環境配慮契約法基本方針検討会 船舶ワーキンググループ(第2回)議事録

出席委員:
石渡委員、内野委員、河村委員、桐明委員、鈴木委員、千田委員(座長)、武田委員、塚本委員、藤田委員、三村委員(五十音順、敬称略)
欠席委員:
川上委員、遠山委員

日時

平成21年10月28日(水)10時00分~12時00分

場所

法曹会館2階 高砂の間

1.開会

事務局:定刻になりましたので、これより平成21年度環境配慮法基本方針検討会船舶WG第2回を開催します。委員のみなさまにはご多忙にもかかわらずお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。最初に前回ご欠席された塚本委員をご紹介いたします。東京海洋大学海洋工学部教授の塚本委員でございます。

塚本委員:塚本です。よろしくお願いします。

事務局:以後の議事進行は千田座長にお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

千田座長:みなさま、おはようございます。今日は朝早くからお集まりいただきましてありがとうございます。日程がタイトでございまして、前回から日が経っておりませんが、お忙しいなか時間を割いていただいてありがとうございます。それでは議事に入ります前に、事務局の方から本日の議事予定と必要事項のご説明をお願いします。

事務局:(議事予定、配布資料説明 省略)

2.議事

千田座長:ありがとうございました。それでは議事に入らせていただきます。前回の会合では本WGで何を検討するか、その検討方針と合わせて船舶の調達に係る契約における基本的な考え方を示していただき、それらにつきまして委員のみなさまからご意見をいただいたところです。今回はいただきましたご意見等を踏まえまして、もう一段階具体的に詰めた資料を用意していただいております。前回のこのワーキンググループの会合では、船舶の燃費は総合的に評価をしないといけないのですが、これがなかなか難しい面があるということを踏まえた上で、しかしできるところから始めていこうということで、例えばエンジンにつきましてはすでに燃費基準のような、基準に類するような指標もありますので、特に小型船舶においてはこういったものを利用出来るのではないかというような議論をしていただきました。本日はそういった前回のWGの内容を踏まえまして、より具体的な船舶の環境配慮契約の在り方について、議論を進めていただきたいと思います。それでは用意していただきました資料1「船舶の調達等に係る契約類型別の環境配慮の方向性」について事務局の方からご説明をお願いいたします。特に資料1の2ページ以降の環境配慮の方向性の部分が本日ご議論していただく中心になろうかと思います。(1)、(2)、(3)に分けて整理をしていただいておりますので、ご説明をお願いします。

事務局:(資料1(2.(1)まで)説明 省略)

千田座長:ありがとうございました。少し整理いたしますと、まず契約類型を3つに分けて、その中で概略設計・基本設計の契約においてはプロポーザル方式を取り入れることでかなり環境配慮の形態がとれるのではないかということで具体的なご提案をいただきました。建造、購入に係る部分につきましては今後検討していくということで整理をしていただいております。ということで一番大きな論点は概略設計・基本設計の契約におけるプロポーザル方式を取り入れた環境配慮契約がいかがかということです。ここの部分について中心的にご意見をいただきたいと思います。特に事業者の方はこういうかたちの環境配慮契約をとることになった時にどのように対応できるか、何か不都合があるか、あるいは発注者側の方もこれでやっていけるかどうかについて、少し具体的な事例を思い浮かべながらご意見をいただければ大変ありがたいと思います。いかがでしょうか。

桐明委員:参考1のプロポーザル方式の中身ですが、評価基準というのがあって4段階で評価しているのですけれども、優れているとかやや優れているとかその程度で評価できるのか。それと環境を重視するのであれば、環境のウエイトを6割にするとかしないと環境重視という方向にはいかないですよね。例えば6:4とか5:5にするとか、その辺をきちんと決めないと、本当に評価したことにならない。そのフレームワークを示し、評価の透明性を担保すればできるかと思います。コンペをさせるのであれば、そこをオープンにしなければいけません。ですから、もうちょっときめ細かい評価の仕方をしないとまずいのかな、と思います。
 それともうひとつは、設計段階で評価をするとして、その船がどういうふうに使われるのか、耐用年数が20年ならばその20年間を業務内容がどうなっているのかをきちんと分析する必要があります。例えば、燃費性能が大きく関わってくるでしょうから、マックススピードで航行する機会がどのくらいあるのかとか、年間どれくらい稼動するのかとか、運航実態をきちっと把握しないといけません。船のライフサイクルの観点から評価して良い悪いを決めていかないと、イニシャルコストだけで評価しても、本当に環境にやさしい船かどうか評価できないと思います。

