中央環境審議会動物愛護部会動物愛護管理のあり方検討小委員会(第21回)議事録

1.日時

平成23年9月28日(水)午後3時01分~午後5時39分

2.場所

環境省第一会議室
(千代田区霞が関1-2-2中央合同庁舎5号館22階)

3.出席者

林委員長、青木委員、井本委員、臼井委員、打越委員、浦野委員、
太田委員、小方委員、加隈委員、斉藤委員、渋谷委員、永村委員、
野上委員、水越委員、山口委員、山﨑委員、渡辺委員、
渡邉自然環境局長、田中総務課長、西山動物愛護管理室長など

4.議題

  1. (1)関係者ヒアリング(実験動物関係者等)
  2. (2)実験動物の福祉
  3. (3)その他

5.配付資料

資料1
「実験動物の福祉」について
別添1
〈環境省〉実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準(平成18年4月28日 環境省告示第88号)
別添2
〈文部科学省〉研究機関等における動物実験等の実施に関する基本指針(平成18年6月1日)
別添3
〈厚生労働省〉厚生労働省の所管する実施機関における動物実験等の実施に関する基本指針
別添4
〈農林水産省〉農林水産省の所管する研究機関等における動物実験等の実施に関する基本指針
別添5
〈日本学術会議〉動物実験の適正な実施に向けたガイドライン(2006年6月1日)
別添6
実験動物の適切な取扱(環境省実施 実験動物に関するアンケート調査概要)
<委員限り>資料2
名古屋大学大学院医学系研究科神経内科 祖父江元 説明資料
資料3
公益財団法人実験動物中央研究所 鍵山直子 説明資料
資料4
文部科学省研究振興局ライフサイエンス課 説明資料
参考資料
実験動物の適正な飼養保管等を推進するために(環境省パンフレット)
野上委員提出資料1~9(うち、2は委員限り)

6.議事

【事務局】 これから第21回の動物愛護管理のあり方検討小委員会を始めたいと思います。しばらくの間は、事務局のほうで進行を務めさせていただきます。
 本日の委員の皆様方の出欠状況につきましては、磯部委員がご欠席です。委員総数18名中17名の出席ということで、委員会は成立していることをご報告申し上げます。
 本日は、実験動物の福祉ということでご議論をお願いしたいと思いますが、関係者の方にいただくことにしています。それでは、関係者の皆様をご紹介します。
 まず始めに、名古屋大学の医学部長で国立大学医学部長会議動物実験に関する小委員会の委員長でいらっしゃいます、祖父江元様です。
 続きまして、公益財団法人動物実験中央研究所理事の鍵山直子様です。
 お二人には、本日、小委員会の中でご説明いただきますが、議論の場でもご助言をいただきたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。
 続きまして、文部科学省研究振興局ライフサイエンス課長の石井康彦様でございます。
 石井様には、大学、文部科学省所管の研究施設における動物実験の取り扱いに関する調査の結果等につきまして、本日はご報告いただく予定です。
 続きまして、資料の確認をさせていただきます。
 お配りしました資料の1から4まで、それに参考資料、さらに野上委員提出の資料の1番から9番でございますが、2番につきましては委員会限りとさせていただきます。
  本日の小委員会でお配りしました資料、委員限りのもの以外につきましては、環境省のホームページで公表させていただきますとともに、本日の議事録につきましても、同じく公表させていただきます。
  それでは、前置きが長くなりましたけれども、これからは委員長のほうにマイクを渡したいと思います。よろしくお願いいたします。

【林委員長】 それでは、ただいまから、第21回動物愛護管理のあり方検討小委員会を開催いたします。  議事に先立ちまして、渡邉局長からごあいさつをいただきます。

【渡邉自然環境局長】 昨日に続いてのご出席、本当にありがとうございます。また、ヒアリング関係者の皆さんには、本日の小委員会にご参加いただきましてありがとうございます。
 昨日の小委員会では、虐待の防止についてご議論をいただきました。それに引き続いて、本日は実験動物の福祉というテーマでご議論をいただければと思います。
 先ほどご紹介いたしました3名の方からご報告をいただいて、それをもとにヒアリングと実験動物の福祉についての議論を行っていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【林委員長】 ありがとうございました。
 それでは、早速始めたいと思いますが、先ほどからも事務局からご説明ありましたように、本日の小委員会、ヒアリングがございます。実験動物の福祉についてヒアリングを行い、その後、皆様からのご質問あるいはご意見をいただきたいというふうに思います。
 ヒアリングの進め方ですが、祖父江さんと、それから鍵山さんからは、それぞれ10分程度ご説明をいただきます。そして、その後、質疑応答は40分間。できる限り時間を厳守いただきたいと思います。また、それに引き続きまして、文部科学省より実験動物の取り扱いに関する調査結果について10分程度のご説明をいただきます。これにつきましては、それほど多くの質疑はないと思われますので、5分程度の質疑をいただくということで、そのヒアリングを終了した後、1時間程度審議を行っていただくという形で進めたいと思いますが、よろしいでしょうか。
 それでは最初に、続けてお二人、祖父江さんと、それから鍵山さんからご説明をいただきたいと思います。

【祖父江元氏】 このような機会を与えていただきまして、どうもありがとうございます。先ほどご紹介いただきました、名古屋大学の祖父江と申します。
 今日は、お手元に資料、委員の先生方にはハンドアウトが渡っていると思いますが、傍聴の方々は渡ってないかと思いますので、このスライドを使って、説明させていただきます。
 それで、今10分とおっしゃったのですが、少し長くなるかもしれません。よろしくお願いいたします。
 まず、私の立場としては、医学研究者の立場から疾患の克服、治療法開発に向けた動物実験の役割・意義というものをご説明させていただきたいと思います。疾患の治療法の開発というものが、人の福祉につながるというのは皆さんよくご理解いただいていると思いますが、実際にどういうものかということを、ちょっと私どもの領域に限らせていただきますが、若干の例示をさせていただいて、実態がどうなのかということをご説明いたします。
 例えば、これはまず、糖尿病の例でございますが、糖尿病が強く疑われる患者さんというのは、ある統計によりますと、大体890万人というふうに言われておりますし、予備軍を入れますと1,000万人を超えるというふうに言われております。糖尿病で一番怖いのは合併症でございまして、例えば網膜症、目が見えなくなる網膜症ですね、これが135万人ぐらい。それから足の壊死に至る方が、大体年間1万人ぐらい。それから透析に8万8,000人ぐらいの方がお見えになるというふうに言われております。
 ただ、こういう合併症は、糖尿病の血糖をお薬でコントロールすることによって予防できるというものでありまして、これはインスリンの例を示しておりますが、ここに網膜症の頻度とありますけれども、これが血糖をコントロールすることによって、かなり予防できるという例であります。
 それからもう一つは、四つぐらいの例を出しますが、脳卒中ですね。脳卒中は、患者さんの数としては134万人ぐらいお見えになりますが、その最大の危険因子は高血圧でございます。高血圧は今ほとんど、国民の3分の1ぐらいが高血圧というふうに言われておりますが、血圧が高いほど脳卒中の頻度がウナギ登りに上がります。
 ですから、血圧を降圧剤、これもお薬でございますが、大体5から6mmHg、これは拡張期血圧でございますが、下がりますと、この場合脳卒中、脳梗塞に限って言っておりますが、42%予防することができるというデータでございます。ですから、コモンな疾患のかなりの部分は、お薬によって予防できている部分、あるいは治療体系というものが、いい薬が出ますと非常に変わってくるという局面がございます。
 ただ、まだ十分なお薬が出ていない病気、これから開発していかないといけない病気というのがたくさんございます。例えば認知症でございます。これは今、ご存じのように、認知症というのは、例えば2030年までに350万人を超えるというふうに言われておりますし、社会問題が多々発生しているところでございます。これは現在、特にアルツハイマー病を中心にして開発が行われているお薬でございます。これは、いろいろな種類の、いろいろな病態に応じたお薬が開発されておりますが、対症療法の一部の薬を除いて、本質的な治療法開発には、まだ至っていないという状況でございます。  それから、これはちなみにでございますが、本邦における要介護者、寝たきりあるいは要介護ですね、その原因疾患としては脳卒中と認知症が圧倒的に多いということでございまして、このあたり、予防法と治療法の開発が非常に重要だということだと思います。
 それからもう一つ最後に、私どもの領域の病気で恐縮ですが、筋萎縮性側索硬化症、ALSという病気がございます。これは、全国で1万人ぐらいの患者さんがおられますが、そのうちの3,000人ぐらいが呼吸器を装着して生活されておられます。発症後、大体3年で半数の方が死亡されるという病気でございまして、これはニューヨークヤンキースのルー・ゲーリックがかかったということで、ルー・ゲーリック病とも言われております。進行しますと、こういう呼吸器装着で、意思疎通ができなくなるということでありますが、発語障害とか手足の麻痺というのが、主な症状でございます。
 ALSについても、治療薬が今、世界でこれぐらい治験ということで行われた、あるいはこれから行われようとしているのですが、一つは認可されておりますけれど、これ以外はすべて失敗に終わっておりまして、根本的な病態を抑止できる治療法の開発には至っていないという状況でございます。
 これは、患者会のホームページからとったものでございますが、このALSの患者さんというのは非常に悲惨でございまして、家族の方も、これほど悲惨な病気はないと。悩み、苦しみ、そして絶望の日々を過ごしていると。多分、呼吸器につながれて死を待つ病気ということでございます。
 ですから、これは私どもの神経疾患、私は神経内科でございますので、神経疾患を中心に難病の患者会が求めていることというのが、ここにずっと、ホームページからピックアップしましたが、先ほどの日本ALS協会、あるいはいろいろな難病の患者さんの団体が一番望んでいるのは、やっぱり新規治療法の一日も早い開発ということでございます。
 それからこれは、厚労省が指定しております、いわゆる難病。これはどういうものかというと、本質的な治療法の開発がなくて、まだ治療法の開発が待たれている疾患。これは、厚労省が指定しただけで130疾患ございますので、世界的に見ると、これをはるかに上回る疾患が治療法の開発を待っているという状態でございます。
 では、治療薬を開発するにはどうしたらいいのだろうかというのが、次の非常に大きなテーマでございまして、ここからが本題でございますが、動物実験がやっぱりどうしても必要になってくるわけであります。
 これが、治療薬の研究開発から承認、発売までのプロセスでございまして、薬物標的の同定から前臨床試験、それから臨床試験、申請と、こういうふうに行くんですが、大体これが15年から20年ぐらいかかります。特にこの前臨床試験というのが、薬理試験、薬物動態試験、それから毒性試験から成り立っているのですが、この毒性試験のうちの生殖発生毒性というのが非常に重要でございます。このプロセスは、すべて動物実験でやることが必要とされているところでございます。
 これは一つの例でございますが、皆さんよくご存じかとは思いますが、サリドマイド胎芽病というのが出ました。これは、胎児の催奇形性の動物実験の部分が不十分で、アメリカでは却下されたのですが、日本ではそれを承認したために、非常に悲惨な状況が起こったという例でございます。
 それから、私どもは理念といたしまして、ヘルシンキ宣言というもの、もう一つCIOMSの宣言がございますが、この理念的に従って動物実験をやっているというのが実情でございます。人間を対象とする医学研究は、動物実験に基づき、科学的原則に従い、動物の福祉は尊重されなければならないと、こういうふうにうたっているわけです。
 それからもう一つCIOMSというのがございまして、これも私どもがいつも頭に入れているものでありますが、例えば新しい治療方法、予防方法、あるいは診断用の材料、装置、あるいは処置を人間に試みるに当たっては、その前に必ず動物で実験を行うことが必要であるということをうたってございます。動物を使用する場合は、それは動物の福祉に対する責任が課せられるというものでありまして、これは理念として世界的、国際的にうたっているところであります。
 国内では、いろいろな法律、指針に従って私どもは動物実験をしているところでありまして、国は環境省、文科省、それから学術会議、それから研究機関ごとに動物実験規定というものを作っております。これは、後でまたお話が出るかと思いますが、文科省の基本指針でございまして、もっと長いものでございますが、この中で重要なのは、動物実験委員会の構成ですね。構成は、こういうものでなければならないと。あるいは3Rの厳守というものがうたってございますし、それから科学的な観点からの動物愛護というものが非常に重要であると。それからもう一つ義務づけられているのは、教育訓練をすること、あるいは自己点検評価、検証を行うこと、あるいは情報を一般に公開すること、どういう実験を行っているかを公開することという、こういうルールがございまして、私どもは、このルールに従って実験をやっているというのが実情でございます。
 その中で、ちょっと実例を少しずつお示しいたしますが、私どもが意識していることの一つとして3Rの遵守ということが当然ございます。これは、釈迦に説法だと思いますが、使用数削減ですね。
 それから代替法の導入。例えば、後でまたお話しますが、線虫とかショウジョウバエなど下等の動物でやれれば、そちらに移動させると。あるいはコンピューター・シミュレーションの可能性を検討すると。ただ、これはなかなか言うは易く、現実には難しい面がございます。
 それから苦痛の軽減というのは、飼育環境とか、それから安楽死の問題、それから人道的エンドポイント、それから侵襲性の低い方法を使うというようなことでございます。
 これが、私どもの大学の実例、具体例の一部でございますが、使用数の削減、Reductionについては、使用動物数の根拠を明記――これはもとのものをコピーしてまいりましたので、ちょっと見にくいかと思いますが――明記することで必要最小限の使用数にするということをやっております。それから苦痛の軽減というのは、麻酔法とか人道的エンドポイント、安楽死法等を具体的に記載していただいて、それで検討すると。私どもの実績では、約26%がやり直しという格好で、動物実験委員会から書き直しをしているところでございます。
 それからもう一つ、先ほど申し上げました代替、Replacementですね。これは、私どもの例ではございませんので、ある大学の例としてちょっとご紹介しますが、75件の実験計画を見てみると、そのうちの一部はバイオ細胞とか魚類とか線虫で行っておりますが、やはり哺乳類が圧倒的に多いと。世界的な流れは、現在、例えば論文の投稿とか、先ほどの薬の開発ということになってくると、個体で行い、さらに薬ということになりますと、哺乳動物での検討が要求されるというのが現在の趨勢でございます。
 もう一つ、第2番目に意識しているのは、先ほど申し上げましたように科学的であるということでございまして、研究の目的・意義が明確である。例えば、どういうことを目的にしている研究なのかということですね。それから、目的に沿った実験デザインが組まれているかどうか。例えば動物種、匹数・頭数、観察法、観察期間、こういうものが目的に沿った形でデザインされているかどうか。あるいは結果に再現性がある状況を作っているかどうか。これは物理的な要因、化学的な要因、あるいは感染がないとか、あるいはストレインとして遺伝的に均一であるとか、いろいろな要素がここには絡むことになります。  最後に、3番目として私どもが意識していることというのは、今申し上げた動物愛護的であること。それから科学的であることと同時に、さらに外部から専門家による検証が現在行われておりまして、その検証に対応していくということが非常に重要でございます。
 これが専門家による外部検証システムでございまして、主には国立大学法人動物施設協議会、公私立大学実験動物施設協議会のメンバーを中心に検証委員会というのを作っております。この検証委員会が、ここに検証プロセスというのが書いてございますが、このプロセスに沿って大学を訪問して現地調査をやり、今の状況をきちっと把握しながらやっているかということを調査いたします。この調査報告書はパブリックオープンになっておりまして、公表するということになっているところでございます。
 外部検証実施機関は、まだ先の改定から始まっておりますので、始まって3年というところでありますが、今年、私どもの名古屋大学も受けることになっております。今後、この数を飛躍的に増加させていくということを聞いております。
 これは最後のスライドでございまして、動物実験の必要性・重要性ということを私どもの立場からご説明させていただきました。人類の福祉という観点と、動物の必要性・重要性、あるいは福祉というもののバランスというものが非常に大事だろうと。それから、適正な動物実験の実施に関わるシステム構築というものが現在行われていて、外部監査も含めて非常に順調に動き出しているということではないかというふうに思います。
 これは私の個人的な感想でございますが、現在のシステムの充実と検証、さらに充実させる、あるいは検証していくというものが、適正な動物実験実施への最重要課題であって、新たに届出制を導入する必然性に乏しいというのが、私の印象でございます。
 以上でございます。どうも、ご清聴ありがとうございました。

