第32回有明海・八代海等総合調査評価委員会 会議録

1.日時

平成25年11月27日(水)15:00~17:00

2.場所

環境省第一会議室

3.出席者

委員長:
岡田光正委員長
委員:
秋山壽一郎委員、有瀧真人委員、岩渕光伸委員、上田直子委員、久場隆広委員、小松利光委員、古賀秀昭委員、滝川清委員、中田薫委員、西村修委員、速水祐一委員、山口敦子委員、山口啓子委員、山田真知子委員
専門委員:
松山幸彦委員
事務局:
水環境担当審議官、水環境課長、水環境課閉鎖性海域対策室長

午後2時59分 開会

○名倉閉鎖性海域対策室長 それでは、1分ほど前ですけれども、ただいまから第32回有明海・八代海等総合調査評価委員会を開催いたします。
 最初に、本委員会は、公開の会議となっておりますことを申し上げます。
 初めに、環境省大臣官房審議官の平岡よりご挨拶を申し上げます。

○平岡大臣官房審議官 大臣官房審議官で水環境を担当させていただいております、平岡でございます。委員の皆様には、本日ご多忙のところお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 第32回有明海・八代海等総合調査評価委員会の開催に当たりまして、一言ご挨拶を申し上げます。
 本年3月が第31回の会合でございましたが、7カ月ぶりの開催ということになります。この間、評価委員会での議論を加速するということで、二つの小委員会が設置され、有瀧小委員長、滝川小委員長のもとで、それぞれ7月と10月に小委員会を開催していただきまして、委員の皆様には活発な議論をしていただいているところでございます。
 有明海・八代海の再生につきましては、有明海・八代海等を再生するための特別措置法に基づきまして、国が基本方針を定め、関係各県が県計画に沿って、各種対策を実施していますが、現状におきましても、本年度も、赤潮の発生とか、有明海湾奥西部での貧酸素状態の確認といったようなことがございまして、まだまだ課題が多い、道半ばであるというふうに認識をしております。
 特別措置法の目的には、貴重な自然環境や水産資源の宝庫である有明海及び八代海を豊かな海として再生していくということがうたわれているわけでございますが、取り組むべき課題が非常に多いということを痛感する次第でございます。本日、評価委員会では、小委員会で議論していただいておりますいろいろな取組状況のご報告ということをしていただくことにしておりますけれども、親委員会の立場から忌憚なく議論していただきまして、この評価委員会の目的に沿って進めてまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。簡単ですが、ご挨拶とさせていただきます。

○名倉閉鎖性海域対策室長 本評価委員会は、今年の10月で再開後丸二年となりまして、2年間の委員の任期満了に伴い、委員の改選をいたしました。新しい委員名簿を資料1として用意しておりますので、ご参照いただきたいと思います。再任につきまして、ご了承いただきました委員皆様におかれましては大変ありがとうございました。引き続きよろしくお願いいたします。また、新たに2名の先生に委員になっていただきましたので、ここでご紹介いたします。
 九州工業大学大学院工学研究院の秋山委員でございます。
 九州大学大学院工学研究院の久場委員です。
 以上の2名です。
 本日の委員の出席状況ですが、欠席の連絡を清野委員、中田英昭委員、中村委員、本城委員、山本委員、清水委員からいただいており、本日は15名が出席しておりますので、有明海・八代海等総合調査評価委員会令第6条に基づく会議の定足数を満たしていることを報告いたします。
 また、本日は生物・水産資源・水環境問題検討作業小委員会からの報告者として、同小委員会の松山専門委員に、また海域再生対策検討作業小委員会からの報告者として、いであ株式会社の川岸主任研究員に出席いただいております。
 それから、新たな任期の評価委員会ということで、委員長を決める必要がございます。委員会令では、委員長は委員の互選により選任することとなっておりますが、委員長が委員として再任された場合には、慣例として、同じ委員長にお願いすることとしておりますので、引き続き岡田先生にお願いすることで、委員の皆様方、よろしいでしょうか。

 (異議なし)

○名倉閉鎖性海域対策室長 それでは岡田先生、引き続きお願いいたします。
 また、本評価委員会には、委員長の指名により委員長代理を置くこととなっております。前任の楠田先生が退任されましたので、新たに指名する必要がありますので、岡田委員長に指名をお願いいたします。

○岡田委員長 はい、かしこまりました。それでは、これまでも海域再生対策検討作業の小委員会の委員長を務めていただいております、滝川先生にぜひお願いしたいと考えております。

○名倉閉鎖性海域対策室長 滝川委員、よろしいでしょうか。

○滝川委員 はい。

○名倉閉鎖性海域対策室長 ありがとうございます。それでは、今後2年間の本委員会につきましては、岡田委員長、滝川委員長代理の体制で進めさせていただきます。
 続きまして、配付資料を確認させていただきます。最初に議事次第がございまして、議事次第の裏に配付資料の一覧を載せておりますけれども、資料1としまして、委員名簿でございます。それから、資料2-1としまして、生物小委における問題検討の枠組み、資料2-2としまして、夏の赤潮について、資料3-1として、海域再生対策検討作業小委員会の取組、資料3-2として、海域区分ごとの環境特性についてというものでございます。不足の資料等ございましたら、事務局までお申しつけください。
 報道取材の皆様、これ以降のカメラ撮影はお控えいただきますよう、よろしくお願いいたします。
 これ以降の進行は、岡田委員長、よろしくお願いいたします。

○岡田委員長 かしこまりました。それでは、早速議事を始めさせていただきたいと思います。
 今回は、今年度の第1回の委員会であります。また、平成23年度の特措法改正により、委員会が再開されてから5回目ということになります。先ほど平岡審議官からのご挨拶にございましたように、本委員会は、そのもとに生物・水産資源・水環境問題検討作業小委員会、それから、今、滝川先生にお願いしております、海域再生対策検討作業小委員会ということを設置して、有瀧、滝川両委員長のもとに検討を進めていただいております。今年度も7月と10月にそれぞれ小委員会を開催して、議論をいただいております。したがいまして、今回は、今年度の両小委員会における検討内容について報告をいただいて、ここで全体としてのご議論をいただければというふうに思います。
 というわけで、本日の進行、議題が小委員会におけるこれまでの取組となっていますが、二つの小委員会がございますので、前半、後半に分けて議論をしていただければ思います。前半では、生物小委委員長の有瀧先生、それから、生物小委の松山専門委員両名から生物小委における検討態勢の概要と第4回、第5回で検討いただきました夏の赤潮に関する詳細な報告をいただいて、その検討内容に関する議論を進めていただければと思います。
 その後、後半で海域再生の小委員会で検討していただいております、海域区分ごとの環境特性ということで滝川委員、小委員会の委員長と事務局からご報告をいただき、検討内容についてご議論いただければというふうに考えております。
 それでは早速、前半のほう、有瀧委員と松山専門委員による生物のほうの小委員会の検討内容について、ご報告をお願いいたします。

○有瀧委員 有瀧でございます。お手元の資料2-1をご覧ください。ただいま委員長のほうからご紹介ありましたが、今回、32回は、夏場の赤潮について、それから前回は二枚貝についてそれぞれ整理と検討を行って、その結果を報告させていただきました。これまで検討する枠組みについて、皆様にご説明しなかったので、今回、ちょっとお時間をいただいて、その枠組みをご説明したいと思います。
 2-1の1ページ目ですが、そこに全体の枠組みがあります。一番下に有明海・八代海の勉強会というものがあると思うのですが、これはそもそもタイラギとか、サルボウ等の不漁、それから、赤潮、貧酸素の頻発によって、有明海・八代海の漁業が非常に貧窮しているということで、関係者が集まりまして、それぞれの問題を検討しながら、現場から様々な方面へ水産振興という点から情報発信をしていこうということで合意しました。その情報発信の先として、総合調査評価委員会があったということでございます。
 めくっていただきますと、裏にこれまでの勉強会の経緯というのがあります。今申し上げたような趣旨で、関係者に打診をしまして、1月にこの勉強会を開くかどうかということを検討し、それではやっていきましょうということで、第1回を2月17日に行いました。ここでは有明海・八代海の現況を整理し、第29回の総合調査評価委員会で有明・八代海の問題についてということでご報告させていただいたところです。
 それから、第2回から第6回までなんですが、これは先ほど申し上げましたが、有用二枚貝の整理・分析を行いまして、第2回、第3回の生物小委と、それから第31回の評価委員会で有明海の二枚貝類の整理と検討として提示をさせていただきました。
 そして、今回の夏場の赤潮なんですが、第7回から第9回の有明海・八代海勉強会で検討いたしまして、第4回と第5回の生物小委とそれから、今回、この評価委員会で、検討結果をご紹介させていただきます。
 今後になりますが、第8回から第9回の勉強会では貧酸素水塊について、現在進行形で検討しております。結果の一部は第5回の生物小委で報告させていただいておりますし、今後開催される第6回でも引き続き検討することになっています。最終的には、次回の第33回の本委員会でその結果については提示させていただきたいと思っております。
 1ページめくっていただきますと、今後になりますが、有明海・八代海勉強会では今まで扱ってきた二枚貝類と夏場の赤潮、それと貧酸素水塊について関連性を総合的に検討していくことを考えております。それから、それが終わった段階で、冬場の赤潮とノリの養殖について、整理と検討をしていく予定です。
 一方、ご存じのように、検討してきた課題については、急いでまとめなければいけないということがあって、個々の要素に関して十分な検討がされておりません。これまでも生物小委および評価委員会でご提示した内容は、まだ仮説の段階だということでご報告させていただいています。今後、その仮説について、もっと深化させていこうということで、関係機関がワーキンググループを立ち上げ、さらに詰めた検討をしていきたいというふうに考えております。その上で、今まで提示してきた仮説について議論を深め、できれば学会等のシンポジウムでそれを報告するということ、それから、論文化していきたいと思います。これら深化の成果をできればまた改めて小委員会、それから本委員会のほうにご報告をさせていただきたいというふうに思っております。
 以上であります。

