございます。おはようございます。本日は、ご多用中のところ、排水規制専門委員会にご出席いただきまして、大変ありがとうございます。御礼を申し上げます。

 本日の専門委員会では、先ほど局長からお話がございましたとおり、本年6月末に適用期限を迎える、ほう素、ふっ素、硝酸性窒素等の暫定排水基準の見直し案についてご議論をいただきます。委員の皆様におかれましては、活発なご議論をよろしくお願いいたします。

 それでは、早速議事に入りたいと思います。

 資料2を用いて、事務局から暫定基準の概要についてお話をいただきます。よろしくお願いいたします。

【町村係長】 資料2を用いて、ほう素、ふっ素、硝酸性窒素等に係る暫定排水基準の概要、経緯等についてご説明いたします。

 まず、有害物質としてほう素、ふっ素、硝酸性窒素等の水質汚濁防止法に基づく一般排水基準については、平成13年に設定されました。この際、直ちに一般排水基準を達成することが困難であると認められる40業種に対して、3年間の暫定排水基準が設定されました。その後、3年ごとに各業種における取組状況等を踏まえて見直しを実施しまして、現在は、11業種について令和4年6月末を期限として暫定排水規基準が適用されています。

 次のページに移りまして、これまでの検討状況についてです。

 ほう素、ふっ素、硝酸性窒素等に係る暫定排水基準の適用業種については、温泉分野、畜産分野、工業分野、下水道分野の各分野において解決すべき課題が異なることから、分野ごとに有識者からの意見聴取や検討会等を実施しまして、技術的な助言を得るとともに、基準の見直しに向けた具体的な検討を行ってまいりました。これらの検討結果を6ページの表2にまとめております。

 6ページに移りまして、表2は、各業種の今回の見直し案を整理しております。ほう素、ふっ素については、導入可能な除去技術の見通しが立っていないことから、一部では基準を引き下げるものの、全体的には延長する案となっております。硝酸性窒素等については、除去技術がある業種では、取組状況に応じた見直し案としています。各分野の具体的な見直しの検討結果は、資料3で個別にご説明いたします。

 続きまして、今後の予定です。7ページをご覧ください。

 暫定排水基準の見直し案については、本委員会においてご議論をいただいた後、パブリックコメントにより意見募集を行います。その後、水環境・土壌農薬部会でご審議いただく予定です。その審議結果を踏まえ、必要な省令改正を行う予定です。

 資料2の説明については以上です。

【藤江委員長】 ありがとうございました。

 それでは、ご説明いただきました6ページの表2を頭に入れておいていただいて、それぞれの分野について順次ご説明をお願いしたいと思います。

 それでは、まず資料3-1の温泉分野の暫定排水基準の見直しに係る検討結果について、事務局からご説明をお願いいたします。

【町村係長】 では、資料3-1を用いて、温泉分野の暫定排水基準の見直しに係る検討結果をご説明します。

 温泉旅館については、ほう素、ふっ素の暫定排水基準が適用されています。ほう素については一般排水基準10mg/Lのところ、暫定排水基準は当初から500mg/Lが適用されています。ふっ素については一般排水基準8mg/Lのところ、暫定排水基準については一番下の表にありますとおり、湧出時期、日排水量、湧出形態に応じた基準として15mg/L~50mg/Lが設定されています。

 次のページに移りまして、温泉旅館の排水濃度の実態についてご説明いたします。

 全国の自治体にご協力をいただき、アンケート調査を行いまして、一般排水基準値、ほう素10mg/L、ふっ素8mg/Lを超える源泉を利用する温泉旅館について集計を行いました。

 表1が、ほう素について集計した結果になります。一般排水基準値10mg/Lを超える源泉を利用する旅館は、一番上にございますとおり、740程度把握できております。そのうち、海域以外、すなわち河川等に放流する旅館は570程度あると把握しております。そのうち、排水中のほう素濃度が一般排水基準を超えるというのは170程度、把握できております。参考のところに、温泉旅館の全体の数が書かれており、1万3,000程度あると把握しております。したがいまして、一般排水基準を超過するのは1~2%と把握しております。

 それから、ふっ素については表2に掲載しております。一般排水基準を超過する源泉を利用する温泉旅館は590程度あると把握しております。そのうち河川等に放流する施設は470程度、また、そのうち排水中のふっ素濃度が一般排水基準8mg/Lを超える施設は140程度あると把握しております。ほう素同様、ふっ素についても、全国の温泉旅館のうち一般排水基準を超過しているのは、1~2%と把握しております。

 続きまして、4ページに移ります。

 温泉旅館における排水濃度低減対策の状況についてご説明いたします。

 まず、排水処理技術の導入の可能性について、4ページから7ページに整理しています。温泉排水には、ほう素やふっ素のほかにも多種多様な共存物質が比較的高い濃度で含まれる場合があり、これら共存物質が排水処理を阻害することなどの理由から、既存の排水処理技術では、ほう素、ふっ素の除去が難しい現状がございます。このことから、環境省では平成18年度より、温泉排水を対象とした新しい排水処理技術の開発を支援しており、その上で導入の可能性を検証する取組を実施してまいりました。

 まず、ほう素について、平成21年度及び平成23年度は、吸着法に着目した実証を実施しています。こちらについては、吸着剤の再生頻度や交換頻度が高いといったことから、ランニングコストが課題となっています。平成25年度から30年度は、凝集沈殿法に着目した実証を実施しています。こちらは沈殿した薬剤、こちらの処理コストがかなりかかるということで、コスト面の課題が挙げられています。

 また、令和元年度の見直し以降は、COP法と呼ばれる技術について実証を行ってまいりました。これは過酸化水素と排水中のほう素で錯体を形成させ、薬剤にほう素を吸着させる手法になります。こちらについては、ほう素の除去率が良好であり、沈殿物の発生量が少ないといったメリットがございました。しかしながら、温泉中に含まれる共存物質の影響で薬剤の消費コストがかかるということで、ランニングコストの課題がございます。また、pH調整槽の設置にかかるイニシャルコストも課題となっておりまして、目安としたコスト水準は達成できていないといった状況です。

 ふっ素については、平成18年度、21年度、24年度に吸着法の実証を行っています。また、23年度には、カルシウムとふっ素の反応性を促進させた凝集沈殿法の実証を行っておりますけれども、導入可能なコスト水準には至っていない状況です。