【林委員長】 それでは、引き続いて鍵山さんから。

【鍵山直子氏】 実験動物中央研究所の鍵山と申します。今日は、お招きいただきまして、ありがとうございます。
 私は、実はブリーダーの指導をしております社団法人日本実験動物協会というところがあるのですが、そちらのほうの実験動物福祉専門委員会の委員長もしておりまして、ブリーダーの事情に関しては、少し厚く説明をさせていただこうと思っております。
 お手元の資料の3番を御覧いただきたいと思います。
 私が申し上げたいことをかいつまんで言いますと、その四角いところに囲まれている内容でございまして、まず、3R原則の実効は、2006年体制の遵守と実験動物・動物実験の自主管理で着実に向上しているというふうに判断いたします。そして2番目に、仮に法規制を強化すれば、科学技術、生命科学研究あるいは先端医療、そういったものが大幅に遅延するのではないかというふうに懸念しております。そして3番目は、届出・登録制の話がございますが、これは関連府省の協議を経て構築された自主管理の仕組みでございますから、それを反故にする、あるいは、場合によっては崩壊させてしまうのではないか。非常にその辺が気になっているところであります。
 では具体的に、どういう事実をもってその説明をしているのか、言いたいのかということに関しましては、その下に法的枠組みと自主管理、それから適否判断、周知と検証、そして国際動向ということで、四つにくくってございます。それぞれに対して説明をしておりますので、別添も使いまして、ちょっとお時間をいただいて説明をいたします。
 私も、10分では終わりそうもないのですが、何とぞよろしくお願いいたします。
 まず、法的枠組みと自主管理でありますが、動物愛護管理法の41条、科学上の利用に供することなのでございますが、その目的というのは動物実験の適正化であって、決して規制することではないのだろうというふうに思います。それから、動物実験は、利用分野ごとに別に実は規制されていると。それから、飼養と利用は、実は表裏一体の関係にありまして、実験動物生産者は、動物実験研究者のニーズに合わせて実験動物をつくっている。すなわち、生産者と研究者は一体の関係にあるのだということ。そして4番目に、実態把握の問題ですが、動物実験の所管省が関連団体の協力で、それはちゃんとやっているよということを申し上げたいわけで、別添の1から3に、もう少し詳細をお示ししております。
 恐れ入りますが、1枚めくっていただきたいと思います。
 別添1は3R原則に基づく動物実験基本指針等の制定と、研究機関等による動物実験の自主・自律的な管理を枠組みとしてお示ししてございます。左の上に動物愛護管理法がございまして、その法律に基づいて、実験動物の適正な飼育に関しては環境省、環境大臣による実験動物の飼養・保管に関する基準が告示されております。一方、右側ですけれども、実験動物の適正な利用という、動愛法的にはそういう言葉になると思いますが、これは 3R原則をもとにしまして、文科省、厚労省、農水省が動物実験基本指針を作ったと。指針は、あくまでも骨格であるから、肉づけということで日本学術会議、科学者集団が詳細指針を作りましたと、こういう図でございます。
 実験動物といえども、動物愛護管理法の第2条、基本原則、これに反してみだりに殺し、傷つけ、苦しめれば、第44条の罰則が適用されると。これは、この法律から読めます。ところが、みだりかどうかということが、その動物の範ちゅうによって異なるために、4種類の飼養・保管基準が環境大臣によって告示されたというふうに私は理解しております。  それからもう1点でございます。動物実験基本指針でありますが、確かにこれは、法令ではないということを指摘されますが、ただ、法的拘束力を現場に対しては有するソフトロウであります。違反したらどうなるか。これは、公表されます。そして、研究委託費の返還を求められる場合もあるそうです。すなわち、研究者は、実は罰金よりも重い研究者生命の損失を招くという、そういう可能性がある法的枠組みとなっております。
 それから別添2には、では別の法律、その利用の分野ごとに法規制があるよというふうに申しましたけれど、その例を示してございます。医薬品の安全性試験であれば、省令GLPがあります。遺伝子組換え実験であれば、カルタヘナ法に基づく二種省令がある。そして、感染実験ならば、感染症法等によって規制されております。ですから、動物取扱業の規制というのを屋上屋にかぶせなくても十分規制されている。また仮に、動物実験で実験動物を適正に取り扱わなければ、信頼できるデータは得られないのですから、それで論文を書いても、その論文は、はじかれます。ここでも、科学者に対するある種のトラップが設けられているというわけであります。
 それから、隣の別添3であります。これは実態把握を示してございます。この実態把握に関しては、届け出する方法も確かにあるかもしれないけれども、現時点において、実験動物の販売数と使用数は、私がちょっとお世話しております社団法人日本実験動物協会と、それから社団法人日本実験動物学会、それぞれ定期的に調査し、実数を把握しております。ただ、その生データではなくて集計値を、会誌あるいはホームページに公表していて、もちろん国会図書館にも保存されています。
 この表、上のほうの1番は、平成22年度の実験動物販売数、社団法人日本実験動物協会の資料でございますが、右側のカラムに平成19年の合計数が出ております。それと、それから平成22年度の実数を比べたものが、その隣の合計と書いてあるカラムでありますが、ごらんのように、モルモットとかイヌは大幅に減少している。次に減少しているのがラットでしょうかね。ブタは、その3年の間に増えていると、こういうふうに読めるわけです。
 何で減ったんだろうと。これは、祖父江先生のお話にもございましたが、分子生物学の発展によりまして、製薬会社では、候補化合物の探索に代替法がどんどん普及している、だから減っているのです。それから、3Rが明文化されて、それに対する真摯な取り組みをブリーダーがしたと、実験動物生産者がしたと。その結果として、Reductionが、こうやって効いていると。それからもう一つ、外部検証の話が出ましたけれども、外部検証を受けることがブリーダーから動物を買う条件になってきている。であるから、こういうふうに減少してくるのです。
 このような状況で、結局ブリーダーの立場からすると、動物実験がなければ存在し得ない。さらに実験動物生産者、それに対しては届出・登録制にする。それを設ければ、研究に必要な実験動物の入手が、どんどん困難になるだろうと。それは、動物実験に多大な影響を及ぼすのではないか、こういうふうに考えます。
 もう一つ、届出・登録制に関して、もしお役所が実数を把握すれば、現在は団体が把握しているのですが、これが役所になったとしたら、私は、害が多くて益が少ないというふうに思います。このことは、引き続き説明をしてまいりたいと思います。  ここで、資料3の最初のページに戻っていただけますでしょうか。
 今度は適否判断でありますけれども、3R原則の実効は、実は動物福祉だけでは読めなくて、科学と福祉の両面から評価しなければならないと。それから、⑥ですけど、実験動物の取扱いの適否というのは、数字では読めないぞと、判断不可能です。それから7番目に、だから動物実験委員会に実験動物・動物実験、それぞれの識見者を入れる、それと、その他の有識者を入れる、参画してもらうということが動物実験基本指針ではっきりと規定されています。
 では、ここのところに関しては、別添4を見ていただきまして、もう少し説明をしたいと思います。
 別添4は、実験動物の取り扱いの適否判断でありますが、ここに示したのは、アメリカのILARの指針です。ILARの指針って何だというのは、このページの下のほうに書いてありますから、お読みいただきたいと思いますが、要するに言っていることは、数値に基づく判断には限界があると。数値基準という言葉がILARの指針に出てきます。専門家の裁量と現場経験者の判断が、どうしても適否判断には必要だと。それを、ILARの指針は成果基準とか実践基準というふうに言っておりまして、成果基準のところに書きましたように、運営責任者、研究者、動物実験委員会の裁量を認めまして、目的を遂げるための方法に柔軟性を持たせる。この場合は、専門家の意見と合理的な審査が不可欠であるというふうに書いてございます。
 またすみません、資料3表紙に戻っていただけますでしょうか。
 3番目の大きなテーマは、周知と検証であります。⑧から⑪まで上げてございますが、動物実験関連団体が連携して、実はめちゃめちゃ頑張って周知活動をしております。それから、自己点検・評価。文科省の説明がありまして、それは基本指針に書かれているということですが、その結果を研究機関等がホームページ、あるいは年報で公開していますよと。
 それから、外部検証。もう少し外からの、社会的な透明性を高めるための外部検証。そのシステムが起動して、動物実験の自主管理を担保している状況もでき上がりました。そして、今言ったようなことが功を奏して、実は、日本の法的な枠組み、制度ですね。制度に起因する学術論文の掲載却下というのは、2006年体制ができてから、全く報告がありません。
 では、このことについて、別添5と6で説明を加えてみたいと思います。別添5をごらんください。
 これは、動物実験関係者による周知活動をまとめたものであります。丸が左側に五つ並んでおりますが、動物実験基本指針が何本か分かれて出ております。それに沿って、例えば大学等アカデミアに対しては、国立大学法人動物実験施設協議会、あるいは公私立大学実験動物施設協議会が指導すると。それから、製薬企業とか受託試験機関に対しては、日本製薬工業協会が指導する。厚労省の指針に沿いましてですね。
 それから、実験動物生産者、販売業者、そういった方々に対しては、社団法人日本実験動物協会が指導しておりまして、これ、アスタリスクの1がついておりますが、実は、実験動物を飼っている現場が見えないと。見えないというのは、物理的に映像として見えないというのと、数字的なことがあると思いますが、目に見えないということに関しては、現場が見えるDVD、動物福祉の取り組みというタイトルのものを、この日本実験動物協会が作成いたしましたので、ペットショップ等、あるいは動物園等と実験動物の飼育の現場がどんなに違うのかというのは、これを見ていただければよろしいかと思います。
 それからあと、丸の4番目は社団法人日本実験動物学会の話ですが、実は社団法人日本実験動物学会は、こういうスタンスです。文科省、厚労省、農水省が所掌しない施設、例えば経産省の施設がございますね。それから小規模な施設、そういったところを学術会議のガイドライン等をベースにして指導をしております。そのことは、アスタリスクの2で示してございますが、具体的にどういうことがあるかというと、Eラーニングコンテンツ「動物実験の実践倫理」というものをホームページに公開して、これはパスワードがありません。だれでも、いつでも、どこでも見ることができます。それから、全国5カ所の巡業セミナーをしまして、だれでも参加できる、オープンです。850名の聴講があったというふうに聞いています。
 それから、ILARの指針がさっき出てきたのですが、これというのは、日本学術会議が引用する重要な文献であるということはもちろんなのですが、実は日本の自主管理と共通する解説書が欲しいと。解説書としては、ILARの指針の翻訳版がベストであるというふうに学会は考えます。それから、円卓会議を開催して、多様な団体の代表者が自由に情報交換して、意見交換して、課題を見つけて解決方法を協議すると、こういうことをする場が実験動物学会によって提供されているということであります。
 それから、次をめくっていただきまして別添6、外部検証でございます。外部検証に関しましても、ただいまの説明と、ある意味グループ分けが類似しております。実験動物協会、それから国立大学法人動物施設協議会・公私立大学実験動物施設協議会、ヒューマンサイエンス振興財団、こういうところが動いているわけでありますが、これまでのところ、合計104施設あるいは機関が外部検証を受けてあります。
 その外部検証の仕方は、上に表がありますように、検証方法、それから検証の項目・目的、そして実施の手順ですね、これはガイドラインを作って、ばらつきが出ないようにやっているということです。国内はそういうことですが、そのほかにAAALAC Internationalと言いまして、これは国際的な実験動物の管理の評価認定協会なのですが、このAAALAC Internationalの認証を取得しているところが、国内に9施設あります。
 国内にしても、それから国際的な組織にしても、その外部検証のポイントは、下の四角に囲みました。チェック項目と内容に、あらかじめ双方が合意する、受ける方もやる方も。これは、一種の周知活動なのですよ。それから、双方向の対話と指導・助言があります。これは、実地調査において必ずこういうふうなプロセスをとります。ですから、数字だけで見るのではなくて、もっと専門家同士の、実務者同士の双方向の対話の中でもって指導、助言が成立するのだということがわかっていただけると思います。
 恐れ入ります、資料3最初のページに戻ってください。
 最後の国際動向、これに関しては[12]から[14]まで三つのことをご紹介したいと思います。一つは、国際実験動物学会議のこと。それから[13]というのは、イギリス国民に対するアンケート調査のこと、そして研究者はどういうふうに思っているかということ。そして、最後の[14]では、EUにおける問題、アメリカにおける問題をご紹介いたします。
 別添の7をごらんください。
 国際協調でありますが、この国際実験動物学会議、ICLASというふうに略すのですが、1956年にできまして、国際的な視野に立つ実験動物の飼養の標準化を目指す非政府組織、NGOとして成立したわけです。当時は、五十何年くらい前ですか、標準化をしていくということが思われていた。それで、途中、1961年からWHOと協働歩調をとりまして、すなわちユーザーあるいは医学との協働歩調をとりまして、いろいろあります実験動物・動物実験関連の国際機関――国際機関はいっぱいありますが、それを束ねるアンブレラ・オーガニゼーションとして現在機能しております。  丸がありますが、その下のほう、「わが国からは」というところで、日本学術会議がナショナルメンバーとしてリーダーシップを発揮しております。社団法人日本実験動物学会と社団法人日本実験動物協会は、サイエンティフィックメンバーであります。執行役員に関しましては、会長、副会長、事務局長、財務担当理事が4役でありますが、私、鍵山は、このICLASの副会長を仰せつかっているところであります。
 それから1枚めくっていただきまして、別添8です。
 市民の意識と研究者の意識というところですね。この上の四角の中の下のほうに、イギリスの調査会社Ipsos MORIが行政当局や公的機関の委託で調査をしているとありますが、定期的に調査をしております。この表なのですが、2008年が最後の調査で、もうそろそろ次の調査のタイミングが来ます、2011年。今、データとしては2008年が最新です。  それで、[1]と[2]のところを見ていただきますと、無用な苦痛を与えない限り動物実験を容認するというのが74%。代替法がなければ、医学研究への動物実験はやむを得ないというのが70%。イギリス国民の大多数は、動物実験を必要かつやむを得ないものと考え、とらえているということがわかります。
 その下の[3]ですが、科学者は動物に無用な苦痛を与えていないと思う、これが53%。すなわち、これどう読むかですけれども、イギリスといえば世界一厳しい法規制をとっているところです。そのような厳しい規制をもってしても、やっぱり50%どまり。この問題は主観が大きく影響するということがわかります。
 その下のグラフは、一方、研究者はということですが、四角の中に4番目のポツがありますが、75%が、どうもアニマルライツ活動家に対して深刻な脅威というふうに考えているのだと。市民の感じ方、研究者の感じ方がこうであるということ。  最後に別添の9でございます。実は、非常に具合が悪い問題が起こっていると。法規制を強化すると、どんな影響があるのか。それからアニマルライツ・テロが横行している、その抑制措置として、どういうふうな対応をとっているか。
 上は、ヨーロッパにおける企業移転の実例です。この四角の中に、ドイツ、ドイツ、スイスと三つの例を入れてありますが、私は、実はこの3番目のスイスの会社、製薬企業の日本法人に、ちょうどこのころ勤務しておりました。本当に厳し過ぎる法規制というのは、国に一体全体何をもたらすのかということですね。ヨーロッパですから、各種の免許制度を布いています。動物実験計画も、大臣承認か、あるいは当局の長官の承認、そういう制度をとっておりますから、承認に至るまであまりにも時間がかかり過ぎて、製薬会社は新薬の開発が遅れて、アメリカに伍していけない。これは患者さんに迷惑をかけるということなのですよ。
 それからごく最近、こういう企業でなくても、研究者個人のレベルでも問題が発生しています。ドイツのブレーメン州が、ドイツは州で動物実験計画の審査をするのですが、実験計画の更新を、その州当局が認めないと。研究者は、それはおかしいではないかと言って提訴しました。結局、研究者の主張が認められたという事例もございます。
 その下ですけれども、これは最近のアメリカの状況であります。フリーダムを重んじるアメリカ。登録制をとっておりますが――登録制をとっているといっても、動物福祉法においてはマウス・ラットを除く動物なのですが、登録制をとっていて、その弊害が、フロリダ州、ミネソタ州云々と書いてありますよね。これは読んでいただければいいわけですけれども、連邦の情報公開法、フリーダムですから、アメリカ連邦の情報公開法を、アニマルライツ活動家が悪用して、登録をさせた個別の情報、個別の情報が登録制ですから役所にあります。それを請求して、テロ行為を繰り返すと。それを見かねて、今度は連邦の法律はそうだけれど、では州法でその対策を立てなければいけないと、そういう措置をしている。州法で措置をしたということのリストです。
 ともあれ、このような悪循環が、このフリーダムの国、登録制では起こっているということでありまして、ですから、情報は開示するけれども、個別のデータを役所に届けるということは、かなりリスクを伴うのだろうというふうに思います。  まとめますと、3Rの実効性向上のために、私ども実務者が淡々粛々と努力を重ねているということを理解していただけたと思います。日本には、動物実験に関する法律がないという意見を耳にしますが、私は、少なくともそうは考えていない。法令、指針、ガイドラインにのっとった実験動物・動物実験の自主管理は、何ら公益に反する問題を犯していない。だから、今、その法規制を強化するということは、これは不要不急の策ではないかというふうに判断します。
 動物愛護と科学を両立させるために、実は世界はもがいています。そのような中で、日本の取り組みが注目されているのです。歴史上の理由、ヨーロッパでいえば動物虐待、アメリカでいえばペットの盗難、密売。こういう歴史上の理由から苦渋の策をとらざるを得ない欧米。その後を追う必要は、私は全くないというふうに考えております。
 以上です。ありがとうございました。

