中央環境審議会動物愛護部会(第11回)議事録

1.日時

平成17年9月26日(月) 午後2時00分~午後4時47分

2.場所

日本自転車会館 大会議室(3号館9階)

3.出席者

林 良博 部会長
青木 人志 委員      今泉 忠明 委員
大矢 秀臣 委員 奥澤 康司 委員
藏内 勇夫 委員 清水 弟 委員
菅谷 博 委員 中川 志郎 委員
中川 李枝子 委員 信國 卓史 委員
兵藤 哲夫 委員 前島 一淑 委員
松下 倶子 委員 丸山 務 委員

泉 総務課長

東海林 動物愛護管理室長

国立大学動物実験施設協議会 八神 健一 筑波大学生命科学動物資源センター教授
社団法人日本獣医師会 大森 伸男 専務理事
社団法人日本動物園水族館協会 北村 健一 専務理事
全国動物管理関係事業所協議会 下村 壽一 会長
岡崎 留美 事務局長

動物との共生を考える連絡会

青木 貢一 代表

4.議題

(1)
動物の愛護及び管理に関する法律の一部を改正する法律の施行等の在り方に関する意見聴取について
(2)

その他

5.配付資料

資料1 ヒアリング対象団体一覧
資料2

各ヒアリング対象団体の意見概要等

6.議事

【事務局】 それでは定刻となりましたので、中央環境審議会動物愛護部会を始めたいと思います。
 まず、本日の委員の皆様のご出欠についてご報告いたします。
 本日は、委員16名のうち、現在13名の方が出席しております。規定により部会は成立しております。なお、欠席しておりますのは大槻委員です。丸山委員と藏内委員からは遅れて出席との連絡が入っております。
 続いて、配付資料を確認させていただきます。中央環境審議会第11回動物愛護部会という議事のついた資料、資料2の各ヒアリング対象団体の意見概要等という資料、それと座席表になっております。もし、資料に不備がございましたら、事務局までお申しつけ願います。よろしいでしょうか。
 それでは、林部会長、よろしくお願いいたします。

【林部会長】 承知しました。ただいまから、第11回動物愛護部会を開催いたします。改正されました動物愛護管理法の施行のあり方を本日とそれから明日検討してまいりたいと思います。それに当たり関係団体の皆様から御意見をいただくのがこの会の目的であります。
 それでは議事に入ります。まず、ヒアリングをどのように進めるか、事務局からご説明いただきます。

【事務局】 進め方でございますが、まず、関係団体の発言者の方から20分間意見表明をしていただき、その後、各発言者と委員の先生方との間で10分間、質疑応答や意見交換を行ってくださるようお願いいたします。各団体の発言の順番及び時間配分につきましては資料に示したとおりでございます。ご発言等が終了した団体の皆様につきましては、恐れ入りますが、次の団体の皆様に席をかわっていただくようにお願いいたします。
 以上です。

【林部会長】 よろしいでしょうか。それではどうぞよろしくお願いします。
 最初に、国立大学法人動物実験施設協議会の八神さんからお話しいただきます。お願いいたします。

