第24回有明海・八代海総合調査評価委員会 会議録

1.日時

平成18年10月25日(水) 10:00~12:00

2.場所

永田町合同庁舎第1会議室(1階)

3.出席者

委員長:
須藤隆一委員長
委員:
伊藤史郎委員、大和田紘一委員、楠田哲也委員、小松利光委員、三本菅善昭委員、滝川清委員、中田英昭委員、原武史委員、福岡捷二委員、細川恭史委員、山口敦子委員、山田真知子委員、山本智子委員
臨時委員:
菊池泰二委員
事務局:
環境省水・大気環境局水環境担当審議官、水・大気環境局水環境課長、水環境課閉鎖性海域対策室長、閉鎖性海域対策室長補佐

午前10時00分 開会

○環境省閉鎖性海域対策室長 定刻になりましたので、ただいまから第24回有明海・八代海総合調査評価委員会を開会いたします。委員の先生方におかれましては、毎度のことでございますけれども、お忙しい中をお運びいただきまして、まことにありがとうございます。本日は、相生先生、荒牧先生、岡田先生、清野先生、本城先生、森下先生から、ご都合が悪いということで事前にご連絡をいただいておりまして、15名の先生方にご出席いただいております。定足数を満たしておりますことをご報告申し上げます。
 議事に入ります前に、お手元の資料の確認をさせていただきます。議事次第の裏が資料1、名簿でございます。資料2-1-1といたしまして、潮流潮汐ワーキンググループの検討結果、資料2-1-2といたしまして、その資料編、資料2-2といたしまして、アサリについての問題点の検証について。これは菊地委員から試案として出していただいているものでございます。それから、資料2-3といたしまして「汚濁負荷の検討結果」、資料2-4といたしまして「諫早湾の状況整理」、資料3-1といたしまして、今日メインにご議論いただきます評価委員会報告骨子案の1から3章、資料3-2といたしまして、同じく第4、5章、資料3-3といたしまして、同じく別添資料でございます。それから、番号を振っておりませんが参考資料ということで、有明海・八代海における再生関連事業の事例という横長のものをつけております。以上でございます。不足がございましたらお申し出いただければと思います。
 それでは、今後の進行につきましては須藤先生にお願い申し上げます。

○須藤委員長 かしこまりました。委員の先生方、おはようございます。大変ご多用の中、また早朝からお集まりいただきまして、どうもありがとうございます。また、関係省庁、それから関係県並びに多くの傍聴の方にご出席いただきましたこともお礼を申し上げたいと思います。
 先ほど高橋室長から資料の確認がありましたが、その資料の説明がちょうど議題に相当することになります。本日は、その他まで含めて3つの議題を用意してございます。審議していただく時間は2時間と限られております。12時には終了したいと考えておりますので、議事進行にもよろしくご協力いただけますよう最初にお願いしておきます。
 それでは、議事に入らせていただきます。
 最初の議題、問題点と原因・要因の検証であります。この件につきましては、前々から岡田委員、細川委員に全般的な作業をお進め願うとともに、各ワーキンググループで検討をお願いしてまいりました。本日は、潮流潮汐ワーキンググループからご報告をお願いしたいと思います。
 細川委員、どうぞお願いいたします。

○細川委員 おはようございます。細川でございます。委員長のご指名により、潮流潮汐ワーキンググループのご説明をしたいと思います。
 問題点の原因・要因の検証についてという作業の中で、水産資源のワーキンググループから、底質の泥化について潮汐・潮流による影響を検討してほしいといった要請がありました。全体の整理の中でBとかBとかつける中で、潮流・潮汐と泥化の関係について、潮流・潮汐の立場から整理してほしいというご要望です。今回は、その部分をメインに検討のお話をしたいと思います。
 潮流は、確かにいろいろ変わってきました。これは中間報告のときにもいろいろご説明したところです。
 それで、泥化というのはどんなふうに起きるのかという詳細な機構は、よくわかりません─と言うと怒られますが、いろいろあります。まず、供給源がどうなっているか、どの泥が湾の中に運ばれているのか、川なのか底泥なのかというようなところ、それから運搬の機構はどうなっているのか、波によって運ばれているのか、巻き上がっているのか、潮によって運ばれているのか、潮によって運ばれるときも、一様に運ばれているのか密度成層みたいなものが流れに効いているのか、あるいはそれがどんなふうに堆積するのか、堆積したものがまた巻き上がって供給源になっているのではないかといったことが湾の中で起きているわけです。これがぐるぐると回っていて、大潮小潮あるいは春夏秋冬いろいろな作用が起きて、それを時間的に積分したものが、長い目で見た粒径の変化とか地形の変化になっているわけです。
 難しいのは、今までの調査は供給源だけ、あるいは堆積だけを調べたものが多くて、全体を見たものが少ないということ、それから、時間を積分しなければいけないので、「ある日、測ってこうでした」というレポートはあるんだけれども「1年見たらどうでした」というレポートがなかなかない、こういったことがいろいろな解釈を難しくしておるところです。
 流れについて見ますと、前回、評価委員会で中田先生から潮流の計算結果などが報告されました。いろいろな条件の設定の仕方等あるところですけれども、長期的に見ると、湾内のさまざまな人間的な活動や干拓によって海が狭まっているとか潮が到達する距離が小さくなっているといったことで、潮が小さくなる方向に行っているということは、まあそうだろうと言えると思います。
 潮が少し小さくなることが泥化にどんなふうに影響するのかといいますと、一般的には、こんなことが言われています。
 これはコンクリートを敷いた細長い水路がずっと無限にあることを仮定して、水中の泥が落っこちていってコンクリートの底についたときに、流れがあると、またその泥が舞い上がる。そういう舞い上がったり沈んだりするのは粒の大きさによって決まるでしょうということで、横軸が粒子径になっています。舞い上がったりすると、底には1回落ちるんだけれども、また舞い上がるというようなことで言うと、その粒は沈みませんねというようなことで、沈まない流速は何ですかというのを縦軸に書いてあります。粒径が小さくなると小さな流速で沈まなくなるということで、流速が小さくなるに従って小さな粒径まで舞い上がるようになるというグラフです。
 これは工学的にいろいろなところで使われておるグラフですが、一般的に、流速が小さくなると舞い上がりが小さくなる。小さな粒子しか舞い上がらなくなるといったことは言われています。
 それは一般的に言われているんですけれども、この有明でどうなのかというと、観測例。先ほど言いましたように連続観測が少ない中で、連続観測した例がありました。これは有明の中の4地点、1、2、3、4とここにありますけれども、これで連続観測をしたものです。ステーション1のデータが右に書いてありますが、潮汐が上がったり下がったりして潮位が大きく変わるときに流速が非常に大きくなるんですが、そのときに濁りが非常に高いピークを示しています。これは底泥面から20センチ上の濃度、こちらの点々の方は海面から1メートル下の濃度、表層の濃度です。潮汐が早くなったとき、底層の濃度だけが高いピークを出すということで、湾の奥の方では潮の流れが早いときに濁りがたくさん出る、それも底層に特徴的に出ることがこれでわかっています。
 そうすると、つまり供給源は底泥で、大きな力、卓越する力は潮の流れというようなことがこれでわかると思います。
 ほかの地点でも、ちょっとずつ違うんですが、似たようなことがあります。
 では、潮の流れを横軸にとって、縦軸に、濁っていたのがもっと濁るという濁りの増え方をとると、こんなグラフになっています。
 あるところを過ぎると急に巻き上がりが大きくなることがおおよそ推察されます。「えいや」と線を引くと、流速で言って20と30の間ぐらいを超えると急に濁りが出てきますねということです。このU70の「70」、泥から70センチ上で測った流速という意味です。
 メカニズム的に言うと、粒を巻き上げるのは流速ではなく力なので、こういう整理の仕方はちょっと問題があるんですけれども、現象をざっと把握するためにはこれが有効だと思われます。
 同じような経験が別の機関によって示されています。
 水産庁が覆砂をしたときに、覆砂の上にどれだけ泥が積もりましたかという観測を報告してくださっています。8月、9月、11月と右に行くに従って月がたつわけです。一番右のグラフが既存覆砂域で、左側の覆砂区、[1][2]が覆砂した所ですけれども、そこを見ていきますと、8月、9月、11月と佐賀側で上の方の青っぽい部分、浮泥とかシルトが増えています。だけど福岡側では余り増えていませんといったことで、何で違うんだろうというところを整理してみたら、覆砂をした所でいくと、ここが違いますねと。25センチ/秒より大きな流速が福岡側ではたくさんあるけれども、佐賀側には余りない。つまり、20センチ/秒前後ぐらいより大きな流速があると泥がたまりにくいかもしれないというような経験を報告していただいています。
 そういうようなことが1つあります。流速によって泥のたまりぐあいが大きく変わるだろうという観測と実験の結果があるということです。
 もう一つ、もっと長い視点で、この有明の中の底質がどんなふうに分布しているのかをざっと積み重ねた図を見てみます。
 潮流速を右の図に、底質を左の図に同じ縮尺で並べて見比べた図です。底質の(左の)図を見ると、湾の奥の方で丸で囲ってある所が細かったり含泥率が高かったりという指摘がされています。右側の潮流図で見ますと、湾の奥の方の青っぽい所、こういう所が少し遅いと言われています。バッと見ておわかりのように、遅い所ほど泥っぽいということがあって、長い年月のメカニズムといったところで言うと、詳細はわからないけれども、おおむね相対的に潮流の遅い海域で底質の含泥率が高いことがわかります。
 それがどんなふうに変化しているのか。これも古いデータですが、湾内を概括的に調べたデータがなかなかない中で、滝川先生などのご報告を見ると、湾の奥の方でだんだん泥化が進んでいるのではないかといった報告もあります。
 このようなことをいろいろ勘案しますと、有明海の流速と底質の変化については、メカニズムを徹底的に明らかにしたような観測例あるいは数値計算はまだないんですが、可能性として、潮流と底質の変化という関係については非常に高い関係がある、相関がある可能性が高いということです。これだけデータを整理しますと、この関係について矢印をBにするかBにするかというようなことで言うと、潮流潮汐ワーキンググループの意見としては、Bでしょうという結論になりました。
 あわせて、透明度の上昇についても検討した結果で言いますと、透明度が上昇しているということ、それからSSがその濁りの主因であるというようなこと、底泥の巻き上げが仮にその主因であれば流速と関係が深いでしょうということで、その矢印については、やはりBでしょうというのがワーキンググループの結論です。
 それから、局所的なお話にはなりますけれども、ノリ網の抵抗による流速の変化と、そのことによるSS濃度の低下、透明度の上昇も関係ありそうですねということです。
 成層化、貧酸素水塊については、潮流の流速の振幅が小さくなったというようなことで、水深を流速の3乗で割った値のログをとってやるというような整理をして、成層化しやすい海域が特に湾の奥の方で増えているという論文がありました。一方で、成層度が減少しているという観測解析もありました。そのようなことで、ここについてはもうちょっと観測なりデータ整理が必要だろうということで、Bとしております。
 水産との関係について、水産のワーキンググループの方から潮流との関係が大事だから、この関係について評価してくれといったお話もありましたが、これについては大変難しい、あるいはデータがほとんどないということで、今後の検討をしておくべき分野だと思っております。非常に大事な、特に再生を考えるときに大事な要因ではあります。今後、知見の収集を図るべきというところがワーキンググループの評価です。
 以上のことを、図表も含めまして資料2-1-1、参考資料として資料2-1-2に取りまとめておるところです。以上でございます。

