平成22年度環境配慮契約法基本方針検討会(第1回)議事録

出席委員:
秋鹿委員、碓井委員、坂本委員、鈴木委員、野城委員、山本委員(座長)(五十音順、敬称略)
欠席委員:
乙間委員、大聖委員、山地委員

日時

平成22年9月8日(水)10:00~11:40

場所

中央合同庁舎第5号館22階 環境省第1会議室

1.開会

事務局:おはようございます。本日はお忙しいところ、また朝から暑い中ご参集いただきまして誠にありがとうございます。これより平成22年度第1回環境配慮契約法基本方針検討会を開催したいと思います。会議に先立ちまして正田環境経済課長よりご挨拶申し上げます。

2.挨拶

正田課長:おはようございます。環境経済課の正田でございます。本日、環境配慮契約法基本方針検討会、大変お忙しい中にも関わらずご出席を賜りまして誠にありがとうございます。また昨年度に引き続きご指導賜るということでぜひよろしくお願いいたします。環境配慮契約法につきましては、平成19年5月に成立をいたしまして、その最初の基本方針策定から各委員の先生方に大変ご熱心にご指導賜りまして、直近でございますと今年の2月に基本方針の改定の閣議決定を行ったところでございます。法律でありますとか基本方針に基づきまして、国をはじめといたしまして環境配慮契約の実施に取り組んでいるところでございます。この環境配慮契約の実施によりまして、まず調達者であります公共機関におきます環境負荷の低減、さらには、供給する側におきましての技術開発の促進でありますとか、民間部門での取り組みも期待しておるところでございます。私ども一生懸命取り組んで参りたいと思っております。本年度でございますが、一昨年度から引き続きご議論いただいております、ひとつはOA機器に関します新しい契約類型の追加の可否でありますとか、省エネ法のトップランナー基準の改正等を受けました自動車に関する契約類型の一部修正について、ご指導、ご議論賜りまして、基本方針の見直しについてのご意見をいただいて参りたいと考えております。特にOA機器につきましては、いろいろご議論があるところでございまして、費用対効果でありますとか、さらには温室効果ガス削減効果、そのような検証も含めまして、その可否につきましてぜひご指導賜りたいと考えているところでございます。また、本年度の予定でございますが、本日が第1回の検討会でございますが、おおよその目安といたしまして3回程度の検討会の開催を予定しております。引き続き、今後も忌憚なく活発にご議論賜りまして、ご指導賜りたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。みなさん、本日はどうもありがとうございました。

3.委員紹介

事務局:それでは、本委員会にご参画いただきました委員のみなさま方のご紹介をしたいと思います。
(委員紹介 省略)
お手元に資料1をお配りしてございます。こちらは開催要領で、こちらの「3 組織」に検討会には座長を置く、座長は委員の互選により選出を行うとなってございますが、僭越ながら事務局より提案させていただきます。平成19年度に本検討会が設置されて以降座長を務めていただきまして、環境配慮製品、環境配慮契約にお詳しい山本先生にお願いしたいと考えてございますが、皆様いかがでしょうか。

了承

ありがとうございます。それでは、本検討会の座長は引き続き山本先生にお願いしたいと思います。今後の議事進行につきましては、山本座長にお願いいたます。よろしくお願いいたします。

4.議事

山本座長:私が座長で適任かどうかわかりませんけれども務めさせていただきます。毎年のように私が申し上げていると思うのですが、我々がやっていることが、地球環境の激変のスピードに合ったものであるかが最大の懸念なわけでございます。今年の環境白書は大変良いデータを紹介しておりまして、一日に世界人口が22万人増えて、今日一日で8,000万t-CO2が全世界から空気中に出ます。その結果というか、確実に温暖化が進行しているわけでございまして、今年は懐疑派も否定派も否定ができないくらい激しい異常気象が起きているわけです。中国、パキスタンの大洪水ばかりではなく、アメリカも127年ぶりのテネシー川の氾濫が大きな話題になっておりますし、8月にはロシアの歴史にかつて記載されてないような猛暑がロシアを襲ったわけでありまして、1,000年に一度という形容が冠せられているわけでございます。そういうことで、我々は本当に思い切った対策を講じないと間に合わない。日本国内でも300人が熱中症でお亡くなりになられたとか、救急車で搬送された人も5万人とか6万人とか、大変な数にのぼっているわけでございまして、資源エネルギー、環境の問題について、環境配慮契約法を徹底的に使って、社会全体を低炭素循環型社会の方向へ持っていくということが、この委員会の責務であろうと考えているところでございます。それでは議事に入ります前に、事務局から本日の議事予定、配布資料の確認等をお願いいたします。