○松山専門委員 続きまして、水産総合研究センターの松山でございます。生物小委の専門委員を務めさせていただいております。
 私のほうは、この勉強会、小委員会等を通じて取りまとめてきました、夏場の赤潮発生に関する資料の収集状況及び取りまとめ結果についてご報告をいたします。資料が多数に及ぶ関係で、どうしても早口になってしまいます。聞き取りがたいかもしれませんけれども、ご協力のほど、よろしくお願いいたします。資料は2-2になります。発表のほうはスライドを使用させていただきます。
 まず、収集した資料の取りまとめ結果に入る前に、夏場の赤潮の正体はどういった生物なのか、また、どのような悪影響があるのかというものを最初に確認したいと思います。この写真は、有明海・八代海で夏場発生する代表的な赤潮生物の写真です。詳細は省略しますが、最も問題となるのは上の2種類、シャットネラという種類と、コクロディニウム、これは養殖魚や天然魚を殺す赤潮生物でありますけれども、これらが大変問題になっております。
 いずれの赤潮生物も植物プランクトンの一種であります。海水中の窒素やリンを栄養物質として吸収し、光合成を行って増殖をします。いずれも西日本の沿岸に広く分布する赤潮生物です。
 この写真は、有明海の島原周辺で発生したシャットネラの赤潮になります。このシャットネラという生物の赤潮は、1ml当たり数百細胞を超えると、海水が着色して、視認されるようになります。この赤潮ですと、濃厚な着色になっておりまして、1ml当たり数万細胞を超えるようなシャットネラが含まれております。
 この写真は、シャットネラの赤潮が発生している諫早湾内で撮影されたものです。2009年7月に撮影されたものです。通常、この赤潮というものは養殖業に被害を与えるということで問題になりますが、実際の海域では、このようにコノシロでありますとか、ボラが多数へい死して、海面を漂っている現象を目の当たりにします。しかしながら、こうした赤潮が天然資源に与える影響については、実はほとんどわかっていないというのが実情でございます。
 この写真は、八代海で撮影されたものですけれども、同様にシャットネラの赤潮の写真になります。このように色が濃ゆくなって、黒っぽくなっているところがそうですけれども、こういうところは1ml当たりに数千細胞を超えるようなシャットネラが含まれています。
 これが後ろのほうに写っています養殖漁場に流れ込んできますと、特に赤潮に弱いブリなどは、数時間以内でへい死が発生するというふうなことで、漁業者にとっては大きな損失になってしまいます。
 これは過去に日本沿岸で発生した赤潮被害の上位5番までの漁業被害の額に応じた順位をつけているものです。一番漁業被害が大きいのは昭和47年、瀬戸内海の播磨灘で発生したシャットネラ赤潮です。赤で反転させているところがそうなんですけれども、平成18年の委員会報告の後、平成21年、平成22年と連続して甚大な漁業被害が発生して、合計でこの2年間だけでも87億円という漁業被害に至っております。地域の養殖業の最大の赤潮というものが懸案事項になっておるということで、このことが特措法の改正にも強く影響していることはご存じのとおりです。
 今回、赤潮に関するご説明をする前に、前回、二枚貝の減少解明のときもそうでしたが、平成18年の委員会報告の内容を踏まえておく必要があると思います。ここに報告書の指摘内容を簡単に要約したものを示しております。前回の委員会報告における赤潮発生に関して、ここに書かれた5項目が要因として指摘されております。
 まず一番目として、冬季の水温上昇が指摘されております。有明海の水温が上昇することによって、赤潮プランクトンの増殖が促進されているのではないかというような指摘がありました。
 2番目として、透明度の上昇です。有明海は浅くて潮流が速いために、海底堆積物の再懸濁が発生しやすく、にごりの多い海として知られています。それが何らかの要因で潮流が低下する等の要因等で透明度が高くなってしまいますと、赤潮プランクトンの光合成が活発になることが指摘されております。
 3番目として、富栄養化と貧酸素化の進行です。一般的に赤潮の発生は富栄養化とともに進行するということがよく知られています。有明海でも、栄養が過剰な状態が続いているのではないか、あるいは貧酸素化が激しくなって、海底から溶出する栄養物質が増えて、赤潮が結果的に増えていると、こうした可能性も指摘されております。
 4番目としては、浄化能力の低下、ご存じのように、有明海にはかつて膨大な量の二枚貝などの懸濁物捕食者が生息していましたが、現在は大きく減少しています。赤潮プランクトンの捕食者となる二枚貝が減少することで、赤潮そのものが発生しやすい環境ができているという指摘もなされております。
 5番目の潮流低下に関しては、明確な結論は得られているわけではないんですけれども、赤潮が頻発する有明海の北部における動向については、調査研究の必要性が指摘されています。
 以上が平成18年の委員会報告の内容となっています。
 こうした委員会報告の内容を踏まえながら、新たな知見も加えて、夏場の赤潮の資料の収集状況、解析に関するご説明をいたします。
 当初、事務局のほうから資料の収集に当たって、項目をこのようにミッションとして与えられております。
 今回、資料の収集と解析を行った結果については、ここにありますように、大きく6項目に分けて順番に説明をいたします。
 まず最初に1番目として、有明海・八代海における赤潮発生と水質の経年変化に関する説明でございます。
 この図は、有明海、こちらが有明海、八代海は青、橘湾が緑です。1978年から2012年まで届け出がありました赤潮の発生件数を水産庁の資料に基づいて図にしたものです。有明海については、統計が1984年からしかありませんので、この海域のみ1984年からの集計となっております。
 特徴といたしましては、有明海・八代海におきましては、1998年あたりから赤潮の発生件数が増えているということです。これについては、前回の委員会報告でも指摘されたことですが、その増加傾向というのは、委員会報告後も同じように続いているということです。橘湾においては、ほかの海域のような、赤潮の増加傾向というのはうかがえません。
 この図は、有明海における赤潮の発生状況を詳しく表示したものです。上の図は、赤潮の発生件数を季節別に分けたもので、4月から9月、概ね夏場を中心とした赤潮が赤、1月-3月、と10月-12月、主に冬、春ですけれども、その赤潮の発生件数が青になります。こうやって見ますと、1998年ぐらいから夏も冬も、赤潮の件数が増えているということがわかります。
 下の図は、冬の赤潮をもう少し細かく見たものですけれども、紫が鞭毛藻、繊毛虫によるもの、緑が珪藻によるものということで、冬の赤潮というものは主に珪藻類で占められているということですけれども、鞭毛藻とか、繊毛虫の赤潮も増えている傾向にあります。
 前回の委員会報告におきましても、この1998年以降の赤潮発生件数の増大というものが指摘されていますが、この背景として、先ほど冒頭でご説明しましたように、冬場の水温の上昇、透明度の上昇、富栄養化等の進行が疑われています。今回、有明海の奥部につきまして、長期の水質データを改めて整理いたしまして、この点について検討を加えました。
 これからお示しするデータですが、これは佐賀県さんが1972年から毎月1回継続して実施しております、沿岸環境の定点調査の結果です。今回は、佐賀県沿岸で11定点あるんですけれども、そのうち定点の10番という、これは国営干拓前の定点になりますが、こちらのデータを整理したものです。
 まず水温です。年間変動はこちらのほうにありますが、それを季節ごとに、春、夏、秋、冬と分解したのがこちらの図になります。
 平成18年委員会報告と同様に、1980年代を底として、長期的に水温の上昇傾向が認められております。ただ、上昇幅は1度というレベルですので、必ずしも大きいものではありません。この傾向は瀬戸内海など、ほかの沿岸海域でも同様な現象が観察されております。
 次に、透明度ですが、これも前回の委員会報告と同様に、1970年代から長期的に上昇傾向がうかがえます。特に秋、冬の透明度の上昇というのが明瞭になっています。
 赤潮発生が頻発するようになった1998年以降、特に急激に透明度が高くなっているという状況ではなくて、長期にわたってコンスタントに上昇しているということがわかります。
 次に、溶存態無機窒素、以後はDINと称しますが、これの変動になります。有明海のように干潟域というところは、DIN濃度の変化というものが、植物プランクトンの発生に大きく影響を与えることが知られています。これについては、長期的な変動がほとんど観測はされておりません。
 ただ、スケールを見ていただきたいのですが、例えば、夏場の赤潮が発生する6月、8月というあたりを見ますと、20から40μmolと非常に高い値が出ております。これは東京湾などと匹敵する値ですが、有明海というのは、もともと栄養塩の濃度が非常に高い海域であるということが、まず基本的な部分としてあるということがわかります。
 次に溶存態無機リン、以後はDIPと称しますけれども、この変動です。これについては2000年代の半ばぐらいから急激に上昇していることが見てとれます。その傾向というのは、ほぼ全ての季節にわたっています。
 陸域からのリンの負荷量というのは、昭和50年代からはむしろ有明海では漸減しているということが前回の委員会報告書で指摘されていますので、現段階で近年の上昇の原因ははっきりしません。内部生産等の関連もあるかもしれませんので、後ほど考察を加えてみる予定です。
 最後にプランクトン沈殿量のデータです。これは後ほどもう少し詳細に説明を加えますけれども、この国営干拓の沖というところでも、プランクトン沈殿量というのがこのように春、秋、冬に近年低下をしているということがわかります。
 先ほどDIPの濃度が上昇した時期とほぼ一致するということですので、場合によっては、植物プランクトンの出現量が低下したことによって、DIPが余剰状態になっている可能性も示唆されます。水質データについて全体をまとめると、こうなります。冬から春の水温が1度上昇している、透明度の上昇は、冬と秋に明瞭、DIPが2000年代の半ばから急増している。プランクトンの沈殿量は1990年代以降、冬と春に顕著に低下しているということが、水質データとして総括されます。
 ここで赤潮の発生件数増加と水質、底質との関係を整理しておく必要があります。生物小委においては、二枚貝減少要因の作業、これは前回の委員会でご報告したのですが、夏場の赤潮と貧酸素というものが、二枚貝の減少要因に関与しているということを認めております。
 その一方、有明海全体としては、二枚貝の再生産能力の低下というものが、どうも顕在化しているのではないかということを示唆いたしました。これは富栄養化の進行とは、必ずしも異なる事象を捉えている可能性が示唆されたわけです。そこで赤潮の発生件数と植物プランクトンの増減との関係について、もう少し詳細に解析を行う必要があります。
 ここで二枚貝減少のところでも紹介しました、プランクトン沈殿量、これが長期のデータがそろっております。これを再度精査した結果をお示しします。プランクトン沈殿量というのは、100μのプランクトンネットで、鉛直引きを行った沈殿物をホルマリンで固定して、その沈殿物のボリュームを計測したものです。