 結果として、ほう素、ふっ素とも導入可能な処理技術の見通しが立っていない状況です。

また、今後の排水処理の動向について、有識者等へのヒアリングを行い、(2)にその結果を整理しております。大きく3ポツございますけれども、まず一つ目、既存の技術について、技術改良や安価な代替品を用いることによるコストダウンを図ってはどうかといったご意見がございました。それから、過年度の実証の事業者から、新たに検討可能な処理技術の提案がございましたけれども、こちらについてはまだ基礎研究の段階であり、中長期的な調査・検討が必要といったご意見でございました。今後、実証を行うに当たっては、汎用性についても意識して進めていくべきといったご意見もございました。

 処理技術の動向については以上です。

 続きまして、8ページ以降です。排水処理以外の濃度低減対策について、8ページから9ページに整理しています。公共用水域に排出する温泉旅館の一般的な排水フローの例を図1に示しています。温泉旅館からの排水は、主に温泉水を含む入浴施設からの浴槽排水と、ちゅう房施設、洗浄施設、客室等からの雑排水等が考えられます。このような排水フローに対して検討し得る濃度低減対策とその課題を表5にまとめています。

 まず考えられるのが、①の源泉の変更、それから②の源泉の取水量の削減です。いずれも入ってくる濃度を制限させる方策ですが、掘削コストがかかることや、源泉からの豊富な湯量やかけ流しを特徴として営業している温泉旅館にとっては、現実的ではないといった課題がございます。それから、③の廃棄物処理については、排水中の濃度に濃淡がないといったことから、困難であると考えています。そして、④は濃度の平準化についてです。これは、客室などの雑排水をコントロールしてピークカットを図る方策です。既にほう素濃度が高い温泉旅館では検討を導入されており、さらなる濃度低減といったものは難しいといった状況になっております。

 これらの検討結果を踏まえ、10ページ以降に今後の温泉旅館に係る排水対策のあり方について整理しています。

 まず(1)は、適用期間の考え方について整理しています。温泉旅館の排水中のほう素及びふっ素濃度を一般排水基準まで低減させるためには、導入可能な排水処理技術が必須とあります。現時点で導入可能な排水処理技術の見通しは立っていない状況です。

 暫定排水基準は、期間を設定して事業者に対策を促すことで、一般排水基準に近づけていくといったスキームで進めておりますが、現状、事業者で取り得る対策がない中、3年ごとに見直す効果は薄れてきていると考えております。したがって、温泉旅館に係るほう素及びふっ素の暫定排水基準については、適用期間を「当分の間」とし、ほう素及びふっ素の環境基準の達成状況等を監視しつつ、温泉旅館からの排水に関する処理技術の動向を踏まえて暫定排水基準については見直すことを考えています。

 続きまして、暫定排水基準の値についてです。

 まず、ほう素についてです。図2は、横軸に源泉濃度、縦軸に排水中の濃度としてプロットしたものです。従来は、源泉の濃度が最も高い1事業場の排水実態から、温泉旅館については一律500mg/Lを設定していました。しかしながら、この旅館の源泉というのは、ほかの旅館に比べてかなり高い源泉濃度となっております。

 排水濃度が2番目に高い旅館は、排水実態としては250mg/L前後であることから、表6のとおり、源泉濃度に応じた基準値にしたいと考えております。具体的には、ほう素濃度が500mg/L以下の源泉を使うような温泉旅館については、許容限度を300mg/Lとし、ほう素濃度が500mg/Lを超える源泉を利用する温泉旅館については、500mg/Lを設定する見直し案を考えております。

 次に、ふっ素についてです。ふっ素については、それぞれの区分ごとに排水実態を調査したところ、現状の暫定排水基準値レベルの排水実態が確認されていることから、現状の値を維持する案で考えております。

 最後に、今後の取組についてご説明いたします。

 ①の温泉旅館からの排水による影響の監視について、温泉旅館からの排水を由来としたほう素及びふっ素の環境基準の超過については現時点では確認されておりませんが、引き続き関係自治体に必要な周知を実施し、温泉旅館数の動向把握、それから、常時監視の取組を進めまして、ほう素、ふっ素の環境基準の達成状況については的確に把握していきたいと考えております。

 それから、②の処理技術の動向及び実証についてです。引き続き、ほう素及びふっ素の処理技術の動向について調査し、温泉旅館からの排水にも適用可能な技術について整理したいと思っております。それらの技術について、温泉旅館の経営実態や施設規模等を踏まえ、導入可能性に係る予備調査を実施した上で、必要な実証を進めてまいります。これらの検討結果については、5年を目処に導入可能性を整理していく予定です。

 ③は、排水規制の全体的な話になりますけれども、過年度のこの温泉旅館に係る検討において、委員の先生方から、例えば公衆浴場の取扱いなどご意見をいただいておりました。こういった特定施設のあり方ですとか、実態に応じた柔軟な排水規制のあり方については、今後、水濁法の排水規制のあり方を検討していく中で、これらについても検討していきたいと考えております。

 資料3-1の説明については以上になります。

【藤江委員長】 ありがとうございました。

 ただいまご説明いただきましたように、ほう素に関しましては、排水濃度の低減対策について様々なご検討、ご対応をしていただいてきたわけですけれども、必ずしも条件に合致する適切な方法を確立できなかったということで、表6に示していただきましたような見直し案をご提案いただいております。

 加えて、ふっ素ですけれども、こちらに関しては、従来どおりの暫定基準を延長するという案でございます。

 この妥当性についてご議論をいただきたいと思います。

では、書面でもコメントをいただいておりますけれども、浅見委員からご説明いただけますでしょうか。

【浅見委員】 はい。ありがとうございます。本日、所用にて申し訳ございません。

 書面にても提出させていただき、全体に関する部分もあるんですけれども、ご説明いただきましたように、ほう素やふっ素といいまして、イオン性のものというのは非常に除去も難しいと思いますので、今回ご提案の暫定値につきましては、現状を踏まえたものでやむを得ない措置と思いますので、同意させていただきたいと存じます。