事務局:(議事予定・配布資料確認 省略)

(1)平成21年度における環境配慮契約の締結状況及び取組状況等について

山本座長:よろしゅうございますか。それでは早速議題の1、平成21年度における環境配慮契約の締結状況及び取組状況等について、参考1を事務局より簡潔にご説明をお願いします。

事務局:(参考1説明 省略)

山本座長:ありがとうございました。それでは先生方から何かご意見、ご質問等ございましたら。いかがでございますか。これは省エネ改修が伸び悩んでいるような印象なのですが、一方環境配慮型プロポーザルは随分定着しているというか、77%というのはすばらしいと思うのですが、野城先生いかがですか。

野城委員:ご質問しようと思っていたのですが、4-1にプロポーザル実施の絶対数が出ているのですが、国あるいは独立法人の総件数に対してどれくらいこれが普及しているか。プロポーザルの手続きを開始すれば4-3のような数字になることは当然だと思うのですが、この母数はつかんでいらっしゃいますでしょうか。

事務局:母数を把握しようということで検討していたのですが、国土交通省等のように建築に精通している省庁であれば、本来考えるプロポーザルを実施すべきもののうち実施したものということで数字をいただける可能性があるのですが、4-2に書いてあるとおり小規模な改修とか、明らかに母数に含める必要のないものを提示しきれなかったということでありますので、来年の調査の時には、ぜひ本来実施するべきもののうち、実際に実施した件数を明らかしていきたいと思います。事務局が把握している範囲で申し上げますと、国土交通省では実施すべきものについて100%に近い数字で実施しているのではないかと思います。その他の状況はわかりませんので、来年の調査では、是非、今ご指摘いただきましたとおり、本来実施するべきもののうちどれだけ実施したのかについて、把握できるような調査の仕方を考えていく必要があると考えております。

野城委員:やはり制度を作ってそれを実施、ユーザーを増やしていくことが大事だと思っていまして、こういった調査も大変だとは思うのですが、建築設計については、公共事業の性格からおそらく事前なり事後にこういった委託業務等があることは公にされますので、そういう意味ではひとつの実施していただくための工夫としては、この4-2に相当するような理由を公表することも考えられます。採用した理由ではなくて採用しなかった理由、例えばこの庁舎は何故採用しなかったかということを、環境省に報告するのではなくて、世の中に向かってちゃんと説明できますかということで、HPがあってそこで公開していだくようなことがなければ、調査票に書いて、それでいいだろうという傾向が出てくるのではないかと懸念をしているのですけれども。もう少しそういう工夫をしていただいた方がいいかと思います。

事務局:そのことにつきましては、解説資料の記載も含めて検討していきたいと思います。

山本座長:ESCOについてはいかがですか。

坂本委員:補足させていただきます。私の担当のESCOは件数が少ないのですが、もともと庁舎というのは、霞ヶ関の中央の庁舎は非常に建物の使用時間が長くて、省エネ改修等によって非常にランニングコストを削減できるわけですけれども、地方に行くと庁舎の使用時間も短いし、エネルギー使用の量が少なめということで、ESCOによって削減できる光熱水費が非常に少なくなって、ESCO事業としてなかなか改修しづらいという側面を持っているんですね、もともと随分懸念されていたのですが、そういう数字がここに出ていると思うのですが、昨年、国交省の営繕部の方でも、設備更新型のESCOということを検討して、一応その仕組みを作ったところでございます。それはどういうことかと言うと、従来のESCOというのはあまり大きな設備の改修というのは含まないというのがESCOの定義でございましたけれども、設備更新型ESCOというのは、高価な熱源ですね、最近の空調の熱源というのは効率が良いものが多いので、そういうもので設備の更新をしていくわけですけれども、そこも含めてESCOをやっていこうということで少し仕組みを工夫しましたので、それが環境配慮契約法で3.に入るのか、それは更新なので、更新とか改修なので4.の方の建築の方に入るのかもわかりませんけれども、設備の改修による省エネというものをもう一度立て直してやっていこうということにはなっておりますので、本年度からそれは少し運用されると思いますので、来年の今頃には少し良い数字があがっていることを期待しているところです。以上です。