事務局:一番重要になってくるのは設計の過程でどのような設計をするのかということで、そこで発注した側と請け負っていただいた方でよく協議をしながらいいものを設計していただくことが非常に重要になってくるのですが、環境配慮契約法でカバーできるのは契約する段階になります。まず契約する時に少なくとも環境配慮をして技術力が高い業者と契約していただくことが、契約法でカバーできる範囲だと考えております。もちろん、建築でもそうですけれども、その先でどういう設計をするかというところが非常に大きい影響をその後及ぼしますけれども、そこまでは契約の段階ではカバーしきれませんので、契約法の法律の範囲でカバーできる範囲として、今設計の契約部分で環境配慮しましょうというご提案になります。それから評価基準につきましては、提案の自由度が高ければ評価基準もそういうものになるでしょうし、かなり細かいテーマ設定にすればかなり詳細な評価基準にできるのだと思いますけれども、建築もこれでこれまで運用してきておりますので、運用の中で解決していけるものではないかと思っております。配点につきましては、環境を一番重視していただけるなら環境配慮の項目を重視した方がいいでしょうし、先ほどの例にもありますように居住性を重視する場合もあるでしょうし、それから高速性を重視する場合もあるでしょうから、配点を一律に環境を一番重い点数にして下さいということではなくて、それは発注者の方でどのテーマに重きを置くかということを判断していただくということになります。先ほどもお話したようにここの配点が低いからといって必ずしもそこのところを重視していないということではなく、設計の段階で、どのような設計にするかというのが非常に重要でありますので、この配点が低いことが必ずしもその先の環境配慮が進まないということではありませんので、そこは適切な点数を設定していただければというふうに考えております。

桐明委員:少しでも環境配慮されていればいいというレベルですよね。私が言っているのは、本当に環境配慮を進めていこうとするのであればぎりぎりやらないといけません。いいものを造るわけですから予算も高くなります。いろいろな環境規制がありますが、それをクリアするためにお金がかかるから、みんなそれを逃げようとします。それを何とかしようというのが環境省の立場なのですから、そこをもう少し考えないといけません。少しでも考えてくれて、あとはそれぞれ運用しているところに任せればいいということであればそれでいいと思いますが、それでは何をやっていたのかという話になります。

事務局:先ほども申したとおり、環境配慮契約法ではあくまでも設計を契約する時点、あるいは建造を契約する時点で何か工夫ができないかということになります。もちろん建築でも船でもよりお金をかけて環境配慮型のものを作るということと、一方で予算をなるべく節約していこうということがありますので、その予算をどれくらい使っていけばいいかについてはなかなかこの法律の中ではカバーできないということです。この法律でカバーできる時点として、設計を契約する時点、建造を契約する時点、購入する時点という、それぞれの時点で何ができるのかということで定めているということであります。

事務局:補足させていただきますが、ここでいうプロポーザル方式は設計段階における設計事業者をどのように選定したらよいかについてのご提案でございます。実際の設計についてはそのあとの作業になると思いますので、そのなかで調達者と事業者が相談しながら基本的な設計を進めていくかたちになろうかと思いますが、まず最初に、燃費の効果などの技術にあまり知見をお持ちでない事業者とは一緒に設計する作業を進めていくパートナーとしてふさわしくないのではないか、という考え方です。設計者を選ぶ際には、その船舶が必要とする要件について、知見を持った事業者を選定するというのが今回のご提案の趣旨でございます。

藤田委員:私が勉強不足なのかもしれませんが、ここでいう環境配慮という項目を今まで明らかにされましたか。

事務局:環境配慮のテーマの設定については、環境に配慮するテーマであれば、例えば少しでも省燃費にするとかどんなテーマでも構いません。建築につきましても、発注者の方で環境に配慮に関するテーマを適宜設定していただくことにしております。必ずしもこのテーマにして下さいということは決めておりません。

藤田委員:それを法律ではなくて関係法令の中で環境配慮する対象はこういうものだという、そこまでは特段議論はしないということですか。あるいは考えていないということでしょうか。

事務局:それは文字通りケースバイケースということでありますので、その船でどういった環境配慮をしていただくのが一番良いかということを考えるということだと思います。例えば建築であれば、北海道で作るのと沖縄で作るのとでは当然求める環境配慮の視点が違うということですので、テーマを一律に定めるのではなくてそこにふさわしいテーマを、その船ごとにふさわしいテーマを設定していただくということだと思います。