○須藤委員長 細川先生、どうもありがとうございました。潮流潮汐ワーキンググループの先生方には大変な作業をいただきまして、どうもありがとうございました。ただいま非常に簡潔に結論をお話ししていただきましたし、また、水産生物の関係については今後の検討課題ということでまとめていただきました。
 ただいまのご報告について、ご意見なりコメントを伺いたいと思います。

○楠田委員 1点お教えいただきたいんですが、配付資料の図-7、先ほど20センチ上の流速とSSの関係をご説明いただいた部分で、上から2番目のグラフは、上の方の線がゴウセイのカレントスピードになっていますよね。それとSSを見比べました際に、飛び飛びでピークの小さい方と大きい方が出てきますよね。そのピークの小さい方がSSが高くなっている。あと、その上昇の時間間隔が少しずれているというふうに見ましたときに、単なるスピードではなくて輸送がかなり効いている可能性があるという感じがするんですけれども、いかがでしょうか。

○細川委員 このピークとこのピークで、こっちの方が小さいときに濁りが高いではないかと。このピークは上げ潮の流速が一番早いときで、このピークは下げ潮の流速が早いときで方向が違う。それで、方向性を持っているでしょうということは、確かにそうです。
 ただし、底と水面とでこれだけ違うということなので、底の泥がどういうふうに動くかというところの方向性だと思います。
 これが何を言っているかというと、メカニズム的には底泥が巻き上がって、流れによって運ばれるというところも大きいんですが、もしかすると、底の泥のもやもやとしたものがごそごそっと動いている。フルードマッドと言われているようなメカニズムがあるかもしれないなといったところです。
 メカニズムは、ここからいろいろなことがあると思いますけれども、こういった濃度と流速の連続観測が、今後、必要だと思います。

○小松委員 今のことに関連して、上げ潮のときには表層でなく水深の少し低い所が流速が大きくなるから、どうしても巻き上げがある。だから、今のお話なんですが、確かに輸送ということもあるんでしょうけれども、やはり上げ潮のときにぐっと底泥が巻き上げられるということです。一方、下げ潮のときは比較的表層付近の流速が早くなりますので、底泥は巻き上がりにくいということでそのメカニズムの違いも出ているのではないかという感じがします。

○細川委員 この流速と濃度を掛け算したフラックスで方向性を見ますと、こちらで西側、こっちで南側というようなフラックスの方向性はあります。

○滝川委員 11ページのステーション2の方ですが、ここのところは今、SS濃度が高いのが最大流速のときにステーション1の方で生じていて、上げ潮、下げ潮のところで2回ピークがあるんですね、基本的に。それがステーション2の方ですと明確に出ていない。1個しか山がないということがありまして、むしろ流速のマキシマムというか、そういったところだけで起こるということでもない、地域によって異なることもあるといったことを加えていただきたいと思います。

○細川委員 そのとおりです。これが場所によって微妙に違うということです。

○須藤委員長 ほかに、よろしいでしょうか。それでは細川先生、どうもありがとうございました。
 続きまして、菊池委員からアサリに関してご報告をお願いいたします。

○菊池委員 資料2-2と、資料3-3の65ページから68ページあたりに関連のものがございます。
 まず、一般状況は、65ページのグラフを見ていただければすぐわかることですけれども、これは各県の漁獲量のグラフです。有明海はアサリの大産地だったと言いますけれども、その中の非常に大きな部分が熊本県、それも、天草などもあるんですけれども、そうではなくて東側の九州本土の岸辺の砂質干潟で行われていた。その一部が福岡県まで及んでいまして、福岡県も時によっては非常に豊漁の年もある。しかし、全体から見れば、有明海のアサリと言えばすなわち熊本県のもの。そして、それは西側ではなくて東側の岸辺の干潟だったということでございます。
 有明海漁業の消長。65ページのグラフを見ていただきますと、1960年代は大体1万トンから2万トン台だったんです。72年のあたりで2万トンにちょっと足りないぐらい。それが70年代に入りまして急激に産額が伸びて、6万何千トンという、これは日本じゅうでも最大の生産量でございました。そこに書いてありますように、3万トン以上という時期が12年間あったんですけれども、それから今度は急に落ちてきまして、1万トンを割って、以降はもう、このグラフに見えますように、最低のときには1,000トンそこそこになります。
 このグラフでは余り見えておりませんけれども、この一、二年はかなり回復してきまして、6,000トンから7,000トンは漁獲量があるようでございます。
 今度は、アサリというのはいつ卵を生むんだという話がありまして、もちろん日本各地で水温も違いますし、状況も違います。ある所では春の産卵が主力になっている、ある地方では秋産卵のものがメインになっているというような話があったんですけれども、同じ有明海の中でも、大豊作のころには秋産卵群がメインであったものが、数が減ってきた状態のときには春夏産卵群の方が多くて、秋のは余り子供が見られなかったという情報もございます。
 こういうことがなぜ問題になるかというと、ぐるっと回って丸1年で子供を生むのか、2年で子供を生むのかということと、それで生まれたプランクトン幼生が着底して5ミリになるまでのところで生き延びるか、生き延びないかというのがかなり左右される。それが秋産卵群と春夏産卵群の切りかえが起きたことに何か意味があるのではないかということがあります。
 その次に、私の聞かれました項目が6つほど書いてございますけれども、まず、漁獲圧と資源管理。
 まず漁獲圧はどうなんだということになりますと、とにかく莫大な量のアサリはとれます。とれますが、そのほとんどがやっと丸1年になったところでとられてしまう。殻幅というのは、真上から見たときに2つ膨らんでいる殻の、その幅をとったものが殻幅で、それが十二、三ミリになる。これが大体満1年たって1回目の産卵をするときなんですけれども、その産卵が終わるか終わらないうちに、ほとんど全部がとられてしまう。
 しかも、これが同じ年の春に産卵された幼生といっても、3月か4月にプランクトンになって5月に着底するもの、あるいは5月の末から6月に産卵され7月に着底するものがございますから、その中でもばらつきがあります。それで、大体卵を生んでしまったぐらいのところで大きいものから順に次々にとっていくということなんですけれども、九十何%が丸1年たったら最初の産卵と同時にとられてしまっているようです。これは熊本県の水産研究センターの方の研究で、そういう数字が出ております。
 4年ぐらい前に、広島市でアサリに関するシンポジウムがあり、なぜアサリは減ったか、どうやったら回復するかという論議があったときに私がそういう話をしましたら、山口県の方も広島県の方も「うちもそうだ。ほとんど丸1年であらかたとってしまっている」と言っていました。ですから、漁獲圧の問題もかなり厳しいと思います。
 しかも、昔だったら2年貝、3年貝といった大きい貝がとれてその方が値段もよかったわけですけれども、待っていられないから丸1年のものをとってしまう。それで、次に問題になるのが資源管理ということです。
 12ミリ以上だったらいいからといって残らずとってしまわない、禁漁区をつくる、保護区をつくる、あるいは1人の人が1日に稼ぐ総量を規定する。これは非常に難しゅうございまして、1家3人や4人でとっている人の場合には1経営体で幾らというような計算をするし、場合によっては1軒の家から1人だけが働きに行く日もありますけれども、そういうものについてどのようにして資源管理をするかということが、現在、どの県でもご苦労なさっていると思います。熊本県の場合には、アサリの生産マニュアルをつくって、生産と保護をどうするかということを漁民全体に知らせて、今、その方向に進みつつあります。
 ただ、漁民の数の割にアサリが多い所と、全部とらなければうちではやっていけないんだという所がどうしても出てきますので、今のところ、各漁協によってその物差しは違う。それを県全体で一本化できるようなというのが現在の水産行政の方の苦労しておられるところですけれども、全体としては上向きつつあると思います。
 その次に、底質の細粒化。
 もとはアサリがよく棲む所は砂干潟だったのに、このごろ泥干潟になった。あるいは下は砂なんだけれども、干潟の表面近くに微細な砂、あるいはもっと細かいシルト、粘土などがかぶってしまう。それがいけないんだということは漁民の大部分の人が言います。
 1つは、プランクトンからおりてきた幼生は、砂粒とか貝殻とかそういうものに─アサリは親になればもちろん砂の中に自分で潜っているわけですけれども、岩礁につく貝が着底するときと同じように、足糸を出してつながるわけです。それで二、三ミリになれば足糸なしで自分で潜れる。表面に非常に細かい泥っぽい成分が層になっていますと、小さい子供は安定できない。ちょっと風波があれば洗い出されて転げます。現に、かなりたくさん幼生はおりているんだけれども、泥を調べると2ミリ以下の死に殻がたくさんあって、5ミリあるいは1センチになっている若い貝は、着底初期の稚貝の数に比べると随分少ないという場所もあります。ですから、余り細かい粒度の底質が堆積するのは、少なくとも表面にかぶるのは貝類にとっていいことではないということになります。
 それから先は、1つは、その泥はどこから来たのかということがあります。
 熊本県側の湾入部は、資料3-3の66ページの図で見ていただきますと緑川、白川とあって、白川が熊本市内を流れてきて、かなり汚れた状態で入ってきます。それから菊池川というのがありまして、ここも一応産地です。それから、この図は濃い緑色が80年代で、その中に赤丸で囲った空色の部分が現在ですけれども、昔は大産地だったけれども、今はほとんどとれなくなっているという地域が荒尾といって、すぐ隣が福岡県の大牟田市になります。
 この地図で見ますと、緑川河口干潟が今でも一番たくさんアサリ産額がございます。ただ、ここでも泥っぽくなったのは確かだと。それから白川の河口の所、これは細粒分が随分流れ込んでいて、この前の所には、夏には貧酸素になるようなシルト質のものが干潟の全面にたまっています。こういう状態は、やはりこの20年ぐらいの間に劇的に起きてきたのだろうと言われております。
 そして、資料2-2の3ページ目に国土交通省の方からいただいた表がございますが、アサリ漁民たちに言わせると、これは緑川ダムの工事が64年から始まって、70年に一応完成しています。アサリのピークは75年から78年、80年ぐらいまで。ですから、その最初のうちは、上・中流での砂、砂利採集の影響がそれほどだとは思わなかったけれども、とにかく砂が来なくなった。
 もう一つは、砂利や粗砂をとる業者は必ず川の中で篩うので、自分たちが必要な粗い成分だけは商品になるので持っていくけれども、洗われてできた細かい成分が水の中に流れて、それだけが海まで来るんだと。そして干潟表面に沈積して、じっとしていてくれれば表面が泥でもまだいいんだが、海の方から風が吹いて、いわゆる風波で巻き上がっただけでも干潟の上の、昇水時の水深が50センチ、1メートルしかないような所では、その干潟の上の風波を潮流によって再懸濁して巻き上がった細粒分がアサリの生存に悪い影響をしているのではないかと考えられます。
 「これは学者さんに証明してもらったわけじゃないけど、漁師はみんなそう信じとる」という話を去年、今年、漁民との懇談会を幾つかの漁協でやりまして、特にこの緑川の漁民たちが声を揃えて言うものですから、一応ここに紹介しておきます。
 ただ、川によって、例えば菊池川の場合は上の方にダムがございませんし、その場合には干潟もそんなに泥化していないということがあります。
 それから、先ほどの図で、現状では、南の方が大産地で北へ上がっていくほど数が少なくなっているんですけれども、これは近ごろ東京湾、三河湾、瀬戸内海の一部でも、どこで生まれた貝の幼生がどの範囲をプランクトンとして回ってどこへおりるのかという過程の研究がかなり明らかになってきました。例えば東京湾ですと、千葉側の一番奥の方で生まれた貝の幼生たちは、プランクトンになってぐるっと反時計廻りに東京沖から神奈川側を回って、そしてまた千葉県の真ん中より南のあたりから東岸へ廻って小櫃川干潟の方へ帰っていくんだとされています。有明海でも、熊本県立大のグループが幼生の分布、着底地の研究をやっていますが、緑川が一番大きな発生源で、ここで発生した幼生が北へ上がっていって、それぞれの所でおりる分と、自分の、一番大きないい干潟があるものですから、緑川干潟へおりる分とがあって、ある年などは、菊池川には卵の生めるような大きい貝が全然いないのに、次の春にたくさん稚貝がおりている。これはやはり緑川が非常に大きな供給源なので、ここを潰してしまうと有明海のアサリ漁は全面的に後退したままになるだろう、ここの干潟が余り泥っぽくならないように何とかできないかという議論をしております。
 それから、基盤の安定化です。
 これはちょっと表現をどうしたものかと思いましたけれども、例えば、一番北の方の荒尾干潟というのは、この二、三十年の間に干潟の輪郭が変わった。しっかりした固い干潟の前線があった所がぐずぐずになって、人が歩くとずぶずぶ沈み込むようになるとか、それから、しっかりした干潟の中に幾つかの澪筋が流れて、それで全体の泥っぽいものとかそういうものを吸い出して外へ出していたのが、今はあちこちにでこぼこがあって、潮がすっかり引いても水たまりがあちこちにあって、そういうものは昔はなかったものだということがございます。ただ、その安定化が変わってきたのはなぜかということについては、漁師たちでも「それはわからん。あんたらが考えてくれたらよかろうもん」という程度です。ですからこれは、問題はあるんですけれども、回答の方向性は私もよくわかりません。
 4番目に、シャットネラ赤潮でアサリは死ぬかということを宿題にいただきましたけれども、大産地である熊本側の沿岸では、赤潮でアサリが大被害を受けたことはないようです。ただ、諫早湾の場合は奥の方に潮受堤ができまして、少し奥行きが浅くなったわけですけれども、北側の小長井という所で岸辺の方にアサリの養殖場をつくったんですけれども、2000年代の初めに、何年か続けざまに夏の赤潮にやられて大量に貝が死んでしまった。その赤潮は、締め切りがなかったら昔はこんなに起きなかったという話があって、そして現在は、長崎県と諫早湾の干拓事務所がバックアップしていらっしゃるんだと思いますが、北側の小長井と、それから南側の島原半島の肩の所の出口になりますが、瑞穂町という所で、地盤を少し上げるとか表面の覆砂をする、あるいは作澪といって水通しのいいように畝をつくる。そういうことをやりましたら、去年、今年はアサリが非常によく着いて、赤潮の被害もないようです。
 ただ、赤潮はアサリ場を主に発生するのではなくて、湾のもっと広い範囲に広がったものがアサリの養殖場にまで入るか入らないかということだと思いますから、一、二年ではまだどうなるかはわからないと思います。ですから、これはクエスチョンマークにしております。大干潟のある熊本県の沿岸では、赤潮による大きな被害はないようです。
 それから、近ごろナルトビエイという大きな暖海性のエイが入ってきて、それが大量に貝を食べる。深い所ではタイラギも食べるし、浅い所ではアサリも食べればサルボウも食べるという話で、これも前に山口委員などから詳しくお話がございました。熊本県水産研究センターの飼育実験では、体重2キロの1匹のナルトビエイに毎日餌をやったら、1日に1キロずつアサリを食べる。この摂食速度でエイの集団がアサリ漁場を荒らせば、一ヶ月の間に随分の量のアサリを食ってしまうということになります。しかもこれが群れになって入ってくるので、場所によっては1日に数トン食われたらしいという報告もある。
 これは一応今のところ、補助金をもらって漁師たちが獲っております。それが低下傾向にあるのか、獲っても獲っても毎年ずっとそうなのかも、まだ見通しがつかないことです。
 それ以外のアサリに対する食害としては、肉食性の巻き貝のキセワタとかツメタガイの仲間による被害も今まで繰り返し話題があって、そのたびに補助金をもらって漁民自身がとったりしていたんですけれども、最近出てきたナルトビエイの被害と、アサリ漁場を食害から防ぐために干潟の上にぎっしり古いノリ網を敷いたり、杭や棹をたくさん打って、平べったく体を広げて侵入してくるエイが濃密なアサリ漁場へ入ってこないようにするといった対策をやっているということです。
 6番は、天気が異常だったらアサリが死ぬ。これは当たり前のことで、ずっと昔から繰り返されていることかと思いますが、豪雨が降って真水が干潟を覆うと、それで貝がかなり死にます。その場合に、大きい貝は深い所で我慢できるんですけれども、その年生まれの稚貝の場合、せいぜい1センチか深くて2センチ、大抵1センチぐらいの所に数ミリから1センチの貝がいるんですけれども、そういうものは真水がかぶっても死ぬし、風や潮流で細かい泥分が懸濁した場合も、一番こたえるのはこの稚貝のようです。これはハマグリでも今までに報告がございますし、これを食いとめるのは事実上、ちょっと無理だと思いますけれども、そういう天然現象によっての大量死もあるし、特にそれは、万一にならないものにとってはかなりインパクトが大きいということです。