【林委員長】 ありがとうございました。
 それでは、ご両人のプレゼンテーションを終わりましたが、これに対してご質問をいただきたいと思います。  なお、この後、総合的に論議するときも残っていただけますので、ご意見、ご質問等はそこでもできますから、今ご質問いただく内容はできる限り、このお二人のプレゼンテーションに対して、直接お聞きになりたいことを中心にお願いしたいと思います。
 野上委員、どうぞ。

【野上委員】 今、いろいろ鍵山さんがおっしゃったことは、2005年の法改正以降のお話だと思いますが、そもそも、その2005年の法改正がなぜ行われたかということを考えてみますと、当時は、やはり動物実験について、日本が国際社会の中で何もしていないではないかということで、世論がありまして、動物実験については何らかの対処が必要だという動きがあったわけですね。
 それによって3Rの理念が入ったりしたわけですけれども、そのことによって変わったのは、実は鍵山さんたちではないですか。自主規制を一生懸命やっているとおっしゃっていますが、これはまさに世論の力に押されて、法改正が行われたら大変だというので、一生懸命自主規制をされてきたと思うのですね。ということは、逆に言えば、こういう法改正運動があったからこそ、いろいろな自主規制が進んできたということで、逆に感謝していただかなければいけないくらいなものではないか。  2005年の法改正のときに、環境省の担当者が、こう言っていました。「動物愛護法は、動物実験を規制するものではない。これは、あくまで実験動物の福祉を進める法律である」と。つまり、実験動物と動物実験ということを、切り分けていたわけです。私たちは、実験動物の福祉を推進したいと思っています。鍵山さんのこの資料を読みますと、法規制の強化によって科学研究が大幅に遅延する可能性があるとおっしゃっているわけですが、動物福祉を推進することが、なぜ科学研究の遅れを引き起こすのか。それは、到底理解できません。いろいろな国々が、そして国際的な基準の中でも、科学研究と動物福祉の調和を言っているわけですし、福祉を強化することによって、より適切な研究が行われるということは、もう国際的な合意であるわけですね。ですので、この言い方は、矛盾しているのではないかと思います。
 それから届け出制、登録制についても、動物実験という行為を届け出制にしたり登録制にするという話ではなくて、あくまで動物福祉を推進するための実態把握をするための根拠として、施設等を登録制にしようということが議論になっているわけです。登録制にしたからといって自主管理ができなくなるなんていうのも、全く論理の飛躍としか思えないわけです。  鍵山さんから送っていただいたDVDを見ましたが、愛玩動物と実験動物は違うということをはっきりおっしゃっています。それは十分わかります。飼養する目的も違うわけです。しかし、動物が受ける痛みや苦しみは、皆同じではないですか。であれば、基本的に動物の福祉というのは、どんな動物についても適用されなければいけないはずです。それを主張することが、なぜ自主管理の仕組みを反故にすることになるのか。これも明らかに論理の飛躍ではないかなと思うのですけれども、いかがでしょうか。

【鍵山直子氏】 質問がいっぱいあったので、わからなくなっているかもしれないのですが。
 まず、2005年の法改正でありますが、その前の2003年に日本学術会議の生命倫理委員会が、ともかくこういう法律でもって白黒決めるのではなくて、やはりソフトロウの形で、ケース・バイ・ケースの判断をしなければならないと。であれば、法律ではなくて指針というような形がいいのではないかというふうな結論を、生命倫理委員会が報告してございます。
 それから、その翌年の2004年に、やはり日本学術会議の方から、社会的透明性を高めるためにということでガイドラインの策定、そして外部検証の導入ということを言っております。日本学術会議のそういったことに、私自身は絡んできておりますので、別に法改正されたから、それでほれといってやったことではなくて、それはもうずっと続いている話であります。1番目はそれですね。
 それから2番目に、自主管理、法規制をすることによって、動物福祉を向上することに関してはどうかというふうなことを聞かれたのですが、私は、動物福祉を向上することは非常に大切だと思っています。ただ、動物愛護管理法というものの性格が、科学と、それから福祉のバランスということを念頭に置いていないがために、一生懸命にやればやるほど、科学のほうがぶっ飛んでしまってバランスが崩れる恐れがある。だから、仮に届け出という形でも、動物愛護管理法に基づかない何らかの方法であれば、それはもしかすると私は反対しないかもしれません。届出制も、今のことに含まれていることになりますから、まとめての回答ということで申し上げました。

【林委員長】 ほかの方、いかがですか。打越委員、どうぞ。

【打越委員】 貴重なお話を、ありがとうございました。
 独立行政法人日本学術振興会にて、製薬会社の動物実験の担当者の方々と、5年ぐらい前にリスク管理のための大規模な研究プロジェクトをやっていまして、私はそのときに動物実験に関する研究プロジェクトに入っておりましたので、鍵山先生のお話を勉強させていただきました。また、DVDも拝見させていただきました。
 制度改正に向けて、賛成・反対とかとは関係なく、純粋に知りたいと思うことを伺いたいのですけれども、一つ目は、これは祖父江先生にも関わるところかと思うのですけれども、例えば外部検証とか、外部の有識者がチェックをするというときに、どんなやり方をしているのか。この資料にも少し、例えば2泊で何人連れてきてとかいうふうな形があったのですけれども、例えば、何年に1回ぐらいとか、1年に何回とかいうような回数であるとか、それとどうやって人を決めるのだろうというふうに思いまして。
 というのは、高度で科学的な実験を理解できる研究者でないと、動物実験が必要であるかどうかの判断もできないと思うのですけれども、そういう専門知識を持っている研究者の外部の人というのは、ある意味研究のライバルでもあるわけで、研究の構想の段階で他人様に見せるということは、一つまた、非常に研究者にとっては悔しいものがあるのではないかと思うと、その外部検証の委員や実施の方法など、具体的にどんなふうにするのか詳細な段取りを教えていただきたい。それが、例えば信用できるものであるか否かが、また自主管理の死命を決するのではないかと思って伺うのが1点です。
 もう1点は、自主管理だからこそ気になるところなのですけれども、例えばDVDに出てきた、非常に美しく管理している、実験動物の飼育が非常に適正になされている組織は、本当に自主管理でもよいのかもしれないのですけれども、もしかしたら、すべての研究機関が、そのレベルに至っていないのかもしれない。この議論は、実は動物園や水族館の規制のときにも同じ議論になりまして、専門的なものが必要だから自主管理に任せるべきだという議論とともに、しかしすべてが良質とは限らない、その悪質な団体をどうするのだというような話が出てきたと思います。
 そういった、場合によっては十分な管理ができていない研究機関への、例えば対応というのでしょうか、指導であるとか懲罰であるとか、そういったものをどういうふうな仕組みにしているのか。これも自主管理の有効性を決めると思いますので、伺いたいと思います。

【鍵山直子氏】 では、私の方から、まず先に。そして祖父江先生にバトンタッチをいたします。
 今、外部検証に関して、やる人の指導というのは、場合によっては科学者のライバルが踏み込むようなことになるけれども、その辺のところ、どういうふうに、指導も含めて対応しているのかということと、それからどのくらいの頻度で見ているのかということを聞かれました。それから、レベルの低い、悪質とおっしゃったけれども、要するにできていないところに対してはどうしているのよということだと思うのですね。
 サイトビジターは、社団法人日本実験動物協会、国立大学法人動物実験施設協議会、ヒューマンサイエンス振興財団と三つの団体があって、若干やり方が違うと思います。少なくとも社団法人日本実験動物協会、ブリーダーのサイトビジットに関しては、私は説明ができるので、それを先に言います。
 社団法人日本実験動物協会の方に関しましては、生産者――同業者になりますね、そういう人は、サイトビジターに入れていません。それで、メーンは、今、ちょうど団塊の世代で実験動物をずっとやってきたけれども、職が終わった人が結構います。そういう方々にお願いして、サイトビジターになっていただくように教育をします。いろいろな大学をリタイアした、会社をリタイアしたといっても、その考え方、やり方は若干ずれがあるはずなので、ガイドラインを作って、そのガイドラインに従ってばらつきが出ないように教育をしています。ですから、サイトビジターが代っても、その評価のレベルや内容は変化しません。  それから頻度でありますが、日本実験動物協会ですと、対ブリーダーは3年に1回。3年ごとに繰り返すというルールを作ってございます。それからあと、確かにブリーダーの中には100人規模の社員を持っているところから数人規模の会社がある。数人規模のところのレベルが低いということではないけれども、大きいところ、小さいところ、それぞれ、実は指導しなければならない、指導を必要とするニーズが違うのですよ。
 それは、サイトビジットをやりっ放しではなくて、実は社団法人日本実験動物協議会の中にはサイトビジットをする委員会と、それから私がいる実験動物福祉専門委員会といって、指導する委員会と二本立てになっているのですよ。それが一緒だと、なかなかサイトビジットして、そのまま、そこで指導するのは難しいこともあるので、別立てになっていて、ここのところはもうちょっと指導が必要だということになれば、その必要に応じて私ども福祉委員会がそちらに出向いて、そこのブリーダーといっても、そこのタイプをよく研究して、何が必要であるかということを突き止めた上で、テーラーメイドの指導をしております。これが、ブリーダーにおけるところの現状でございます。