藤田委員:例えば、環境配慮の項目にあたるかどうかわかりませんが、私どもの設計したもので水中放射雑音を環境のテーマに選ぶとすると、ご存知のとおりかなりのお金がかかるわけです。これは発注者の金額が非常に変わってくる可能性があるわけです。私ども調査船の中を設計する場合いろいろな生物のことを考えるわけですから、要するにここで言うのは例えばNOxやCO2をテーマとして設定されているのか、あるいはそれはどこまで広がっていくのかという意味であります。

千田座長:法律は温室効果ガス等の排出の削減ということです。

藤田委員:その「等」の意味ですね。

河村委員:例えばスピードとか居住性というのは、今までも含めて船の用途なり目的、ミッションにおいて考慮されてきたわけです。この環境配慮は、その居住環境まで配慮しろという意味ではないのであれば、その辺は船のミッションとして当然今までもやってきたし、これからも設計者としてその船の最適なものをデザインしていくということになるのだと思うのですけれども、それにプラスして今おっしゃった温室効果ガスとか燃費とか、そういったものをひとつのファクターとして評価しなさいということですよね。

千田座長:おそらく桐明委員のご意見とも関係するのですが、この法律はとにかく今まで価格ベースでやられていた競争による契約、入札に対して、環境を配慮するという要素を含めることができる。つまりこういう考え方はもともと企画競争という考え方の中にあったもので、そこに環境という項目も企画競争の項目に入れたらどうかということを言っているんだと思います。そこから先、では環境は何かとか、あるいはそれをどう採点するかとか、あるいはどこにどれだけの重みをつけるかについてはそれぞれの契約においていろいろな事情がありますので、この基本方針で細かく規定するかどうかで、規定する場合もあると思いますが、船舶の場合にはかなりいろいろな類型があるので規定できないのではないかということです。桐明委員がご指摘されたように非常にぼやっとしたかたちにしかまとまっていませんが、そこは発注者の事情に任せてもいいのかなと私は思います。この基本方針でどこまで規定するかの一番大元は、企画競争の中に環境という項目を必ず入れて下さいということを要請している、そこまでに留めざるを得ないのではないかと思います。採点が曖昧ということについて言うならば、すでに企画競争というものが運用されておりますので、企画競争に共通する課題です。ここで、実例を挙げていただいておりますけれども、すでにある企画競争方式という枠組みの中に環境配慮の観点を入れていこうというのが、契約法というこの法律の枠組みの中でできることの1つではないかという気がします。国土交通省:今、藤田委員が言われたのは、環境はどこまで入るかということを非常に気にされていて、特に船の場合、一般的に今まで省エネであればいいということで進んでいたのですが、水産庁系の調査船の場合には、調査する際に海底を根こそぎ取ってしまうことによる影響とか生態系への影響とかも全て環境配慮と捉えていいのかという意見だと思います。だからNOxもCO2も環境配慮ですし、広い意味では生態系保全も環境配慮ですので、いろいろな要素も考慮して、あるいはそのうちの一つだけでも考慮していれば環境配慮法に適用されるのかというのをみなさん気にされているのだと思います。それと先ほど言われた、環境に配慮した設計事業者がどういうものかよくわかりませんが、そういうことでも環境に配慮されたと判断されるのかということをみなさん気にされているのだと思います。

事務局:もともとは温室効果がス等の排出の削減に配慮した契約の推進ということが挙げられてございます。従いまして、ここで環境配慮と申し上げているのは温室効果ガス等の排出の削減ということがメインテーマになります。広い意味で考えれば生態系保全ですとか、騒音問題なども環境配慮と言えますが、環境配慮契約法の法律及び基本方針の目的は温室効果ガス等の排出の削減です。温室効果ガス等とは何かという法律の中の定義もございますので、あとでご参照いただければと思いますが、「温室効果ガスその他環境への負荷の原因となる物質をいう」と規定されています。もうひとつ、環境に配慮した事業者を選ぶのではなくて、環境に配慮した船を作ることができるであろう設計者を選ぶということでございますので、その辺を補足させていただきます。以上です。

桐明委員:今聞いていますと、類型が沢山あるので一律には規定できない、それは確かにそうです。それならば、例えば、我々はCO2が一番問題だ、音が問題だとか、発注者が事前にこういう項目に配慮してくれと示す必要があります。全部で5点だとすると3点しか貰えない設計者もいるし、5点全部貰える設計者もいる。そこから評価してもらえばいいので、その時に業者サイドからこれとこれは考えて欲しい、それ以外も考えてもいいけれども最低限いくつくらいの項目はやって欲しいという指示を出した方が楽だと思います。そうでないと何でもやればいいとなってしまいますので。その時代時代によって、最低限あると思います。先ほどおっしゃったように、北海道の場合と沖縄の場合で違います。そういう時はそれにプラスマイナスすればいいわけです。それくらいの、逆に言うと発注者側の配慮がいるのではないかと思います。

