第22回有明海・八代海総合調査評価委員会 会議録

1.日時

平成18年8月24日 (木) 13:30~16:00

2.場所

新宿御苑レクチャールーム(インフォメーションセンター2階)

3.出席者

委員長;須藤隆一委員長

委員;相生啓子委員、荒牧軍治委員、伊藤史郎委員、岡田光正委員、楠田哲也委員、小松利光委員、三本菅善昭委員、滝川清委員、中田英昭委員、原武史委員、細川恭史委員、森下郁子委員、山田真知子委員、山本智子委員

臨時委員;菊池泰二委員

参考人;佐賀大学有明海総合研究プロジェクト、大串 浩一郎氏(副プロジェクト長・助教授)、速水祐一氏(助教授)

事務局;環境省水・大気環境局水環境担当審議官、水・大気環境局水環境課長、水環境課閉鎖性海域対策室長、閉鎖性海域対策室長補佐

午後1時30分 開会

○環境省閉鎖性海域対策室長 大変お待たせいたしました。定刻になりましたので、ただいまから第22回有明海・八代海総合調査評価委員会を開会いたします。
 本日は、大和田委員、清野委員、本城委員、山口委員からご欠席というご連絡をいただいております。それから、福岡先生はちょっと遅れられるということでございますけれども、現時点で定足数を満たしておりますことをご報告いたします。
 それから、冷房の調子が悪くて大変お暑くて申し訳ないんですが、少しずつ効いてきておりますので、いましばらくご辛抱をいただければと思います。
 続きまして議事に入ります前に事務局のほうで異動がございましたので簡単にご紹介させていただきます。本年7月19日付で寺田水環境担当審議官が着任いたしました。それから、水環境課長の望月が着任いたしましたのでご紹介をいたします。
 では、寺田審議官から一言ごあいさつをお願いいたします。

○環境省水環境担当審議官 ただいまご紹介をさせていただきました7月から水環境審議官を拝命しております寺田と申します。よろしくお願いいたします。これからいろいろな万端、多端にわたりましてご指導を頂戴するということになろうかと思います。
 なお本日は大変暑いところで、環境省もここでクールビズの宣伝をしようとか地球温暖化の体験学習をしようとか思っているわけではないわけでございますけれども、多少事務局の手違いがございまして、ご多忙の中こんな暑い思いをして大変申し訳ないと思っているところでございます。
 また本委員会、平成15年2月でございましょうか、発足してから22回非常にご熱心なご討議、ご議論を頂戴していると承っております。有明の特別措置法ができまして5年の見直しに向けての評価をするという大変重要な役割を担っていただいていると承知をしているところでございます。
 特措法のほうも来年にはいよいよ5年を迎えるということでございます。したがいましてこの委員会におきましてもご議論の集約というものをできますれば本年中にもいただきたいということでございます。
 これまでもいろいろとご無理を申し上げてきたかとは存じますけれども、また一層限られた時間の中で今年の作業をお願いするということになろうかと考えております。ただ有明、八代の再生に向けた関係者のいろいろな取り組みの指針となるようなものを何とか取りまとめていただければと思うところでございまして、私ども事務局といたしましても関係省庁その他の関係者ともいろいろと協力をいたしまして、何とかこの委員会の円滑な運営を図ってまいりたいと考えているところでございます。
 先生方におかれましては引き続き格段のご指導、ご協力を賜りますよう一言お願いいたしましてごあいさつに代えさせていただきます。
 どうぞよろしくお願いいたします。

○望月水環境課長 同じく水環境課長を拝命いたしました望月でございます。これからいろいろお世話になります。よろしくお願いいたします。

○環境省閉鎖性海域対策室長 続きまして資料の確認をさせていただきたいと思います。お手元の資料をごらんいただきたいと思います。
 資料1が名簿でございます。資料2-1といたしまして「問題点の原因・要因と関連について」というものでございます。資料2-2といたしまして可能性のフロー図でございます。資料2-3といたしまして底質の泥化等に関する知見の整理(作業中)というものでございます。資料3といたしまして中田委員からのペーパーがございます。資料4-1といたしまして佐賀大学の研究プロジェクトについてというもの。資料4-2といたしまして同じく佐賀大学の研究プロジェクトのコア研究グループ1の研究内容についてというものでございます。
 以上が資料でございます。もし不足しているもの等ございましたらお知らせいただければと思います。
 それでは、今後の進行につきましては須藤委員長のほうによろしくお願いいたします。

○須藤委員長 本日は大変暑い中をご遠方からお集まりいただきましてどうもありがとうございました。本日も傍聴の方々にもたくさんお集まりいただきましてお礼を申し上げたいと思います。
 私も長く環境省の委員会の委員をやっておりますが、かつてない高温の中での審議かなと思います。世の中異常気象が続いております。こういうことも時にはあっていいのかなと、私の今までの経験の中でこれだけの異常高温での会議は初めてかと思います。入り口の辺は若干涼しくなっているそうでございますので、もしもお気持ちでも悪くなられたら、ちょっとそこへお立ち寄りいただいてご休憩をとられればよろしいかなと思いますが、少し早めにというご意見も当初から伺っておりますので、できるだけ迅速に会議を進めたいと思いますのでよろしくご協力をお願いしたいと思います。
 本日はお願いしてございますようにその他を含めて3つの議題がございます。これに沿って議事を運営させていただきたいと思います。議事進行は一応4時をめどにと思っておりますが、できればもう少し早めにとも思いますのでご協力いただきたいと思います。
 それでは、最初の議題でございますが、問題点と原因・要因の関連でございます。これは引き続きの議論でございまして、この件につきましては岡田委員、細川委員に作業をお願いしているところでございます。今回は底質の泥化について岡田委員から説明をお願いしたいと思います。それでは岡田先生、2-1、2-2、2-3に従いましてご説明をいただきたいと思います。