【祖父江元氏】 どういう形で人を選んでいるのかというのは、ちょっと私、そこのところの詳しい状況はインフォメーションとして持っていないのですが、国立大学法人動物実験施設協議会、これは国動協と言いますけれども、ここも、一番最後のスライドに、ちょっとお示ししましたように、3年前から始めております。  ですから、今やりながら、検証しながらというところの段階ではあるのですが、私どもの実験者と、それから実際にサイトビジットをやられる方は、もちろん研究者が入られる場合もありますが、動物実験の管理者の人が、主にそこに入られることが多いでのですね。国動協というのは、そういう組織ですので。ですから、ちょっと、競争相手になるのではないかという懸念は、私はあまり当たらないのではないかというふうに考えております。
 それからもう一つ、私は大学ですので、大学のレベルによって非常にまずい管理状態にあるところがあるのではないかというご指摘だと思いますが、後でこれ多分、文科省のほうから実態調査の結果が出ると思いますけれども、こと大学においては、動物実験施設は、かなりいいレベルにあるというふうに考えております。そういうデータが、後で出ると思います。

【林委員長】 次は、渡辺委員。

【渡辺委員】 今日は、ご丁寧な解説、どうもありがとうございました。
 私は、ほかの委員の先生のように何かの分野の専門家ではありませんので、一普通の一般市民としての素朴な疑問と、思うところを伺います。  もしも私が動物実験をしている施設の近くに住んでいたとしたら、どういう実験を、どういう動物を使って行なっているのか、それは何頭の規模なのかとか、どういうふうに管理されているのかが非常に気になるところだと思います。そして、さきの震災の後は余計に、例えば何か感染症の実験をしているような動物が逃げ出したりしないかとか、家族の安全を考えますと非常に不安に思うところです。ですので、やはり情報公開という点が気になります。祖父江先生からは、ただいま情報公開していますとご説明ありましたけれども、それは100%の情報公開なのでしょうか。
 それともう一つは、送っていただいたDVDも拝見しましたけれども、非常にきちんと管理された、衛生管理も整ったところで実験がなされているように思いましたが、今日の説明を伺って感じましたのは、そこまできちんと責任を持って管理されているのであれば、なぜ登録制に反対されるのか。登録制になることへの不都合が何なのか、伺いたいと思いました。  よろしくお願いいたします。

【林委員長】 どうぞ。

【祖父江元氏】 まず、私のほうから。
 先ほど、情報公開ということをちょっとお話ししましたですね。これは、すべてを情報公開しているかどうかというご質問だと思うのですが、例えば知的財産に関わること、パテントに関わること、そういう一般に情報公開することによって崩れてしまうような内容については、そこはやっぱり、若干リザーブしています。
 ただ、そのほかの動物の実験の手技とか、それからプロセス、それからどのぐらいの匹数で、どういうものをやっているのかというのは、すべてホームページに公開しております。ですから、それは、どなたも見られる状況にあると思います。なかなか、非常に専門的な用語で書いてございますので、さっと見ても、なかなかわかりにくいかもしれませんけれども、そういう形で出しているところでございます。
 それからもう一つ、ちょっと本質的なご質問をいただいたのであれなのですが、先ほど鍵山さんからもお話が出ましたように、やっぱり、科学的な目でもって、動物実験がある世界的な基準で行われているということを担保するという方向で、今、日本の実験動物管理が――先ほど、法律ができたからやったのではないかというお話もございましたけれども、連綿として歴史的にずっと続いている動きでございます。ですから、これはアメリカ型、北米型というふうに言われているのですが、自主管理というのが、そのかわり公開して、最終的には皆様のご批判を仰ぐという形が、動物実験を有効に進める上で、私はうまく働く方法ではないかなというふうに個人的には考えております。

【林委員長】 ありがとうございました。
 私からも一つ質問と、意見を言わせていただきます。
 先ほど、鍵山のほうから、動物の愛護及び管理に関する法律は、科学にはあまり重きが置かれてないという旨の発言があったと思うのですが。資料1、一番先にありますように、動物を科学上の利用に供する場合の方法等が、この第41条に書かれているのですが、私は、これで十分ではないかという、意見だけを申し上げます。
 確かに、この動物の愛護及び管理に関する法律は、科学的なことは文部科学省、厚生労働省のほうの監督がきちんとあるということを前提にした法律です。先ほどの日本学術会議についてお話しいただきました。私も、今月末まで日本学術会議の会員ですが、日本学術会議は、自らを「科学者の国会」と言っています。
 科学者の国会である日本学術会議は、これまでの科学はサイエンス・フォー・サイエンスであって、それをサイエンス・フォー・ソサエティーにしようと、自らが言い始めている。つまり、どのような組織であっても万全でなくて、これまで日本学術会議がこう言っていたから実験動物はこれでいいのだということについては、日本学術会議の内部の人間として、それでは不十分だろうというふうに思います。
 それで、祖父江先生にご質問なのですが、先ほどプレゼンテーションいただきました中の、これはお配りいただいた資料で言いますと11ページに当たるところに1カ所だけあるのですが、ここに「安楽死」という言葉を使っておられるのですね。私は、少なくとも動物を医学上で利用することは非常に重要だと思っている人間です。また、動物を食用にするのも大切だと。動物が、いろいろな形で人間の利益のために貢献してもらっていると。向こうが望んではいないかもしれませんけれども、そういう利用のされ方をされていることについては肯定的な人間ではあるのですが、ほかの動物、たとえ野生動物にしても家畜にしてもすべて、私たちがやむを得ず殺さなければいけないときは、安楽殺、これはヒューメイン・キリング、あるいは人道的な殺処分と言っているんです。
 なぜ、実験動物だけが安楽死という、安楽死の定義を、恐らく先生は医学におられますからご存じだと思うのですが、これが、どうして実験動物だけに安楽死という言葉が使われるのか。それを個人的に正しいと思われているかどうか、そのことをお聞きしたいのです。
 つまり、なぜかといいますと、今、醜い現実を美しい言葉でごまかすということが、ものすごくはやっているのですね。例えば、「地球に優しい」とか、「自然に優しい」とか、「動物と共生する」とかと言って、現実は、そのとおりやっていないことを何とか隠そうとする。こういう言葉で科学者はごまかしてはいけないし、「安楽死」というものに対しても、これは非常に重大に考えなければいけない言葉ですので、それを安易に、この実験動物の殺処分に使っていいのかどうか。
 私、動物実験は自主的管理が一番いいと思っているのです。先ほども鍵山先生の方から説明があったと思うのですが、やっぱり当事者でないとわからない、そういうことがいっぱいありますから。しかし、実験動物を利用している集団が安楽死という言葉を安易に使っている。ほかに動物を利用しているところは使っていないですよ。例えばOIEなんかも使っていません。OIEはこの間、実験動物の指針を作りましたけれども、あそこではヒューメイン・キリングと、ちゃんと言っているのですよ。家畜についてもヒューメイン・キリングと。それから、ペットですら、終末期にある動物の苦痛をなくすために殺処分のとき以外は、安楽死という言葉は使わないように、私の知る限りしていると思います。
 この言葉のごまかしというのは非常に重大な問題で、この後、実験動物関係者がどういうふうにされていくかということは、組織としてお考えになればいいことなのですが、先生ご自身は、この安楽死という言葉を使っていることの妥当性について、どうお考えか。それについてお聞きしたいと思います。

【祖父江元氏】 まず、私のほうから安楽死の話をちょっとさせていただきます。
 私自身は、今、ご指摘を受けて初めて安楽死という言葉を、どちらかというと、ちょっと無意識に使っていたというのが実情でございます。ですから、今、林委員長がおっしゃったように、安楽死処置、あるいは安楽殺という言葉が適当であるということであれば、私自身は、それは全く否定しませんので、安楽殺という書き方でもよいのではないかと思います。  ちょっと私は、むしろ利用者の側で安楽死というのを日常的に使っていたというだけで、別にこれを何か美化するとか、そういう意思でやっていたというよりは、むしろ安楽殺とほぼ同等の意味で使っていたというふうにお考えいただいたほうがいいかもしれません。そこは、どうもご指摘ありがとうございました。

【林委員長】 では、山口委員、そして野上委員。

【山口委員】 教えていただきたいのですけれども、一応外部検証は、いろいろな、それぞれの団体がやっていらっしゃるというふうにご説明いただいたのですが、これですべて日本中で行われている動物実験をカバーできているのか。先ほど経産省のお話も出ましたけれども、農水省でもやられてますし、各省庁でも、いろいろなところでやられている、それをすべて、ここの、今上がっているもので外部検証ができるのか。あるいはもう、できているのかというところを、教えていただきたいと思います。

【鍵山直子氏】 外部検証を一番最初にスタートしたのが2004年で、社団法人日本実験動物協会でございます。社団法人日本実験動物協会に関しては、すべての対象となるブリーダー、販売業者をカバーして、今、2巡目に入ってございます。それから、大学に関しましては、スタートはそれより遅かったのですが、実は聞きますところ、最初は大学だけで、しかも医学部――どうしても動物実験施設というものが医学部に附置されていることが多いので、そこから外れたところがあるのではないかと。それに対しては、特に公私立大学の実験動物施設協議会が、その枠を取っ払って、今がんがん広げているので、プロセスではあるけれども、気持ち的にはすべてをカバーしようという姿勢でおります。ですから、できているのか、まだできておりません。でも、それを目指しております。
 製薬会社に関しては、そんなにN数が多くないので、逆に製薬会社の気持ちがあれば、全部カバーできる力があります。製薬会社は、国内のヒューマンサイエンス振興財団の、そのシステムをいただくか、あるいはどうしても製薬会社は、目指しているところが、例えばアメリカとかヨーロッパとか、販路としてそういうものを考えているので、ヒューマンサイエンス振興財団にするのか、AAALAC Internationalにするのかということは若干動いておりますが、その外部検証をとるという姿勢に関してはすべて同じで、前に向いて進めていただいております。

【山口委員】 それ以外に、農業関係とか、そういうところ及び防衛省等でも実験は行われていると思いますので、そういうあたりの検証はカバーされるのでしょうか。

【鍵山直子氏】 これは、あくまでも申請ベースではあるけれども、今度は申請されたら、それを拒否するということはないので、その前に指導、助言、そういうことがあって、認識を――先に行っているところと、これからというところが、やはりあるわけですから、そういう指導・助言を回しながら、それで受け皿も一方において充実させながら、最終的には時間がかかるかもしれないけれども、ゴールとして、みんなそちらのほうを向いているのは間違いありません。

【林委員長】 野上委員、そして浦野委員。

【野上委員】 この外部検証のことですが、動物実験についてなのか、実験動物についてなのか。実験動物の適正管理ですとか、福祉が実行されているのかというのは、別に専門家、研究者の方々でなくても、行政の獣医師であるとか、むしろ動物愛護関係者のほうが詳しいわけですね。
 そういう意味で、もっと外部の人を入れるべきではないかと思うのですが、今おっしゃっていた自主管理のシステムですと、外部検証委員会の名簿も公表されませんし、その結果も公表されませんし、一体だれが、どのような形でやっているのか。ほとんど外に情報としては出てこないわけです。
 先ほど鍵山さんがおっしゃった、アメリカ式自主管理とおっしゃっていますけれども、アメリカは実験施設は登録制ですね。監査実験委員会の中には、獣医師及び一般市民を代表する人も入っていなければいけないとなっています。それから、査察は年に1回ありまして、その査察の結果はホームページに公開されています。それくらいオープンにしているわけですね。アメリカの自主管理と日本の自主管理は、かなり違うものですから、そのあたりを訂正していただきたいなと思います。  それから次に、イギリスの例で、イギリスは非常に世論が変わってきて、動物実験を容認するようになってきているというふうにおっしゃっていました。しかし、イギリスは世界で最も厳しく動物実験を規制している国です。そういうような厳しい法規制があるからこそ、国民は安心して認識するようになっているのではないでしょうか。日本のように何もなかったら、不信感が募るばかりですね。実態が何もわからないものを信じてくださいと言われても、信じようがないと思います。  また、国際的な基準ということで実験施設の登録制や外部査察、記録の保持、罰則などは、世界の主要国がすべてスタンダードとして持っているものです。法規制として、法律として。それを日本のみが、なぜ、いつまでもそれに反対し続けるのか。  特に、このアカデミズムの世界では、国際的な基準で論じなければいけないわけでしょう。学会論文でも英語で書くわけですし、グローバルスタンダードでやらなければいけないとしょっちゅうおっしゃっている方々が、なぜこの分野については日本独自になってしまうのか、非常に理解しがたいところだと思います。
 それから、実験動物の使用数なのですけれども、鍵山さんにお尋ねしたいのですが、この飼育数のデータです。今まで社団法人日本実験動物学会は、実際に使った動物の数を出していたと思うんですね。ところが、2009年のこのデータを見ますと飼育数になっています。飼育数と使用数というものは、かなり違うものだと思います。販売数と使用数もかなり違います。相当なギャップがあるわけでして、このあたりを見る限りでも、実験に使われる動物の本当の数さえ、やはり本当のことはわからないのではないかと思います。

【林委員長】 ただいまの野上委員のお話は、野上委員が提出されている資料がありますが、その資料の3枚目に、国際比較、日本と諸外国との比較が載っております。このことは後ほど、またプレゼンしていただきますから、ちょっと後にしていただいて、お答えもそのときまでにご用意いただければと。
 浦野委員、どうぞ。

【浦野委員】 私は、ヒアリングを受けている立場ではありませんが、ただし、国立大学法人動物実験施設協議会の会長をやっているという立場もあるので、先ほどの山口委員の外部評価の件については、その渦中にいるということで、少し補足させていただきたいと思います。  外部検証は、三つの省庁が動物実験に関するルールのうち特に骨格の部分について文科省・厚労省・農水省が出した基本指針に基づいてきちんとやっているかを、外部検証しようというのが仕組みです。
 逆に言うと、この基本指針が出されていない省庁についてはどうかというのが、山口委員のご指摘だったと思うのですが、残念ながらまだそこまでは至って。おりません。すなわち、基本指針にのっとって、ちゃんとやっているかをチェックしている段階です。ただ将来的には広げていきたいこと、さらには新しい組織づくりも含めて考えてはいますが、まだ、現段階では外部研修の仕組みをつくり上げて二、三年したがっておらず、歴史も浅くいまだその途上にあるということです。  もう一つ言えば、基本指針を出していないところでやっている動物実験、例えば今日の環境省もそうですが、それから経産省なども含めて、このような省庁が所管している研究所でも動物実験をやっていますが、そこでは基本指針が出ていない外部検証をどうするかは今後の大きな問題点です。それはある意味、行政マターの問題かなというふうにも思います。

