中央環境審議会動物愛護部会 動物愛護管理のあり方検討小委員会 (第20回)議事録

1.日時

平成23年9月27日(火)午前9時30分~午前11時41分

2.場所

環境省第一会議室
(千代田区霞が関1-2-2中央合同庁舎5号館22階)

3.出席者

林委員長、青木委員、井本委員、臼井委員、打越委員、浦野委員、
太田委員、小方委員、加隈委員、斉藤委員、渋谷委員、永村委員、
野上委員、水越委員、山口委員、山﨑委員、渡辺委員、
渡邉自然環境局長、小林審議官、田中総務課長、西山動物愛護管理室長ほか

4.議題

  1. (1)虐待の防止
  2. (2)その他

5.配付資料

資料1虐待防止ポスター
別添1自治体における犬・猫の引取り等の業務実施状況
別添2平成19年度動物の遺棄・虐待事例等調査業務報告書
別添3平成21年度動物の遺棄・虐待事例等調査業務報告書
別添4飼育改善指導が必要な例(虐待に該当する可能性、あるいは放置すれば虐待に該当する可能性があると考えられる例)について(平成22年2月5日付け環境省通知)
<委員限り> 
別添5闘犬・闘牛等資料
<委員限り> 
別添6虐待の事例
<委員限り> 
別添7一般社団法人とさいぬ保存登録会 土佐闘犬 ルール手引き
<委員限り> 
別添8一般社団法人とさいぬ保存登録会 定款
<委員限り> 
別添9土佐闘犬のはじまり、土佐犬の生い立ち
<委員限り> 
別添10闘牛規約
<委員限り> 
別添11英国動物福祉法2006(抜粋)
<委員限り> 
別添12司法警察員について
<委員限り> 
別添13特別司法警察員等の人員及び捜査活動状況
<委員限り>渋谷委員提出資料:土佐闘犬センター写真

6.議事

【事務局】 皆様、おはようございます。定刻になりましたので、これから第20回の動物愛護管理のあり方検討小委員会を始めさせていただきたいと思います。
 これよりしばらくは、事務局の方で進行を務めさせていただきます。
 まず初めに、委員の方の出欠について、ご報告を申し上げます。本日は磯部委員がご欠席でございます。残りの方、全員出席の17名で、委員会は成立しています。
 続きまして、配付資料のご確認をさせていただきます。資料は、特に資料1の別添5から後ろが委員限りということになっています。また、本日、追加としまして、カラー写真の2枚紙、渋谷委員の方から資料をご提供いただいています。傍聴の方には資料1の別添4までということです。もし資料に不備がございましたら事務局の方までお申しつけください。
 本日の、この資料の扱いですが、委員限りの資料以外及び、議事録につきましては、ホームページで公表いたします。
 あとマスコミの方にお願いです。カメラ撮りされる方は、冒頭、局長のあいさつまでとなりますので、ご了承ください。
 以上で、事務局のご連絡を終わります。それでは引き続き、林委員長の方に進行をお願いいたします。

【林委員長】 それでは、これから第20回の動物愛護管理のあり方検討小委員会を開催いたします。  議事に先立ちまして、渡邉局長からごあいさつをいただきます。

【渡邉自然環境局長】 おはようございます。この小委員会も20回目ということになりました。大変お忙しい中ご出席いただきまして、本当にありがとうございます。
 前回は、8月の末に多頭飼育、産業動物の福祉、自治体などの収容施設についてご議論をいただいたところであります。今回は、今日と明日と2日間連続の開催ということで、虐待の防止、実験動物の福祉などのテーマについてご議論をいただければと思っています。
 夏にパブリックコメントを行いました「動物取扱業の適正化」、1年近い議論を中間的に取りまとめてパブリックコメントを行ったものですけれども、約10万件の意見をいただいております。現在、その意見の取りまとめや集計、整理をしているところでありますけれども、こういった意見への対応についても、また改めて、この小委員会でご議論いただけたらと考えております。
 先週、9月20日から昨日の26日まで、動物愛護管理法に基づく動物愛護週間でありました。今年のテーマは、「備えよう、いつも一緒にいたいから」というテーマでした。東日本大震災を受けて、災害時のペットの問題を改善するために日頃からどういう備えをしたらいいかというようなテーマで、様々な行事、シンポジウムが、全国各地で実施されました。ここにお集まりの皆様にも、いろいろな場面でご協力、ご尽力をいただきました。ありがとうございました。
 それでは、本日の小委員会は「虐待の防止」というテーマでのご議論であります。いろいろな角度からご議論をお願いできたらと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【林委員長】 ありがとうございました。
 それでは、局長がおっしゃったように、今日の小委員会は虐待の防止について論議していただくということですので、まず事務局からご説明をいただきたいと思います。

【事務局】 それでは、資料1をご覧ください。まずは、1.現状ということでございます。
動物愛護管理法は、第44条で愛護動物に対する虐待や遺棄を禁じております。同条第1項はみだりな殺傷による虐待、第2項はみだりに給餌、給水をやめることにより衰弱させる等の虐待、第3項は遺棄についてとなっております。下の四角の中に、条文の抜粋を掲載しております。
 また、こうした動物の虐待や遺棄を防止するための普及啓発資料として、環境省は別添1にありますとおりポスターを作成したほか、ラベルはつけてないですが、別添2、別添3の冊子を2冊作成しております。平成19年度、21年度に動物の遺棄・虐待事例集ということで資料を作成して、動物の遺棄・虐待を防止するための普及啓発資料としております。
また、どういった行為が虐待になるかという解釈につきましては、昔から疑義照会で個別に答えるといったことをしております。資料1の四角の中で平成元年の事例を示しておりますが、虐待についての一般的見解は如何ということの回答です。具体的判断は当該行為の目的、手段、態様等及び当該行為による苦痛の程度等を総合して社会通念としての一般人の健全な常識により判断すべきものという見解を示しております。
 また、動物にえさや水を与えないですとか、疾病にかかったのに治療しないとか、そういった行為に関しては、一般に疾病にかかった動物について飼い主に治療義務があるとの社会通念が成立しているかどうか、治療等を施さない正当な理由があるかどうかの点について十分検討を加えた上で、虐待に当たるか否か判断すべきものと思料するという回答を示しております。
 また、従来から、虐待の定義の明確化について自治体等から要望が出ておりましたので、別添4として、平成22年2月5日付で、自然環境局総務課長から各都道府県・指定都市・中核市動物愛護主幹部局長あての通知という形で、虐待の定義の明確化に関して通知しております(「飼育改善指導が必要な例(虐待に該当する可能性、あるいは放置すれば虐待に該当する可能性があると考えられる例)について」)。
 この中で、この別添4の下の方に白丸が二つございまして、ここで具体的な事例を示しているものの、個々の案件に係る判断は、動物及び動物の所有者又は占有者の置かれている状況等を考慮して個別に行われるべきものと考えると。また、本日の論点にもなってございますけれども、警察との連携ということも論点の一つでございますけれども、その下の丸の中で、警察にも、こういった事例について情報提供していただき、引き続き連携して対応していただきますようお願いしますということで、通知という形で、そうした連携についてお願いしております。
 この別添4をめくっていただきますと、(別紙)となっておりまして、Ⅰ.動物虐待の考え方ということで、「積極的虐待」と「ネグレクト」ということで、二つの場合について場合分けしております。また、大きな2番として、Ⅱ.飼育改善指導が必要な例、(虐待に該当する可能性、あるいは放置すれば虐待に該当する可能性があると考えられる例)についてということで、一般家庭と動物取扱業者等に場合分けして、それぞれ個別の事例を紹介しております。
 また、委員限りではございますけれども、別添6として、こうした過去の2冊の報告書ですとか新聞記事の検索をもとに、過去の虐待の事例を、こうした場合分けした資料をつけてございますので、ご参照いただければと思います。
 続きまして資料1に戻っていただきまして、資料1の2枚目ですけれども、この平成22年2月5日付の通知の後に、平成22年3月から今年の3月にかけて個別に自治体から照会がありまして、これらが虐待に該当するかどうかという照会がありまして、それに環境省としても回答しております。その事例を四つほど挙げてございます。上から三つが第44条第2項の虐待に該当するもの、一番下の一つが、第44条第3項の遺棄に該当するものということで、こうした自治体から個別に照会があれば、環境省もそれに回答するというようなことを現在まで行っております。
 続きまして、その下の方に行きます。
 今日の論点の一つとなっております、動物を闘わせることについてですけれども、事務局としても、今日は闘犬の関係者にヒアリングに来ていただこうと、ずっと7月からお願いをしていたのですけれども、なかなかご都合がつかないということで、来ていただけませんでした。委員限りですけれども、別添5に、闘犬、闘牛、闘鶏に関して資料をつくっておりますので、こちらをご参照いただければと思います。
 別添5の(1)ですけれども、都道府県の動物愛護管理主管部局を通じてアンケート調査を行った結果でございます。その都道府県を通じたアンケート結果でございますけれども、全国の16地域19自治体において18件の大会が把握されております。その一覧が別添5の1枚めくっていただいた中にございます。
 闘犬については7件、闘鶏については1件、闘牛については10件の大会が把握されております。
 また、この別添5を3枚ほどめくっていただきますと、闘犬、闘鶏、闘牛等の参加者、管理者などになってございますけれども、闘犬は愛好家団体等によって主催され、当該地域内外から愛好家が参集して行っているようであると。また、続きまして闘牛ですけれども、闘牛の方は、主に地域住民の団体により主催され、当該地域住民が管理する牛を用いて地域住民が参加して行われているというようなことが多くなってございます。闘鶏に関しては、1件だけということで、なかなか完全に把握し切れていない部分がございます。
 続きまして、その表2-1-3[1]をご覧いただきますと、闘犬も1件、高知県のところで観覧料金の徴収等を行っておりまして、闘牛に関しても観覧料金の徴収などは行われているという状況がございます。
 こうした闘犬、闘牛に関して、成文・習慣を問わず何らかのルールがある大会については、およそ全体の8割、14件について、そういったルールが存在するというアンケート結果になっております。また、動物への配慮を定めたルールが確認されたのは、そのルールがある大会のうちのおよそ8割ということになっております。
 表の2-1-6の[2]をご覧いただきますと、闘牛に関して動物に配慮するルールの内容、ルール以外の社会的事情ということで個別に掲載しております。16番の鹿児島県の徳之島町の事例などは、別添10に闘牛規約ということで、鹿児島県を通じて徳之島闘牛連合会で作成している規約をいただいております。この中の内容をこちらにまとめておりますので、ご参照いただければと思います。内容をご覧いただきますと、体重別に分けるとか、引き分けなど、対戦時間による牛の状況やけがが発生した際は引き分けが検討されるというような内容となっております。
 続きまして、どれぐらいの歴史というか沿革があるかということでございますけれども、半数の9件が江戸時代以前、1867年より前に由来しておりまして、このうちの8件が闘牛、1件が闘犬ということになっております。また、こちらの別添5の資料の中には書いてありませんけれども、これらのうち6件、闘牛5件、闘犬1件については、動物取扱業の展示の登録を受けてございます。
 また、行政上の位置付けに関しましては、一定程度が国や県の文化財として指定されておりまして、地域の文化、慣習として定着しているほか、一部では観光資源として行政計画に位置付けられて振興が図られております。資料1の方にも、表の抜粋をしておりますけれども、県の天然記念物や重要無形民俗文化財に指定されている事例がございます。
 また、この別添5委員限りの資料の最後のページに、関係者ヒアリングということで徳之島における闘牛の実情についてヒアリングをしておりますけれども、その闘牛の一番最後のところですけれども、ルール上、動物に対する配慮と言われると明言はしていないが、もともと生活のために飼育した牛であり、大切に扱うことは伝統としてあるというような事情もございます。
 また、資料1の方に戻っていただきますと、こうした闘犬等の行為に関して昭和49年に疑義照会が行われておりまして、これ、青森県からの照会に関して回答したものですけれども、伝統行事として社会的に認容されている闘犬等を実施する行為は、当該行為を行うために必要な限度を超えて動物に苦痛を与えるような手段、方法を用いた場合を除き、その虐待に該当しないものと解するというような解釈を過去に示しております。
 また、現在、自治体の条例ですけれども、五つの自治体、北海道、東京都、神奈川県、石川県及び福岡県において、こうした闘犬等に関する条例を制定してございます。その条例の全文につきましては、別添5の後ろから2ページ目のところに全文を記載しております。
 続きまして、資料1の2.本日の主な論点です。
 まず虐待の定義ということで、現在の法第44条への具体的例追記の必要性の検討ということで、現在の第44条の条文は、この資料1の一番最初のページに書いてございます。また、例として示したものは、審査を受けたものでなくて、あくまで例として挙げたものでございます。これは、その別添4の通知の、この場合分けの事例ですとか、あと、この資料1の「4.参考法令」に児童虐待防止法の抜粋を示しておりますけれども、こちらの方に記載してある条文をもとに、こうした例はいかがでしょうかということで書かせていただいております。
 また、次の論点ですけれども、闘犬等、動物同士を闘わせることの禁止規制の検討ということで、過去の疑義照会にもありますとおり、これまで個々の案件に係る判断は個別で実施しているところと。また、これも過去の疑義照会でありましたけれども、既に伝統行事として社会的に認容される事例をどうするかと。また、文化財指定、地域の観光資源としての位置付けに配慮する必要があるのではないかということになっております。
 また、論点として、司法警察権の導入。自治体職員の立ち入り・捜査権限、動物の一時保護規制の検討ということで論点として上げております。こちらに関しましては、また委員限りですけれども、別添12と別添13に関係の資料をつけてございます。別添12につきましては、参考法令の鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律の第76条の抜粋を資料1の一番最後のページにつけておりますけれども、その鳥獣保護法に基づく司法警察員の制度について、説明した資料でございます。この76条の規定に基づいて、刑事訴訟法によって規定された起訴、引き渡し、送致などの職務を指定された者が行うことができるという制度になってございます。
 別添13ですけれども、こちら、法務省の方で取りまとめた資料でございまして、特別司法警察職員等人員及び捜査活動状況の統計データとなっております。こちらの中で、鳥獣保護法に関してもデータがございます。特別司法警察職員の数と、これらに関する強制捜査権行使の種類の回数ということで、数が記載してございます。
 続きまして、論点の最後の部分です。関係機関との連携。動物愛護部局、動物愛護推進員、警察等の連携の検討ということでご議論いただきたいと思います。
 最後に、3.動物愛護団体等からの主な意見ということで、こちらは定義を明確化すること。地方公共団体の動物愛護担当職員に立入調査・勧告・命令等の権限を持たせるとともに、警察との連携が適切に図られるような体制づくりを進めること。獣医師に対して動物虐待に対する通報義務を課すこと。動物と動物を闘わせることを禁止すること。所有権のある動物に生命の危険がある場合は、裁判所命令による当該動物の緊急保護ができるようにすることと。動物愛護団体からは、こういった意見が寄せられております。
 説明は、以上でございます。

