海域再生対策検討作業小委員会(第8回)会議録.

日時

平成26年11月17日(月)

場所

環境省第2・3会議室

出席者

  • 小委員会委員長 : 滝川清委員長
  • 委員 : 青野英明委員、小松利光委員、山口啓子委員
  • 臨時委員 : 清水晃委員
  • 専門委員 : 白谷栄作委員、東博紀委員、松野健委員
  • 事務局 : 水環境課長、水環境課閉鎖性海域対策室長、水環境課閉鎖性海域対策室長補佐

午後1時30分 開会

○根木室長 それでは、定刻となりましたので、ただいまから有明海・八代海等総合調査評価委員会第8回海域再生対策検討作業小委員会を開会いたします。

 最初に、本小委員会は公開の会議となっておりますことを申し上げます。

 委員の方の出席状況でございますが、ご欠席のご連絡を山口敦子委員、橋本委員、古川委員よりいただいております。

 続きまして、環境省水・大気環境局水環境課長の大村よりご挨拶を申し上げます。

○大村課長 環境省水・大気環境局の水・大気環境課長をしています大村でございます。

 委員の皆様に本日ご多忙のところお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。本来、三好水・大気環境局長が冒頭より出席をしてご挨拶を申し上げるところでございますけれども、何分、国会のほうで今、回っておりまして、ちょっと失礼させていただきますが、私のほうから本作業小委員会の開催に当たり、一言ご挨拶申し上げたいと思います。

 皆様にもう申すまでもございませんけれども、有明海・八代海の再生につきましては、有明海・八代海等を再生するための特別措置法に基づいて、関係省庁、あるいは関係各県がそれぞれ各政策を実施をしていると、こういうことでございますけれども、昨年も赤潮の発生とか、あるいは有明の湾奥部で貧酸素状態が続くとか、生き物の生息には大変厳しい状況となっているということでございます。また、本年の2月には珪藻赤潮の大量発生によるノリの色落ち被害が発生するなど、有明は予断を許さない厳しい状況、現状となっているというふうに考えています。

 この小委員会では、有明海・八代海で生じている問題の原因・要因を特定をし、さらにその原因・要因に対して効果的な対策の検討をしていただくという、大変重い責任を担っていただいております。昨年度は有明海・八代海の海域ごとの環境特性に基づいた海域区分についてご検討をしていただきました。本年度はそれらの議論を踏まえまして、海域ごとの問題点を洗い出し、課題を整理していくというふうに予定をしてございます。

 委員の皆様におかれましては、ぜひ忌憚のないご意見を賜りたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

○根木室長 私、7月より閉鎖性海域対策室長に着任いたしました根木と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

 続きまして、配付資料を確認させていただきます。お手元の資料をごらんください。まず、議事次第、1枚ございます。恐縮でございますが、1点訂正をさせていただければと思います。配付資料のところでございますが、資料2-2というのが2つ入ってしまっておりますが、上の概要版と書かれているものを資料2-1というふうに訂正をお願いできればと思います。

 おめくりいただきまして、次に配席図が1枚入っております。次、資料1として、委員名簿が入っております。次に資料2-1、海域ごとの再生方策の検討について(概要版)でございます。次の資料が資料2-2でございます。海域別の再生方策の検討についてという目次から始まっている資料でございます。その次に委員限りでございますが、参考資料が2点入っております。参考資料1ということで、午前中に行われました生物・水産資源・水環境問題検討作業小委員会で8回の資料が1つ。もう一つは参考資料というふうにトップページに4文字が書かれているものでございますが、有明海・八代海の環境特性ですとか、海域区分の検討につきまして、これまで検討いただいてきたもののデータ的なものを中心に取りまとめたものを参考資料としております。過不足などございましたら、事務局にお申しつけください。

 報道取材の皆様は、これ以降のカメラ撮影はお控えいただきますようによろしくお願いいたします。

 これ以降の進行は、滝川委員長、よろしくお願いいたします。

○滝川小委員会委員長 かしこまりました。各委員におかれましては本委員会へのご出席、ありがとうございます。積極的なご発言と、議事進行へのご協力をよろしくお願いいたしたいと思います。

 本日の議題はお手元の議事次第にございますが、海域別の再生方策の検討についてであります。

 さて、ただいま大村課長様のほうからご挨拶にもありましたけれども、本小委員会におきましては、昨年度これまで報告・収集されたデータを整理して、海域区分別の環境特性の把握、それとその連関図の作成を進めてきました。今年度は6月に開催しました前回の小委員会におきまして、それぞれに区分した全海域を同時に一斉に検討するというのではなくて、幾つかの海域について、まずは再生へ向けての一連の検討を進めてみましょうというふうなことで、有明海湾奥部の西部と、有明海湾央奥部の東部をケーススタディ海域とするということを了承いただいております。

 本日は、これらのケーススタディ海域についての検討の中間報告を事務局からご説明していただくことにしておりますけれども、具体的な説明に入ります前に、これまでの検討経緯と今後の作業について、委員の皆様、それと事務局、それと関係者で共通認識を持ちたいというふうに思っていますので、一度整理をお願いしたいというふうに思っています。

 それでは、まずこれまでの経緯と今後の作業ということにつきまして、事務局からご説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○高山室長補佐 閉鎖性海域対策室の高山でございます。

 本小委員会が検討を始めまして、約2年たちました。ここで先ほど小委員長がおっしゃっておられましたけれども、これまでの経緯と今後の作業の確認をしていきたいと思います。その後、海域ごとの再生方策の検討につきまして、説明をしたいと思っております。

 まず、海域再生対策検討作業小委員会につきましては、平成24年6月19日、有明海・八代海等総合調査評価委員会におきまして、有明海・八代海等総合調査委員会が行う有明海・八代海等の再生の評価に係る情報の収集・整理・分析を行うという付託を受けました。これを受けまして、本小委員会は環境の現状認識としまして、底質の悪化や干潟の消失等によって、底生生物の生息環境が悪化し、底生生物が減少している。次に、底生生物が減少したため、物質循環における有機物分解過程の機能が低下、例えば二枚貝の減少に伴う濾過機能の低下等、それから次に水中の有機物の増加、赤潮抑制機能の低下や、底質中の有機物の蓄積、底層水の酸素消費促進、それから沈降中の有機物分解による酸素消費促進によって、貧酸素が起きているというような点につきまして、現状を認識しました。

 それに基づきまして、本小委員会では有明海・八代海の再生方策の検討方針として3つの方針を定めました。まず最初が、有明海・八代海等、全体における環境特性、海域別の特性を理解する。環境特性の把握と課題の整理を行う。2番目といたしまして、海域ごとの特性に応じた基本理念と個別目標を掲げる。海域ごとの個別目標を設定する。3番目といたしまして、個別目標を達成するための具体的再生方策を検討する。海域ごとにおける再生方策の方向性、再生技術の検討、これらについて確認をしたところです。