【八神氏】 それでは座ったままで失礼します。まず、本日はこのような意見を述べさせていただく会にお呼びいただきまして、どうもありがとうございます。私は筑波大学生命科学動物資源センターの八神と申します。専門は実験動物学で、実験動物の感染症や、遺伝子改変マウスの開発研究を主にやっております。
 今日は国立大学法人動物実験施設協議会を代表しまして、特に特定動物に関する基準について意見を述べさせていただきたいと思います。
 まず、どのような実験動物が特定動物に該当するかという問題ですけれども、基本的に私たちは、実験用のサル類がこれに当たるのではないかと考えております。
 そのほか、非常にまれな例として、ヘビ等の爬虫類も考えられるのですけれども、私たち国立大学動物実験施設協議会で調べている限りでは、会員施設ではそのようなものはなく、基本的にサル類が対象になるかと考えています。
 日本では、実験用のサル類というのは年間約5,000頭程度が使用されているという調査が日本実験動物学会の方で出されておりまして、主に生理学とか脳科学、あるいは感染症とか再生医学、さらには心理学とか行動学の領域で使われておりますし、産業界では、医薬品の安全性試験等でたくさん使われております。
 私どもの国立大学動物実験施設協議会と申しますのは、約30年前より医学系の国立大学に動物実験を行う、あるいは実験動物を集中管理する施設が順次できてまいりまして、約10年前には、全国の医学系大学にこのような施設が整備されました。現在、略して国動協と呼んでおりますけれども、54施設がこの団体に加盟しています。
 以下、資料に基づいてご説明いたします。まず、特定動物に関する全体を通しての意見ですけれども、実験動物としてのサル類は、従来より逸出防止や人への危害防止の点で十分な配慮がなされており、施設外への逸出事例は極めてまれであり、しかも関係者により捕獲するなど適切な対応が行われているということです。
 私どもが調査した限り、過去に1例のみ、飼育室外にニホンザルが逸出したという例が記録されております。ケージには鍵がついていたのですが、その施錠が不備であったということで、飼育室外に出たようです。このときは関係者によってすぐ捕獲されて、第三者への危害等も起きなかったということです。サルの逸出の事例はこの1例だけで、基本的には適切な管理がなされていると考えております。
 2番目に、最近、実験動物に関しては、同じような趣旨を持つ複数の法令ができております。外来生物法や感染症予防法、あるいは遺伝子組換え生物の規制、いわゆるカルタヘナ法、これらも基本的には逃亡防止という点で趣旨が同じになっております。重複した規制をできるだけ避けて、既に飼養等の規制を受けている動物については適用除外にしていただきたいと考えております。
 3番目に、実験用のサル類は、実験目的によって多様な飼育方法や実験措置が必要であり、そのために一時的な移動や保管を伴うことがよくあります。例えば、飼育室から手術のために手術室に運ぶ。あるいはMRI、CTなどの特殊な装置での診断のために、それぞれの部屋に移動するということはよくあります。場合によっては、一つの研究機関から別の研究機関に、その日1日だけ解析のために移動するということもあり得ます。そのような事情がありますので、画一的な基準では運用が非常に難しい場合が予想されます。移動や一時保管については、二重の逸出防止策をとればよいというような解釈をしていただければと考えております。
 続きまして、骨子(案)には特定動物については幾つか具体的な項目が挙げられておりましたので、それに沿って意見を述べさせていただきます。まず種の問題、つまり指定種のことですが、骨子にある動物の指定は妥当と考えております。実験動物として該当するものは、先ほど申し上げましたように主にサル類ですけれども、国動協の施設で飼育されているものについては、資料の1と2にその概要をお示ししました。
 資料1は飼育状況で、平成12年から平成15年までの記録があります。ここでは飼育数とどれだけの施設が飼育していたのか、その数字を挙げております。
 ただ、飼育数とか使用数というのは、集計の仕方によって非常にぶれやすいものですから、ここではどの程度の施設がサル類を飼育しているのかという点を見ていただければと思います。
 ニホンザル、アカゲザル、カニクイザル多いのですが、そのほかにヒヒ、ミドリザル、パタスザル、リスザルなどがあると思います。網掛けで掲げたものが、現在、外来生物法で既に規制されているものでありまして、薄いものが特定動物が今後指定されると、これらが該当するのではないかと思います。リスザルやヨザルは、指定範囲によって含まれるかどうか、ちょっとわからない部分がありますが、新たに規制されるものは、ニホンザルが多くなるのではないかと思っております。