○須藤委員長 菊池先生、どうもありがとうございました。
 ただいまのご説明に、何かご質問ございますでしょうか。

○細川委員 資料の中には明記されていなかったように思うんですけれども、アサリの幼生の潮流による運ばれ方について、緑川から北側に熊本県沖に沿って北上するのではないかというご説明がありましたが、これは調査、観測されているんですか。

○菊池委員 まだ余りきちっとではないように思います。ただ、南の漁場で子供の貝がたくさん出る時期に、もともと親貝も少ない北の方にも出てくるというので、東京湾でもどこでも大体回り方のパターンが同じなので、それがあるのではないかという程度です。ただ、これも多分、流れについても資料は集めていると思います。

○細川委員 もう一つ、熊本県側のアサリの漁場が高波浪のときに濁るというお話でした。先ほど私、湾の奥の方の濁りの原因は潮流流速が主で、潮流流速によって運ばれるというようなことをご説明しましたけれども、あのレポートの中で、熊本県側でときどきSS濃度の高いピークが観測されて、それは高波浪のときだったという結果が出ております。そういう意味で言うと、熊本県側の泥の運ばれ方に波が大きく影響しているということは、水理的な観測からも言えるのではないかと思います。
 そのときに、覆砂の実験をなさったときにも潮流の流速はよく調べられているんですけれども、波浪によって覆砂の上の泥がなくなったとか、たまったとかいうようなこともあわせて、今後、覆砂実験をなさるときには観察していただくとよろしいかなと思います。

○菊池委員 そうですね。
 それと、有明海のあちこちの川でみんなそうなんですけれども、特に前に泥干潟があるような川は上げ潮のときに泥が上がっていってはそこに沈殿するので、大変な労働をしないと河口が閉塞されてしまうという問題があります。ですから、諫早湾の奥の川などの場合には何年かに一度の大雨で河口部の水があふれ出すと、地元の人たちが腰まで泥に沈んで、共同作業で泥を掻き出して河口部の閉塞を防いでいたそうです。締め切りができたのでそういう労働からは解放されたんだという話も地方紙で読んだことがあります。
 佐賀の方の沿岸でも多分そうだと思いますけれども、上げ潮のときに混濁して巻き上げられたものが上流側へ動く、上流から水が大量に流れてくるときにはならないと思うんですが、降水量が少ない季節などで大潮のときに、河口から上流側に運ばれ、それがそこへ張りついてしまう。ですから、河口を行ったり来たりしている細泥分の移動があるように思います。