 本小委員会の進捗状況ですけれども、平成18年度報告の課題の対応結果の整理、それから環境特性の把握、これは一昨年度、この本委員会で検討した項目でございます。昨年度は全域、海域別の環境特性の整理、それから海域別の環境上の課題の整理を実施したところでございます。

 今年度は、海域別の連関図の検討、それから海域別の目標、検討のための課題の整理、これを実施していくことになっておりまして、その次に海域別の目標の設定、それから再生方策の検討という形で続いていくことになります。

 ここまでの課題につきましては、来年度一杯で、目安というものをつけて、親委員会のほうへ最終的な報告を上げるという形にいたしたいと思っております。

 本年度の作業につきまして少し述べさせていただきますと、まず昨年度まで有明海・八代海の海域区分、それから海域ごとの問題点と、その主要な要因及び原因の関係の案を示しました。これを受けまして、各連関図における問題点と主要な要因及び原因の関係の定量的な評価のための検討を行っていきたいと思っております。

 この図は、平成18年度委員会報告の際の有明海の連関図ですけれども、この中で問題点として表れているものとして4つ掲げています。まず、二枚貝の減少、それからベントスの減少、それからノリの不作、それから魚類等の漁獲量の減少やとれる魚類の変化が表面化している問題として認識されました。

 このそれぞれの問題点に対して、影響を与えている主要な要因といたしまして、まず底質の泥化、それから底質中の有機物・硫化物の増加、赤潮の発生件数の増大・大規模化、貧酸素水塊の発生、成層の強度化、潮流の低下、潮位差の減少、平均潮位の上昇など、河川を通じた陸域からの土砂の減少、それから陸域からの栄養塩の流入、有機物の流入、これらの主な要因がそれぞれ現象として表れている問題点との環境を見るため、この連関図というものが作成されております。これらの図の関係につきまして、これからそれぞれ海域ごとにこれらの関係を示していきます。

 今後、この作業を進めるに当たりまして、問題点と要因を示す線についての考え方の事例です。まず、ここで見ていただきたいのは、二枚貝の減少という問題点に対しまして、いろいろなそれぞれの関係する要因があるわけですが、例えば水温の上昇、それから底質中の有機物の増加、底質の硫化物の増加というものの影響について、実線はこれが影響を与える問題点に対し、その関係が事業報告、あるいは研究報告で確認されているものについては実線で、それぞれが現在では関係が確認できないものについては破線というような形で表すことにしております。

 今後、問題点とその主要な要因及び原因の関連性の定量化を進めるために、まず、各海域ごとに問題点、その主要な要因及び原因の現状の確認を行う。これは収集資料等によって確認をする。それから2つ目として、各海域間における主要な要因と原因の関連性、これは各海域間の物質収支の確認を行う。これにつきましては、数値シミュレーションモデルを用いて検討することにしたいと思っております。

 まず1番目の資料収集による確認につきましては、委員会報告、平成18年12月以降の事業報告・研究報告の資料を収集する。生物・水産資源・水環境問題検討作業小委員会における検討結果等をこの連関図の中に取り込んでいく。それから数値シミュレーションモデルによる検討といたしまして、流入負荷・土砂の影響、流入河川から各海域までの到達・滞留時間も考慮した影響、移動・拡散による海域間の負荷(懸濁物)の流入・蓄積(堆積)状況などをシミュレーションする。それから各海域ごとの内部生産状況をシミュレーションいたします。それから再生技術の感度解析などを行うことといたします。

 以上でございますけれども、基本的には来年度で一応のめどをつけた形で、親委員会への報告をしたいと思っております。

 以上でございます。

○滝川小委員会委員長 ありがとうございました。ただいまこれまでの経緯と今後の作業ということでご説明いただきました。ただいまのご説明につきまして、何かご意見、ご質問のある委員、いらっしゃいませんでしょうか。

 どうぞ、白谷委員。

○白谷委員 今後の検討ですけれども、数値シミュレーションモデル等による検討を行うということにされておりまして、この資料の中にもどこか記述があったと思うんですけれども、今まで開発されてきたシミュレーションモデルでは、なかなか現象が説明できない部分もあるというふうなことだったんですね。そういった中で、シミュレーションモデルを使って、今後の検討を行うというところ、シミュレーションモデルの使い方は気をつけなければいけないというふうに思います。また、数値シミュレーションモデルについては、この資料2-2に書いてありますように、JSTモデルとか、楠田先生のプロジェクトでやった八代海のモデル、こういったものがありますけれども、ほかにも国が開発したモデルや、大学のほうでも開発されていると思います。それぞれのモデルでやっぱり特徴があるんです。あるはずなんですね。それでここでJSTモデルを使うとする理由は説明しておかなければいけないというふうに思います。それをここであえて書く以上は、その優位性は明確にしておく必要がなおあるのではないかというふうに思います。

○滝川小委員会委員長 ありがとうございます。何か事務局サイドのほうからご回答あるでしょうか。

○高山室長補佐 貴重なご意見、ありがとうございました。モデルにつきましてはいろいろなモデルがあるということは事務局のほうでも認識しておりまして、一例としてJSTモデルという形で挙げさせていただきましたけれども、今後どういったモデルを使っていくかということについては検討していきたいと思います。

○滝川小委員会委員長 ありがとうございます。

 小松先生、どうぞ。

○小松委員 2点、お伺いしたいんですが、パワーポイントの9枚目。点線はまだ確認されていないということなんですが、右下の潮位差の減少、平均潮位の上昇、これは結構重要なファクターなんですけれども、これがダイレクトに二枚貝の減少につながる要因というのは、何を考えられているのかという。というのは、どういうことかというと、潮位差が減少し、平均潮位が上昇すると、潮流は遅くなるわけですね。それが貧酸素水塊の発生等にもちろん効いていくんですが、それではなくて、ダイレクトに結んでいるときにはどういう要因を考えられているのかという、これが1点。

 それから12枚目、ここの項目を見ていると、何となくある時のシミュレーションというイメージなんですね。有明海はだんだん有明海の海域が劣化していっているというのが極めて大事なので、何となくこの項目を見ると、時間的な変化を追いかけるというイメージがあまり出てこないんですけれども、そういう要因をぜひ入れてほしいということです。

○高山室長補佐 まず第1番目につきまして、ちょっとこれも舌足らずで大変申し訳なかったです。これはわかりやすいようにつくった事例ですので、ここの潮位差のところはまた後ほど、A4海域を事例とした形で、もう少し詳しくご説明したいと思います。

 それともう一つのシミュレーションにつきまして、これは時間軸の変化も入れたらいいのではないかということでしたが、もちろん時間軸を入れた形で検討できれば一番いいのですけれども、なかなか難しいという事情もありまして、可能な限り、先生のご意見も入れて、時間軸についても考慮するような形でやっていきたいと思います。また、先生にもご意見をお伺いして、どういう形がいいのかという方法を検討していきたいと思っております。