○岡田委員 整理を承っております岡田でございます。それでは資料2-1からご説明させていただきます。
 2-1の1ページは前回と同じでございます。長期的な変化を見ようとしたということで、必ずしもきっちりとした、すっきりとした結果は得られなかったということは前回にご報告させていただいたとおりでございます。
 前回の若干繰り返しになりますが、2ページ目の上をごらんください。(4)と書かれております。「長期的に関連が見られない若しくは長期的データがないものの、短期的な影響力があると考えられる原因・要因に関する知見、その他の参考になる情報についてもあわせて整理を試みた」というのが前回からの続きでございます。
 「4.結果」というところに書いてございますが、前回まで短期的な影響、特に二枚貝・アサリ、タイラギの減少ということを整理した結果をご報告させていただきました。
 今回は底質の泥化、それから底質中の有機物、硫化物の増加についてとりまとめたという結果をご報告させていただきます。ただ、現在まだ終わっていない部分がたくさん残っております。終わっていないほかの問題点については評価委員会の委員を中心としたいくつかのワーキンググループで検討を進めているということでございますので、それは次回ということにさせていただきたいと思います。
 今回やった点を、3ページ目からがアサリへの直接的影響というのが整理されております。最初はABCというものだったのですが、前回ご議論をいただいたようにBということですと何もわからないということになりますので、短期的、局所的な事象に関する知見、それから他海域の事例も含めて問題の長期的な変動要因になる可能性が高いもの、多少可能性の高いものをB+という形で整理したということを今回も続けております。
 そういう意味で3ページ目のアサリの減少のところ、底質の泥化というのはB+という形に前回変えさせていただいております。これは同じですから次に行きます。
 4ページは飛ばさせていただきまして、5ページをごらんください。これも復習になりますがタイラギの減少、底質の泥化、底質中の有機物・硫化物の増加がB+並びにBという形になっております。
 次の6ページからが本日の検討結果でございます。6ページを見ていただきますと底質の泥化への直接的影響力として河川からの土砂供給の減少と潮流の低下その他が挙がっております。このうち今回は河川からの土砂供給の減少は一応原案としてはB+という形で上がっております。
 その具体的な根拠、どういう議論に基づいたかというのは後ほどご紹介させていただきます。
 最初に最後までサッといきたいと思いますが、次の7ページをごらんください。この7ページには底質中の有機物、硫化物増加への直接的影響ということで、ここで黒枠で囲んでございますようにノリの生産活動、それはさらに再度検討した結果、これはC、要するにあまり関係がないのではないかと分類分けされました。
 それから、次の赤潮の発生件数の増加・大規模化がB+、貧酸素水塊の発生、これがB+というふうになっております。
 ベントスの減少についてはBというままになっております。
 この具体的内容にいく前に、では最終的にどんな形を見ようとしているかということでフロー図のほうをごらんいただきたいと思います。資料2-2になります。資料2-2の1ページは説明でございますから飛ばします。
 2ページをごらんください。これが問題点と原因・要因の関連の可能性ということで、修正する前、最初にお示しした図がここに出ております。
 次の3ページをごらんください。ここは委員会でご意見等をいただいて、文言等を修正した結果がこの3ページに出ております。
 これから何をやるかというと、当然のことながらたくさんある線の中でどれが重要か、どれは大して重要ではないのかもしれないということを明らかにしたいというのがこの作業の目的になります。前にもご報告いたしましたが、この線は少しでもそうかなと言われているものは全部入れておりますから"or"でございます。ですから、その1つひとつにパーフェクトに根拠があれば、もちろんそれはそれでそれきりというか、それ以上議論をする必要がないわけですが、必ずしも根拠が明確でないもの、その現象は局所的にとどまるだろうとか、大して大きな影響でないというのを区別していこう、こういう趣旨でございます。
 ということで、4ページをごらんください。もちろんこれは検討中でございますが、今回までの検討結果を踏まえると少しずつ差が出てきております。例えばここで赤い太い線で示しているもの。これはここに書いてございますように問題点の長期的な変動要因になる可能性が高いもの。要するに、簡単にいえばB+というような形で同定されたものを示しております。
 ただ、それが確定したからといって、これが原因として主要であるかどうかということまではもちろん至っておりません。とりあえずB+と判定されたものを太い線、それからブルーのものはもう一度短期的なデータも見たけれども、やはりよく明快なことはわからない。
 それから、「……」がございます。これはいろいろ言われているようですが、1つの文献のみならずいくつかの文献を突き合わせてみると、多分あまり関係ないのではないかというものが「……」になっております。
 黒い線は申し訳ございませんがまだやっていない、こういうことでございます。
 ということを見ますと、まだほんのちょっとしかやっていないのではないかと言われるかもしれませんが、それぞれ専門がございますので、実は一番最初に申し上げましたようにいくつかのワーキンググループで鋭意検討を進めていただいているというのが状況であるということでご理解をいただきたいと思います。  これが太くなったから、これが原因だと思わないでいただきたい。そこまではまだいっておりません。
 4ページの絵を見ると「ああそうかな」ということで、あまり辛辣には見えませんが、次の5ページをごらんください。
 これは実は同じ図でございます。部分的には同じです。どういうことかというと、二枚貝の減少という問題点がございます。この二枚貝の減少といっても5ページはアサリでございます。次のページのタイラギ、同じ保証はないわけです。当然、これは先生方からもご指摘をいただいております。そもそも棲んでいるところが違うわけです。
 ということで、まずアサリだけピックアップいたしました。その右側にベントスの減少とか、その右側に元のやつのノリの不作とか魚類の減少とかあるんですが、それは直接二枚貝の減少のアサリには関係ないわけですから、そこを外して、そもそもターゲットである二枚貝減少に対してどういう因果関係がつながるかというのを示そうとした。決して重要かどうかではございません。もう3回申し上げましたからこれ以上言わないほうがいいかもしれませんが、失礼いたしました。つながりを見たわけです。
 そうすると、これが正しいかどうかというのはこれから委員会で最終的にご確認いただきたいと思うのですが、このアサリを見ますと河川からの土砂供給の減少が底質の泥化につながって、それがアサリの減少につながったという1つのラインが出てまいります。
 赤潮のほうはいろいろあるんですが、赤潮のところはどこか太くつながっている。要するに一応因果関係がそこそこに明快になったという形でつながっているものはございませんが、こういう形で出てきております。
 ですから、これを見て、これがいきなり結論だと思われるとつくったほうとしても大変困りますので、あえてしつこく申し上げました。
 同じようなことが次の6ページのところ、今度はタイラギになります。そうするとほとんど同じなわけです。結果を見て私は個人的に思ったのは、アサリとタイラギが同じことで説明できるというのは、そうかもしれませんが同じ性質の泥化でも場所が違うはずですよね。そういう意味で、これは一見同じに見えるというのは、これは今後考えるうえで少し注意していくか、何かわかるようにする必要があるかなと思います。
 一番最初にこの計画をつくって先生方にお話ししたときには壮大なプランを申し上げました。泥化といっても、それは深いところの泥、それから浅いところの泥、もっといえば諫早湾のところ、熊本のところ、みんな違います。そういうことを理解したうえでやりたいと思います、こういうふうに申し上げたんですが、何せデータがないのでだんだん縮小してきてこういう形になっております。ただ、それが妙な誤解につながらないかということを非常に恐れておりますので、あえてしつこく申し上げました。
 これが本日の当座の検討中ではございますが途中経過でございます。先生方にお示しできる途中経過ということになります。ですから、これはあくまでもたたき台でございますので、これを元に行き過ぎているところ、足りないところ、またさらには不十分な文献等で判断したところがあれば追加、ご指摘をいただければありがたいと考えております。
 最初に結論をお示しいたしましたので、その根拠になったB、B+というのがどうなっているかというのが資料2-3に示されております。ですから、ここの記述、判断が不適切であればもちろん今お示しした図を変えるのはやぶかさではございません。変えるべきだと理解しておりますので、ご意見をいただければありがたいと思います。
 では、1ページからまいりたいと思います。資料2-3でございます。後ろのほうに関連する図を載せてございますが、これをいちいちやっていますと時間がかかります。むしろこの論理構成、それから使ったデータの読み方等についてご意見をいただいたほうがありがたいと思いますので、ざっといきたいと思います。
 まず、底質の泥化、浮泥の堆積、これは何から起こったかということで、1つが河川からの土砂供給の減少ということがすでに整理されております。そのときに根拠になった文献、要するに図表の中に線を引いた根拠の情報というのは何かというと、ここに点線で囲んであるところでございます。原因・要因として指摘される事項ということで、底質の細粒化が進行している原因としては流入と底泥の動きの二つがある。
 その3行目ぐらいになりますが、何らかの原因で粗粒の流入が特に減少したとすれば、底質の細粒化の一因となろうという判断がこのノリ不作の委員会の報告書に出されております。
 では、これがきちっと長期的なデータでわかるかというと、それは前回お話ししたようにデータ不足のためにきちんと証明することはできませんでした。したがいまして、さまざまな文献等からこういうことが言えるだろうかということを見たのがこの下に書いてある知見の整理でございます。
 ア)流域からの土砂生産量がどうなっているか。それから、イ)が河床の低下、土砂の持ち出しということで、例えば筑後川では各種事業によって砂が持ち出されている。したがって河床の低下が起きたということを書いてございます。
 ウ)のところになりますと、人為的な砂の持ち出しの結果、筑後川の河床材料中の砂の割合が大きく減少したということで流砂量が年間10万m3程度であったものが最近は2万m3程度に減少してきているというようなこと。
 それから、その次に河口テラス、海域への土砂堆積量も最近は減ってきているというようなことがずっとデータとして挙げられております。
 ですから、こういう情報を積み上げると、その次の●整理というところにございますように1950年代から1960年代の砂利採取、それからダムの堆砂によって海域への砂の供給量が大きく減少した。この事実は多分明らかだろう。
 それから、あとはこれはちょっと言い訳でございますが、土砂のうち、シルト・粘土の挙動については出水時の浸食、河口沖合への堆積が報告されているが、これは規模によって挙動が異なるので……。
 すみません。時間単位で修正がいろいろ入っていたもので、数日前からいろいろ入っておりまして、多少古い資料で今お話ししたかもしれません。大変失礼しました。本質的な結果にはもちろん変わりはございませんので。
 というようなことで、最後に筑後川における人為的な砂の持ち出しが有明海の泥化の要因の1つと考えられる。ただ、その程度、要因の1つであるけれども、それがすべてではないという意味で、その程度を把握するためには筑後川感潮域から沖合河口域における土砂の組成、それから各々の挙動について調査が必要であるという整理にさせていただいております。
 こういうことを踏まえて今回は先ほどのところにございましたようにこの河川からの土砂供給の減少が底泥の泥化、浮泥の堆積に対してはB+である。こういう判定をさせていただきました。
 その次です。今度は潮流の低下・潮位差の減少・平均潮位の上昇ということにつきましては、これは関連する文献を、点線の四角は今まで言われていることです。線の根拠になっているところですが、その下にございますように経年的な潮流・潮位差の低下や平均潮位の上昇が底質の泥化、泥化につながっているとの科学的な根拠を示した文献は見つけることができなかったということで、この判定はCということになっているかと思います。
 次にまいります。今度は底質中の有機物・硫化物の増加ということになります。ここではまず点線四角にあるように、内陸部の都市化・農薬うんぬん等で底質が悪化、すなわち泥質化・浮泥化してきているということがここにありますような出典において言われております。
 これを実際にさまざまな資料で見てみたのが[1]でございますが、流入負荷量は実は経年的に減少傾向である。これはすでに何回か前にお示ししたと思います。
 それから、有明海の底質の有機物・硫化物は比較すれば多少濃度が高くなっている地点が見られるという程度のことであります。
 ということで、ここでは有明海の流入負荷量は経年的に減少傾向にあるにもかかわらず、底質中の有機物・硫化物の濃度が高くなっている地点が見られるということで、こういうことですからやはりまだよくわからないということでBのままということになります。
 経年的に増えて濃度が高くなっているとか、経年的に減少して濃度が減っているというのだったら話は極めて見やすいわけですが、どうもそういうふうにならないということで、今のところわからないのでBのままになっております。
 その次の酸処理、それから施肥が底質中の有機物・硫化物の増加に影響しているのではないかというようなことが言われているところがあります。それがこの四角い点線で書いてあることでございます。
 ノリ養殖における酸処理剤の使用が施肥による海域への直接負荷が水質・底質へ悪影響を及ぼしているという記述がございますが、この下にございますようにさまざまな酸処理剤は検出されなかった。酸処理剤のN、Pの負荷量は全体に比べたらそんなに大きくないというようなことから、最終的にここではどうしたかというと、Cでございます。ですから、酸処理剤に含まれる有機物はここにございますが、海底に蓄積される可能性は少ないと推察されるということで、Cという判定をさせていただいております。
 次が赤潮の発生件数の増加・大規模化でございます。原因・要因としてどういうことが言われているかというと、一番最初の文章が赤潮の増大・大規模化で貧酸素が増えた。底質中の有機物、それから硫化物が増加している。あとは、その下のほうはそれで貧酸素が発生して底質が嫌気になるということを書いてあります。
 では、具体的にそれはどういう因果関係が見られるだろうかと見たのが、関連する資料を引っ張ってきたのが次のものです。有明海の表層堆積物中の有機炭素、それが主語になります。海産生物起源の有機物の影響を強く受けていると推測されるというようなことがわかっております。
 それから、鹿島沖、諫早湾だけでございますが有機物への植物プランクトンへの寄与が示唆されるというようなデータ。
 それから、これは諫早湾に限ることになります。ここでこれから少し気をつけなければいけないと考えているのは、有明海全体の話というか有明海の奥部の話と諫早湾で得られた話が微妙にモザイクのように結果に反映されておりますので、これはやりながら気がついたことですが、今後ひょっとしたらうまく分けながらやらないと話が混乱するという危険性を感じております。諫早湾でこうだというのがいきなり有明海全部にいってしまう。逆に有明海の奥でわかったことのデータの結果を諫早湾に適用してしまうということの危険性はあるかと思っております。まだ整理は不十分ではございますが、承知のうえで進めているところでございます。
 というようなことでちょっと余計なことを申し上げましたが、諫早湾の底質のコア資料の分析、次のページにいきますと赤潮の発生件数がどうなっているかというようなことを見ますと、5ページの●整理になるかと思いますが、海域の富栄養化、赤潮発生の増大により植物プランクトン由来の有機物が堆積しているのではないか。厳密にいいますと、植物プランクトンと赤潮はイコールではございませんが、厳密に言いだすと全部Bに戻ってしまいますので若干無理しているというのは承知でございますが、海底に沈降堆積したものと推測されるということで、底質中の有機物の増加の主たる要因の1つである可能性が高いというようなことでB+というふうにさせていただいております。
 その次の貧酸素水塊、これにつきましては先ほどと同じ滝川先生の文章になるかと思います。貧酸素水塊が発生して底質が嫌気的環境になる、要するに硫化物が増えるというようなことが言われております。
 これに対してどういうデータがあるかというと、これは非常に少ないデータではございますが、佐賀県湾奥の有機炭素濃度の海域の利用が低下傾向にあるというようなことで、これは一部ということに、これもまた気をつけなければいけないのですが、一部海域においてということでありますが、一部海域においてではありながら貧酸素水塊の発生と、それに伴う底質中の硫化物の増加の可能性があるだろうということで、ここではとりあえずB+とさせていただいております。
 その次がベントスの減少です。これは行きつ戻りつみたいな話になりますが、底生生物が何らかの要因で減少した。減少すると底質のバイオターベーションが低下する。生物によるかく乱が低下するので、結果的に有機物の分解能力が低下しているだろう。これはさまざまな文献等でここではなくて、ほかのところでも言われていることではあります。
 では、具体的にこの有明海ではどうかということで見たわけですが、有明海の湾奥部における調査結果、1989年と2000年を比較したという結果がございます。その結果からマクロベントスの2000年における平均密度である5,000個体/m2を超える地点数は1989年より少ないということで、一応減っているということは言えるかと思います。ただし、種によっては大幅に増加したものもあるというような若干わかりにくいことがございます。
 あと、これも間接的なデータでございますが、白川河口の干潟の底泥を用いてカラム実験を行った。そうするとこれは両方あるんですが、イソゴカイの分解量と排泄量の関係で底泥中の有機物量が多い底泥では有機物が減少した。少ないところでは増えたというようなことがあります。そういう意味でなかなかイエスかノーかわからないようなことがございますから、結果的にこの整理のところ、まだイエス、ノーというのはなかなか難しいということで、最初の比較からベントスが減少したとは考えられるということで、バイオターベーションが低下した可能性はある。ただし、2つの年だけの比較であるので経年的に減少しているかどうかはなかなかわからないといえます。
 それから、あと底質の有機物の分解はいろいろ書いてございますが、最後のところにございますようにベントスの生息地とその生態、生息環境の状況を踏まえた有機物分解に関する調査が必要であるということで、今回はここではBというままでとどめさせていただいております。
 というわけで、今日はここまでになるかと思いますが、このようなかなり無理をしていることは百も承知でございますが、解析をすることによって少しでもB、わからないというものをCすなわち関係ないもの、もしくはBであったものがB+になる、BがAになるということは長期的な変動ではわからなかったことでありえませんが、こういう形で明らかにするという作業を行っているところでございます。
 ただ、これをやる中でさまざまな文献、いったん整理した文献以外のものも少しずつ評価しては入れるようにしております。と申しますのは、いったん文献を整理してから時間もたっております。新しい文献も出てきております。それからどことどこの関係、この線とというふうにターゲットが明快になりますと文献の読み方も変わってまいりますので、そういう新しい文献も適宜入れるということをしております。そういう意味におきましてこのこういう解析を進める上のひとつひとつで問題点がございましたら、ぜひ先生方からご指摘をいただいて不適切なところはどんどん直していく。足りないデータはさらに追加させていただいて、B+になったものがまたBに戻るとか、そういうことがいくらあってもよろしいかと思います。ぜひよろしくご指導のほどをお願いしたいと思います。以上でございます。