○福岡委員 底質の細粒化に関して、書かれている内容にやや問題があるということを、申し上げたい。
 川は本来、流域に降った雨を通過させる役割を持っていますから、流域と河川の関係をよく理解しないとなりません。河川で行われている行為が物質の移動に影響するというなら、それは検討すべきですけれども、河川は本来的に物質を通過させるもので、山地等で降った雨水と土砂を川から海まで運んで行くものです。そこにダムがあることによって、土砂が貯水池にたまって下流に対して悪影響があるとすれば、土砂を除去し、河川に還元しなければなりません。海に対して河川というものをどう考えるのか。この特措法に基づき、今後の対策を考える上で、川の位置付けを考えてみる必要があると思うんです。
 すなわち、これから、いろいろな対策を検討していくときに、こういうことをやれば有明海のアサリ等の問題についてはよい方向に動いていくというようなことを考える。これは川だけではなくて、川に関わるものを総合的に考えて検討していかなければいけないと思うんです。そうしますと、山地から出た土砂が、川を下って海まで行く過程の中で、上流の土地利用とか農業のやり方とか、あるいは海の中で行われている諸々のことによって海底の細泥化が起こるその原因を見極めなければなりません。何となく観念的、感覚的に、原因を決めつけるのでは対応が不十分になるのではないかと思うんです。
 といいますのは、今回、出ている資料を見ますと、平成になってから砂利の採取はもうほとんど行われていず今後もないということです。私は、この緑川とか白川にずっとかかわってきています。土砂移動、河床変動問題については相当の知見を持って言っているという意味で聞いていただきたい。過去の砂利の採取の影響は、河床の低下に出ています。おっしゃるとおりこれまで砂利採取は影響しましたが、今後は砂利採取の影響はほとんどないと考えています。
 河床の変動図が資料2-2の4枚目に出ています。これで見ますと、昭和43年から昭和63年までは河床高さが変化しています。この河床高が変化した理由は、砂利採取です。砂利採取は決定的に河床低下に効いています。日本全国の河川がそうであります。それ以降の平成6年、13年の緑川の河床は安定しています。今後ともこの安定状態は続いていくでしょう。ただし、緑川ダムによる堆砂は、おっしゃるとおり増えています。計画堆砂までは全然達していませんけれども、計画で考えられていたよりも少し多目に堆積しています。これについては、有明海への土砂の流出にかかわりますから、河川への土砂の還元を検討していかなければならないと思います。
 緑川の河口干潟が細泥化することは、川を一つの原因として、Bに指定していますけれども、今後いろいろな対応策を考えていこうとするときに、その意味は、どういうことなのかということをよく考えていかないといけません。今まではこうでした、その影響はこの程度でした。今後、そういうことはなるべく生じないようにするためにどうするのかという意味での評価であるべきと私は思っています。今後は砂利採取はないので、これまでのようにはなっていかない。ダムにたまった土砂については、何らかの方法で河川や海に還元していかなければなりません。どんな方法が可能なのか考えなければならないと思います。
 そうなりますと、この有明海、八代海への土砂の問題を河川との関係で何が問題なのかを考えたときに、上流域の林地や農耕地等の流域の土地利用がどのような状況にあって、河川に土砂が入ってきてどう出ていくかということを理解することが重要です。海へ出て行く土砂について全て河川に問題ありと決めるのは、私は少し違うのではないかと思います。流域としてどうかを考える必要があります。
 川が関係する他のセクターとともに協力していろいろなことを検討していく。そして八代海、有明海をよくするために何が必要なのかを考えていくことが必要です。河川の課題ということで言い切ってしまって、何か、今までこうだったということだけでBと言ってしまって、これからの対応をどうするかとなったときに、恐らく手段を持たない。もっと総合的に、関係する問題と合わせ技で議論し、対応を考えていかないといけないのではないかと私は申し上げたい。

○菊池委員 これ以上に上から砂は来ない、あるいは途中で砂をとられることもないだろうということは、私も存じております。ですから、これはいわば過去についての漁師さんたちのぼやきが大きいんだと思います。
 ただ、もう一つ、今、干潟漁場を改善するために覆砂をすればよくなるということがある。これは海の底の砂をとってくるんですけれども、さっきは申し上げませんでしたが、この間漁民との懇談会でそうやって干潟がよくなった、悪くなった、覆砂した所だけがちゃんとアサリの子供が育つんだという話をしていたら、最後に「うろこ物の漁師にも物を言わせろ」という人が出てきまして、「あんたらは喜んどるけども、それで海の底をさらわれた俺たちは本当に苦労しとるんだ」と。何か底曳き網や流し刺網などの網漁の漁師さんのようでしたが、とにかく海の底の砂をみんながとるものだから、あちこちの県でみんな砂をとって覆砂をやり出すと「これから先、有明海のうろこ物の漁師はどうしていいかわからんやないか」という話が出て、アサリの漁師の方が人数は圧倒的に多かったんですけれども、「そうやな、困ったな」という話になっておりました。
 ですから、これも今後に向けて何をするかということから言えば、私たちは漁師の話に引っ張られて、ちょっと過去の話をし過ぎかなと。

○須藤委員長 福岡先生、この部分は先生のお力を借りなければいけない。私も流域管理、前もそのことをおっしゃっていただいていますよね。ですから今度、再生に向けては、今のような論点を入れていくということでよろしいですね。私は当然そうだと思っていましたので。
 先生からのこの間の資料やら、いろいろプレゼンテーションいただいていますので、それはまたこの中に生かしていくということで、今のお話はそれでよろしいですね。
 ほか、よろしいですか。

○中田委員 砂の供給ともちょっと関係するのかもしれませんが、化学物質でマンガンの影響について指摘しておられるところもありますが、それについてはどう考えておられますか。

○菊池委員 今のところ、わからない。ただ、つい半月ぐらい前にあった学会のときに、県立大の堤さんは「大分わかってきました」「何だ」と言ったら、要するに、砂粒にくっついているマンガンは余り問題ない。それから、淡水が流入している所と海水が濃い所でも、トータルのマンガンの量が違っても、それによって生物影響が違うんだということで、今、室内実験をやっていますけれども、大分わかってきましたと言っていました。
 ですから、まだその結果は学会発表にはなっていないけれども、御本人は、もう少しやってみるつもりだという話です。私自身は、まだ今のところ、どちらに手を挙げるというような確信はございません。

○小松委員 底質が細粒化するということで、細粒化すると巻き上げて懸濁しやすいわけですね。これはさっき潮流潮汐ワーキンググループの方で、潮流が弱くなったから透明度が上がってきたという話があって、2つの要因が逆方向、ぶつかる方向になっているわけですね。この熊本沖の砂質干潟の所でアサリが8割方とれるということなんですが、この辺は、かつては砂質だったので余り懸濁しなくて透明度が高かった。最近は、潮流は弱くなっているけれども、細粒化によって懸濁傾向にあるということになるんでしょうか。

○菊池委員 懸濁傾向というよりも、しっかりした砂の上に薄く細粒分の堆積があって、それは潮流でも動くし、風波で沖から波が来ても揺り戻されて懸濁状態が起きる。確かに、深さ20センチ、30センチぐらいのチャプチャプ水が動いているときに歩きますと、砂の干潟ですけれども、表面はかなり濁っているという状況にあります。

○滝川委員 資料2-2の2枚目の6番、大雨・猛暑等の気象要因のところで確認なんですが、2行目の真ん中ぐらいに「豪雨が続いたり」という文章がありまして、先生のご説明だと、雨水といいますか、塩分濃度が下がるからというご説明でわかったんですが、ここの文章だけ見ていると、豪雨が続いたことによる懸濁という─だから両方にかかるのか、それとも塩分濃度の低下と解釈した方がいいのか、そこの確認なんですけれども。

○菊池委員 ああ、そうですね。これは原因は別々ですけれども、やはり水の動きでも細粒分の懸濁はある。豪雨の場合には、これは川の上の方から流れ込んでくるものだろうということで、やはりこれは両方にかかっていますね。

○滝川委員 ですよね。その辺、もっとクリアに書いていただけたらと思います。

○須藤委員長 では、表現としてクリアに。それは事務局の方でお願いします。

○滝川委員 大雨が降るとかなり懸濁物が流れ込んできますので、その影響も当然あると思いますので。

○須藤委員長 ありがとうございました。それでは、ちょっと時間が押していますので、この辺の問題は、まだいろいろ究明しなくてはいけない点もあるようにも思いますが、次に予定されている議題がございますので、汚濁負荷について事務局からご説明願います。

○環境省閉鎖性海域対策室長補佐 資料2-3についてご説明いたします。
 2ページ、まず目的ですけれども、第15回の評価委員会におきまして環境省の方から、陸域からの流入負荷ということでご報告させていただきまして、今回は、陸域以外に降雨であるとか養殖に伴う負荷、直接海に入るような負荷を試算いたしましたので、それを報告させていただきます。
 3ページをお願いします。
 海域への直接汚濁負荷源の分類といたしましては、降雨、ノリ養殖に伴うもの、魚類養殖、底質からの溶出と区分しております。
 4ページをお願いします。
 算定方法でございますけれども、降雨につきましては、年間の降水量に海面面積を掛けたものに単位体積当たりの負荷量を掛けたもので試算しております。
 ノリ養殖につきましては、各県から入手した酸処理剤なり施肥のデータに基づくものでございます。
 魚類養殖につきましては、投餌量の中の窒素とリンの含有量から、収穫した魚類に含まれる窒素、リンの含有量を引いた差分を負荷量として算定しております。
 底質からの溶出につきましては、NとPにつきましては環境省調査から試算した数値を使っております。
 5ページをお願いします。この試算の結果でございます。
 まず、有明海についてでございますけれども、T-Nにつきましては最小値と最大値の幅があったものですから、2つ数字を並べております。
 CODにつきましては、降雨については全体の5から8%程度、ノリ養殖につきましては0.1から0.8%程度でございまして、ほとんどが陸域からの流入負荷となっております。
 Nにつきましては、降雨が3から6%、底質からの溶出については最小値で約1割、最大値で約2割程度でございます。最近のノリ養殖に伴う負荷につきましては、全体の0.3から1%程度でございました。残りの陸域からの負荷については、7から8割程度を占めるということでございます。
 Pですけれども、これは降雨が全体の一、二%、底質からの溶出については6から10%、ノリ養殖に伴う負荷が1.2から1.8%程度、残りが陸域でございますけれども、全体の9割前後を占めるということになってございます。
 そういうことでございまして、有明海の汚濁負荷については、全体的に見て、前回ご報告いたしましたものと形としてはほとんど変わらない傾向になってございます。
 続きまして7ページでございますけれども、八代海でございます。
 まず、CODでございますけれども、降雨が全体の約2割程度、ノリ養殖については0.1%未満でございました。残りが陸域からの流入負荷でございまして、全体の8割前後を占めております。
 Nでございますけれども、降雨については全体の4から14%、魚類養殖が全体の6%から40%、底質からの溶出が最小値で大体1割、最大値で約2割程度でございました。残りの陸域からの流入負荷量については、近年はおおむね4割程度で推移しているということでございます。魚類養殖の負荷につきましては、昭和50年ごろから増え始めまして、平成7年にピーク、6,400トンに達した後、近年は減少傾向、平成13年の値は4,900トンとなっております。
 Pにつきましては、降雨が全体の1から6%、魚類養殖の負荷が全体の7から57%、底質からの溶出が最低値で、近年は全体の14%、最大値で近年は全体の3割程度ということでございまして、残りの陸域からの流入負荷量につきましては、全体の3割程度ということでございました。魚類養殖につきましては、これもNと同じでございますけれども、昭和50年ごろから増加を続けまして、平成7年にピークとなりまして、近年は減少傾向にあるということでございます。

○須藤委員長 汚濁負荷、それほど際立った増減では─最近は低下傾向にある。最近、急に上がったのではないかといった話もなくはなかったんだけれども、データを整理していただくと、今のとおりでございます。ご質問があれば。よろしいですか。
 それでは、次に諫早湾のご説明をお願いいたします。