 近年の調査において、植物プランクトンそのものは、クロロフィルの蛍光値ということで計測されております。昔はそのデータがないわけですが、近年のデータで、クロロフィルの値とプランクトン沈殿量、これは二つの定点を資料として出しております。黒い丸、1月から3月、この冬場のプランクトン沈殿量とクロロフィルとのよい相関関係が認められております。そこで植物プランクトンの総量がプランクトン沈殿量で表すことが、1月~3月期であればできるということで、過去のデータを精査しております。
 この図は、冬季の福岡県海域におけるプランクトン沈殿量の長期変動、1966年からのデータをプロットしております。先ほど佐賀県海域の解析結果でもありましたけれども、プランクトン沈殿量というのは、1970年代の半ばから80年代の半ば前半ぐらいまで非常に高い時期が認められております。しかし、その後、急激にプランクトン沈殿量は低下しまして、近年は極めて低いレベルで推移していることがよく見てとれます。
 これはあくまでも冬場だけでございますが、70年代、80年代というのは、とにくかく冬場のプランクトンの量が多かったということです。実はこの時期というのは、タイラギ、アサリ等の二枚貝の漁獲量が最も高かった時代と完全に一致しております。
 冬場のプランクトン沈殿物の主体ですが、福岡県さんが顕微鏡で一応調べられておりまして、1月~3月期というのは、ほとんどが珪藻類であるということがわかっております。ですので、このデータを見る限り、1998年以降、冬場に珪藻類が増えている、赤潮の件数を押し上げているという結果は、必ずしも合致しないということになります。
 では、なぜ1998年以降、冬場の赤潮件数が増えてきているのかというところを、もう少し考察する必要があります。
 この図は、赤潮発生件数に占める被害件数の割合を示したものです。同じように、夏場と冬場に分けておりますけれども、下のほうを見てもわかるとおり、冬場の赤潮というのは、被害の発生率が非常に高くなっております。冬の赤潮被害というのは、ノリの色落ち被害ということになっておりまして、冬場は赤潮が発生することと、ノリの色落ち被害が発生するということの連動性が高くなっている状況です。有明海では、1998年以降に赤潮の発生件数が大幅に増えておりまして、これは有明海異変の象徴として取り上げられています。この現象だけ見ますと、富栄養化が疑われるわけです。
 その一方で、透明度の上昇とか、プランクトン沈殿量の低下などが同時に観察されておりまして、冬季のプランクトンの出現量が増えているという解釈が難しくなっております。冬期の赤潮というのは、先ほど申しましたように、ノリの色落ち被害と連動する傾向になります。
 そうしますと、冬場の赤潮件数の増加というものは、ノリ漁場をめぐる栄養塩環境の低下というものが示唆される状況です。ただ、国営干拓沖のデータだけでは少なくともDINの低下は顕著ではありませんので、このあたりについては、もう少し深掘りをしていく必要があります。
 続きまして、有明海・八代海における夏場の鞭毛藻赤潮の発生状況についてご説明いたします。
 この図は、これまで赤潮の発生関係資料におきましては、赤潮の発生件数、あるいは被害の件数、継続日数などの図が整理されております。ただ、赤潮に対する意識が各海域ごとにずれがございまして、例えば、大規模な赤潮も、あるいは小規模な赤潮も、件数としては1件でカウントされてしまいます。そうした問題をならすために、もう少し定量的な評価が必要だということで、この図は、赤潮の発生期間と最高出現密度を乗じまして、2で割った数字を整理したものです。ある程度、規模が推定されます。
 左側が、有明海におけるシャットネラ、右側がヘテロシグマの赤潮を整理したものです。色が分かれているのは、県ごとの発生規模を示しております。こうして見ますと、シャットネラ属に関しては、1998年以降に出現規模が大きくなっているというのが如実に見てとれます。この傾向というのは、近年も持続しております。赤潮の発生海域というのも、ある特定の県だけが増えているわけじゃなくて、熊本県であるとか、長崎県であるとか、佐賀県、全体的に増えているということで規模も大きくなっているということがわかります。
 ヘテロシグマ アカシオに関しては、近年の増加というのは、必ずしも明瞭ではないんですが、2002年以降は、佐賀県や長崎県の海域で高い出現が確認される傾向にあります。同様な解析を八代海域でも行っております。八代海では4種類が問題となりますので、順番に経年変化を示しております。
 シャットネラの発生規模は、八代海では2003年以降に顕著に増加しています。近年漁業被害が増えていることにも合致するわけです。
 ヘテロシグマ アカシオについては、その辺のトレンドがよく見出せません。
 コクロディニウムに関しては、過去に三度ほどまとまって赤潮が集中して出る時期が認められております。
 カレニアに関しては、この海域では発生が極めて低調になっております。いずれの海域でも、赤潮の規模は熊本県海域で大きいことが読み取れます。
 前回委員会報告同様に、1998年以降に有明海でのシャットネラ赤潮の増加傾向が認められております。ヘテロシグマに関しても、佐賀県、長崎県で規模の大きな赤潮が時折発生するようになっております。
 八代海では、2003年以降にそれまでコクロディニウムという種類が主体の赤潮だったんですけれども、シャットネラへ、赤潮の構成種が変わっているという現象があります。
 両海域に共通している事象といたしましては、1998年から2003年を境に変動幅が顕著であるということです。この原因ははっきりしないんですが、気象でありますとか、外海側の潮位変動、あるいは局所的な潮流変化、こういった大きな要因について検討する必要があると考えておりまして、この部分に関しては、海域再生委員会などとも連携しながら、その関連について調査をする必要があると判断しております。
 有明海ではシャットネラ赤潮と貧酸素との関係が委員会報告で疑われておったわけですけれども、この図は2009年のシャットネラの出現と、底層の溶存酸素との関係を示しております。上側がシャットネラの細胞密度の経時的な変化で、全く同じ日付で、底層の溶存酸素、佐賀県海域のデータになります。
 この図を見てもわかりますとおり、シャットネラが、7月14日から23日にかけて急激に増えておりますけれども、このようにシャットネラが急激に増えた海域の直下で、貧酸素が急激に進行するという現象が認められます。この原因としては、シャットネラ自体が酸素を消費するという部分に加えまして、その細胞が海底に向かって沈降して、枯死する。そのことで水中の溶存酸素を急激に消費しているということが推定されました。
 先ほど申しましたように、平成18年委員会では、まず、貧酸素水塊が形成されて、そこから鉄とか栄養塩が溶出する、それが貧酸素水塊の崩壊に伴って、一気に供給されることで、シャットネラ赤潮が増加するという指摘をされておるわけですけれども、その以降のデータを詳細に解析いたしますと、貧酸素水塊というのは、シャットネラの赤潮が発生している最中、もしくは終わった後に急激に助長されるというケースが多いようです。
 有明海の栄養塩濃度を考慮いたしますと、この海域はもともと表層付近でも、シャットネラなどの鞭毛藻赤潮を支えるだけの十分な栄養塩が存在する海域ですので、貧酸素の発達度合いによって、赤潮の規模が必ずしも左右されるというわけでは、どうもなさそうだということがわかります。したがいまして、98年以降の赤潮の発生頻度増加が貧酸素の増大と連動しているかどうかということに関しては、まだ十分な結論を見出しておりません。
 有明海での赤潮発生は主に小潮期に発生するわけですけれども、これは潮流変化に赤潮生物も敏感に反応しているという証拠になります。98年以降の赤潮増加について、有明海での潮位変動に最も影響を与えている月の昇交点変動に伴う潮汐振幅の長期変動、これは既往知見がありますので、参考までにお示しをしております。
 続きまして、3番目として、現場海域における赤潮生物の出現特性について、簡単にご説明いたします。
 これはシャットネラ属の生活史を図示したものです。夏場の鞭毛藻赤潮は、ほぼこれに似たような生活史を持っておりまして、普段は海底にシストとして存在しております。これが春から夏にかけて発芽しまして、海水中で急激に増殖して赤潮を発生させる。その後、また、シストとして海底に落ちてくる。こういった生活史を持っております。
 そのシストですけれども、これは有明海・八代海いずれも分布調査がされております。上側が、有明海の2010年5月と2011年4月、同じこちらは八代海で2010年5月、2011年4月になっております。かなり短期的に数字が変動するわけですけれども、有明海の場合ですと、分布の中心が奥部の西部側と熊本県側に見られます。八代海に関しては全域に分布して、天草の内湾域で高い値が検出されているという状況です。
 今度は栄養細胞のほうですけれども、これは2008年に有明海で発生したシャットネラの出現について、時系列順に並べたものであります。この年は湾奥の西部で初期出現が認められ、その後急激に湾奥西部で増えます。その後、諫早湾から島原半島を南下してそのまま消滅するというパターンでありました。
 その翌年の2009年の赤潮ですけれども、このときは湾奥と熊本県沿岸で初期出現が認められて、ほぼ全域的に赤潮となります。後半のほうは、西部、諫早湾のほうで高密度になりまして、ほぼ同時に島原半島を南下して、また消滅をするということで、どうもこの湾奥で初期出現し、高密度になって、その後、西部で高密度になった後に島原半島沿いを南下して、消滅するというパターンが毎年続いているという状況です。
 2009年は、実は橘湾でも本種の赤潮による大きな被害が発生した年です。橘湾内のここにシャットネラの濃い分布中心層がありますが、実は表層塩分が非常に低い場所、橘湾はもともと外洋に面していますので、こういう低い塩分というのはめったに観測されないんですけれども、低い塩分と高いシャットネラの密度がスポット的に存在しています。
 恐らく橘湾には大きな流入河川がありませんので、この甘い水というのは、有明海側から流出したものだと推定されたわけです。翌年の2010年も同様な現象が観察されていまして、この海域に濃いシャットネラの分布層があって、それは低塩分層と合致するという状況でございます。
 橘湾においては、甘い水と連動して突然出現する高いシャットネラの水塊というのは、有明海由来で間違いないと推定されています。ただ、有明海から橘湾へ赤潮が流入したものを直接観察したものではありません。
 そこで2009年に国交省さんが観測されておりました、海洋短波レーダーによる表層流況のデータを解析しております。これは佐賀市の風の向きですけれども、このあたりで夏ですけれども北風が、二度連吹しております。最初の北風のときの流況というのは、このように湾奥から湾外に出る弱い南下流が観測されております。その後、翌日の27日は風が強まったこともありまして、急激に南下流が表層で観察され、その状態が31日まで続くということが起きます。実際の観測におきましても、島原半島沿いに赤潮が南下することが観測されて、その後、橘湾で赤潮が出現するという流れになっておりました。
 ということで、有明海と橘湾におけるシャットネラの赤潮に関して、取りまとめるとこのようになると、ほとんどが有明海側からの流入ということで考えられております。