【林委員長】 ありがとうございました。
 それでは、早速、非常に範囲が広いですが、動物の虐待の防止について、どこからでも結構ですので論議を進めてまいりたいと思います。
 打越委員、どうぞ。

【打越委員】 今、座長はどこからでもとおっしゃったのですけれども、今日はヒアリングの予定がなくなったということで時間に余裕があるならば、例えば多頭飼育やネグレクトの問題、それから殺傷事件などの虐待の問題、それから伝統文化との例えば矛盾の問題など、少し論点を分けて議論しないと、時間があるからこそ、行ったり来たりだとまとまらないかなと思って。そのあたり、座長にまとめていただいてから議論できればと思います。

【林委員長】 そういうご提案ですので、どうしましょうか、確かに動物の虐待防止は非常に範囲が広いですので、まず、それでは、これ一番難しそうな動物虐待の定義については最後にすることにして、最初に、今もご説明いただきましたけれど、伝統あるいは文化との関係ですね、闘牛、闘犬、闘鶏等の動物を闘わせることについてのご意見からいきましょうか。では、どうぞ、それについて何かご意見があれば。たまたま、渋谷委員から提出された、これは土佐に行ってこられて、自ら写真を撮ってきていただいたものをお手元にいただいていますが、もし何か、実際にご覧になられて感想があれば、最初にお聞かせいただけますか。

【渋谷委員】  今年の8月上旬に、土佐に闘犬を見に行ってまいりました。写真を撮ってきたうち、8カットだけ、今日配付させていただきました。
 常設の建物がありまして、その中に土俵のようなものがありまして、土曜日、日曜日などは、ほとんど試合があるような感じでした。そしてまたお土産屋さんもありまして、どちらかというと観光地化している雰囲気がありました。
 試合は1試合しか行われないのですね。1日3回あるのですけれども、1試合だけで、時間的には極めて短い時間で終わっていました。そして、写真でも、血が流れるとかいう、そういうシーンはありませんでした。あと、それから土佐犬の子どものうち、数カ月のときの子犬がいるのですけれども、その子犬と子供たちとのふれあいの場というのも作ったりしておりました。そういう写真です。

【林委員長】 ありがとうございました。
 私は、闘鶏はよくアジア各地で見ているのですけれども、残念ながら闘犬というのは今まで見たことがありません。闘犬というのはすべてこういう形なのですかね。随分、闘犬の中にもいろいろありそうな感じですね。
 どうぞ。

【山﨑委員】 闘犬は簡単に言いましてポイントが幾つかあります。一つは、闘犬、闘鶏、闘牛等に関しまして、一般論として、例えば一般的に虐待と定義してみだりに動物に傷をつけたりということをしてはならないというような形で考えたときに、例えば闘牛でも、単純な角突きもあれば、非常に若い頃から、多分これは島根だったと思いますけれども、ワイヤーで牛の角を前方に向けていくという形で生えさせ、そして角を削ることなどをしているケースもあります。このような場合牛の体に風穴はあきます。今やっているかどうかわかりませんけれど、何年か前の資料においては、闘牛の牛、角突きの牛に精をつけさせるためにマムシを食べさせたり、かなり不自然な行為等もあるようです。マムシを食べさせることが虐待になるかどうかわかりませんけれども、少なくとも相手に傷つける武器を持たせているということは確かです。
 闘鶏に関して、私も、実は日本で闘鶏を見たことはありませんが、東南アジアや一部英国やアメリカなどで陰でやられている闘鶏の写真を見ますと、それもくちばしを削ると同時に、足にかみそりをつけたりしています。ですから、鶏が相手を蹴ったときには、相手がずたずたになるのです。そういう飛び道具をつけるということは、明らかに伝統芸能というよりも、動物の殺し合いを楽しんでいる以外の何物でもないと思います。少なくともまず最初は、そういった行為が行われているかどうかということをチェックをし、それはやはり禁止をしていかなければいけないだろうと思います。
 それからもう一つは、医療行為に関して。これは基本的に、ちょっと都道府県名は言えないのですけれど、観客が、「この子、血を流してますね、これから病院ですか。」と聞いたら、牛のハンドラーの方々は連れて行かないよというような返事をしました。実際に傷を負ったときに、どれだけの医療行為がなされているかということも、これは十分に動物愛護管理法に引っ掛かるものだというふうに思います。

【林委員長】 今おっしゃっているのはどこの闘牛なのですか。私が知っている限り、小千谷とか山古志、あれは絶対残すべき文化だと思っているのですけれども、場所によってかなり違うかもしれませんので、どこの闘牛なのかというのをおっしゃっていただきたい。

【山﨑委員】 今の病院に連れて行かないという発言は、まさに新潟です。
 それから、闘犬に関しましては、これは二つのレベルで考えなければいけなくて、土佐犬というものが伝統文化であるということを一部地方の方が主張なさるのであれば、土佐犬以外の犬の闘犬をどう取り締まるかということも、これは同時に考えなければいけないことで、仮に百歩譲って、土佐犬は文化なのかという話になったとしても、では土佐犬以外、特に外来のピットブル系の闘犬というものをどう扱うかを考えなければなりません。実はこれは統計がほとんどない状態でしょう。これは、基本的には動物愛護の、このような委員会で扱えるような問題でないかもしれません。今後調べていかなければ、その実態は全くわからないであろうというふうに思います。

【林委員長】 ありがとうございました。ほかに。
 野上委員、どうぞ。

【野上委員】 闘犬については、一般に公開されているもののほかに、恐らく闇の中にあるものが、かなりあるのではないかと思います。地下にある闇の部分、例えば、それがやくざの資金源とか娯楽になっているというような部分については、恐らく地方自治体の行政は把握していないので、むしろ警察関係に照会して実態を把握した方がいいのではないかというふうに思います。
 私どもの会で、行政が引き取る犬、飼い主が処分してくれと言って行政に持ち込む犬について調べたことがあるのですが、千葉県においては、平成22年度に38頭の土佐犬を引き取っています。一気に38頭ではなくて、さみだれ式に引き取っているわけです。この引き取り依頼書が、千葉県の場合は旧来のものなので書式を改めてほしいと言っているのですけれども、年齢ですとか、どういう状況で引き取ったのかということを、より詳細に点検することで、飼えなくなった闘犬が、かなりの部分行政の施設で処分されているという実態が明らかになると思います。
 それから、ある県では、土佐犬を引き取った場合に、職員も手がつけられないので、大きな犬舎には入れられないで狭いケージに入れて、しかも吹き矢で麻酔をかけて殺処分すると。それくらい行政職員も手を焼いているということがあるそうです。ですので、闇の部分について、もう少し警察等に照会をして調査していただきたいと思います。
 それからもう一つは、闘犬は攻撃性を高めるために訓練しているので、非常に人や動物に対する危害が多い、事故が多いということが挙げられます。新聞等でも、よく闘犬に襲われて人が殺されたとか、子どもやお年寄りが死んでしまったという例がありますので、動物虐待はもちろん、闘犬がほかの犬を襲うということもあるのですけれども、そのほかにも人にも危害が大きい動物なので、幾つかの自治体がやっているように、これは動物行政への登録制なりにして、実態を把握していくことが、まず先決ではないかと思います。

【林委員長】 ありがとうございました。
 今おっしゃった二つはここで論議する範囲を超えているのかなと思っていますが、一つは、闇でやっているものは、これは闘犬、闘牛に限らず、いろいろあるわけですね。それをどうするかというのは、法律で禁止しても闇というのは起こるわけですから、まず、今、野上委員がおっしゃったのは、闇の実体がここで明らかになるかどうかということは、事務局の方にお聞きしたいです。
 それともう一つ、ちょっと忘れてしまったのですが、また、ここで論議することを超えているかなという。

