海域再生対策検討作業小委員会(第7回)会議録

1.日時

平成26年6月30日(月)10:00~12:00

2.場所

中央合同庁舎第4号館108会議室

3.出席者

小委員会委員長 滝川清委員長
委員 青野英明委員、小松利光委員、山口敦子委員、山口啓子委員
専門委員 白谷栄作委員、橋本晴行委員、古川恵太委員、東博紀委員、松野健委員
事務局 大臣官房審議官(水・大気環境局担当)、水環境課閉鎖性海域対策室長
水環境課閉鎖性海域対策室長補佐

午前10時00分 開会

○高山室長補佐 10時になりましたので、ただいまから有明海・八代海等総合調査評価委員会第7回海域再生対策検討作業小委員会を開催いたします。

 最初に、本小委員会は公開の会議となっておりますことと申し上げます。

 また、所属機関の人事異動に伴いまして、新たに2名の方に委員に就任していただいておりますので、ご紹介いたします。

 有瀧委員の異動に伴い就任していただきました、水産総合研究センター西海区水産研究所の青野委員です。牧委員の異動に伴い就任していただきました、国立環境研究所主任研究員の東委員です。

 本日の出席状況ですが、欠席の連絡を清水委員よりいただいておりまして、本日は10名出席されています。

 続きまして、環境省大臣官房審議官の平岡よりご挨拶申し上げます。

○平岡大臣官房審議官 おはようございます。環境省の審議官の平岡でございます。

 委員の皆様には、朝早くからお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

 この有明海・八代海と総合調査評価委員会の第7回海域再生対策検討作業小委員会開催に当たりまして、ご挨拶を申し上げます。有明海・八代海の再生につきましては、特別措置法に基づきまして、環境省初め、関係省庁、関係の各県がそれぞれ対策を実施してきておるわけでございますけれども、昨年も赤潮の発生とか、有明海の湾奥部での貧酸素状態の発生とか、なかなか厳しい環境があったと承知しておりますし、また、珪藻赤潮の発生ということで、ノリの色落ちも発生したということで、有明海におきましては、大変厳しい、予断を許さない状況が続いているというふうに理解してございます。この小委員会のほうでは、この海で生じております問題の原因あるいは要因の特定と、それに対する効果的な対策の検討ということで、なかなか非常に難しい問題について取り組んでいただいているということでございます。昨年度ということで、海域ごとの海域区分について検討していただいてきているわけでございますけれども、また、これを一歩進めまして、本年度、海域ごとに問題点の洗い出しとか課題の整理といったようなことを進めていくという段取りかと考えてございますので、大変なかなか難しい問題、たくさんあると思いますけれども、ぜひ委員の皆様方にはご意見いただきまして、ご審議をいただきたいと思っております。どうぞよろしくお願い申し上げます。

○高山室長補佐 続きまして、配付資料の配付資料を確認させていただきます。

 まず、資料1といたしまして、委員名簿がございます。資料2といたしまして、海域別の再生方策の検討についてと、資料2に伴います参考資料がございます。資料3といたしまして、諫早湾干拓事業の潮受堤防の排水門の開門に伴う環境変化を把握するための調査、調査結果の概要のポイントがございます。それと、参考資料といたしまして、これは委員限りの配付となっておりますけれども、諫早湾干拓の潮受堤防の排水門の開門に伴う環境変化を把握するための調査、調査結果の概要と、午後に行います生物・水産資源・水環境検討作業小委員会(第7回)資料を配付しております。

 資料につきまして、不足がございましたら事務局のほうまで申しつけてください。

 報道取材の皆様は、これ以降のカメラ撮影はお控えいただきますよう、よろしくお願いいたします。

 これ以降の進行は、滝川委員長、よろしくお願いいたします。

○滝川小委員会委員長 かしこまりました。

 本日の議事なんですが、お手元に議事次第がございます。議題につきましては、海域別の再生方策の検討についてということで、これがおおよそ1時間20分ぐらいの予定です。それから、2番目として、農林水産省からの報告ということで、15分ぐらい予定されております。時間限られておりまして申し訳ないのですが、円滑な議事の進行によろしくご協力をお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 早速ですが、議題の1番目、海域別の再生方策の検討についてということで議論をお願いしたいと思いますが、ただいまお話ありましたように、本小委員会におきましては、昨年度は、これまでの報告あるいは収集されたデータというのを整理いたしまして、海域区分別の環境特性、それと、その把握と連関図の作成ということを進めてきております。今年の3月の評価委員会におきましても、有明海・八代海の海域区分とその連関図というものの案を報告させていただきました。本年度は、さらにデータの収集と整理を進めまして、連関図の内容を充実させるということとともに、区分した海域別の再生方策につきまして、委員の皆様方にご審議いただきたいというふうに思っております。

 それで、まずは海域別の再生方策の検討につきまして、その考え方あるいはこれまでの経緯、今後の進め方というのを事務局のほうから説明していただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○川岸主任研究員 では、お手元に資料2、「海域別の再生方策の検討について 1」をご用意ください。目次をご覧ください。再生方策の考え方とこれまでの経緯と今後の作業ということで、これは従前からご説明申し上げている考え方、それと、昨年度はどういうことをやってきて、今年度以降どういうことをやるかという説明を1章、2章で、それから、3章では連関図、もう通称で目次にはつけているんですけれども、連関図についての作業の結果、それから、2章のほうで少し詳しく説明をいたしますけれども、今年度からケーススタディというものをやっていこうと考えています。その案を4章に、それから、前回、昨年度行いました現地調査の結果についても簡単に説明をしたいと思っております。

 まず、1章と2章を先に説明をさせていただきます。目次をめくっていただいて1章、再生方策の考え方でございます。ここは説明を今までしてきたところなので、申し訳ございませんが飛ばさせていただいて、7ページ、2章の2.1、これまでの経緯というところをお願いいたします。昨年度の最後の小委員会、それと33回の評価委員会で有明海・八代海を海域区分し、その海域ごとの問題点と原因・要因、それとの関連の可能性という、連関図の案を事務局から出させていただきました。今後、その連関図を見直していきます、バージョンアップしていきますという話をさせていただいたんですけども、その中で定量的な評価をして、その連関の関係、図2.1ですと矢印の部分ですけども、この矢印を定量化したいという話をさせていただき、定量化の考え方を整理しました。図2.1では、貧酸素水塊の発生という問題点を真ん中に置いて、それを幾つかの原因、要因で矢印を結んでいるんですけれども、太い矢印、それから細い矢印、それと点線の矢印で定量的な評価というか、相対的な大きさの違いを表現するということを今後作業としてやっていこうと考えているところです。

 これを今から進めていくというところで、全体の作業フローをもう一度確認したいと思って、8ページのほうに入れております。昨年度、何をやったかというと、このフローの1番から5番まで、課題がたくさんございましたので完成しているというわけではございませんけれども、作業としては1番から5番までやっております。今年度、このフローに従いますと、6、7、8、9というような順になっていくのですけれども、5番目の海域別の連関図の検討、あるいはもっとそれを遡って3番の環境特性の整理、あるいは環境特性の把握、こういったところでなかなかデータがない、あるいは十分に把握あるいは検討が進んでいない、あるいはほとんど何もやられていないというふうな、データがない、連関図をつくるに当たっての情報・知見がかなり少ないというところがございました。そういう課題を全て解決して5章の連関図をつくるべきですが、それは時間がかかるだろうと考えております。そこで、今年度は、6の全体目標の件と、それから、海域を区分しましたので、区分した海域ごとの目標検討をするために、あと何が必要かというふうな個別目標検討のための課題の整理というものを行って、そのうち幾つかの海域を選定し、そこの海域について8番、9番、要するに追加調査あるいは個別目標の設定、場合によっては再生技術の検討・評価、そういったところまでケーススタディとして作業を最後まで進めてみようと考えています。詳細は後ほどお話しいたします。

 8ページの全体目標の検討、これは今まで作業をやってきているんですけれども、この小委員会の中で全体目標をこうしましょうということはまだ議論が行われておりませんので、まずそれを一つ考えようと。ただし、それを考える上では、海域ごとに将来的には個別目標というのが出てくるだろう、それと整合がとれたものということを念頭に置いて検討を進めていきたいと考えています。

 それから、海域ごとの目標を考える上で何が必要か、要するに連関図をつくる上で何が足りないのかというところを少し整理して、追加調査として何が必要かということを整理しようと考えています。

 それから、その追加調査の結果が出てくる前提、あるいは出てきたと想定して海域別の個別目標をつくろうと。そこで、海域別の個別目標については区分された海域ごとに決めようと考えているんですが、海域ごとの環境特性の把握という部分が昨年度の段階ではかなり不十分な部分がございました。前回の委員会でもご指摘されたように、時系列的な、あるいは空間的な、ここでは「時空間」と書いていますけれども、そういう特性についての整理が足りないんじゃないかというご指摘を受けました。そういう検討をするために、今年度、数値シミュレーションモデルを構築して、時空間的な特性、あるいは海域と海域との関係、そういったものを検討しようと考えています。