 次に八代海ですけれども、こちらでも赤潮の移送現象が観察されております。これは2009年、先ほど有明海から橘湾に移送があったということをご説明しましたけれど、ほぼ同時期に、熊本県側から鹿児島県側に赤潮が南下するという現象が起きております。これはモデルで解析した結果、この上になるんですけれども、ほぼ、この現場における実測値を反映するような形で、粒子が分布していくことが再現されております。ですので、八代海でも、同様に赤潮の移流現象というのが起きているということがわかります。
 次に、これは佐賀大学さんが、有明海で観測した結果でございます。シャットネラ属を含めまして、鞭毛藻というものは、昼間は海面で光合成をいたしまして、夜間は海底近くに移動して、豊富な栄養塩を吸収するという、日周鉛直移動特性というのが広く知られております。2008年から2010年の間に4回、昼夜観測を行ったものですけれども、昼間表面にいて、夜間、海底近くに張りつくというようなことが観察されております。
 この発生パターンと、下がシャットネラの発生で、こちらがDINの濃度になりますけれども、シャットネラがこのように高密度になりますと、海面から海底まで栄養塩が枯渇するという現象が2008年と2012年に観察されています。シャットネラは赤潮になりますと、深いところに潜っていって、干潟の表面にある高濃度の栄養塩までも消費して増えるということで、鉛直的に動くということが彼らの赤潮を形成する上での生態学的なアドバンテージになっていることがうかがえるわけでございます。
 同様な昼夜観測に関しては、八代海でも行われています。詳細はお手元の資料でご確認をお願いします。
 シャットネラの増殖特性についても、既往知見を収集するように事務局からご指示がありましたので、こういった特性も収集しております。27度から30度にかけて、よく増殖するという特徴になるんですけれども、実際の赤潮が発生した海域での出現密度と塩分を見ますと、やはり25度から27度台に発生するということで、室内培養試験の結果とよく合致をしております。
 またシャットネラの赤潮発生に関しては、こうした水温、塩分、栄養塩だけではなくて、ほかの要因も強く影響するということで、この二つの定点で4年間観測された結果をお示します。これは2009年から2010年にかけて、緑が珪藻類、赤がシャットネラの出現パターンになります。
 2011年は、シャットネラが全く出なかったんですけれども、この年でありますとか、この年、いずれも珪藻類の出現が少ない谷間で赤潮形成しているということがわかります。この両者の間には強い競合関係があることが読み取れるわけです。
 一般的な赤潮の鞭毛藻と珪藻類等を比較すると、珪藻類のほうが増殖速度が速いですので、競合してしまうと、通常は鞭毛藻が珪藻に負けてしまいます。逆に言うと、珪藻が落ちたすき間で、赤潮が起きるというところが赤潮を予察する上で重要なポイントになるかと思います。
 4番目に赤潮の予察ですけれども、このスライドは先ほど珪藻と鞭毛藻との競合関係が認められると申し上げましたけれども、その競合をひき起こす際に、日射量と降水量が大きく作用しているというデータでございます。すなわち雨が降って、曇空が多いと珪藻が増えて、鞭毛藻を抑制するという関係があるというものを示したものです。
 有明海での赤潮の発生までのフロー図をここに示しておりますけれども、時間の関係上、割愛させていただきます。
 有明海での赤潮発生機構、先ほどのフロー図をポンチ絵にしたものがこれですけれども、お手元の資料でご確認をお願いします。
 次に、八代海の赤潮発生予察については、代表的な論文が三つほどありました。一つ、ここにお示ししたものですけれども、これは気象とか、水質データをDCA分析に供しまして、SIモデルを算出したものですけれども、ここでは六つの要因が出現予測に関連する項目として選択されております。特にDINと成層強度、珪藻の増殖速度というものがシャットネラの出現に強く影響しているということが指摘されております。
 これも同じくフロー図で、ポンチ絵ということで、お手元の資料でご確認をお願いします。
 近年有明海で赤潮の発生件数が増大しているということが注目されておりますけれども、赤潮の件数が増えるということは、東京湾、伊勢湾、瀬戸内海同様に富栄養化の進行というものが疑われるわけです。しかし、実際に有明海では、ほかの海域と比較して、流入負荷というのは大きな変動がなく、むしろ減っているということで、近年、珪藻類を主体とした内部生産がどうも低下しているんじゃないかという可能性が示唆されております。
 そういう状況を鑑みますと、どうも有明海では珪藻類の勢いが落ちていて、これが二枚貝の再生産能力を低下させると、そのことがシャットネラの赤潮を増大させて、貧酸素を誘発する。その貧酸素がまた二枚貝を減少させると、こういった生物学的な要因で、負のスパイラルが起きている可能性が強まりました。まだ、データは不足しておりますけれども、今回は作業仮説として提示しておりますので、今後もこうした仮説が正しいのかどうか、さらに検証が必要というふうに考えております。
 前回委員会報告の連関図から赤潮に関連する部分を抜き出してみたものです。これは有明海のものでありまして、赤い太字が強く作用しているというふうに見ていただけたらと思います。八代海のほうは、連関図が非常にシンプルになりまして、こちらのほうはどちらかというと、気象要因と珪藻類との競合関係が大きくしているんじゃないかというふうに考えております。
 次に5番目として、赤潮プランクトンの特性ということでご説明をさせていただきます。時間の関係で資料を飛ばせていただきます。これは有明海と八代海で、赤潮発生時に問題となる事象を簡単に総括したものです。いわゆる養殖魚のへい死と天然魚のへい死、あと漁船漁業の主体である天然の甲殻類の不漁、天然の二枚貝のへい死等が問題になっているわけです。
 ここでクルマエビに関してデータがありましたのでお示しします。漁業者さんたちのお話でも、赤潮の発生中にクルマエビがとれないということがよく言われております。これは実際に漁獲量、CPUで示しておりますけれど、この棒が低くなっているところですね。赤潮の発生期間中は、やはりクルマエビの漁獲量がほとんどないということが読み取れます。ただし、赤潮が終わりますと、急激に回復いたしますので、死んでしまったというわけではなくて、赤潮が発生していない海域に逃避したか、もしくは堆積物中に深く潜って、網にかからないようになっていたか、その辺が考えられたわけです。
 二枚貝に対する影響ですけれども、これはマガキ、タイラギに対する曝露試験を行った結果です。結論から言いますと、急性毒性は確認できませんでした。ただ、こちらは細胞密度が左から見て高くなるんですけれども、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000となっており、2,000細胞あたりを超えると、マガキもタイラギもシャットネラは食べないということがわかりました。同じ試験をサルボウを使って行ったんですけれども、やはり2,000細胞ぐらいから、点線のところですけれども、ほとんどろ水をしないということがわかりました。
 アサリに関しても、へい死は起きないんですけれども、こちらが珪藻を与えたところで、こっちがシャットネラで、ほとんどシャットネラを取り込みません。二枚貝に関しては、シャットネラによって直接死ぬという、魚類で見られるような、急性毒性はない。ただし、数百から2,000細胞を超えると、ろ水をしなくなるということがわかりました。
 資料を少し時間がないので飛ばせていただきます。お手元の資料でいいますと、魚類ですので77ページですね。これは魚に対する影響ですけれども、これは明瞭に毒性が認められていまして、細胞密度が上がるごとに生残時間が短くなるということが、ブリの幼魚で確認されております。
 これは鰓の写真で、次に同じ試験をヒラメで行ったんですけれども、ヒラメの場合は、感受性が非常に弱くて、ブリがへい死する密度よりも、20倍ぐらい高い濃度でようやくへい死すると、へい死する時間もさらにブリよりも長いということで、かなり赤潮に強いということがわかりました。
 ということで、魚類に対するシャットネラの影響は急性毒性がありますが、魚種特異性が非常に高いということがわかりました。へい死した魚は、鰓の傷害による窒息死ということがわかっております。
 毒性を一覧にしたものがこれになりますので、お手元の資料でご確認ください。
 最後になりましたけれども、赤潮に対する被害軽減策ということでご説明をいたします。
 これは実際に現場で取り組まれている、赤潮被害軽減策であります。避難、餌止め、生簀沈下、粘土の散布、早期出荷というものが漁業者の段階で取り組まれております。
 先ほどの生簀沈下でありますけれども、赤潮プランクトンが、特にシャットネラの場合は7から10メートルまでしか分布をしていないということで、生簀を沈めるということが有効だとよく言われております。
 ただ、これは2010年ですけれども、こちらが水深32メートルの漁場で、いかだを水深15メートルより深いところまで沈めました。シャットネラの5日間の細胞密度、こういうふうに上から下まで書いていますけれども、ピンクのへい死密度より高い濃度が沈めた生簀のところまで確認されるということで、漁業被害を回避することができませんでした。シャットネラ自身は表面10メートルまでしか泳げないのですけれども、漁場周辺では複雑な潮流が発生していますので、下のほうに鉛直的にまざってしまうと、生簀の沈下効果が出ないということがあるわけです。
 次に赤潮が発生したときに、現場で行われている餌止めですけれども、これは室内試験におきまして、餌止めをした場合としなかった場合のシャットネラに対するへい死曲線を示していますが、やはり餌止めの効果というのは、このように延命効果が赤で示しますが、ありました。
 ただ、酸素の消費速度は両者で変わりませんでしたので、何か別の要因が効いているということが推定されました。いずれにしても、餌止めは効果があるということが証明されました。
 最後に、養殖の方法によって被害が増減することについても、現場から指摘されております。これは2010年に赤潮の被害が大きかった鹿児島県の養殖漁場で、生簀700台のアンケート調査とそれの統計的解析によって、へい死との要因を解析した結果であります。
 結論を先に申し上げますと、この下のほう、重回帰を2回かけて整理をしたものですけれども、魚の体重、これが統計的に最もへい死と関係があるということが選択されました。実は大きい魚から先に赤潮で死ぬというのは、漁業者の方は前々から言われておりまして、それが統計的に実際に証明されたということになります。
 したがいまして、今後は大きな魚というものは赤潮に弱いというのがわかっておりますので、赤潮の発生のリスクが低い漁場で飼育するとか、あるいは赤潮が発生する前に先に出荷をしてしまうということで対策を講じることが重要と考えております。
 赤潮軽減化策については、このように四つのポイントを示しておりますけれども、ちょっと時間の関係上、これはお手元の資料でご確認をいただきたいというふうに思います。
 大変長くなりましたけれども、これで発表を終わらせていただきたいというふうに思います。ありがとうございました。