 ただ、自然の温泉排水や地質的な理由による場合や、また、後ほどもあると思いますけれども、海域に放流される窒素やほう素に関しましては、暫定値の適用の先が見通せない場合もあると拝見をいたしております。放流先の環境で取水がない場合ですとか、もともと天然に大量に存在している場合、また、生態学的や人間への健康影響は懸念がないと考えられる場合もあるように思います。

 処理には、エネルギーやコストもかかりますので、今後、特定施設や実態に応じた柔軟な規制など全体の在り方をご検討される際に、全体的な視点からどのような場合に適用すべきか、例外的かもしれませんけれども、いわゆる適用が不要の場合もないか、ご検討いただければと思います。

 一方で、ちょっと今回の議題にはなかったので、化学物質や有害性の高いものに関しましては、水道などの多分野と同時、または先んじてでも必要な情報収集、規制方策などのご提案をご検討いただければと思っております。

 以上でございます。よろしくお願いいたします。

【藤江委員長】 どうもありがとうございました。

 それでは、事務局からのご説明を踏まえまして、討議をさせていただきたいと思います。ご意見等々がございましたら、お願いをいたします。

 珠坪委員、お願いします。

【珠坪委員】 よろしくお願いします。

 ほう酸、ふっ素に関しては、基本除去が、除去技術の開発も含めて難しい中で、今回、このような対応ということについては賛成するのですが、10ページ目に、「暫定排水基準については、適用期間を「当分の間」」とお示しいただいています。これは、3年がちょっと短いかなという意味合いで、当分の間というふうに書かれているかと思いますが、具体的に、数年程度ですとか、あるいは10年以内なのかとか、この辺の考え方について、ご説明をお願いします。

【藤江委員長】 では、環境省、お願いします。

【町村係長】 この期間の在り方については、今後の処理技術の実証について、まずは基礎研究、情報収集から始めていくことになります。そういった中で実証計画を作成していくことを予定しております。そして、基準の見直しに当たっても、その計画の中でどうしていくかということを考えていきたいと考えております。

【藤江委員長】 ありがとうございます。

 いかがでしょうか。

【珠坪委員】 了解しました。よろしくお願いします。

【藤江委員長】 ありがとうございます。

 ほかにいかがでしょうか。

【西村委員】 西村です。よろしいでしょうか。

【藤江委員長】 西村委員、お願いします。

【西村委員】 今のご質問にも関連するのですが、11ページの一番下に、実証試験を「5年程度を目処に導入可能性の検証結果を整理する。」と。この結果については本委員会で報告されると思うのですが、私の理解では、暫定排水基準の見直しは、当分の間ということなんですが、その見直しをするために必要な技術的な問題をクリアするための実証ですか。これは5年程度を、あるいは5年置きぐらいに進めていきながら、その技術開発の状況を見ながら、当分の間の中で適切な時期に暫定基準を見直すと、このような考え方かと思うのですが、そういう理解でよろしいのでしょうか。

【藤江委員長】 環境省、お願いします。

【町村係長】 先生のおっしゃるとおり、まず、技術動向を把握しながら、まずは5年間を目処として、そういったところを整理していきたいと考えています。

【西村委員】 それでは、この5年というのが、今度は非常に重要な意味を持つと思います。厳密に5年ではないかもしれませんが、その中での技術開発、精力的に進めていただくようにお願いしたいと思います。

 以上です。

【藤江委員長】 ありがとうございます。

 ほかにいかがでしょうか。

【大塚委員】 大塚ですけど、よろしいでしょうか。

【藤江委員長】 大塚委員、お願いします。

【大塚委員】 今のお話、大変興味深く伺いましたが、当分の間というのは、これ、例えば5年ごとにとかというのは、なかなか難しいということなのかもしれませんが、やはり技術の開発の状況とかを考えて、当分の間のほうがよいということでしょうか。ちょっと環境省のお考えを教えていただければありがたく存じます。

【藤江委員長】 環境省、お願いします。

【町村係長】 5年については、技術動向の整理を5年という形を目処として記載しております。基準の在り方については、実証のほかにも普及という期間も含めて検討する必要があると思いますので、基準の期間については、そういったことも含めて検討していくことになると思います。

【藤江委員長】 いかがでしょうか。

【大塚委員】 分かりました。

【藤江委員長】 ありがとうございます。

 ほかにはいかがでしょうか。

 それでは、次に進ませていただきたいと思います。

 次に、資料3-2に基づきまして、畜産分野の暫定排水基準の見直しに係る検討結果について、事務局からご説明をお願いいたします。

【寺内係員】 それでは、引き続きまして、資料3-2を基に、畜産分野の暫定排水基準の見直しに係る検討結果につきまして、環境省の寺内からご説明いたします。

 まず、畜産農業に係る暫定排水基準、現在の値につきましては、表1に記載しておりますとおり、一般排水基準が100mg/Lに対して、現状の値は500mg/Lが適用されております。この値の適用条件は特にございませんので、畜産農業の特定施設の豚房施設、牛房施設、馬房施設、この三つのうちどれか一つでも有していれば、暫定排水基準の500mg/Lが適用される状況となっております。

 このことについて、豚房施設、牛房施設、馬房施設の糞尿の処理方法が少し異なります。具体的には、豚房施設と比較しまして牛房や馬房の場合、その糞尿の処理のメインは堆肥化で行っており、公共用水域への排水が少ない、といった実態があります。

 そのことを踏まえまして、今回の見直しのポイントですけれども、豚房施設、牛房施設、馬房施設それぞれで排水実態を確認いたしまして、それに応じた排水基準の見直しなどを行ってまいりました。

 では、その内容について3.以降でご説明いたします。

 まず、排水実態に関してですが、豚房施設の排水実態を表2にまとめております。豚房施設の場合、一般排水基準を超過しているところもそれなりにあるものの、傾向としましては、高濃度の事業場数が少なくなってきており、直近の令和元年7月以降で申し上げますと、一般排水基準を達成しているところが大体8割ほどとなっております。年々、改善傾向にあると考えております。

 続きまして、牛房施設もしくは馬房施設の排水実態を表3にまとめております。牛房施設のみを有する事業場であって、また糞尿を処理した排水を公共用水域に排出している事業場数は28ございました。また、牛房施設のほかに豚房施設も有している事業場にすると、その事業場数は39になります。このうち一般排水基準を超過している事業場数は4になっております。

 最後に、馬房施設につきましては、数がさらに少なくなり、公共用水域に排水している事業場数は5となっており、その全てで一般排水基準を達成している状況となっております。