 それから、先ほどフローのところで話しましたように、再生技術の検討までケーススタディの中でやってみたいと考えておりまして、そこでの検討として、再生技術がどのくらい効果があるのかという感度解析についても数値シミュレーションモデルを使って検討してみようと考えています。

 そのケーススタディ、どう考えているかというのが9ページの下の(6)でございます。連関図の完成のためには追加調査が全ての海域で必要になるということが昨年度の段階で見えてきました。追加調査の結果をもって連関図を完成させるのはかなり長期にわたるだろうということもありますので、ここでは、優先的に再生方策を行う必要があると考える海域を絞って、その海域について現時点での知見を集約させる、なおかつ数値シミュレーションモデルによる検討の結果をもとに、現時点での連関図を完成させようと。その上で、連関図の中で問題点と原因・要因というのが明らかになりますので、その明らかな結果をもとに生物の生息状況と生物の生息環境としての評価を行おうと。その結果をもとに、どういう方向性で再生技術を考えればいいのか、どういう方向で良くしていけばいいのかを考えようと。先ほどお話ししましたように、効果についても数値シミュレーションモデルを使って感度解析を考えています。

 ここで、数値シミュレーションモデルを考えているかを少し説明させていただきます。2.2.3の(1)考え方です。これはもう先ほどお話ししたところです。海域間の定量的な関係が今のデータだけではよくわからない、あるいは時系列なところがわからないというところをモデルで検討しようということでございます。

 モデルの概要のところですが、現在のところ、有明海というのは既にJSTでつくられたモデルがございます。通称ですけれども、JSTモデルを。それから、八代海は、文科省のプロジェクトで、生物多様性のある八代海沿岸海域環境の俯瞰型再生研究プロジェクトというものがございます。その中で構築されたモデル、これらをベースとして、底質・底生生物あるいは栄養塩や有機物、そういったものの物資収支が表現できる、検討可能なモデルをつくろうと考えています。メッシュのサイズは、今のところ有明海は500mメッシュ、八代海については450mメッシュを想定しております。そのメッシュ図については、11ページの上のほうに入れております。

 計算期間もいろいろな考え方があると思いますけれども、今回は、現況再現、どこかの年次を選ぶことになりますが1年間、現況再現をやりましょう。その中で、特に連関図をつくるに当たって必要な部分あるいは赤潮あるいは貧酸素水塊、そういったものが起こっている1年間のうちの間の数カ月を対象に感度計算を行っていこうと考えております。

感度計算につきましては、これもいろいろ今日ご意見をいただいて、また検討していきたい部分ではございますが、前のJSTの結果のほうは、楠田先生が編集された「蘇る有明海」というふうな一般成書で公開されていますけども、その中で12ページの図2.4にあるような感度計算のアウトプットの結果の例がございます。こういったものを今回参考に考えていきたいと考えております。

 それから、昨年度の小委員会の資料にも出していただきましたけれども、長崎大学では有明海の魚類についての研究を長期にわたってやられております。その結果を、昨年度はうまく連関図にちょっと組み込めなかったのですが、今年度は少し組み込んでいきたいと考えています。

それから、今後のスケジュールでございます。今日は第7回ですけれども、8回目を10月に、それから、9回目を来年の2月ごろ予定しており、内容につきましては8回でケーススタディの案、今後、何が必要かという追加調査について、それから数値シミュレーションモデルの検討の結果を反映させた環境特性の把握を第9回では、ケーススタディの最終バージョン、数値シミュレーションの結果あるいは最新の情報を反映させた連関図の最終版、それから、各海域ごとの個別目標を事務局から示しご意見をいただければと考えております。

 説明は一旦ここで切らせていただきます。

○滝川小委員会委員長 ありがとうございました。

 ただいま、海域別の再生方策の検討ということにつきまして、これまでの考え方、あるいは、今後の作業の進め方ということについて説明していただきました。

 何かご質問、ご意見のある委員、いらっしゃいませんでしょうか。よろしくご討議ください。

 山口(啓)先生、どうぞ。

○山口(啓)委員 先ほどのモデルの計算のところで、鉛直方向のレイアリングは、上層のほうが細かくというようなことがあったんですけども、その一つ前のところで、栄養塩や有機物の物質収支のこともあります。底質からの溶出とか、あるいは貧酸素が底層にできるとか、そういうことを考えた場合には、底層のほうの物質動態というのがすごく重要になってくると思うんですけれども、底層のほうは今の計画では粗いんですか。

○川岸主任研究員 粗いというよりは、有明海も八代海もレベルは違いますけれども、両方とも表層についてはかなりの知見、要するに情報、現況再現を確認するためのデータがあります。ところが、底質については、有明海・八代海、例えばこの500mメッシュ、450mメッシュで今モデルをつくろうと考えているんですが、メッシュごとの溶出速度がわかっているわけではないし、底質の性状もかなり500m、450mメッシュよりもちょっとかなり粗くなるという状況のデータでモデルをつくるということです。ですので、溶出がどのぐらいなのかというデータ、もちろん何点かのデータはございます。それをどういう形で底質に当てはめるかというような検討はもちろんやりますけれども、上層と同じように細かく底層のほうを切るというのは困難と思っています、今の話は水平方向ですね。それから、今度は鉛直的にも、やはり底質・底層付近のデータというのは数点ぐらいしかございません。ですので、鉛直的にも底層付近のところを細かくするというのはなかなか難しいと考えています。今あるデータでモデルをつくるとなると、やはり上層のほうが細かくなるのかなということで今、こう書いております。

○山口(啓)委員 その再現に使えるようなデータが少ないということはわかるんですけども、やはり底層の貧酸素化とかが問題の中の大きなところに入っていますので、そこら辺が何か反映できるようなことをちょっと検討していただけるとありがたいかなと思って、ちょっと発言させていただきました。

○川岸主任研究員 ありがとうございます。もちろん貧酸素は数点で連続観測をされていて、鉛直的にどのぐらいの高さまで貧酸素が広がっているというデータはございます。ですので、最低でもそれは再現できるようなモデルにしたいと考えています。

○山口(啓)委員 底層の大きな水塊ではなくて、底層ぎりぎりのところに有機物が分解するのが出てくることがあるので、それが結構、貧酸素化に効いているかもしれないというのだけ、もし可能であればご検討ください。

○滝川小委員会委員長 ありがとうございます。

 ほかにご質問は。

 小松先生、どうぞ。

○小松委員 以前議論されたかもしれないんですけど、7ページの図の2.1なんですが、貧酸素水塊の発生が非常に大事だということで、これに関与する要因というのを挙げられているんですけど、この要因そのものが相互に関連し合っていますよね。例えば成層状態の変化というのは、これは赤潮にも影響するし、流況の変化というのが成層状態の変化にも影響を与えるし、淡水流入量の変化というのは、やっぱり成層状況の変化に影響を与えますよね。そうすると、お互いに相互にインタラクションを持っているのに、この矢印だけピックアップして本当に原因究明を、その影響の程度を評価できるのかなと思ったんですが、その点いかがでしょうか。

○川岸主任研究員 ありがとうございます。そこは少しまだ検討中の部分がございます。この連関図で最終的に何を示すのかということに関係するのだろうと理解しています。といいますのは、この7ページの真ん中の図では、先生がおっしゃるとおり、赤潮の発生、それと気温の変化、流況の変化、成層状況の変化、これらはもちろんほとんど表裏一体みたいに密接に関係しているということは理解しています。そのときに、最終的に再生技術あるいは再生方策を考える上で、必要な情報を連関図でどうやって示そうかということを念頭に考えています。ですから、海域での現象を全てこの連関図で表現する、いや、それももちろんありだと思いますし、今日ご意見をいっぱいいただければありがたいのですが、海域の現象を説明する図面ではなくて、対策、その技術を考える上で、例えば貧酸素水塊の発生に一番寄与しているもの、この矢印の例でいきますと、赤潮の発生と成層状況の変化というところが太い矢印に、例としてですが、しています。そうすると、ほかのところの対策、あるいはほかのところに効果があるような技術を考えるよりは、この例でいきますと、赤潮の発生あるいは成層状況の変化に効果が大きい再生技術を考えるほうが効率的、有効だろうというようなことを示したいがために、こういう矢印の絵にしたいなと考えています。ですので、その連関図の中で、海域の現象を全て示すというのは、逆に何が一番寄与しているかというのが見えにくくなる、要するにかなり複雑になっているということもあるのかなと考えて、示しております。そこはいかがでしょうか。

○滝川小委員会委員長 よろしいでしょうか。

 ただいまのあれですけど、これはあくまでもexampleと言ったら変なんですが、貧酸素水塊の発生というものを一つの大きな課題と考えたらこういう図がある。もう一つ、場合によっては底質の泥化というのがございますよね。そういうものについてはどういうものが影響して、あるいはそれに対して成層の変化というのをターゲットにしたら何が影響して、そういうものを考えながら、ゴールといいますか方向性は再生対策といいますかね、再生策のほうを目的に置きながら検討していきたい、そういうご理解していただければというふうに思います。

 ほかにご質問は。

 白谷委員。

○白谷委員 小松先生のご意見に関連してなんですけども、この図、あくまでも例なんですけども、やっぱり出発点は、人為的にコントロール可能なものを出発点にしないと対策につながっていかないですよね。例えば気温の変化なんか、とてもとてもコントロールできない。流況の変化は可能かもしれない。だから、もうちょっとこう対策とつながるような図に仕上げていく必要があろうかと。例であってもですね。