○環境省閉鎖性海域対策室長補佐 それでは、諫早湾の状況につきまして報告させていただきます。
 まず、項目でございますけれども、1から8にございますような項目について、公開されているデータなどを用いまして整理いたしました。
 まず、海域区分でございますけれども、湾奥部の測点に4点、湾の中央部に3点、湾口部に4点の測点を打っておりまして、それぞれこういった3つの区域に分けてデータを整理しております。
 まず、CODでございますけれども、湾奥部から湾口部にかけて、おおむね5ミリグラム/リットル以下の範囲で推移しておりまして、経年的に一定の変化傾向は見られないということでございました。
 T-Nにつきましては、おおむね0.7ミリグラム/リットル以下で推移しておりまして、経年的に変化傾向はないということでございます。
 Pにつきましても、おおむね0.1ミリグラム/リットル以下の推移ということで、特に経年的な増減傾向はないということでございました。
 続きまして汚濁負荷でございますけれども、2000年と2001年、諫早湾の潮受堤防の排水門から有明海に流れ込む負荷量について算定したものでございます。有明海流域から入ってくる負荷量全体に対しまして、CODについては2.1%から2.5%程度、T-Nにつきましては1.1から1.5%程度、T-Pにつきましては1.6から2.2%程度の割合を占めております。
 干潟・藻場でございますけれども、これは参考までに、有明海における干拓の経年的な推移を示したものでございまして、江戸時代のころから干拓が行われておるというようなことでございます。
 諫早湾の状況でございますけれども、先ほどございましたように、湾奥のこの辺に干潟があったわけですけれども、潮受堤防と干拓によりまして約15平方キロメートルの干潟が消失したということでございます。藻場につきましては、諫早湾周辺では確認されていないということでございます。
 続きまして、潮流・潮汐でございますけれども、これは潮受堤防締め切り前後を比較したものでございます。これは潮流潮汐ワーキンググループの方で既にごらんになっている資料かと思いますけれども、(M2+S2)分潮長軸流速の比較でございまして、湾奥では、当然のことでございますけれども流速が大きく減少しますが、湾口に向けて次第に変化傾向が、一定の変化傾向が見られないというようなことが報告されてございます。
 次に、実際の潮流・潮汐の、平均大潮期の流況図でございます。上が平成元年、下が平成13年になります。左側の図が下げ潮時、右が上げ潮時になっております。当然ですけれども、湾奥については大きく潮流が減少するというようなこと、湾口部につきましても、シミュレーションなどでは大体5%ぐらい減ると報告されておりますけれども、若干の減少が見られるということでございます。
 続きまして、底質でございますけれども、諫早湾の粒度組成につきましては、経年的に一定の変化傾向は見られないということでございまして、礫から砂、シルト、粘度でそれぞれ区分しておりますけれども、そもそも非常に含泥率が高い底質ですので、なかなか明確な傾向はないというようなことでございます。
 次に、CODでございますけれども、湾奥部と湾央部の底質につきまして、経年的にCODの増加傾向が見られました。ただ、最近は、ほぼ横ばいもしくは減少傾向で推移しているというようなことでございます。湾口部につきましては、一定の変化傾向は見られないということでございました。
 硫化物ですけれども、湾奥部につきましては、経年的に増加傾向が認められます。ただ、湾央部と湾口部については、一定の変化傾向は見られないということでございました。
 貧酸素水塊に関係しまして、まずDOのデータでございますが、まず、湾奥部のS7でございますけれども、これはデータをとり始めたのが平成13年からでございますので、それ以降のデータを示しております。夏の時期に4ミリグラム/リットルを下回る低い値を示す場合が見られるということでございます。
 それから、実際の貧酸素水塊に関する調査でございますけれども、湾奥から諫早湾にかけて連続観測をしたデータでございます。鉛直分布を示したものでございます。Aが佐賀側、S4が諫早というふうに断面を切っております。ですから、こちらが佐賀県側の貧酸素水塊、こちらが諫早湾側の貧酸素水塊ということで、それぞれ独立して観測されております。
 これは平面的に見たものでございますけれども、こちら側とこちら側で出ているということで、これは既に西海区水研の木元さんの方からご報告があった内容と、ほぼ同じでございます。
 続きまして赤潮ですけれども、諫早湾の赤潮発生件数は、経年的に増加傾向を示しているということでございます。これは有明海全体でもそういったことが見られます。
 ただ、諫早湾の赤潮の種類につきましては、ここにありますように、渦鞭毛藻とラフィド藻の割合が大きい。こういった種類の赤潮が特に増えていると言えるかと思います。
 また、日数につきましても同様に、経年的な増加傾向が見られます。ただ、この傾向については、有明海も同様であるということでございます。
 底生生物でございますけれども、湾奥部で減少が見られるということでございます。これにつきましては、重量の大きいサルボウガイの減少によるものということでございます。湾口部については、一定の変化傾向は見られておりません。
 それから、それぞれの底生生物の平均個体数の変化でございます。湾奥部、湾口部を示しておりますけれども、季節による変化はかなり大きいということですが、これも特にその傾向があるわけではないようです。
 それから、主な種類でございますけれども、湾奥部についてはシズクガイが多い。湾口部では、ヤマホトトギスガイであるとかクダオソコエビのような個体変動数の大きい種や、移動性の高い種が一時的に増えるような傾向が見られております。
 魚の方でございますけれども、稚仔魚を採取したところ、湾奥部と、湾央部及び湾口部ではゼロから10種程度で推移しているということでございます。
 それから、稚仔魚の出現個体数につきましては、湾央部及び湾口部よりも湾奥部の方に多いという結果が得られております。

○須藤委員長 何かご質問、コメントございますか。
 諫早湾はモニタリングを全体の中で一緒にやっていないので、今日こういうことでご説明いただいたわけですよね。全体として、有明海の中で、諫早湾の環境特性として何か特別なものはありましたか。経年変化とか何とかいろいろなことでも、そんなに変わっていないですよね。有明海全体の中で諫早湾が特異だというものはありますか。

○環境省閉鎖性海域対策室長補佐 そういった点はないかと思いますけれども、実はデータとして非常に揃っているので、例えば硫化物については最近、非常に増加傾向にあるとか、それは調査が有益に行われているという点について幾つか目につく点はありますけれども、そこはほかの海域に比べて調査が非常によく行われているという点も考慮しなければいけないかなと思います。

○須藤委員長 モニタリング度が高いから、それが非常にクリアになってきているという理解でよろしいですか。

○環境省閉鎖性海域対策室長補佐 そのように私は感じております。

○須藤委員長 ほかに、何かございますか。
 諫早湾の水質のモニタリング結果を特別に出していただいたのは、多分今回が初めてだと思いますが、よろしいでしょうか。余り特別にここはどうということではないという結論だそうです。ただ、測定回数なり測定地点の数も多いので、綿密な調査が行われてきたということであります。
 負荷量も大丈夫ですよね。負荷量も、たしか池の水質がずっと余りよくないですよね。それから負荷量がありましたが、それも大丈夫ですね。─大丈夫ですねという意味は、この程度だから全体からすればすごく少ないんだけれども、あそこの水質がよくなればもうちょっと負荷量が減るということですよね。そういう意味ですね、負荷量としては。

○環境省閉鎖性海域対策室長補佐 水質は、依然としてCODの高い値です。

○須藤委員長 高いですよね。あの辺、問題だと思うので……

○環境省閉鎖性海域対策室長補佐 今回、データには含まれていませんが。

○須藤委員長 ただ、あの水質改善はここの守備範囲では─守備範囲になるのかな、再生事業になったら多分、守備範囲になるんでしょうけれども、その辺のところもきちっとチェックしておいていただいた方がよろしいかなと思います。
 それでは、次の議題は、再生事業に関する参考資料でございます。これについてご説明願います。

○環境省閉鎖性海域対策室長補佐 それでは、参考資料をご説明させていただきます。
 これは評価委員会で委員会報告を取りまとめる際に、再生方策について章が立っておりますので、それを作成するに当たって、各省がどのような事業を行っているのかということで、参考までに各省からデータをいただいて取りまとめたものでございます。
 まず1ページでございますけれども、青いラインが引いてあるところは、特措法に基づく事項ごとに整理しておりまして、1ページは汚濁負荷について、各県、各省庁、排水対策等を行っているところでございます。
 めくっていただきまして、次の青いところは海域の直接浄化対策ということで、漂流ごみ対策などの活動が記載されております。
 その下でございますけれども、河川における流況調整ということで、ダム放水であるとか、1級河川における流量の観測であるとか水質調査の実施などが記載されております。
 3ページ、土砂の適正な管理でございますが、これは土砂動態の調査などを行うとともに、1級河川については砂利採取規制を行っているということを記載しております。
 その下の河川、海岸、港湾の整備でございますけれども、ヨシ原の復元であるとか河口域における干潟の造成といった事業が記載されております。
 一番下のたい積物の除去、覆土、耕うんでございますけれども、これは漁場造成ということで、作澪であるとか、作澪で得た砂を覆砂に使うといった事業が記載されております。
 次のページ、増殖の水深でございますけれども、クルマエビであるとかマダイ、ヒラメの種苗放流の実施が記載されています。
 その下の養殖の推進ですけれども、ノリにつきましては、高水温であるとか色落ちへの対応といったことで、ノリの品種開発事業を記載しております。
 次のページでございますが、チ、有害動植物の駆除に関する事項ということで、ナルトビエイの駆除事業を記載しております。
 リ、調査研究等の推進でございますけれども、海洋観測ブイのネットワーク化であるとかデータベース化、あとはデータの普及と提供といった事業を記載しております。
 続きまして調査研究でございますけれども、タイラギであるとかアサリの覆砂の実証事業などが行われているということでございます。
 また、貧酸素水塊対策としては、微細気泡装置による技術開発といったものも記載しております。
 次のページをめくっていただきまして、一番上でございますけれども、評価が一定していないような覆砂なり耕耘、作澪の技術開発のためのマニュアルの作成についても、これはまだ検討中ということでございますけれども、事例として挙げていただいております。
 また、貧酸素水塊でございますけれども、予察であるとか防除技術の開発といったことも取り上げております。
 その下、調査研究体制の整備でございますけれども、これは環境整備船「海輝」による調査結果であるとか流況観測結果について、環境情報システムを整備するというようなことで、データ提供を行っているということでございます。
 その他の重要事項といたしましては、森林保全のための取り組みであるとか、最後のページになりますが環境学習であるとか、啓蒙普及用のパンフレットの作成などを行っているという取り組みでございます。
 一部でございますけれども、関係省庁が実施している再生関連事業について紹介させていただきました。

○須藤委員長 本来ですとここでご質問をいただかなくてはいけないんですが、ちょっと遅れていますので、ご質問は最後に骨子案の中でもしあればということにして議事を進行させていただいて、本日のメインの議題である委員会報告の骨子案を事務局からご説明願います。簡潔にお願いいたします。