【野上委員】 人への危害、人身事故とかは、虐待とは別だと。

【林委員長】 そうそう。これも、闘犬、闘牛とは別に、一般家庭で飼育することが危険視されるような犬種とか、そういうものがいるのかどうかというのは、全く今までは論議してないのですけれども、そういう問題については、また別に非常に重要な論議になると思いますので、これはこれで、また別に論議すべきことかなというふうに思います。
 どうなのでしょう、これは、確かに表に出てこない闘鶏はありますが、闘牛は表に出さないわけにいかないでしょう。あれだけ大きな動物が闘うわけですから。表にでない闘犬とか闘鶏などは、私の知っている限りあるのですが、そういうのは情報として手に入りますか。難しいのではないですかね。どうでしょう。ちょっと考えておいてください。
 どうぞ、山口委員。

【山口委員】 警察で、賭博の方で調べていっていただければ、少しは引っ掛かってくるものがあるのではと思います。
 それから、闇に隠れた話をずっと今やっているのですが、一応、委員限りの資料の中にも闘犬は、こことこことここでやられていますという一覧表がありました。そこは見に行こうと思えば、別に闇ではありませんので見に行っていただけるのですよね。ぜひ、そういうところには、一度見に行っていただけたらおわかりになると思います。このお写真をいただきました闘犬センターは、観光ですけれども、皆さんが見に行ける場所でやっている闘犬では、もちろんルールがあるところもあるのですけれども、ほとんど血が流れております。血が流れないことはないと思います。周りの柵のところにも血が飛んできて、必ずついていたりしています。獣医師会の先生方の中には、そこに行くことを拒む先生方もたくさんいらっしゃって、特定の先生がそこで治療をなさったりと。中には、全然そういう獣医師の立ち会いも何もないところがあったりということもあります。ここに挙がっていない地域で行われているそれは、子どもの通学路の横にある公園でやっていて、洗い場のところまで血が点々としているのが、そのまま残されているところとかもあるわけです。ですから、一般の方が堂々と見に行けるところでも、血が流れないことはないと。そして、のど元にかみついて押さえ込むというのが普通ですので、そういうことが常時行われているということは頭に置いていただけたらなというふうに思います。

【林委員長】 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。
 どうぞ、渡辺委員。

【渡辺委員】 今朝ほど、動物取扱業のときにヒアリングにいらしていただいた茨城のセンターの方からお電話をいただいたのですけれども、やはり年間20頭ぐらい、土佐犬の遺棄があるということでした。それから、放浪犬の捕獲もしているということでした。捕獲したもの、本当にやせ細ってがりがりで、多分、飲まず食わずで何日間も放浪していたのであろうという状態だったとのことです。野上委員もおっしゃいましたように、人的被害のこともありますし、どうにか、飼育しているところとか、闘犬を開催しているところを動物取扱業に含めて管理するなり、全面的に禁止してほしいということでした。
 あと、今日は、闘犬の関係者の方がヒアリングにいらっしゃるということで、いろいろお聞きしたいことがありましたので残念です。また、例えばお祭りとかで牛や馬といった動物が使われることに関して、文化と言われればどうなのだろうかと、よく考えてみました。文化というのは、時代とともに変わっていくものですし、変わっていくべきだと思います。現に、ブラジルの牛を傷つけるようなお祭りとか、スペインの闘牛でも、カタルーニャ自治州では、もう禁止になりました。やはり、そういう例を私たちは踏まえて、しっかり前向きに皆さんでご検討いただけたらと思います。
 以上です。

【林委員長】 ありがとうございました。ほかにご意見は。
 打越委員、どうぞ。

【打越委員】 私は闘犬を見たいとも全く思わないタイプの人間なのですけれども、何がおもしろいのかも全くわからないと思うタイプの人間なのですけれども、闘犬をやらせて血が出ないことはないという、山口委員のお話だったのですが、全く出ないのですか?

【林委員長】 血が出る闘犬もあるとおっしゃった。出ない闘犬もあるけれども。

【打越委員】 でも結構血が見られるのが通常だというようなお話で、全くレベルの違う話なのですが、我々人間同士でも、例えばボクシングとか格闘技であるとか、ああいったものの試合が行われれば、テレビで血を見ないことはまずないようなものが放送されていますね。闘犬については、人間が、そのように品種をつくって、そういうことをしているということ自体が残酷であるといえば大変に残酷なのですが、しかし、そういった格闘を見る人たち、それをまた好む人たちがいるというのも、人間でさえそうであるということを考えたときに、何が残酷であるのかという定義が非常に難しいという悩みを感じます。ただ、何度も言うとおり、私は見たいとは全く思わないのですけれども。
 それで、まず、闘犬、闘牛の残虐とは何かというのが難しいなというふうに思っているのと、一つ、今、渡辺委員がおっしゃった、主催団体等を法の枠の中に入れてほしいというような意見があったというような話があるのですけれども、この資料の別添5、委員限りというふうにはなっているのですけれども、全国で闘犬、闘牛等が行われていることについての調査の一覧を見ると、例えば、参加者はどんな人たちが来るとか、動物を飼っているのはだれだとかいうのは書いてあるのですけれども、例えば主催団体は何という団体かとか、そういうリストがないのですよね。一覧に載っているのは、例えば都道府県、市町村、場所ですよね。場所から大会の名称と書いてあって、何とか大会という名前は書いてある。その横に、実施者と書いてあるのですけれども、実施者はその他の団体とか、地域住民の団体としか書いてないわけですね。だから、もし、私たちがやれることがあるならば、つまり、ここなのかなと。闘犬、闘牛が残虐か否かということを議論するのもそうなのですけれども、やはり実施しているなら正々堂々と実施してもらえるだけの、ちゃんとルールまでつくっている団体もあるようですから、正々堂々とやってもらうためには、実施団体がきちんと名前が表に出てくるように。それから、それが場合によっては動物を取り扱う、ペットのオークションを業者に入れていこうというような話があったと思いますけれども、同じように、大会の開催者も取扱業者に入れていくような。そうすることで、クリアにやっているものはある程度認めるというような、そういう仕掛けはできないかと思いました。

【林委員長】 ありがとうございます。ほかに、まずはご意見。
 どうぞ、山﨑委員。

【山﨑委員】 今、打越委員がおっしゃったものの延長線上で考えるとしたら、これは動物の愛護と管理に関する法律ですから、管理の仕方を明記するということは十分に可能であって、これをペット業者に対してやるのであれば、闘犬業者であろうとも、それから伝統の神事であろうとも、何であろうとも、例えば傷病動物を放置することは絶対認めないとか、しっかりとした獣医師のカルテを提供しなければいけないとか、そういった管理を義務づけていくことは、この法律で十分にできることだと思うのです。
 先ほど、だれがやっているか明確ではない、見物者とか、こういう方はわかるけれどと打越委員がおっしゃいましたけれども、ご参考までに、闘犬、闘牛、動物を闘わせることを最も早くに禁止している国というのは英国とアメリカで、1800年代に、既に闘鶏を含めて動物を闘わせることを禁止する法律を作っています。今現在アメリカでは、全50州でほぼ禁止されている状況になっていますが、その50州の中では、見物客も同罪、いわゆる軽犯罪ではなく、重犯罪として扱っているところもあります。見物していた人間も全員、警察が踏み込んだら逮捕されるというような状況になっています。統計がなかなかとれないから難しいということは理解できますが例えば、これはすぐには無理だとしても、法律で何らかの規制をすることができれば、それを背負って行政は現場に入っていかれるわけです。法律がなければ統計もとれないし、現場の現状を見るということも不可能だと思います。

【林委員長】 ほかにご意見、よろしいですか。
 どうぞ、青木委員。

【青木委員】 この動物闘争の問題を虐待罪の中でどう考えるかというのは、恐らく比較法的に見てもとても難しい問題だと思います。山﨑委員がおっしゃったように、非常に強く動物福祉の観点から禁止を原理的に貫くと、こういう立法例があることもご説明のあったとおりだと思います。その一方、例えば、日本の旧法ですね、動管法時代の国会の審議録には、土佐出身の議員の方が、たしか闘犬は含まれませんよねというようなことをご発言になっていて、間接的ながら、最初に動管法で動物虐待罪を作ったときは、国会議員の意識は、これは立法者意思と言っていいのかどうか微妙な問題なのですが、入っていないという理解であったと。それから時代が大分変わって、現在我々が持っている現行法のところまで動物福祉の配慮が進んできたときに、果たしてその認識をどうするのかという非常に苦しい問題なわけです。
 そして、例えばフランスの例は、やはり折衷策をとっております。フランスにも南西地方には、ずっとスペイン風の闘牛がありました。それから、北フランスには闘鶏があるのですね。現行フランス刑法は、20世紀の後半に、「その地方の伝統が途切れず続いている」ということを条件に、闘牛と闘鶏は明示的に動物虐待に当たらないという規定を刑法典の中に持っているのです。ただし、新しく始めるのは犯罪なのですね。その地方、原文では「ロカール」という形容詞が使われておりますが、その地方の伝統が途切れず続いているという条件で、一部例外的に原理を修正する。だから、論理的には矛盾するものを含んだ形でやっているのです。こういう立法例もありますということをご紹介したいと思います。
 以上です。

【林委員長】 ありがとうございました。確かに非常に残酷な例があります。スペインの闘牛は、ちょっと日本では当てはまらない形ですが、日本では、基本的には動物同士を闘わせるものです。確かに動物愛護からの観点から見て、目を覆いたくなるようなものが実際的にはある。一方で、これは私個人の意見ですけれども、文化として残したいと思うのも間違いなくあるのですが、その一つの解決方法としては、先ほど打越委員がおっしゃったような方法があり得るかどうか。つまり、主催者がだれで、試合を行う場合には獣医師の立ち会いのもとであるとか、そういった幾つかのきちんとしたことが、これは山﨑委員がおっしゃったのですかね、動愛法の下で今後考えられないかと思うのですが、いかがでしょう、ほかに追加のご意見はありますか。
 よろしければ、今日の論議はここまでにしたいと思います。
 それでは、続きまして、多頭飼育の問題、管理をしないネグレクトの問題について、動物の虐待防止という観点からどのように対応するのかについて、ご意見を頂きます。まず打越委員から。

【打越委員】 まず、予習してきて思ったのが、この平成22年2月5日付の環境省から各自治体への通知、この例示の部分が非常に立派というか、わかりやすいというふうに私は思いました。例えば、水入れに藻がついているとか、えさが固まっているとか、非常に具体的ではっきりしている。また、ふん尿がすさまじくてアンモニア臭がひどいとか書いてあって、平成22年ですから法改正の間ですので、通知という形でしか環境省としては出せなかったと思うのですけれども、この通知の内容を、例えば政令とか細かい規則のところまで格上げしてもいいのではないかなというふうに私は思います。あまり政令とか規則が詳細になってくるというのは、もう条文が長々するというのはちょっと読む方としてみれば煩わしいところだと思うのですが、単なる通知にしておくにはもったいないかと思います。
 それがまず1点目で、もう一つは、自治体職員の立ち入りの強制権がないという話、これまでも何度か発言してきたところです。立ち入りの強制権がない、それから、いざという場合に所有権の壁があって、押収するというか緊急避難的に保護することができないというような問題、私の中では、立ち入りの強制権限と、それから所有権剥奪というか押収するような形のものを、そろそろ行政に権限を付与したいというふうに強く思うのです。しかし一方で、自治体の現場職員の、非常に必死になって、問題のある飼い主を説得するために足しげく通って、その人のメンタルにもつき合いながら何とか説得を続けているという、良心のある職員がそういう形で仕事を続けてきたというノウハウが蓄積し始めているということを思うと、ここで法制度的に立ち入りの強制権限等を、押収のような力を与えたいと思うのですけれども、それが現場のノウハウに合うのかどうかというのが非常に気になるところです。