○川岸主任研究員 ありがとうございます。それは、いわゆるインパクトレスポンス図みたいなほうがわかりやすいということですかね。こういう……。

○白谷委員 対策のイメージがわかるように。

○滝川小委員会委員長 ありがとうございます。

 古川委員から。

○古川委員 古川です。

 今の連関図の話が出てきて、私もこの後半の資料を拝見しているところの中で細かいところを指摘しようかと思っていたんですけれども、一つは、今ご指摘、また、滝川委員長のほうからもお話ありましたとおり、これが対策につながらなきゃいけない、白谷先生のほうのご指摘もそのとおりだと思います。今の状況で何を対策技術と選定するのかというところまで議論が進んでいないので、これをそこまで細かくやってしまうと、今度は逆に技術のほうを縛りかねない。8ページのところに作業フローとして、この海域の連関図は昨年度までで終わっていて、今年はそれをベースに来ますよということなんですけれども、恐らく個別目標が設定されて、再生技術を検討する段階で、このグラフの、ダイアグラムの中に、連関図の中に、対策というのはどういう位置づけで入ってくるのかという見直しをぜひしていただければよろしいんじゃないかと思います。ですから、ちょっとここで図2.2の作業フローでは海域別の連関図がもうこれで終わってしまいましたという形になっていますけれども、どこかでまたもう一回見直して、そういう精緻化をしていく、対策との結びつけをしていくという議論をする機会を今年度、また、来年度以降の会の中できちんと持っていただくという位置づけを明確にしていただければ、今のような心配といいますか、目こぼしがなくなるのではないかと思いましたので、コメントまで。

○川岸主任研究員 ありがとうございます。

○滝川小委員会委員長 どうも貴重なコメントありがとうございます。よろしくお願いいたします。

 では、東委員。

○東委員 2点ほど、一つはモデルについて、有明海と八代海で異なるモデルを使って感度解析なりをするということですが、それぞれのモデルによって異なる挙動が起こるような気もするので、できれば統一するなり、もしくはその両方の海域に二つそれぞれのモデルを適用するほうを考えていただいたほうがよいのではないかと思います。

 あと、対策の効果を考えるということであれば、11ページの計算期間というのを1年間というのは非常に短いと。特に底質環境の施策のほうを考えれば、1年間ではとても効果が現れるようなものではないと思うので、少なくとも5年、できれば10年ぐらいの計算スパンをとっていただいたほうが、そういう検討がしやすくなるのではないかと考えられますが、いかがでしょうか。

○川岸主任研究員 まず、モデルですが、説明が足りなかったんですが、有明海と八代海、全然違うモデルというわけではなくて、二つ今モデルがございまして、それをベースとして新しいモデルを構築するということを考えています。ですので、その中では有明海と八代海と同一のレベルでのモデルというものをつくろうと考えております。

 それから、計算期間のほうなんですが、なるべく長期にしたいというのはもちろんございますが、計算時間もございますので、その中でどのくらいやろうかというのを決めさせていただこうかと考えています。今日は1年間と話をさせていただいて、もう少し長いほうがいいんじゃないかというご指摘ですので、なるべく長目にできるところはやりたいと考えています。今すぐ10年間というので了解できるかどうかは、今後の作業時間との兼ね合いもございますので、なるべく長期でやらせていただくということでご了承いただければと思います。

○滝川小委員会委員長 ありがとうございます。

 どうぞ。

○東委員 多分、恐らく流動の計算が一番時間がかかると思うのですが、例えば流動の計算を1年で、水質・底質の計算をもうちょっと粗いグリッドで行うとか、ボックスみたいな形にして長期間の計算に対応するのであれば多分大丈夫かなとは思っています。

○滝川小委員会委員長 ありがとうございます。恐らく計算の時間等につきましても、まだ今後ご議論いただきたいと思うんですが、例えばそのときに境界条件どう考えるかということにも非常に問題が関わってくると思いますので、そういった点も含めながら、今後の再生方策、あるいはケーススタディをやる場合のことも加味して、そこのところは最終的に決まっていくのだろうというふうに思います。また、ご検討いただきたいというふうに思います。

 ほかによろしゅうございますでしょうか。細かい、細かいといいますか、具体的な再生、これまでの議論等につきまして、今後の、これからの議題になっておりますので、そちらのほうにちょっと進ませていただきたいというふうに思います。

 それでは、引き続きまして、具体的な検討の内容ということにつきまして、事務局より、また説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

○川岸主任研究員 では、13ページからの3章、これは昨年度の6回目の小委員会で出させていただいた資料をもとに、最後の33回の評価委員会に出した資料でございます。変わりましたのは、15ページで説明をいたしますと、前回は、各海域ごとに説明を書いて、連関図をということを書いていたんですが、その説明を、概況、赤潮・貧酸素水塊の発生状況、連関図の説明、それとここの海域ではどういう課題が残っているかという項目分けをしたというのと、それと、16ページの図のうち、実線で表現している部分あるいは濃い文字で表現している部分だけの図を出させていただきました。その折に、岡田委員長のほうから、何を消したか、要するに何が今なくなっているのか、あるいはこれは復活するかもしれないみたいなことを考えると、その前のもの、消したものも一応表記しておくべきではないかというご意見もあったので、薄文字で前のものを併記しています。ですので、これが全て濃くなったら平成18年の委員会報告の連関図。その中から各海域ごとに、特徴から見て今のところ確認がされたものだけを濃い文字・矢印等で表現しているというふうにご理解ください。その点が変わっただけで、中身的に大きく変わったところはございませんので、細かい海域ごとの説明は省略をさせていただきます。

 それから、今日の資料では構成上、この連関図を配置して、その後に各海域ごとの環境特性の一覧表を入れております。31ページと32ページでございます。同じように、八代海も33ページから同じような配置で説明と連関図、それから、45、46ページのほうに環境特性の整理がしてあると。そこまでは昨年度、ある程度説明をしているのではしょらせていただいて、47ページからケーススタディを説明をさせていただければと思います。昨年度、海域区分をして、その海域ごとに今ある情報での連関図をつくってみました。でも、委員会でもご指摘があったようになかなか問題が多い、課題が多い、データがないということが非常に多くございました。時系列的なところが表現できていない。あるいは隣接する海域との関係がまだわからないためになかなか線が引けない、あるいは浅海域、特に干潟域のデータが不足していることから、なかなか連関図というのができないというふうな課題が昨年度の作業で挙がってきました。これらを全て解決させてから連関図を完成というのは、かなり長期にわたると考えられます。そこで、ケーススタディとして幾つかの海域を優先的につくろうということを提案したいと思っています。どこをやるかと、生物小委のほうで、昨年度、一番最初に整理をされた水産対象種というのは、タイラギ・サルボウ・アサリの3種です。これは有明海・八代海で最も重要と考えられる水産対象種だろうと考えています。これらの主要な生息海域というのは、有明海の湾奥部、それと湾央部になります。そこで、優先的に有明海の湾奥部と湾央部を対象にケーススタディとして連関図をつくって、後々の作業をやっていこうと考えています。連関図をつくった後は、先ほどお話ししましたように、生物の生息環境としての評価をやろうと考えています。これについては、HSIモデルを活用した評価手法というのを検討していますので、今のところ底生生物の生息状況、それと環境の関係というのをこの評価手法で定量化し、その結果をもとに、どういう再生技術をやればいいのか、方向性をどうすればいいのかというのを検討しようと考えています。これは、先ほど白谷委員からご意見ございましたように、実行可能な再生技術ということを考えようと思っております。手がつけられないところに対しての再生技術は、なかなか難しいと考えていますので、実行可能なものを考えよう。その効果については、数値シミュレーションモデルで感度解析をやって、効果の確認をした上でケーススタディとしてまとめようと。これを今年度はやってみよう考えています。

 ケーススタディの海域、実際、じゃあどこにするかというのが48ページに入れております。先ほどお話ししましたように、タイラギ・サルボウの主要な生息海域、これは実はこの記号でいきますと、A2、A4、こういったところにございます。もちろんA3にも少しはございます。その中で、昨年度の作業の中で最もデータが多いところ、なおかつ貧酸素水塊が非常に発生すると言われているところ、そういうところも加味して、今回、ケーススタディ海域の一つとしては、A4、48ページに色をつけていますが、この海域を一応ケーススタディの海域として一つ取り上げようと考えています。