○岡田委員長 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまのご説明に関連して、何かご質問、ご意見等がございましたらお願いいたします。

○小松委員 2点教えてください。それから、一つだけコメント。
 水温の上昇が、1度ぐらいで、これは大したことないというふうに言われたんですけれど、地球温暖化の影響で、空気の気温が過去100年で大体約1度上がって、今、非常に大変な状況が出てきているんですが、海の場合は、1度ぐらい上がっても、大したことないというのが一般的に言えるのでしょうかというのが、これが一つ目。
 それから、ちょっと聞き落としたかもしれないんですが、赤潮発生の有明海と八代海の関連なんですが、例えば、2009年の例を見ると、有明海で発生して、その後、八代海で発生しているのかなというふうに見えたんですが、この関連性はいかがでしょうかというのが2点。
 それから、有明海の奥部でリンが長期的に上昇傾向だということで、陸域からの供給はあまり変化がないから、いまいち不明確なんだけど、底泥からの溶出、それから内部生産の低下が原因かなというふうに言われているんですが、もう一つ物理的な要因で、今、有明海に供給されたものがなかなか出ていきにくいという状況が少し出てきているようなので、それはひょっとしたら効いている可能性があるなというふうに考えています。
 以上です。

○松山専門委員 そうですね、1度の水温というのは海洋生物に対して、実は大きな影響があると思います。全くないということは全然ありません。ただ、赤潮プランクトンの増殖を、1度程度室内試験等で変化させても、これがなかなか統計的に差が出るほどのレベルではないので、先ほどの1度の違いというのは、赤潮の発生、原因プランクトンの増殖に与える影響としては、かなり小さいのではないかという意味でコメントをいたしました。
 それと2009年に関しては、有明、八代でほぼ同時期に初発がありまして、北風は当然九州西岸同じように吹きますので、ほぼ同じ時期に有明海でも南下しましたし、八代海側でも南下したということで、有明海側のやつが八代海側のほうに流入したというところは、ちょっと我々のデータではよく見えてはおりません。
 3点目の部分に関しては、今後勉強させていただきたいと思っています。

○岡田委員長 ありがとうございました。ほかにございますか。

○西村委員 2点ほどご質問をさせていただきます。まず、シャットネラ等の日周鉛直移動をする植物プランクトンによる赤潮の発生ですが、これは瀬戸内海等の研究によれば、水温躍層のでき方ですね、構造との関係が密接であるというふうなことがわかっているんですが、有明のほうではどのような状況かということが1点でございます。
 もう一つ、作業仮説でまとめられているところですね。これはコメントになりますけれども、作業仮説として見させていただくと、季節変化的なものがこの仮説の中に入っていて、全体と因果関係というか、夏場のシャットネラの赤潮増大というところが、例えば、もともとの一年中という意味なんでしょうか、この海域への栄養塩負荷の低下なり、それは外部付加でしたら、そういう捉え方だと思いますし、内部付加的な底質からの溶出でしたら、季節変化があるのかと思いますが、そういうところをちょっと、もう少し整理していただくと、作業仮説がわかりやすくなるかなと思いましたので、よろしくお願いいたします。

○松山専門委員 恐らく今回のご紹介した日周鉛直移動のデータは、CTDも鉛直的におろしてデータをとられておりますので、それをきちんと整理して、お示しすればよかったと思うんですけれども、ちょっと時間の関係上、水塊構造のデータまではお示しはできませんでした。このプランクトンは、基本的には水温、塩分躍層を超えて日周鉛直するということはよく知られていることは事実です。恐らく有明、八代でも同じだというふうに考えております。
 それと、二つ目の作業仮説のこの図ですけれども、これは実は季節性をあまり考慮していなくて、1年分をある程度ざっくりとまとめている部分があります。先生おっしゃるとおり、この仮説も季節、あるいは海域によって微妙に組み合わせが異なる可能性がございますので、今後の冬場の赤潮等の検討におきまして、もう少しこの辺を細かくブラッシュアップしていくということを我々のほうは考えております。まだ、たたき台というふうな形で見ていただけたらと思います。

○岡田委員長 ありがとうございました。ほかに。

○山田委員 22ページと23ページなんですが、23ページでは、植物プランクトンの沈殿量が1987年ぐらいから低下したということですね。それとあともう一つは、12ページで、1982年ぐらいからは1月から3月の珪藻赤潮の発生件数が増えているんですね。

○松山専門委員 98年以降、若干増えていますね。

○山田委員 そうして、22ページの結論としまして、一番下のほうには、2011年から2013年の植物プランクトン組成の変化がなかったことから、現存量全体が変動していないとみなすことができると書いてあるんですけれど、これはプランクトン沈殿量というのは、100μのネットでこしたものですから、その大型プランクトンが減少したのであって、一方で1月から3月の珪藻赤潮の発生件数が増えているとあり、ちょっとよくわからないのですけれど、この解説お願いします。

○松山専門委員 追加でご説明いたします。100μというのは、植物プランクトン全体を捉えるには、かなり見合いが大きいですね。恐らく1月~3月の沿岸というのは、大型の珪藻が卓越する時期になります。そうすると、100μのプランクトン沈殿量によく反映されてくるわけです。それで昔と比べて、大きな珪藻類が減って、小型の珪藻類にもし種が変わっているということになると、それは現存量じゃなくて、プランクトンの体サイズが変わっただけの話ですので、いわゆる定量的な部分が見えなくなってしまいます。ただ、昔のこのデータの中で、沈殿物の中の主組成というのが提出されておりまして、連綿とそれは福岡県さんのほうで精査されているんですね。やはりキートセラスでありますとか、リゾソレニアですとか、ユーカンピア、スケレトネマという、これが上位のトップ4位に入ってくるというのは、プランクトン沈殿量が多かった70年代、80年代、それと少ない最近も、この組成はほとんど一緒ということを確認していますので、絶対量が変わっているんじゃないかということです。

○山田委員 すみません、22ページには、2011年からと書いてあるんですけれど、1980年ぐらいから組成の変化がないと言えるのですか。

○松山専門委員 これはこの資料の中の18%とか、15%とかという数値は、計算するときに、過去30年分を全部一遍に計算する時間がなかったので、直近の低いところの数字を今こちらに入れております。手元の資料では、過去30年分の組成を集めようと思ったら、集めることができますけれど、ほとんど変わりがないと判断しております。

○山田委員 では、ここはたまたま2011年と書いただけなのですか。

○松山専門委員 そうですね。

○山田委員 はい、わかりました。

○中田委員 いろいろな要因を並列的に示してくださっていて、それはそれで非常にわかりやすいんですけれども、例えば、珪藻を一つとって見ると、珪藻が増えるときは結構混合が激しいとか、有性であるとか、そういうふうに下のものが上に上がるような条件、そういうところで多いと思うんですね。
 一方、今回見せていただいたデータですと、例えば、潮流が弱まっているとか、それから、小潮の時期にシャットネラの赤潮が発生しやすい。そういうふうに考えると、潮流なら潮流、そういう見方ではなくて、水の動きというのですかね、そういうものをトータルとして見るような見方というのが必要なのかなと思いました。

○松山専門委員 物理化学的な要因と珪藻の発生、夏の赤潮の鞭毛藻の発生を予測するには、実は珪藻の動きをちゃんと把握できないと予測はできないということで、その部分に関して、珪藻の研究というのは意外と遅れていまして、我々はデータを集めるのにかなり苦労した部分があります。おっしゃったように、鉛直的に混合する環境というのは、恐らく珪藻にとっては有利だと考えます。
 一応、既往知見を見ますと、有明海では、全天日射量の継続時間と珪藻の発生頻度との間にかなり強い正の相関があるということが、指摘されております。にごりが多い環境では、できるだけ光がよく当たるということが、この有明海という海で珪藻の出現を左右している要因の一番大きいものじゃないかなというふうに考えております。もちろん、ほかの要因もいろいろあると思います。

○岡田委員長 ほかにございますでしょうか。
 よろしいですか。それでは、どうもありがとうございました。では、これから夏の赤潮について、今、幾つかコメント、ご意見が出されましたので、それを踏まえて、さらに内容を深化させていただければありがたいと思います。有瀧委員、それから、松山専門委員、本当にどうもありがとうございました。
 それでは、先に進めたいと思います。冒頭に申し上げたとおり、海域再生のほうの小委員会で検討していただいている海域区分ごとの環境特性、これについてご議論をいただければというふうに思います。
 それでは、滝川委員のほうから、よろしくお願いいたします。