【林委員長】 これまでの論議の中にも出てきましたけれども、相当な負担になるかもしれない恐れのあることですから、斉藤委員、いかがでしょう、自治体の立場から見られて、司法権まで行くかどうかはともかく、立ち入りなど、警察権に近い業務を自治体の負担としてどうお考えになられるかをお話し下さい。

【斉藤委員】 今までも、いろいろな議論があったかと思いますけれども、実際に私たちがやっている中で、例えば、法の中で、この前もちょっと申し上げたと思いますけれども、動物愛護管理法の中で立ち入りができない家庭での飼育から発生する問題だとか、そういう部分については、各自治体、長野県でいえば条例があって、家庭でも届出の有無にかかわらず、問題があった場合には現場へ立ち入ることができるということになった。拒絶すると罰金もありますということに。それで措置命令をかけて罰金までいけるということは、流れとしてはあります。ですから、それに基づいて指導をしながら、今までも来ているということになります。
 司法警察権というのは、実際に私たちも経験をしておりません。保健所では、薬事の関係が一部ありまして、これは、各保健所にいるのではなくて、県庁の中に、確か薬事の関係は一人、二人ですか、その司法の関係の方が、県の職員ですけれども、おります。何かあったら現場に行くという体制になっています。この動物愛護の関係でも、各保健所というよりも、県の中に、そういう担当の者がいて、かなり法律的な理解をその中で得て、実際に行くということは可能ではないかと思います。
 それから、そのときには、先ほど、ただ立ち入りする、指導するのではなくて、例えば飼育禁止にするとか、それから例えば動物を強制的といいますか、ある程度収容することができて、たしか英国の中には、何か所有権を放棄させるようなことも、どこかに書いてあったかと思いますけれども、ある程度、そういうことができる体制が整えば、可能ではないかと思います。

【林委員長】 ありがとうございました。私の個人の経験ですけれども、今から20年ほど前、奄美大島でハブの研究をしていたときに、鹿児島県の薬事課の方が司法警察権を持っておられて、結構大変なのですね。例えば、その方は、鹿児島県庁の職員ですけれども、こういう担当になると、銃を撃つ練習までもされますから、結構負担が増えるのですが、お手元の別添12に司法警察員について簡単にまとめたものがありますけれども、これで見る限り、平成16年までに1,000名以上の方が司法警察員に指名されているわけですね。これは県庁の職員の方が、ほとんどです。ただ、平成16年1年間だけ見ますと、警察への告発件数は1件だけなので、そんな負担にはなっていないかもしれません。しかし、これが動物虐待防止ということになってくると、圧倒的に仕事が増えるのではないかという気がするのですが、これまでの方たちの今の活動とは全然違う形になるのではないかなという気がしますね。  打越委員、どうぞ。

【打越委員】 多分、自治体の現場というのは、仕事の量が急に増えることが大変というよりも、仕事の考え方とか基準とかが大幅に変わるというのは、自分たちの判断の根拠が混乱するのでつらいのではないかなと思うのですね。単に業務が増えるだけだったら根性を出せば何とかなるけれども、考え方が大幅に転換するというのが一番大変なのだと思うのです。ただ、斉藤委員が非常に勇気を持っておっしゃってくださったとおり、そういう仕組みが整ってくれば決して不可能なことではないというようなお話でしたので、多分、今回の法改正でいきなり司法権限云々という話のところまでは持っていけないかもしれないですが、それこそ5年後にはというふうにして、5年後には仕事のやり方が変わってくる。今までだったら、例えば多頭飼育している人たちのところに、あまり強制的にこじあけないで、相手の話を聞きながら信頼関係を作りながら何とかするというスタイルだったけれども、そういった形で、ある程度行政が強制的な権限を持ち始める、そうなった場合には、どんな仕事ぶりになるか、周りの住民との連携とかもどうなってくるかというのを、各自治体は真剣に考えるような準備を始めていいのではないか。そうした準備の検討会ならば、今始めてよいのではないかと思います。

【林委員長】 水越委員、どうぞ。

【水越委員】 似ているのですけれども、ちょっと違うので発言させていただきます。
 今、多頭ということで、斉藤委員も打越委員もお話をされていましたけれども、例えば虐待というのは多頭飼いのネグレクトだけではなくて、1頭、2頭でもネグレクトというのは起こります。ですので、斉藤委員が、先ほど条例で何とかなる、ほとんど、今の条例というのは10頭以上の飼育者に対して届出をするようにということで、10頭以上では条例があるところでは何とかなっていると思うのですけれども、やはり、頭数が少なくても、そういうことは起こり得るので、そういうことを考えると、やはり立ち入りの権限であるとかというのは付与するという方向には、私は持っていくことに賛成です。

【林委員長】 野上委員、どうぞ。

【野上委員】 現在の法律では、罰則が、みだりな殺傷については懲役1年で、みだりな飼育怠慢については罰金50万というふうに差がつけられていますが、私は、これはあまり適切ではないのではないかと思っています。というのは、みだりに給餌、給水を怠っていれば、まず最初に改善の指導を受けるわけですね。それにもかかわらず、全く改善されずネグレクト状態がずっと続いていくということは、もう意図的にやっているわけです。これは、ある意味1回限りで殺すよりは、何日、何カ月も苦痛を与え続けるという行為なので、それについては現在の罰則は弱過ぎるのではないかというふうに思います。ですので、飼育怠慢については、繰り返し行う場合には、既にもう意図的であるという判断が必要ではないかと思うわけです。
 それから司法警察権の件ですけれども、これはぜひ付与していただきたいと思います。例えば、鳥獣保護員は、鳥獣保護行政では司法警察権があるわけですけれども、実質、行政の担当者に聞きますと、2年くらいで、もう交代してしまうので、なかなか専門的にやれないということをおっしゃっていました。そういう問題はあるにしても、やはり、動物愛護担当職員を専門職として設置して、いろいろな問題について、専門家としてアドバイスもできたり、あるいは警察と連携していろいろな活動ができるというふうにしていくことは、動物行政の力を今後強めていくことになるはずです。ですので、動物愛護担当職員に司法警察権を付与するということを、ぜひ進めていただきたいと思います。

【林委員長】 ありがとうございました。ネグレクトの次に殺傷の問題もお話ししようと思っていたのですが、それは別に分けなくてもかまいません。今、野上委員は、ネグレクトは殺傷に等しいくらいの動物虐待であるという、そういう観点でお話しくださいました。どちらからでも結構です。
 どうぞ、山口委員。

【山口委員】 私も、ネグレクトは、殺傷にも劣らない虐待であるとは思います。死に至る前に、できるだけ早い段階で入って指導できるための何か仕組みができないかというふうに思うのです。その入るための基準をつくらないと、もう死に近くなってから入っても、その動物の予後は、不良になってしまいますので、できるだけ早いうちに踏み込んで、早期介入、早期改善できるような仕組みを、やはり法律の中で、細かい仕組みは法律の中で全部うたえないと思いますけれども、その窓口を法律に入れておいて、それに連なるものを、細かい部分をガイドライン等、法律に直結した部分で作っていただけたら、それは改善、指導にもつながりますので。職員が今だと、私が飼っているのだから放っておいてと言われると飼い主に対してものが言えなくなる。多頭飼育であれ、1頭飼っている人であれ、できるような仕組みを、作っていただけたらなと思います。

【林委員長】 ありがとうございました。今お話ししていることは、幼児虐待に非常に通じるところなのですが、幼児虐待は、今全体的にどんな進行になっているか、どなたかご存じですか。大きな社会問題にもなっているわけですけれども、幼児虐待には二つ、やっぱりありまして、ネグレクトも、これ相当大きな虐待ですし、殺傷もありますか。
 どうぞ。

【山崎委員】 専門家ではないのですけれども、知り合いにそういった調査をしている方もいていますし、連絡会では、そういった方々をお呼びしてシンポジウムをやっていただいています。我々が聞き及ぶところによると、動物の行政と全く同じで、例えば専門職の数が足りない、またいわゆる児童相談所のようなところにいる人たちが、どんどん変わってしまう、なかなか定着をしないということ、それからやはり親権が強い。というような難題がここにもあるようです。今は、いわゆる強制引き離しができるようになっていますけれど、実際問題として、親御さんが事態が改善したのでと言って迎えに来られたら、法律的にはなかなか親権には太刀打ちできないようです。帰したところ虐待死をしてしまったというような事件というのが相次いでしまうということで、非常に動物と似ている要素があると思います。どうしても後手後手になってしまうということですね。
 そういう中で、今、先ほど打越委員がおっしゃったように、この法改正で、例えば、いきなり、では多頭飼育に関して、ここまで策をしましょうとか、取り上げられるようにしましょうというのは多分非常に難しいと思うのですが、斉藤委員がシステムを作ってくれれば何とか動ける体制に県の職員の方々がなってきているというようであれば、中長期的な目標を持って改善の策というものの様々な事例を検討するべきでしょう。例えば予算をどこから持ってくるかなどの検討を、やはりかなり迅速に始めていく時期が来たのではないかなと思います。 特に、今、各自治体は金銭的には非常に大変な思いをされています。国家自体がそうですから。そうしますと、取り上げたところで、それでどうするのということになります。ですから、例えば一つのやり方としては、取り上げるのではなくて、とりあえず児童と同じように引き離すということが必要であるということが法律的に書いてあれば引き離すことはできます。引き離したときの飼養管理費用は、所有権を持っているものが、その裁判なりの係争が終わるまでは払わなければならないことにする。そういう処置をするという事例は海外にはございます。そうすると、実際に例えばたくさん飼っていれば、そのお金が裁判が終わるまで何カ月も自分が払わなければならないとなったら相当大変なので所有権をもう放棄しますという人も出てくるでしょう。もちろんそうでなければそれを払わせることもできるわけです。
そういった、具体的に何をするのかということをやっていかないと、恐らくペーパー上、こうしてはだめだよ、ああしてはだめだよ、罰金があるよというだけでは、物事は解決しないのではないかなというふうに思っています。

【打越委員】 今、山﨑委員から親権の話が出ましたけれども、やはりこの犬・猫の所有権の壁を乗り越えるというのが、大きな課題になってくるというふうに思うのですけれども。ただ、多くの自治体の担当職員なども、何だかんだ言って所有権は飼い主にあるからね、法律上、太刀打ちできないんだよと言うのですけれど、実際に非常に劣悪な環境で保管されている犬や猫を緊急的に避難してきたというのが、最終的に自治体側が法律的に負けるか負けないかは、裁判にならなければわからないので、文句があるんだったら所有者は裁判を起こしてみろと。それで、たとえ自治体の側が緊急保護をしようとしたことで、負けるような判決が出たとしても、それは決して自治体側の不名誉ではないと思うんですよね。
日本は訴訟になるということを非常に恐れるわけですが、ただ、自治体の担当職員から見れば、上に上司がいて、最終的には知事とか市長がいる中で、勝手にやってうちの自治体が負けたなんて言ったら、お前、何て恥をかかせたんだというような話になるでしょうから、そう簡単に法律云々という話にできないと思うのですけれども、でも、法律の壁があって法的にはかなわないんですよねというのは、実は、私は言い逃れではないかと。本当に本気ならば、裁判官だって、非常に劣悪な状況で飼われている犬や猫を緊急避難したところで、それを有罪だとはなかなか言えないんじゃないかと思うので。本当の法的決着というのは、そこまで持ってこなければわからないはずで、法律的に無理ですよねというような言い逃れをするのは、もう、そろそろやめましょうと、私はそう思います。