 この牛房施設と馬房施設の事業場数なのですけれども、豚房施設よりも数が少ないという状況になっており、これらが実態をどれぐらい把握できているのかを調べしましたので、その結果を(2)でご説明いたします。

 こちらは農林水産省の「家畜排せつ物処理状況等調査結果」及び「畜産統計」という資料を基に、公共用水域に排水している頭数を算出いたしまして、その値と先ほどの我々の調査結果から出した頭数を比較して、その把握の割合を確認いたしました。

 その結果を表4にまとめております。農林水産省の資料を基に算出した結果、公共用水域に排出している割合として、乳用牛は1.0%、これを頭数で算出すると1万2,000頭ぐらい。また、肉用牛の排水は0.2%となり、頭数が4,000頭強になっております。馬につきましては、0.0%といった結果でした。

 これに対して、我々の調査した結果、頭数を確認したところ、乳用牛では1万1,000頭ぐらい、肉用牛では2,000頭弱といった結果となっておりました。我々のこの頭数と農林水産省の頭数を比較したところ、我々の調査の頭数のカバー率は、大体82%と推測されましたので、十分把握できていると考えています。

 以上が、全体の排水実態の結果となっておりまして、引き続きまして、高濃度事業場の対応状況について、(3)以降でご説明いたします。

 まず、豚房施設を有する事業場ですが、一般排水基準を超過する事業場はそれなりにあります。その中でも、特に継続的に300mg/Lを超過するおそれの高い事業場に絞ったところ、その事業場数は7件ございました。この7件に対して、高濃度の理由や対応状況について確認した結果を表5にまとめております。

 確認した結果、高濃度の理由としては、過曝気や、施設の故障で曝気能力が低下していた、また、汚泥の引き抜きが不十分であった。といった理由が挙げられております。

 この原因に対応することによって、曝気時間の調整であったり、施設の修繕、また定期的な汚泥の引き抜き、このような対策を講じることで、過去の実績を踏まえますと、その硝酸性窒素等の濃度は、今後、300mg/Lもしくは400mg/Lを達成することができると考えております。

 以上が、豚房施設の状況です。

続きまして牛房施設のみを有する高濃度事業場の対応状況について、ご説明いたします。

 牛房施設のみを有する事業場の場合、一般排水基準を超過する事業場が4つございました。その事業場に対して、高濃度の理由と対応状況を確認しました。その結果を表6にまとめております。

 高濃度の理由としましては、現状のスペックよりも過大なふん尿を入れていたことや、また、施設の故障、最後は過曝気だった、といったことが挙げられております。

 そのことに対して、現在の対応状況ですが、施設の処理スペック内にふん尿を減少することや、また、施設の修繕などにより事業場番号1~3につきましては、現状、問題なく一般排水基準を達成しております。今後も、特段問題ない見込みと聞いております。

 また、最後の事業場番号4については、340mg/Lと高い値が出ておりまして、これを確認したところ、そもそも現状の施設が一般排水基準を達成できるスペックではなかったということでした。

 また、この直近の340mg/Lは過曝気だったといった原因がありまして、その曝気時間を調整することで、過去の実績に基づきますと、今後、300mg/Lは達成できると確認が取れております。また、この事業場、今後、新たな排水処理施設を増設予定でして、この施設を増設以降は、一般排水基準を達成することができると確認が取れております。

 以上が、排水実態の調査結果となりまして、これらの状況を踏まえて、この排水基準の見直し案を6ページ目にまとめております。まず、豚房施設につきましては、高濃度事業場の調査結果に基づきまして、今後400mg/L以下にできると考えておりますので、現状の暫定排水基準を500mg/Lから400mg/Lに見直した上で、適用期間を3年延長が適当と考えております。

 続きまして、牛房施設のみを有する事業場に移ります。牛房施設の場合、ほとんどの事業場で一般排水基準を達成しているものの、一つの事業場で、現状、一般排水基準の達成が困難という状況となっております。

 また、この事業場、今後は300mg/L以下に達成できると聞いておりまして、また新たに処理施設も増設予定であり、その施設を設置以降は、一般排水基準を達成することができる状況となっております。

 この状況を踏まえ、次回の見直し案は、現状の500mg/Lから300mg/Lに見直し、適用期間を3年延長するものの、この一つの事業場で今後予定しております排水処理施設の増設状況を踏まえ、一般排水基準への移行を検討することが適当と考えております。

 最後に、馬房施設のみを有する事業場についてご説明いたします。

 こちら、農林水産省の調査結果でも公共用水域に排水している事業場が0.0%となっており、我々の調査でも、現状、一般排水基準を超過する事業場はございませんでしたので、次回の見直しは一般排水基準に移行することが適当と考えております。

 最後に、今後の排水濃度低減に向けた取組についてご説明いたします。

 今後の排水濃度の低減に向けた取組として4点、挙げております。1点目は、自治体別の超過事業場の把握です。こちらは、従来の全事業場調査ではなく、あくまで排水基準の見直しに直接関わる一般排水基準を超過するおそれのある事業場に絞ってリストアップし、その事業場を対象にフォローアップ調査などをしていきたいと考えております。

 また、事業場の規模別に暫定排水基準の設定の検討を進めていきたいと考えております。特に排水量、例として、1日当たりの排水量が50㎥以上もしくは未満といった排水量に応じた排水処理の対応状況についても整理していきたいと考えております。

 続いて、2点目は、排水処理技術等の動向調査・導入支援でございます。こちらは自治体から要望等があり、硝酸性窒素等の処理に係る技術動向の情報をまとめた資料があれば、立入調査の際に指導しやすいといった要望がございましたので、優良事例や処理技術の動向を収集していきたいと考えております。

 また、3点目は、超過事業場数の多い自治体に対して、必要に応じて事業場への専門家の派遣を実施することで、処理技術の導入支援などを行っていきたいと考えております。

 続いて、4番目と5番目は、業界団体もしくは行政による周知ということで、上記の処理技術の調査や、水濁法で定められております年1回以上の排水測定の義務の遵守を引き続き農林水産省と連携して、業界、また自治体を通じて事業場に要請していきたいと考えております。