 ○滝川小委員会委員長 よろしいでしょうか。ちょっと9ページの絵につきましては、あくまでもエグザンプルということでご了解いただきまして、後ほど直接的に線を引いた要因・原因というところ、8ページにも書いてございますが、今、先生ご指摘のように、潮位差から二枚貝の減少に書いた線がございませんので、ちょっとエグザンプルが悪かったということでご容赦いただきたいというふうに思います。

 それからシミュレーションにつきましてもご指摘の点、重々わかっていると思いますが、白谷委員からもご指摘がありましたように、シミュレーションそのものの精度といいますか、それをわきまえないと議論できません。また、各委員の先生方からもご指導いただきながらシミュレーションの限界、あるいはそのモデルそのものの限界というのを理解しながら解釈していくということが大事なのかなと思いますので、ぜひ今後ともそういう方向でご検討していただきたいというふうに思います。

 ありがとうございます。ほかによろしいでしょうか。

 山口委員。

○山口(啓)委員 同じ9の図なんですけれども、これは貧酸素水塊の発生と二枚貝の減少については、関係性が確認されていないというふうになっているわけなんですけれども、これはあるともう自明のようにみんな思われている部分だと思うんですけれども。この底質の有機物の増加と硫化物の増加と貧酸素というのは、もうセットみたいなものなので、当然、貧酸素で二枚貝が死ぬということは、もういろいろな事例があると思いますけれども。なぜ、これは点線なんでしょうか。

○高山室長補佐 先生のおっしゃるとおりでございまして、ちょっと事例が悪くて、この辺のところも生物小委員会のほうで、かなり深く掘り下げたような形で実施しております。ちょっと事例が悪くて申し訳ありません。

○山口(啓)委員 この絵が単なるイメージ図だということですか。

○高山室長補佐 そうです。

○山口(啓)委員 すみません、わかりました。

○高山室長補佐 ちょっと事務局の不手際で申し訳ないです。説明不足で申し訳ありませんでした。

○滝川小委員会委員長 ちょっとこれは非常に乱暴な絵ですので、ちょっと無視してください。単なる説明用の実線と点線の違いを言いたかったというだけでございますので、詳しい議論はまた後ほどやっていただければと思います。

○東委員 シミュレーションを行う以前に、2年間いろいろ検討されてきて、今現在、フェーズが6ページ目のスライドでいくと4ということなのですが、ここまでいろいろデータが揃ってきますと、そろそろ再生の方向性、すなわちこの有明海・八代海の再生というものをどういうようなビジョンで、環境改善・再生とは一体何を目指していくのか、どういう問題を解決していくのか、それを何年までにやるのかというものが、そろそろ具体的に何か見えてきた上で、シミュレーションを行うものだと私は思っていたのですが。この資料を見る限りでは、シミュレーションをまず先にやるというようなイメージがあるみたいに見えますが、ある程度再生の目標・方向性を絞ってシミュレーションをやるのか、それとも今回はとりあえずいろいろと結果を並べてみるのか、シミュレーションを行う目的・方向性を教えていただけないでしょうか。

○高山室長補佐 目標につきましては、海域別の目標の設定とその再生方策の検討につきましては、次回までには示していきたいとは思っております。シミュレーションにつきましても、時間の問題もありまして、それぞれの目的に沿った形で行っておりますので、同時並行的に実施しております。本来でしたら先生のご意見のとおり、目標値の設定、それから再生方策の検討というものをある程度掲げてから、シミュレーションをそれに向けて実施するというのが正しいと思いますけれども。申し訳ないんですけれども、それも含めた形で今後進めていきたいとは思っておりますので、よろしくお願いいたします。

○滝川小委員会委員長 再生の方向性については、今からご議論いただくんですが、共通認識を持っていただきたいということで、これまでの経緯を今ご説明していただいているとおりです。海域ごとに今までのデータを整理して、特性を明らかにしましょうというのが、一つの目的でやってきているわけです。そういった中で確認がとれているところ、とれていないところもある。それをどうやってではつなぎ合わせていくのか、再生に結びつけていくのかというのを議論するのですが、そのときの海域ごとには議論できるけれども、では海域間がどういう因果関係にあるか。例えば有明の真ん中のところと、湾奥のほうのところが、ではどういうふうな関係になっているのか。真ん中のところをよくしたいんだけれどもというときに、そこだけよくしようということはできない。では、その物質収支が全体としてどういうバランスしているのかというのを確認する必要がある。ところが、それだけのデータがないというふうなことで、それを補う意味の数値シミュレーション。だから、海域間ごとの特性を明らかにしましょうという目的のシミュレーションです。もちろんその感度解析をやるということは、その再生方策を考えて、それぞれの海域間の物質収支の関係を踏まえた上で、ではどういう対策が考えられ、どの程度成果があるかということをここで評価しましょうというふうな流れになっておりますので、これで単独に数値シミュレーションがひとり歩きしているわけではなくて、各海域間の特性をよりよく理解するための一つの手段として、数値シミュレーションもやる。それプラス、今までもやってきていますが、各海域ごとの特性クラスター、実測データに基づいた整理をやりましょうと。それを両方重ねて再生方策の検討というのを目指しているという、そういうストーリーになっています。

 ですから、単独にシミュレーションで再生方策を考えるんだということとはちょっと違っていて、各海域間の理解をより深めて、どこにどういう対策をしたらいいかという筋道をつくりたいという意図でやっておりますので、そういった意味の共通認識を図りたいということで、今日、これまでの経緯というのをご説明いただいたということです。そういうふうにご理解いただけたらよろしいので、深い議論は今からどんどんやっていただければというふうに思います。シミュレーションだけをひとり歩きさせるつもりは毛頭ないというふうにご理解いただきたいと思います。

 それで、申し訳ございません。時間もありますので、本日の本題のほうに入らせていただきたいと思います。引き続きケーススタディ海域における連関図と課題ということにつきまして、事務局よりご説明お願いいたしたいと思います。

○高山室長補佐 前回の本小委員会で、ケーススタディ海域について、事例として先行して実施するということをご了解いただいております。もう一度、要点を整理しますと、優先的に再生方策を行う必要があると考えられる海域について、ケーススタディとして連関図を完成させ、問題点とその原因・要因を明らかにした上で、生物の生息環境としての評価を行う。ケーススタディの海域の選定といたしまして、海域の現状認識として、底質の悪化等によって底生生物が減少し、さまざまな問題が生じていること、それから社会問題となっております水産業の衰退への対応として、底生生物、中でも生物・水産資源・水環境問題検討作業小委員会で最も優先的に整理されております水産の対象種でありますタイラギ、サルボウ、アサリなどの主要な生息海域といたしました。