○須藤委員長 岡田先生、ご説明どうもありがとうございました。大変な作業を岡田先生、細川先生にお引き受けいただきまして、今ご説明いただきましたことをまずはお礼を申し上げたいと思います。
 それでは、委員の皆さんからご質問なりコメントをいただこうと思います。

○小松委員 これは前回も言及したんですが、相関関係が認められないということと重要でないというのはちょっと意味が違うのではないか。これがまだ以前のままです。

○岡田委員 では相関関係が認められないもの、要するに価値判断は入れるなという、そうですね。おっしゃるとおりです。取っておきます。すみません、失礼しました。今、価値判断を入れると一番最初にお断りしたことと全く矛盾しますので。

○小松委員 もう1点。資料2-3の2ページ目で底質の泥化、浮泥の堆積に対する潮流の低下・潮位差の減少のところですが、ここで科学的な根拠を示した文献を見つけることができなかったという記述なのに、先生はこれをCとおっしゃいましたね。
 文献を見つけることができなかったということから関係がないということを言うのは論理的に厳しいのではないかと思います。というのは底質の泥化、浮泥の堆積と潮流の低下というのは物理から言えばこれは非常に理屈の通っていることなので、これを否定するほどの根拠であるというのは難しいのではないでしょうか。

○岡田委員 おっしゃるとおりです。すみません。今回は新しいデータを追加できなかったという意味で、前回の一番最初に、もっともっと前に示した結果は潮汐はC、潮流はBというふうになっていまして、それをそのまま継続する、そういうことです。変化ないということです。失礼いたしました。

○須藤委員長 新たではないんですね。

○岡田委員 新たではないです。ですから、もしいいデータが見つかればCがちょっとしたらBになるかもしれないというそういうことです。すみません。

○須藤委員長 ほかの先生。

○中田委員 細かいところで、今の点で確認ですが、「経年的な潮流、潮位差の低下が泥化につながっている」という言い方をしておられるんですが、ここに潮流が入るというのは解せないんですが、どういうことなのでしょうか。「経年的な潮位差の低下や平均潮位の上昇が」ということなのではないかと思うんですが。潮流についてはデータがないので実際にはよくわからないんだけれども、流れと泥化の関連というのは当然考慮すべき問題ではないかと思うんですが。

○岡田委員 そうです、そうです。

○中田委員 表現の問題なのか、もう少し根拠がほかにあるのかという点を確認させていただきたいんですが。ここに潮流という言葉が入るのはおかしいのではないかという意見です。

○岡田委員 多分、この文章が先ほどご指摘いただいたように誤解を与えるものになっているかと思いますので、科学的な根拠を示した新たな文献を見つけることはできなかったというほうが多分いいのかなと思うんですが。

○中田委員 ただ潮流についてはデータなしというのがその次に書いてあるわけです。

○岡田委員 ですから、新たな文献はなかった。データなしというのは、一番最初の長期的なデータがない。

○中田委員 ですから、この上のほうのCと書いてあるところに潮流が入ってくるというのがよくわからないんですが。

○岡田委員 これは一緒にまとめて書いてありますから。じゃあ、これは分けます。すみません。段を2つに分けたほうがいいかと思います。

○須藤委員長 中田委員、それでよろしいですか。

○中田委員 はい。

○須藤委員長 では、それは分けるということで、ほかの先生、いかがですか。
 岡田委員、分けるところをもう1回誤解があってはいけないから言ってください。資料のナンバーと。

○岡田委員 資料2-1の6ページの表3の備考のところにブルーで(第22回委員会資料)と書いてあるところを、潮汐、潮流を一緒に議論しているので非常に誤解を与えるということで、これを上のほうの潮汐、下のほうの潮流に分けて、それぞれ別の話で書いていく、こういうふうに理解しています。

○須藤委員長 中田先生、よろしいですね。
 それでは、ほかにどうぞ。

○岡田委員 お願いを申し上げてよろしいですか。大変くどいかもしれませんが、短い時間でサッサッとご説明、報告申し上げております。それから時間の関係もあって後ろの図表については一切ご説明しておりません。ということで、先生方の専門に近いところを中心にもう一度この記述を見ていただいて、問題点等があればぜひお教えいただければありがたいと思います。ぜひよろしくお願いいたします。その結果を踏まえて、ひょっとしたら次回にまた入れ換えをすることもやぶさかではございません。

○菊池委員 潮流の低下というのは私もデータを持たないんですが、潮位差の減少と平均潮位の上昇は有明海や八代海については各県の水産試験場がおとりになったデータがかなり詳しく出ておりまして、それでは有明海の奥のほうと真ん中と出口に近いところでどのぐらい平均潮位は上がって潮位差は減少しているかというトレンドは非常にきれいに出ていると思います。
 実は今日、明日、地元の新聞に有明海の変化という話のところでそういう話を書こうと思ってグラフなどもつくっておりましたので思い出しました。
 それからあと、川からの流入の話ですが、筑後川は非常に大きくて、これはこの前この委員会で福岡先生にお教えいただいたとおりです。規模からいうとずっと小さくなるんですが、熊本県の宇土半島の付け根のところに緑川という一級河川がございますが、これがとにかくパブリッシュされたものでは全然出ていなくて、私もこんな表があったよと言ったら、それは私たちが全部ページをめくって拾ってつくったんですということです。熊本県の環境政策課の人が建設省に行って元の台帳から拾ったというのを昭和45年からのどのぐらい砂利が採られたかというデータを見ますと、昭和45年(1970年)から昭和の終わり、1980何年までのところで三十何万トン砂利と砂が採られている。これは大部分がほかの建材用に陸上で使われたものだと思われるということです。
 これは筑後川に比べますと川がかなり小さいので、その分インパクトとしては大きいかなと思いました。
 しかも、それが河口のところで川底の深さが前より深くなってしまって、そこへ水が淀むというので漁師たちからの苦情で出てきて、それで初めて採土量についてのデータというのを拾ったみたいです。それで三十何万トンというのは河口から3キロまでの範囲の、そして粗い砂と砂利とを採った分だけのデータの値ということですので、3キロで切れていないでしょうと言ったら、だけど河口の淀みの原因というので調べたので、それ以上にさかのぼって上までやることは自分らには時間も労力もなかったのでというお話を聞きました。ですから、緑川の場合でも30万トンが40万トンになるのか。そして、漁師たちの話ではいわゆる昭和の40年代の全般にかなり採られたようだというんですが、実際には45年から後しかそういうデータが出ていないということです。
 ですから、有明海の中のアサリの一番たくさん採れるのが緑川干潟ですが、それのピークは1977年です。ですから、かなり砂を採られた後でもまだよかったんですが、現在は泥化して平均粒径値が当時0.25とか0.3だったものが0.18になっているとかそのぐらいの違いがあるようです。
 ですから、これは生物にどのぐらい影響があったかということになりますと、なかなか難しいんですが、1本ですけれどもそういう川についてのデータを調べてくださった方がいたということです。

○須藤委員長 貴重な情報をありがとうございます。岡田先生、今のようなお話をいただいて、またそれを修正していけばよろしいですね。

○岡田委員 はい。

○須藤委員長 今の情報は今、先生も新たにということで、こういう情報をいただきながら修正していくということでよろしいですね。
 ありがとうございました。
 ほかはいかがでございましょうか。
 今、先生がお書きになった記事とか情報の部分はまた岡田先生のほうに提供してください。お願いいたします。
 ご質問をいろいろありがとうございます。またコメントをありがとうございました。先ほどから岡田先生がおっしゃっておられるように、この作業は柔軟性を持って進めていくことが大変重要でございまして、今のような菊池先生のお話をいただきながら修正をしていければと考えております。
 そうは言っても期間的に限界もございますので、できるところまでは今のような形でなるべく早めにデータや文献をいただきながら進めたいと思っておりますので、文献あるいはデータ、そういうような情報は早めに事務局にご提出をいただきたい、このように思います。
 また、関係省庁の方々も、あるいは県の方々も関係するデータがあればご提示を願えれば幸いでございます。
 これまで検討した分野以外に赤潮については本城委員を中心に、水産資源につきましては中田委員を中心にさらに検討をお願いしているところでございます。岡田委員にお願いしている作業と連携をとって検討を進めていただき、できれば次回の評価委員会であまり日にちはないのですが報告をお願いできればと思いますので、本城先生・中田先生、どうぞよろしくお願いしたいと思います。
 また、この作業では有明海の一部で生じている問題も検討することとしておりますので、諫早湾内の環境も整理していただきたいと思います。岡田先生、細川先生にもご指導をいただきながら、事務局のほうでこの問題についても作業をお願いしたいと存じます。関係省庁、関係県につきましてもデータの提供をお願いしたいと思います。
 この作業につきましては9月11日に開催される小委員会でもご審議をいただきたいと思っております。荒牧委員にご配慮いただきながら本日と同じような議論が小委員会の皆さんとできればよろしいかと考えておりますので、ご配慮をお願いしたいと思います。ということで荒牧先生、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、次が最近の研究成果についてということでございますが、まず中田委員から長崎大学で実施されている総合研究についてご報告をお願いします。それでは資料3に関して中田先生、お願いいたします。