○滝川委員 はい、かしこまりました。お手元の資料3-1及び3-2でご説明させていただきます。まず、概要につきまして、資料3-1のほうをお手元にお開きください。1ページ目のところには、これまでの海域再生小委員会と申しますが、その会議の開催状況を示しております。1、2、3回がこれが平成24年度の小委員会の開催で、25年3月の末に、第31回の有明海・八代海総合評価委員会のほうで、それをご報告させていただきました。その後、今年になりまして、7月と10月に小委員会を開催いたしまして、それについてのご報告をさせていただくということになって、ちょっとここで修正をお願いしたいんですが、表の1-1の4回目の会議のところの右側の2のところの議事の最後のほうですが、排水門の海門と書いてある。海の門と書いてある、申し訳ございません。これはちょっと印刷間違いで、開く門の開門でございます。ご修正をちょっとお願い申し上げます。
 それで2ページ目を開けていただきますと、これまで第3回までの委員会の検討事項ということを示しております。これまで第3回も昨年度までにおきましては、小委員会をどうやって進めていくのか、情報収集をどうやっていって、そしてそれをどんな方向でまとめていくのかというふうなことを議論いたしました。その結果が、その図の2-1ということで、小委員会の検討の流れということを主に議論してまいりました。
 最初のほうの作業の流れ、あるいは役割分担と申しますのは、次の3枚目に分けていただくとよろしいのですが、各小委員会におきまして、どういう情報収集をするのかということを生物小委員会のほうと、海域再生の小委員会のほうでデータの種類を、収集項目を分担してあげましょうということで、そこにお示ししているような項目について、それぞれ収集するということでございます。
 そういった収集の中身が具体的には4ページのところに示しておりまして、表の2-2ということで、この再生海域小委員会のほうでは、大きく分けて生態系、それから水質、底質環境、そしてその他というふうなことの大きな分類の中で、非常に細かい項目を設けながらデータ収集を行っております。
 その収集に際しましては、右のほうの欄になりますが、国及び関係県の主な調査というのを中心に集めましょう。それから、18年度までには、一旦委員会の報告が出ておりますので、それ以降のデータについて収集しましょうということで収集作業に当たりました。その収集した結果の一覧が5ページ目になりますが、表の2-3ということで、それぞれの委員会の報告等を各国の機関、あるいは各県ということで、いろいろなデータを提供していただきました。合計464件にもわたるような膨大な資料が集まっております。
 それで、この膨大なデータをどうやって取りまとめるかというのが非常に重要な課題になるんですが、それを一つ一つ全部吟味してというふうなことでは時間がかかり過ぎるというふうなことで、委員会では、項目を整理そのものを進めつつ、新たなデータがあれば、各委員会の中での委員の推薦というふうなことで、データをご提供いただきながら、そしてピックアップして進めていくというふうな方針をとらせていただくということで進めてきております。
 今年度以降につきましては、6ページをご覧いただきたいと思います。第4回の小委員会を7月に開催いたしました。そこでは、今までに検討してきました作業の流れということにつきまして、図の2-2に書いてありますが、全体のデータを収集して、そして海域の特性を把握して、そして、海域別の関連図をつくる。さらにそれをベースに、今後どのような課題を設定するのか、そして、それに対応するような再生技術をどのように検討していくのか、最終的には再生方策の検討にもっていきたいというふうなことで、1番から12番までつけておりますが、そういった流れの中の作業の方向性についての共同認識といいますか、そういったものを進めてきておるということでございます。
 特に第3回で決めておりますが、海域再生に絡めまして、海域環境の特性を把握するに当たっては、海洋の構造、それから、水質環境、それに底質環境、それと生物生態系というものをまず中心に作業を進めていって、そしてその中で海域区分の特性を把握し、その中の課題を整理していくというふうなことを中心に進めていくということでございます。
 今年度、平成25年度までは、その図の2-2に示しておりますが、1から5の項目です。収集しているデータをベースに、海域環境の特性を海域ごとに区別していく。そして、海域ごとの連関図をつくりましょうというのを今年度の目標として進めてきておるところでございます。それ以降につきましては、6番目から12番目にありますが、そういった概念のもとに進めていきますという共通認識をつくって進めてきております。
 最後になりますが、第5回の小委員会の検討内容では、第4回で決めました作業の方針について、今進めているところですが、まず最初の方策をどのように考えるのか。その検討の方針についての共通認識をまず形成した。
 それから、第2番目に、有明海、八代海の環境特性の把握につきましては、どのようにして特性を把握するのかという考え方、それから検討の方法及び手法というものの議論をしていただきまして、そのデータ整理の一部をお示ししながら、今後の検討の方向性を確認して、今、進めているというところでございます。それが検討のこれまでの概要でございます。その内容の詳細につきましては、資料3-2のほうに綴ってありますので、これは事務局である川岸さんのほうから、詳細につきましてご報告していただきたいというふうに思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○川岸主任研究員 では、お手元に資料3-2をお願いいたします。今、委員長からお話がありましたように、再生方策の考え方、前回までの小委員会の検討の過程として、生物生息環境を構成する要素をどうやって把握するか、環境特性をどうやって把握するかということ。それから、有明海をまず海域区分して、環境特性を整理しようという作業の過程を入れておりますので、紹介したいと思います。
 表紙をめくっていただいて、1ページ目をご覧ください。これは前回、前々回の評価委員会でも報告をさせていただいた内容なので省略いたしますが、ここで一応再生方策というのはどのように考えるかということを明記しております。
 1枚めくっていただいて、フロー図を入れておりますけれども、この作業の中での全体目標をフローの一番上に書いております。有明海・八代海の環境特性に応じた生物多様性のある海域環境を作業上の全体目標として、フローに示しているような作業をやっております。作業内容は、黄色枠で書いている内容を順番に進めていっているとご理解いただければと思います。有明海・八代海全体における環境特性、及び海域別の特性の理解、それから有明海・八代海全体の海域別の課題というふうな順で、作業を今進めているところでございます。
 再生方策を具体的に考えるに当たって、一応検討方針を小委員会では作っております。それは5ページに記載しております。下の四角の囲みで囲んでいるところでございますが、三つ考えています。
 一つは、有明海・八代海全体の環境特性を把握して、課題を整理するということが最初、次にその特性に応じた目標を掲げましょうということ、それから、その目標を達成するための具体的な再生方策を考えようという手順で考えていこうと考えています。
 再生方策を考えていくに当たっては、下の1.3のところに書いておりますように、視点を一応定めていこうと考えております。コメントの3行目からですけれども、具体的な再生方策(技術)については、生物の生息環境という観点から再生技術を検討しようと考えております。
 この検討に当たっては、生物の生息環境を構成する要素と位置づけております底質環境、水質環境、流動環境、地形環境、その他いろいろな条件、こういったものを評価した上で、適切な技術を検討しようと考えています。
 今回は、底質環境、水質環境、その他の環境、それと生物の生息環境の特性把握ということの報告をします。それとこれらをどうやって評価するかということを現在検討しており、この結果については、次回の評価委員会で最終報告をさせていただきたいと思っています。
 次のページをご覧ください。生物生息環境を構成する要素を把握する話をしました。その要素は、底質環境、水質環境、流動環境、いろいろなものがございます。そういうものをどういうふうに把握するかという考え方を6ページのほうに整理をしております。
 3行目ぐらいから少し説明をさせていただきます。水質、底質、流動、地形、こういったものはお互いに関係し合っており、長期的、短期的、時系列的にも関係をしているということはもちろん考えられますし、その結果が現状だろうと考えています。
 そのうち底質について考えますと、底質については、基本的にはそこの地形、それと流動で規定されるだろうと、もちろんここに書いてございますように、場合によっては、水質からの影響、上から赤潮等の有機物が局所的に沈降する、堆積するみたいなことがあるということはもちろんわかっております。
 そういうことも含めまして底質というのは流動、それと地形、こういったものの長期的、あるいは短期的な影響が積分されたものと考えています。先ほど話しましたような局所的な沈降、堆積、はその中に含まれているだろうと考えています。
 もちろん二つ目のパラグラフに書いておりますように、有明海・八代海というのは、潮汐差が非常に大きくて、河川からの出水の影響も非常に大きいことはございます。ですので、短期的には底質の変動は大きいだろうということはわかっております。ただ、今回は長期的にどうなのかということを考える、ということをベースに考えると、今の底質という環境を整理する、あるいは底質というものをベースに考えると、いろいろな環境の変遷が含まれているということでよろしいんじゃないかと考えています。ですので、この構成要素の把握については、具体的に今から話しますけれども、底質の環境をまずベースとして考えようとやっております。その中で区分される、あるいは底質で整理された環境、あるいは海域水質、あるいは流動がどうなっているのかということを整理するというやり方で作業を進めております。
 それから、生物生息環境というところで、生物をどう考えるかという点につきましては、今のところ、最初は底質の影響を大きく受けるということを考えて、なおかつ移動力が小さいということで、底生生物をまず最初に取り上げようということをやっております。今後は、二枚貝類、あるいは魚類についても検討を進めていこうと考えております。
 先ほどご報告がありましたような赤潮の問題、それから前回、同じように報告していただいた二枚貝類、そういったものについても、生物小委員会の整理結果も取り込んで、整理を今後していこうと考えております。
 では、具体的な方法です。7ページをご覧ください。皆様もご存じのように、有明海では、底質のデータあるいは底生生物のデータを同じ地点で長期間ずっとモニタリングをされているというふうな結果は非常に数が少ないです。ですので、今回の作業に当たって一番考えなきゃいけないのは、項目が違う、期間が違うというふうなデータをどうやって取りまとめるかというのが、最初の考えるべきことだなと考えました。ここには調査期間として、九州農政局さんから佐賀県有明水産振興センターさんのデータ、これらのデータを整理した例でございます。この例では、横軸に項目を並べておりますけれども、九州農政局さんでは、ここに書かれている項目は全てやられている。
 ところが、その下のブルーで塗っているところについては項目が全てそろわない。しかも調査年のところの縦軸をご覧になるとおわかりのように、調査の年次も違うと。こういうデータをどういう具合にまとめて、一つの土俵へ載せるかということを少し考えた結果を8ページに入れております。
 ちょっと印刷の関係で見づらくなっているので、読み上げさせてもらいます。右上の図面をご覧ください。フローです。先ほどお話ししましたように、赤い色をつけていました九州農政局さんの全ての項目のデータがあるというものをここではベースデータというふうに名づけました。このベースデータを使って、まず、クラスター解析を行って、海域区分をする。それから、項目、あるいは年次が違うというデータがございました。ここでは個々のデータというふうに名づけております。
このベースのデータ、それから個々のデータ両方を足し算してクラスター解析をやる。これらの海域区分を重ね合わせて、全体のデータの取りまとめということをやった結果が8ページの真ん中の左側の図面でございます。右側のほうに各々の区分がどうなるのか。ベースデータでやったときのクラスターの結果、それから、ベースデータと個々のデータを足し算したものを右側のほうに参考までに入れております。ベースデータだけではなく、年次も違う、項目も違うというものをこういう形でやっていって、今からお話ししていきますけれども、ある程度うまくいくんだなというふうな目途が立ったと考えています。