 平成18年の前回の委員会報告以降の関係自治体の事業報告や研究報告、それから論文を収集いたしまして、有明海・八代海を8つの海域に分割しまして、それから八代海につきましては、5つの海域に分けました。この海域の区分は今後それぞれの中を検討していくわけですけれども、それによってこの海域区分は変更する可能性もありますよということで、ご了解していただいているところでございます。

 今日は、この中でケーススタディ海域としてご承認いただきましたA4海域とA5海域につきまして、詳しく内容の関係を見ていきたいというふうに考えております。A4海域につきましてですけれども、この海域はタイラギ、サルボウの主要な生息海域となっておりまして、有明海の湾奥部に相当する海域でございます。この海域は湾奥部の中央に位置しておりまして、貧酸素水塊の発生頻度が高いことから、モニタリング調査などが精力的に行われている海域でもありまして、データ的にはかなりそろっている海域となっております。

 有明海の問題点といたしましては、先ほども平成18年度の連関図を見たときにご説明しましたけれども、一番の問題点は、前回の委員会では二枚貝、それからノリ、それからベントスの減少、それから漁獲の減少という、その4つが大きな問題点として認識されているところでございますけれども、このうち、このA4海域というのは二枚貝が非常に大きな問題となっている海域でもあります。このA4海域の問題点を整理しますと、二枚貝のタイラギ、それからサルボウの減少、これは全域ではないものの、これが非常に大きな問題となっている。ここでは全域となっていますけれども、タイラギはほぼ全域で減少傾向が見られるということでございまして、もう一つは底生生物の減少についても、かなりの広範囲で見られるということでございます。

 この海域の問題点に対する主要な要因といたしまして、まず底質の泥化につきましては、全域が一様に泥化する傾向ではなく、気象条件等によって泥化、あるいは粗粒化している。また局所的には堆積傾向にあり、泥化が進んでいる地域もあるという状況になっております。

 底質中の有機物・硫化物の増加についてでございますけれども、他海域によりも高いレベルでありまして、増加していると考えられております。

 次に貧酸素水塊についてですけれども、貧酸素水塊につきましては毎年のように発生が確認されている地域であります。赤潮につきましては、2012年には確認件数が15件を超え、珪藻赤潮が増加しているという特徴があります。潮位差の減少につきましては、M分潮の振幅幅の減少の主な要因は、外海のM分潮の振幅幅の減少と考えられております。平均潮位の上昇は確認されております。

 続きまして、栄養塩、それから有機物の流入についてでございますけれども、筑後川からの負荷が隣接する海域を経由して流入しているという状況でございます。それから近隣の河川からの土砂の供給量につきましては、この海域はあまり大きい河川はないんですけれども、A4海域におきましては大きな変化はないという状況でございます。また、成層化につきましては、成層強度が強くなっている可能性につきましては報告されていますけれども、明確な定量的な関連性は報告されていません。

 続きまして、ケーススタディとしてのA4海域の連関図をつくるに当たりまして、連関図の例、各問題点を色分けいたしまして、見やすいような形にいたしました。まず、問題点に対して主要な要因として確認されたものはこの赤枠でくくってあります。それと、緑は生物・水産資源、青色は海域環境、黄色は陸域河川の影響、ピンクは気象・海象の影響、灰色につきましては、全体としては主要な要因として確認されていますけれども、この海域では主要な要因として確認されていないものとなっております。この線につきましては、先ほどご説明いたしましたけれども、実線につきましては現時点で収集した事業報告、研究報告等によって関係が確認されたもの、破線につきましては、現時点では事業報告、研究報告によって関係が確認されていないものです。今後、データの収集が進みまして、破線が実線になることも今後考えられます。

 続きまして、それぞれの要因に対して、その問題点と原因の関係につきまして、一つ一つ見ていきたいと考えております。

 まず、底質の泥化という要因に対しまして、これが魚介類の減少に対しての関連性としましては、A4海域の泥化が魚介類の漁獲量の減少に影響を与えているという定量的な報告は、今のところありません。底質の泥化がベントスの減少、それから二枚貝の減少に対して影響を与えているという問題点はこれはありますが、これは非常に重要な課題ですので、これは生物小委員会のほうで深く掘り下げたような形で検討しております。

 それから潮流の低下と泥化の関係ですけれども、潮流の低下がこのA4海域内で泥化、粗粒化を引き起こしているという傾向は、いろいろな論文で見てもまちまちではありますけれども、そういったデータは取得してはおります。それから潮位差の減少、それから平均潮位の上昇が底質の泥化に与える影響につきましては、関連する報告が今のところありません。それから河川を通じました陸域からの土砂の供給の減少につきましてはA4海域における土砂供給については、今のところ安定的であるという報告がございます。

 続きまして、主要な要因である底質の有機物の増加についての連関でございますけれども、まず、赤潮との関連ですけれども、当然、赤潮のプランクトンが増殖して死滅しまして、沈降・堆積しますと有機物が増加するので、底質中の有機物の増加というものに対しての連関はあるという報告がございます。貧酸素水塊の発生につきましても、これも同様でございまして、有機物が増加することで、底層の利用消費が拡大し貧酸素化する。それからベントスの減少につきましても、堆積物を食べます底生生物が減少することによって、底質中の有機物が多くなる、そういった報告があります。ノリの活動につきましては、来年度、生物小委のほうで、ノリの色落ちと珪藻赤潮についての検討を来年度実施する予定にしておりますので、そこで関係も明確にされると思われます。それと、栄養塩の流入、それから有機物の流入でございますけれども、これにつきましても底質の有機物の増加に対する明確なデータというのは取得しておりません。

 次に、底質中の硫化物の増加という要因から見た連関でございますけれども、まず、魚介類の漁獲量の減少につきましては、これも定量的な報告は今のところなされておりません。それから貧酸素水塊の発生との関連でございますけれども、これも貧酸素化することで底質中が還元状態となりまして、有機物が嫌気分解され、硫化物が多くなるという報告がございます。それからベントスの減少との関係につきましては、当然その硫化物はベントスにとって毒性でございますので、ベントスの減少という影響を与えているという報告がございます。それから二枚貝の減少につきましては、ここも重要なテーマでございますので、生物小委のほうで掘り下げた形で検討をしているところでございます。それから栄養塩の流入と有機物の流入につきましては、今のところ定量的な関連は報告されてはおりません。

 続きまして、貧酸素水塊の発生という要因につきましての関係でございますけれども、これも重要なテーマでございますので、二枚貝との関係で、生物小委員会のほうで、今掘り下げた形で検討をしているところでございます。

 赤潮の増大、大規模化という要因について見ますと、これにつきましても、有明海において重要なテーマとなっております。これは研究論文もまたデータも非常に多いテーマでございます。これにつきましても今生物小委員会のほうで検討をしているところでございます。