 その中で、連関図をどのように見直していくかという例を50ページのほうに入れております。ここでは、底質の泥化という事象に関する連関図の部分を抜き出して、図4.2として入れております。この矢印を一つずつ、先ほどお話ししましたように相対的に比較をして、どちらが大きいというものを見ていこうということを各事象についてやっていこうと考えています。ここで、この連関図の中で、例えば50ページの図でいきますと左の上から「減少」、「泥化」、「増加」こういった変化を表す言葉がございます。これをどう定義するのかということを確認させていただく、あるいはご意見をいただければありがたいと思っているんですが、前に出しました委員会報告では、「1970年代からの長期的な変化」というものに対してどうなのかということで連関図をつくりました。その中で、前回の委員会でもご指摘ありましたように、そのタイムラグ、あるいはその影響が出てくるレスポンスとして表れるまでに時間があるもの、かからないものが全部一緒の図になっているというご指摘がございました。それは承知の上で前回つくりましたので、今年度はそこは少し工夫をしたいと思っていますが、ベースとしては、やはり1970年代から、要するに長期にわたる変化に対してどうなのか、あるいは長期的な変化がどうなのかという観点で連関図を見直していきたいと考えています。ただ、当たり前ですが、過去のデータがなくて、70年代から見られないところというものについては現地調査結果、あるいは先ほど話しましたような数値シミュレーションモデル、そういったものを活用して、なるべく長期的な変化というのを確認しようと考えています。

 ちなみに、図4.2につけている番号について、全部ばらばらにしますと、51ページの表のように全部で14個の関係を表しております。これらを少し細かく見ていこうと思っています。

 その一部、作業の途中ですが、経過を今から少し説明をしたいと思います。底質の泥化、先ほどの図のちょうど真ん中に書いてあった問題点ですが、前回の委員会報告では51ページの下のようなコメントが書かれております。有明海湾奥部において底質が泥化傾向にあると思われるが、その要因の一つとして、上述のア)――これはちょっと省略させていただきましたが、潮流速の減少が考えられるというふうなことが書かれています。その根拠としては、1956年から57年、97年、2001年、こういったものの底質の比較、あるいは89年と2000年の調査結果の比較というものが一応根拠として挙げられています。

 その図面が52ページのほうにあります。これは転載しております。上のほうが環境省の調査結果で3年分、それから、下のほうも同じように、底質の変化です。図4.4、これは、データは佐賀県さんのデータなんですけれども、89年と2000年に調査をやられて、これはMdφで表された中央粒径値なんですけれども、7の部分、要するに細かい部分が、赤の部分が89年より2000年のほうが広がっているという結果をこのとき発表されて、それを使って委員会報告はつくられています。その後、佐賀県さん、あるいは環境省では、これらの同じ地点で同じ方法で調査をずっと行っています。

 その結果を次の53ページのほうに示しております。53ページ、上のほうは、先ほどの89年と2000年の違いの差の部分を色分けして示したものです。各地点の黒丸は調査が行われた地点です。そうしますと、差分を表していますので、図4.5の左側の図、中央粒径のMdφですと、大きくなると細粒化、小さくなると粗粒化ですので、赤くなっているところは細粒化していると、青くなっているところは粗粒化しているところということで、中央粒径の変化からいくと細粒化が進んでいる、要するに泥化が進んでいる。右側の粘土シルトの含有率、これをやはり89年と2000年と比較すると、パーセンテージ、要するに粘土シルトのほうが増えると細粒化だろうということで赤色を塗っていますが、これもやはり赤の部分がどちらかというと広そうに見えるということで、89年から2000年の間は、細粒化、泥化が進んだろうという委員会報告では結論を出しています。その後、2009年にもう一度、同じ地点で調査をやっています。その結果のほうが図4.6、下の図でございます。上と同じような表現をしています。そうすると、2000年から2009年の間では、中央粒径(Mdφ)の変化を見ると、どちらかというと粗粒化、要するに青い部分が多く見えます。それから、粘土シルトの含有率を見ますと、やはり青いほうが多い、粗粒化のほうがちょっと多いかなというふうに見えます。

 それをもう少し細かく見ますと、54ページのほうに、途中の、2000年と2009年だけではなくて2005年、それと2010年のデータもございますので、それも加味して整理をしました。ここでちょっと説明が飛びましたけれども、スタートは「底質の泥化」という言葉だったんですが、ここでは「底質の細粒化」という言葉で整理・検討をしています。といいますのは、50ページに戻っていただくと、「底質の泥化」という問題点と、もう一つ、「底質中の有機物・硫化物の増加」という、前回の連関図には両方の言葉を一応入れております。そこで、底質の泥化というのは、有機物がたまって、もうもちろん泥化という現象になるんですけれども、ここでは一応二つ分かれているということもあるので、ここでは「細粒化」と読み替えて整理をしています。

 ということで、54ページにお戻りください。そうしますと、細粒化というのは、定義がございませんので、中央粒径が細かくなるのか、あるいは粘土シルト分の比率、重量パーセントになりますけれども、それが増えるのか。あるいは粒径加積曲線を比較したときに、全体的に重ならずに、向かって左のほう、要するに細かい方向に加積曲線がずれる、それを細粒化、いろんな多分、細粒化があると思います。中央粒径が細かくなった場合、粘土シルトが増えた場合、あるいは粒径加積曲線を書いたときに、それが全体的に小さい側に移動する、そういった評価をおのおのにやったときにどうなるかというものを、これも、環境省で検討されているので、その結果を図4.7に示しています。そうしますと、凡例は上のほうに書いておりますが、左側の図面では、赤のところは細かくなる、細粒化、あるいは青のところは粗粒化、あるいはグレーのところは判別ができなかったと。それから、今言ったように中央粒径、粘土シルト分、粒径加積曲線、そういったもので区別しますので、どれかは細粒化、どれかは違うというのがもちろんやっぱり出てきます。ですので、そういう意味でどちらでもないというふうなマークをつけています。これを見ていただくと、我々の見方では粗粒化が進んでいるというふうに見えます。これは2000年から2005年の5年間、それから、2000年から2009年の9年間でもそう。2000年から2010年でも、やはりどちらかというと粗粒化が進んでいるというふうに見えます。

 もう一つ、粒度組成の分析の方法が若干違うということも、昔と今と違うということもあるんですが、非常に細かいですし、ここでは7.8μmと設定したんですが、これよりも小さい粒子の含有率がどうなっているのかというのも確認をしました。そうしますと、やはりこれで見ても、どちらかというと粗粒化に進んでいるのかなと見えました。それをもとに56ページのような一覧表を、これはまだ作業中の部分ではあるんですけれども。こういったふうに、定量的というところはなかなか難しいんですが、相対的な変化傾向を、中央粒径のコンターがどう変わるのか、あるいは粘土シルトの含有率がどう変わるのか、あるいはMdφの値がどう変わるか、あるいは粒径加積曲線がどう変化するのかを、パターンとして分けてみますと、図4.9のような形になって、今のところ、それをまとめると、過去は粗粒化の部分もあったし、細粒化の部分もあったし、また現在も粗粒化だったり、細粒化だったりという結果が出ているということで、どうも一様に一定方向、要するに粗粒化・細粒化の方向にずっと今後とも進む、あるいは今まで進んできているというわけではなさそうだというところが今見えてきています。今後の作業としては、この粒径がどうやって変化するのかという機構、この変化の原因・要因を整理した上で、先ほど50ページに示した連関図を見直して、次回、お知らせしたいと考えています。これは検討の例ですが、そういうことを今やっていて、今後進めていきたいと考えているところです。

 今のは連関図に描かれている内容の再確認でございましたが、昨年度整理をした中で海域の環境特性を把握する中で、やはり課題が上がってきていました。その課題をどうやって整理するかという例を57ページから入れています。これも、もちろん作業の途中で今後、作業を進めていく部分ですけれども、有明海はA8まで区分しております。水質のデータを使ってクラスター分析をやって、こういう区分ができますという話をさせていただきました。各区分ごとにどういう特徴があるかというのを整理すると、どうも海域ごとに非常に特徴が違うということが明瞭に見えてきたというところまで説明をしたと思います。それは59ページのグラフを見ていただければおわかりいただけるかと思うんですが、各海域ごとの、左上から水温、横に行きます、塩分、透明度、下にいって、DO、COD、DINを整理しているんですが、水温等で少し重なる部分は出てくるんですけれども、ほかのグラフ、特に栄養塩、グラフを見ていただくとおわかりのように、各海域ごとに重なる部分がない、要するに変化の傾向が一緒でも絶対値のレベルが違うというふうな傾向がよく見えると考えています。これは各海域ごとに栄養塩の濃度が、変化の傾向は一緒でもレベルが違うということなんだろうと思います。それを、60ページにあるような平均流の分布、これはもちろん数値シミュレーションの計算結果の絵でございます。それから、同じように61ページにあるような、これも数値シミュレーションの結果ですけれども、平均流の分布、こういったもの等を勘案してみると、栄養塩が入ってくる流入点、もちろんたくさんあるんですが、最大の流入点は筑後川でございます。ですので、海域としてはA1のところから入ってくるというふうに仮定をすると、62ページのような矢印に沿って栄養塩が移流、拡散していっているという辺まで整理がついているということです。これを今後、新しくつくるモデルでもう一度確認をして、この矢印がいつ、どのくらい、どうなのかというふうなものを明らかにして、A1から入ってきたものがどのくらいかかってA6に到達するのか、A8に到達するのか、みたいなところをモデルで検討していきたいと考えています。

 それから、ケーススタディ海域、もう一つの有明海湾央部については、63ページに書いておりますように、A5という海域をケーススタディ海域の2番目として取り上げようと考えています。ここはアサリの主要な生息海域となっておりますので、そういう意味でも取り上げようと考えています。ただ、A5は、先ほど話しましたA4よりはデータがかなり少ないです。ですので、数値シミュレーションの結果、散発的なモニタリング、そういったデータをもとに連関図を見直すという作業を今後やっていこうと思っています。