【林委員長】 今日は5時半までの予定になっていまして、しかも、両先生にはお残りいただけるというご了解を得ていますので、この問題はまず、ここで一応終えていただいて、次に、文科省から、今日は来ていただいていて恐れ入りますが、10分程度、お話しいただけますでしょうか。

【文部科学省】 文部科学省でございます。資料4に沿って、研究機関等における動物実験に係る体制整備の状況等に関する調査結果について、ご報告申し上げます。
 まず、調査の概要でございます。目的でございますが、私ども文部科学省が出しております研究機関等における動物実験等の実施に関する基本指針、この基本指針において研究機関の長の責務とされる機関内規定の策定でありますとか、動物実験委員会の設置など、基本指針に定められている事項が、現在きちんとなされているかどうか、その実施状況について把握することを目的とした調査でございまして、今年の6月から9月にかけて行ったものでございます。
 対象といたしましては、文部科学省の所管の法人といいますか、大学、それから研究機関、公益法人等も入ってまいりますけれども、こういったものを対象にしております。対象としましたのは1,656機関で、回収率100%でございます。機関ごとに調査票を送付して調査結果を回収し、内容を確認して取りまとめたものでございます。
 まず、調査結果の概要でございますが、動物実験等を実施している機関としては426機関ございました。そして、基本指針に基づき機関内規定を策定している機関は、そのうちの390件であり、36件については、今後、策定を予定しているということで、まだ策定をされておりませんでした。それから、基本指針に基づき、動物実験委員会を設置している機関としては388機関、91%でございますが、38件については、今後、設置を予定しているということで、まだ9%がその途中段階にあったということでございます。
 続きまして、(4)でございますが、基本指針に基づき、研究機関等の長による動物実験計画の承認または却下という、いわゆる審査を行っているかどうかということでございますが、378件、89%の機関において、こういった審査を行っておると。一方、48件については、今後実施をする予定でございまして、まだ、それは途上であったということでございます。  この(2)から(4)について、いずれか一つでも対応を予定している、まだできていないという回答をした機関については、基本指針に基づいた対応を行うまでは動物実験を行わないことを、文部科学省から直接、該当機関に確認をいたしました。さらに、それぞれの機関が、10月末までに対応を行うように文部科学省から指導を行って、その結果についての報告を求めているところでございます。
 それから、(5)でございます。基本指針に基づき、動物実験等の終了の後、研究機関等の長が動物実験計画の実施の結果について報告を受け、必要に応じ改善措置を講じるということを行っているかということですが、309件、73%の機関が行っているということでございます。117件については、今後、実施の報告について報告を受け、必要に応じ改善措置を行うという回答でございました。
 それから、(6)でございます。基本指針に基づき教育訓練等を実施している機関については314件、74%でございまして、112件については、今後、実施を予定しているということでございます。
 それから、(7)の基本指針に基づき自己点検及び評価を実施している機関でございますが、これは244件、約57%ということでございます。182件については、今後、実施を予定しているということでございました。
 それから、(8)の基本指針に基づき、動物実験等に関する情報を適切な方法により公表している機関は、142件でございまして、全体の33%、これはまだ、必ずしも十分できていないという回答でございます。284件は、今後行うことを予定しているということでございました。
 これら、(5)から(8)の項目については、いずれか一つでも対応を予定している、まだできていないと回答した機関については、文部科学省より本年12月末までに実施するよう指導を行っております。
 それから、(9)でございます。文部科学省の競争的資金等において、関係法令や指針等に違反した場合に、研究費の配分の停止や研究費の配分決定を取り消す場合があるということを、機関の内部で周知しているかどうかという質問でございますが、299件で周知をしているということでございます。これについて、内部で周知していないのは103件でございました。また、このことについて知らなかった機関は24件で、6%のところは、まだ承知していなかったということでございます。  これら、調査全体をまとめての傾向でございますが、実施を予定している、まだできていなかった機関の特徴としては、研究というよりは教育として非常に少数の動物を使っている機関の例が多数見られております。これらの機関は、私どもの周知が必ずしも十分でなかった点があるという認識でございます。
 実際に、3.の対応の中に書いてございますが、「機関内規定の策定」、「動物実験委員会の設置」、「研究機関等の長による動物実験計画の承認又は却下」のいずれか一つでも対応を予定していると回答した機関については、基本指針に基づいてこの3つの対応を行うまでは動物実験を行わないということを直接、当該機関に確認をしています。多くの機関は、年のうち一定の時期に教育の実験等で使うという機関で、休止をしても支障がないという状況にはあるところもございますけれども、これらについては、こういった指導を行うとともに、10月末までに対応を行うよう、文部科学省から指導をいたしました。
 あわせて、「動物実験実施結果の研究機関等の長への報告・改善措置」、「教育訓練等」、それから、「自己点検及び評価」のいずれか一つでも対応を予定していると回答した機関については、文部科学省から12月末までの実施を指導するとともに、今後、文部科学省としては、説明会の開催等を改めて行うとともに、基本指針の周知及び遵守の更なる徹底を実施する予定でございます。
 以上でございます。

【林委員長】 ありがとうございました。お忙しい中、丁寧なご説明をいただきました。  非常に短い時間ですが、もし、このことについて、ご質問があれば。  短くお願いします。

【野上委員】 2点、ご質問したいのですが、この機関の中で、大学でも異なる県に研究施設がある場合がありますが、それは別物として数えているのかどうか。医学部の中にもいろいろな学部や研究講座や教室がありますが、そのさまざまな、枝別れしているいろいろな分野について、それをただ1個の大学というか法人として数えていらっしゃるのかどうかということ。
 それから、この文科省の指針に反した場合、研究費の配分決定を取り消す場合があるということを通知されているようですが、実際に取り消された例があるかどうかについて、お知らせください。

【文部科学省】 まず、機関の数え方でございますが、法人として一つでございます。県をまたぐ場合であっても一つということで、機関の長がすべての責任を負うという形で、この仕組みを作ってございます。もちろん、審査の仕方については、動物実験委員会、一つの中でどういった形でやるのかは、その機関ごとに任されておりますけれども、基本的に動物実験委員会も一つ設置してやるという体制と承知してございます。
 それから、動物実験に関して、指針に違反して研究費の配分の取り消し等があった事例は、今のところございません。私どもとしては、まだ過渡期であるという認識でございますが、こういった点、更なる徹底をするために、今、競争的資金の中でも大型の研究を行うものについては、研究機構における自己点検の結果を添付していただくというようなことも、改めて今年度から始めてございます。これは、大学の中で特に多くの動物実験を行う研究者については、より厳しく見ていただくようなことがされるのではないかというふうに考えているところであります。  以上でございます。

【林委員長】 はい。ありがとうございました。  他にいかがですか。  打越委員。

【打越委員】 大学等の研究機関の調査ということなのですけれども、例えば教育機関での解剖実験のような、例えば中学生とか高校とか、大学に至る前の実情はどうでしょうか。魚類は動物愛護管理法の対象ではないのですけれども、例えば金魚のえらを何とかとか、そういうような大学以前の学校での解剖実験などについては、把握をしていますでしょうか。

【文部科学省】 高校等については、入っておりません。高等専門学校までを対象として行ったものでございます。

【打越委員】 質問の意図としては、この調査でやったのですかという意味ではなくて、文部科学省としてそういう問題について情報を把握しているか、どういう方針でいるかを聞きたいというところです。

【文部科学省】 基本的には、高校等でマウス・ラット等の実験が行われるという前提では考えていないところがございましたので、その点について周知、徹底が必要かどうか、改めて検討したいと思います。

【林委員長】 ありがとうございました。
 他にいかがでしょうか。よろしいですか。
 私から1点だけ。これだけ新しい調査をやっていただきまして、ありがとうございます。少し意地の悪い質問になるのですが、動物実験等を実施している機関という質問では、実施している、していないという答えを用意されているのですが、ほかの下のほうの質問は、例えば教育訓練の実施とか自己評価の実施とか、すべてのものが「設置している」、「実施している」、もう一つの答えが「予定がある」という答えなんですよね。
 これは実施しているか実施していないか、どっちか、普通はそういう聞き方をすると思うのですが、こういう設問にされたのは、実施するのは当然だからということで、予定があるかないかを聞こうとされているのですか。  どうして私がこんな質問をするかというと、例えば、自己評価の実施、「実施の予定がある」の中にも、幾つかの種類があると思うんですよ。つまり、一番最後を見ますと、指針に違反した場合の競争的資金等における配分停止の周知なんかでいうと、知らないというのがありましたでしょう。例えば、自己評価の実施、知らないという施設だって、これだけあるのでしたら、あってもおかしくないので、この設問の仕方自身が、どうしてこういう設問になっているのかということです。

【文部科学省】 その他については、林委員長のご指摘のとおりで、行っていただくのが当然であるという前提で、私どもがこういう設問をつくったのは、そのとおりでございます。
 研究費については、これは指針の中に記載があるものではなくて、科学研究費補助金と、競争的資金の交付要綱等で定めており、我々はそれを周知をいたしました。しかしながら、全機関への通達ということで出したものではありませんでしたので、結果としては実際に知らない機関、特に教育のみを行っている機関では、そういったところがあったということと、私どもは理解してございます。

【林委員長】 ありがとうございました。
 他によろしいですね。
(なし)
 では、お忙しい中、本当にどうもありがとうございました。
 それでは、引き続いて、今度は事務局からご説明をいただかなければならない部分がありますね。

【事務局】 事務局から、資料1の説明を申し上げたいと思います。既に、委員の皆様方にはメールでお配りしていますし、本日、既に議論されていることも多いので、簡単に説明します。
 まず、現状ですけれども、動愛法では、第41条で3Rの推進と、実験動物の適正な利用に配慮することについて、規定されております。また、この第41条の第4項に基づいて、別添1、実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準が告示されております。また、これに基づきまして、文部科学省、厚生労働省及び農林水産省において、それぞれ別添2、3、4という形でつけておりますけれども、指針を作成しております。
 また、日本学術会議が、動物実験の適正な実施に向けた、ガイドラインを作成しております。
 そして、動物愛護管理基本指針において、これは資料22ページに入りますけれども、国は実験動物の飼養保管基準等の遵守状況について、定期的な実態把握を行うこととされておりますので、環境省は毎年アンケート調査を実施しております。これは、動物愛護部会のほうに報告させていただいております。
このアンケート結果が、別添6になります。こちらを御覧いただきますと、1ページ目にアンケート調査対象の種類を載せております。それぞれの団体を通じて調査をしております。
内容としましては、3ページ目の下のグラフですが、基準内容に即した指針や要綱等の策定について、およそ79%が策定しているという回答になっております。
また、4ページ目を御覧いただきますと、施設で策定した指針等の遵守に関する指導を行う委員会等の設置の有無については94%が設置しております。
また、この設置している施設のうち、その策定した指針等の規定内容については、4ページ目の下のグラフになっておりますけれども、実験実施者等に対する教育訓練ですとか、実験動物が逸走した場合の措置、また、実験動物の記録に関する規定、こういったものが定められております。また、このグラフの一番右になりますけれども、94%が実験動物を殺処分する場合に関する規定を設けているという結果になっております。
また資料1に戻っていただいて、2ページ目の3主な意見ということで、動物愛護団体等からは、動物実験施設及び実験動物生産施設を登録制とすべきと。また、3Rの原則を強化。行政の立ち入りや第三者による監視を可能にする。記録の保管と情報の開示。こういった意見が出されております。
また、反対に、動物実験施設関係団体等の側からとしましては、ここにありますとおり、これまでも本日議論されておりますような内容が、要望として出されております。
続きまして、3ページ目の4、海外の状況ですけれども、アメリカにつきましては、鳥類・マウス・ラットを除きますが、施設の登録をするという規制になっております。イギリスにつきましては、その施設の認証もございますけれども、実験のプロジェクト自体の許可と、また、その実験を実施する個人の許可も受けなければならないということになっております。また、EU指令の方でもプロジェクトの認可のほか、またその生産業者、供給業者、実験動物を使用する事業者について、登録が義務づけられております。
また、最後に5番ですけれども、自治体の方で、環境省で把握する限りでは兵庫県が条例で届出制を導入しておりまして、4ページ目、5ページ目に条文の該当部分の抜粋を載せております。 最後に、ちょっと戻りますけれども、2ページ目の2番、本日審議していただきたい主な論点としまして、三つ上げてございます。実験動物生産業者の動物取扱業への業種追加の検討、また、3Rの推進、最後に届出制等の検討ということで、議論していただきたいと考えております。
資料の説明は以上です。

【林委員長】 はい。ありがとうございました。
 3番目の届出等については、先ほどからも少し論議になっていますが、実験動物生産業者の動物取扱業への業種追加については、これからご意見をいただきたいと思っています。この3Rも、またつけ加えることがあれば、ぜひお願いしたいと思いますが、最後に、先ほども言いましたように野上委員から資料が提出されています。これを、なるべく短い時間でご説明いただけますか。