○環境省閉鎖性海域対策室長 資料3-1、3-2、3-3をごらんをいただきたいと思います。
 まず、資料3-1でございますけれども、これは委員会報告の第1から3章ということで、評価委員会の経緯、それから有明海、八代海の概要、環境変化ということでございますけれども、これにつきましては、基本的には2月に出しました中間取りまとめをベースに、その後、特に八代海についての知見をいろいろ検討していただきましたので、そういうものを加えたりということで手直ししたということでございます。
 先生方には事前にお送りしていますけれども、時間もございませんので、中間取りまとめの時点から変わったところをかいつまんでご説明したいと思います。
 まず最初のページからでございますけれども、評価委員会等の設置の経緯を簡潔に書いてございます。
 1ページの下から、有明海・八代海の概要ということで、これも中間まとめの内容をコンパクトにしたということで、両海域の概要。
 3ページからは漁業生産の概要ということで、基本的には中間まとめのラインで書いております。
 5ページからは環境変化に入りますけれども、まず、汚濁負荷ということでございます。これは中間まとめの段階で、陸域からの負荷ということで書いてございますので、これにつきましては今日、発表いたしました海域への直接負荷の部分をつけ加えたいと思っておりますけれども、これにつきましては、まだそこは加わっていない方でございます。
 6ページから河川ということで、これも中間まとめの内容を少しコンパクトにして、それから図表も、中間まとめではたくさん図表がございましたけれども、読みやすくする観点から主なものだけ残しまして、残りのものは別添資料として別冊にさせていただく形で整理してございます。
 河川につきましては、8ページの(2)球磨川のところを新しくつけ加えております。これは八代グループでご検討いただいた球磨川における流量の経年変化でございますとか、ダム堆砂、砂利採取量等のデータを載せてございます。八代海でも湾央部では泥化の傾向があるということで、こういうものを載せております。
 (3)として水質でございますけれども、これは、中間まとめでは公共用水域の測定結果をベースに書いてございましたけれども、その後、公共用水域は沿岸域に限られるということで、浅海定線調査、水産庁さんの方でやっておられるより沖合の点もございますので、そのデータもつけ加えて分析してございます。それによりまして、特に透明度のデータなどがかなり加わっているということでございます。
 10ページからは、底質環境でございます。
 これも基本的には中間まとめの内容をよりコンパクトにしたということで、特に大きな変更はございません。
 その中で、重金属、化学物質についても同様に記述しております。これも中間まとめの内容をコンパクトにしたものでございます。
 13ページからは潮流・潮汐ということで、これも中間まとめの潮流・潮汐の部分を少しコンパクトにしたということで、内容は特に変更してございませんけれども、16ページの八代海については、これも八代海グループのご検討を踏まえまして、記述を追加しております。八代海についても、観測は少ないですけれども、80年以降、有明海と同様に平均潮位の上昇とか潮位差の減少傾向が観測されているというようなことを書いてございます。
 18ページからは、潮流でございます。ここも中間まとめのものと基本的には同じでございますけれども、これについても23ページに、八代海グループからいただいたものをベースに、八代海における潮流流動の特徴ということで書いてございます。
 25ページからは貧酸素水塊ということでございます。これも基本的に中間まとめと同様の趣旨でございますが、中間まとめでは平成16年度のデータだったのを、第20回の評価委員会で西海区水産研究所からご報告いただいた平成17年度のデータに差しかえてございます。それに伴いまして、26ページにございますような貧酸素化のメカニズムの模式図とか、そういうものをつけ加えてございます。
 27ページ、八代海については中間まとめではございませんでしたけれども、貧酸素水塊についての記述を、これも八代グループからいただいたものをベースに書いてございます。八代海では、基本的に貧酸素水塊は確認されていないけれども、8月に溶存酸素濃度の減少傾向が見られるというようなことでございます。
 同じく27ページの藻場・干潟でございますけれども、有明海の部分は特に変更ございません。八代海につきましては、従来、環境省の自然環境保全基礎調査だけ書いてございましたけれども、水産庁とか関係県がやっておられる詳細調査のデータを入手いたしましたので、このデータをつけ加えることによりまして、最近さらに干潟・藻場が減っているということがわかってございます。
 それから、菊池委員からもご指摘ございましたけれども、八代海の藻場については、1970年ごろから減り初めて、75年ごろに急速に減少したというような指摘もあるということで、77年の時点では既に大きく減少していたのではないかという推測を書いてございます。
 それから、より長期的な干潟・藻場の変遷を見るという観点で、29ページには、先ほどのスライドにもございましたけれども、有明海における干拓の変遷ということで、江戸時代からの干拓の面積の変遷を載せてございます。特に干拓の速度という意味では、昭和後期、昭和40年代以降ですね、かなり干拓の速度、年間の面積が増えてきているといったことがわかってございます。
 30ページからは赤潮でございます。ここも基本的に中間まとめがベースでございますけれども、若干つけ加えてございます。1つは、31ページのラフィド藻のところでございますけれども、八代海のシャットネラにつきまして、COD等の状況を見ますと、富栄養化の進行時期にシャットネラ属が定着した可能性があるのではないかというような知見が加わってございます。
 それから32ページ、渦鞭毛藻についても、これは八代グループでのご検討を踏まえて、コックロディニウム属ですか、これの発生機構について少し詳しく書いたり、2000年の夏の赤潮による漁業被害の状況も、少しつけ加えてございます。
 33ページから赤潮の発生状況等ということで、これは前回、山田委員からご報告いただいた、赤潮グループにおいて整理していただいた赤潮の発生状況について、新たに載せてございます。発生件数、発生期間、分類群別の発生の状況といったものについて、全般的に増加傾向ということでございますけれども、前回の発表の内容をコンパクトにまとめさせていただいてございます。
 35ページは赤潮の関連で、赤潮の休眠期細胞の状況。これは小委員会における文献とか八代グループにおけるご議論の中で出てきたものでございますけれども、休眠期細胞の分布を見ることによって赤潮の発生履歴に関する情報が得られるのではないかということで、つけ加えてございます。有明海でも湾央部、湾奥部の海域において休眠期細胞密度が高いというような傾向が出ているということでございます。
 その次の赤潮による漁業被害は、これも「九州海域の赤潮」のデータを整理したもので、両海域についてつけてございますけれども、近年、増加傾向にあるというようなことが言えるかと思います。
 早足で恐縮でございますけれども、以上が資料3-1でございます。
 続きまして、資料3-2について、若干お時間をかけてご説明したいと思います。
 資料3-2は、基本的に中間まとめ以降、ご議論いただいたいろいろな問題点と原因・要因の関連の考察、それから、まだこれからご議論が要るかと思いますけれども、それを踏まえつつ、再生に向けてどういう取り組みが必要かという提言にかかわる部分。これはまだ本当に項目出しの段階でございまして、先ほどの資料などを参考にしながら検討してまいりたいと思っておりますが、その内容でございます。
 先ほどの第1~3章についてはかなり文章化できておりまして、図表も入っておりますけれども、この第4章、第5章については、まだ箇条書き的なものでございますし、図表等はほとんど入ってございません。すべて別添資料に入ってございますけれども、今後、資料を作成する中で、必要最小限のものについては本文に図表を盛り込みたいと思っております。
 ご説明に入ります。
 まず、第4章の最初、基本的な考え方ということで、この問題点と原因・要因の考察をどういう考え方でやっているということを書いてございます。
 特に2つ目、3つ目の「・」でございますけれども、この原因・要因の分析の目的は両海域の再生に資するという観点で、取り組むに当たっては要因・原因を可能な限り把握した上でやるということでございまして、原因・要因の特定自体が目的ではなくて、あくまでも両海域の再生に向けた措置に資するという観点から、評価委員会としての考えを示したということだというふうに整理しております。
 2といたしまして、問題点の特定。どういう問題点があるかということで、ここにございますような両海域の問題点の特定をしておりまして、それに可能性がある要因ということで、有明海については後ろに図4.1.1とございますけれども、中間まとめの段階で可能性のあるものを全部挙げていただいた、その要因の関連図をつけてございます。これを出発点にして、その後、さまざまなデータをもとに問題点と要因の因果関係を考察しましたということでございます。
 また、同じく八代海についても、一番後ろに、前回の評価委員会で八代グループから報告いただいた因果関係の図をつけてございます。こういうものをベースに検討しましたということでございます。
 3からは核心部分に入ってくるわけでございますけれども、各問題点と要因につきましての考察でございますけれども、前回まで評価委員会に岡田先生、あるいは各ワーキンググループからご報告いただいたものをベースに、試案的なものも含んでございますけれども、そういうデータをベースに、とりあえず事務局の方で整理をいたしたものでございます。
 まず、この関連の分析は一応2段階に分かれてございまして、まず、問題点と直接関連する要因との関係、次に、では、その環境要因がどうして変わったかという2段階の分析をしてございますけれども、まず、問題点と直接的な環境要因との関連ということで、海域問題ごとに整理しています。
 まず有明海でございますけれども、まずは有用二枚貝の減少ということ。これは前回、中田委員から、ワーキンググループの議論を踏まえて先生の試案ということでご発表いただいたものをベースに、タイラギとアサリを中心に書いてございます。タイラギについては、特に長期的な減少要因と近年の斃死、減少要因は分けて議論する必要があるということで、前回の発表のことを整理させていただいています。
 次のページ、一応下線を引いた所が結論的な部分でございまして、そこを中心にご説明したいと思いますけれども、タイラギについては、長期的な減少については底質の泥化、有機物、硫化物の増加、貧酸素水塊といった底質悪化による着底期以降の生息区域の縮小が主因であろう。それ以外の要因、潮流の変化による幼生の輸送への影響は、判断できない。また、化学物質、ナルトビエイの食害、ウイルス、漁獲圧についても影響は少ないのではないかと思われるというところでございます。
 それから、近年の減少傾向につきましては、2000年以降発生した大量斃死、ナルトビエイによる食害による影響は明らかである。大量斃死のメカニズムは、現時点では不明である。活力低下時のウイルス感染の影響が認められるが、活力低下の影響は不明である。貧酸素水塊は主因ではないと考えられ、化学物質の影響も明らかでないというところが、タイラギについての取りまとめになってございます。
 アサリにつきましては、今日、菊池先生からご発表いただいたものは、まだここには十分反映されてございませんけれども、これまでの岡田先生による分析等を踏まえて事務局でつくったものをここに載せてございます。
 特にアサリについては、今日もお話がございました緑川河口域の状況を取り上げまして書いているわけでございますけれども、38ページの一番下の方からでございますが、底質の細粒化がアサリ資源の減少につながった可能性が考えられるのではないか。
 それからもう一つは、39ページの中ほどに「基盤の安定性」という言葉が出てきておりますけれども、そういうものの影響もあったのではないか。過去においては、アサリ自身が層をなして地盤の安定に寄与したということもあったのではないかということです。
 それから、漁獲圧の問題も指摘されているところで、アサリの減少に漁獲圧が大きく影響するであろう。
 それから、ナルトビエイ等による食害も、近年のアサリ資源の減少の一因と考えられるだろう。
 シャットネラについては、今日の先生のご発表では、よくわからないのではないかというお話もございましたけれども、小委員会等の議論においては、シャットネラがアサリの斃死に影響することは明らかではないかというご指摘もございましたので、シャットネラ赤潮の影響についても取り上げてございます。
 サルボウ、アゲマキにつきましては、中間取りまとめ以降さらなる解析はしておりませんので、中間取りまとめの情報をベースに、指摘されている事項を書いてございます。
 次の魚類でございますけれども、これも中田委員の前回のご報告をベースに整理させていただいてございます。
 ご報告にもございましたように、特に底生の魚種について漁獲量が減っているということで、その要因については、要因の考察の中ほどにございますように、生息場、特に仔稚魚の生育場の消滅、縮小という要因と、生息環境、特に底層環境や仔稚魚の輸送経路の悪化という2つに整理できるのではないか。
 干潟・藻場や感潮域の減少は、稚仔魚の生育場を消滅・縮小させ、また、貧酸素水塊の発生やベントスの減少は底層環境を悪化させて、魚類資源に悪影響を及ぼす可能性があるだろう。
 それから、潮流の変化は稚仔魚の輸送状況を変える可能性がある。また、潮汐の減少は、干潟の減少につながるだろう。
 漁獲圧とかノリの生産に伴う酸処理剤等、それから水温上昇、こういうものについては、魚類への影響は少ないと考えられる。また、外来種の影響とか種苗放流等の人為的なコントロール、海底地形の変形、化学物質については判断できない。
 もう一つの要因といたしまして、エイ類等の増加ということでございますけれども、これについては、底生魚類の減少でございますとか長期的な水温上昇の可能性があるのではないかということでございます。
 次は、ベントスの減少でございますけれども、中間まとめで報告されている1980年の夏と2000年の夏の調査の比較データをベースとして整理してございます。この比較をいたしますと、泥化と富栄養化の傾向が見られ、それと同時にマクロベントスの密度等が減少しているということでございます。
 次のページに、その要因の考察がございますけれども、特に総個体数とか多様性指数と強熱減量等の底質の間に有意な相関があるということで、有明海奥部については、底質の悪化、泥化、有機物、硫化物の増加等がマクロベントスの生物量でございますとか、その多様性の減少の要因となっている可能性があるのではないか。
 また、同海域で拡大が示唆される貧酸素水塊も影響を及ぼしているのではないかという推測を書いてございます。
 次に、ノリの問題でありますけれども、ノリについては、基本的に中間取りまとめの記述をそのまま整理してございますけれども、特に平成12年度の色落ち問題、それから最近、水温の上昇といったお話もあるということでございます。この平成12年度のノリ不作については、中間まとめに書いてございますように、11月の集中豪雨の後、極端な日照不足で小型珪藻が発生せず、12月初旬に栄養塩を多量に含む高塩分海水が持続する条件のもと、高い日照条件が重なって大型珪藻が大発生したということで、こういう特殊な気象条件のもとに起こったということが整理されております。
 次に、八代海でございますけれども、この部分は八代グループで作業していただいたものをベースに整理させていただいております。
 まず、魚の養殖についての状況。これはいろいろな要因で増減しているということでございますけれども、その影響を及ぼすものとしては、有害赤潮の発生とか魚病の発生が影響しているのではないかということでございます。
 ノリにつきましては、八代海においては平成14年度までは増加傾向でございましたけれども、平成15年に落ち込んでいるということでございます。要因については、まだ分析に至っていないということかと思います。
 魚類についても近年、減少傾向ということでございますけれども、特にタチウオ、マダイ、クルマエビ、カレイ等が減少しているということでございます。また、シラスの資源としての重要性ということも書いてございます。これについても、なかなか要因の分析までは至っていないところでございます。
 次に、43ページから第4ということで、今、申し上げたような各水産資源等に影響を及ぼしている環境要因、これはどうして変化したのかといった考察を書いてございます。これについても、これまでのワーキンググループ、今日の潮流ワーキンググループのお話も含めて、ご報告いただいたものを整理してございます。
 まず有明海でございますけれども、ア)として潮流流速の減少ということで、これは今日、細川先生からご紹介いただいた潮流潮汐ワーキンググループの最近の検討結果の中でのものをお示ししてございまして、有明海の潮流は、干拓、埋め立て、外海の潮位上昇と潮位差の減少、人工構造物、ノリ網の設置等によりまして、長期的かつ平均的に減少した可能性が高いということでございます。
 それから、底質の泥化でございますけれども、まず[1]潮流の減少。これも今日、潮流潮汐ワーキンググループの結果としてご報告いただいたものでございますので、説明は省略させていただきますけれども、44ページにございますように、潮流流速の減少によって湾奥部で底質の泥化が進行したことが推測されるということでございます。
 44ページの[2]河川からの土砂供給の減少ということで、これは第22回─前々回の評価委員会で岡田先生及び事務局からご報告したものでございまして、筑後川における人為的な砂の持ち出しが底質の細粒化の一因になる可能性があるということでございます。
 その次の、底質中の有機物、硫化物の増加及び貧酸素水塊。これも第22回に報告したものでございまして、赤潮の増加によりまして、その赤潮プランクトンの死骸が底に沈んで、それが湾奥部とか諫早湾の底質中の有機物の増加をもたらしている可能性がある。それから、佐賀県側の湾奥の一部海域では、そのDO濃度の長期的な低下傾向が出てきておりますので、貧酸素水塊の増大でありますとか底質中の硫化物の長期的な増加の可能性があるのではないかということでございます。
 それから、45ページにはその他の要因ということで、酸処理剤や施肥等のことも書いてございますけれども、量的な解析を踏まえると、酸処理剤とか施肥については、底質の有機物、硫化物の増加の主たる要因とは考えにくいのではないか。
 ベントスの減少についても、一つの要因となる可能性があるだろうということでございます。
 次が、赤潮でございます。
 これも前回の評価委員会で赤潮グループからご報告をいただいたものでございまして、近年、赤潮が増えてきているということでございますけれども、水温上昇が一つの要因の可能性がある。それから、透明度の上昇も挙げられてございます。
 それに対しまして、流入負荷量とか栄養塩類の増加傾向は認められていないということで、栄養塩の流入と近年の赤潮の増加との関係については、ほかの要因も含めて検討が必要であろう。
 それから、有明海の奥部とか諫早湾の底層においては、貧酸素水塊によって栄養塩とか鉄が鉄が溶出して、シャットネラの増加につながっているのではないかというようなこと。
 それから、二枚貝の減少により二枚貝の持っている浄化能力が低下いたしますので、富栄養化を招き、赤潮を増大させている要因の1つではないか。ただ、この二枚貝が赤潮原因種の植物プランクトンそのものをとるかどうか、そういう直接的な赤潮抑制効果があるかどうかについては、さらなる調査が必要だろうということでございます。
 それから、潮流が弱まることの影響もあるだろうということで、経年的に潮流の低下とか潮位差の減少が生じている海域については、赤潮の発生は増加するのではないかということでございます。
 次は、透明度の上昇でございます。
 これは今日の細川先生のご報告の中にも含まれておりましたが、有明海では経年的に透明度の上昇が見られるということで、その要因については、やはり潮流の経年的な減少により底泥の巻き上げの減少等が起因しているということを推測してございます。
 46ページには、ノリ網の抵抗による流速の減少が、ノリ養殖施設の周辺海域においてはSSの低下あるいは透明度上昇の要因の1つになっているという推測をしてございます。
 八代海については、非常に短うございますけれども、赤潮の発生についてのみ記述しておりまして、これについては有明海の方で指摘されていた経年的な水温上昇とか透明度上昇、あるいは栄養塩の流入とか、そういう状況については有明海の同様の傾向が見られるということでございます。
 5といたしまして、環境と生物生産の中長期的な変化でございます。
 これは内容的には中田先生の前々回の研究プロジェクトの発表の中で、非常に長期的な視点からの分析がございましたので、そこをベースに書かせていただいておりまして、有明海の長期的な地形変化とか外海の潮位上昇ということで、潮流は長期的に減少してきている可能性がある。特に1955年以降の埋め立ての増加があって、急速に富栄養化したのではないかということ。それから、それと透明度の上昇とか長期的な流動の減少とか、水温上昇等が重なりまして赤潮の発生が助長され、それが有機汚濁の進行と底質への有機物の堆積と相まって、底質の貧酸素化を招いた、それが生物に影響したのではないかということ。
 その底層の貧酸素化は、あわせてラフィド藻といった有害の赤潮の発生を促す。そのようなことから、底層環境の悪化が全体として魚類等の資源の減少を招いたということでございます。
 それから、生態系として見た場合には、60年代までの有明海は、植物プランクトンを中心とした浮遊生態系と干潟生態系を中心とした底棲生態系、この2つが適度なバランスであったけれども、近年は浮遊生態系が主体になってきてバランスが崩れている、それが赤潮の増加等に見られているというようなことでございます。
 次は、第5章でございます。
 第5章はまだ本当に項目だけでございますけれども、最終的にこの委員会としての提言になる部分でございますで、今後またご議論いただいて、まとめてまいりたいと思っておりますけれども、一応構成といたしましては、まず最初に目標ということで、これも本当に仮置きで書いてございますけれども、1つは、環境面から見れば日本国内でも希有な生態系、生物多様性を持っていて、生物浄化機能、そういうものを回復していくということが1つでございます。それから、水産面から見ると、バランスのとれた漁業生産力の向上というようなことが書いてございます。この辺はまだ、この委員会でも十分議論しておりませんので、今後、ご検討いただければと思います。
 (2)として、再生に当たっての環境管理の考え方ということで、これは中間まとめでも少し頭出ししておりましたけれども、いろいろまだ不確実なことがある中で、予防的な措置とか不確実性への対応とか順応的管理、こういう考え方を記述してはどうかということでございます。
 (3)として、具体的な再生方策ということで、先ほどの参考資料にお示ししたものなども横目で見ながら少し整理していきたいと思っておりますが、今日の段階では、まだあくまでも例示ということでごらんいただきたいと思いますけれども、1つは底層環境の改善ということで、覆砂や耕耘、あるいは覆砂の代替材等の、いわゆる新技術の開発、あるいは河川における適切な土砂管理といったことでございます。イといたしまして、沿岸域の環境保全、回復ということで、干潟・藻場の保全、造成、感潮域の保全、あるいはなぎさ線の回復といった対策。それから、予防的な観点から、これ以上の流動の低下を招くおそれがあるような開発を抑制していく。それから、カキ、アサリ等の貝類の増殖によって浄化能力を向上させる。あるいは生活排水対策を進めることによって汚濁化の削減を図るというようなことがございます。
 ウといたしまして、貧酸素につきましてはモニタリング、予察ということで特出しをしてございます。
 エといたしまして、いわゆる資源管理ということで、漁業者が主体となった資源管理の推進、普及啓発、あるいは種苗放流等の対策、二枚貝の食害対策、それから、やはり統計がないということで、魚類資源の動向の把握ができるような漁業統計の整備というようなこと、それから、魚類養殖からノリ養殖における負荷の抑制でありますとか、持続的な養殖業の推進ということで、酸処理剤の適正使用等も含めて書いててございます。
 (4)といたしまして、調査研究面を中心に、今後、まだいろいろと解明すべき課題がたくさん残ってくるだろうということで、今後、どういう調査研究課題を重点化すべきかということも、ぜひこの評価委員会のアウトプットとして整理していただければと思っております。
 今日挙げたものは、本当にまだごく部分的な例示かと思いますけれども、二枚貝、魚類につきましては、これも前回、中田委員のご発表の中でご指摘があったものを取り上げてございます。持続性の高い漁場の造成、改善等のための底層の流速、流向、巻き上げあるいは海底地形、こういうものの相互関係みたいなものの調査でございますとか、大量斃死の発生機構等々でございます。
 魚類については、今日もございましたけれども、特に魚類の再生産機構、生活史を明らかにした上で、特に輸送との関係で、それが生産にどう影響するか、その辺の知見がまだ足りないというようなところでございます。
 それから、赤潮の発生あるいは貧酸素水塊の発生、こういうものについても、メカニズムの解明でありますとかモデルの構築等もございますし、物質収支という観点での分析も、まだ十分できていないという認識でございまして、そういうものを踏まえた適正な負荷の管理も検討していかなければいけない。
 潮流・潮汐については、潮流潮汐ワーキンググループの中で中間まとめの段階でもいろいろと課題を出していただきましたけれども、1つの観測面がまだまだ不十分であるということと、それを踏まえたシミュレーションの精度の向上、あるいは潮流の変化によって底質とか水産資源にどういう影響が出るかということについても、引き続き課題が残るだろうということでございます。
 土砂についても、泥化というのが一つの大きなテーマでございますので、その辺のメカニズムを含めて、さらに知見の蓄積が必要であろうということでございます。
 最後に(5)取り組みの体制ということで、この調査研究課題が残るわけでございますけれども、それを総合的に推進しようということで、マスタープランの作成でございますとか関係機関の調整能力の強化、データの共有、あるいは流域とか海域全体を評価するための総合的なモデルの構築、こういったことが必要ではないかということ。
 それから、海域環境のモニタリングの継続ということで、埋め立て、干拓等、いろいろ人間活動によって影響を受ける環境や生態系が長期的に変化していくことについて、モニタリングを継続していく必要があるということでございます。
 最後に、八代海については知見がまだまだ乏しいということで、そこの調査研究の調査ということをうたってございます。
 雑駁でございますが、以上、説明させていただきました。