【林委員長】 ほかに、いかがでしょう。

【小方委員】 獣医師の立場から、経験も交えて申し上げますと、このネグレクトあるいは虐待の、動物を飼っている方の多様性、その中に、いわゆる社会ルールから逸脱した人、社会ルールを守らない人、こういった人が少なからずいると。この人の場合には、先ほど出ましたような、例えば司法警察みたいな、そういったニュアンスのものが必要な部分が出てくるんじゃないかと。そんなに決して多くないと思いますけれども、これからのご時世、多くなるのかもしれない。
 もう一つは、今度は飼っている方で精神的にいろいろ問題を抱えた方もおいでのようです。この方の場合も、我々として非常に対応するにもしづらい。これは、今度、警察とはまた別の部分だと思うんですね。こういった方もおいでだということを、これが現実だということで、どこかで参考意見としていただければと思います。

【林委員長】 渡辺委員、どうぞ。

【渡辺委員】 前回の会議の時に、資料として写真を何枚か出させていただきました。あれは、多頭飼育と、それからネグレクトの現場の写真でして、集合住宅と23区内で起きていたことです。
つまり、それは地域の人たちの目によって発見されたものでした。先ほど山口委員がおっしゃったように、動物を守るためにはその虐待の予防ができる段階で何とかするということが重要で、それには、やはり地域の目が非常に有効だと思います。子どもの虐待を見つけるのも、やはり地域の目が必要ですよね。そういう意味でも、動物愛護推進員とか、動物愛護担当職員のお力をお借りして、そして、自治体職員との連携がスムーズにいくような仕組みづくりを考えていただきたいと思います。そうすることによって、斉藤委員のような、非常に努力を重ねていらっしゃる自治体の力になれる、サポートになれると思います。
それからもう一つは、警察の方でも、動物愛護管理法をご存じない方がたくさんいらっしゃいます。環境省がつくってくださった資料や、遺棄・虐待事例等調査報告書、これを一冊全部読みなさいというのは無理かもしれませんけれども、こういう例が虐待として認められており、それは立派な犯罪であって、罰金もあるということの周知徹底をお願いしたいと思います。

【山﨑委員】 先ほど、制度のことを申し上げましたけれども、もう一つ、ちょっと制度的な今後の配慮を。  山口委員がおっしゃっていた予防的な措置にですが、例えば多頭飼育のかなりひどい現場でも、これはいいか悪いかという価値判断は別として、近隣の愛護団体の方のお助けの手が入りまして、たくさんフードが届いてしまって、実際に現場に行くと、犬や猫は結構丸々していたりするという事例もあったりするわけですね。何百頭飼っていて、相当臭かったりしても、そこで、じゃあ、虐待しているのか、この子たちは非常にひどい状態なのかというところに疑問がわいてしまうと、なかなか自治体が踏み込めなくなったり、周りの方々の判断が鈍ったりしてしまうのです。
 ですから、そうであっても、この飼い方は適正な飼い方ではなく、将来的に虐待につながるよというような予防的な文言が何らかの形で法律に入るということは、非常に大切なことだと思います。
 それから、今、渡辺委員がおっしゃった警察機構の方が法律を知らないというのは、これは非常に大きな足かせになっています。児童虐待の方も、例えば学校の先生等が、その内容や報告義務のことを知っているかというと、何年か前に朝日新聞でアンケート調査をしたら、小学校の先生の3割ぐらいが知らなかったという悲しい結果が出ております。これに関しては、やはりどうやって徹底するかという警察機構の教育の中で、何らかの形で交渉ができないかと考えてしまいます。
 私事ですけれども、私の兄は日本国籍ですが、コロラド州のマウンテッド・レンジャーズという民間の資格を持っております。普通の会社員なのですが民間のPKOができるアメリカというのは非常に自由な国なのです。そのマウンテッド・レンジャーズの資格を取るための講習会をずっと受け、銃を撃ったりという講習会も全部受けていた中で、1こま、動物虐待防止法の講座というのが入っているのです。必ずそういった法の執行官をやる人間は、それを知らなければいけないという、そういう教育が行われているということだと思います。日本はこれからどうするかということを考えるべきでしょう。そういった援護射撃がなければ、今後はいろいろな意味で太刀打ちできない現場というのがますます増えてくると思います。

【林委員長】 ありがとうございました。
 私の方から、青木委員、あるいは打越委員にお聞きしたいのですけれども、私は、動物をある程度知っている者として、殺傷、目に見えるような虐待と、それからネグレクト、どちらが重いかといえば、本当に同じぐらい重いと思うんです。むしろ、長時間にわたって辛い状況に置いておくということの残虐さというのは、ひょっとしたら殺傷を上回るんじゃないかと思うのですが、それは野上委員がおっしゃったそのとおりなのですけれども、法律で、それはやっぱりなかなか普通の人は見えにくい状態ですね。水を飲ませないとかえさをやらないというのは、あばら骨が見えているとか、いろいろなことでわかりますけれども、それがかなり同じ程度だということは、割と法律的に受け入れられやすいことなのかどうか、それが一つ目。
 二つ目は、確かに予防的な措置というのは非常に重要なのですけれども、予防が過ぎると、警察国家みたいになっちゃって、昔の、お互いがお互いを見張るような、非常に暗い社会になってしまうのではないかという危惧もあるのですが、ほかの、例えば幼児虐待等との比較も含めて、これは法律的にどこまで可能なものなのか、その辺を教えていただければと思いますが。

【打越委員】 まず、一つ目の、殺傷とネグレクトは法的に同列かというご質問ですけれども、それは逆に法学者が答えるとは限らないような問題で、やはり社会的な価値観の問題だと思うのです。ただ、多分、この後、座長は殺傷事件のような虐待に関わる議論の場を設けてくださると思うのですけれども、殺傷の場合とネグレクトの場合と、やっぱりいろいろ変わってくるかなと。例えば殺傷の場合には、その残虐性が社会的に非常に精神的なダメージを与えるとか、それぞれ許されないと思われる根拠が、社会的価値観の中で幾つも違うものがあると思います。でも、そのレベルは同列だという価値観が根付いているのであれば、同列に扱っても良いと思います。
 もう一つの方の、監視社会になるのではないかという不安も、まさに行政学の専門分野ですので、申し上げます。例えば防犯とか治安維持に関するような分野でも、この議論は最もなされるところであります。例えば監視カメラの設置をどう考えるかとか、監視カメラの形にしないで住民の防犯パトロールをむしろ機能強化すべきではないかという議論が出てきたり、あるいは、犯罪多発地域を情報公開するかどうか。ここは犯罪が多い地域ですよというふうにマップにして公開すれば、そのエリアの地価が下がったりとか、あるいはやはりイメージが悪くなるのでよしてくれとか、そういう形で、犯罪の分野でそういった議論はよくなされています。
 つまり、監視社会云々という話なのですけれども、これもまた、右から左までいろいろな議論があるところだと思います。ただ、昔は地域の目があった。もっと個人主義化が進まないで、地域の住民同士で見張り合うというような。だから、犯罪の場合にも、あれ、見ず知らずの人がこのエリアに入ってくるのは変だわというような地域の目があって、だからこそ、行政の公的な権力が監視をしなくても治安が保たれていたというのがあると思います。
 ところが、現在は非常に個人主義化が進んで、地縁組織というのが崩壊し始めている状況なんですね。本当ならば地域の力を取り戻すべきだと私は思いますし、「ご近所の底力」という番組が評価されるのは、そういうところですね。ただ、その地域の目が弱まっている中で、治安、防犯、守るというような話になってくると、そこに監視とか権力という手段がどうしても必要になってくるというところで、その結果、監視カメラの設置などが条例でちゃんと通って設置されるようなことがあると思います。
 ですので、犬・猫の話に戻りますと、権限を与えて、監視で公権力が強くなり過ぎるのではないかというのは、それはすなわち地域社会の力が落ちているということですが、それをきちんと自治体が条例等で、あるいはそれを支えるような形の議論を法律上でつくっていくのであれば、それが新しい見張りの目になっていくのではないかと思います。

【林委員長】 ありがとうございました。
 青木委員は、いかがですか。

【青木委員】 第44条の1項と2項の関係と、法律の条文に即して言うとそういうふうになると思います。そして、確かにこの1項と2項の関係は、なかなか整理しづらいと思っています。これは特別法上の犯罪類型ですから、当然刑法総則という、もっと一般法に当たるものが全部適用されるわけですが、基本的に過失を処罰すると書いていない限りは、犯罪類型としてはすべて故意犯しか処罰できないと、こういう原則になるわけです。
 ですから、1項は殺し傷つけるという故意をもって殺し傷つけたものと、うるさく言うとそういうことになります。その時に、例えば最初から動物を衰弱させて弱らせるという確定的な故意を持って、えさを与えずにおいて実際に衰弱させたというような仮想の事例を考えますと、それが1項にいう傷つけたなのか、2項にいうネグレクト的な虐待なのかというのは、微妙な問題のような気がします。
 例えば不作為犯と法律上言いますが、あるいはもうちょっと正確に言うと不真正不作為犯というのですが、法律の条文自体は作為の形態で規定されているけれども、実際の実行形態が不作為によって行われるものを、一定限度処罰するんですね、人間に対する犯罪の場合。そこを考えると、先ほど言ったような仮想事例の場合は、1項で起訴されてもそんなに不自然ではないという気がします。
 だから、そういう感覚で言えば、先ほどどなたか委員がおっしゃられた、実際に衰弱をさせるというようなことを、仮に確定的な故意を持ってやっている場合は、結果的に傷害と同じような結果が生じるので同じように処罰してもいいという感覚は、法律上別に不思議なことはないと思いますね。
 だから、1項と2項の関係をどう考えるかは、立法技術上、難しくて、議論が錯綜してしまうところがあります。
 ついでに、一つ申し上げたいと思うのですが、その原因の一つは、2項に虐待というふうに書いてありますが、虐待という言葉は広義と狭義の二つの使い方で使われるんですね。例えば、今日配付された資料1の現状というところを見ると、同条第1項はみだりな殺傷による虐待、第2項は何々等の虐待ということで、44条の1項も2項も虐待罪の中の犯罪類型の違いであると、こういう広義の使われ方がされています。
 ただ、その一方、44条1項には虐待という言葉が入っていないものですから、この、どの項に当たる犯罪なのかということを議論するときに、虐待罪に当たるといったときは、2項に当たる犯罪だとせざるを得ないんですね。しかも、さらに悪いことに、虐待という一般用語で、典型的に我々が念頭に置くのは、当然、作為による殺すとか殴るとか蹴るとか傷つけるとか、1項側の問題が真っ先に頭に浮かんで、それに周辺的なネグレクト的なものも付属して、広く虐待なんだとイメージされます。こういう中で、2項は、虐待という強い言葉を使っていながら、実は中心的に我々が真っ先に念頭に社会的に置く殺傷を除いているという違和感があります。先ほど来の社会問題として、今、どうなのかという問題と、法律の立法技術をどうすり合わせるかと。実際、多くの人にこれを知ってもらう必要があるということについては、皆さん、何度もおっしゃっているとおりだと思うんですが、わかりにくい法律は、知らせようにもなかなか知らせづらいということもあるので、そういう観点も必要かなと思います。
 警察国家云々のことに関しては、打越委員がおっしゃられたので、私は省略します。以上です。