秋鹿委員:建築については素人なのですが、自分の組織で一つ建物を作る時のワーキングに私も入っていたのですが、一番下の理由の「検討する時間が取れなかった」というのは、かなり多そうな気がするのです。予算が下りるか下りないかということをやきもきしながら、決まってから実際いつまでという時に、この契約法があまりにも複雑だと大変なので、ある程度こういうことを準備するとか、あるいは、走り出したばかりなのですので、モデル的に、今までこういうように行っているということが提示されると、今度新しい契約ではこういうことを事前に準備しておけばいいのだろうといったことが意識されるようになります。この制度を運用するにあたっていろいろな工夫をこれからしていかないといけないかな、とワーキングに入って感じました。

碓井委員:質問なのですが、参考1の1ページの1-2の一番下のところに注2というのがありまして、これは入札参加資格に二酸化炭素排出係数のみを設定した、それで注2を読んでみますと、基本方針に基づく環境配慮契約にはあてはまらない。まずこの趣旨のご説明をいただきたい。それから、たぶんこの法律自体も前提になっているから、例えば入札に参加する事業者が一定の地球温暖化対策を講じていること等を基本方針に定めることは今まで含まれていないのだろうと思いますが、しかしそういうことを入札参加条件にするとか、あるいはその評価方式でできるとは限らないけれどもまあ考慮して、そういうことの把握がどれだけなされているかということについてご教示いただければと思います。

事務局:基本方針はまさに閣議決定した部分でありますので、こちらに書いてあるとおり温室効果ガスの排出の程度を示す係数、これが二酸化炭素排出係数ですけれども、これと環境負荷への低減に関する取り組みの状況、新エネの導入状況と未利用エネルギーの活用状況等、これを活用して環境配慮契約をしたものを環境配慮契約法上の環境配慮契約ということで位置付けるということですので、もちろん二酸化炭素排出係数のみを設定したものが環境配慮契約ではないということではなく、何もやらないよりは当然いいことではありますけれども、ここは厳密に基本方針に則った割合を集計したということであります。最終的に総合評価にするという件は、お手元の冊子の125ページからこの法律が記載されておりますけれども、128ページの附則3の中段で、総合的に評価をして落札者を決定する方式等について、「検討を加え、必要があると認める時は、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする」というように、可能な段階で検討するよう記載がありますので、そう遠くない将来に検討しなければならない課題のひとつであると考えています。

碓井委員:よくわかりました。先ほど座長がお話になったように、小さなところでやっていいのかという点。その規模を拡大するために相当大きいことをやっていかなければ。そうすると、附則に書いてあるようなことに挑んでいかなければいけないのではないかという、直感的にそう思いました。

山本座長:大体そんなところでよろしゅうございますか。はい。では一点だけ。鈴木先生。

鈴木委員:参考1の取り組み状況のうち、車について、警察庁を除くと88%が環境配慮契約に基づいているという数字には少しびっくりしました。警察庁がどういう理由で実施していないのかちょっとよくわからないのですけれども。これは別として、先ほど、実施しなかった理由が、何かが重要との指摘がありました。私もそう思います。そこで、電力について、電力事業者は1社あるいは2社しかないとか、電力に関する将来的な見通しが不透明、だから比較ができなかったとありましたが、意味がよくわからないので教えて下さい。

事務局:電力供給事業者が1社または2社しかないというところでありますけれども、電力の供給の契約における環境配慮契約は、先ほどのとおり温暖化効果ガス排出係数と環境負荷低減の取り組み状況を点数化して、一定の点数をクリアした中で競争入札をするという方式ですので、電力供給事業者が1社しかない場合というのは当然このような環境配慮契約というのがそもそもできないと。2社の場合もその1社を落としてしまった場合には、競争がもう成り立たなくなりますので、3社程度以上いる場合に環境配慮契約を行っていただくというような考え方をとっておりますので、1社または2社しかない場合はそもそも実施できないケースに該当するということであります。それから将来的な見通しが不透明というのは、新たに参入したばかりだというようなケースです。おそらく現在新しい事業者が参入していても、それが将来に渡って供給いただけるものなのかどうかがまだはっきりしないと。そういった場合について、やはり一般電気事業者の方と契約せざるを得なかったケースということであります。

(2)環境配慮契約法基本方針の検討の進め方について

山本座長:よろしゅうございますか。では次の議題に移りたいと思います。それでは環境配慮契約法基本方針の検討の進め方につきまして、事務局より簡潔にご説明をお願いします。