○中田委員 長崎大学水産学部の中田です。私どもが2001年度から5年間、科研費の基盤研究Sで取り組んできました有明海の環境変化が漁業資源に及ぼす影響に関する総合研究の成果について報告をさせていただきます。
 なお、この研究成果の一部につきましては、この委員会で一度中間報告をさせていただいております。それでここではその後解析が進んだところを中心としながら、最近さらに検討を進めている最新の情報も含めて話をしたいと思います。
 私どもの研究の目的としているところは有明海の資源生産につながる生物生産のシステムの中・長期的な変化の全体像を究明するということで、それを踏まえて諫早湾締め切りを含むさまざまな沿岸開発の影響を受けて環境の悪化が進行している有明海の現状を診断する、さらに将来に向けた環境回復の基準・目標を明確にするという点にございます。
 この目標を達成するために有明海の環境と漁業資源を包括的に1つのシステムとしてとらえた、この下にありますような学際的な共同体制をつくりました。
 ここでは研究成果の一番重要な部分と考えております環境と生物生産の中・長期的な変化について得られた成果をお話をしたいと思っております。
 ポイントは4つございます。1つは堆積物に含まれる渦鞭毛藻シストの個体数と組成の変化をもとに環境の長期的な変化、特に富栄養化の進行状況を推測した点でございます。
 それから、2番目は透明度の上昇ということでございまして、特にこの問題は赤潮発生数の増加と密接に関連するものとして注目をしております。
 それから、3番目は漁獲量の経年的な推移をもとに漁業資源の動向を調べるということをしたわけですが、底棲、海底に依存性の高い漁業資源が著しく減少している、エイ類が増加しているということがはっきりしてきております。
 それから、4番目は諫早湾周辺の最近年の環境悪化ということで、貧酸素域の拡大と有害赤潮の発生頻度の増加という点でございます。これについてはすでにほかのところでも同様の報告がございます。
 最初に堆積物の分析結果を示したいと思います。この緑でマークした点のサンプルの分析結果を次にお示しします。これは堆積物に含まれている渦鞭毛藻シスト、生物化石のようなものですが、その個体数がどういうふうに変化したかというのを示した図でございます。
 堆積物の年代測定の結果から1970年というのはちょうどここら辺に当たるわけですが、それを境にして渦鞭毛藻シストの個体数が急に増加していることがおわかりいただけると思います。
 しかも、それを自分で有機物をつくり出す独立栄養種とその有機物を利用して増えていく従属栄養種の2つに分けて、その組成の変化を調べましたところ、その数が増えた1970年あたりを境にしてこの赤で示した従属栄養種の割合が急増していることがわかりました。このことはこういう形で従属栄養種が増えていくことができるだけの有機物が富栄養化によってこの時期に増えたということを示しているものと考えております。
 その原因についてですが、私どもはこの変化が見られた時期に有明海の奥部の干拓面積が急速に拡大したという点に注目をいたしました。
 この干拓面積の拡大による沿岸地形の変化が潮流にどういう影響を及ぼしたかというのを数値シミュレーションで検討を行いました。
 要点は1940年代と1990年代の海岸地形、海底地形に関する情報を集めまして、この2つの年代で潮流速にどういう違いが表れたかということを検討した点でございます。それから諫早湾の締切堤防が有る無しという点についても併せて検討を行っております。
 これは1940年代と1990年代の海岸地形を比較したものでございます。有明海の奥部で大きな地形変化が見られます。
 実験の結果ですが、1940年代と1990年代で潮流の最大流速値、潮流振幅の大きさ、これがどういうふうに変化したかを調べたのですが、その結果、有明海奥部で干拓による地形変化に伴い潮流速が10%から30%減少したと推定されました。
 諫早湾の締め切りの影響についても検討を行いましたが、湾内で20から60%の潮流速の減少、中央部で約5%の減少という結果になっております。これについてはほかのところで数値シミュレーションで検討された結果とほぼ同様のものであるように思います。
 潮流速の変化を検証するのはなかなか難しいのですが、これは先ほど岡田先生のお話のときに確認をさせていただいた点と関連することですが、海底の粒子の粒径というのが流れを映す鏡だというふうによく言われるように、潮流速の変化というのは海底の粒子の粒の大きさに関連すると考えられます。そこで堆積物の粒度組成の変化を年代的に順を追ってみていきますと、明らかに細かい粒子の範囲というのが拡大してきているということがわかります。これも確実な根拠というわけではございませんけれども、潮流速の減少に対応するものではないかと考えております。
 ここまでの話を少しまとめますと、富栄養化が急速に進行した要因として、1つは干拓によって干潟が減少して浄化能力が減少する、そのことによって植物プランクトンが増加するというようなことがあったのではないかと考えられますが、それに加えて干拓による地形変化によって潮流速が低下し、細かい粒子の分布範囲が拡大しますと、その中に含まれます有機物の量が増加します。そのため、貧酸素化とあいまって栄養塩の海水への溶出量が大きくなるということが起きたのではないかと考えております。そして、流速低下と海水中の栄養塩の増加によって植物プランクトンの構成種が珪藻類から鞭毛藻類へ移行するということがこの時期に起きたのではないかという推定をしております。
 次に透明度の上昇の問題に入ります。これは有明海の湾口から湾奥をつなぐ縦断面における1980年代と1990年代の透明度の変化の様子を示したものです。明らかに1990年代、特にその後半のところで透明度の高い範囲が拡大してきているということがおわかりいただけると思います。
 これはそれを有明海の全体で面的に整理をしてみたものの1つでございますが、過去30年の間に透明度がどういう割合で上昇したかを10月-3月と4月-9月の2つの時期に分けて示したものでございます。
 全域で透明度が上昇しているということがわかるわけですが、特にその上昇率が大きい範囲はこの湾奥の特に西側の海域で、それは冬に顕著であります。もう1つは、熊本県の沿岸で、これは1年を通して透明度の上昇が顕著であるということがわかります。
 こういうふうに透明度が上昇した原因が何かということについては、3つのことを考えております。1つは透明度が高い外海水が流入してきたこと、2番目は川から入ってくる懸濁物の負荷が減少して濁りを減らしたこと、3番目はもう1つの濁りの供給源であります海底の浮泥の巻き上がりの量が潮流速の減少の影響で減ってしまったことです。この3つの要因についてできる範囲で情報を集めて検討したわけですが、結論的には巻き上がり量の減少というのが基本的な要因になっているであろうと考えております。
 例えばこれは有明海の入り口のところの定点における透明度と塩分の経年的な変化の様子を比較したものでございますが、透明度は有意な上昇傾向を示しているのに対しまして塩分についてはほとんどそういう透明度の変化に対応するような傾向が認められないというわけです。このことはおそらく外海水の透明度に対する影響は小さいということを示すものと考えております。
 一方、河川から入ってくる懸濁物負荷量の変化について筑後川のデータを使って分析をいたしました。LQ曲線をもとにしましてSSの各年の負荷量を推定をして、その年々の変化を見たわけですが、結論としては結構変動が大きいわけですが、明瞭な減少傾向というのは認められないということでございます。
 ほかにも透明度と塩分の関係その他についてデータの分析を行いましたが、現在の結論としては年間を通して潮流速の減少に伴い海底から再懸濁する浮泥量が減少したことが透明度上昇の原因になっているというふうに考えております。特にそれは河川の影響が相対的に小さくなります10月から3月の時期により明瞭になることがわかりました。
 実はこういうふうに透明度の変化に私どもが注目しておりますのは、それが赤潮の発生と密接に関連している可能性があると考えているからでございます。従来の有明海、本来の有明海というのは濁りの海と言われておりますが、その濁りの大きさがプランクトンの増殖を光条件の面で制限をする、そういう働きをすることによってその赤潮の発生が抑制されてきたのではないかと考えられるわけですけれども、透明度がある限度を超えて上昇しますとその光制限が緩和されて赤潮が発生しやすくなります。赤潮が発生しますと、大量の有機物が海底に供給されて貧酸素水塊が拡大する、そうすると、それがまた赤潮が発生しやすいような状況をつくり出すということで、いわゆる環境悪化のスパイラルの中に落ち込んでいくというようなことが起きるわけですが、私どもはこういった変化に有明海異変と言われているものの本質があるのではないかと考えております。
 実際に赤潮の発生件数の時系列を見てみますと、1990年代、特に後半で件数が増えているわけですが、長崎県、熊本県といったところでの発生件数が増えている状況がおわかりいただけると思います。
 そこで、ここの赤潮の発生状況に関する情報を集めてきまして、それを赤潮の発生日数の水平分布の形で集計をする作業を行いました。これはそれを1980年代、1990年代、それから2000年以降の3つの年代に分けて変化を見たものでございますが、年代を追って赤潮の発生日数が顕著に増加している様子がよくおわかりいただけると思います。特に、透明度の上昇が顕著な湾奥部の西側の海域、それから熊本県の沿岸域で最近年赤潮が頻発している状況が見られるということがわかります。
 これはそれを4月から9月の時期について示したものでございます。ほぼ同様ですけれども湾奥の特に西側、諫早湾や熊本県の沿岸域など広域で赤潮が増加している様子がわかります。
 これは10月から3月についてですが、10月から3月には湾奥の西側と熊本県沿岸域を中心に赤潮が増加しております。
 河川水の直接の影響が小さい10月から3月について、透明度の上昇との関係を少し詳しく調べてみました。これは透明度の上昇率を横にとりまして、縦に赤潮の発生日数をとって両者の相関を調べたものでございますが、この青で示した有明海の奥部については両者の間に有意な相関が得られました。つまり10月から3月、冬を中心とした時期の湾奥部では透明度の上昇による光制限の緩和というのが近年の赤潮発生の原因となっていると考えられます。
 ただ、熊本県の沿岸部については透明度が上昇しているところと赤潮の発生が急増しているところと必ずしも整合していないというような状況が見られまして、相関も有意なものは出てこないということになっております。透明度が基本的な要因の1つになっているとは思うのですが、おそらくそれに加えてそのほかの何らかの要因が関与しているのではないかということが示唆されます。
 それに関連して1つ注意をする必要があるように思いますのは、諫早湾の潮受け堤防の締め切りの前と締め切りの後、それぞれ5年間について同じような集計をしてみたわけですが、湾奥の西部では締切り前後で明瞭な差が認められないのに対しまして、諫早湾とそれから熊本県の沿岸域では堤防の締切り後に赤潮発生日数が急増していることがわかりました。
 諫早湾についてはおそらく締切りによる環境の悪化を反映したものではないかと考えられますが、熊本県の沿岸域についてはまだ因果関係についてよくわかりません。
 赤潮の発生数の増加の要因について簡単にまとめますと、有明海の奥部の特に西側では透明度上昇に伴う光制限の緩和というのが近年の赤潮頻発の原因となっている可能性が高いということがわかったということで、特に冬季についてはそれが明瞭であるということです。
 一方、熊本県沿岸域、諫早湾につきましては透明度上昇だけでは説明が難しいところがあるということで、流れの変化なども含めた要因の検討がさらに必要と考えております。
 最後に魚類資源の変化についてお話をしておきたいと思います。有明海の漁獲量の変化については二枚貝の減少が大きな問題になっているわけですが、実は魚類の漁獲量についても1987年をピークとしてずっと減少が続いているという大きな問題がございます。
 少し魚種ごとに細かく整理をしていきますと、1990年代の後半に特に減少が明瞭になってくるような主要魚種がいくつかございまして、それが共通していずれも海底に依存性が強いということ。それから産卵する場所と稚魚が生育をする場所が異なっているという特徴を持っているということがわかってまいりました。
 これはそれを少し別の形で表したものでございますが、1990年代後半に減少が著しい魚種の多くはこの有明海の中央部で産卵をします。稚魚の時期は奥の浅いところで生育をするというような特徴を持っているわけです。しかも、基本的には海底に依存性が高い底棲種であるということも共通しております。したがいまして、この資源の減少の原因として生息している海底付近の環境の悪化や産卵場から生育に適した場所への流れによる輸送状況の変化という点が要因として大きいのではないかということがそういうことから示唆されます。
 それに関連して、こういう問題を少し考えていかなければいけないということで、昨年から私ども有明海における仔稚魚の分布について調査を始めております。採取された仔稚魚の種類を同定するのは大変な作業で、まだ中途段階で未発表という形になっておりますが、例えばこれは昨年6月初旬に調査した結果を示したものです。注目すべき点は湾奥部よりも諫早湾に多数の仔魚が分布しているということがわかってきた点でございます。その中には諫早湾の本明川の感潮域や干潟域、あるいは諫早湾の海底でその稚魚が着底生活をするという形で、諫早湾を稚魚の生育場所として利用しているものも数多く含まれております。
 これをどういうふうに解釈するかということですが、例えば諫早湾には従来からいろいろな種類の仔魚が集積していて、それが現在でも続いていると考えますと、稚魚の生育場となる干潟や感潮域の消滅とか着底生活をする諫早湾底層の環境悪化により死亡率が増加し、それが資源の減少につながっているという可能性が考えられます。
 あるいは諫早湾に従来よりも稚魚が集積あるいは滞留しやすい状況が生まれているとしますと、そういう状況をもたらした流れの変化と環境の悪化が相乗的に作用して資源の減少を加速している、そういう可能性が考えられます。
 いずれにしましてもまだ手持ちの情報は非常に限られております。これからの重要な調査研究の課題として産卵された場所から諫早湾にどういう形で輸送されてくるのか、あるいはその輸送量、集積量というのは変化しているのかしていないのか、集積した仔魚のその後の運命はどういうふうになっているのか、死亡しているとすれば、その要因は何かというような点についてこれからひとつひとつ解明をしていかなければいけないということで、こういう調査を継続していきたいと考えているところです。いずれにしても資源の減少の要因を究明するうえで非常に重要なポイントの1つではないかと考えております。
 そういう点も含めまして、魚類資源への環境変化の影響をどういうふうに整理してまとめていけばいいかということを少し考えているわけですが、大きく2つの観点で整理していくことが必要だろうと考えております。1つは生育場、特に仔稚魚の生育する場所が消滅したり縮小したりしていることの直接的な影響がどうかという点です。もう1つは生息環境の悪化ということですが、特に多くの魚種が生息しております海底付近の環境や仔稚魚の輸送経路の環境の変化がどういうふうに影響を与えているかという点ももう1つ重要なポイントであると考えています。
 この生息環境につきましては、流速が減少している、それに伴って泥化が進んでいる、それと並行して透明度が上昇しているということはある程度これまでのいろいろな報告に共通している事実ではないかと私は考えておりますが、流速の減少あるいは変化は仔稚魚と幼生の輸送状況と非常に密接に係わります。
 それから、泥化が進みますと当然有機物の含有量が増える。そうすると、それが貧酸素域の拡大という形で海底付近の環境を悪化させる。透明度が上昇しますと先ほどお話ししましたように赤潮の発生頻度が増加し、あるいは発生域を拡大する。それがさらに貧酸素域の拡大と相互に影響を与え合うというようなことになっているわけで、貧酸素域の拡大を通して資源の減少というところにつながりを持っていると考えられます。
 ですから、こういう環境の変化が資源の減少にどういうふうにつながっている可能性があるかという点をもう少し整理をしていければと思っているところでございます。
 そのほか魚類資源の関係でわかってきたことを簡単にご紹介しておきたいと思います。1つは私どものこの研究で島原沖で2001年から底引き網を使った魚類採集というのを続けてきております。有明海の魚類について本格的に定量調査をした例というのは、これが初めてだろうと思います。その結果、まだ未発表の部分が多いのですが、東京湾などと比べましても有明海は生産性が高いだけではなくて多様性が非常に大きいという特徴を持っているということがわかってきております。したがいまして漁獲対象以外の種を含む生態系全体の特質を理解するということが有明海を理解するうえで非常に重要であるということが言えると思います。
 その魚類相を過去と比較しますと、特に軟骨魚類、エイ類の割合が急増しているということが明らかになっております。これはそのエイ類の中でも主にアカエイの仲間が中心だと思いますが、漁獲量の経年変化の様子を示したものです。これにエイ類を食べるサメ類の変化を重ね合わせますとちょうど逆相関の関係があるということがわかってまいりました。つまりこういう生態系の中の魚種間の数のバランスの変化という点も非常に注意を要する問題であるということを示しております。
 エイ類が増加しますと、それが特にナルトビエイの場合、二枚貝を食べるということで問題になってくるわけでございます。そのナルトビエイを捕獲して駆除するということに関しても、実は今の実態としては科学的なデータの記録が不十分である、あるいは科学的な根拠もまだ乏しいという問題があるということを指摘いたしました。将来的には生態系に基礎を置いた管理を目指すというのが1つの方向であろうと思っております。
 以上、お話ししてきました環境と生物生産の中・長期的な変化というものを最後に簡単にまとめますと、有明海では1970年代から富栄養化が急速に進行をしたということですが、その原因として干拓面積の急激な拡大に伴う干潟の消滅、潮流速の減少などの環境変化の影響が大きいと推測をいたします。
 それから1990年代、特に後半以降ですが、全域にわたる透明度の上昇、それから諫早湾付近の環境の悪化などの影響を受けまして、赤潮の発生頻度が増加する。それから、同じ赤潮でも有害種による赤潮が増加してきている。底層ではそれと対応するような形で貧酸素水域が拡大し魚類、特に底棲性の魚類資源の減少につながっていく。そういうふうに考えることができるのではないかと思います。
 漁業者がよく今の有明海というのは「きれいに濁った海」から「きたなく澄んだ海」に変わってきているということを言うわけですが、その実態というのはこういうことではないかと考えております。
 それを物質循環のシステムの変化という観点で整理をしますと、同じことの繰り返しになりますが、1940年代以前の有明海というのは自然環境の一部であり、干潟・底棲生態系とプランクトンの生態系が適度なバランスを保っていたと考えられるのに対しまして、1990年代以降はこの干潟・底棲の生態系の部分が非常に細くなってきています。また、プランクトン生態系についても物質循環を阻害する傾向の強い有害種が増えるという変化が起きているということがわかってきました。
 ですから、これから有明海の環境回復を図るためにはこういう現状をしっかりと認識することが非常に重要であると考えております。
 今お話ししたことをこの上にまとめてありますが、そういう意味でこれから今申し上げましたような有明海の物質循環・収支のシステムの変化を定量的に表現できるようにしていくことが非常に重要な課題として残されていると考えています。
 これが最後だと思いますが、私どもの研究成果からその他の点で見えてきた点を最後にまとめてみました。1つは過去の干拓による地形変化が潮流速など、海域環境に大きな影響を与えた可能性があるということ、それから、環境変化と生態系や生物の変化の間には当然ですが時間差があります。そういうことを考えますと諫早湾締め切りによる環境や生態系への影響について、今後もモニタリングを継続するということが非常に重要であり、必要であるというふうに考えています。
 それから、環境悪化の主な原因が潮流速の減少や干潟の浄化能力低下などにあるとすれば、陸からの流入負荷の削減だけでは問題解決につながらない。当然のことですが、この点も再確認されました。
 それから、最後に資源の減少要因として流れによる仔稚魚の輸送状況の変化が非常に重要であるということがわかってまいりました。そういう意味で仔稚魚期の死亡率を低下させる、要するに生き残るものの割合を高くするために、流れを含むどのような環境条件が必要かということを明らかにしていくことは、有明海の再生の方向性を明確にするためにも重要な課題であると考えております。
 駆け足でわかりにくかったかもしれません。私の話題提供は以上です。どうもありがとうございました。