○須藤委員長 高橋室長、簡潔にご説明いただきまして、ありがとうございました。
 もう最初にお話しした会議の予定時間に近づいてまいりましたので、一応私から、これからの進め方、先生方のご意見をどう今の骨子案に反映させるかご提案させていただいて、まとめにかえさせていただきたいと思うんですが、11月2日までに事務局に今日の原案につきまして「ここはこの方がよろしかろう」とか、FAXとかメールとか、急ぐ場合は電話でも結構でございますので、ぜひ全員の先生からお寄せください。
 それと、起草委員をこの前、岡田先生、細川先生を中心に、各ワーキンググループのグループのリーダーというか、ご説明いたたいた方々で、全員集まっていただいて一緒にやるかどうかは後で事務局と相談しますが、とりあえず、先ほど余り文章化されていないということもご紹介いただきましたので、とにかく次回までに文章化して報告書の形態を整えたいと考えております。ですから、起草委員にお集まりいただくことも多分あろうかなと。特に岡田先生、細川先生には、それこそ折に触れてというか、ときどきというか、お願いしたいと思っております。
 そしてそれを、11月29日に予定している委員会で報告案を見ていただいて、またそこに問題があれば出していただくということで、余り私、この辺は事務局と相談していなかったんですが、今の私の提案でよろしいですか。