 以上の取組等を踏まえまして、次の見直しにおいては、豚房施設を有する事業場について、排水規模等に応じた基準値をすることを含めて検討していきたいと考えております。

 畜産分野の暫定排水基準の見直しに係る検討結果につきましては以上になります。

【藤江委員長】 どうもありがとうございました。

 ここでお詫び申し上げたいと思います。先ほどの温泉排水に関係しまして、いただいたご意見等々から、修正の必要性はなしと判断をさせていただいて、先に話を進めさせていただきましたが、委員の皆さんへの確認を取らせていただくのを失念してしまいました。

 本日、環境省からご提案いただきました見直し案について、当委員会でご承認をいただけたということでよろしいでしょうか。特段のコメントがありましたら挙手をお願いしたいと思います。

 はい。挙手をいただいていないと思いますので、先ほどの議題に戻りまして、見直し案で取りまとめするということ、ご承認いただけたということにいたします。

 また、ご質問を幾つかいただいております。これに関しましては、ご質問の趣旨を踏まえて行政に反映をさせていただくことで環境省にお願いをしたいと思います。どうもありがとうございました。

 それでは、ただいまの畜産排水のところに戻りたいと思います。

 この件に関しては、豚房を有するところ、牛房を有するところに関してそれぞれ500mg/Lを400 mg/L、500 mg/Lを300 mg/Lに見直すということでご提案をいただいております。いかがでしょうか。

 古米委員、お願いします。

【古米委員】 ありがとうございます。

 先ほどの高濃度を排出している7事業場のうち、7番目の事業場ではふん尿を全量農地利用しているので一般排水基準を達成できているという事例がありましたが、例えば1~6の他の事業場等で実施するという可能性は、今回、検討はされていないのでしょうか。それが、一つ目の質問です。

 もう一つは、今後の排水濃度の低減化において、事業場には行政から測定義務を遵守するように伝えていますけれども、実際上、現場ではどのような頻度や方法で濃度測定をされておられるのでしょうか。

 以上です。

【藤江委員長】 お願いいたします。

【寺内係員】 ありがとうございます。

 まず、事業場、牛・豚房施設の排水処理の状況ですけれども、公共用水域の排水が少なくなる堆肥化処理が水環境の保全のために最も適切と考えておりますけれども、現状、豚房施設につきましては、ふん尿の水分量が多く、堆肥化しにくいといったような特徴になっております。

 また、農林水産省の調査の結果でも、現状、豚房施設については、その処理のメインとしては排水処理であり、牛房施設と比較すると堆肥化が難しい状況になっております。このため、できれば堆肥化は進めていっていただきたいと考えておりますが、ほかの事業場での展開というのは現状すぐできるようなものではないと考えているところです。

【藤江委員長】 ありがとうございます。

 古米委員、いかがでしょうか。

【古米委員】 7番目の事業場さんは、ふん尿等、全量農地利用するということはできたのですが、それは特殊ケースで一般的にはなかなか難しいというように理解いたしました。優良事例ということであれば、その事例を他の1~6事業者さんにも可能な範囲内で実施していただくような検討もいいと思います。また、高濃度で排出されているので、2番目の質問にあるように、どういった状況の中で高濃度になっているかを事業場で把握いただくのはとても重要かなと思います。

 以上です。

【藤江委員長】 ありがとうございます。

 私から追加の説明をさせていただきますと、豚の場合には、牧草地のような糞尿を散布できる農地が必ずしもない。牛の場合には牧草地があるから、牧草地に糞尿を散布することは可能なのですが、豚の場合、外部から購入した飼料等を使っておりまして、散布先の農地等がない。したがって、糞尿を受け入れてくれるところがないという状況があります。

 また、豚糞尿には窒素分が多く、地下水汚染の懸念もあり、農地への施用の規制がかかっているところがあります。そういったこともあり、散布が難しいとご理解いただければと思います。

【古米委員】 どうもありがとうございました。

【藤江委員長】 平沢委員、お願いします。

【平沢委員】 どうもありがとうございました。畜産に関しては、牛房と豚房と分けてきちっとまとめられて分かりやすくなってよかったかと思います。

 表5の豚房施設に関してご質問があるので、よろしいでしょうか。

【藤江委員長】 はい、お願いします。

【平沢委員】 300ppm超ということなので、これで暫定が高くなるのですが、それぞれの施設を見ると、それなりの装置がついていて、運転管理さえしっかりすれば100 mg/Lはクリアできると思うのですが、300 mg/Lにしているのはどういうことなのでしょうか。

【藤江委員長】 お願いします。

【寺内係員】 ありがとうございます。一つの原因としては、この豚房施設、今回、硝酸性窒素の有害物質になっておりますので、排水基準は0m3からの全事業場で適用されております。

 このため、比較的小規模の零細企業にも排水基準は適用されており、こちらに示しております、例えば事業場番号4では排水量が4m3と小さい規模の事業場になっておりますので、少し管理が不足していることや施設の老朽化などもあると考えております。

【平沢委員】 そのもともとの施設は、100ppmをクリアする仕様の施設で造っているものなんでしょうか。

【寺内係員】 すみません、そこまで確認が取れておりません。引き続き確認していきたいと思います。

【平沢委員】 例えば容量が足りなければ増設して造るとかで一律をクリアするのであれば、例えば何年後にクリアの見通しとかというほうが本当はいいかなと思いました。もちろん、今回、300 mg/Lでもいいと思うのですが、そのあたりの見通しはつけられるといいかなと。

 あわせまして、しっかりとした運転管理の指導は必須かなと考えました。

 以上です。

【藤江委員長】 ありがとうございます。

 コメントいただいたという理解でよろしいでしょうか。

【平沢委員】 結構です。

【藤江委員長】 ありがとうございます。

 ほかにいかがでしょうか。

 ほかにないようでしたら、幾つかコメントをいただきました。これも今後の対応の参考にしていただくということで、取りまとめ案としては、今回ご提案いただいた内容でよろしいでしょうか。特段コメントなければ、意思表示をしていただかなくて結構でございます。