○須藤委員長 中田先生、貴重な研究成果をありがとうございました。それでは、委員の先生方のご質疑あるいはご意見をどうぞお願いいたします。
 小松先生、どうぞ。

○小松委員 とても貴重な報告をありがとうございました。いくつかご質問させていただきたいんですが、シログチなどのような底棲性の魚、これは産卵場で仔魚になって、運ばれていくとき、この場合もやはり底層で運ばれていくということなのでしょうか。
 それと、こういう仔魚というのは全くパッシブで、自分で少しは指向性を持つというか方向性を持つというか、そういうことはなくて常に流れによって受け身的に運ばれていく、そんな性質のものなのでしょうか。これが1点です。

○中田委員 その点は私どもも仔魚の輸送過程をモデル化できないかということを考えておりまして、今ご指摘の点はその意味でも非常に重要な問題です。完全にパッシブではないと思っているんですが、おそらく発育の段階によっても主に分布している場が変わったりしている可能性もありますが、そこら辺については今調査中ではっきり言えることはない。非常に情報がない部分です。
 その点も含めて、今調査をやっている最中ということです。ただ、今日お見せしました仔魚の分布調査は海底から1m上の層を引いて採集しております。表層を引きますと仔魚を採集できるのですが、種類はわりあい限られているようです。いろいろな種類がたくさん分布しているのは海底に近いところのようだということもわかってきております。そこら辺ももう少し情報を集めて整理をしていきたいと思います。

○小松委員 産卵場から奥の生育場のほうに行く。流れをやっていると中央から奥のほうに行く流れというのは多分底層しかないと思うんです。そういう意味ではやはり底層に残っているのかなという気がするんです。そうなると中田先生の今のご主張で生育場の環境が非常に大事だということになれば、この底層の流れというのが非常にキーポイントになるのかなと思っているのですが、そういうことでよろしいですね。

○中田委員 特に環境としても海底に近いところ、それから流れの問題としても仔稚魚の輸送ということを考えますと、今おっしゃったとおりで下層、底層の流れというのは非常に大事だと思います。

○小松委員 それとシミュレーションで干拓等による潮流の減少の割合を計算されているんですが、諫早湾締め切りの影響が湾からちょっと出たところで、わりと横方向に全体に広がっていますよね。いろいろな観測をするとこんなに広がらないので、これは計算の格子間隔の問題とか、渦動粘性係数の問題かなという気がするんですが、格子間隔等がもしおわかりでしたら教えていただけないでしょうか。

○中田委員 今数値を持ってきていないので、後で直接に。すみません。

○小松委員 結構です。どうもありがとうございました。

○須藤委員長 ほかの先生、どうぞ。

○菊池委員 私は滝川先生に先ほどの熊本沿岸のほうの飛び地になっている富栄養になっているところについてのオリジンの話をしていただきたいと思うのですが、いかがですか。

○滝川委員 中田先生のお話の中で熊本沖のところの赤潮が近年非常に異常発生している。これの因果関係がつかめませんというお話です。それに関しまして一言二言でしゃべれなくて、今論文にしているところで、今度の学会で話しするつもりですが、実は熊本沖のところでコアサンプルをやりまして、過去の堆積状況等々あるいは流れの特性等々からある程度の因果関係みたいなものが見えてきておりまして、詳しいお話というよりもそういったことを通じて紹介させていただきます。
 ある程度何かの負荷、あるいは土砂供給の形態がどうも影響を与えているみたいだというものは熊本沖につきましてはそういう感想を持っております。また機会があれば紹介させていただきます。

○中田委員 先生、土砂供給ともう1つ何とおっしゃいましたか。

○滝川委員 何かの負荷の変化。

○中田委員 負荷の変化と土砂の供給。

○滝川委員 そうです。そういったものが河口のコアの中から推定できるところがございまして。

○須藤委員長 この辺の情報についてはこの次の発表のときまでお願いしたいと思います。

○岡田委員 細かいことで恐縮ですが、11ページの透明度上昇と赤潮発生日数の関係の図で教えていただきたいんですが、これは多分キーの図になるかと思いますが、横軸に透明度上昇率をパーセントにとって、縦軸に日数をとっていますが、これはストレートに透明度を横軸にとって、赤潮発生日数というストレートな因果関係でとることは可能でしょうか。どうなっているのでしょうか。

○中田委員 もちろん可能です。ここら辺はいろいろな取り方をやっているところで、これは一例として今日お持ちしたんですが、上昇率と日数の関係はわりあいきれいに出てきますが、透明度そのものをとるとちょっとまた違った感じになります。そこら辺も含めて総合的に検討しないといけない。

○岡田委員 あとの論理構成に透明度の上昇率と透明度そのものは全く意味が違うので、今のところ我々のチャートでは透明度を横軸にとってということで、その横軸をストレートの軸か、それともログ変換するか、いろいろなやり方があると思いますので、後のこともあるのでぜひよろしくお願いいたします。

○中田委員 透明度にクリティカルなところがあると思います。特に奥部では光制限との関係でクリティカルなところがどこら辺にあるのかによって絶対値で見る場合とその率で見る場合に表れ方が変わってくると思います。そこら辺も含めてもう少し検討したいと思います。

○須藤委員長 伊藤先生、どうぞお願いします。

○伊藤委員 同じページですけれども、11ページの下の図ですが、先生の赤潮の発生日数の比較を湾奥部の西部と諫早湾内、それから熊本沖で比較されていますが、湾奥部の筑後川河口域というのがこの図から見ますとかなり日数的に増加していると顕著に思えるんですが、これはどう考えれば。

○中田委員 これは分析した結果をそのままお持ちしていますので、これをどういうふうに解釈するかというのはこれからの問題ですが、確かに今奥部の西側だけをずっと強調して説明をしたんですが、東側に広がっているというふうに見えるというのは確かです。ただ、それについても因果関係はよくわかりません。