事務局:(資料3説明 省略)

山本座長:はい。ありがとうございました。提案の募集については何か。

事務局:失礼いたしました。提案の募集、先ほど20年度についてOA機器をいただいたということをご紹介申し上げましたが、その後21年度、22年度というところで、提案につきましては集まらなかったという状況でございます。

山本座長:新規の提案はなされなかったということですね。では、今日はこの資料3が最も大事な議題でございまして、先生方から資料3を含めて、さらに何か環境配慮契約法でこういうことをやったらいいのではないかというようなご提案、あるいは忌憚のないご意見をいただきたいと思います。いかがでございましょうか。

野城委員:資料3の1ページ目の1-(1)にかかってくると思うのですが、法律がどう書かれているものか確認しておりませんけれども、建築分野についての実態を冒頭に山本先生がおっしゃったことに照らし合わせて考えますと、今この基本方針に基づきまして制度が始まって、建築設計についても従前に比べてより環境に配慮した設計をしていこうとしはじめているわけですけれども、政府、独立法人、あるいは場合によっては公共団体も含めた建築設備に関して地球温暖化ガスを削減していくという量的な効果をできるだけ早く実現するという観点からしますと、設計というのはほとんど新築を対象としておりまして、そもそも財政構造からいきますと新築というものは極めて少ないわけですし、また逆にそれが多少増えたとしても、今の官庁施設のストックの量を考えますと、これで新築で多少の性能改善を図っていくというよりはむしろストック、今使っている庁舎等において模索をするかということが大事だと思います。もちろん外科手術のひとつの方策としてESCOというものがあることがございますけれども。もうひとつは、地味ではありますが建物の運用改善をしていく、いわば外科手術よりは内科的な方法で日常の運用を工夫していくということで、母数はストック数が多いものですから大きな効果を生むことができます。ネックになってまいりますのは、28℃に設定しろ、あるいはお昼休みには消灯する、またエレベーターの運行台数を減らすといったことが一種の定番のメニューになっているのですが、必ずしもそれは、意味のないことではないですけれども、それぞれ建物の実情を考えるとポイント、1丁目1番地ではないところであるということがありまして、ある市役所で私どもお手伝いをしまして試みておりますのは、第三者の専門家が使用状態をモニタリングして、どこに量的な無理無駄があるかということを検証して、そしてその運用改善に役立てていただくというような、いわば外部の専門家が診断をして運用改善に役立てていただくようなサービスを試行し始めております。要は今までの環境配慮契約法というのは、すでにある、今まで買っていた物品とかサービスをどう改善されるかということだったのですが、法律の範囲に入るかどうかわかりませんが、新たな種類のサービスを買う。具体的には、運用改善について実態分析とそれに基づいた助言をして下さるような専門家のサービスを購入するというようなことが加わってこないと、建築分野については巨大な、大きな山以外の裾野のところをずっといじっているような、忸怩たるものがございますので、出来たらそういった政府全体におきます温室効果ガス削減のための新たなザービス、技術的なサービスを購入するということも検討の中に入れていただければというふうに思う次第でございます。

山本座長:はい。大変貴重なご提案をいただいたと思いますが、では、秋鹿先生。

秋鹿委員:今のことに関連して。野城先生のご意見は大変重要だと思いました。これは一種のESCO事業になるのでしょうか。このオフィスだけでなくて、今の日本の産業でのエネルギー使用の実態の中で、企業と企業の間のエネルギーや物のやり取りとか、産業と産業の間のエネルギーや物のやり取りとか、そういういわばESCO的なスタディがなかなか進まない。これは大昔から、こうやった方がいいという提案はあってもなかなか進まないです。1回走り出してしまうと、なかなか制度ややり方を変えないままで行くわけで、その辺が、これは省エネ対策法もそうなのですが、次の課題ではないかと思います。今まで省エネ対策、90年代からやってきて、非常にわかりやすいところについては着々と出ていますけれども、わかりにくけれども大事なところというのが私は非常に大きいような気がします。そういうESCO事業的なもの、そういうものにメスを入れて、この契約の方がどういうふうになるかわかりませんけれども、省エネ事業全体としては大きな点だというのは私も同感でございます。