藤田委員:ありがとうございます。その通りです。それから桐明委員がおっしゃいましたけれども、発注者側がある程度指定していかないとまともな設計はできないかもしれません。というのは、どの分野をどこの程度までやるかということについては全てがお金に絡んでくるものですから。相当程度指定できる発注者もあるかもしれませんが、この法律ができていろいろなところが、この法律の対象ではないところも同じような方向で動き始める可能性が高いのだろうと思います。そう考えると、発注者側の考えはある程度出さないと、とても仕様、あるいは金額をはじき出すということはできそうにはないと思います。

千田座長:少し整理させていただくと、法律はある程度一般論で書かざるを得ません。しかし、個別の発注の場合の仕様書はそこのところは詳細にしてくれないと困ります。これは当然だと思うのですが、そこのところをどうやって埋めますかという問題だと思っていいですか。

藤田委員:そこは任せましょうという環境省のお話だと思います。私はそれでも今のところ、段階論で仕方ないのかなと思います。

千田座長:私がお聞きしたいのは、発注者にせめてこれくらいは出すべきというようなことがこの基本方針自体には書き込まないにしても何かやり方があるのかないのかということと、あるいは発注者側から見てその辺はどのようにお考えになるかということです。おそらく事業者側からすると当然のご意見だと思います。このように曖昧に書かれてもわからないということであれば、では実際はどのように実効性を担保されるのか。ただ私のもう一つの疑問は、現在でも企画競争というのは行われていると思うのですが、その企画競争の項目の一つに環境配慮が入るというように見たら、今までの企画競争でそういうことでお困りになったことがあるのかどうかということだと思います。要するに発注者と事業者との間のある種のコミュニケーションの問題と言いますか、その辺が伝わってないような仕様書で事業者側がしっかりとした対応ができなくて競争関係が不当になったようなこと、何か企画競争の事例として上手くいかなかったことがあるのでしょうか。

藤田委員:困ったことはあります。ただそれは不当競争とかそういう話よりも、ニーズが掴めないからですね。それを結局いろいろな事を我々が経験するなかで発注者側のニーズを把握していくという、時間と労力がかかるということです。先ほど言いましたように、段階論として時間をかけて、どうしても相当苦労はすると思いますけれども、時間をかければその辺の社会的コンセンサスみたいなものでしょうか、例えば県の調査船ならばこういうもの、あるいは取り締り船ならこういうもの、国の調査船ならこういうものというのが、時間をかければ出てくる可能性はあると思うのですが、新しく環境配慮を謳った場合に相当な時間がかかり、ニーズを把握するのに苦労するなという感じはします。

事務局:企画競争の場合についてはコンペとは違いますので、あくまでも設計案を出して下さいということではありません。コンペは一般的に建築などで聞かれると思うのですが、設計案を出して、それを評価するというかたちになりますけれども、企画競争とかプロポーザルは設計の前の段階、例えば環境に配慮するとしたらこういう視点から出来るのではないでしょうかという提案をいただく段階になりますので、応募する時点では必ずしも事細かに設計案を作成する必要はありません。逆に設計の前の段階で評価ができないと困りますので、考え方といったものをご提案いただくという趣旨になりますので、その点について誤解がありましたらいけませんので、そこだけ付け加えさせていただきます。

塚本委員:そこのところに誤解があるのではないかと思います。設計しろと言っているのではなくて、業者を選ぶためにその業者がどういう能力があるかを見たいという話なので、実際に船を設計してこの船がいくらでできますという話をするということは一切言っていないということです。そこのところが誤解されているのではないかと思います。

藤田委員:私がぶれているのでしょうか。すみません。私どもの仕事を具体的に話しますと、提案する場合にその船の性能から何から詰めていって仕様書に落としていくわけですね。それを発注者に提案するわけですね。

塚本委員:それをどこに頼むのかを決めようとしているだけの話で、それは決まってからやっていただく話なのだと思います。

武田委員:先ほど言われたような能力を、どの設計を請け負う人が持っているかを見極めるというのが今の段階のスタートだと思います。誰かに委託しなくてはいけない。その委託を請ける人が、自分たちの思っているような環境評価とかに通じているかとか、具体的な考え方を提示できそうかとか、そういうことを見極めようとするのが今これから話していく内容だと理解しています

千田座長:最後は船を作る時の値段に跳ね返ってくるのではないかというご心配があるのだと思いますが、今の場合は、この業者がそういう実力を持っているかどうかの話なので、具体的なスペックはこの段階ではないのでその心配はないということですか。