 続きまして、潮位差の減少、それから平均潮位の上昇でございます。まず、潮位差の減少が潮流の低下に与えている関連でございますけれども、シミュレーションによる検討報告があります。透明度の上昇については、明確な報告が今のところありません。それから魚介類の減少につきましては、魚類、特にグチ類などの産卵場として湾の中央部が考えられます。稚仔魚の成育場として湾奥なども考えられますので、稚仔魚の輸送について影響があるという報告が出されております。シャットネラ赤潮、それから珪藻赤潮との関係につきましては、これも生物小委のほうで検討しております。それから成層化、二枚貝の減少でございますけれども、こちらのほうは定量的な報告はございませんし、二枚貝につきましては総合的に生物小委のほうで検討を進めているところでございます。それから底質の泥化につきましては、これについても定量的な報告はございません。それから干拓・埋立てにつきましては、シミュレーションによる検討は数多くなされておりますけれども、結果につきましてはそれぞれまちまちで、明確なものは出ておりません。それから外海の潮位の上昇と潮位差の減少でございますけれども、これも有明海のM分潮の振幅幅の減少の主要な要因は、外海のM分潮の減少であるというな報告がございます。

 続きまして、栄養塩の流入と有機物の流入という要因に対するそれぞれの関連ですけれども、まず富栄養化につきましては、筑後川から流入した栄養塩が南側、それから湾奥へ流下し、南部へと拡散するという報告がございます。それから有機物の増加、それから硫化物の増加については、定量的な報告は今のところなされておりません。

 続きまして、潮流の低下ですけれども、まず透明度の上昇ですが、これも定量的な報告は出されておりませんで、これはちょっと実線になっていますけれども、これは破線の間違いでございます。魚介類等の漁獲量の減少につきましては、先ほども述べましたけれども、グチ類などの稚仔の輸送に影響を与えている。シャットネラ赤潮、二枚貝につきましては、これも生物小委で詳しく検討をしておるところでございます。成層化の強度に対する定量的な報告というのはなされておりません。泥化につきましても、定量的な報告は今のところございません。それからこれも先ほど述べましたけれども、外海の潮位の上昇と潮位差の減少ですが、これも外海のM分潮の振幅幅の減少が、有明海内の潮流の低下に影響を及ぼしているという報告がございます。

 河川を通じた陸域からの土砂供給という要因ですが、現在の報告書の検討状況では、A4海域での土砂の供給量は安定しているという報告となっております。したがいまして、藻場の干潟の減少や透明度の上昇、それから底質の泥化については、今のところ影響はないというふうに考えられております。ただ、今後のデータの収集状況では、こういったものについても実線になることが十分考えられます。

 これを今までの要因との関係を全て一つにまとめたものがこの連関図です。この連関図は、先行的につくったわけですけれども、まだ途中でして、今後、その資料の入手状況、それから検討状況によりましてまた変わってきますし、シミュレーション結果を取り入れることによって、またこの形も変わってくる可能性があります。A4海域につきましては以上です。

 次は、A5海域でございます。A5海域につきましては、説明時間の問題もありますので、ここは個別の要因につきましては省かせていただきますので、全体の説明だけをさせていただきたいと思います。

 この海域の問題点は、先ほどと同じように、底生生物の減少と二枚貝の減少が考えられます。二枚貝は漁業種としてはアサリの減少が問題となっておる場所です。減少の要因ですけれども、底質の泥化につきましては、全域において進行しているとの報告はありませんけれども、中部では泥化が進行していると考えられる地域があります。底質中の有機物・硫化物の増加については、全域的には他海域よりも低いレベルにあるものの、中部、緑川・白川河口地先などでは、有機物含有量が多くなっております。

 続きまして、貧酸素水塊は過去に1回観測されておりますが、あまり発生するという海域ではありません。それから赤潮につきましては、2008年度に減少したものの、その後、10件から15件で推移しています。また、この海域では珪藻以外の赤潮の確認の件数が多いという状況です。

 続きまして、潮位差の減少ですけれども、これにつきましても先ほどのA4海域と同じように、M分潮の振幅幅の減少の主たる要因が外海のM分潮の振幅幅の減少として考えられております。先ほどのA4海域でも同じですけれども、潮流の低下は潮位差の減少、平均潮位の上昇等によって引き起こされる現象でありますから、別途扱うことにしております。それから栄養塩・有機物の流入につきましては、緑川・白川・菊池川からの負荷が直接流入しております。緑川・白川・菊池川からの土砂の供給量は大きく変化はしていない状況です。それから成層化につきましては、過去から成層強度が強くなっている可能性は報告されていますものの、定量的な報告は今のところされておりません。

 それぞれの要因と原因をあわせますと、このような連関図になりまして、A4海域とはこの一つ一つのラインはA4海域とほぼ同じですけれども、当然このライン一本一本の報告書は全てA4海域とは違っておりまして、それぞれの海域でそれぞれの報告に基づいてラインを引いているところです。この灰色につきましては、今のところこの海域では関連が認められないものとなっておりますけれども、これにつきましても今後データの収集、それからシミュレーションの結果に基づきまして、この破線が実線に変わるということも十分考えられます。

 今後は有明海全域につきまして、個々の海域の中でこういった連関図をそれぞれつくりまして、海域間の相互作用であるとか、そういったものにつきましてもシミュレーションを行いそれぞれの連関図についても考えていきたいと考えております。

 以上でございます。

○滝川小委員会委員長 どうもありがとうございました。

 ただいまケーススタディということについて、有明海の湾奥西部、それから有明海の湾奥東部ですか、A4とA5の海域についての一つの再生方策の方向性ということについて、要因・原因についての整理のご説明がありました。何か今のご説明に関しまして、ご意見等お願いいたしたいんですが、ございますでしょうか。

○松野委員 十分についていけなかったところもあるんですけれども、こういうふうに個別に整理されたことによって、私たちが何をしなければいけないのかということがわかってきたような気はするんですが、要するに個別の因果関係を可能な限り明らかにして定量化して、それら定量化したものを使って、それがいろいろこういうのが重なっていますので、今、聞いただけでよくわからなかったように、頭の中ではそれを合体できないので、それをそれぞれ定量化した個別のプロセスをモデルの中に取り込んで、モデルで合体させて、それで全体の原因から結果までつなげて説明できるかどうかというのをモデルでまずやってみようということかなというふうに思いました。