【野上委員】 では、簡単に資料の説明をさせていただきます。
 1番目は、国内の動物実験施設において動物福祉管理上の問題があった事例です。実験施設で起こっている問題は、ほとんど外部に知られることはないのですが、その一部がメディア等で報じられることがあります。ここで取り上げているのは、主に遺伝子組換えマウスの問題ですけれども、これは、カルタヘナ法という法律がありますので、その法律に違反しているということが明るみに出た例です。しばしば文科省が厳重注意をしているということが、文科省のホームページに掲載されています。ですので、全く問題がないというわけではなくて、法律があってきちんと調べられればいろいろな問題があるであろうと。しかし、実態を把握できないので表に出てこないのではないかという例として挙げています。
 2番目は、新聞記事ですが、京大霊長類研究所におけるニホンザルの感染症死亡の事件です。実験動物はマウスやラットだけではなくて、野生由来のニホンザルも使用されています。京大霊長類研究所で、未知の感染症が発生して多数のサル、ニホンザルが死亡していました。しかし、これは当会が情報公開請求をしたことによって、初めて京大霊長類研究所が情報というか、こういうことがあるということを発表したわけでして、外部からのチェックがなければ、こういう問題も隠されたままであった可能性もあるかと思います。
 3番目は、動物実験の法規制で、日本と諸外国との比較を表にしたものです。諸外国では、既に古くから動物実験についての法規制が行われていますが、世界の先進国と自称する日本のみは、いかなる法規制もありません。ガイドラインですとか指針、そのようなものは法規制とは言えないわけです。ですので、ガイドラインや自主規制があるからといって、日本には法規制があるということは間違いであるということです。既に、お隣の韓国でも、きちんとした法律を作っているということです。
 4番目は、EUにおける実験動物の使用数です。EUでは、すべて実験施設は登録制で、実験の目的や動物の使用数は報告義務があります。インターネットで公表されていますので、それを翻訳したものがこちらの資料になります。EU全域、27カ国で約1,000万匹の動物が実験に使われています。しかし、日本1国では恐らく、実数が把握できないのですが、この倍くらいは使用されていると思われます。そうしますと、日本の実験動物の数は非常に多い。それに比して、果たして日本の研究が世界のトップを走っているかどうか。これは、私たち一般市民にはよくわからないところです。
 その次の5番目は、これは文部科学省の資料をもとにつくったもので、2005年の法改正の際に、文部科学省が調査会社に委託して、各国の法規制の状況を調査させたものの資料です。
 その次の資料は、2010年にEUが実験動物福祉法を大改正しましたので、この条文をやはりホームページから入手しまして、私どもの方で前文の要旨を紹介したものです。ここにおいても、動物福祉と3Rというものは、EU全域で取り組むものであること、特に代替法を推進するということも非常に大きく打ち出されているところです。
 最後が、アメリカの法規制の問題で、先ほどちょっと申し上げましたように、アメリカは完全自主管理ではありませんで、きちんとした法規制があって、その一部は公開されている。実験施設を実際に査察して違法行為が発見されたということも、数々報じられています。ですので、日本はアメリカを見習うというのであれば、このような部分も見習ってほしいと思います。  それから、今回のこの資料にはないのですけれども、委員の皆様にお送りしている資料集4冊がございますので、それを簡単に紹介させていただきます。
 1冊目は、御覧いただいていると思いますが、前回の動物愛護管理法の改正によって全国の自治体が、動物愛護管理推進計画を立てることになりました。その計画の中で、実験動物施設の実態を把握するということが課題の一つになっていまして、どの程度の実態把握がされているかということを調査したものです。ただ、これは10年の計画なので、後半5年間でこれから取り組むと言っている自治体もあります。ですので、今後、自治体が実態把握を進めてほしいところですけれども、届出制も何もないので、アンケートに頼るしかなく、非常にそれは限界があるというふうに考えています。
 2冊目は、静岡県の例です。静岡県は、実験動物施設に立入調査していて、もう、随分長年やっているそうです。その立入りでは、動物愛護管理法の改正を受けての3Rの実施状況、施設の基準の順守状況、危害防止、逸走防止、緊急災害時の対策、人と動物の共通感染症の対策、記録管理の保持、殺処分の方法等、動物愛護管理法に基づく動物の適正管理に関する状況を、毎年調査しています。これは、動物愛護管理法の遵守及び地域住民の安全等の観点から、当然自治体がやるべきことをやっているわけで、先駆的な例ではないかと思います。
 それから、3冊目、先ほどもご紹介がありました兵庫県が、条例によって実験施設を届け出制にしているということで、私どもの会で情報開示請求をして届出の内容を資料としてまとめたものです。兵庫県では平成6年に条例で、実験施設を届出制にしています。これは、理由としては、自治体が多数の犬や猫を実験用に払い下げていたことから、行政として払い下げ先を監視する必要があるということで、届出制にして、実際に施設に立入調査をしたというのが発端であると言われています。
 動物愛護管理法改正前の条例ですので、3Rの実施状況などについては届出制の対象にはなっていませんが、兵庫県内にあるすべての動物実験施設について、どこに何があって、どのような動物が飼育されているかが、具体的にわかる内容になっています。
 それから、4番目の資料は、動物実験に関するインターネット上での情報開示度調査というものです。平成18年に文部科学省などが動物実験指針を策定して、その中で情報公開を行うことを定めています。開示すべき情報の例として、機関内規定、動物実験等に関する点検及び評価、当該研究機関等以外のものによる検証の結果、つまり外部評価、それから、実験動物の飼養及び保管の状況等について、情報開示をするべきであるというふうに指針に定められていますので、指針の制定後5年を経て、今現在、ホームページ上でそれらをチェックして、どの程度開示されているかを、直近の9月10日から13日の間に調べたものがこの資料です。
 この結果を見ますと、特に動物愛護管理法に関わりのある代替法ですとか、動物種の選択、苦痛の軽減のすべてについて、動物実験計画書で対応させている大学は、わずか5大学しかありませんでした。それから、動物実験を行った結果の、動物の飼養数や使用数等を公開しているものも10%台、あるいは2.7%とか、非常に少ない数であるということです。ですので、動物愛護管理法が規定している公開すべき情報が、ほとんど公開されていないということは、大変問題であるということを調べたものであります。 以上です。

【林委員長】 はい。ありがとうございました。
 残りが40分ぐらいしかなくなっておりますので、ご質問、ご意見はなるべく簡潔にお願いしたいと思います。

【野上委員】 それと、最後にOIE(世界動物保健機関)の資料も付けてございまして、これはOIEが定めた陸生動物の飼養・保管に関するコード、国際規約ですね。その規約の中の「研究及び教育における動物の使用」仮訳を農水省から提供していただいたものです。 以上です。

【林委員長】 はい。ありがとうございました。
 どうぞ、浦野委員。

【浦野委員】 昨年の8月からスタートしたこの委員会の中で、しばしば話題として出たと思うのですが、今回の動物愛護管理法の見直しについては、現行の動物愛護管理法の中にどこか問題点があるかどうか、例えば我々の実験動物領域について言えば、現在は動物愛護管理法に基づく自主管理という形で進めていますがそのどこに問題があるのかという点です。問題がある点については、それを正し、それを法律という枠組みの中で、どうやって新たな形を作ったらいいのかということがメーンの話だと思います。
 そういう観点からすると、現在の実験動物領域については問題点はないというふうに、少なくとも環境省、文科省、厚労省等の省庁には断言していただいております。それから、今日の配付資料の中でも、環境省サイドから現行の問題点の指摘は全くないというふうに思われます。
 そういう実態の中で、例えば野上委員が幾つかの資料を出していただきましたが、そのうちの一番最初の事例、こんな問題がありますよという、ある意味具体的な事例かと思いますが、これを私が読むと、きちんと自主管理がうまく動いているなという裏付けの資料であって、問題点とは全く思われません。
 例えば、一番上に滋賀医科大学の事例が出ていますが、実は私の方にも、この滋賀医科大学の事例の内容は報告を受けています。それを少し読んでみますと、この問題点が滋賀医科大学で見つかったときに、まず、動物実験委員会を開催して、この事例の経過、それから実験責任者から説明を受ける、それから委員会で審議をすると。その審議に基づいて、委員会としてはその研究者への注意喚起、それからホームページ上でこの内容を公開する、あるいはメールで学内の関係者に周知徹底するという対策を講じています。また、動物実験責任者への処分も行っています。再発防止策を検討し、それを実施しているということで、動物実験委員会がきちんと機能して、こういうことに対応をしているという典型的な事例かと思います。
 それ以外の事例についても、関係省庁ときちんと協議しながら対策を講じているということで、自主管理の仕組みが、実にうまく推進しているという五つの事例をいただいたというふうに理解しています。

【林委員長】 ありがとうございました。 鍵山さん。

【鍵山直子氏】 野上委員の資料について、ちょっと気づいたことを申し上げてよろしいでしょうか。
まず、1番の国内の動物実験施設の問題なのですが、確かに浦野委員がおっしゃられたように、野上さんもおっしゃられたのだけれども、中の三つはカルタヘナ法に関する事例で、動物愛護管理法の話ではない。一番上は、確かに動物愛護管理法問題だけれど、これって制度に起因するのではなくて、運用上の問題だと思うんですよ。だから、制度が悪い、これをもとに法改正を主張するというのを考えるのは、少しおかしいなと。そんなことよりも、運用上の問題だったら、専門家による日常的な指導、継続的な検証というものを充実させるべきだと私は思います。
それから、3番目の諸外国との比較なんですが、実は、これは法律で決めているかどうかということであると、法規制の有無でまとめればこうかもしれないけれども、実効が上がっているかどうか、ソフトロウというのもあるのですから、そういうふうにまとめるとちょっと違う形になるかなと。
しかも、調査の年次に、これはかなりばらつきがありまして、日本の場合は、多分これ10年前の話であって。それから韓国なんかは本当に去年、おととしの話。それを一緒に並べるのは、ちょっと変かなというふうに思います。2005年の動愛法改正で3Rの原則が明文化されて、2006年体制が整備された、そのときにもう状況が変わっているので、年次を揃えるか、あるいは年次を明確に書くか、どちらかがないと、ちょっとおかしい。
それから、その同じ表なんですが、この手の比較の読み方ですけれども、あたかも「あり」が多い地域は優れているというふうに聞こえるんだけれども、「あり」が多い地域には、やっぱり歴史上の理由があって「ある」にせざるを得ない、法規制でやらなければ市民が納得できない、そういう事情があるわけです。本当を言ったら、科学と動物福祉を両立させるためには、最小限の「あり」で自主管理するのが、私は理想だというふうに思います。
それから、6番目のEUの実験動物福祉なんですけれど、「福祉法」と書いてあるけれども、EUの指令にはそのままでは法的拘束力はないですよ。法律ではなくて、これはソフトロウ。指令を発効させるには、自国の法律の改正が必要なんですよ。EUはともかく加盟各国間の格差を是正したいという大前提があるから、数値基準を持ってきたりなんかして、こういうふうなことを、ダイレクティブをやっている。
それから、最後にOIEなんですけれども、OIEの福祉綱領というのは、これはガイドラインですから。実は原案では、英語で「スタンダード」という言葉が使われたんですね。それが、今言ったようなわけで、これってスタンダードじゃないねということで、原文のそのスタンダードにかわって、「アドバイス」と「アシスタンス」になりました。そういう言葉が使われましたから、この日本語のほうの、野上委員提出資料9の本文2行目、ここにも「アドバイス及び支援」と書いてある。最初はこれ、「標準」だったんですよ。それがアドバイスとアシスタンスに変わったということがあります。
すなわち、加盟各国の法令を整備するときの、これは、拠り所ということです。OIEのVallatというヘッドにも、私、ICLASの人間ですからそのことを議論したんですが、これは拠り所であって義務ではないと。マンダトリーではないというふうに、彼は明確に言っております。 ちょっと追加します。

【林委員長】 はい。ありがとうございました。 それでは、野上委員、どうぞ。

【野上委員】 ここに出ている、問題がある場合は、多くの場合は内部告発等によって出てくるわけですが、こういう動物実験というか、科学研究者の世界というのは非常に組織が閉鎖的で、縦割りで、密室構造でできているので、内部告発は大変難しいと思います。
 ただ、こういう事例が出てきているということは紛れもない事実であって、実際にうまく機能しているという例として出したわけではありません。これは氷山の一角であろうというふうに考えています。
 それから、各国の法律の比較なのですけれども、ソフトロウと言われても、そういうものは通用しないと思います。やはり、法的な拘束力があるということが重要なのであって、行政の通知でどうのこうのということと、法律とは全く別物であると思うんですね。日本が世界に向けて、きちんと法規制があるという形を示すのであれば、やはり法律に明記すべきことではないかと思います。
 それから、EUの指令は、各国が国内法に反映させるべき義務を持っているものです。ですから、いずれは必ずこの今回のEUの改正法を、国内法に取り入れなければいけないわけですね。それ以前においても、既に実験動物の使用数は出ているわけですから、各国がきちんと実験動物の使用数を把握したり、何に使っているかを把握しているのは現実であると思います。
 それから、OIEについては、確かにこれは勧告ではありますが、しかし、それも日本が世界の先進国であるのならば、そういう国際的な勧告を受け入れるのは妥当ではないでしょうか。日本は、OIEのアジア代表なんですから、アジアの諸国に対しても、日本がきちんと世界の基準を守っていることを示すということは、むしろ積極的に進めるべきであって、勧告だから、アドバイスだからやる必要がないというのは、ちょっと一般的な感覚からするとおかしいのではないかと思います。

【林委員長】 青木委員、このEUの、あるいはイギリスの、この「ソフトロウ」というのは、私たちはあまり聞き慣れない言葉なのですが。

【青木委員】 ソフトロウというのは、ハードロウに対する表現でして、例えば国際取引において、その取引に従事する国際企業の間で事実上の基準、デファクトスタンダードができていて、放っておいても、別に国が法律を作らなくても、事実上、それに従ってみんなが動くようになると。そういう一定の範囲で、国や国際機関が明確なルールを定めなくても、かなり実効性を持って守られるルールというのを、ソフトロウというわけですね。
 それに対して、野上委員のご議論は、それは狭い意味の法律ではないのであって、最終的にその実効性を担保できないから、それはやはり法ではないと、こういう議論です。法というものの定義が一義的ではないというのは、これは認めていいと思うんですね。ですから、どちらかの議論が全面的に間違っているというものではないと思います。
 法律という、しかも国が定める公法的、パブリック・ロウ的な法律というものを前提に、狭く法律をとらえれば、野上委員のおっしゃったような議論にもなるし、もうちょっと同等者の中で自生的に発生してくるスタンダード、これも一種の法なんだという広い立場をとれば、鍵山さんのおっしゃったような議論になると、こういうことです。

【林委員長】 EUの指令は、実験動物の場合、どうなっているのかわかりませんけれども、私が知っている一つの例は、EUが硝酸塩指令をオランダに対して出したことです。あそこはあまりにも家畜をたくさん飼っていて、それが海を汚しているものですから、何しろ家畜の数を減らせという指令を出した。オランダがそれに控訴して裁判で争ったんですけれども、オランダが負けてやっぱり家畜の数を減らす、つまり、家畜の飼い主から家畜1頭いくらという権利を買うという形で、家畜の頭数を減らしているんですね。
 だから、かなり拘束力があるものだと、つまり硝酸塩指令についてはそうだと思うのですが。実験動物の場合、どうでしょうか。