山本座長:私も今思い出したのですが、今回ご提案のあるOA機器ワーキンググループ、検討課題のひとつになろうかと思いますけれども、アメリカではIEEEという電気関係の大きな組織があって、そこの知見に基づいてNGOとか政府関係機関が連携をしてEPEATというプログラムを作って、これはインターネットでもEPEATを検索すると、どういうクライテリアで製品をランキングしているかというのが一目瞭然に出てきて、最高ランキングはゴールドラベルで、ゴールド、シルバー、ブロンズの3つに製品を分けて、それで政府調達では一定のレベルを基準とするということをアメリカがやっています。日本企業は非常に今敏感になっていて、自分の製品が基準を満たさないと政府調達から外されてしまう恐れがあるわけです。ですからぜひ日本も少し考えていただきたいということでございます。ヨーロッパの方はそこまで激しいことはやっていないですけれども、やはりトップ10という、インターネットで、同一製品の中でトップ10に入るものだけを情報として紹介して、自治体とか政府関係機関はそのトップ10から選んでいく場合もあると。ですから、我々がやっているグリーン購入法、あるいは環境配慮契約法は、欧米から見ると厳しさが少し足りないのではないかなということが私にはあるのですが。

秋鹿委員:いつもこの会議で山本先生から宿題を沢山いただける気がするのですが、これは大昔ですとアメリカのコンシューマーレポートですかね。あの影響力が非常に大きくて、あれを参考にするということがありましたけれども。政府がこれだけチェックしているということは、これはノンプロフィットオーガニゼーションなのでしょうか。それとも民間の営利会社がやっているのですか。

山本座長:やっているところはノンプロフィットのオーガニゼーションだと思います。

坂本委員:野城先生と関連のところで私のコメントですけれども、確かに野城先生のおっしゃられる建築ストックの省エネというのは非常にものすごい大きなものがあって、東大でも野城先生とTSCP(東京大学サスティナブルキャンパスプロジェクト)とかやっていますし、そういうチェレンジは。つきつめれば結局エネルギーのマネジメントなんですけれども、ESCOというのはそのエネルギーのマネジメントの一部なんですよね。ESCOで改修できる点は全体ではないんですよ。だから非常に限界があるので、さっきご説明したように設備の更新等をくっつけなければ庁舎の場合はESCOは無理だという、そんなことにもなっているし。だからもっとエネルギーのマネジメントをやる組織というか、建物の管理の中でそういうところを専門に作っていくとかしない限り、運用改善等によって、あるいは改修に結びつけるというようなことは上手く機能しないんですよね。いろんな総務的な仕事の一部としてエネルギー管理をやられているのだと思いますけれども、そういう現状ですとやはり限界があって、いくら外から環境配慮契約法があるなどと言ってもなかなか上手くいかないと思うんですよね。だから、少し考え直すというか、やり方を変えるというようなことをやはり真剣に、野城先生が言ったように第三者ですとか、外からの専門家による診断ですよね。エネルギー診断。あるいは設備的なものであればレトロ・コミッショニング(復性能検証)というのですが、現況どうなのか、どこに無駄があって、どこにどれだけ省エネできる余地があるのか、というようなところをまずきっちり把握するところから始めて、それで段々予算を付けていくと。改修するなりESCOをやるなり、そういう話になっていくと思います。本当にストックに対して省エネをやろうと思うと、やり方を考え直して工夫しなければならないと思いました。

山本座長:その他、何か良いお知恵はございませんでしょうか。直接的に製品サービスの契約で環境配慮をしていく、環境負荷を削減していくということがもちろん一番大事なのですが、間接的に減らせる方法もあると思うんですね。入札の条件として、たとえば環境マネジメントシステムを導入しているとか、エコアクション21を取得しているとか、入札者の条件というところをそういうことを入れていくというのは、これはどうなんでしょうか、事務局。これはやっている自治体はもうあるわけですね。

事務局:公共工事等でISO14001を取得していることを評価項目として総合評価をしている例もありますし、環境省の方も今年からISO14001ですとかエコアクション21を取っている場合、総合評価で評価するというようなことを始めています。現在この冊子の13ページのところに、解説資料の前段部分でありますけれども、[3]に環境マネジメントシステムの考慮ということがありまして、下から2行目に、ISO14001やエコアクション21等の認証取得等とか認証取得等事業者が環境マネジメントシステムを構築することが有効であり、積極的に取得すべきである、というような記載があって、こういったことを総合評価やプロポーザルで活用をするというようなことが、次の14ページにかけて記載されているところであります。ただ多少この記載が目立たないというところもありまして、環境省が導入した時には各省庁に環境省でEMSを評価することにしたということで周知等は行ったのですが、もうちょっとここを具体的に、契約類型とは少し違うのですが、具体的にもう少し検討するようなことを将来的にはしていく必要があるかなと考えております。