 特段、ご意見ないようですので、この件に関しては、環境省からの提案を見直し案として取りまとめることにさせていただきます。どうもありがとうございました。

 では、次に資料3-3により、工業分野の暫定排水基準の見直しに係る検討結果について、引き続き事務局よりご説明をお願いいたします。

【町村係長】 資料3-3を用いまして、工業分野の暫定排水基準の見直しに係る検討結果についてご説明いたします。

 工業分野については8業種に対して暫定排水基準が設定されております。

 暫定排水基準の設定状況については表1に掲載しております。1~3番は、ほう素又はふっ素の暫定排水基準が適用されている業種になります。4番~8番は、硝酸性窒素等の暫定排水基準が設定されている業種になります。

 以降のページでは、業種ごとに取組状況、それから見直し案を整理しております。

 まず、2ページ目のほうろう鉄器製造業についてご説明いたします。

 対象物質は、ほう素及びふっ素です。

 表2に一般排水基準を超過する事業場数を掲載しております。ほう素、ふっ素いずれも2事業場が一般排水基準を超過しており、ほう素、ふっ素いずれも同一の事業場になっております。

 ピーク濃度の実績については表2の中段に掲載しております。ほう素については暫定排水基準40mg/Lのところ、排水実態としては最大で39mg/L、ふっ素については暫定排水基準12mg/Lのところ、実態としては12mg/Lが出ています。

 この業種の取組状況ですが、温泉同様、ほう素、ふっ素の除去が難しく、対策としては、ゆう薬中のほう素の削減、それから、塗装の乾式化の検討を進めておりますが、一般排水基準の達成には至っていない状況です。

 今後、対象事業場としては、排水濃度の平準化や、凝集剤の検討に取り組むとしております。

 暫定排水基準の見直し案は、ほう素、ふっ素いずれも現状の暫定排水基準値相当の排水実態が確認されていることから、3年延長が適当と考えております。

 次のページで参考資料として各事業場の取組状況を掲載しております。以降の業種を含めて説明は省略させていただきます。

 続きまして6ページ目の金属鉱業になります。

 こちらの対象物質はほう素になります。

 表3に一般排水基準超過事業場数を掲載しており、1事業場となっております。

 暫定排水基準は現状100 mg/Lが設定されているところ、ピーク濃度については20~30 mg/Lで安定していると報告されております。

 こちらの業種では、鉱物を採取するために地下を掘削する際、ほう素を含む水が湧出するといった事業場となっております。温泉同様、これまでに凝集沈殿や吸着法について検討を進めておりますが、導入可能な処理技術の見通しは立っていない状況です。現在は、坑廃水を地下還元する方策について技術面・法令面での検討を進めているところです。

 また、この事業場の直近2年間の排水濃度は20mg/Lで安定しているところですが、今後の開発として深部開発を計画しております。開発を行うエリアの近くに温泉排水のほう素濃度が100mg/L程度計測されているところもあり、今後の深部開発に伴い、その温泉水が流入する可能性があるといったことから、前回の部会でのご指摘を踏まえ、令和元年度より深部モニタリングを実施しております。これまで2年間のモニタリングを実施したところ、現在湧出している坑水と比べて、ほう素濃度は少し高くなる傾向を示したのですが、大幅な上昇は見られておりません。しかしながら、今後の深部開発に伴って温泉水の流れが変わることも予想されることから、水位が安定する令和6年頃までモニタリングを継続する予定となっております。

 したがいまして、暫定排水基準については100mg/Lのまま3年間延長する案としておりますが、次回見直しにおいては、水位の安定が予定される令和6年までの深部のモニタリングの結果を踏まえまして基準値の見直しを行うことが適当であると考えております。

 続きまして10ページ目の電気めっき業になります。

 こちらは、ほう素、ふっ素について暫定排水基準が適用されております。

 表4に一般排水基準を超過する事業場を掲載しております。括弧で記載しておりますのは、下水道に放流する事業場を掲載しております。下水道については、ほう素、ふっ素については処理困難物質に指定されていることから、こちらも含めてフォローアップを進めております。

 実態としては、一般排水基準を超過する事業は公共用水域に排出するものと下水道に排除するものを含めて30程度ございます。

 ピーク濃度としては暫定排水基準、現状の値レベルの排水実態は確認されております。

 取組状況ですけれども、業界団体のほうで講習会の開催や普及啓発を取り組んでおります。また、各事業場において代替薬品への切替えや、めっきの際のめっき液を次の工程に持ち出さないような管理を進めている状況ですが、一般排水基準の達成には至っていない状況です。

 今後業界としては、一般排水基準を超過する事業場ごとに目標値を設定した上で、これらの取組を推進するとの報告がされております。

 暫定排水基準の見直し案ですけれども、いずれも現行の値を維持した上で3年間延長の案としております。

 続きまして13ページ目になります。これ以降は、硝酸性窒素等の暫定排水基準が適用されている業種についてです。

 まず、貴金属製造・再生業になります。

 こちらは表5にありますとおり、一般排水基準を超過する事業場は下水道に排除するもの合わせて7事業場ございます。暫定排水基準が2,800 mg/Lのところ、ピーク濃度としては2,000 弱mg/Lという実績となっております。こちらの業種では、硝酸及びアンモニアを使用して金属を溶かす工程がございますが、使用量の削減や代替に取り組んでいるほか、高濃度分を抽出して産廃処理に回す、また、液中燃焼の取組を進めておりますが、現状、一般排水基準の達成には至っていない状況です。

 特にアンモニア性窒素については、アンモニアストリッピング装置の導入により削減を進めておりますが、一部事業場では塩による閉塞といった技術的な課題がございます。硝酸性窒素については、一部事業場で生物処理の導入を進めており、直近3年間で50%程度削減効果が認められた事業場もございました。一方で設置スペースの問題から全ての事業場でこの生物処理の導入には至っていない状況です。

 今後、対象事業場としては、これらの取組や廃液からの硝酸の回収、生物処理法のさらなる検討などに取り組むとしております。

 直近2年間のピーク濃度は2,000弱mg/Lですが、導入可能な処理技術の見通しが立っておらず、抜本的な方策が見出されていない状況を踏まえ、現行の暫定排水基準2,800 mg/Lを維持し、3年間延長する案としております。

 なお、下水道に排除する5事業場の取扱いについては、今後、関係省庁と協議しまして、引き続き、フォローアップの対象とすべきかどうかを検討していきたいと考えております。その理由として、硝酸性窒素については、下水道で処理可能な物質であり、本来、市町村が市町村の下水道のスペックに応じて必要な範囲で下水道に流す際の基準を設定するものです。したがって、水濁法の排水基準の検討とは切り離すべきではないかと考えております。