○環境省閉鎖性海域対策室長 はい。

○須藤委員長 ……ということで、11月29日には全部文章にしたものをここでご議論いただくということで、今日は、何かもしご注意があれば伺いましょうかね。
 では、今日の骨子案のところで何かご注意なりがあったら。進め方は、さっきお話ししたとおりです。

○滝川委員 1つ確認ですが、38ページの一番下に「底質の細粒化」と書いてあるんですが、これは後ろの表を見ても全部「泥化」になっているんですね。中の方も「泥化」になっています。やはり共通認識を持つ必要があるんだろうということで、私、「泥化」かなと思っているんですが……。そうしないと、その後ろの括弧書きにある「中央粒径値の減少」ということと結びつかない。

○須藤委員長 「泥化」でよろしいですか。

○滝川委員 ええ、「泥化」で。

○須藤委員長 ほかの先生にご異議がなければ、そこは泥化で。事務局、よろしいですね。
 そのほか何かございますでしょうか。全体を通して。進め方は先ほどのとおりでございますので、起草委員には特にお願いしたいと思いますが。

○細川委員 起草委員にご指名されている関係上、ぜひ皆さんにお聞きしておきたいのは、46ページの5章、再生への取り組みの目次立てのストラクチャーがこれでいいのかどうか。こういうところが抜けているよとか、こういう視点を入れておいたらというのが今、もしご指摘いただけるようでしたら。最後のところのスコーピングの話なので、もし今、ご意見があれば。

○滝川委員 46ページの具体的な再生方策の視点として、有明海全体を考えるのか場所、場所で考えていくのか、対策がかなり変わってくると思います。そういった意味で、全体論としての再生の方策、あるいは局所的といいますか、そういう視点もぜひ入れていただきたいと思います。

○須藤委員長 地域的な部分も……

○滝川委員 どっちで議論するのかという話も出てくると思います。

○須藤委員長 とりあえずは全体としてあるけれども、地域、地域の部分も大切だよという行き方でいいですね。

○滝川委員 はい。

○福岡委員 先ほども若干議論をしたんですが、この中で、どうも海の中の現象を再生するために、海の中に入ってくるところを意識し過ぎだと。すなわち、陸域全体として一体どうあるべきかという視点が本当はあって、すぐ即効性のあるということはできないけれども、時間をかけてやるべきものはそこにもあるんだろう。具体的には、やはり河川だけを見るのではなくて、河川流域なんだと。河川流域の土地利用とか農業形態とかそういった、土砂を出す、あるいはいろいろ汚染物質を出してくるというところについてどう考えるのかについては、即効性がなくてもある程度ぴしっと抑えていないと長期的なものになり得ないと感じます。そこを少し検討していただきたいと思います。

○須藤委員長 恐らくこの健全な水循環の確保などで、環境省の中でも環境基本計画をつくるときにはそういうことも議論しているので、この部門でしているわけではなかったんだけれども、今、先生のおっしゃったようなことは常に指摘されているので、前文とか、全体の中での書き込みなり、そこは─おっしゃるとおりだと思うんですね。だけれども、どこをどういうふうに……。いいですか、課長。何かありますか、今の問題で。当然なんです、ここは。

○環境省水環境課長 今までの形態が、海の中をやってきましたね。先生が言われるように、汚濁負荷の問題とか土砂の流入というのは土地利用形態でいろいろ変わるので、これを今、分析している状態にはなかなかないということがあるんですね。ですから、それに触れるということはあるんですが、分析結果として出すのはなかなか難しい状態なので、陸域全体を眺めるということをどこかに入れておくということで、どうでしょうか。前の方とか。

○須藤委員長 私も、前の方に今のような、水循環のときに随分議論はしたんですよ、総合的な理念を。今、先生がおっしゃったようなことを。

○福岡委員 これは中間的な取りまとめでありますけれども、将来を見ていくときに、前書きだけですよというわけにいかない面もやがて出てくるんだろうと。あるものについては。すなわち、面源の負荷の問題なんていうのはあらゆるものに効いてくる話ですから、やはり何かちゃんとしていくという姿勢を、いずれは出るようにしていただきたい。

○環境省水環境課長 そうすると、今、解明すべき課題というところにも、例えば、土砂で言えば土砂に関する知見がありまして、ここに「今後こういうことを検討していくべきだ」という書き方でしょうか。

○福岡委員 とりあえずは、ですか。

○須藤委員長 とりあえずはね。今すぐデータを集めたり何かできないから、長期目標みたいなところにそういう……

○福岡委員 一緒にやらないと効果が上がらないことを、どう考えるんですかという話だと思うんですよ。だから、やはり一緒に考えていくということ。単独ではほとんど意味のないことであって、それを一緒に考えるということをどう考えますかという姿勢は出さなければいかんかなと思っているんです。

○須藤委員長 わかりました。それは事務局とよく相談いたしまして、今の先生のご指摘はどこら辺に─今、データを踏まえてそれを書き込むのは無理なので、長期の中ではそういうことが大事だということに、どこかで触れることにさせていただきます。

○小松委員 今の福岡先生ほど長期的ではないんですが、中長期的な考えで、結局、有明海の水理環境が随分変化してきている。潮流流速だとか成層化の問題とか。そういったものを我々の知恵で回復していくことによる有明海の再生という視点も、すごく大事だと思うんですね。だから、今すぐにはなかなか難しいんですが、理念として、そういう有明海の水理環境の変化に対応して、それを少しでも回復していくことによる再生という視点をぜひ入れてほしいと思います。

○須藤委員長 有明海の変化に対応した再生をどう考えるかということについて、そこにも触れることにいたします。それでは、よろしいですか。今、三、四の先生から大事な論点をいただきましたので、これを踏まえて、さっき申し上げましたように岡田先生、細川先生、大和田先生、中田先生、本城先生にはぜひ起草のところでもまたお集まりいただいて、ご協議いただきたい。また、先生方からは、先ほど申し上げましたように、11月2日までにぜひご意見をお寄せくださいということをお願いしたいと思います。その他の議題、何かありますか。

○環境省閉鎖性海域対策室長 次回の委員会は、先ほどございましたように11月29日を予定しておりますので、よろしくお願いいたします。次回は評価委員会報告案についてご審議をいただくことになります。

○須藤委員長 ありがとうございました。これで本日の議論はすべて終了いたしました。これにて第24回有明海・八代海総合調査評価委員会を閉会いたします。議事進行にかかわる皆様のご協力に感謝申し上げて、終わりとさせていただきます。どうもお疲れさまでした。

午後0時05分 閉会