【林委員長】 ありがとうございました。この後、殺傷と、それから、また虐待の定義について、少し論議していただこうと思っていますが、それも含めてお答えいただきまして、ありがとうございました。
 いかがでしょう。これまでにかなりいろいろなご意見を出していただいていますが、これまでの流れのお話の続きでもいいですし、また、最後の虐待の定義についてでも、これ今日は恐らく結論は出ないかもしれませんが、いろいろなご意見を頂きたいと思います。

【山﨑委員】 今、青木委員がおっしゃったことに対して、ちょっと私も青木委員にご質問をさせていただきたいのですけれども、この文言を直すとしたら、どういうふうにできるかという点です。英国法だとオミッションとコミッションになっているんですよね。そうすると、これをやると虐待、それがコミッション。オミッションはこれをやらないと虐待という、オミッションとコミッションの文言を日本の法律にうまく入れていくとしたら、どんな文言というのが考えられるのでしょうか。

【青木委員】 今すぐこの場で即答するのは、なかなか難しい質問で、むしろ法務省の立法等に関わっている方や、法制局の方等のアドバイスが必要かと思いますが、確かに書きぶりをどうするかというのは難しくて、できれば先ほど私が申し上げたような、不真正不作為犯のように、法律上は作為の形式で規定されているけれど、実際のやり方は不作為によって行うというのは、そういうのはなければない方がいいんですね。それだったら、作為も不作為も最初から両方書いておけばいいわけです。不作為についてはたとえば放置して傷つけるとかすればいい。あるいは動物に生理的な障害を与えるという結果だけを書くとか。でもそうすると、今度は行為類型が明確かどうかという問題がでてきます。こういったいろいろな観点が恐らくその書きぶりには影響してくるんです。
 山﨑委員がせっかく話を私に振ってくださったので、今まで一度もこの委員会で出たことのない議論ですけれども、いい法律にしようという観点でひとつ申し上げます。法律学立場からこの条文を見たときに気づく問題は、1項の「みだりに殺す又は傷つける」というのが、それ自体が非常に不明確だということです。その不明確さは、我々の委員会で問題にしている時は、不明確だから被疑者を起訴できないとか、あるいは逮捕できないと、こういう文脈で不明確さが問題になっているんですが、例えば憲法学者などがこれをご覧になったら、このような不明確な条文で国民を処罰するということが、罪刑法定主義上許されるかと、こういう疑問が出てくると思うんです。今まで、起訴事例もあまりないから、被告人がこの条文は憲法違反だなんて争ったケースは多分ないんですけれども、かりに将来弁護士さんが頑張って、例えば憲法問題にしたとき、この「みだりに殺傷」というのが刑罰法規として十分な明確性を備えているかということも、ちょっと問題になると思いますね。特に、「みだりに」というところです。そこのところを明確にしようとすると、やっぱり殺し方、傷つけ方の様々な手段をなるべく細かく書くということが必要になってくるということです。
 委員会で論点にならなければ、別にあえてそこまで議論する必要はないかもしれませんが、そういう論点も、多分この条文についてはあります。以上です。

【林委員長】 そうしたら、渡辺委員、野上委員、そして打越委員。

【渡辺委員】 前の会議のときにも何度か出たと思うのですけれども、やはり飼育禁止という措置を、どうしてもあきらめ切れません。山﨑委員がおっしゃった、ホーダーは100%繰り返す、ということがあります。それからやはり、どうしても動物を飼う能力のない人というのは、いるようなのです。ですので、飼育禁止は、前、青木委員が、日本は刑法だから難しいというふうにおっしゃいましたけれども、例えばストーカー法の何メートル以内に近づいてはいけないとか、風俗営業法の何時以降は営業してはいけないというような、そういう特別な何か裏技はないでしょうか。お願いします。

【林委員長】 まず、皆さんからお話を聞いていただいてから、お答え頂きましょう。
と2項の問題ですが、以前の動管法では第1項しかありませんでしたが、その後、多頭飼育問題が非常に社会問題化して、飼育怠慢に対して何ら処罰されないのはおかしいではないか、死に至らなくても、病死とか衰弱させること自体も罰するべきではないかという世論が物すごく高まったわけですね。それで、議員立法で改正されたときに、この第2項が新たに入ったわけです。
 私どもの会でも、何件かそのような飼育怠慢による動物虐待を告発しているのですが、多頭飼育者を告発した事例では、警察は告発状さえ受理しませんでした。現場に死体が転がっていたのですけれども、これは病死であるかもしれないと。病死というものは、虐待の結果であるかどうかは判定できない。死にかけているのであれば、明らかに虐待と認定できるが、死んでしまった場合には虐待とは判定できないというようなことをいろいろ言われまして、結局、この事件は、ごみ屋敷だったので廃棄物処理法でご本人が逮捕されたという結果になっています。
 そういう事例が幾つかありまして、飼育怠慢についてもう少し明確にしていかなければいけないのではないかという話の結果として、この条文ができたわけです。しかし、この第1項と2項の切り分けにおいてもまだ不十分で、この中に入り切れない虐待のケースが幾つかあるわけです。ですので、これはその後の虐待の定義の中で申し上げたいというふうに思います。以上です。

【打越委員】 虐待の定義の話なのですけれども、法律の話が今ちょうど出ているところなので、そのまま続けようと思うのですけれども。

【林委員長】 どうぞ、一緒に論議してください。

【打越委員】 今、法律の44条の1項と2項という話が出ていますけれども、動物愛護管理法では、その虐待に関するものは第44条の前に、第6章罰則で議論しているんですよね。いきなり罰則で。
 それに比べて、今日、環境省の方が用意してくれた、一番最初に見た資料の1、児童虐待の問題がパラレルだからということで、あらかじめ用意してくれていたと思うのですけれども、資料1の、ページ番号が振っていないのですけれども、4ページ目の下「4.参考法令」というところがあります。児童虐待の防止等に関する法律。これはもう、児童虐待そのものを法律のタイトルにしているわけですから、同じ法律を作ろうと思ったら、動物虐待の防止等に関する法律を作らなければならないわけですけれども、この児童虐待の防止等に関する法律では、最初に児童虐待の定義ということで条文を取り出してありまして、虐待に当たるものは、外傷が生じるような暴行を加えること、それから次のページ、わいせつな行為をすること、それから、3、発達を妨げるような、食事を与えない、その他、放置する、監護を著しく怠るというふうな形で、まず最初に定義が書いてあるわけです。多分、その定義に従って、罰則とかその後の対応というふうな法律の書きぶりになっているわけでして、そう思うと、動物愛護管理法というのは、もともと条文の少ないところからスタートしたわけですが、虐待の定義を入れるべきだと。その虐待の定義をなるべく、「みだりに」という中途半端な言葉ではなくて、きちんと位置付けていくべきだというのと、もう一つ、虐待の定義というような形で、総則のようなところに近いところにまず入れて、それで罰則があるというのがいいんじゃないかと思うんです。いきなり罰則のところに、虐待の定義とそれを一緒くたにしているのがいけないのであって、そこは条文を分けていいんじゃないかというふうに思います。

【青木委員】 打越委員と意見が同じなのか違うのか、ちょっとよくわからないですが、動物虐待罪というのは刑罰という国家強制手段の最も峻厳なものを科すわけですから、できるならば必要最小限のものであるべきだという、当然そういう謙抑的に書かなければいけないという原則があります。
 ただ、多くの、例えば愛護団体の方々は、早い段階でなるべくそういうことを予防したいと、こういう思いが強いということを、折に触れておっしゃられている。そうすると、その予防的介入をするときに、大枠として行政が動ける範囲はこういうことがあればというときの虐待と、刑罰の対象となる虐待が必ずしも同じじゃなきゃいけない理由はないような気もします。
 その辺の、行政官庁ができるときの動ける条件としての虐待と、刑罰としての虐待というのを分けるという可能性もあり得るような気がします。以上です。

【林委員長】 それでは、加隈委員、そして、先ほど野上委員が虐待の定義についてお話があるとおっしゃっていましたので次にお願いします。

【加隈委員】 先ほどの山﨑委員からのお話を伺っていて、少し重なる部分なんですけれども、現在、44条の、愛護動物は、自分が所有している動物かどうかにかかわらず、すべてのこういった動物に罰則が適用されると思うのですけれども、一部のケースでは、動物の所有者や責任者が十分世話ができていないというところがすごく問題になり、そういう人に対してはそれなりの処罰というものが求められる部分があるのかなというふうにも思いました。
 海外の法律では、最近はデューティ・オブ・ケアとか、ニーズを満たすということが、所有者・管理者の責務であって、それをしないことがそのまま法律違反になるということが入っているものが多いと思います。日本のこれまでの44条の規定の「みだりに」というところは、もともとが極端なケースというのを想定していて、それさえやらなければいいという、虐待防止がまずあったのだと思います。しかし最近の風潮としては日本であも、動物そのものの状態をよくすることが人間の責任であって、それをやらなければいけないというようになってきているのではないでしょうか。
 具体的には例えば基準を守っていない場合とかが含まれるかと思うんですけれど、そういう飼い主に関して、特に責務を果たしていないということで罰則を科すということが、スムーズにできるようにするための内容を、もう少しうまく法文の中で加味できるといいのかなと思います。
 もしかすると、現状の44条であってもできる部分もあるかもしれません。特に罰則の範囲に関しては、例えば十分に世話ができていないというのは、ものすごくまた判断が難しい部分かとは思いますけれども、検挙する場合ですとか、もし裁判になったときには裁判所の判断によって、ものすごく軽い刑罰から重いものまでというふうに振り幅ができてもいいのかなと思います。逆にそこで細かく、これはだめ、これはだめ、これはだめといって虐待の細かいケースを上げていくのは、ちょっと無理があるのかなというふうに思いました。

【林委員長】 それでは、野上委員。

【野上委員】 先ほどの「愛護動物」という言葉について、まず、言葉の定義について、それから保護の定義、虐待の定義について、意見を言いたいと思います。
 この罰則がある条文は、「愛護動物」ということになっているんですけれども、この「愛護動物」という言葉を、私は諸外国の法律のように、「保護動物」という用語に変えた方がいいのではないかという意見です。  これは、動物を愛護、つまり愛の対象という感情的なものではなくて、客観的に、動物は痛みや苦痛を感ずる生命体であるから、保護しなければいけないのだという根拠を明らかにするために、むしろ愛護よりは保護動物とした用語の方が、多くの人に納得がいくのではないかと思います。
 さらに、人が飼育する理由のいかんに問わず、どんな形で、目的で飼育するにせよ、客観的にあらゆる動物、あらゆる脊椎動物は、痛みや苦しみ、苦痛を感ずる存在であるからこそ、不当な苦痛から守られなければいけないという理念を明記するべきと思います。  そこで2番目に、それではその保護というものはどういうものかという保護の定義をする必要があるのではないか。この保護の定義は、先般、畜産動物のときにも議論になりました5つの自由ですね。これは、第1にえさや水を与えない、不健康な状態にすること。第2に、動物にとって不衛生や適切な飼育環境ではないこと。3番目に疾病に対して必要な治療を行わないで放置すること。4番目として、動物に苦悶や恐怖を与えないこと。5番目に、動物の本来の行動を無視した飼育環境、飼育方法を行わないこと。これは、あらゆる動物の飼育にとっての原則ですから、様々な国際的な規約ですとか、各国の法律が取り入れているわけです。ですので、動物を保護する目的といいますか、保護の定義は、この、まさに5つの自由にあるということを、法律の最初の部分に持って来ます。
 そのあと、虐待の定義というのをしまして、動物虐待というものはこれをすること、あるいはしないことによって虐待が成立するということにつなげていくのがいいのではないかと思います。
 現在の、この虐待の定義の中に入っていない部分があります。それは、一つは、動物を具体的には傷つける中に入るのかどうかわかりませんが、しばしば動物に毒物を飲ませる、そして死なせるという行為があります。現実に、散歩中の犬が毒の入ったパンを食べて死んでしまったという事件が結構報道されているので、毒物を与える行為というのは、実際傷つけた行為になるのかどうかわかりませんが、そのように外傷がなくても、内部で損傷を受けてしまう。一見、外からはわからないけれども虐待を受けているケースというものを、やはり入れるべきではないかと。
 それから、酷使ですね。疲労困憊させて衰弱させたり、死なせてしまうというケース。例えば、最近、上げ馬神事が書類送検されています。実際的には殴る蹴るをしたということなんですが、非常に過酷な曲芸というか、使い方をして酷使してしまう。かつて動物園でアフリカ象を調教して、非常にストレス等を与えて死なせてしまったということもあります。このように、動物を使用する場合で、激しく疲労させて衰弱させるというような行為、これは水やえさは十分やっているけれどもどうなのかということで、現在の法律ではなかなか適用されないのではないか。
 それから、もう一つは、動物の心身に苦痛を与える方法で、一時保管したり、輸送することですね。例えば、先日の資料で出しましたように、行政の保管施設で、麻袋に入れたまま積み重ねて子猫を死なせてしまうですとか、一時保管中や輸送中に死んでしまう、そういうような行為は、現在のこの虐待の中に、なかなか含まれないのではないかと思います。
 ですので、そういう類型をきちんと出して、警察が対処できるようなふうに明文化する必要があると思います。以上です。