 続きまして18ページ目の酸化コバルト製造業になります。

 こちらは、過年度、一般排水基準を超過する事業場がございましたが、過去2年間については全て一般排水基準を達成している状況です。

 これまでフォローアップしていた2事業場ですが、アンモニアストリッピング装置を導入しまして、平均濃度が95%低減しており、一般排水基準は達成しているといったことから、令和4年7月以降の見直し案としては、一般排水基準に移行することが適当であると考えております。

 続きまして21ページ目に移ります。ジルコニウム化合物製造業。

 こちらについて、硝酸性窒素等の暫定排水基準が設定されております。

 一般排水基準を超過する事業場は表7に掲載していますとおり、1事業場になっております。ピーク濃度は300弱mg/Lという実態となっております。

 こちら、1事業場につきましては、アンモニアストリッピング装置を導入されていないのですが、別の工場でアンモニアストリッピング装置を導入した工場があり、順次そちらに生産ラインを移管しているといった状況です。

 平成29年~令和3年度の中で6品目中5品について移管が完了しまして、濃度が低減しております。残る1品目については、顧客承認待ちということで、こちらが完了しますと一般排水基準は達成できる見込みとなっております。

 したがいまして、暫定排水基準の見直し案ですけれども、直近3年間のピーク濃度として310mg/L、計測されていることから、現行の暫定排水基準値600 mg/Lを350 mg/Lに見直した上で3年間延長、次回見直しにおいては対象事業場の生産ラインの移管状況を踏まえ、一般排水基準への移行を検討することが適当であると考えております。

 続きまして23ページ、モリブデン化合物製造業になります。

 こちらは一般排水基準を超過する事業場が2事業場となっております。

 ピーク濃度としては、暫定排水基準1,400 mg/Lのところ、1,200mg/L前後といったところになります。

 こちらについては、ピーク濃度が高い事業場のほうでアンモニアストリッピング装置の連続稼働を実現のための検討を進めておりますが、閉塞の問題といった技術的な課題があるため一般排水基準の達成には至っていないところです。

 今後は、この閉塞問題の技術的な課題の解決等に取り組むとしております。

 暫定排水基準についてですが、直近3年間のピーク濃度が1,201 mg/Lといったことから、暫定排水基準値を現行の1,400 mg/Lから1.300 mg/Lに見直した上で3年間延長の案としております。

 最後に25ページ、バナジウム化合物製造業になります。

 こちらは一般排水基準を超過する事業場が3事業場ございます。

 課題としては、モリブデン化合物製造業と同様であり、アンモニアストリッピング装置に係る閉塞問題、この対応が解決しないと一般排水基準への移行は難しい業種となっております。

 直近のピーク濃度、暫定排水基準1,650 mg/Lのところ1,637 mg/Lが計測されているため、現行の暫定排水基準1,650mg/Lを維持した上で3年間延長することが適当であると考えております。

 各業種の取組状況については以上です。

 最後に28ページ目、今後の取組についてご説明いたします。引き続き、ほう素、ふっ素、硝酸性窒素等の排水処理技術の動向を踏まえつつ、関係省庁・自治体・業界団体等も連携しつつ、排水処理施設の適切な運転について技術的な指導を進める予定となっております。

 また、次回の定排水基準に向けては、中長期的な見通しについても示しつつ基準の検討を進めていきたいと考えております。

 工業分野の説明については以上になります。

【藤江委員長】 どうもありがとうございました。

 工業分野8業種についての見直し案のご説明をいただきました。変更があるところは、硝酸性窒素について、酸化コバルト、ジルコニウム、そしてモリブデンでございます。ほかは現行の延長という案になっております。

 ご意見等々いただければと思います。お願いいたします。

 工業分野ということで辰巳委員、いかがでしょうか。

【辰巳委員】 はい。辰巳です。私もこの工業分野の検討会に参加させていただいて、いろいろと皆さんの意見を、いろいろ努力されている点は重々把握しているつもりなのですが、なかなか難しい点がありまして、今回、このように提案させていただいているのは妥当と考えております。

 以上でございます。

【藤江委員長】 どうもありがとうございます。

 ほかにいかがでしょうか。特段ございませんでしょうか。もしないようでしたら、ご提案いただきましたこの見直し案をここで合意が得られたということにさせていただきたいと思います。よろしいでしょうか。

 どうもありがとうございました。

 それでは、次は資料3-4に基づきまして、下水道分野について事務局よりご説明をお願いいたします。

【寺内係員】 環境省の寺内です。

 では、私から引き続きまして資料3-4を基に下水道分野の暫定排水基準の見直しに係る検討結果についてご説明いたします。

 まず、下水道分野に適用されております暫定排水基準ですが、表1に記載しておりますとおり、項目は二つございます。一つがほう素で、もう一つが硝酸性窒素等になります。

 それぞれの暫定排水基準、現状の値ですが、ほう素は一般排水基準が10mg/Lに対して、現状の値が50mg/L、硝酸性窒素等については一般排水基準が100mg/Lに対して、現状130 mg/Lが適用されております。

 これらの項目の暫定排水が適用されている事業場の排水実態及び見直し案につきまして、3.目以降でご説明いたします。

 まず、ほう素の適用されている事業場の適用条件ですけれども、温泉排水を一定割合以上受け入れている下水処理場が適用条件となっております。そのうち、一般排水基準を達成していないのは1事業場ございまして、この事業場では、周辺の旅館業からの温泉排水を受け入れて処理しております。

 また、この事業場では、一般家庭からの排水も処理しているのですが、その処理の割合としては温泉排水の割合が多い状況になっております。

 このA事業場からの直近の排水のほう素濃度については、直近2年間でその平均値が20.6mg/L、また最大値については25mg/Lとなっております。

 現状、ほう素の処理については、導入可能な処理技術の見通しが立っていないことから、このA事業場及び排出元の温泉旅館での排水処理による濃度低減は現状困難な状況です。

 また、この事業場では一般家庭の排水も処理しているものの、市街地から離れているといったところもあり、今後、人口減少が予測されております。そのため、将来的にはこの事業場での温泉排水の流入割合が高くなることが懸念されておりまして、過年度に実施しました流入水濃度の測定結果やその変動、また、今後の処理人口の計画値、一方で温泉旅館については今後新設や増設等が計画されており、そのことを踏まえて想定される最大排水濃度を試算したところ、この事業場からの排水のほう素濃度は最大約31mg/Lとなる見込みです。