事務局:建築の場合ですと、例えば総工事費3億円程度というように前提となる予算を提示して設計を委託するのですが、設計事業者からの提案が予算的に成り立たない場合、評価が低くなることはありえます。環境配慮の提案を実際に環境にどのように配慮するのかは設計の段階で協議することで、プロポーザル方式は、どの事業者にお願いをするか選ぶ段階です。事細かに設計を提案して下さいということではありません。

石渡委員:今事細かに設計を提案したら、逆に入札に参加できない事業者もいると思います。ですから、このようなプロポーザル方式のような大雑把なかたちで環境に配慮するということで各造船業が出す場合に、評価できる人がその役所にいるかどうか、それが一番心配です。

事務局:それは船舶に限らず企画競争全般に係る問題で、建築でも同じような問題があろうかと思いますが、船舶ではもちろん例えば国土交通省や海上保安庁には能力がある方が当然いらっしゃるでしょうし、建築であれば国土交通省にもいます。いないところについては外部の、例えば大学の先生にお願いするといったこともできますので、全くできないということではないと思います。

塚本委員:これで本当に環境に配慮したものが作れるのかどうかという問題が最後まで残るとは思いますが、これはこれで仕方がないと思います。

河村委員:設計業者を決める時の評価の仕方も、透明性、平等性が必要で、我々も受注したかったが結局値段だけではなくてこういう点で我々は負けたのだということを納得できないと、なかなか決めるといっても難しいと思いますので、やはり評価する側に本当にしっかり納得させられる評価というのをしていただかないと、やはり不平が溜まるのではないかという気がします。

事務局:それは企画競争全般で言えることではあると思います。通常の手続きであれば、点数については公表する制度がございますし、説明を要求する期間というのを設けると思います。

桐明委員:それは古い。昔は説明を申し立てる時代だけれども、今は役所の側が説明責任を負っていますから、行政は説明責任を果たさなければいけません。これまでは何かあったら聞きに行くという世界だった。でも世の中変わっている。やはり透明性があり公平性があるということを示さなくてはいけない、そういうものを担保するためにどうしたらいいのかということでいろいろ試行している段階ですから。やはり行政の向かっている方向もそのように変わらないといけません。

千田座長:発注者側の方に、これで本当にどれくらいのことができるのかということを突きつけられているように思うのですが、何かご発言はございませんか。

海上保安庁:海上保安庁では基本的にこの概略設計・基本設計は自前で行っているので、事業者に対してどういうことをお頼みするかというのは想像でしか申し上げられないのですが、この環境配慮型プロポーザル方式で求めているのは、我々が発注する際に、例えば従来型の船を2億8千万で作っており、環境配慮分で2千万上乗せして3億で考えて下さいといった時に、発注者としては省エネを考慮した形で設計をして下さいというアバウトな書き方にしかできないと思います。例えば太陽光発電とか、従来から使われている排ガスエコノマイザーを使っているとか、当たり前のことは書けないので、発注者が想像できないものを設計者にお頼みするのかなと。そうするとアバウトなお願いをして、評価の採点表だけうちの方で、環境に特化した技術については100点中20点を採点としましょうということになると思います。いざ3社から提案があった時に、その3社について他の技術80点分も当然検討するのですが、20点分の環境配慮についても検討させていただいて、省エネ率が10%なら何点とか省エネ率が5%なら何点という、うちの方であらかじめ点数の付け方を決めておいて評価をします。その採点基準をどうやって決めるかとか、プライオリティの設定の仕方とか、なかなか難しいと思います。踏むステップの数がかなり多くなるものの、設計していただくという業者を選定するだけであって、次の概略設計とか基本設計とかはまたその後に来るわけです。実際に技術力があっても、最終的な概略設計・基本設計にそれが踏襲されているかという心配も少しあります。環境に配慮することができる設計事業者を選ぶという行為だけでしかないので、そこは少し発注者として不安のあるところです。発注者側としては非常にアバウトな書き方になっていて、どこまで伝わるのかという不安があります。

千田座長:ありがとうございます。例えば水産総合研究センターの場合、参考1の3ページにどういう提案があってどういう評価ということが最後に書かれていると思うのですが、評価の仕方がきちんとしていないといけないというのと、それから今おっしゃったのは本当にそれが実現しているかをどうやって確認できるのかというような問題も出てくるということですね。
 例えばそもそもの問題で、トンマイルベースの燃費は官庁船にはなかなか適用できないという点があって、詳細に評価基準を決めても大元がないと難しいというのが元々の認識だったのではないかと思います。その中で、ここでは自動車の燃費のようには明確には書けないというのが現状ではないでしょうか。だからそれは、その場その場で発注者側で工夫して下さいということになると思うのですけれども、いかがでしょうか。それでは他に何か4ページまでのところでご意見ございますでしょうか。それでは(2)のところのご説明をお願いいたします。