山本座長:それからもうひとつはこの前新聞報道で、銀行とか金融関係の環境配慮、環境配慮融資、投資等の検討が行われているという報道がございましたけれども、この政府の持っているお金ですね、これを送金するわけですよね。送金する時にどの銀行の口座に送金するか。例えば大学の場合には科研費をいただくわけですが、研究者がどこかの銀行の口座を開設するのを認めるのではなくて、一方的に政府の方が銀行の環境配慮をランキングして、ランキングの一番上の方のところの銀行に必ず開設させて、そこに例えば科研費を振り込むということにすると、銀行の環境配慮が一段と促進されるということになろうかと思うのですが。そういうような考えはないのですか。莫大なお金を振り込むわけですよね。政府のお金を。

事務局:なかなか新しいテーマですので、ちょっと関係先にもヒアリングをさせていただいて。環境関係の融資の関係で銀行等々ヒアリングを環境省の方で行っておりますので、そういったところに実現の可能性とかを含めて聞くような機会を設けたいと思います。

山本座長:はい。碓井先生。

碓井委員:先ほど電力のところで質問したのでちょっと変なことになったのですが、基本的には座長のおっしゃったことは大変重要なことだと思っていて、法律との関係に当てはまるのかどうかわかりませんが、5条の2項の列挙には当てはまらないけれども、5項あたりで今言ったようなことをバンと、今言った送金の話はあまりにも具体的過ぎますけれども、検討してみる余地は十分あるのではないかなと気がします。

山本座長:5条の2項というのはどこですか。

碓井委員:126ページの5条の2項の5号ですかね。その他温室効果ガス等の排出の削減に配慮する契約の推進に関する重要事項ということで基本方針に載せるということは、将来的には可能なのではないかなと。

野城委員:すみません。先ほど私が言ったようなこと、新しいサービスを購入するということも5号で読めるようなことでしょうか。

碓井委員:5号でも、4号でも読めるかもしれない。

山本座長:余計なことを申し上げるようですが、やはり今年の異常気象はどうもただ事ではないと私個人的に思えるんですね。というのは8月にペーターマン氷河という巨大なグリーンランドの氷河があって、その先端が割れてしまったわけですね。面積が260km2かな。これはアメリカのマンハッタンの4倍の巨大な氷山が大西洋に流れ出したということが、世界に大報道されたわけですね。グリーンランドはアメリカの双子の人工衛星でくまなく微小重力の変化が追跡されていて、年間約1,800億tの氷が失われているということがわかっているわけですね。グリーンランドの氷上の崩壊が加速しているということは科学的事実なのですが、もうひとつは北極海氷の変化の方で。これも2007年に、コンピュータのシミュレーションではゆっくりとしか9月の北極海氷の面積は減少していかないと考えられていたものが、2007年に30年前に比べて40%減少して、2008年は体積が最小になり、温暖化懐疑論者はこれは一時の減少だと言って、そして2008年、2009年と面積が少し回復したんですね。今年はどうかというと、私は毎日のように北極海氷の面積をチェックしているのですが、昨日現在では510万km2まで減っているんですよ。このままいくとあと2週間程度は溶けますから、このままではおそらく史上2番目の小ささになって、1年前にアメリカのNASAとワシントン大学は2015年に夏の数ヶ月は北極海氷が消滅するという予想を出したのですが、今年の3月にアメリカ海軍大学のマサロースキーという教授が、直線近似で言うと2016年±3年、ですから早くて2013年の夏にも北極海氷の消滅の恐れがあるというデータが出てきて、北極海氷が消滅すると温暖化が加速するわけですね。ですから私は個人的にもう猶予はならない状況に我々はさしかかっていて、昨年12月コペンハーゲンのCOP15で2℃以下に地球の平均気温上昇を抑制するということがほぼ受け入れられたわけですが、それを3分の2の確立で達成するためには、あと累積で7,500億tしか我々は二酸化炭素を放出できないと。これはドイツ政府が昨年発表しているわけですね。あと7,500億tというのは、世界人口を68億人として割り算すると一人110tなわけです。日本人は今一人10tくらい出していますから、我々は後11年で割り当て分を放出してしまう。つまり12年後にはゼロカーボンエコノミーをやらなくてはいけないということになるわけで、日本政府はCOP15で2℃ターゲットを受け入れたわけですから、簡単に言うと我々はあと11年でゼロカーボンエコノミーを実現しなければいけないと。そうなるとグリーン購入法も環境配慮契約法も、本当にあと11年くらいこの法律を盾にとって、ゼロカーボンエコノミー実現にどれほどこの法律を総動員できるかという話になってくるわけです。もちろんこれは、この法律だけでそこまでできるとは思わないわけですが、しかしそれにしてもそれくらい今国際情勢は緊迫しているというか大きく動いているわけで、だからそういうメインストリームは低炭素革命をやらなくてはいけないという方向で動いているわけですが、現実には、現実派というか保守派はそんな大きな削減はできたことがないと、できたことがないのだったら北極海の氷が消滅した時にあなたはどうするんですかという、その非常事態への対策が問われるわけですね。それで今言われているのが、北極圏に大量の亜硫酸ガスを成層圏に注入せよということがこの3年間激しく議論されてきているわけですね。ところがコンピュータでシミュレーションすると、北極圏に年間150万tくらい亜硫酸ガスを成層圏に注入するとですね、実は大干ばつになるところが出てくる、それからアジアのモンスーンが崩壊するということがコンピュータシミュレーションで出てきて、北極海氷、グリーンランドの氷は守れるけれども、アジアのモンスーンが崩壊したらどうするのかと。今そういうことで世界は激しい議論をしているわけですね。そういう情勢の中で我々は環境配慮契約法を最大限武器として使って、いかに減らすかということを議論していると、こういうことだと私は思っているのですが、ぜひ良い知恵がございましたら。自動車の方の目玉はさっきの電気自動車というお話もございましたが、電気自動車しか購入させないとか、それくらいやらないと間に合わないのではないですか。あと数年経てば。