 まず今の話の中で、いろいろつくられた中で、論理があまり整理されていないのではないか。それはこの言葉にも表れているような気がしまして、例えば、問題点とその主要な要因及び原因の関係ってよくわからなくて、何かと考えると、要するに問題点があって、それに関係しそうな現象あるいは要素をピックアップして、それぞれの因果関係を量的に調べてみようという作業なのではないかとこの図を見ていて思ったんです。そのことについては説明は何かどこまでできているかわかりませんが、例えば21枚目のやつの潮流の低下が底質の泥化につながっているというのがありますけれども、それは多分そうだろう、関係しそうだというのはあると思いますが、それがどれぐらいかという定量化、すなわちパラメタライズしないとモデルには取り込めないわけですね。だからその一つ一つのこの実線の部分を定量化するということがこの作業かなと思うんです。どこまでできるかということをまず見極める必要はあると思いますけれども、それを定量化するということが問題で、そのためには曖昧さをできるだけ排除していかないといけないので、そのためにこういう整理するときにも、今、ざっと最初やられたイメージでつくられたのは、それは最初のステップとしていいと思うんですけれども、これをちゃんとはっきりしたものに、モデルにどう利用するかというところ、どういうモデルをつくっていくかということにつなげるためには、これを個別にどこが定量化できてどこができないかということをはっきりさせなければいけないわけですね。それをこの図に入れていくという作業かなというふうに思いました。

 個別のそれぞれ矢印のどうのこうのというのは、多分、一杯いろいろ、先ほどの今までの経緯のところで説明があった、モデルの例の図が悪かったことに対してコメントが出ていましたように、今回はこれは例ではないので、個別についてそんなことはないだろうという話って、一杯出ると思いますけれども、そういった中で定量化できるところ、モデルに取り込めるところがどれかということを見極めるということが重要なのではないかなと思います。そうでないとモデルに取り込めないし、モデルに取り込めないとこのスキマティックな図を頭の中で全部合体させたところで、何がどうなるかはわからないので、そういう作業のためにはどこが定量化できるかということをきちんと評価するということかなというふうに感じました。

○高山室長補佐 ありがとうございました。どこが定量化できて、どこが定量化できないかというのもなかなか難しいと思いますけれども、まず重要な海域をケーススタディとして用いて、その中の問題点と要因の間で、重点化していくことが、今後必要になっていくというふうに考えております。

 今のところ、生物小委員会のほうで検討しております赤潮だとか、そういったものにつきましては、重点化しなくてはならないと考えておりまして、生物を中心に深く掘り下げてもらっております。そのほかにも、ここは絶対に解明しておかなければならないという線が恐らく幾つもあると思います。そういうところを重点化して定量化していくというのは必要になっていくと思っております。

○滝川小委員会委員長 よろしいでしょうか。

 小松先生、どうぞ。

○小松委員 違う話題でよろしいですか。今のではなくて。

○滝川小委員会委員長 はい。

○小松委員 一つは最初の私の質問と絡むんですが、例えば26です。潮位差の減少、平均潮位の上昇がシャットネラ、珪藻類等の赤潮の発生件数の増大・大規模化につながるという。要するに潮位差、振幅幅が減少するということ、それから平均潮位が上昇するという、単なる物理的な要因ですが、これが赤潮の増大に影響するというのが、やっぱりダイレクトに結びつかないんですよね。例えば平均潮位が上がると、振幅が小さくなる。そうすると輸送能力が落ちるから栄養塩が滞留して、その間に赤潮が発生するとかいうプロセスをかませるんだったらいいんですけれども、あくまでもこの要因がダイレクトにはそこに結びつかないということが一つ。

 それからもう一つは、35で、A5の海域について、ブルーのところですけれども、「潮流の低下は、潮位差の減少・平均潮位の上昇によって引き起こされる現象であるから」、これは間違いないんですが、A5の場合はやっぱり地形の改変によって潮流の低下というのも起こるわけですね。A4の場合は地形の改変があっても、A4の場合は入退潮流に変化がありませんので、あそこは地形の改変というのは入れなくてもいいと思うんですが、A5についてはこれは地形の改変も当然効いてきます。

○高山室長補佐 最初のご意見ですけれども、当然ラインにつきましてもダイレクトに結びつかずに、その間に何か当然原因なりが一度入った形でというご意見ですけれども、先生のご意見もごもっともだと思いますので、その辺のところも含めまして、生物小委のほうの検討結果も含めて入れながら、今後進めていきたいと思います。

 それから地形の改変も連関図の中に入れたほうがいいのではないかと、そういうご意見と承りました。

○小松委員 連関図に入れるかどうかは別にして、少なくとも潮流に対しては地形が改変という要因が大きく効いてくると。

○高山室長補佐 そういった要因も含め関連のデータなりを収集する努力をしたいと思います。

○小松委員 そうですね。潮流の低下というのが一つの項目としてありますので。こういうふうに書かれると、これは間違いだよと言いたくなります。

○高山室長補佐 わかりました。ありがとうございます。

○滝川小委員会委員長 ほかに。白谷委員。

○白谷委員 前半の小松先生からのご指摘にも関連するんですけれども、例えば29ページ、これは泥化ですね。泥化の要因を、例えば28ページの関係のところに書いてあるんですけれども、例えばその中でも河川を通じた陸域からの土砂供給の減少、これについては情報、下線を通じた陸域からの土砂供給については安定していると報告があるから、要は関係ないのではないかという話だと思うんですけれども、この現象に関して言うと、例えばの話なんですけれども、河川からの土砂供給量、特に粗いものですね。粗粒分の供給が減ってきた。それが有明海の中の泥化の現象として表れるまでにやっぱり数十年とか、タイムラグがあるんですよね。ですからここで書いてある陸域からの土砂供給について安定していると報告がある。これは最近10年の話であって、それ以前のものが今になって表れてきている。例えば陸域からの負荷の供給についても、70年代までずっと上昇して、70年代から低下してきて、そしてまた90年代からさらに低下していく。こういった現象、だから負荷が減少しているから海域の有機化には影響しないと、そういう単純な話ではないんですよね。そういう現象が数十年単位のタイムラグをもって出てきていると、こういったところを解明しないといけないわけですね。だからこれも一つのモデルの役割だと思うんですが、ここで何十年もモデルを回すとなると、あまり合理的ではないので、ある程度目的を絞って単純化したモデル、または空間の分解をもうちょっと粗くしたモデルとか、そういった目的に合わせたモデルのつくり方というのも考える必要があるのではないか、こういった大きなタイムラグを解明するためにはですね。そういうふうに思います。

○滝川小委員会委員長 どうもありがとうございます。

○高山室長補佐 貴重なご意見ありがとうございます。時間軸をとりますと、どこまでとるかとか、データの収集も非常に膨大になってしまって難しいところですが、時間軸を押さえておく必要がある要因については検討していきたいと考えております。

○滝川小委員会委員長 確認ですけれども、例えばA4の海域について要因・原因の連関図、21ページからずっと個別に検討されて、そのまとめが30ページに書かれているという、そういう認識ですよね。