事務局:(資料1(2.(2))説明 省略)

千田座長:ありがとうございました。先ほどの契約類型とはまた別の切り口になるのですが、小型船舶につきましては購入であっても建造であっても、ある程度エンジンの燃料消費率を押さえておけば省エネが図れると言えるのではないかということで、このような燃費基準を契約の中に含めるというご提案でございますが、これはいかがでしょうか。

内野委員:参考5に舟艇工業会の自主基準が示されていますが、これについて補足させていただきます。これはEPAの規制値を参考にして、舟艇工業会が作成した自主基準値でございます。HCとNOxに関する規制で、アベレージングの値が規制値となり、これ以下の数値になることを目指しています。ガソリン機関には2サイクル機関と4サイクル機関があり、近年はほとんど4サイクル機関に移行していますが、まだ、若干2サイクル機関もあります。しかし、2サイクル機関ですとこの規制値を満足することができません。このことを発注者に認識しておいていただきたいということを補足させていただきます。

千田座長:ありがとうございました。これも基本方針にそのまま数値が適用されるわけではありませんので、発注者さんの方で心得ていていただきたいという趣旨だと思います。

鈴木委員:5ページ目の下の箇所についてですが、ディーゼル機関で、現行の基準は「漁船用環境高度対応機関型式認定基準」となっていると思います。それから※印の海洋汚染防止法の箇所にはNOxと入れて頂いた方が文意が明確になるかなと思います。それから(b)のところのガソリン機関にも「漁船用エネルギー環境対応機関認定基準」とありますが、これはディーゼル機関だけを念頭に置いたもので、もう一つガソリン用のものがあり、そちらにはガソリン機関の燃費が記載されていると承知しております。それから5ページ目の3行目から中段に、内燃機関単体での燃費消費率の及び窒素酸化物放出量の基準を入札に参加する要件として云々とありまして、中段の黒い四角の上のところに、また燃料消費率と合わせて船舶のガソリン機関における窒素酸化物排出量ということで、ちょっとこの辺は文章の整理が必要ではないかと思います。中段では内燃機関ということで記載されて、下の方でガソリン機関おけるNOxというような表記になっていて、その下でさらにNOxに対して規制がかかっているということで、ちょっと文章がわかりづらいかなという気がしております。

事務局:文章がわかりづらくて誠に申し訳ございませんでした。趣旨は※印に書いてある通り、ディーゼル機関については法律に規定が書かれておりますので、これを当然満たすもの、法律を満たすものが前提でございますので、別途基準を設けるものではないという意味でございます。書き方が不明確で申し訳ございませんでした。

千田座長:ここのところにディーゼル機関においては海洋汚染防止法の規制を適応しているということを要件に入れるというふうに並べておけば分かりやすいのですが、それだと環境配慮の意味ではなくなるのであまりここには書きたくないということですか。

事務局:法律で規制されているということは特に改めて言うまでもなく前提になるということで、ディーゼルエンジンを使うことに決めているのであれば、ディーゼルエンジンのNOxについては、入札の仕様書の中で法律に準拠することというように一文書く必要はないということです。書き方に関しては今後検討いたします。

千田座長:また、の次に「ガソリン機関については…」というふうに一緒に入れられればいいかもしれません。

鈴木委員:もう一点、ガソリン機関の燃費基準についてはどのような指標をお考えなのでしょうか。HCについては舟艇工業会の基準に近いものというご提案ですけれども、ガソリン機関についてはまだ資料が入っていないようなのですけれども。教えていただければ幸いです。

事務局:本日は資料をご用意してございませんで誠に申し訳ございませんでした。その辺に関しましては今後、ガソリンの船外機に関しての基準がございますので、そういった基準などをこれから検討させていただきたいと考えてございます。

鈴木委員:それともう一点、先ほど内野委員からもお話ありましたけれども、エンジンの2スト、4ストの話がありました。燃費視点だけで言えば当然4ストの方が圧倒的ではありませんけれども2割、3割というレベルで良くはなっています。ただしお値段もそれ以上高い。先ほど、船の建造の場合の省エネ技術は高価だという話もありましたけれども、やはりそういうところを配慮していただけると船外機の4ストエンジンの普及を促進するものと考えております。世界の流れとしても先進国は4ストに移行しておりますので、コストが非常に厳しいなかで大きな進展になろうかと思います。以上です。