【永村委員】 そこは、僕はよくわからない。

【林委員長】 私はオランダに調査に行きましたから、よく知っているんですけれども。実験動物の場合、そんなに拘束力のあるものではないですか。

【永村委員】 今の、委員長がされている議論と、ちょっと噛み合わないかもしれませんけれども、日本学術会議が出しておられるガイドラインを例えば読みまして、8ページに動物実験計画の立案時に検討を要する事項と。その中には、いろいろな項目があります。動物実験などの不要な繰り返しに当たらないかどうか。あるいは、より侵襲性の低い動物実験方法への置き換えが可能かどうか。要すれば、RefinementとかReplacementというのは、このガイドラインにきちんとうたわれていますけれども、本当にどれだけその苦痛が軽減されているかというようなことを、個別の実験の過程できちんと数値化して一々評価しているわけじゃないわけでしょう。
 このEUの指令も、読めばわかるとおり非常に抽象的ですよ。ですから、仮に私が実験動物に携わっている人間の立場に立ったとして言わせてもらえば、さっき浦野委員がおっしゃった、本当に今、法律改正が必要なのかどうか、そこをまず議論してくれよということが一つと、何か物を作れば、あるいは法規制を、文言なり法律なりで強化をすれば、それで事が足りるというような話じゃない、そんな簡単な話じゃないと思うんですよ。
 ですから、僕は外部の検証についても、本当に苦痛が和らぐような動物実験をやっているかどうかなんていうのは、それはやっている方じゃなければ、外から見たってわからない分野はたくさんあると思う。動物実験の種類によっても。  ですから、あまりにもきれいごとで、法律改正とか何とかをやるということに、どれだけの意味があるのかという気はするんです。ですから、ある意味で、鍵山さんなり、祖父江先生がおっしゃったように、まず、俺たち、自分たち専門家が一生懸命やっているから、そこは任せてくれないかというのが、恐らく本音だと思いますよ。仮にどんどん情報公開をして、例えば僕は渡辺委員の懸念もわかりますけれども、今、うちではこういう感染症の実験をやっているんだと情報を公開すれば、それは感情的な立退き運動がいつ発生するかわからない心配もある。
 ですから、すべてを公開するというのは、ちょっと待ってくれませんかというのが、恐らく本音ではないかと、私は感じたんです。ご感想があれば。

【林委員長】 おっしゃるとおりだろうと、私も思います。が、先ほど、安楽死と安楽殺の問題を言いましたように、一つの社会の中で、ほかではもう考えられないような言葉の使い方をしているということ自身が――恐らくこれは悪気があってやったのではないんだと思うんですが――閉鎖的な業界の特徴ではないかと心配になります。
 動物を用いた実験は、本当に専門家しかわからないことがいっぱいあると思いますので、基本は自主管理ですが、仲間だけで管理していると独りよがりになる恐れがあり、他から指摘されて初めて自覚できることが少なくないと思います。動管法から動愛法に改正されて争いごとが増えましたが、それは以前に問題がなかったわけではなく、隠れていただけのことです。
 今でも問題が隠れているのではないか、というのが動物愛護団体側の指摘なのではないかと私は考えています。
どうぞ。

【山﨑委員】 議論が多分、いろいろなレベルのものが錯綜してしまっているような気がするので、ちょっと私、質問と、それからこの法改正に関しての方向性を、ちょっと自分なりに少しまとめてみたいと思うのですけれども。
 まず一つは、法改正が必要かどうかというところの中で、必要か必要でないかは別問題として、一つはアメリカのAWAみたいに、その中に全部、実験動物の個々のタギングのことまで入っているという動物福祉法もあれば、英国のように完全に別法のところもあると。ですから、日本の動物愛護の法律の中に、アメリカのAWAのようなところまで入れるか、あるいは日本の状況としては、仮に必要とあらば別法にしたほうがいいのかという議論は、絶対にまず行わなければいけないと思うんですね。
 もう一つ、私は実験動物そのものに対して、絶対的に反対をしている立場ではありませんし、先ほど祖父江先生がおっしゃったように、難病の家族を抱えていたら、私の愛する者のために、もう、ウサギを殺さないでくださいというような偽善的なことは、絶対自分では言えないと思っています。ただ、それと同時に、動物実験の方々は、やはり野上委員がご指摘なさったように、法改正があったから一生懸命頑張ったのか、それともその前からやっておられるのか、それはまた別問題として、私がこのヒアリングで受けている印象としては、少なくとも動物園や、それから農業動物の方たちよりも世論に対して反応されていると。むしろ、必要である重要性を感じているという、そういう意識を非常に強く感じているところは評価したいと思っております。
 ただ、同時に、やはり先ほどから動物実験と実験動物がどうしてもごちゃごちゃになっている。私は、科学者ではないので、動物実験の中での、例えば給餌、給水を控えなきゃいけない状態とか、それが果たしてどれだけの苦痛につながるのかとか、そういった細かい実験のあり方に対して、もしかしたら口を出すだけの知識は持っていないかもしれませんが、一般的な、環境省がお出しいただいた、実験動物の適正な飼養保管等を推進するためにという、このパンフレットの中身に関しましては、少なくとも飼養管理方法、それから処分方法というのは、これはペットであろうと農業動物であろうと、実験動物であろうと、一切変わることがないわけです。
 先ほど、山口委員がおっしゃったことも、それから私も、実験動物関係者の方とお目にかかるときに常に申し上げているのは、まず、第一ステップとしては、飼養管理方法に関して細かいことを、飼養管理のエキスパートに言わせてくださいという点です。ペットショップであろうと、実験動物の業者であろうと、飼養管理基準は同じモルモット、同じネズミ、同じ猫ですから、何ら変わりがないはずなのです。実験のために特殊な施設で何かをやっているという段階は、まず多目に見るとして、それがいいか悪いかは別として、その前の段階でどういう飼い方をするかということは、これは一切、どの施設であっても差別するべきではないと思っております。
非常にいいDVDをいただきましたけれども、あのDVDの中に出てきたクリーンな施設のあのネズミをペットとして飼っている方々もたくさん実はおられます。実際にペットとして飼われれば、あの子たちは結構遊びが好きで、潜るのが好きで、非常に活発であるから、例えばトンネルとか、それからおもちゃなどの構造があの中に入っていないで飼っているのは、人間を四畳半一間のコンクリートの部屋に詰め込んで、さあ、ここにいろと言っているのと同じでしょう。飼い方として果たして適切かといって、飼養管理のスペシャリストとして聞かれれば、あるいはペットの飼い主として聞かれれば、あれは適切ではないと申し上げなければいけない。
 それから、私よりも、恐らく山口委員のほうがよくご存じでしょうけれども、私どもの関係の中には、必ずしもエンドポイントを迎えさせなくてもよい動物を出していただいて、引き取らせていただく方もおられます。そんな中出していただいたビーグル犬が、ずっと、すのこの上で暮らしていたために、床の上に置いたら一切歩けなかったというようなケースなどもございます。
 つまり、実験施設の中で、クレートやすのこの上で飼っているビーグル犬は、地面に置いた途端にへなへなと歩けなくなる。これは適切に飼養管理された犬ではないわけですから、そういう意味での適切な飼養管理というものは、一体どこに基準を置かれて、それの査察はさせてくれるのか。そして、それを法律の中に書き入れることができるのか。そういった部分というのは、私は、実験というそのプロセス以前に非常に大切であって、それに関しては、いくらでも私は、動物愛護管理法が口出しをしてもいいと思っております。

【林委員長】 そこは、あまり混乱していなくて、先ほどから皆さんが発言されているのは、実験動物の福祉についてで、動物実験そのものについては、論議していません。動物を用いた実験の科学的妥当性は私たちの権限でないからです。動物実験については、文部科学省や厚生労働省で検討して頂くことで、ここでは、あくまでそのときに使用される実験動物の福祉についての話し合いだということでは、ほとんど皆さん一致していると思います。
 それで、具体的な事項を論議しましょう。実際に、実験動物生産業者の業種追加というのは、本当に必要なのかどうか。先ほどからも浦野委員始め、今日のヒアリングに来られた両先生も、あまり問題がないことを何で新たにいろいろ追加したりなんかしなければいけないのとおっしゃっているわけですから、もしこの業種追加が必要だとすれば、なぜ必要なのかということも含めておっしゃっていただければと思います。
 それから、3Rの推進というのも、これは今、前回の法律改正できちんと入れていただいて、第41条にもこの3Rは入っているわけですが、このための体制、より遵守されるような体制というのは、例えば徹底的な情報公開とか、そういうことですか。それはまた、なぜ必要なのか。
 最後に、届出制等について、兵庫県のようなことが、すべての県で、国全体で必要なのかどうか。これは、なぜ必要なのかということをきっちりおっしゃっていただいて、もし、必要であるならば論議したいというふうに思いますが、いかがでしょう。 野上委員。

【野上委員】 実験動物の生産業者は、動物取扱業に入れるべきだという意見です。といいますのは、社団法人日本実験動物協会へ加盟しているのは、非常に大きな大手の会社であろうと思いますが、そのほかにも中小のさまざまな業者がいるわけです。私どもの会には、よく猫が行方不明になったとかいうことがありまして、実験動物というか、猫とり業者がいるとか、それからペットショップの売れ残りが実験に売られているとかいう情報が入ってくるわけですね。
 そういう意味でも、ブラックボックス化している部分があります。大手の会社は、既にその存在をすべてホームページで公表していますし、会社の概要も出ています。しかし、それは本当に大手の会社だけでして、わからない闇の部分がいっぱいあるという観点から見れば、やはり登録制に入れるべきであろうというふうに思います。
 それから、3Rの推進については、苦痛の軽減については義務になっていますが、代替法と使用数の削減については配慮事項で、非常に弱いわけです。ここは、苦痛の軽減と同じくらいに強化して、実効力を持たせないといけないと思います。それから、さらに使用数の削減や代替法を推進させるためのインセンティブを設けないといけないと思います。というのは、使用数が削減されているかどうかということを、どうやって判断するんですか。なぜ、その動物を使わなければいけなかったのかという根拠はどこにあるのか。実際、この実験に前は何頭使っていたが、今回はこれだけ減りましたとか、そういう目に見える形の数値が出ませんと、この効果というものは出ませんので、そのあたりを実効性が保てるように強化すべきであろうと思います。
 それから、届出制等につきましては、先ほども言いましたように、まず、実態を把握するということです。実態を把握して何が困るんですかということは、今までのブリーダーの件などでも何度も議論されてきたわけです。きちんとされているのであれば、何の問題もないはずです。むしろ、登録制になって闇の部分が出てきてボロが出てくるから、怖いからできないんじゃないかというふうに、逆に思ってしまう。一般の人は、もちろんそう思うわけですね。そういう部分を理解しないと、なぜ、人々がそれを求めているのかということを、実験者の方々は、本当にわからないことになってしまうと思います。
 現実に、阪神大震災ですとか、東日本大震災のような大災害等が起これば、実験施設が崩壊したり、実験動物が逃げたりするわけです。そういう実験施設の近隣に住んでいる人たちは、非常に不安を感じているんですね。今現在、大規模畜産施設などを作ろうというときには、地域の住民に説明会を開いたりして、説明責任があるわけですから、そういう意味で地域の住民に対しても、その実験施設の実態を明らかにする社会的責任があると思います。

【林委員長】 今、これについて、必要だというご意見をいただいたんですが、それ以上の論点がある方は、またおっしゃってください。 どうぞ、山﨑委員。

【山﨑委員】 むしろ、私はこれについて太田委員のご意見を聞きたいと思うのです。同じ業者さんとして、一部、やはり同じようにウサギを繁殖している。こちらは登録しなくていい、こちらは登録しなければいけない。こちらは査察を受けなくていい、こちらは査察を受けなければならないということに関して、例えば実際に動物を生産している業界としては、どうお考えですか。

【太田委員】 あまり難しい話は、私、できないのですけれども、やっぱりペットと人間のためになっている動物というのは、私、すべてが一緒にはできないんじゃないかなというような気はします。

【林委員長】 ペットは、人間のためになっていないんですか。

【太田委員】 いや、なっていますけれども、ペットの動物と実験動物とは違うところがあって、すべて同じようにはいかないんじゃないかなというような感じがします。
 ペットに関しては、より厳しくするのはしようがないなと思っています。

【林委員長】 はい、ありがとうございます。そういうお答えでよろしいですね。 渡辺委員、どうぞ。

【渡辺委員】 人間のために命の犠牲を強いられる生き物だからこそ、福祉をきっちりと担保してやらなくてはいけないと思います。

【林委員長】 はい、ほかに。今はこういうことが必要だというご意見、またその根拠をお話しいただいたのですが、逆に必要ないというご意見も、もちろん結構です。 まず、鍵山先生。

【鍵山直子氏】 野上委員がおっしゃったことで、かなり、申し訳ないけれども思い込みがあるのではないかと思って伺っておりましたが、例えばペットの繁殖業者というのは、私が知るところ1,300ぐらいあって、販売業者が2万2,800なにがしというふうに伺っているのですが、実験動物のほうは、わずか16社しかありません。本当にそれしかありません。
 それで、展示動物を実験動物に持ってくるなんてことは、あり得ないです。そういうデータを出したって、全然アクセプトされないから、それはもう、祖父江先生が補強してくださるとは思うけれども。とにかく16社しかないんですよ。
先ほども言いましたけれども、3Rを一生懸命実行しようという努力があって、自らその会社の中でもって販売数――いろいろな統計の取り方はあるけれども、販売数が一番わかりやすいので。もう、がんがんさっきの表で、減っちゃっているんですよね。なおかつ、研究者のニーズが非常に厳しく、それに合わせて動物を供給するためには、その16社の中でも恐らく、現在の世代で廃業すると思われるものが4社あると、こんな状況です。それで、また残ったものも、多分3社くらいにまとまっちゃうのではないか。
すなわち、自助努力の中で、研究者とのつながりですよね。その中で存在感を、細々とと言ったら悪いんですけれども、立派に、しかしながら細々とやっているのが実験動物の生産業者であるから、そのことと、野上委員がおっしゃられたことは、全くギャップがあるので、ちょっと私は、それは受け入れられないです。

【野上委員】 それでは反論します。
 つい先日、ある内部告発的な情報をいただいたわけですが、そこの方々は動物病院で、ペットショップの売れ残りをもらってきて、いろいろな実験にしていると。実際、そこの獣医の方からの情報がありました。このように、だれでも、どこでも実験ができるという現状、それからペットショップの売れ残りでも実験ができるという現状があることは、紛れもない事実です。
 ですから、そういう極端なことを言っているわけじゃない。鍵山さんはそういう大きな会社しかこの世の中に存在しないかのように思われているのが、そもそもの認識の間違いではないかと思うんですね。