 以上がケーススタディの検討の部分でございます。

 それから、昨年度、この小委員会のご指摘に対応した形で現地調査を幾つかやりました。その結果、これは2年間のうちの1年目のデータなので、中間報告ということでお聞きいただければと思うんですが、一つは、ノリひびが入る秋から春までの期間では、やはりかなりの数ひびが入りますので、流速が遅くなるだろうと。そうすると、底質の自重圧密の速度も変わるのではないかというご指摘があって、それを確認してみようということで、67ページにありますように、ノリひびの中の代表地点として六角川の観測塔のすぐ横、それから、ノリひびが入っていない地点の代表として地点の13で、泥の中に20cmほど埋めたところに板を置きまして、その板の上にどれくらい物がたまっていくかという調査をしました。結果は、68ページにまとめております。ここでは板のことを埋没測定板と呼んでいますけれども、埋没測定板の上にたまった泥をコア抜きしてきまして、層切りをして、各層の含水比を春、夏、秋、冬と年4回、昨年度行いました。そうすると、六角川観測塔では、春のデータは6月ですので黒のラインです。それから、夏、秋、冬に、その3回というのは、表層の含水比というのは非常に高くなったということがご覧いただけるかと思います。ただ、ここはグラフにも入れておりますように、貝殻片がかなり昨年度は多かったです。貝殻片という文字に、各色別の矢印をつけていますが、この色は調査結果の色、グラフの色と対応しています。そうしますと、平成25年6月のデータ、六角川観測塔ですと、含水比が低くて、ほかの3回が高いと、結果的にはそういう結果になっているんですが、貝殻片のまざっている状況を見ますと、春はもう表面まで貝殻片がいっぱい入っていると。それから、その後、青い8月、それから、黄色の10月、黄緑の1月というところにいくと貝殻片が少し減ってきて、その分、貝殻片がなくなったところから上層が非常に含水比が高いというふうな結果で、ノリひびの影響はこういう調査結果からはなかなか難しいな、もちろん時間も短いし、こういう混雑物があると見づらいなということは言えたかなと思っています。同じことは、同じ期間にやったノリひびのない地点の地点13をご覧いただくとおわかりのように、これもやはり貝殻片の影響がかなり大きくて、それより上層の部分というのが含水比が低くなるということがあるし、年間を通じてほとんど変わらないというわけではなくて、各グラフの一番表層の値を見ていただければおわかりのように、貝殻片がないときでも、かなり200を切ったり、あるいは350を超えたりというふうに変動しているというような結果でございました。これからいくと、どうも夏と冬と比較をしたところ、1年ぐらいでは圧密が進行していっているのかどうかというものの確認がなかなか難しいなと考えています。1年間ではなくて、長期にわたってモニタリングをしていくことが必要なのかなと考えています。

 それから、もう一つ、指摘の対応として、内部潮汐が成層化にかなり関係しているのではないかとご指摘がございました。これは最終的に数値シミュレーションモデルでどのくらい成層に影響しているのかということを検討していくことを考えているんですが、そのためのデータをということで、昨年度からデータをとっています。地点は69ページにあります4地点でデータをとっております。その中で各地点ごとに確認をしていきますと、S-3、あるいはSt.F、St.B6みたいなところで、2周期あるいは半日周期の内部潮汐流が確認がされました。これは、昨年度1回のデータですので、今年度もデータをとっていく、あるいはモデルに入れて、これがうまく再現できるかどうかを作業としてやっていきたいと思っています。

 長くなりましたが、説明は以上です。

○滝川小委員会委員長 ありがとうございました。

 ただいま、海域区分ごとの連関図と、その課題の整理、さらにはケーススタディ地区を設けてということで、一つのexample、案を示していただきました。それと現地調査結果ということで、埋没板、測定上の底泥の圧密状況及び内部潮汐の発生状況ということについての説明をしていただきました。

 まず、最初のほうに3番目と4番目、海域区分ごとの連関図と、その課題あるいはケーススタディということの点について、各委員のほうからご意見等あればいただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。

 白谷委員。

○白谷委員 ケーススタディの、50ページからの部分なんですけども、一応、泥化に関する連関図で、これで大体オーケーという状態とすれば、この2000年以降の粗粒化、細粒化ではなく粗粒化ですよね、ということになると、特に先ほど泥化じゃなくて粗粒化ということであれば、粒径が小さくなっている。一応、有機物は除いて考えるということだとすると、この4.2の図を見ると、粗粒化の要因って、河川を通じた陸域からの土砂供給が増えた、または潮汐が大きくなった、この二つしか考えられなくなるんですよね。今までさんざんこういった単純な議論がされてきたんですよね、細粒化、細粒化、2000年までは、それ以降、細粒化していると。果たしてそうなのかという疑問が、やっぱり今回出てきますね。ちょっとその辺のお考えを聞かせていただきたい。

○川岸主任研究員 50ページに書いてある連関図で、今、ここでは例として底質の泥化を取り上げて説明をしました。今、白谷委員からお話があったように、ここを逆に、じゃあ底質の2000年以降の連関図とこれをすると、底質の粗粒化という言葉にしたときに、この連関図で成立するかというと、多分、成立しないと思います。多分、この両側に書いてある関連する事象が足りないということだと思っています。新たな枠が必要なんだろうと。それは連関図の図自体の再チェックということだろうと思っています。ですので、先ほど説明ちょっとはしょっちゃいましたが、51ページの表にあるような関係だけではなくて、もっとほかの関係が多分増えていって、あるいは今あるものが、もうこれはほとんど関係ないって消せるというふうなところが出てくるんじゃなかろうかと思っています。ただ、これは先ほどお話ししましたように、今のところの結論というか考えでは、細かくなっていく一方でもないし、粗くなっていく一方でもない。ですので、底質の粒径の変化というのをここで取り上げなきゃいけないかということも多分出てくるんだろうと思っています。50ページの下にあるように「底質中の有機物、硫化物が増加」もデータをもとに同じような見方をして見直しをしていく、全ての海域を同レベルでやっていくのはなかなか難しいな、だから、そこは課題かなと思っていたんですけども、ですので、そういう意味でもケーススタディとして2海域ほど少し細かく詰めていってはどうかということで、今日、ケーススタディの案を出させてもらっています。

○白谷委員 多分そうだと思うんです。例えば53ページの図を見ると、89年から2000年までは細粒化している部分と粗粒化している部分があるわけですけども、それが今度は2000年から2009年の間では、それが逆になっていますよね。だから、こういった長期的な動きが、湾の中の動きがあるんだと思うんです。それに関わる、個々の分析としては、先ほど東委員から話がありましたように、1年間の計算ではやっぱりなかなか説明できなくなって、これが、じゃあ何年やれば全体の周期的な動きが出てくるのかというと、なかなかわからないところなんですけども、だから、そういったシミュレーションのやり方の限界、シミュレーションの限界、そういったものを踏まえた分析というのは今後やっぱり必要になってくるのかなというふうに思います。

○滝川小委員会委員長 ありがとうございます。

 ほかに。小松先生、よろしいですか。

○小松委員 2点、お願いします。この底泥の細粒化・粗粒化の話と、1989年から2000年の間の差と、それから、2000年以降で差をとられているんですけどね。大きな人工改変があったのは1997なので、1989年から例えば2005年とか2010年でしたかね、この差をとっていただけるとよくわかるなという気がするんですけどね。というのは、1989から2000年までのこの差のとり方と、それから、2000年以降の差のとり方がちょっと違うので、量的にどうなのかというのがよくわからないんですよ。どういうことかというと、1989年から、じゃあ今までの間の変化はどうなのかと。

○川岸主任研究員 もう少し作業が残っていて、途中結果ですがということで、56ページに今の時点での結果の表を入れています。そうしますと、細粒化をどう定義するかをもちろんやるんですが、1番から4番のような見方をしたときに、地点の数あるいはコンターの面積等を比較すると、これを、データがとられたところに今、黒丸が入っています。その黒丸を除いて、今、先生のご指摘は、例えば①番のMdφ=7のコンターというラインです説明すると、89年の黒丸から2010年のH20のところまで1本の矢印で評価すると、どういう色になるんだ、そういうご質問という理解でいいですか。

○小松委員 はい。

○川岸主任研究員 わかりました。もう少し検討を加えて完成させるときには、いろんなパターンでの矢印がどうなるかという整理できると思います。

○小松委員 それから、もう一点、例えば57ページの図の4.10で、領域をこう区分した図が描かれていますよね。例えばA4とA7の間が空白になっています。実は、ここら辺ってすごい大事なんですよね。A4とA7のつながりの領域というのはすごく大事なので、何かこういうブランクができていると、何となく違和感を感じるんですけどね。

○川岸主任研究員 申し訳ございません。A6とA7というのは、このクラスター解析をやったときにデータが同じレベルでそろわなかったので今入れていないんです。それを入れて、最終的に見直していく作業を進めて空白がないような形で示します。