【林委員長】 ありがとうございました。
 どうぞ、打越委員。

【打越委員】 法律の文言のところなので、恐らく青木委員もそうおっしゃると思いますけれども、傷つけたといえば、毒を飲ませるのも全く同じ定義ですので、法律の「傷つける」という言葉は、私たちが通常使うような、ナイフで傷つけるという意味ではないと思います。ですので、当然、毒を飲ませるのも傷つける行為だというふうになると思います。
 もう一つ、野上委員が44条愛護動物ではなく保護動物とすべきだというふうなご意見があったのですけれども、愛護も保護も要らなくて「動物」でいいんじゃないかと。改めて44条を、昔から読んでいて思ったのですけれども、44条の4項で、愛護動物とは牛、馬、豚、めん羊、やぎ、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと、あひると書いてあるのが、昔からすごく違和感があって、多分イギリスの法律の例示がここに入ってきているんだと思うのですけれども、日本人にとってのなじみから考えると、決してこの例を挙げる必要もなくて、その下、「前号に掲げるものを除くほか、人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は爬虫類」と書いてありまして、要はその前の方の動物愛護管理法の対象はどういう動物だというところで済んでいるんですよね。だから、動物愛護管理法の対象は、哺乳類と鳥類と爬虫類だと。野上委員のご主張は、そこに魚類も加えるべきだという話だと思いますけれども、その論点は今、置いておくにしても、そこが決まっていれば、あとは「動物をみだりに」云々と。「みだりに」を具体的にしていけばよいのではないかと思いますので、そういう意味では、第44条の4項というのは、もしかしたら、もう要らないのかもしれないというふうに思います。そして、「動物を」というふうにシンプルでいいのではないかと思います。

【野上委員】 単に動物という場合には、所有者のいない野生動物が含まれるかどうか。1999年の改正のときに矢ガモ事件というのがありまして、野生の鳥や獣に虐待目的で吹き矢を仕掛けるとか、毒殺する、そういうものはこの動管法の対象ではないということだったわけですね。人が占有していないので。
 ですので、打越委員のお話では、そういう単に「動物」とする場合に、野生動物に対する虐待も含まれるというふうにお考えですか。

【打越委員】 その議論は、また別の議論かなというふうに思います。  要は、野生動物をどう扱うかというのは、入れるなら大改正の話になってくると思いますので、今ここでは議論する議題ではないと思います。

【林委員長】 第44条の第4項は、なぜこういう書きぶりにならざるを得なかったか。恐らく理由があるのだと思うのですけれども、今から見るとちょっと違和感がありますね。ですから、もっとすっきりさせるのと、それから、ページ数は確かめていないですけれども、今日、ご用意いただいた資料1の4ページ目になりますでしょうか。児童虐待の防止等に関する法律の定義のところ、これはちょっと動物には当てはまらないこともありますが、またちょっと加えなきゃいけないところもありますけれども、割とすっきりさせることが、これをもとに作ってもできるんじゃないかなというような気がしますね。
 いずれにしても、今日はヒアリングがなかったので、できたら11時半で終わりたいと思っていますので、あと15分ぐらいの間に、今ちょうど動物虐待の定義まできていますけれども。
 どうぞ。

【打越委員】 殺傷事件に関する議題が、まだ全く。

【林委員長】 それは一緒におっしゃってくださっても結構です。さっきから殺傷についての話も出ていますので。
 どうぞ。

【打越委員】 では、ネグレクトの問題ではなくて殺傷事件に関するところ、もちろん同列に議論できるところもあると思いますけれども、やはり取り出して議論しなければならない課題がいっぱいあると思いますので。
 殺傷事件、非常に残酷な形で犬や猫、あるいはうさぎなどが犠牲になっている問題は、少しでも、どうやって減らすかというのを真剣に取りかからねばならないというふうに思っています。
 そうなったときに、私が予習してきて感じたことは、まず一つ目は、やはり検挙とか監視とか通報とかそういった鞭の部分を、どうやって仕組みを整えていくかというところだというふうに思います。いきなり自治体の担当職員の手も足りないでしょうし、警察も足りないというような中で、できることとしたら、例えば通報があった際に、まずは迅速に現地に行ってもらう。実際そこで問題のありそうな人と対話しろとか、説得しろというふうになれば、現地に行くことは大きな負担になりますけれども、通報があった時に、行政職員なり警察っぽい人が現地に行くということが、そこの周辺の抑止力にはなると思うんです。見つかったらやばいなという気持ちにさせる。そういう意味では、この問題に真剣に取り組む、そのときに100%の成果を求めなくてもいいから、まずは現地に行くというような習慣がついていくといいなというふうに思ったのが1点。
 それからもう一つは、やっぱり本当に残酷なやり方で犬や猫を、例えば切り刻んだり、水につけるようなことをするような事件を見ると、環境省にあらかじめ配られた資料を読んでも、例えば、自分は職場でいじめられていると思ったとか、かなりのストレスをためている。また、恐らくそういうような人は、子どもの頃に自身が児童虐待などを受けているかもしれない。ネグレクトの程度のメンタルヘルスの崩れ方ではなくて、やはりもうかなり病的な状況になっていると思うので、そういう状況に至る前に、何とかしてそういう人を見つけ出さなきゃいけない。見つけるというのは、犯人を捜すという意味ではなくて、予防的に把握しなければならない。そういう意味では、例えばメンタルヘルスのチェックというのでしょうか、あなたは週に何回ぐらいこうこうこういうのを感じますかとか、そういうものの質問項目なんかで、いろいろな心理テストというか、そういう項目があると思うのですけれども、ちょっと変な表現なんですけれども、例えば「犬や猫を切りたくなったことがありますか」とか、そういうようなことが項目の中に入ってくれば、そこに引っ掛かってしまうということ自体が危険信号なんだということを、本人が自覚できるんじゃないかなと。単にストレスがたまりますかとか、イライラすることがありますかではなくて、場合によっては「犬や猫を切りたくなることが」、「殺したくなることが」まで書くとちょっと問題なんですけれども、そういう小さな動物にあたりたくなることがあるかというのを、逆に聞くような形で、本人に自覚を促していってほしいというふうに思いました。それが2点目です。  3点目は、こういう犬や猫の殺傷事件が起きたときに、やっている方としてみれば、犬や猫くらいいいじゃないかと。別に人を殺したわけじゃないしと。犬や猫ぐらいいいじゃないかというような感覚があって、ところが、法律的には厳然とした犯罪なわけです。やってみたときには、何となく犬・猫ぐらい別にやったっていいじゃんという感覚が、ところがそれが現実になると完全なる犯罪であって、その矛盾した感覚というかギャップというのが、結局なかなか表に出てこないのではないかというふうに思います。
 そういった意味では、犬・猫くらいいいじゃんというような感覚を、絶対になくしていかなきゃいけないので、例えば小学校の、学校の先生に単に伝えていくというのでは学校の先生は動きませんので、文部科学省の学習指導要領に入れていかないと学校の先生は動きませんので、例えば家庭科の学習指導要領に、犬や猫の扱い方や虐待防止を、文科省の方に入れていってもらう。総合学習とか。そのような形で、きちんと教育の中に組み込んでいって、犬や猫ぐらいいいじゃんという感覚を消していきたいというふうに思います。

【林委員長】 今のお話はすべて非常に重要なことなんですが、この小委員会で検討していることとは別に、環境省にご要望されたことだと理解しますが、そういう理解でよろしいですか。
 山﨑委員。

【山﨑委員】 被害者の過小評価のことを打越先生はおっしゃっていると思うので、被害者の過小評価というものを、法律上、どういうふうにきちんと社会に知らしめるかといったら、恐らく罰則しかないと思うのです。殺傷に対してどういう罰則を、どういう理念をこの法律の中で書き込んでいくか。
 実際問題として、人間の社会福祉をやっている先生の中で、児童虐待の専門家の先生が、社会暴力の被害者として動物は認めないという発言をなさっています。高齢者、婦人、そして子どもがDVの対象になるのはわかるけれども、被害者の「者」の中に動物は入らないと、はっきりとご発言を、児童虐待専門の法律の教授がおっしゃっています。それをどうするかといったら、そこのメンタリティを変えるためには、法律的に、でもこれはこれだけの重要な罪であるということを知らしめるということが、まず、法律上できることだと思います。  もう一つは、先ほど野上委員がおっしゃった、死んでしまったら、どうしてもすり抜けられてしまう。殺傷事件に関しても、死んでしまったら、どういう原因で死んだのかよくわからないということでうやむやにされてしまうケースも非常に多いと思います。これは、可能か不可能かは別問題といたしまして、先進国の中では、獣医法医学、フォレンジック、というものが発達しております。実際に動物の死骸を掘りあげて、この子は何日間食物を与えられていなかったというところまで調べるような、獣医学的な調査が可能となっている地域もあるのです。そこまでやれとは言いませんが、Veterinary Forensicsというものがあるということは、まずご承知いただきたいし、死んでしまって、もう息をしていないのでそのまま置いておけばだれも罪に問われないよというようなことではないと理解しなければなりません。やろうと思えば、実際にどういった形で殺傷されたかとか、病気はどういうふうに起こったのかということを、調べようと思えば調べられるはずです。そこまで調べてだれかを槍玉に上げて、ここまでできるのだという社会教育をするという方向性を見いだせれば一番よいのですが、今の日本の状況では、それはかなり難しいと思います。
 もう一つは、青木委員にもう一度お聞きしたいのですけれども、先ほど、加隈委員がデューティ・オブ・ケアという言葉をお使いになりましたが、私たち動物愛護に関わる者は、やはり予防というところで、そのデューティ・オブ・ケアというのが法律の中でどれだけシビアに書けるものなのかということを知りたいわけですね。例えば、児童虐待防止法でも、日本はまだ甘いと言われています。例えばアメリカなんかは、車に子どもを入れたまま、ちょっとお母さんがポストまで1人で出ていただけでも、警察官が通りすがればそこでネグレクトで、そのお母さんは法律的には検挙されてしまうというぐらい、デューティ・オブ・ケアを強く児童虐待防止には入れていますけれども、動物虐待を防止するために、予防策としてそのデューティ・オブ・ケアという概念をこの法律の中に入れるということはできるのでしょうか。