事務局:それはグリーン購入法の方で、電気自動車等は環境配慮製品だということで位置付けていますが、契約法はあくまでも契約する時に、ガソリン車を調達する時にどういう契約をするかというところにターゲットをおいておりますので、契約法上はガソリン車を調達する場合はこうですよということで、必ずしもガソリン車を調達しなければいけないということではなくて、電気自動車を調達したいのであれば、契約法には適応できませんけれども電気自動車を優先的に調達することについては差し支えないと。契約法の範疇ですとどうしてもそういうことになってしまいますが、グリーン購入法を合わせて、そういったより省エネ型の自動車が調達できるように、説明はさせていただきたいと思います。

山本座長:その他に何かご意見がございましたら。

秋鹿委員:OAワーキンググループの座長を2年間させていただきまして、この件でちょっと発言させていただきたいと思います。言い訳がましいことになるかもしれませんけれども、そもそもOA機器、複写機がアナログであった時代、90年代からのですね。複写機が省エネ法のトップランナーの最初にスタディされて、トップランナーの最初を走っているものだったのですが、そもそも複写機は、エネルギー使用機器のうち自動車が1番だとすると15、6番目といいますか、エネルギー使用量としてはそんなに大きなものではなかったんですね。しかしなぜ複写機やこの辺が省エネのトップランナーになったかと言いますと、やはり使う方々が非常に知的な方々、それから知的な生産の現場では一番大きいというようなことがあったのと、それから日本のOA機器の業界の環境意識が非常に大きかったということで、世界でOA機器として戦っていくにはやはりそういうポリシーがなくてはいけないという、非常に積極的なものがあったと思うんですね。そういう意味で、環境配慮契約法の中にも、エネルギーの量としては少ないのですが、業界としては何とかこれをまとめたいという意志があったと思うんですね。この2年間何をしてきたかと言いますと、最初は最適配置といいますか、全部の回答を一度に契約の中に入れるということを検討して、できるかと思ったのですが、詳細を検討していくと無理であったということで、2年目はシステムと個別の機器の性能と2つに分けた。いわば連立方程式の因数分解をして2つの項目に分けて、システムは調査をして購入者が提案しよう、それから個別についてはTEC値といいますか、省エネ性能その他項目を含めて機械としての性能を評価できるのではないかと。そういうふうに非常に現実的なものにブレイクダウンするということが昨年度決まりまして、もう今年度はとにかくやらないといけない。ただ4月からの購入、契約のことを考えますと、かなり早い時期に決めないといけないということで、このワーキングを立ち上げたあと、業界の方々がもしオブザーバーでいるとすれば、何かとご協力をいただいて積極的に議論を進めていただかないと間に合わないのではないかなと思っております。そんな背景もありまして、ここに簡単にまとめてはあるのですが、山本先生にいただいた先ほどのEPEATも含めて、あるいは地方自治体でやっていることや民間でやっていることの調査も含めてスタディして、早急に具体案を作っていきたいと思っております。