○滝川小委員会委員長 ほかによろしいですか。

 松野先生、どうぞ。

○松野委員 この連関図がもともと有明海全体で、その環境変化に対して関係しそうないろいろ要素とかプロセスを組み入れて、全体的な、いわゆる連関図をつくったものなんですけれども、それが細かく海域を分けて見ていくことによって、ようやく何がわかっていないのかということが、何を調べればいいのかというのがわかってきたところかなと思うんですけれども、そういう段階で、それぞれの海域で、例えばこのケーススタディを行ったときに、ここで上がってくる項目というのは、有明海全体で見たときに関係しそうなものを挙げていて、細かい海域ごとに見たときに、この海域にはこれは関係ないだろうということはもちろん出てくると思います。有明海全体で見たときには、もともと入っていなかったものというのが、海域ごとに見たときには重要になってくることもあって、特に先ほど白谷委員からは、粗粒化の場合に、河川からの流入と潮流の変化しかないじゃないかというご指摘があったんですけど、それは恐らく有明海全体で見た連関図から持ってきた要素なのでそうなるんだと思います。実際に海域ごとに分けてみると、その粒子懸濁物の移流、懸濁物だけじゃないですけども、隣の海域から入ってくるものというのが非常に重要なわけで、だから河川からは変化しなくても、海の中の水の動きが少し変わっていれば、それは隣の、粗粒化したりとか、細粒化したりというのは、先ほどの分布図で見られたように、粗くなっているところと細かくなっているところがあるわけですね。ですから、その違いというのは、領域を分けて考える場合には、それを入れておかないと、海域ごとの評価には結びつかないように思います。それでは、1年でいいかという話がありましたけれども、それは1年じゃなくてもっと長い時間変化をという意味だったかもしれませんが、逆にもっと短い時間で動いている可能性のほうがはるかに高いですね。特に土砂の粗粒化・細粒化に関しては、一発、台風が来れば変わっちゃうわけですから、そういうことを含めて、時間スケールも、それから空間スケールというか、隣との関係も、何によってそこの環境が維持あるいは変化しているかということを把握するために、これから何を調べればいいかということが見えてきたのかなという感じはいたします。

○川岸主任研究員 ありがとうございます。おっしゃるとおり、連関図の中に隣接する海域からの影響をどういう形で入れ込むか、そのタイムスケール、これは昨年度からの宿題と考えているんですが、今日、底質の泥化の作業を挙げたのは、5年とか10年、要するにそれぐらいのオーダーで変化があるよという話がしたくて例示したつもりなんですけれども、それ以外に、先生から今ご指摘があったように非常に短いタイムスケールも全部ここに入れるのは、連関図のレイアウトを見直したいと思います。

○滝川小委員会委員長 ありがとうございます。図の4.2のところの概念のお話を指摘していただいているというふうに理解していますが、例えば図の4.2の中は、これはタイムスケールが書いていない図になっているわけです。今ご指摘あったように、単年度で見るのか、5年スパン、10年スパンで見るのかということで、この中にクローズアップされてくるところ、あるいはこれに足らないところというのは、きっと今一緒になって出てきております。多分、この左側の欄のところに、その他ということが多分あって、その他の影響が時間的にどういうふうに影響し合っているか、そういう概念を持ち込むべきだというご指摘いただいたというふうに、そこについても今後、各委員の方々から考え方あるいは整理の仕方というのをご指示いただければ、ご指導いただければ非常にありがたいのかなというふうに思っています。あくまでもこれは一つ、あくまでもと言ったら語弊がありますが、一つの例として示していただいておりますので、今後のまとめ方、非常に重要な点だと思いますので、ぜひ今後ともご指導いただければというふうに思っています。よろしくお願いしたいというふうに思います。

 ちょっとそれで確認なんですが、例えば図の4.3あるいは図の4.4という過去の環境省の評価委員会の報告で描かれている、この泥質の分布図というのは、これは中央粒径値で書かれたものなのですね。そのときに、今日ご説明いただいた56ページのところを見ますと、要するに中央粒径で議論した場合と、中央粒径以外のシルト粘土の含有量といいますか、そういったものと多少ニュアンスといいますか、中身が変わってくる。そこについての、この図の4.3、4.4に描かれているときの時代のシルト粘土の含有率みたいなものは計測されてあるんですか、ないんですか。

○川岸主任研究員 基本的に、89年以降は粒径加積曲線がございますので、粘土シルトの含有率、重量パーセントを出すことは可能です。

○滝川小委員会委員長 わかりました。そういったことも含めて、底質の環境をどう評価していくのかというのを、考え方もいろいろあると思いますので、そういった整理も含めて、いろいろご意見いただきたいというふうに思います。

 ほかに、この点に、橋本先生、どうぞ。

○橋本委員 底質の変化というか、そういった議論と関連するんですが、河川の場合に、底質の変化を議論するときは、同時に底面の高さが増えた、堆積したとか、侵食したとかですね、それが連立方程式になっているんですね、シミュレーションする場合はですね。これも将来シミュレーションとか、そういうのをされると思うんですが、先ほどの底質の変化を議論するときに、海底面は同時に増えたのか減ったのか、侵食されたのか堆積したのかとか、そういう議論はされているのでしょうか。

○川岸主任研究員 データは幾つかございますので、先ほどお話ししましたように、粒径変化というのがどういう仕組みで起きているのかというのを今から整理をしていく中で、そこの地点が堆積傾向にあるのか、要するに物が集まってくるような傾向にあるのか、あるいは侵食傾向にあるのか、この期間はどうだったのかという整理はしていこうと思っております。

○滝川小委員会委員長 ほかにございませんでしょうか。

○青野委員 生物小委員会の委員長をやっています青野と申します。

 私どもは、やはりサルボウ、アサリ、タイラギと、生物特性あるいは漁獲上の資源の動向といったことを視点に調べておるわけですけれども、なかなかこういう、例えば底質の長期間の変化とか、そういったものが観測データが少ないということで、非常に生物の資源、水産資源と環境のこういった変化、長期的な変化を重ね合わせると非常におもしろい結果になるかと思いますので、ぜひ、もちろん連携してやっておりますけども、なるべくこれからもより情報交換を密にしてやっていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

○滝川小委員会委員長 生物小委と海域再生の連携というのは、非常に前からも重要な関係だというふうなことで、今後ともご協力よろしくお願いいたしたいと。ありがとうございます。

 ほかにご意見はございませんでしょうか。

 それでしたら、残りの項目で、現地調査結果による課題の確認ということで二つございました。これに関しまして、ご質問、ご意見あればと思いますが、いかがでございましょうか。

○白谷委員 前半の圧密の話なんですけど、これ説明にもありましたように、こういったものを長期的にノリの養殖が始まって40、50年ですか、その間に徐々に進行したもので、これを1年の間で一定の傾向を見ようというのは、調査からなかなか難しいことかと思います。ここの図の5.2ですか、これにありましたように、やっぱり先ほど松野委員からの指摘もありましたけども、こうやって表層は動いている、短期的に動いている。短期的に動いているものと、また長期的な傾向と、両方見なきゃいけないんですね。この調査方法としてちょっと、果たして成果が出るかどうか。2年間やったから一定の傾向が出るか、ちょっと疑問ではありますね。やっぱり基本は長期的な傾向を見るとすれば、コアを抜いて、そして、数十年間の生物的な状態、科学的な状態、物理的な状態、そういったものを見ていくというのが普通の方法じゃないかというふうに思います。ちょっとやり方についてはまた、またというか、今までやり方、相談を受けたことはないんですが、ちょっと相談したいと思います。

○滝川小委員会委員長 今後ともよろしくご指導をお願いいたします。ほかの、例えば機関でも、今おっしゃったようなコアサンプルをとられている例もございますので、また、そういったデータも入手、ご協力いただきながらご指導いただければと思います。

 ほかにございませんでしょうか。もう一点、内部潮汐についてのご報告もございましたが、松野先生、いかがでございましょうか。よろしいですか。

○松野委員 詳しい内容についてはあまり説明されていなかったので、特にコメントはないんですけれども、これで見ると、St.FというのとB6というところに1日周期の内部潮汐が非常に顕著に出ている。特に小潮のところで出ているということで、諫早湾口のところで起こっている内部潮汐がやっぱりあるという結果かなというふうに思います。実際それがもうちょっとS-3のほうに影響がどの程度あるのかという点ですが、あるのはありますが、それほど大きくないですね。今年どういうところで調査される予定か、その予定は示されませんでしたが、その諫早湾口で起こっている内部潮汐がどのぐらいまで広がっているのかというのがわかってくると、数値モデル等の対応が非常にいいのではないかという気がします。

 以上です。

○滝川小委員会委員長 ありがとうございます。また、今後の調査も、これは継続されるのでしょうか。ぜひアドバイスいただきながら、調べていただきたいというふうに思います。よろしくお願いいたします。

 ほかにございませんでしょうか。

○川岸主任研究員 今回の小委員会で、ケーススタディの海域については、皆様に了承していただいたということで、A4とA5の海域をケーススタディとして今後作業を進めていくということでよろしいでしょうか。

○滝川小委員会委員長 はい、ご了解いただいているというふうに判断いたしております。

 それでは、今後のこの小委員会につきましては、本日、たくさんのご意見もいただきました。それを踏まえまして、今回、確認していただきました内容で作業を進めさせていただきたいというふうに思います。よろしくお願いいたします。