○須藤委員長 どうもありがとうございます。ほかはよろしいですか。

○森下委員 少しわからないので教えてください。14ページのところに底泥が細粒化をするというのがありますね。そして、細粒化をすると透明度の上昇があった。それが常識的にわからないんです。なぜ透明度がよくなっているのに底質が細粒化するかというのは、淡水では絶対に起こらないことなんです。琵琶湖を含めて全体の湖沼では。だから海だけが非常に特別なそういうことが言えるような条件があるのかということと、それから底泥は細粒化していくと赤潮プランクトンの種類が変わるというのは、これは淡水でも当たり前のことなんです。
 ところが、赤潮の頻度が増加するというところに結びついていくことが少しわからないんです。発生の拡大ということはわかりますけれども、頻度が増加するということが何を意味するのかというので、矢印の方向が少し理解ができないことが1つ。
 それから、もう1つはさっきおっしゃったようにモニタリングをしていくことが必要だとおっしゃった。そのモニタリングをしていったら先生がお考えになっているのは何がわかるのだろう。今の5年間の結果でわからないことをモニタリングを続けることで、それはどれぐらいの時間かかって何がわかっていくのかなというのをお教えいただけませんか。

○中田委員 多分3つの質問があったと思うんです。1つは有明海の濁りの特殊性ということがあります。湖の例をお話になったんですが、それは多分濁りの主体が生物由来とか有機物系統が多いのではないかと思うのですが、有明海の濁りを構成しているのは大部分が無機質の砂泥からの濁りなんですね。ですから、底泥が細粒化するということは細かい粒子の粒が下に落ちやすくなっている。つまりそれが懸濁していると、それだけ透明度を低下させる要因になるわけですが、それが底泥のほうに落ちてしまうために水のほうはきれいになる。そういう理屈だろうと考えています。ただ、これは流れとの関係ですから底泥の粒径と透明度と流れの相互関係というのはこれから詰めなければならないと考えています。
 それから、赤潮の発生頻度の増加につながっている矢印は透明度の上昇ということです。ですから、底泥の細粒化が直接に赤潮の発生につながっているというふうには考えていないんですが、細粒化するということは透明度の上昇と相互に密接に連絡しているという意味の矢印なので、この矢印の書き方がちょっと問題かもしれない。
 それから、モニタリングの問題ですが、これは私どもも今回、有明海の奥部の干拓の影響が潮流速の減少につながっている可能性がある、そういうシミュレーションの結果が出てきているわけです。そうしますと今、諫早湾の締め切りという形でかなり規模の大きい地形変化が起きているわけですが、これの影響がどのくらいで、今出ているものはおそらく最大限ではないかもしれないということがあります。特に生物とか生態系への影響というのはいろいろな要因が絡み合って時間遅れを持って出てくるというのも一般的な話です。ただ、どのくらいの時間差をもって出てくるかというのはなかなか難しいところですね。
 ですから、少なくとも今の段階でもうモニタリングはしなくていいということではないという意味で申し上げました。

○森下委員 よくわかりました。それでは常識的に考えていく中で今、日本の底棲魚というのは大阪湾も東京湾でも実は増えているんです。その増えているという現状と、今おっしゃった透明度だとか細粒化だとか、そういうようなものが理解できるかなというのが1つあったので、これは質問ではありません。

○中田委員 大阪湾とかほかのところで増えているから有明海でも増えなければいけないという理屈はどうでしょう。

○森下委員 それはないですね。なぜ有明海だけが透明度はよくなっているにもかかわらず減っていくのかというのが、視点が違うかなというのがあって。

○中田委員 一般的には透明度がよくなる、上昇するというのはいいシグナルだととらえられる。ただ有明海の場合はちょっと特殊な条件があるということだと思います。

○須藤委員長 わかりました。有明海の特殊性ということと、それから日本全般の問題というのはひとつ議論しなくてはいけない問題がありますので、その位置づけも大事だと思いますので、総合考察の中で多少そういうことも詰めなくてはいけないかなというのは事務局とも話し合っているところであります。菊池先生、どうぞ。

○菊池委員 今の話題と少しずれるんですが、14ページの下のほうの説明の中で1970年代から富栄養化が急速に進行しているので、底棲生物個体群の爆発的増加というのがあります。これは玉置さんなども言っている持論ですね。
 これはほかの方にも少し説明しておかなければいけないと思うんですが、1970年代の半ばというのは有明海で空前絶後のアサリの大豊作だったときなんです。私は前から再びあれに戻ることはないだろうという私見は持っているんです。それは何かというと、1950年代、1960年代は例えば熊本県で2万トン、3万トン、それが77年には6万トン採れているわけです。これは今の日本中のアサリの収穫が3万6,000トンですから、もう緑川の河口だけで今の日本全体以上に採れていたわけです。それはどのぐらい持ったかというと、3~4年でガタンと落ちました。
 ですから、もう少し幅をとってみまして5万トン以上有明海で採れた時期というのが7-8年、それから3万トン以上採れていた時期というのはアサリだけをとりますと10年ぐらい。それから後、アサリだけでなくてサルボウが採れて、シオフキが採れてという、それが一番たくさん採れたのが70年代なんです。それはある意味では有明海沿岸の諸都市がまだ非常に大都会に比べてプアで、それから流れ込んでくる栄養塩もそれほど大きくなかったということがあるのかもしれません。70年代には赤潮はそれほどひどくないんです。ですから、珪藻の濃度は歴然と高く出ております。
 さっき名前を出しました玉置さんというのは今、長崎大の教授ですが、私のところで大学院をやって学位論文を書いた人ですが、その人はスナモグリというのがものすごく増えて、それが1つは有明海の砂干潟の食べられる貝を非常に減らしてしまったんだ。では、スナモグリはどうしてというと、まだしっかりとした砂の干潟があって、そこに自分自身砂の中に潜っていて、そして水の中のものを穴に吸い込んで、そこで食べてという、そういう暮らしのものがいわば同じ干潟で場所の取り合いをして、それでスナモグリの大発生が起きたら、その後アサリは復活しにくくなったというような議論をしています。
 ですから、これもまだ1つの説で、完全にはかたまりませんが、とにかく有明海の1970年代というのは底棲動物にとっては非常に増えた時期だけれども、それを1990年代以降に再現することは私はあれだけ赤潮が出るようになって、しかも大きな二枚貝があまり増えなくなっていますから、そこを元へ戻すというのは非常に難しいことだと思っております。
 ですから、漁師さんと今でも漁協を回って話をするんですが、そうすると元は夫婦で何トンというほど採れた。それから、あの時代に戻してほしいと言うんですが、それは何年続いたと思うかと言うと「さあ」と考えて、「10年かな」。本当はもっと狭かったんだよという話をしています。
 ですから、学問の問題として考えるときと漁業だったら人間に豊かさをもたらしてくれるような、いわゆる有用二枚貝がたくさん採れるということとの間では整合性は少しずれてしまうのではないか。だから、赤潮がたくさん出るようになったら、それでアサリとハマグリを昔に戻すというのは、これは技術の問題なのか、生態系そのものを建て直すというのは非常に難しいことだと思っております。

○須藤委員長 菊池先生、どうもありがとうございました。それでは、まだおありかもしれませんが、次もございますので、中田先生、どうもありがとうございました。
 続いて、佐賀大学で行っている総合研究プロジェクトについて報告をお願いしたいと存じます。本発表は荒牧先生とこの研究に携わっておられる佐賀大学の大串先生、速水先生にお願いしたいと思います。両先生、どうぞよろしくお願いいたします。

○荒牧委員 佐賀大学の有明海総合研究プロジェクトについて紹介します。環境省からこういうことを紹介してほしいという頼みを受けましたが、今ここに立ってやめておけばよかったと思っています。もともと我々がこれをやった経緯が、これまで佐賀大学があの場所にあることから当然やらなければいけないことなのですが、我々はそれでプロジェクトを組んだわけですが、この資金が佐賀大学、いわゆる地方の大学が研究教育を活性化するという目的の資金であることから、今、中田先生が発表されたように非常にターゲットを絞った研究が非常にやりにくくて、非常に総花的になっているのが今自分たちとしてはここで発表するのをちょっとためらっている問題の1つであります。
 それから、ここで目的としては書いてありますように、この委員会に直接関係する異変の解明と再生というものを掲げていますが、同時に佐賀大学というところにいる人間としては、有明海を取り巻くさまざまな分野の学問をしなければいけない義務があるものですから、それも取り込んでおりますので少し集中力が欠けているというところがあります。
 実際に右から3つの部門、これが有明海の異変の解明と再生用に取り組もうとしてつくった部門が3つです。微生物相も一応そういう形で取り組んだんですが、今のところそこに入り込めていないという状況にあります。
 コア1というところが水圏環境学系と述べているところで、ここが我々が今この委員会に関連した部門として集中的に研究をしているところ。あとは先ほど言いましたように佐賀大学がこれから長い期間、有明海の沿岸域でいわゆる教育研究をしていくときの基礎になる有明海学を創生したいというところで始めたものです。
 このコア1の研究については、その目的と、それからこれからの研究計画について、私たちのコアの中で現在、実際に担当している速水のほうから説明をいたしますが、こういう目標と、それから研究計画をつくって活動を開始しました。
 それから、微生物相については有明海の中には多様な微生物がいることは、もちろん当然考えられるわけですが、それをどういうふうに見るか。微生物の検索と同定をやるということと有用な微生物を探しだすという、陸上の微生物はほとんど検索されていて、その有用性についてもほとんど終わっていますが、海のところの部門についてはまだたくさん未知な部分が残っているということがあります。
 それから、実は有明海の周辺では、非常に大きな致死率を持っているビブリオバルニフィカス感染症というものが起こっていて、患者が発生していますので、それは医学部門としては緊急的にやらなければいけない問題としてここの部門に入れてあります。
 文科系は持続可能な漁業・生産活動の体系化、すなわち漁家といったものが一体どういう生産体系にあるか。それから経済的な仕組みの中で動いているかという問題もちゃんとやっておかないと、漁業として成り立たないということになるのではないかということ。それから、干潟・浅海域には独特の文化とか仕組みがありますが、それをデジタルアーカイブの中にきちっと記録をして教育システムの中に生かしていくということを考えています。
 成果については、まだ本格的に始めて1年ですので、あとで発表する速水のほうは非常に苦労すると思いますけれども、成果については成果報告集として報告をしてありますので、そちらのほうもごらんになっていただきたいと思います。今日は時間が非常に短いですので正確なところまで話しができなくて、それからまだ個別の研究にとどまっていて、中田先生が発表されたようにその総合化についてまでとてもやれる時間的な余裕がなかったということが正直なところですので、それはお許しください。
 1つだけ、先ほど言いましたようにビブリオバルニフィカス感染症だけについて紹介をして、私の役割を終わって次に回します。この病気が発症しますと敗血性ショックが起こって、致死率が7割という非常に高い致死率を持っています。ただし、それは実は肝臓病の人以外にはほとんど無害であるというようなものですから、特にパニックになるような必要はないということで、そういう形で取り組んでいます。これは発生する時期が6月から10月までというところでほとんど限られますので、カキなどを生食する時期とずれますので、その点では非常によかった。ただ、一般的にすべての魚、貝類の中にいますので、それは我々医学の立場から見るとそれをどうやって予防するかというところに力点を置く必要があるということになります。これは海水中に、それからカキの中にも夏場にはたくさん見られますが、どんなものにもいますので、どれに絞った対策ということではありません。ただチェサピーク湾についてはカキのところで起こりますので、そこについて集中的にやっていると思います。
 今、これから我々の取り組んでいる全体像ですが、この中で特にいわゆる発症予防というところに着目して、今のところほとんど治療法が見つからないというか、抗生物質を大量に投与すれば何とかなりますけれども、肝臓病の方に抗生物質を大量に投与すること自体がすでに間違っているという感覚がありますので、予防をしていくということになります。ですから、こういうふうな予防のパンフレットを特に肝臓病の方にどうやって回していくかということが非常に重要です。そのことを今、医学部では集中的に取り組んでいまして、佐賀県では今年幸いなことにゼロです。ところが熊本県で3例、久留米のほうで2例発症していて亡くなった方がおられるということですので、我々が今やらなければいけないことは、これは情報がきちっとわたれば罹らない、罹患しないという可能性がわかっていますので、そのことを徹底的にやるという点で、佐賀のほうは何とかできたんですが、九州の有明海沿岸域にきちっと伝えるというのが我々の役目だと考えております。これは1つの例として表れていますが、それ以外にいくつもの有明海に関連した研究としてやっている1つの例として示します。
 あとはこの委員会に直接関係するコア1の部門、すなわち有明海の異変の関連、再生に向けた取り組みという部分について速水のほうから説明をさせていただきます。