○高山室長補佐 はい、そうです。

○滝川小委員会委員長 それで今多分ご指摘、小松先生含め、白谷委員含め、ご指摘があったのは、それぞれの事象を考えていく上で、ただこれだけではないでしょうというところがありますよね。例えばわかりやすく言えば、21ページのところをお示しいただくと、潮流のこれは底質の泥化ということを、今、要因・原因としてまとめたいという図になっているわけですね。その原因が潮流の低下というものと、あるいは潮位差の減少というものが原因で、ここから矢印が来ているから、あるいはそれ以外のところはよくわからないよという図なんですが、例えば底質の泥化ということを考えたら、もっとほかに要因があるでしょう。潮流が低下したから即ダイレクトにここ1本しか線が引いていない。でも線が引けていないところがあるのではないでしょうか。

 そういった一つ一つの要因をもう少し掘り下げるという、わからないところもどこか書けませんかという、書けませんかではないですけれども、書いていって議論する余地があるでしょうという、そういうご意見だろうという。そうしないと、多分単純にこの線を引いていて、よくわからない。例えば今の図からいきますと、潮流の低下ということと、潮位差の減少、平均潮位の上昇というのは前の文章を見ると、潮流の低下は潮位差の減少、平均潮位の上昇等が主たる要因でありと書いてあるのに、潮位差の減少は泥化には関係ないというような変な図になっているわけです。まとめを見るとちゃんと潮位差の減少から潮流の低下ということに向いている。だから、この図を一つ解釈するにしても、泥化という現象は一体どういうものに支配されるだろうか。例えば流動が変化したから。潮流が変化したというよりも、流動が変化する。なぜ流動が変化したかというと、地形が変化している。あるいは海岸線の形状が変わったから。そういう要因・原因の要因がもっとたくさんあるんだけれども、論文からピックアップしてきているものだから、その結果だけが、表面だけがと言ったら語弊がありますが、理解しやすいことだけが表面に出てきているので、なかなか現象を理解しようとするときに結びつかないということになっているのかなというふうに思いますので、もう少しこういったところの、ここに書けていないところも含めて何か示していかないと、皆さんのご意見といいますか、それに応えるためにはしなければいけない。

 それと同時に、そういったものをどう評価するのかといったことが多分一番大事で、潮流が低下している。では潮流が低下しているのが原因ならば、それを上げればいいじゃないの。ではそれに対する対策は何なのという、どうしようもないような対策になってしまう。だからもっとほかの要因もやっぱり総合的に考えないと、あるいは我々がやっている調査が、例えばベントス調査します、底質調査します、水質調査しますということが、それぞれの項目がそれぞれの要因と原因のこの図の中に何を調べているという調査項目との中でこれを議論しないと、多分次に進めないんですよね。それをシミュレーションモデル、あるいはそれ以外の統計学的なモデルに放り込むにしても、使いようがないと言ったら語弊があるんですけれども、解決の方法が見えないということになるので、そこもまた皆さんのご意見をいただきながら、これはどういう物差しではかればわかるよねみたいなこととの調査項目との関連ですね。そこをぜひアドバイス、ご意見等いただければ、よりよい方法、解決策でどれが一番効果がある、ないということも見えてくるのかなという気がしますので、ぜひそういうご指摘を今後お願いしたいというふうに思います。

 ほかにご意見ございませんか。

 どうぞ。

○東委員 私も松野先生と大体同じ意見なのですが、一つ、物理現象、とりわけ自然現象ですかね、それと人為的な因子は、きちんと分けて整理した方がよいかと思います。というのも、例えば今回、潮流の低下というのが重要な一つの因子として挙がっていて、一応スライドの方でも別途扱うというふうに書いてはございますが、結果的に最後の再生を検討するときに、この潮流を対策で何とかするというわけにはならないわけで、日射量とかも同じようなことになると思います。その辺は分けて整理しておかないと、後々何かと見えにくくなるかと思います。

 最後、この連関図を作っていくのも、松野先生もおっしゃったように、どれが重要でどれがウェイトとして低いかというそぎ落としの方も大事になってくるかと。実際、これらが全部関係あるからというふうに矢印をいろいろつなげていったわけだけど、最終的にはもうこれ全部つながっていますねというだけで、結果、何が重要な因子かがちょっと分からない。そういう意味でこれらを定量評価するためにモデルシミュレーションを行うとなると、モデルの方もこれらが全部客観的に定量評価できるような形にする必要があるかと。あらかじめ何らかの仮定で縛っているようなモデルでやると、それらが全然客観的に評価できないので、ぜひそういうような方向性でモデル構築を検討していただきたいと思います。

○滝川小委員会委員長 ありがとうございます。物理環境のモデル化と同時に、シミュレーションをやるとしたら、生物環境の生態系モデルということまで盛り込むには、かなりのデータといいますか、そういう調査結果というのが必要になりますけれども、そういった視点の中で、数値モデルをどうつくり上げるのか、あるいはそれで説明できないようなものを生物生息環境の評価というのをまたどういうふうに併用しながらいくのかという、多分その二本立てでいかないと、数値モデルだけで議論、多分できない。それを補うための生物生息評価モデルというのもご指示いただく。そのためにどういう物差しといいますか、評価項目を用いればいいのか。わからないのは、物理環境と生物の応答ですよね。そこのところをどううまくするのかということで、数値モデルを使うのか、生物生息評価モデルを使うのか。そういう二通りの考え方をいつも持っていただきながら、それにはこういう調査、あるいはこういう結果を用いればいいよという、ぜひアドバイス等いただければというふうに思っていますので、またよろしくご意見、ご指導いただきたいと思います。ありがとうございます。

 ほかにご意見ございませんでしょうか。

○山口(啓)委員 先ほど滝川先生から整理していただいたので問題ないんですけれども、今ちょっと見ながら思っていたのが、例えば干潟の減少や干潟の埋立てというものが、有機物の増加に例えばつながるだろうなと思いながら、私ちょっと見ておりました。というのは、干潟に本来だったら運ばれていって、そこで好気的に分解されるはずの有機物が、干潟に行くことができずに水域内にたまって、下にたまって、有機物の増加、そして貧酸素化ということは、当然あり得る話なんですけれども、何でそれがここで、例えば22あたりでそういう関連図はないなと思って見直してみると、ここにないんですね。干潟の減少は浄化能力の低下、矢印、赤潮発生というラインしかなくて、この図にもやっぱりちょっとまだ線が欠けていることがあるかなということを思いましたので、可能であればそういうことももう一度検討をお願いします。