 また、各委員の方々あるいは関係の省庁、各都道府県の皆様には、検討作業に必要な今後の情報ということについてのご提供も引き続きお願いいたしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、時間も来ておりますが、今日の議題の2番目です。農林水産省からの報告ということで、農林水産省のほうから、諫早湾干拓事業の潮受堤防の排水門の開門に伴う環境変化を把握するための調査結果の概要というのがお手元に資料があるかと思います。それについてご報告があるということでございます。諫早開門調査ということにつきましては、本小委員会とは直接関係するものではございませんけれども、調査によって得られるデータというのは、今後の有明海の環境特性を把握するという上で非常に有用なものがたくさんあるというふうに思っております。今回ご報告をいただくことにしておりますが、そういった貴重な情報の提供ということをお願いしたところでございます。

 それでは、農村振興局の豊調査官のほうからご説明していただきたいと思います。豊調査官、よろしくお願いいたします。

○豊調査官 農林水産省の農村振興局の豊でございます。本日はよろしくお願いいたします。

 今、パワーポイントまたはお手元の資料3の表紙が出ておりますけれども、この調査でございますが、ちょっと長い名前がついておりますけれども、潮受堤防の排水門の開門に伴う環境変化を把握するための調査ということでございます。開門前の有明海、諫早湾の潮位・潮流あるいは水質とか生物生態系、漁業生産などの状況を事前に把握する必要があるということで、昨年の7月8日に総合調査評価委員会で、この開門に伴う環境変化を把握するための調査計画、こちらをご説明させていただいたものでございますけれども、それに沿って調査をいたしました。本日は、この平成24年12月から平成25年12月まで約13カ月にわたります調査結果についてご説明をさせていただきたいと存じます。

 お手元に、この調査概要のポイントということで12ページになりますA3判の資料、それから、委員の先生方には、ちょっとA4の縦判でツーアップで非常に字が小さくなっておりますが、180ページ近くの調査結果の概要というものをお渡しさせていただいておりますけれども、今日は調査結果の概要のポイントということで、その中から抽出したものでご説明をさせていただきたいと存じます。

 なお、開門につきましては、昨年の25年12月20日が開門期限でございました。本来であれば、そのときでもう事前調査は終わり、事後調査、直後調査、そういったものに入っている段階でございますが、地元の理解が得られず、対策工事に着手できなかったこと、並びに昨年の11月12日に開門差し止めの仮処分というのが出まして、現在でも開門ができていないという状況にあるというところでございます。

 それでは、1ページでございますけれども、お開きいただきまして、ちょっと情報がたくさん入っておりますけれども、1ページをご覧いただきたいと存じます。左側のページにつきましては、調査の目的、それから内容、それから調査地点というものについて示させていただいております。これが1ページの左上のところでございます。今回の調査の目的ということでございますけれども、これは開門に伴う有明海等の環境変化の把握ということで、調査の区分といたしましては、左側にございますけど、(2)事前調査というものに位置づけられているというところでございます。調査内容、こちらのパワーポイントを見ますと右側にございますように、調査内容、(3)の表のとおりということでございます。今日は、主に水域の調査項目、これについてご報告をさせていただきたいと思いますが、陸域並びに諫早湾内の一部の調査、項目を挙げてありますけれども、ちょっと地元に入れないこともあって、データが取得できていないものもあるということを、恐れ入りますが、ご了解いただきたいと存じます。

 それから、次のお手元の資料では左下のことになりますが、水域の主な調査地点と調査項目は、この図のとおりということでございます。いろんなところで、例えば海域環境に関する調査は、潮位・潮流25地点、水質58点、底質50地点と、いろいろ地点で調査し出しておりますけれども、本日は時間もございますので、代表的な例といたしまして、調整池内のB1地点、それから、諫早湾の中央部のB3地点、それから、有明海中央部、真ん中に島原半島の北東ぐらいにS29地点、それから、有明海湾奥部、佐賀のステーション4――Stn4というところを主に説明をさせていただきたいと存じます。

 1ページの右上でございます。排水門からの排水状況でございますが、こちらの排水量につきまして、グラフのとおりでございます。トータル13カ月で3億4,000万t近くの排水量が諫早湾の調整池から諫早湾、有明海に出ているということです。排水回数、トータル180回あまり、南北それぞれ90回程度となっておりますが、月別の排水量、これで申しますと、8月の下旬から9月に大分大きな約500mmの雨が降ったという関係で、6,200万tという大きな排水量になったということでございます。

 それから、右下のページになりますけれども、これは調査期間中の各月に実施した調査項目でございます。25年12月までのデータで整理しているということでございます。

 恐れ入ります、2ページ目でございますけれども、2ページ目、左上は気象でございます。気象については、代表例といたしまして、農水省が直轄で設置いたします湯江観測所のデータ、諫早湾干拓調整池のすぐ脇でございますけれども、そちらを示しております。8月下旬から9月下旬に対して大きな降雨があったということでございます。それから、下のほうに風速がございますが、日平均の風速が2から4mということになっているということでございます。

 左下のページでございます。調整池内の水位でございます。調整池内の水位は、通常-1.2から-1.0mということで管理をいたしております。降雨の際に月に1から2回程度、-1mというものを上回るということでございます。最高水位は、先ほどの排水量がピークとなった月と一緒、9月1日でELが-0.26mという形になっております。404mmの降雨がありまして、小潮と重なりまして排水を一時的に大量に出せなかったということで、一時的に調整池の水位が上昇しているということです。

 それから、右上のページでございますけれども、冬季の流向別の流出頻度でございます。表層、底層が、左側が表層、右側が底層となっておりますけれども、概ね同様な動態ということでございます。Stn6、筑後川の下流のほうを除きますと、各地点の流れの向きは概ね湾軸方向ということでなっております。

 右下、これは夏季でございますけれども、こちらも湾軸方向という形になっております。

 3ページ目でございますけれども、水質でございます。水質も同様の4地点でございます。特徴的なことだけ述べさせてもらいますと、調整池内のB1でございます。3段目のSS、これが5月と7月に高くなっている。右側、上から2番目のクロロフィルa、2月から6月ぐらいまでに高くなっている。T-Nが2月と7月、それから、T-Pが7月に高くなっているということが挙げられるかと思います。

 左下のB3でございますけれども、こちらは7月、8月に塩分、クロロフィルa、T-Nが表層、底層で乖離をしているというのが若干見受けられるのかなというところでございます。

 それから、右上の有明海中央部のS29でございますが、特に夏季に水温、塩分、DO、COD、クロロフィルaに表層と低層でデータに乖離が見られるというところがあります。

 それから、右下の有明海湾奥部のStn4でございますけれども、塩分が7月に大きく表層で下がっているところがある。SSが2月に高くなっているほか、年間を通じて表層、底層に乖離が見られると。それから、特に夏季にDO、COD、クロロフィルa、T-Nに表層、底層でちょっと乖離が見られるということなどが挙げられるかと存じます。

 4ページでございますけれども、4ページは赤潮の発生状況でございます。赤潮は25年1月、12月まで断続的に年間を通じて発生を確認されておりますが、今、パワーポイントに示しております左上の図、25年2月でございますけれども、佐賀県及び福岡県沖でノリの色落ちの原因となっておりますユーカンピア(Eucampia)というものが発生しているという状況でございます。

 また、左下のシャットネラでございますが、25年8月は、左下、シャットネラというものが増殖しているということです。

 また、右上図のシャットネラ以外のもの、こちらの図のように確認をされているということです。

 また、貧酸素でございますが、右下の図のとおり、酸素飽和度の低い青色または水色部分、こちらのほうが有明海湾奥部と諫早湾において、それぞれ別々に発生した状況が見られるということでございます。

 5ページでございます。底質について整理をしております。こちらも同様の4地点でございますが、底質については、調整池、それから諫早湾湾央部、有明海のStn4においては、いずれにおいてもシルト質が主体ということになっております。地点により砂・粘土の割合がいろいろ変わりますけれども、逆に有明海の中央部のS29、こちらについては砂が80%以上占めているという状況です。強熱減量、硫化物、T-N、T-Pは季別の変動は少ないということですが、有明海の湾奥部のStn4のこの硫化物が他地点より少し高い傾向が見られるのかなというところが特徴的なところかと思います。

 6ページでございますが、水生生物のうちの植物プランクトンでございます。植物プランクトンについては、調整池の中では、汽水性の珪藻鋼でありますSkeletonema subsalsum、諫早湾央部・有明海では海水性の珪藻鋼であるスケルトネマ属というものが主な種になっているというところです。

 細胞数は、調整池のB1では、5月に最大15万6,000細胞/mLとなっております。残りの三つの海域では、最大で5,000から1万細胞という形になっております。

 7ページでございますが、7ページは、動物プランクトンという形になります。動物プランクトンでは、調整池で淡水性のワムシ、諫早湾及び有明海ではノープリウス、コペポダイト幼生(Microsetella))などが主な種という形になっております。

 同様に、細胞数につきましては、調整池のB1地点で25年3月に387万個体/m3という形になっておりますけれども、海域では最大20万から50万という形になっているというところでございます。