【青木委員】 それは、それに違反したとき、どれだけの制裁があるかという、そのバランスの問題だけだと思います。みんな、デューティ・オブ・ケアを守るように努力しましょうねという抽象的なルールだったら、簡単にいつでも入れることができると思います。
 ただ、デューティ・オブ・ケアを遵守しなかった行為が、もうそれを一回やっただけで刑罰に値する犯罪だというような書き方ができるかというと、それは他のものとのバランス上、現在では恐らく難しいだろうというふうに思います。
 ただ、国によっては、山﨑委員のおっしゃったように、そこ自体を犯罪にしています。例えば2006年のイギリスの動物福祉法は、それがオフェンスであるとしています。オフェンスというのは、通常「犯罪」と訳すのですけれども、動物についてだけそこまで突出するかという問題ですね。
 動物だけを見ていると、幾らでも原理的に行こうと思えば、どこまででも進めてしまうわけですよね。それができるならやりましょうということになるわけですが、それがほかの社会的な価値、あるいは税金投入、あるいは人的資源の制約といった中で、どこでとまるかという問題は当然出てくると、こういうことだと思います。

【林委員長】 ありがとうございました。  どうぞ。

【水越委員】 今まで、メンタルの部分、多頭飼育であるとか虐待であるとかという話が出てきたんですけれども、ここで法律に入れられるかどうかということは、ちょっとよくわからないんですが、例えば先ほど立入権限、職員の立入権限をやはり付与してはどうかというような意見のところで、例えば精神保健福祉士であるとか、ソーシャルワーカーであるとか、看護師等の専門家とともに立ち入ることができるというような、社会福祉士などが協力をするというようなことができないかというふうに思います。というのも、やはり、動物行政の職員が立ち入るというような形になったときには、獣医職が行うことになると思うのですけれども、獣医師は人間の方のメンタルの部分に関する教育というのは受けておりませんので、そういうことを考えると、やはり動物行政の職員とともに人間側の職員が一緒に立ち入ることができるというようなことをすれば、何らかの、先ほど打越委員のお話にあったようなチェックであるとかということがともにできて、予防とかにもなっていくのではないかなというふうに思いました。

【山口委員】 それから、私も水越委員のおっしゃったこと、そのとおりだと思うんです。
 それ以外に、ちょっと皆様のお手元に配付されている資料で、虐待事例集、平成19年と21年度があるのですが、実際にこれは既に警察では使ってくださっているところもあるんですね。その21年度の資料の中(46ページ)に、タフツ大学の、「タフツ・アニマル・ケア&コンディション尺度」というのがあるのですが、これは、タフツの獣医学部が創り上げて、もう1990年代ですので時間が経ってはいますが、今でもアメリカでは動物虐待で裁判にかけられるときに、その判断の基準として、これをある程度使われているということで、現在、警視庁のあるところでも、実際に私たちが関わった事件でも、これを利用してどれぐらいネグレクトされていたかということを判断してくださいましたし、預けた獣医師の方も警察に提出する文書の中に、1、2、3、4、5とありますけれども、これぐらいネグレクトされていたということを、これを使って書かれたということもあるんですね。
 実際、先ほど獣医法医学の話がありましたけれども、獣医師というのは、こういうネグレクトの判断を、やはり求められると思うんですね。これからどんどん裁判にかけられる事例が増えていくほど、こういうことを獣医師が判断しなければならないというところは出てくると思います。既にアメリカからの事例があって、日本でも使われ始めているということ、そして、その前のボディコンディショニングスコア、馬の事例がありますけれども、この馬のスコアも、初めてのネグレクトのケースの馬の虐待の事件でも使われました。さらに弱い部分は法律でもってバックアップするという形で、この基準が法律のもとで十分活用できるような形というものを、仕組みの中に入れていただけたらなというふうに思います。

【野上委員】 この虐待の中に遺棄の問題も含めて議論をしてもよろしいでしょうか。  この第3項に、動物を遺棄した者は50万円以下の罰金とするということがありますが、実際に行政が犬や猫を殺処分する、その内訳を見ますと、飼い主が持ってくるものが約3割で、残りの7割は飼い主不明の犬・猫であるわけです。それの多くは、野良猫が子どもを産んだということもありますが、捨てられた犬や猫も多いということで、犬・猫の殺処分を減らすためには、この遺棄というものを減らさないといけないということになります。
 それで、遺棄についてですけれども、ここにはっきりと、この環境省のポスターには、「動物の遺棄・虐待は犯罪です」というふうに書かれています。ですので、動物を捨てることも犯罪であるということであれば、当然捨て犬や捨て猫を見た人は、まず、警察に通報して、これが犯罪の証拠物件ですということで、警察に捜査していただくということが妥当ではないかと思います。  私どもの会にも、そういう犬や猫が捨てられていましたという話が来ると、まず、警察に行ってくださいということを言うんですけれども、警察はほとんど取り合ってくれないで、すぐに地元の行政に連れて行きなさいというアドバイスしかしないわけですね。ですので、環境省に一つお願いなのですけれども、この「動物の遺棄・虐待は犯罪です」というポスター、これをぜひ、警察庁と一緒につくっていただきたい。そして、いろいろな警察署にも貼っていただくことで、かなり抑止効果が出るのではないかなというふうに思います。
 以上です。

【林委員長】 ありがとうございました。 
山﨑委員。

【山﨑委員】 水越委員がおっしゃったこと、それから打越委員も、それから小方委員もおっしゃった人間のメンタルの問題の部分に関してなんですけれども、ホーダーに関しては、既にこの虐待事例集の平成21年度の参考資料として、42ページに動物との共生を考える連絡会が何年か続けて専門家を呼んで講演会を開いたものがあります。その中にホーダーの特徴や、作業部会の必要性等、精神衛生の専門家の必要性等、書いてありますが、これはホーダーのみならず、いわゆる病理的な虐待傾向があるという人が、例えば人間に対する犯罪に巻き込まれる可能性も高いとか、そういった調査が進んでいる中で、先ほど水越委員がおっしゃった連携に関して、これは法律的に可能であるかということも一つの大きな要素だと思うんですね。できるというよりも、むしろ人間のメンタルヘルスの専門家と協議をしなければならないということは、一足飛びには難しいかもしれませんけれども、将来的にはそれも必要になってくると思います。
 ご参考までに、人と動物の接点で人間の医療職が入らなければならないという参考例というのは、厚生労働省の身体障害者補助犬法の中にあります。身体障害者補助犬法のもとで、身体障害者補助犬を育成する団体は、第二種社会福祉事業として各都道府県の知事に届出を出さねばならぬというところで、第二種社会福祉事業としての規定の中に、作業療法士等、医療専門職との連携があることという、そういった文言が入っています。
 これは、動物の保護の法律とは全く色が違う法律で、違う意味で入っているんですが、人間のメンタルヘルスも一つの重要な要素として考えるのであれば、これはまた、何度も青木先生に振って大変申し訳ないのですけれども、そういった特殊な問題に関して、人間との社会福祉、あるいは精神衛生保健師等の専門家と協議しなければならぬ的な要素というのは、この法律のどこかに入る余裕というのはありますか。

【青木委員】 簡単にできるとかできないとか、言いづらい問題だろうと思います。この法律の守備範囲を広くとらえて、結果的に、間接的であれ動物虐待に集約されるような動物の愛護の気風に反する行為につながっていくものを、予防的にどこまでこの法律の中に含み込むかということだと思います。
 それで、あとは他とのバランスです、何度も申し上げるように。実際のところ、この小委員会の顔ぶれは、相当、動物愛護ということに関して高い関心を持っている。いろいろなお立場がおありだと思いますけれども、高い関心を持っている者が多いと思うんです、私を含めて。その中で議論していることの常識が、社会的に「みんなそうだよな」と納得してくれるかというと、これはやっぱりそうじゃないということも、皆さん、やっぱりご存じのことだと思うんです。飼い主側のメンタル面のケアまで含めてこの法律に入れることを、どれだけ社会的に合意が得られるかということ、そこに尽きるような気がします。
 私自身、個人は、まだそこまでいく段階ではないんじゃないかという実感を持っています。

【打越委員】 今の論点に関連してなんですけれども、私としては、実は法律に不向きな内容ではないかというふうに思います。それは、決して後退という意味ではなくて、法律というのは、やっぱり民間人を、公権力でどう縛るか云々という話になってくるので、そういった公権力を出さなきゃいけない、あるいは税金を取らねばならない、そういったものの場合には法律で根拠づけることが大事だと思うんです。
しかし、その虐待をする人に対して、行政側が、先ほど水越委員もおっしゃっていましたけれども、獣医師だけではなく、人間のメンタルヘルスに詳しい人を同行させる、あるいは協議に加えるべきだというのは、政策の中でよい政策をするためにはどういう工夫が必要かという話であって、直接民間人の権利や義務を縛るような話とは違うと思うんです。ですので、法律の中に書くことが、何もすばらしいこととは限らなくて、行政のガイドラインや環境省と厚生労働省の連携を求めるとか、そういう形の方がむしろ適しているのではないかというふうに、私は思います。

【林委員長】 ありがとうございました。
 大体、ご意見はいただいたようですので、本日はこの辺で終了したいと思いますが。
 渡辺委員。

【渡辺委員】 しつこくて申し訳ありませんが、飼育禁止というのは、全く難しいでしょうか。青木委員にお願いいたします。すみません。

【青木委員】 明確化しておきたいのですが、私が、あの時、日本では刑法という法律で刑罰の種類が決められているから難しいと申し上げたのは、あの場面では、飼育禁止という処罰をしてほしいと、こういう言葉遣いが、確かなされたんですね。あるいは、刑罰としての飼育禁止と、こういうような言葉遣いがなされていたので、刑罰という範疇で語るのであれば、飼育禁止というものは日本の刑法総則の刑罰の種類にないので、難しいですよということを申し上げたんです。
 その後、今日はいらしていませんから、後で議事録を確認していただきたいと思いますが、磯部委員は、基本的に私の申し上げたことと同趣旨のことをおっしゃった上で、ただ、本気で環境省が腹を固めてやるのならできなくはないというような趣旨のことも、たしか一言おっしゃっていたと思うんです。ただ、それはあくまでも裁判所が下す刑罰ではなくて、もうちょっと行政的な処分ということになると思うんです。だれが出すかも含めてですね。
 ですから、原理的に絶対不可能ということを言ったわけではなくて、ただ、刑罰ではないというのが、私の一番の趣旨でした。以上です。

【林委員長】 ありがとうございました。
 大体、ご意見が出揃いましたので、今日の論議はここまでにしたいと思います。
 事務局から何かございますか。

【事務局】 それでは、事務局から1点、ご連絡申し上げます。
 次回の小委員会のお知らせでございます。次回は、明日、9月28日水曜日になりますけれども、時間は3時から、この会議室で行いたいと思います。
 連日になって大変恐縮ですけれども、また、よろしくお願いします。以上でございます。

【林委員長】 ありがとうございました。
 それでは、お返しいたします。

【事務局】 それでは、林委員長並びに委員の皆様、ご意見どうもありがとうございました。
 これをもちまして、本日の動物愛護管理のあり方小委員会を閉会いたします。

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