○滝川小委員会委員長 よろしいですか。

○高山室長補佐 ありがとうございました。検討していきたいと思います。

○滝川小委員会委員長 よろしいでしょうか。今、山口委員にご指摘いただきました。まさにそういう方向にあるんだろうなというふうに思います。症状といいますか、要因・原因と結果がまた原因になっているというふうなところに、どうしても説明し切れないものがある。最初の要因・原因というのは、これは文献次第、過去の研究でもってこういうことが言えていますというラインに基本的になっているわけですよね。だからこれだけではない、ほかの要因が表に出てきていないところがありますので、各委員におかれましてはその都度、あるいはいつでも結構ですので、こういうA4海域をモデルにしたときに、一つ一つの例えば底質の泥化ということについては、ほかのことも考えなければいけないのではないのかというご意見をやはりいただく必要がある。それを再生に向けて考えるときに、ではどういうふうにその事象を考える、あるいはどういうデータを持ってきて、そこを実証していくということも、あわせてご指導いただけると非常にありがたいというふうに思いますので、ぜひこの委員会の場だと多分時間が足らないので、各先生方、委員におかれましては、これを精査してくださいということをあえてお願いしたい、ご検証いただきたい、ご意見いただきたいというふうに思います。

 どうしても事務局サイドでまとめてしまうと、ベースがもともとの8ページのこの絵になっているものですから、ここからスタートしてしまっているというところがあります。論文が出ていない事象は間違いではないけれども、この中には出てきていないので、皆さんがお考えのこと、これは重要だよということをやはりご指摘いただかないと、効率的な再生に結びつかないだろうというふうに思いますので、ぜひ、そういったところをご指導いただきたいというふうに思っています。私がぱっと斜めに見ても、この絵はおかしいよなと、やはり各委員も思っておられると思いますが、そこをぜひご指摘いただきたいというふうに思います。

 ほかに何かご意見ございませんでしょうか。

 ではよろしいですか。青野委員。

○青野委員 この連関図とか、これのもとになっているバックデータが参考資料のほうというふうに考えてよろしいですか。こちらを見ると、例えば具体的に出どころといいますか、観測した年とかが載っているわけですが、結構古いところもございまして、前回の委員会報告よりも前のデータだったりするところがありますので、論文かまたは資料が出ていないというようなところはしようがないんですけれども、その辺、もう一度新しいデータを見返してみると、この矢印も変わってきたりするかと思いますので、そこをもう一度ご検討いただければと思います。

○滝川小委員会委員長 ありがとうございます。それでは松野先生。

○松野委員 個別のことなんですけれども、さっきの矢印の関係で、24ページの貧酸素水塊の成層化が効いていないというのは、何かはっきりした根拠があるんですか。第一義的に効くような気がするんですけれども。

○高山室長補佐 今のところ、データが集め切れていないという状況であるのと、あともちろん成層化するんですけれども、成層化の強度が増しているというような報告が今のところないというだけでございまして、そういう情報がございましたら、提供いただければありがたいなと思っているんですけれども。

○松野委員 成層化自体の根拠がないということですか。成層化というその矢印がどうこうではなくて、成層化のほうのデータがないという。

○高山室長補佐 はい、そうです。

○松野委員 そういう意味ですか。

○東委員 成層強化ということですか。

○根木室長 成層強化、そうです。ちょっとこの用語のほうもご意見いただけると思うんですが、成層化自体が自然現象である程度あるのではないかと。それが強化すること、増すことによって、貧酸素水塊の発生がよりつながるというようなことであれば、実線になる。そこのところのはっきりしたエビデンスが今のところはないのかなというふうに認識しておりまして、ここもエビデンスがまた出てくれば、この線の扱いもというふうなことで書いたものであります。

○松野委員 有明海で長期的に成層化しているかどうかというデータがあるかないかというのと、それから成層化が強くなったときに、貧酸素水塊が起こりやすいかどうかということとは別なんですよね。ですから、モデルを考えようとするならば、成層化を何かパラメタライズして、貧酸素水塊の形成に取り込むように何らかの格好でなっていないと、貧酸素水塊はうまく再現できないと思いますので、書き方とすれば貧酸素水塊のところはグレーでいいんですけれども、矢印ははっきりとした関係があるというふうな書き方にしておかないとまずいかなという、個別的な話ですが、そういうことはいろいろあると思いますけれども。

○高山室長補佐 ご意見ありがとうございました。事務局のほうでもちょっとデータ等も収集しまして検討いたしたいと思います。ありがとうございました。

○滝川小委員会委員長 ほかにご意見ございませんでしょうか。

 どうぞお願いいたします。

○清水委員 シミュレーションについて皆さんご意見出ているので、特にあまり言うことはないですけれども、この環境のシミュレーションの出口のインターフェースと、生物系のモデルシミュレーションとのインターフェースがちゃんと合うようにしておかないとまずいのではないでしょうか。来年度中に評価をするという場合に、違うレベルのものが出てくる可能性があるので。特にこの環境系の出口はどういう内容で構成されているのか。先ほどどなたかが資料のほうで少し書かれていると言われていましたが、私もそう思って読みましたが、時間、空間の解像度をどうするかとか、出力されるものがどういうもので、これは生物系の小委員会の成果とどう結びつくかとか、そういうのは、もうちょっと早目に準備しておかないと、来年度の目標設定のところにすぐに関係してくると思うので。もう今年中にそういうのを入れて、モデルの評価はどう考えるか、シミュレーションの結果確認も、いつの時点のデータで行うかというのもはっきりしておかないと、いつの時点のシミュレーション結果を活用するのかわからなくなるので、ちょっと急いでやったほうがいいのではないかと思います。

○高山室長補佐 ありがとうございました。なるべくご意見も取り入れながら、早急に進めたいと思います。

○滝川小委員会委員長 ありがとうございます。

 ほかにご意見ございますでしょうか。

 それでは、特にないようでございますので、第8回の海域再生対策検討作業小委員会はこれで一旦終わらせていただきたいというふうに思います。いただいた意見、たくさんございますが、今後確認して作業を進めていきたいというふうに思いますし、また各委員の皆様、あるいは関係省庁、都道府県の皆様には、今後とも検討作業に必要な情報等のご提供について、引き続きご協力をお願いいたしたいと思います。委員会の途中にも申し上げましたけれども、各委員の先生方におかれましては、この要因・原因の考え方、あるいは今後の進め方等につきまして、具体的なご意見、ご指導を賜りたいと思いますので、いつでも事務局のほうにご連絡いただきたいというふうに思っていますので、どうぞよろしくご指導をお願いいたしたいと思います。

 それでは、ちょっと早目になりましたが、本日予定されていました議事につきましては、終了いたしましたので、事務局のほうにお返ししようと思いますが、事務局から何かございますでしょうか。

○根木室長 本日は貴重な意見を多数いただきまして、誠にありがとうございます。

 次回以降のスケジュールでございますが、評価委員会について、12月に開催をしたいと考えております。また次回のこの小委員会につきましては、来年2月に開催をする方向で進めさせていただければというふうに考えております。また、本日の議事録については、後日確認のお願いをさせていただきたいというふうに思います。

 以上でございます。

○滝川小委員会委員長 ありがとうございました。

 それでは、これにて第8回の海域再生対策検討作業小委員会を閉会いたします。議事進行へのご協力に関しまして、お礼申し上げます。

 どうもありがとうございました。

午後3時 閉会