事務局:オブザーバーの方に質問なのですが、2サイクルと4サイクルというのは入札の段階では指定されないものなのですか。

海上保安庁:明確に覚えていないのですが、ディーゼル機関と排気量とかは書かせていただいているところで、2サイクルか4サイクルかというのはおそらく書いていると思います。

農林水産省:おそらく書いていると思います。ただ、現実にはもうほとんど2サイクルはないですから。

国土交通省:確かではないですが、水産庁は明記してあるそうです。

千田座長:他ではいかがでしょうか。

海上保安庁:入札参加要件で裾切り基準を設定するということであれば、この入札参加要件というのはいろいろな法律により定めているところですけれども、調達者が裾切り基準というのを定めるという趣旨ですか。

事務局:その通りでありまして、基本的には調達者の方で適切な入札参加要件を定めていただきますので、そのなかでエンジンの燃料消費率を設定していただくということです。

千田座長:基本的にこの法律は調達者側を縛る法律です。ですからそういうことになります。

鈴木委員:実際の発注において燃費基準、例えば230g/kWh以下というかたちでの発注になるということでしょうか。それとも228gと229gではまた評価が変わるということですか。要は裾切り基準を満たしていればその扱いは同じというイメージで考えてよろしいですか。

事務局:裾切りで事務的にやればその通りで、基準を満たしているのであれば、あとは価格を比較していくということになります。自動車は総合評価ということで、さらにその中でも差別化をして価格と組み合わせて評価するのですが、その方法が一番理想的な姿ではあるでしょうけれども、前回の議論をお聞きした範囲では船舶の場合必ずしもエンジンの燃料消費率だけで決められるものでもありませんし、自動車の場合ですとプリウスなどのハイブリッド車もありますので燃費に大きな差があるのですが、船のエンジンの燃料消費率はそれほど大きな差はないということでしたので、総合評価落札方式までは動き出せなかったということです。

鈴木委員:水産システム協会さんがいらっしゃるのでまず確認させていただきますが、今の話で燃費の230g以下という基準に適合している、していないかが公表されているんですね。個々のエンジンがいくつかというのは公表はしていないのですか。

藤田委員:していません。

鈴木委員:要は適合しているか、していないかが現状の水産システム協会さんの航海情報ですので、それ以上の228か229かという議論になると、各社がバラバラのデータを持ち寄ってくると公平性に欠けるようなデータが集まってしまうという懸念はあります。

千田座長:ありがとうございます。その他に何かコメント等ございますでしょうか。それでは続きまして、資料1の(3)行政目的等の勘案について事務局からご説明をお願いします。

事務局:(資料1(2.(3))説明 省略)

千田座長:ありがとうございました。ただ今の内容につきまして、ご質問、ご意見等ありましたらお願いします。

海上保安庁:文章の意味がよくわからなかったのですけれども、7ページの下から4行目に、調達者としての責務・役割等について共通する基本的な考え方を示す、と書いてあるのですが、これはこのWGで示していただいて、今検討していただいている基本方針の中に示すという意味合いで書かれているのでしょうか。それに基づいて個々の契約を調達者が検討するということなのでしょうか。

事務局:その通りで、船舶の調達等に係る契約において必ず考えなければいけないことを簡単に示して、もう少し次回あたりに具体的な内容を検討してお示しをしていきたいと思っております。ただし、個々の契約については可能な限り出来るように、例えば自動車の総合評価方式であれば随意契約にしなければならないようなものはただちにできないわけですが、裾切り方式であれば随意契約のケースがあったとしても調達者の方から燃料消費率はこれでやって下さいという指定が可能であろうということですので、出来る限り実現できるように検討をお願いするという文章になろうかと思います。

事務局:補足させていただきます。共通する基本的な考え方。例えば資料1の2ページ目の(A)の〔基本的な考え方〕という文面があろうかと思います。つまり、国等の機関が船舶の設計を発注する場合にはどういう事業者に対して発注すべきかということに対しての基本的な考え方です。また、小型船舶の調達に関しての基本的な考え方、これは5ページ目の一番上にある一文、こういった文章になろうかと思います。船舶の調達等に関して、なるべく共通した基本的な考え方を示すということが最初のステップでございまして、それに向けてそれぞれ調達者が環境配慮契約を実現するためにどうしたら実現することができるのかということを検討していただくという趣旨でございます。