 8ページをご覧いただきたいと存じます。魚卵ですね、こちらについて整理をさせていただいております。魚卵につきましては、調整池の中ではエツの魚卵のみが確認をされております。諫早湾と、それから残りの有明海というところにつきましては、主にザッパ、カタクチイワシといったところの魚卵が確認をされているというところでございます。なお、魚卵個数は、有明海中央部のS29で5月に1万個という形で最大となっているというところでございます。

 恐れ入ります、次の9ページをおあけください。9ページにつきましては、水生生物の稚仔魚、これについて整理をいたしております。稚仔魚につきましては、調整池の中ではエツ、それからハゼという形でございます。それから、諫早湾、それから有明海では、コノシロ、カタクチイワシなどが主な種という形になっているところでございます。

 それから、10ページでございます。水生生物のうち調整池の内部の魚介類について整理をいたしております。ちょっと場所が変わっておりますが、調整池の内部でございます。調整池の中では、エツ、ギンブナ、これが主な種になっているというところでございます。左下と右上でございますが、干拓地の排水路や潮遊びの潮遊池ではギンブナやオイカワと、こういったものが主な種となっているということでございます。本明川でもギンブナが見られるというところで、不知火橋のところでございます。

 恐れ入ります、11ページでございますが、11ページは、水生生物のうちの底生生物でございます。底生生物につきましては、調整池の中ではイトミミズ、それからユスリカという形です。諫早湾及び有明海の湾奥部、B3とStn4では、ヒメカノコアサリ、それから、有明海湾央部でのS29では、ビロウドマクラガイというものが主な種となっているというところでございます。

 最後に、12ページでございますけれども、鳥類のポイントセンサスの確認されたものを整理させていただいているところでございます。調整池の干潟の生物、鳥類につきましては、季節によって確認できる種や個体、大きく変わります。諫早湾区域、それから諫早湾の海域、それから筑後川区域、荒尾区域という形で整理をさせておりますが、諫早湾の調整池区域、それから諫早湾の海域では、冬季にスズガモ、これが圧倒的に多く、20万近く見られるというところでございます。一方、筑後川河口部の筑後川区域ではハマシギ、それから、有明海の荒尾区域ではオナガガモ、ハマシギ、こういったものが主な種となっているところでございます。

 以上、駆け足で大変わかりにくい説明で恐縮でございますけれども、私どもが24年12月から約1年間させていただいた調査について、概要をご説明させていただきました。どうもありがとうございました。

○滝川小委員会委員長 豊調査官、どうもありがとうございました。

 ただいま非常に膨大なデータといいますか、調査データについて手際よくご説明いただきました。各委員のほうから何かご質問等ございませんでしょうか。

 どうぞ、松野先生。

○松野委員 流れの調査について、ちょっとお伺いしたいんですけど、これは事前調査という位置づけで、開門したときに何かが変わるかもしれないということで、どういう視点から結果を示されているのでしょうか。これと同じ図を出されても変化は多分わからないと思うんですが、何をどう比較することで、変化の有無がわかると考えられておられるのでしょうか。

○豊調査官 こちらが流速の出現頻度を表したものでございますので、仮に開門の、これは事前調査でございますので、開門した場合には、開門するときの直前調査、それから直後調査、それから、開門、今、裁判のあれでは5年間、開門しなさいと言っておりますので、その5年間、同じような定点で潮位とか潮流とか、それを調べさせていただきます。また、閉門した後につきましても、その後、そういった潮流とか潮位とか、そういったものを調査させていただきます。したがいまして、今、こちら潮流とか比較するデータというのはないわけでございますけれども、将来、開門をして、その場合に、期間中あるいは閉門した後、いろんなこととデータを比較して分析することでいろんな知見が得られるのではないかなということで、本日は、あくまでも事前の1年間分だけをご報告させていただいていますので、ちょっと何と申しますか、いろんなご報告はできないんですけれども、そういった前の準備の調査ということでご理解を賜ればありがたいのかなと思います。

○滝川小委員会委員長 よろしゅうございますか。

 ほかにご意見はございますか。

 小松先生、どうぞ。

○小松委員 膨大なデータを短時間で説明していただいたので、こちらがなかなかついていけなかったんですが、全てのデータを見られていると思うので、申し訳ないですけど、簡単に、結局、じゃあ例えば調整池の中は今どういう状況、諫早湾はどういう状況、有明海の奥部はどういう状況だということなのか。先ほど、例えばこういう生物がいるとかいうことは報告をいただいたんですが、量とかもものすごく関係してきますよね。ですから、何か総括みたいなことを簡単に言っていただくとよく理解できるかなと思うんですが、いかがでしょうか。

○豊調査官 小松先生からのご指摘、総括という形は、正直言って、まだいろんな、180ページにまとめさせてはいただいておりますけれども、先ほど申しましたとおり、その前後を比較するための、これはあくまでも事前の開門の前の調査ということで、これは比べる元データになります。ですから、比べる元データの前のデータというのは、私ども海域、環境モニタリングとか、そういったものでいろんなデータはとっておりますけれども、まだそういったところの分析はしておりません。それで、あくまでも私ども、諫早湾の調整池の中あるいは諫早湾の中には、ある程度データを持っていろいろな比較もできると思いますが、特に有明海については、なかなか私どもではデータ、何点かでは調査をいたしておりますし、ただ、分析できる能力も知見もまだないということでございますので、本日はあくまでもデータの提供のみということでご説明をさせていただいたということで、ご理解を賜りたいと存じます。

○滝川小委員会委員長 ありがとうございます。

 どうぞ。

○古川委員 すみません、古川ですけれども、貴重なデータをご提示いただいたということで、1点確認をさせていただきたいと思っています。それは、こちらの小委員会のほうでも再三、有明海の環境の動態について、何がどういうふうに関係しているのかという目で議論になっていて、それの一つの大きな指標が底層のDOであるというようなことが出ております。4ページのところの右下の図で、夏季の貧酸素状態ということでご提示されているものと、その前のところで3ページのところでしょうか、例えばですけれども、水質の測定値としてDOが計測されている。水質のほうはmg/Lで、4ページのほうの貧酸素状況の把握のほうは飽和度で書かれているので直接比較ができないというところなんですけれども、例えば8月の有明海の中のStn4のデータを拝見すると、最低でも、8月でも4mg/Lを上回っていると。あまり貧酸素、貧酸素はしているんですけれども、生物にシビアな状態ではないようなデータが出ているのと、4ページの貧酸素状態の、これ飽和を、例えば8mgとか9mgぐらいで考えると、もうちょっと4mgではなくて、もう少し下回っているのではないかなというような目で見てしまったんですけれども、そこら辺のデータの整合性というのは確認をされておられるのでしょうか。

○豊調査官 すみません。こちらの、例えば3ページにありますようなデータというのは、月1回のデータですね。8月5日だけのデータを示させていただいているということです。一方、4ページのこちらのほうのデータは、ご覧いただいたように、9、14、19、23とございますけれども、自動昇降装置におきまして定期的に観測をしているデータで、こちらはきめ細かくデータがあるということでございますので、今、先生ご指摘のとおり、その貧酸素の状況が時間ごとにわかるというのは4ページのことの元データですね、生データを持ってきますと、それがわかります。恐れ入ります、3ページについては、8月5日の定位点といいますか、ある1点のポイントで出していますので、こういった数字になっているということでございます。その辺、確かにご指摘ございましたので、この3ページにあるようなDOと、例えば4ページで定点観測しているものというのは、将来的にはそういったものを比較して、またはデータのチェック等をやっていく必要があると。わかりました、ありがとうございました。

○滝川小委員会委員長 どうもありがとうございます。

 時間も来たんですけれども、農水省さんのほうに確認させていただきたいのは、この小委員会におきましても、有明海の環境特性を把握するという上で非常に重要なデータを取得されているというふうに思っております。逐次、データの提供というのを引き続きお願いしたいということと、各委員におかれましては、それぞれのデータをどう見るのかということで、そのデータの整理の方法等についてもご提案いただければ、必要な方向で検討させていただきたいというふうに思っておりますので、どうぞ今後ともよろしくお願いしたいと思います。

○豊調査官 了解いたしました。私どものこういった調査結果に関しましては、逐一、こういった場をもってご説明させていただきたいと思います。先生方のご指導を今後ともよろしくお願いいたします。

○滝川小委員会委員長 どうもありがとうございました。

 それでは、本日の予定の議題というのは全て終了いたしましたので、事務局のほうから何かありましたらお願いしたいと思いますが、

○高山室長補佐 事務局のほうから、2点ございます。

 次回のスケジュールでございますけれども、次回は10月の下旬か11月の上旬に予定をしております。日程調整でのご協力方、よろしくお願いいたします。

 それと、もう一点ですけれども、本日の議事録の確認を後日お願いいたしますので、よろしくお願いいたします。

 以上でございます。

○滝川小委員会委員長 それでは、第7回の海域再生対策検討作業小委員会を閉会させていただきたいと思います。議事進行へのご協力、本当にありがとうございました。ちょうど時間どおりに終わることができました。ありがとうございました。

午前11時55分 閉会