(3)ワーキンググループの設置について

山本座長:はい。ありがとうございました。それではワーキングの設置につきまして、事務局からお願いいたします。

事務局:(本年度設置ワーキング説明 省略)

山本座長:事務局から説明がございましたが、それでよろしゅうございますか。野城先生のご提案は真剣にひとつご検討をお願いしたいと思います。それでは検討のスケジュールにつきまして、ご紹介いただきたいと思います。

(4)検討スケジュールについて

事務局:(資料4説明 省略)

山本座長:それではご質問、ご意見等ございましたら。参考3の説明はございましたか。これはいかがですか。

事務局:(参考3説明 省略)

山本座長:ありがとうございました。先生方から何かご意見等ございましたら。

鈴木委員:制度を作った場合、検証することは重要であり、その際、先ほど言われた第三者によるものとか、国の機関がその実施状況を取りまとめ公表するとかいろいろあると思うのです。その意味で参考1や参考2のように、国の機関や地方公共団体の実施状況を調査、公表するということは非常に有益な資料だと思います。その上で、参考1について、これはA4で1枚2枚です。来年度からもっと詳しくしていただけないかというお願いでございます。もうひとつですが、以前この委員会で船舶の割合が非常に高いということがあり、国土交通省や船舶業界が方針を策定し、その資料はこの冊子にも船舶ということで入っているわけです。しかし、21年度の取り組み状況の参考1には船舶が入っていません。せっかく国交省や船舶業界が一生懸命やってくれた にもかかわらず、これについて触れていないのはなぜなのでしょうか。

事務局:前者の方については了解いたしました。もう少し細かいかたちでお出ししたいと思います。それから後段の船舶の話につきまして、契約自体が平成22年度、今年度からの契約になりまして、今年度の結果を来年取りまとめるかたちになりますので、これにつきましては来年度の検討会においてご説明させていただきたいと思います。

碓井委員:2つあるのですが、ひとつは具体的なサンプルとして環境省が公開していくという必要があるのではないかということ。それからもうひとつは、調査をする時に環境配慮契約というカギカッコ付きでやると限定されてしまうような気がするんですね。地方公共団体の場合には、ひょっとするともっと先進的な取り組み、何を基準に先進的というかどうかはともかく、私たちが気付かないようなものをやっている、そういうものも積極的に吸収するような調査も合わせてやっていただければと思います。

山本座長:ありがとうございました。

野城委員:自治体で建築設計に関しての普及が遅いということで、理由を拝見するとそうもあらんと思うのですが、要は例がわからない、どうしたらいいかわからないということで、先ほどマニュアルということをおっしゃって、それはもちろん充実することも大事なのですが、例がないという言い方がヒントになると思うのですが、つまり教科書ではなくて問題集、例題集が欲しいということだと思いますので、そういうようなベストプラクティスとか成功事例みたいなものを流していくような工夫をしていただければいいのではないかなと思います。

山本座長:これはESCOなどもそうですね。ESCOはそういうものはないですか。ベストプラクティスは。

坂本委員:ESCOで言えば、地方自治体の方がESCOは随分前からやっているんですよ。実践は。地方自治体は財政が厳しく、苦肉の策で随分実施事例があるので。むしろ中央省庁の方が、ESCOは単年度契約ということがどうしても障害になって、法律をいろいろ見直すということがあって、中央省庁の方が遅れていますね。

山本座長:これは環境配慮契約特別賞とか表彰するのはどうですか。

事務局:好事例を紹介するということは、マニュアルの中にもちょっと入れているのですが、もう少し例を増やすとともに賞についても前向きに検討したいと思います。

(5)その他

山本座長:では先生方よろしゅうございますか。予定の議題が終わりましたので、事務局から何かございましたら。

事務局:(第2回検討会スケジュールについて 省略)

山本座長:それでは長時間に渡りありがとうございました。散会とします。

以上