 これらの海域区分された海域について、どのように海域特性、底質の環境特性が違うのかというところを9ページの上のほうに一つの例として挙げております。今まで有明海の底質の環境特性を把握するというふうなときの整理のやり方というのは、9ページの上のほうにあるように、例えば横軸に含泥率をとる、縦軸に強熱減量をとる、あるいは硫化物をとったときに、どういう関係があるかというふうな整理をよくされておりますし、しております。そのときに、これを1本の一次近似曲線で環境を把握するというやり方をします。含泥率と強熱減量、あるいは硫化物の関係を見る上では、やり方としてはもちろんあるとは思います。ただ、ここに色分けしていますように、Aというグループ、これはクラスターで出てきた区分ですけれども、Bというグループ、Cというグループ、Dというグループ各々を色分けしてみると、各々のグループで傾きが違うというところがご理解いただけるかと思います。
 底質から見た区分ではあるんですけれども、やはり環境特性が全然違うということで、先ほど滝川委員長からお話がありましたように、有明海・八代海の環境特性を把握して、その海域区分をして、区分ごとに連関図をつくるというお話のベースの考え方は、ここをよりどころと考えております。要するにこういう海域特性を把握するためには、底質環境から見れば、四つのグループに分けざるを得ないというのは、この含泥率、硫化物、あるいは含泥率と強熱減量の関係をこのように色分けして見ると、よくご理解いただけるかと思っています。
 これはかなり荒っぽいところもあったので、もう少し細かく分けた事例を下のほうに入れております。これが今のところ、底質で区分したときの最終的な区分図になると考えています。これにもう少し作業を加えて、最終的には底質の環境特性から見た海域区分図を作成する予定でございます。
 海域区分の底生生物はどうなのかというところを少し整理したものが11ページの表でございます。先ほど四つの区分をさらに細区分したという話をしましたけれども、それが11ページの表、縦軸でございます。各々の底質の平均値が並んでおり、その横から環形動物、それから底生生物の各海域の情報を整理しています。こういう底生生物の情報も加えて区分された海域がどのような特性にあるのかをどのように表現しようかということで、その一つの例として、12ページにレーダーチャートと俗に言われるような形で、整理をしてみようかと考えていますので、例を挙げております。
 各レーダーチャートの円周は、先ほど話しました底質の細区分になります。A1からB、C、Dという形で並んでいます。図の左上は含泥率が各グループでどうなっているかと、これで見るとおわかりのようにと、Dのところでは、含泥率が非常に高い。Aのところでは低い、Bは少し高い、Cはもう少し含泥率が高いという環境にあります。また、軟体動物、環形動物、節足動物、棘皮動物という4門の種類数を同じような図で示すと、右上の図になる。含泥率がこの中では相対的に低いAというところでは、4門の種類数がどちらかというと多く、それから、次に多いところはBというふうな関係が見えるかと思います。
 左下は、4門を足さずに別々に書いたものです。そうすると、環形動物というのは上の含泥率のグラフを見ていただければいいんですけれども、含泥率が低いところで高くなるというわかりやすい関係が見えてくると考えています。
 各門の代表的な生物がどのような出現なのかというのが右下でございます。基本的には、含泥率が低いところが高いように見えるのですが、例えばD1とか、D3というところで、ある種の生物だけが非常に多い。特にD1のところで出てくるようなヒメカノコアサリ、あるいはチヨノハナガイ、こういったものが非常に出てきているんですが、これは一般に言われるところの、汚濁指標種と言われるような種なので、こういうところはやはり生物にとってはあまりいい環境ではないというふうな最終的な評価ができるのではないかと考えています。
 このように各区分した海域の特性を見るに当たっては、底生生物も門で見たり、あるいは門別の種類数で見たり、あるいは代表的な生物がどのようなものが出現しているのかというところまで見て、環境特性を整理していこうと考えております。
 この多様度指数についても真ん中のほうに書いておりますように、確認をしていくということを今のところ考えています。
 今から新しいデータとして、先ほど464冊の報告書が収集されたと委員長から報告していただけましたけれども、その中のデータで、今のやり方で使えそうなデータがどういうものがあるかというのを少し紹介したいと思います。
 13ページには、環境省さんが行っている底質と底生生物の調査、申し遅れましたけれども、今からお話しするのは、底質をベースに考えよう、それから生物については底生生物をベースに考えようと考えていますので、基本的には底質と底生生物がセットで得られているデータを優先的に選択しています。ですので、13ページの地点というのは、底質と底生生物がセットでとられているということでご理解ください。
 それから、15ページには、国土交通省さんがやはり同じように、底質とベントスをセットでモニタリングをされていますので、このデータについても、先ほどのデータに追加をして作業を行いデータを更新してということになります。
 17ページには、佐賀県さんと環境省さん、それから佐賀大学さんが有明海湾奥で底質調査を行われている。底生生物のデータもあるものについては追加をしていこう。これらは全て地点も違いますし、年次も違うし、底質の項目も若干違います。これについては、先ほどお話ししましたベースのデータ、あるいは個々のデータというふうなやり方で少し整理をしてみようと考えています。
 19ページには、九州大学さんが行われた調査の地点を載せております。有明海で約96点の地点でございます。ここについては、底生生物のデータはない、底質のデータだけと聞いていますので、それも項目がかなり限られますけれども、全域を同じ方法で調査をされているということで、先ほどの海域区分の作業の中に追加をしていきたいと考えています。
 21ページには佐賀県さんが、これは単年度ですけれども、湾奥を対象に約400地点で粒度組成とAVSとベントスの調査を行っています。これも項目は違いますし、単年度ですけれども、先ほどお話ししたような方法で追加をしていって、最終的に底質から見た海域区分というのを確定させようと考えています。
 海域区分が終わったところで、次に区分された海域の水質特性がどうなのかという整理をしますと話しました。それについては、22ページから入れております。同じような作業を滝川先生が報告されていますので、それを紹介させていただきたいと思います。
 23ページの図面を先にご覧ください。これは浅海定線のデータ、水質のデータをもとにクラスター解析をやって、海域区分をした例でございます。区分された海域がどのような環境かというのが下のほうにグラフで示されておりますけれども、ご覧になっておわかりのように、DIN、あるいはPO4-Pで若干重なる部分はありますけれども、塩分、あるいは透明度、それから全体的にDINもPO4-Pもそうなんですが、各海域ごとにグラフの絶対値が全然違う。
 もちろん変化の特性、これは横軸が季節なんですけれども、季節変動は塩分なんかはどこの海域も同じような変動になりますけれども、絶対値が全然違うということで、こういう区分のやり方ももちろんあるということで紹介をさせていただきました。それから、生物の生息環境から見たときの海域特性がどうなっているかというのを、前回の評価委員会で、生物小委員会から幾つか報告されていますので再掲しております。
 25ページには、タイラギの生息環境から見たときの海域区分の図、26ページにはサルボウ、それから、27ページにはアサリ、こういう海域区分が、前回の評価委員会で報告をされております。
 作業的には最後のほうに移るんですけれども、山口委員が作成された報告書を参考にさせていただいて、魚類から見た海域区分、環境特性がどうなっているかということも、最終的には組み込んでいこうと考えています。その結果の図だけ、28ページのほうに引用しております。シログチ、シタビラメ、フグといった魚類が、有明海をどのように使っているのか。全域を一様に使っているのではなくて、産卵場、あるいは生育場というのは場所が違う。特にシログチ、それとフグをご覧いただくとおわかりいただけるかと思うんですが、有明海を魚類から見て、環境特性ごとに海域区分をしようということを考えると、有明海の湾口のところで切れるというわけではなくて、シログチもフグも橘湾、あるいは外海のほうから入ってきている。ということは、最終的にこの海域区分をしていくときに、有明海の湾口のところで、環境特性から見た場合ですけれども、湾口のところで区分の線が引けるのではなくて、ある程度橘湾を入れる。あるいはひょっとしたら、もう少し外側の海まで入れたような区分、あるいは範囲で捉えないと、魚類から見た環境特性というのは、なかなか見えてこないということになるのではないかと考えています。この辺はもう少し後の作業なので、実際できたところで報告をさせていただきたいと考えています。
 これらの区分を最終的に一つに重ね合わせて、有明海・八代海の環境特性がどうなっているのかということを最終的にはまとめて、その海域区分ごとに連関図をつくっていくという作業を今後やっていこうかと思っています。その一つの例を30ページのほうから示しております。30ページの上のほうの図面は、基本的には水質、それと底質のデータをもとに海域区分をした例です。グリーンの色塗りをしているところの左側の図面をご覧ください。ここでは有明海を6個の海域区分、それから、八代海は5個の海域区分をしています。使ったデータは、ここに書いていますように浅海定線、それから、底質・底生生物の調査結果ということで、一応水質、底質、底生生物というふうな情報を組み込んで重ね合わせた図面でございます。こういうやり方で海域区分をしたときに、各区分ごとの環境特性がどうなっているのか、ここを一応水温について整理をされているので、そこを少し紹介させていただきたいと思います。31ページ、次のページをご覧ください。これもやはり先ほど水質だけでクラスター解析をして、海域区分をした図面をお見せしましたけれども、それに底質・底生生物を加えて、有明海6個、八代海五つの海域区分をしたときに、上のほうに図面が有明海、それから下が八代海です。右側のグラフはちょっと印刷が悪くて申し訳ございません。海水温の5カ年の移動平均を示しています。各グラフの色の違いは、海域区分の違いなんですけれども、ここでも先ほどと同じように各グループごと、あるいは区分された海域ごとの特性ということで、各々のグラフの絶対値が全然違う、変化傾向は一緒でも違うということがよく見られるかと考えています。これはすなわち、こういうやり方をしても、海域の特性というのは、よく区分できる、あるいは海域特性を捉えた区分というふうに見ていいのかなと考えています。八代海ももちろん、同様のような形になっているのはご理解いただけるかと思います。
 次に、赤潮についても整理作業を進めております。これはもちろん、生物小委員会の今日の結果を、今後これに加えていくことになるんですけれども、32ページのほうに八代海の海域区分の各区分ごとの赤潮の発生状況を整理してみると、湾奥、湾央、湾口と分けて、赤潮の発生状況を確認してみると、右側のグラフのように、増加している時期が湾奥、湾央、湾口では若干違うという傾向が見られています。これはもう少し作業を進めていって、最終的に答えが少し変わるかもしれませんけれど、赤潮から見たときに、区分された海域の環境特性がどうかということを整理していきたいと思っています。
 そういうものを最終的に、もう2枚めくっていただいて、(3)ページなんですけれども、区分された海域ごとの環境特性というのは一覧表の形で整理をしたいと考えています。この(3)ページは、横軸を見ていただくと、底質からはじまって、底生生物、水質・負荷、流況という項目が並んでおります。次のページの(4)ページにいくと、これは表の続きでして、懸濁物の挙動、水塊構造、赤潮、貧酸素水塊というふうな項目を挙げています。こういう項目で、先ほどグラフで示したような環境特性をコメントにして入れていく。そのときにどういう課題があるかということをこの表の中に書き込んでいけば、この表の中身を最終的に図化すれば、それが海域ごとの連関図になるんではないかと考えて、まずはこの表の作成ということをやっていきたいと考えております。
 資料3-2の説明は以上でございます。