○須藤委員長 速水さん、続けてお願いいたします。

○速水助教授 佐賀大学の速水です。ただいま荒牧のほうから説明がありましたように、私のほうからは我々のプロジェクトのコア研究グループ1の研究内容についてご紹介したいと思います。
 これは先ほど荒牧のほうからお示ししたものと同じですが、我々の研究グループは環境物質動態研究部門、干潟底質環境研究部門、環境モデル研究部門という3つの部門からなり、全体でこのような11のテーマを掲げて研究を行っています。今日はこれらのうち、昨年度1年間に行った研究のうちからいくつかピックアップしてご紹介したいと思います。
 まず最初に有明海湾奥における底質環境の形成要因に関する研究ということで、環境物質動態研究部門の山本講師らによる研究をご紹介します。
 この研究の目的は、有明海湾奥域の底質特性を高い空間分解能で明らかにし、底質環境を支配する要因を解明し、泥質・砂泥干潟における干出の意義を明確化するということを目的にしております。
 この研究では2005年8月に有明海湾奥部の全域で100点の観測点を設けて底質の調査を行いました。これがその結果です。底質中の砂・粗粒シルト、それから細粒物質、これは細粒のシルトと粘土の合計ですが、それの含まれる割合を示したのがこの図です。
 これを見ますと湾の東部には多く砂が分布し、その沖では湾の中央部付近と湾の東部のこのあたりに粗粒シルトが多く分布し、湾の西側は細粒シルト・粘土からなる細かい粒径の底質が分布していることがわかります。
 次に、これは底質中の粒状態の炭素の分布を示したものですが、これを見ますと全体として湾の西側に高濃度で分布しており、さらにこの白いライン、これは海底地形ですが、湾中央部のこの尾根の部分に特に炭素濃度が高い部分があるということがわかってまいりました。
 さらに、こうした有機炭素濃度と、それから有機炭素の安定同位体比から求めた陸起源の有機炭素の濃度を分布で表したものがこの図です。これを見ますと、筑後川の河口以外にこのように湾中央部の部分に高濃度で陸起源の炭素が分布していることがわかってまいりました。
 それから、これは粒径による干出の効果の違いを表した図です。横軸が標高、縦軸が底泥の酸化還元電位を示しています。さらに●で示したものが泥の多い底質、○で示したものがシルト質の多い底質で、▼が砂泥質を示しています。これを見ますと○、▼で示したところでは干出すると酸化還元電位が高くなるのに対して、●の点では干出しても酸化還元電位は高くなっていないということがわかります。これはすなわち粘土含有率が40%よりも多くなると干出しても底質に酸素が供給されず、還元的な環境が保たれているということを示しています。
 以上の結果をまとめますと、有明海湾奥域においては懸濁物質が筑後川河口からの距離と海底地形によって分級され底質分布を形成している。
 湾奥部の中央部には局所的に陸域起源の有機炭素含有量が非常に多い領域が見られた。
 それから、湾奥部において底泥直上水のDO濃度が低い場合や底泥の粘土含有率が高いと底質の酸化還元電位が低くなるという傾向が見られました。
 次に干潟底質環境研究部門の田端教授による有明海における重金属イオンの濃縮されやすい底泥環境についてご紹介します。この研究では先ほどの山本らと同じ調査で得られた資料について、これは海底直上水と底泥ですが、金属イオンの濃度を分析しております。
 結果の一例ですが、海底直上水中の鉄の濃度を示しています。これを見ますと、こちらが懸濁態、こちらが溶存態ですが、直上水中の鉄は溶存態よりも懸濁態で多く存在している。それからここではお示ししませんが、懸濁物濃度の高いところでは懸濁態の鉄濃度も高いという結果が得られています。
 次にこれは底泥中の鉄濃度を示していますが、こちらは間隙水の鉄濃度、こちらは底泥に吸着された形態の鉄の濃度を示しておりますが、間隙水中の鉄濃度は非常に低く、直上水中の鉄濃度より低い。それから、底泥中に吸着された形態の鉄は主に湾奥部西部に分布していることがわかりました。
 それから、鉄以外の金属についてやはり底泥吸着態の分布について見ていきますと、こちらはアルミ、マンガン、亜鉛、鉛の分布ですが、いずれについても湾奥部西部に高濃度に分布していることがわかりました。
 以上の結果をまとめますと、有明海湾奥部の100地点で海底直上水、それから底泥を採取し、こういった元素の分布を求めました。その結果、底質の粒径が小さい有明海西部の底泥に多種類の金属が濃縮されているということがわかりました。
 次に有明海奥部における干潟域の脱窒に関する研究ということで、干潟底質環境研究部門の瀬口教授による研究の結果をお示しします。
 この研究の目的は有明海の窒素収支、それから窒素循環に大きな影響を及ぼしている浅海・干潟域における脱窒量を定量的に評価し、その分布と底質環境及び脱窒菌数との関係を明らかにするというものです。
 この研究では有明海沿岸の5点においてアセチレンブロック法による脱窒量の測定と、MPN法による脱窒菌数の計測などを実施しました。
 これはその結果の1例です。2004年、2005年の夏季と冬季における各地点における脱窒速度を示しています。赤と青で示したものが2004年で、黄色と緑で示したものが2005年の結果です。これを見ますといずれの点においても黄色、緑で示した2005年の脱窒速度のほうが2004年に比べて非常に大きい。これは縦軸を対数でとってありますので、非常にその差は大きいです。このように経年的に有明海奥部における脱窒速度は大きく変化していることがわかりました。
 なぜこのような変化があったかということに関しては、2004年のほうが底質の含泥率が低く、これはおそらく台風が多かったためにというふうに考えます。こうしたことが2004年に脱窒量が低くなったことの原因の1つではないかと考えられています。
 次に湾奥部の東与賀干潟における脱窒速度と脱窒菌数の季節変化を示したものがこの図です。
 これを見ますとグレーで示した脱窒菌数と、それから●で示した脱窒速度はお互いに非常によく似た季節変化を示しており、9月から11月にかけて非常に高くなっていることがわかりました。
 以上の結果をまとめますと、有明海奥部の干潟域においては2005年の脱窒量は2004年の脱窒量を大きく上回りました。それに関しては台風がその原因になっていると考えられました。
 また有明海奥部の典型的な干潟である東与賀干潟では、脱窒菌数と脱窒量の季節変化には非常に一致した対応がありました。
 また、それ以外にこういった研究成果も得られております。
 次に同じく瀬口らによる有明海奥部西岸域の貧酸素水塊の発生に関する研究についてご紹介します。この研究は生態系や漁業に悪影響を及ぼしていると推測される湾奥部西岸域における貧酸素水塊の発生状況を把握すると同時に、その発生原因を明らかにするというものです。
 これはその結果の1例ですが、湾奥部の測点1における海底直上のDO、この青のラインです。それから潮位、それから佐賀における風向、風速、この上の図です。それから、下が風波の波高の時間変動を示しています。
 これを見ますと、海底直上のDOは観測を開始した7月20日前後には2㎎/L以下で貧酸素化していたんですが、それが回復し、再び8月15日前後に貧酸素化していることがわかります。この貧酸素化は小潮で波も穏やかな時期に発生しておりました。一方、同じ小潮でもこの時期には比較的風が強く波が高い。こういったことから、有明海における貧酸素水塊は風が弱く、波の穏やかな小潮時に発生すると考えられます。
 また、これは長期的な変動について解析した結果です。用いた資料は佐賀県有明水産振興センターによる浅海定線調査で、この赤で囲った水域の平均値を示しております。このグラフの青が海底直上のDOで、赤が表層と底層の密度差、すなわち成層強度を表しています。これを見ますと、いずれの年においても夏季に底層のDOが低下し、成層強度が強くなるという明瞭な季節変動を示しております。ただし、同じ夏季であっても成層が非常に強い年もあれば弱い年もあります。また底層のDOに関しても大きく季節変動、年による違いがあり、経年変化がかなりあるということもわかります。
 そこで夏季、6月から9月の底層のDOと成層強度の関係についてプロットしたのがこの図です。これを見ますと、成層強度が強いほど底層のDOが低いという有意な相関関係が得られました。さらに、こちらは縦軸に成層強度をとり、横軸に佐賀における観測日前1週間の降雨量の合計を示していますが、両者の間には有意な正の相関関係があり、降水量が多いほど成層強度が強く、成層強度が強いほど底層のDOが低くなるという関係がわかりました。
 以上の結果をまとめますと、有明海奥部における貧酸素水塊は波高の低い穏やかな夏季の小潮時を中心に発生する。それから、湾奥部西岸域における貧酸素水塊の発生時には、密度成層さらに密度躍層の形成が重要な役割を果たしていることがわかってきました。さらに、こうした成層の形成には雨量や河川流入量が大きく影響していることが推察されました。それに加えてこうした研究成果も得られています。
 次に有明海奥部における残差流と懸濁物質輸送ということで、私と大串による研究成果をご紹介します。
 この研究の目的は2つありまして、1つは有明海湾奥部における残差流の分布を測定し、密度構造と合わせて考察するということです。もう1つは、現地観測によって潮流の影響を除いた正味の懸濁物質輸送量を見積もり、有明海奥部における懸濁物質の輸送過程を明らかにするというものです。
 どういう調査を行ったかといいますと、有明海奥部の西側の海底谷に沿ってこのような観測ラインを設け、このライン上を12時間ないし13時間の間、1潮汐の間に繰り返し往復して流速の分布と水質の分布を調べました。これはその結果の1例です。カラーのコンターで示したものは密度の分布、それから黄色のベクトルで示したものが測点方向の残差流の分布を示しております。
 これを見ますと、夏季の小潮、7月15日に関しては5m以浅に密度躍層が発達し、非常に強く成層していることがわかります。一方、秋の大潮である11月1日には鉛直的な成層がそれほど強くなく、こちらとこちらでこのコンターの目盛りがずいぶん違うことにご注意いただきたいんですが、鉛直的な密度の違いよりはむしろ水平的な密度の違いのほうが顕著になっています。一方、残差流のパターンに関しては、いずれの時期においても上層で流出、下層で流入といったパターンになっており、鉛直循環に関してエスチュアリー循環が夏季の強成層期、それから底層が発達しない秋季、いずれにおいても卓越しているということがわかりました。
 次に懸濁物質の輸送過程についてご紹介します。これは観測の結果の一例で、夏季の7月15日におけるある点における密度、σtの時間変動、それから測線方向の流速の変動を示したものです。横軸が時間、縦軸が水深になっています。こちらが同じく懸濁物質の変動を示しています。これを見ておわかりのように、上げ潮が強い時期に底層で高濁度層が発達し、満潮で潮流が弱まるとこうした高濁度層が衰退してきていることがわかります。こうして得られた懸濁物質濃度と流速を掛け合わせることによって、懸濁物質のフラックス、輸送量というものを求めています。
 こうして得られた7月15日の1潮汐間の正味のSSフラックス、すなわち潮汐の影響を除いたフラックスの分布がこの図です。これを見ますと、測点Aではほとんどフラックスがゼロであり、それ以外の点ではいずれも湾奥向きに懸濁物質が輸送されていました。さらに湾奥ほどフラックスが小さくなっており、これは全体として懸濁物質が沖合から湾奥へ輸送されて、湾奥部に集積しているということを示しています。
 有明海奥部の懸濁物質の輸送・集積機構の特徴についてまとめますと、このようになります。有明海奥部の残差流は、鉛直的にはエスチュアリー循環が卓越しました。こうしたエスチュアリー循環がありますと、底層で巻き上がった懸濁物はエスチュアリー循環の下層で湾奥部向きの流れによって湾奥方向に輸送されます。また表層で生産された植物プランクトンに関しても沈降すると、やはり湾奥向きの流れによって湾奥に輸送され、躍層が海底に接する点のすぐ沖合側に集積するということになります。すなわち有明海奥部では懸濁物質が残差流、特にエスチュアリー循環に伴った下層の流入によって輸送され、湾奥に集積されます。さらにここではお示ししませんでしたが、こうした懸濁物質は湾奥向きに輸送されながら潮汐周期で活発に沈降、再浮上を繰り返していることがわかってまいりました。
 それでは、次にこうした懸濁物輸送と、透明度の上昇と底質の細粒化の関係をどういうふうに理解しておかなければいけないかということに関して考察したいと思います。これは有明海奥部、佐賀県の浅海定線データをまとめたもので、1972年から2003年までの年間の平均の透明度の変化を示しています。このように明瞭な上昇傾向を示します。こうした透明度が上昇したということは、有明海の奥部の場合は表層の透明度の変動要因になっていますのは表層における鉱物種の細かい粒子ですので、表層への懸濁物質の輸送量、特に再浮上量が減少したというふうに考えることができます。もともとエスチュアリー循環によって有明海奥部では下層で湾奥に懸濁物が輸送され、表層に浮上していくパターンがありました。そこで表層への懸濁物質の再浮上量が減少したとしますと、沖合に運ばれる懸濁物質量は減少します。さらに再浮上が底層だけに限られるとしますと、再浮上が起きても湾奥に輸送されるだけで、むしろ湾奥への集積を促進することになります。その結果、湾奥でも特に流れが弱い、あるいは底層で収束域となっている水域に懸濁物質が集積することになります。
 すなわち有明海奥部では懸濁物の表層への再浮上が減少すると、透明度の上昇をもたらすとともに湾奥部への底質の細粒化をもたらすというふうに考えられます。
 次に懸濁物輸送と貧酸素化の関係について考えてみたいと思います。これは先ほどお示ししたSSフラックスの分布で、その下に示したものは同じ時期に観測したDOの分布です。これを見ますと、湾奥部の測点A、Bに貧酸素水塊が形成されています。これは夏季の有明海では湾奥部に有機懸濁物が輸送集積されると同時に貧酸素水塊が発達していくことを示します。ここで測点AB間に集積する懸濁物の集積速度というものを計算してみますと、炭素換算で10.6gC/㎡/dayという値になります。これはこれまで報告されている有明海表層の基礎生産量の年間最大値よりも大きい値です。一方で、有明海底層の酸素消費には再懸濁物質による酸素消費の寄与が非常に大きいということが徳永らによって報告されています。これは海底による酸素消費の7倍から11倍という非常に大きな値です。このこととこうした懸濁物輸送を併せて考えますと、有機懸濁粒子の湾奥への集積と活発な再懸濁が夏季の貧酸素水塊形成の一要因になっているのではないかと考えられます。
 さらに、これに関連して長期的なDO変動との関係について考えてみたいと思います。先ほどもお話ししたように夏季の有明海奥部の底層DOは成層強度の影響を強く受けて変動しております。成層強度は降水量の違いにより年によって大きく変動しております。有明海奥部のDOに関しては年々の変動が大きく、限られた点を除くと明瞭なトレンドは見られないと言われていますが、こうした明瞭なトレンドが見られないということの原因がこれではないかと考えます。そこで、成層強度の影響を除いた底層DOの経年変動について検討してみました。
 どのようにしたかといいますと、浅海定線データを用いて、連続する11年ずつに関して横軸に成層強度をとり、縦軸に底層DOをとって回帰直線を作成します。そして、ある一定の値、ここでは30年間の平均的な成層強度の2倍の値の時の回帰直線上の値をDOSとしますと、これが成層強度の影響を除いた底層DOの値を示すことになります。こうして得られたDOSとDOの経年変動を示したのがこの図です。赤がDOSで、青が生のDOの値です。有明海湾奥の測点1における7月の値ですけれども、これを見ますとDOSは1970年代から1980年代後半にかけて明瞭な低下傾向にあるということがわかります。さらにこれを測点1から10までの全データの平均をとってみますと、必ずしもこの場合両者の間で有意な相関があるわけではないのですが、パターンとしては湾奥の測点1と同じような変動を示しました。この結果は、成層強度の影響を除外すると、過去30年間で有明海湾奥部の7月の底層DOは低下傾向にあるということを示しています。
 さらに成層強度に関係なく底層のDOが低下しているということは、これは水平方向の酸素輸送量の減少あるいは酸素消費速度の上昇ということを示唆しています。先ほどお話ししたような底層の有機懸濁物の再懸濁が酸素消費に大きく寄与していることを考え併せますと、こうした変化というのは底層の有機懸濁物質が増加したこと、それによって有明海湾奥部が貧酸素化しやすくなっていることを示唆するのではないかと考えています。  次に数値モデルを用いた有明海湾奥の残差流に関する考察ということで、環境モデル研究部門の濱田講師らによる研究成果をご紹介します。この研究ではMEC Ocean Modelをベースに開発した有明海流動モデルを用いて、現地観測時の残差流を計算しました。
 これはその結果の1例で、7月15日における表層の観測結果、観測で得た残差流です。こちらはモデルです。これを見ますと両者のパターンが非常によく一致しているということがわかります。
 また、これは非成層期・大潮、11月の観測結果ですが、これに関しても観測で得られた残差流とモデルで計算された残差流は比較的よく一致していることがわかります。
 そこで現在、我々はこうした流動モデルを発展させて懸濁物質の輸送モデルを開発中です。
 また、これ以外に我々のグループでは佐賀県沖有明海における覆砂による底質の経年変動について、農業排水の負荷削減に関する研究なども行っております。
 最後に我々のグループの今後の研究計画についてご紹介します。環境物質研究部門では、まず河川を含めた陸域流入負荷量の算定と、負荷削減技術を提案し、さらに現地調査・実験により海底における物質フラックスを算定するようにします。
 それに続いて平成20年には有明海に対する底質・大気・河川・沿岸クリークからの物質負荷量の推定手法を確立するとともに、底質の調査を有明海南部に拡張して行います。
 そして最終年度である21年度には有明海に対する海底、陸域、大気への物質フラックスについて過去20年程度の変化を推定し、こちらの部門で作成する予定のモデルに対する境界条件を与えるようにしたいと考えております。
 次に干潟底質環境研究部門では、底泥中の金属濃縮と生物への影響の解明、貧酸素水塊の発生機構と防止策の検討、地域資源を利用した負荷削減技術の開発、底泥中の窒素循環モデルの検討に関して3年間続けて研究を進めていく計画です。
 さらに環境モデル研究部門では、今年度は懸濁物質の輸送モデルをつくることを大きな目的にしておりますが、平成19年度にはそれに続いて生態系モデルを構築することを試みます。それと同時にモデル構築のために必要な低次生態系のモニタリング及び実験を行う予定です。
 そして、20年度には有明海の基本的な低次生態系変動が再現できるような生態系モデルを確立し、最終年度にはこのモデルを用いて諫早湾干拓工事等が有明海に生態的に与えた影響を評価したいと考えています。
 以上です。ご清聴ありがとうございました。