【鍵山直子氏】 多分、私の方がよっぽどよく知っていると思いますよ。
 それに、そういうふうな動物病院に持って行くのは、それは獣医療行為に対する何かであって、別に実験動物として、それが存在しているものではないですよ。
 だから、いわゆる四つのカテゴリーをジャンプして動物が行き来するなんてことは、それは野上委員、30年くらい前はあったかもしれないけど、今日日そういうことはあり得ないです。

【野上委員】 実際、あるから申し上げているわけで、それは1例だけではなくて、今、私が知る限りでは4例あります。つい最近の例で。これも今、調査中です。

【林委員長】 ある、ないと言っていても水掛け論になりますので、先に進みます。 どうぞ。

【祖父江元氏】 すみません。ちょっと外れるかもしれませんが、私は研究者の立場ですので、先ほど来、研究者がものを隠しておるとか、非常に何といいますか、バッシングの状況にあるのですが、そんなことはございません。非常に皆さん、自分で言うのも何ですが、非常にオープンな形で、今、僕の目から見てですけどね、やられているというふうに、少なくとも私どもの大学では思っております。
 ですから、何か隠しているんじゃないかとか、何か隠ぺい体質があるんじゃないかという、研究者に対する色眼鏡は、ちょっと取っていただけるとありがたいなというふうには思います。
 それから、先ほど、野上委員が出された資料で、真ん中の三つは、やっぱりカルタヘナ法によるものであって、これは動物愛護の観点からというのとは、ちょっと違うと思うんですね。しかも、これは私も浦野委員の意見――これは内部告発で出てきたというお話で、どういう内部告発だったのかちょっとよくわかりませんが、少なくともカルタヘナ法に違反するかどうかということは、動物実験委員会では非常に厳しく管理しています。
 もし、そういうことが起こった場合には、これは確実にここに書いてあるとおりのような、処罰かどうかはわかりませんが対応をしているというのが現状ですので、隠ぺいして、内部告発で出てきたというプロセスだというふうに、ちょっと必ずしもそうではないのじゃないかなというふうに思います。
 やっぱり、こういうことを検証、今、動いていますので、実際に。外部評価も含めて。やはり、建設途上としてきちんと検証していくということが、まだ、そこまで行っていないです。ですから、それをやっていくということが、私は非常に重要だというふうに思っております。
 それから、私は臨床家ですので、前、病院なども隠しているんじゃないかと、いろいろなことを隠しているんじゃないかということで、法律でいろいろやったのですが、必ずしもいい結果を生まなかったですね。ですから、ちょっとその辺は、アナロジーが必ずしも適切ではないですが、何か問題点があれば、是非そこを指摘していただくというスタンスでお願いできるとありがたいなというふうに思います。

【林委員長】 ありがとうございました。私も研究者ですから言いますけれども、大学院卒業後から13年間、東京大学の医科学研究所におりました。あのころは、実に状況が悪かったことは事実ですよ。

【祖父江元氏】 それは、委員長のおっしゃるとおりです。私も、年齢は先生とどっちが上かよくわかりませんが、30年前はちょっと猫をとってきて使うというような時代がありました。だけど、今はそういうことは、私の知る限りないですね。
 委員長がおっしゃっている意味は、時間軸でちょっと考えられたらいいと思います。

【林委員長】 そうですね。ただ、恐らく今でもそういうのが、どこかにあるのではないかという危惧を持っておられることは事実なんですよね。 どうぞ。

【加隈委員】 いろいろな、極端な例というのはどこにでもあると思いますが、実際的にはその実験動物を専門にされている施設とか、分野の先生方の意識というのは非常に高いと思っておりまして、その辺の自主規制がうまく進んでいけばいいなというふうには、私は思っております。
 ただ、恐らくこの動物愛護管理法のなかの特定動物ですとか危険動物の管理という意識、つまり、動物によって人間、周囲の住民等が何か危害を加えられることがないのかということに関しての規制もするという、法律の側面もあると思います。そして、前回の法改正で非常に、たまたまかもしれませんけれども、そのタイミングからかなり劇的に、特にシステムがよくなってきているということは思いますし、私も一応研究に携わったことのある者として、どんどん厳しくなっているなという状況は把握しているつもりです。
 ただ、前回との時代的な変化として、そして日本が直接的に関わるものとしては、私はOIEのガイドラインなのかなというふうに認識しておりました。そして、もう一つは、先般の災害に対して、そういったときに、じゃあ、どこに実験動物はいるのだろうということを、初動である行政が把握できないシステムが、もしまだあるのだとすると、そこの問題点というのはあるのかなという認識でおります。
 ですので、そのOIEのガイドラインへの対応という点に関しまして、先ほど鍵山先生の方からは、これはいいんだというか、ガイドラインにすぎないというお話だったのですが、ほかの例えば獣医学教育の部分とかは、かなりこれも意識して、畜産の方面ですとかも変化している部分も多分あると思うんですね。これに関して、もう少しお二人の先生のご意見をいただけたらと思ったので。

【林委員長】 はい。それでは、それについてお話しいただけますか。

【鍵山直子氏】 OIEに関しましては、今、加隈委員、おっしゃいましたけれども、ガイドラインについてはきっちり認識しておりますが、そのプロセスで教育、研究それから製薬会社ですね。テスティングですけれども、そういうのがあったのが、気がついているかどうかわからないけれども、落ちちゃっていますよ。
 であるからして、実験動物の使用数というのは、そのテスティングが多いですけれども、製薬会社等。それが削除されているということを考えていただいてもわかると思うのですが、OIE自身の力の入れ方というのが、これは大事なものなのだけど、実験動物のほかに国際ガイドライン、安楽死か、安楽殺か、それはいいとして、ともかくそういったものとか、それから人道的エンドポイントとか、たくさんガイドラインありますから、その中のワン・オブ・ゼム。だけど、テスティングを落としちゃっているから、やっぱりOIEとしては、ちょっと力が、そこのところにはそんなに入っていないのかなというふうな印象を持ちます。

【祖父江元氏】 ちょっとOIEのことは、私、専門ではございませんので十分わかりませんが、先ほど、法律にするのか、指針、ガイドラインのソフトロウにするのかという議論がございましたけれども、私は、前に文科省のES細胞のガイドラインを作る委員会に入ったことがあるんです。そのときも、法律にするかガイドラインにするか、かなりもめました。最終的には、今、ガイドライン、指針になっています。それは、国によってばらばらなんですね。思想が違いますし、背景が違いますし、国の置かれている立場によって、最もベストな方法をとるという議論になったんです。
 ですから、外国がやっているから、そのまま輸入すれば、それで事足れりという形では、僕はないというふうに思います。これは、やっぱり日本型を検討していく必要が、僕はあると。そのためにも、検証していくというのは、非常に大事だと思います。

【林委員長】 そうですね。打越委員と、それから浦野委員。あと、もうお二人で、山口委員と野上委員。あと、小方委員。短くお話しくださいね。

【打越委員】 賛否両論あるところで、私個人としては結論を出せません。ただ、実現可能性、例えば届出制とか登録制というものを、実験動物の生産業者に位置づけることの実現可能性というものが、微妙だなと思うんです。というのは、例えば外部の人が実験施設に入ってきちんと管理しているかをチェックするとか、あるいは自治体の行政担当者、あるいは国の担当者が現地でチェックをするとしても、我々は一般的な愛玩動物の飼養基準の数値基準を、まだここで決めることさえできていないわけです。
 その数値基準を決められていない状況なのに、例えば現地に入って、例えば動物愛護団体の人が、あるいは自治体の担当者が、これはもしかしたら――こういう言い方をすると鍵山先生、怒られるかもしれないですけれども――例えば劣悪な管理の方法だというふうに思って、例えば声を上げたとしても、じゃあ、一体何が基準なのかという話になったときに、結局愛護団体等からの批判は、矢のように注がれるかもしれませんけれども、結局何か改善のための動きができるわけでもない。
 それで、何とかして実態を把握するために、まずは届出制からスタートという議論もありかもしれないですけれども、基準もない、どういう査察をするんだということが決まっていないまま、とりあえず届出制にするということは、中途半端な法律を作って、現場の混乱を増すだけなのではないかというのを、とても懸念します。
 ただ、こういう議論で、全く実験施設は何をやっているんだと。きちんと情報を公開しろというふうに研究者の先生方に非常に厳しい意見が飛ぶということ自体は、お気の毒ですけれども非常に重要なことだと思います。そうやって緊張感を与えられることによって、また自主管理もきちんとやらなきゃいけないというプレッシャーにはなると思います。

【林委員長】 浦野委員、どうぞ。

【浦野委員】 祖父江先生と鍵山先生既にお話したこととダブる内容については一切触れません。それ以外のことについてですが、まず第一点は、おっしゃるように動物愛護管理法のもとでは、届出制等がなされていないので、この法律のもとではどこで動物実験を行なっているかはわからないと思います。しかし、各省庁は、例えば大学関係なら文部科学省が、どこの大学で、むしろ個人レベルでどういう実験をやっているかまで把握しています。すなわち、各省庁単位では既に把握しています。さらに、我々自身もすべて把握しているという状況下で進んでいます。以上が第一点目に申し上げたい内容ですが、 次の第二点目に申し上げたい内容ですが、大切なのは、場所等を把握して次のステップとして何をどうするのかとが、非常に大切だと思我が国の科学研究の中で、動物実験の重要性は、先ほど祖父江先生が触れられたとおりで、絶対にやっていかなくてはなりません。しかし、その方法は適正にやっていかなくてはならないということは、十分に認識していますし非常に重要だろうと思っております。
 今までのこの動物愛護管理法の委員会の中で審議されてきた動物種と比例して、この実験動物領域については言えることの事項の一つとしては、適正に動物実験を推進していくための指導・助言をする大きな母体がたくさんあること例えば、社団法人日本実験動物学会、それから私が会長を務めています国立大学法人動物実験施設協議会、さらには公私立大学実験動物施設協議会、日本製薬工業協会、厚労省動物実験施設協議会など、さまざまな母体があります。これらの科学者集団の母体が、それぞれごとに3Rに基づく動物愛護、あるいは科学的観点に基づく動物実験の推進ということを、的確に指導・助言していっているという現状を踏まえて判断していただきたいと思います。  これはちょっとほかの、これまでの議論と違う観点かと思います。

【林委員長】 小方委員、どうぞ。そして、野上委員と山口委員。

【小方委員】 私、教育現場におりまして、若い人たちと接していますと思いますのは、次世代の人は随分考え方が変わってきているように思います。つまり、非常にデリケートになっているということですね。例えば心の問題、命の問題、愛護の問題、今日、出ておりますような動物の実験について、しばしば過去に無いような質問が出てまいります。
 したがって、ここで大切なのは、今度はこういった問題に倫理的、哲学的な考えを入れていく。そして、その若い人、次世代人たちに、説明し納得してもらうような努力が必要なんじゃないかなと、思います。

【林委員長】 ありがとうございました。野上委員、そして山口委員。

【野上委員】 先ほど、EU指令が抽象的だというお話があったのですが、これは前文ですので抽象的なのは当然で、ここに付属書というのが付いていまして、そこに詳細な、具体的な数値ですとか、ケージの大きさとかそういうものがありますので、決して抽象的なものではないというのが1点です。
 それから、先ほど祖父江先生のおっしゃっていた日本型という問題ですけれども、私たちが一番問題にしているのは、動物の苦痛には国境はないということです。すべての国で同じように実験動物は苦しんでいる、あるいは苦痛を受けているわけですから、その苦痛については世界共通の立場で取り組むべきであろうと。これは本当に国際的な問題ではないかということが2点です。
 それから、3点目として、浦野委員の、省庁は把握しているということですが、民間の製薬会社ですとか試験研究機関など、把握されていない部分はいっぱいあるわけです。ですから、自分たちのところが把握していてよくやっているから、日本全国すべてがいいということは言えないということがあります。
 それから4点目として、祖父江先生が、研究機関には世間の目が厳しいということをおっしゃっていましたけれども、それは当然のことであると思います。なぜなら、国立大学等は国民の税金を使って運営しているわけです。私たち納税者がその税金が正しく使われているか、本当に費用対効果がある研究なのか、動物の犠牲が無意味に行われているのではないかということを、国民として知りたいと思うのは当然の権利であるわけです。ですので、研究者、あるいは公的な機関が厳しい目で見られるのは、今の時世、当然であると思います。

【林委員長】 はい。山口委員、どうぞ。

【山口委員】 自主管理といいますか、自主規制を厳しくされていかれるということは、大いに結構なのですけれども、ただ、いろいろ先ほどからお話を伺っているときに、先生方の間では、やっていらっしゃる。でも、まだ漏れているところがやはりあるだろうから、そういうことを私たちは、やっぱり日本全国一律に厳しくやっていただきたい。自主管理でも十分できていらっしゃるところもあれば、まだまだ手が入っていないところもあるとすれば、法律でもってそれを一律にするべきではないかなというふうに思います。
 一生懸命やっていらっしゃるのは、よくわかるんですが、やはり、それを日本全国でやるためには、法律は必要というふうに思います。

【林委員長】 ありがとうございました。もう、本当にいろいろなご意見がありまして、私、まとめ切れませんが、これだけのご意見があるということは、将来の実験動物のあり方にとって、とても大切なことではないかと思います。
 とはいえ、今度の法律でどこまでどう生かせるか。やっぱり一つは、おっしゃっているように、前回改正した後、本当にどのような問題が、深刻な問題としては残っているのかという問題と、それから以前から、やはり情報があまりにも少ないために、疑心暗鬼にならざるを得ない面があるという、そういう面。それから、それがぼろっと、氷山の一角かもしれませんが、出てきているような事例もちょっとご紹介いただきましたけれども。いずれにしても、今回、何ができるのかということについては、またもう少し論議を進めてまいりたいと思います。
 今日、30分で終わる予定が、5分以上長引きまして、特に非常にお忙しい中、ヒアリングにおいでいただきました両先生に、厚く御礼申し上げます。

【事務局】 委員長、どうもありがとうございました。また、ヒアリングのお二方、どうもありがとうございました。  それでは、事務局から1点、ご報告させていただきます。
 次回の小委員会の開催の日程でございます。10月18日(火)でございます。内容は、特定動物について等を予定してございます。また、詳細につきましてはご案内をさせていただきます。
 それでは、委員の皆様、活発な意見をどうもありがとうございました。
 これをもちまして、本日の動物愛護管理のあり方検討小委員会を閉会させていただきます。どうもありがとうございました。