千田座長:パトカーなどの特別の場合には自動車の総合評価方式を導入すると、環境部分の重み付けというのが明確に決まってしまうため、行政目的を阻害するかもしれないということで適応除外もあり得ると。だけど船の場合は、明確な評価基準が何もありません。要はプロポーザルの中に項目を取り入れて下さいということと、エンジンの燃料消費率で裾切りをしたらどうかという、今のところのその2点しかないわけです。その燃費も自動車のように数値が決まっているわけではありませんので、だからグリーン購入法でも難しいという話だったのですが、行政目的を阻害しない範囲で環境配慮を取り入れることは可能ではないかということになるのではないかということです。自動車のように明確に決まっていない分、また除外もしにくいという格好になっているかなと思います。行政目的を阻害しないというのが大前提ですから、それをベースに考えていただければと思います。8ページ、9ページは別紙ということですけれども、これは先ほどの最初の部分に対応する部分ですね。何かご説明はございますか。

事務局:(資料1(P8~9)説明 省略)

千田座長:ありがとうございました。今後の予定についてですが、もう1回WGをやって、基本方針検討会に対する報告というかたちで意見をまとめ、それが検討会の方で審議された上で基本方針の中にどう盛り込むかということが決まってくるということです。ということで次回にはある程度基本方針に反映させるかたちが明確になるような資料を用意していただくことになると思いますので、ご意見がありましたらできるだけこの場か、あるいはこの後でも事務局の方に届けていただければ、次回の資料にはそれが反映ができると思います。ではもう一度全体に対しまして何かご意見ございますでしょうか。

石渡委員:自動車の場合ですと燃費の消費がはっきり比較できますけれども、船に搭載した機関の燃料消費率はエンジン単体では計測、比較は出来ますが、船が走る場合、普通は回転を一定にして燃料消費を計測しますが速力等による性能の評価をどう決めるかが難しいと思います。

事務局:理想としては船全体で評価すべきだと思いますが、船全体の燃費の基準を事前に設定するのは難しいと考えていますので、まず基準があるエンジンから仕組みをつくることを考えています。理想としてはトータルで考えたほうがよいのは間違いないと思いますが。

塚本委員:燃費基準の話ですが、一律に数字で決めてしまうという話ですか、それとも個々の発注において調達者が設定するという話ですか。

事務局:後者です。

塚本委員:リッターいくらといった基準の数値は目的とか船の種類によって、かなり違うと思います。個々の発注においては船の調達者が指定するほうがよいと思います。

三村委員:造船者の立場からいうとエンジン単体ではあまりよくないと思います。造船所の技術が評価されることになりません。

河村委員:私も造船所の立場からいいますが、船全体の燃費は机上では計算できますが、何年かを運行していただけないと実際の燃費は出ません。先ほど三村委員もおっしゃったように、基本的には入札のときの値段で決まるという話で、それ以外は加味されていないのではないですか。

事務局:理想は、4ページの(B)に書いてありますとおりで、今後、建造に係る契約におきましても環境配慮を盛り込むようにすることですが、新しい契約方式を考える必要がございますので、簡単にはいかないと考えております。最初は出来そうなところから環境配慮契約を初めてはどうか、という趣旨でございます。

千田座長:前回の議論では、船全体の燃費を評価するのはなかなか難しく、早急にはできそうもないので、じゃあ出来ないから何もしないでもよいわけではありませんので、燃費のいいエンジンを使ってくださいということならできるのではないか、というご意見がございました。船全体の燃費を考えるべきというのは正論ですが、こういったエンジンの燃料消費率で裾切りするといいますか、最低基準を示す方法で環境配慮ができないか、ということです。とりあえず今一歩踏み出そうとするのであればできることから始めるべきで、このことに意味がないのならやめればいいが、一歩踏み出せるのであればそのことを始めましょうという意味だと思います。また、トンマイル指標というのが官庁船になじむのかどうかとか、省エネ技術などが民間で色々議論されている中で、官庁船で何が出来るのかということを考えていただきたいと思います。

藤田委員:小型船舶のことについては前回も議論しましたが、小型船舶がどの程度を指すのか、議論が中途半端に終わったような気がしますが。

国土交通省:船舶安全法などで規定されています。

事務局:次回までに定義をご提示するようにいたします。

千田座長:その他のことも含めまして、次回が今年度のWGの最終回となる予定です。
 あと事務局のほうで何かありますでしょうか。

事務局:次回につきましては、船舶に関する基本方針案と解説資料の案をご議論いただくことを予定しています。日程につきましては、別途調整させていただきます。

千田座長:追加のコメントにつきましては、来週半ばまでということでよろしいですか。

事務局:11月4日頃までにお願いします。

千田座長:他になにかございますか。それではこれで船舶WGを終わらせていただきます。ありがとうございました。

以上