○須藤委員長 貴重な成果と今後の研究計画まで聞かせていただきましてありがとうございました。それでは、委員の先生方ご質問、御意見をお願いします。小松先生。

○小松委員 ADCPを使って残差流を測られていますよね。有明海の場合、干満差が非常に大きいので残差流を計算するときに時々刻々水深が変わりますよね。その辺をどう考慮されたのかというのが1点。
 それから、残差流の収支が必ずしも合っていないような気がするけれども、その辺はどう解釈されたのか。

○速水助教授 最初の件に関しては技術的な問題になりますが、一度シグマ座標系に流速分布を直してから、調和分解を行っています。すなわち各シグマレイヤーについて調和分解を行っていますので、水深の影響は評価できたと解釈しています。
 それから、次の流量収支の問題ですが、ここでお示しした結果以外に収支が合うようにした潮流成分それから高周波の変動成分だけによる輸送量も計算しております。それだけ考えてもやはり湾奥方向への物質輸送が卓越するという結果になっており、基本的な結果には変わりないと考えております。

○須藤委員長 よろしいですか、細川先生。

○細川委員 ふたつ質問があります。まず、ADCPで測ったのは、水平方向だけですか。鉛直方向の流速も測っていますか。

○速水助教授 鉛直流速は測れないです。

○細川委員 鉛直流速もきっとありますよね。

○速水助教授 あると思いますけれども、船の上から……。

○細川委員 技術的に測れないという点は理解できますけれども、このエスチュアリー循環を考えるときには鉛直流速成分というのがどこかにあるはずですよね。

○速水助教授 ですけれども、ある断片で切った場合はどうやって。

○細川委員 私が質問したかったのは、一次元の列で観測したものの解釈は、今みたいにきれいに説明されそうな気がするんですが、現象そのものは三次元性を持っていて、ラインの話できれいに話をまとめてしまうと、どこかで足下をすくわれないのかなというところが気になりました。
 もう1つですが、測られたSSというのがどういうSSだったのでしょうか。底から舞い上がったというご説明でしたけれども、SSの姿というか性質から見ても、確かめられますか。

○速水助教授 SSの性質という意味では、残念ながらそれほど詳しくは見ていません。ここで見たのはSSの性質としては炭素含有量と、それからその有機炭素中の同位体比だけですので、実際に粒径分布などを見てみないと正確にはそれはわからない。ただし、流れと濁度変動の解析結果から巻き上がったものであろうというふうに推定しています。

○細川委員 ありがとうございました。大変面白い話でした。

○須藤委員長 どうもありがとうございました。予定した時間を回りましたので、もしかしたらもっとあるかもしれませんが、この辺でただいまの質疑応答は終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
 もう1つの議題でございます。その他でございますが、事務局のほうから何かございますでしょうか。

○環境省閉鎖性海域対策室長 次回の委員会の予定だけ申し上げたいと思います。先生方にはすでにご連絡をしておりますが、9月27日を次回入れております。次回は大変恐縮でございますが、議題が多いものですから午前、午後1日ということでご予定をいただきたいと思います。
 議題といたしましては今日、岡田先生に発表いただいた問題点と原因・要因との関連についての検討の続き、それから八代海についてのご報告、赤潮についてのご報告、水産資源に関するご報告、それから今日のような研究グループの関係では滝川先生と楠田先生のほうからもご報告をいただくご準備をいただいているところでございます。今のところ以上のような議題を予定しております。
 もう1つは委員会報告に向けて目次案のたたき台のようなものを事務局からご提示をできればと思っております。以上でございます。

○須藤委員長 ただいま次の議題についてもご紹介いただいたのですが、繰り返しませんが、担当される先生方、岡田先生をはじめ一月ちょっとありますのでご準備のほうを。その間に打ち合わせの会合を開いていただくことと思いますが。
 それでは、全体を通じてございますか。
 よろしいですか。
 それでは、ご準備のほうをお願いしまして、これにて第22回有明海・八代海総合調査評価委員会を閉会させていただきます。議事進行につきましては大体予定どおりになりました。先生方のご協力を感謝いたしまして、これをもって終了させていただきます。
 どうもありがとうございました。

午後3時57分 閉会

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