○岡田委員長 はい、どうもありがとうございました。
 それではただいまの資料に関しまして、ご質問、ご意見がございましたらお願いいたします。

○上田委員 資料のほうになりますけれども、3-3のところですね。海域ごとの整理事例なんですけれども、水質の資料の中、年数というのは、1987年から2004年とかなり長いんですけれども、底質は結構短いですよね。過去の分はどういうふうにされるのですか。

○川岸主任研究員 過去の底質はデータがございません。というのは、全くないというわけではないんですけれども、先ほど滝川委員長からもお話があったように、全ての報告書のデータを全部反映するのは時間がかかりますので、全域を同じ方法で、なおかつ底質とベントスをセットでとられているデータ、あるいは底質だけでも同じような方法で全域に、なるべく広範囲にとられているというデータ優先的に扱うということがあって、ここでは2003になっていますが、もう少し前からの最終的には、1989年ぐらいからのデータで、今年度の報告はつくらせていただこうかなと思っています。

○小松委員 こういうデータなので、なかなか十分なデータはないと思うんですけれど、最後の表は、いつからいつのデータというのは非常に詳細に書かれているんですが、途中の図が、いつのデータから得られた図かという表示が結構ないんですよね。表というのはなかなかわかりにくくて、図のほうが、我々は直感的に理解しやすいので、図にもいつからいつまでのデータを使った結果かというのを書いていただけますかね。
川岸主任研究員 はっきりわかるように、期間を図のほうに注釈で入れておきます。

○小松委員 というのは、やはり1998年から赤潮も増えているということで、やはり底質、水質も、若干履歴的なところがあると思うんですよね。ですから、ぜひ、そのようにお願いしたいと思います。

○岡田委員長 ありがとうございました。今のご指摘はよろしくお願いいたします。
 ほかにございますか。

○速水委員 質問が1点とコメントが2点あります。まず質問のほうですけれども、12ページの図の2-6に関して、こういった知見をベースにして、再生目標をつくっていくということになると理解をしたのですけれども、この関係だと、粒度を粗くすると生物多様性が上がって、結果的に再生につながるという、そういう話になるのですけれども、実際には、有明海の中ではもともと泥だったところにいた生物が、そういった泥底の海域に適用して多数生息していたものが、減ってきたということが問題になっているはずなので、ですから、単純にこの方法だけだと、全体の傾向としてはいいのですけれども、海域再生という点からは、少し難しい点が出てくるのではないかと思うのですが、その点、いかがですか。

○川岸主任研究員 1点ずつよろしいですか。底生生物の現状での主要な種ということで、12ページの右下に図を挙げているんですが、先ほど説明を除きましたけれども、最後に区分ごとの海域の環境特性の整理を一覧表の形で整理をしたいという話をさせていただきました。その中でここでもちょっと書き切れていないんですが、表の中では一応経年的なところも踏まえて整理をしていきたい、そのあらわれとしては、上の横軸の底生生物のところに、2003から2010と実は入れているんですが、経年的にそこの底生生物、データがある範囲では、どのように優先種が変わってきたかというのは、もちろん整理をした上で、最終的に再生の方向性を考えていきたいとは思っています。ただ、まずは各海域ごとの特性がどうなのかというふうな整理をするという点においては、現状の底生生物の出現状況でもそれなりに整理ができるのかなというふうに、今のところ考えています。

○速水委員 わかりました。そうしたら、この12の後に、できればそういったストラテジーがわかるような図を一つ入れていただくとわかりやすいと思います。
 後はコメントなのですけれども、1点目は、水質のほうの海域区分に関してですけれども、クラスター解析だけでは、どういう場所なのかということがわからないので、各水塊の特性、それから水塊がどういう海洋構造をつくっているのか、さらにはそういう海洋構造に伴った流れ、そういったものをあわせて示していくようにしていただきたいと思います。

○川岸主任研究員 説明が抜けましたけれども、一番最初に申し上げましたように、流動環境というのは必ず必要だと考えていますので、その中で水塊構造、流動というのは各海域区分ごとにどうなっているか。区分の中でというよりも、区分と区分の関係がどうなのかという形に多分なると思いますが、わかる範囲で入れていきたいと思います。

○速水委員 最後のコメントですけれども、図の1-1に関してですけれども、基本理念の整理、それから、各海域における目標の設定の部分は、これは恐らく人や機関によって、相当に理念・あるいは目標というものが異なってくると思うので、地元の自治体や市民を入れた形での再生の目標、あるいは理念をつくっていく戦略みたいなもの、そういったものもあわせて小委員会で検討して、ストラテジーを示していただければと思います。よろしくお願いします。

○岡田委員長 ありがとうございました。ほかにございますでしょうか。では、どうぞ。

○秋山委員 過去のことを存じ上げないものですから、既に皆さんご存じのことかもしれませんけれども、資料3-1のほうですが、表のナンバー2という2番目のところですけれども、2ですね。九州北部豪雨災害の影響についてということが書いてございまして、これについて検討されたかどうかということなんですけれども、結局、今の先ほどの資料3-2のほうでは、底質という話でまとめておられましたけれども、こういう非常に大きな外力が働いたときに、底質がどう変わるのかということがこの2の関連で調べられておられたら、教えていただけませんでしょうか。

○川岸主任研究員 ちょっと確認して、また、返事をさせていただきたいと思うんですが、このときには、タイミングがちょうど北部豪雨の年でしたので、各省庁さんで、北部豪雨の影響について、幾つか調査をされていまして、その調査結果の報告がされています。それの内容は、あるいは資料については、後ほど事務局のほうから連絡をしたいと思います、よろしくお願いします。

○岡田委員長 ありがとうございました。ほかにございますか。

○滝川委員 すみません、修正といいますか、それをちょっとお願いしたいんですけれども、資料3-2のところで、今、ご説明いただいた目次の3番目に、一番下のところです。有明海の海域区分の検討と書いてありますが、これに八代海がちょっと抜けていますので申し訳ございません。これ八代海も当然検討いたしておりますので、追加していただければというふうに思います。よろしくお願いいたします。

○岡田委員長 ありがとうございました。おっしゃるとおりだと思います。では、よろしくお願いいたします。
 ほかにございますか。
 いろいろご意見、それからコメントをいただきまして、ありがとうございました。
 それでは、再生方策の検討に向けた海域区分ごとの環境特性、まだこれから大分作業があるかと思いますが、委員からいただいたご意見を踏まえて、さらに内容を深め、整理していただけたらありがたいと思います。よろしくお願いいたします。
 それでは、全体を通じて、前半の生物の話、後半の再生の話を通じて、それから関連もあるかと思いますが、何かご意見ございますでしょうか。よろしいですか。

○山口(啓)委員 前半のほうでお話ししていただいたのが赤潮の件で、この海域再生のほうでかなり細かく項目ごとに分けて検討していく形になっています。例えば、珪藻が優先するような環境をつくったほうがいいとか、生物のほうの委員会から出てく再生像みたいなもののイメージ、何かそういうものは検討する場があるのでしょうか。今の状況ですと、ちょっと別々に動いている感じがするんですけれど。

○岡田委員長 それぞれのデータが整理された段階で、どういう形がいいかというのは、今後議論していくことになると思います。ベースデータなしに、いきなり仮説を置くのはやはり大変なことになると思いますので、遅いというご指摘かもしれませんが、やはりここではきちんとした科学的データを踏まえて議論していこうというのが大前提になっていますので、おっしゃる点はそのとおりでございますが、今後やっていく予定です。ということで、有瀧さんよろしいですね。ありがとうございました。
 ほかにございますか。
 よろしければ、議題の1、小委員会におけるこれまでの取組についてはここまでということにさせていただきます。
 次の議題ですが、その他ということになっております。事務局のほうから何かございますでしょうか。

○名倉閉鎖性海域対策室長 次回のこの委員会につきましては、3月ごろの開催を予定しておりまして、追って日程の調整をさせていただきます。
 それから、本日の議事録についてですけれども、速記がまとまり次第、委員の皆様にお送りさせていただきまして、ご確認いただいたものを環境省のウエブサイトで公開することにいたします。
 以上でございます。

○岡田委員長 ありがとうございました。
 それでは、以上をもちまして、本日予定されていた議題を全て終了させていただきます。
 これにて、第32回の有明海・八代海等総合調査評価委員会を閉会させていただきます。
 議事進行へのご協力に御礼申し上げます。どうもありがとうございました。

午後4時54分 閉会