 この状況を踏まえ次回の見直し案についてご説明いたします。

 まず、適用期間ですが、現状、温泉分野と同様に、ほう素の処理の見通しが現状立っていないことから、3年ごとに当該暫定排水基準を見直すことで一般排水基準への移行を促進する効果が限定的と考えております。

 したがって、暫定排水基準については、温泉旅館の増改築予定の把握や、また、ほう素処理技術の導入調査等の濃度低減に向けた取組が行われることも鑑みまして、その適用期間は温泉分野と同様に当分の間にして、放流先におけるほう素の環境基準の達成状況を監視しつつ、処理技術の動向を踏まえて暫定排水基準の見直しを進めていきたいと考えております。

 また、適用期間を当分の間としたときの基準値に関してですが、現状、A事業場における濃度予測の結果を踏まえ、現状の50mg/Lから次回は40mg/Lに強化した上で当分の間にすることが適当と考えております。

 ほう素につきましては以上になります。

 続きまして、(2)で硝酸性窒素等の状況についてご説明いたします。

 まず、適用条件につきましては、モリブデン化合物製造業又はジルコニウム化合物製造業からの排水を受け入れている下水道業になります。このうち、一般排水基準を超過するおそれのある事業場は一つ、B事業場がございます。このB事業場は約100社の事業場の排水を受け入れており、このうち3社が高濃度の硝酸性窒素等を排出している状況となっております。

 現在の状況として、この高濃度の3社を中心に企業で取組、対策が進んでおり、また、一方でB事業場でも窒素低減の方法が検討され、処理系統の新設も進んでいる状況となっております。

 その結果、直近1年のB事業場からの放流水の硝酸性窒素等の濃度は平均が29.1mg/L、また最大は34.2mg/Lとなっており、現状、一般排水基準を達成し、また、今後も特段問題ないと確認が取れております。

 以上を踏まえ、次回の暫定排水基準の見直し案は、一般排水基準に移行することが適当と考えております。

 下水道分野の暫定排水基準の見直しに係る検討結果につきましては以上になります。

【藤江委員長】 ありがとうございました。

 温泉排水を受け入れている事業場に関しては、状況の変化に応じてほう素を50 mg/Lから40 mg/Lに、そしてモリブデン、ジルコニウム化合物等々の排水を受け入れているところに関しては、硝酸性窒素を130 mg/Lから一般排水基準に移行という案でございます。ご意見をいただければと思います。お願いいたします。

 では、手を挙げていただいていないようでございますので、この件に関しましては、事務局からご提案いただきました見直し案について合意をいただいたということにさせていただきます。どうもありがとうございました。

 では、次に今後の進め方につきましてご説明をお願いいたします。

【町村係長】 本日はご審議ありがとうございました。

 今後の予定につきましては、資料2でご説明したとおり、パブリックコメントを進めてまいります。パブリックコメント終了後、事務局においていただいたご意見に対する回答案を作成し、委員の皆様にメール等で確認させていただきたいと思います。再度、専門委員会を開催するかどうかはパブリックコメントの結果を踏まえ、委員長にご判断いただきたいと思います。

 見直し案がまとまりましたら、水環境・土壌農薬部会においてご審議いただく予定です。

【藤江委員長】 どうもありがとうございました。

 本日の見直し案については全て事務局からの提案どおり、ご承認をいただき、そして、今、事務局からご説明がありましたとおり、今後の工程に沿って進めていくということでございます。どうもありがとうございました。

 それでは、議題2、その他について、事務局、何かありましたらお願いいたします。

【松澤局長】 水・大気環境局長の松澤でございます。

 ご報告の前に1点、今日のご審議について御礼申し上げたいと思います。委員の先生方々からは今後の暫定排水基準のサイクリックな見直しが立って、技術の導入の見通しをもう少し作っていくべきじゃないかというご指摘があったように思います。次回以降の見直しに当たっては、そのように努めてまいりたいと思います。

 また、排水規制の在り方につきましても、化学物質のような有害物質は、水道に先んじて取り組むべきじゃないかというご指摘がございました。ご案内のとおり、水の環境基準、あるいは排水基準、非常に水道水の水質基準とリンクしてこれまで取り組んできておりますけれども、ご指摘も踏まえて考えていきたいと思います。

 また、天然由来のもの、あるいは、放流先の影響が非常に少ないもの、こういうものについての規制の在り方も考えていったらどうかというご提案をいただきました。こういったことも踏まえて、今後の排水規制、全体的な考え方というのを引き続き見詰め直していきたいと思います。どうもありがとうございました。

 それから、ご報告でございます。現在、あらゆる分野で女性の参画を進めていく必要がございます。閣議決定されました第5次男女共同参画基本計画が政府の今後の進め方ということで決められておりますけれども、その中で国の審議会の専門委員について、2025年までに女性の割合を40%以上、60%以下とする目標が定められております。水環境・土壌農薬部会、この部会の下にある専門委員会についても女性の委員数を増やしていきたいと考えております。

 現在、部会の下には、当専門委員会も含めまして、八つの専門委員会、そして五つの小委員会の形になっております。この専門委員会、小委員会の役割ですとか、全体構成についても、よく考えていく必要があるかなということでございます。こうした点について、古米部会長とご相談もして、それから、部会にもご報告をしていきたいと考えております。

 その上で、この専門委員会をどのようにしていくのか、これについては改めて委員の先生方にご報告をさせていただきたいと考えております。その際にはどうぞよろしくお願いいたします。

 本日、どうもありがとうございました。

【藤江委員長】 ありがとうございました。

 それでは、これをもちまして本日の議事は全て終了ということでございます。

 議事進行にご協力いただきまして大変ありがとうございました。御礼を申し上げます。

 事務局にお返しします。

【町村係長】 本日の議事録につきましては、事務局で案を作成し、後日、委員の皆様にお送りいたします。全員のご確認をいただいたものを早急に環境省ウェブサイトにて公開いたします。

 それでは、以上をもちまして第32回排水規制等専門委員会を閉会いたします。本日はどうもありがとうございました。

<午前11時22分 閉会>