 資料2を見ていただきますと、これは幾つか組み合わせを考えてみました。つまり、既に外来生物法で規制を受けているものが非常に多くて、基本的には、ニホンザルだけを飼育している施設、国動協の施設では12施設程度が新たに特定動物の基準でもって規制を受けることになるだろうと考えております。
 資料の本文に戻っていただきまして、3のところに今のことが書いてあります。特定外来生物を除外すれば、ニホンザル及び少数のヒヒなどが新たな規制の対象と考えられます。
 それから、感染症予防法というのがありまして、ここでは輸入サルについて、その飼養施設が指定されています。ですから、外来生物法だけではなくて、感染症予防法での規制も既に受けておりますので、重複規制にならないようにということ。また、感染症予防法とか特定外来生物には、学術研究や動物園など以外での飼育は原則禁止の立場がとられているかと思います。これは私の個人的な意見ですが、特定動物においても、今後そういう考え方をとれないのかどうか、そのことを加えさせていただきました。
 次に、許可の適用除外の規定についてです。これは先ほどから申し上げておりますように、既に外来生物法に基づき、特定外来生物として飼養の許可を受けたサル類がありますので、これらは除外していただきたいということです。
 同じように感染症予防法に基づきまして、許可を受けた飼養保管施設で飼育する場合があります。こういった感染症予防法での許可を受けた施設で、特定動物を飼育する場合には、全面的な適用除外は難しいかと思うのですが、例えば、追加情報の届け出とか、あるいは手続を簡略化するとか、運用面での配慮をぜひお願いしたいと思っております。
 なお、その下に括弧書きで挙げておりますけれども、特定動物の基準というのは、人の生命、身体、財産への危害防止、つまり、特定動物の逸出防止を主な目的としていると思います。外来生物法、感染症予防法、カルタヘナ法、それぞれ基本的には動物を外に出さない、あるいは周囲の人から隔離することを主目的にしておりますので、基本的な考え方は非常に似通っていると思います。
 次に、許可及び取り扱い基準並びに個体識別処置についてです。先にお示しいただいた骨子案の中で、第3者の接触防止というものがございました。この中で「取扱者以外のものが容易に特定動物に触れるおそれがない構造及び規模であること」、それから、取扱い基準の中には「第3者の接触防止措置と接触禁止の告知」ということが掲げられておりましたが、私たちはこれが非常に重要なことであり、ぜひ規定の中に入れることを希望いたします。といいますのは、過去に研究機関あるいは大学の実験動物の飼育室に故意に侵入しようとした人たちがおりまして、そういうことを考えますと、この第3者の接触防止を規定に入れていただければと思います。
 それから、用語の定義としまして、飼養施設で動物を収容するケージ、骨子案では檻と書かれておりましたけれども、ケージとケージを設置する飼育室の区別を明確にした方が良いと考えております。基本的には、二重の逸出防止構造、あるいは措置が必要だという意味で、ケージと飼育室を区別できればと思います。
 申請者が施設の維持管理の権限を有していることという規定がございました。基本的には特定動物の管理と施設の維持管理、この両方の責任が必要と考えるのですが、現実には、両者の責任・権限が分離している例が多々あります。両方の責任・権限が一本でない場合は、その委任関係を示すなどの方法も考慮すべきかと考えました。
 例えば、動物実験の現場では、実験の一部、あるいは動物の管理を業務委託する例が増えております。一方で飼養施設のレンタル、つまり施設を一定期間貸し与える、そういったこともふえてきております。このような場合、動物の管理と施設の管理について、責任・権限が一本化されていません。そのことを委任関係のところで示していただければと考えました。
 それから、4番目の取扱基準についてです。施設管理や動物の取り扱いは、各動物の基準、例えば実験動物の飼養及び保管等に関する基準で規定されるべきことが多いと思います。特定動物の基準では、特定動物の管理では、特に規定すべき事項に限定した方が良いのではないかと思います。例えば、災害時の対応をあらかじめ決めておくこと、あるいは捕獲器具の準備と訓練の実施、事故の報告、こういった規定が特定動物の取扱基準の中に必要ではないかと考えます。
 次に、飼養施設以外での飼養・保管等についてです。これは先ほど申し上げた手術室や診断のための部屋に一時的に持ち出す例です。実験動物の場合には、それが避けられません。このような手術や、解析のための一時的な移動は、獣医療、つまり動物病院で行われていることと基本的に同じではないかと考えます。獣医療による飼育については、そもそも適用除外になっております。適用除外にするのは難しいかもしれませんけれども、運用面での配慮をお願いしたいと思います。
 6番目の識別手段です。これはマイクロチップの埋め込みが推奨されると思いますが、実験によってはマイクロチップ自体への影響、あるいは実験への影響が考えられます。外来生物法では、このほかに「入墨法」とか「首輪」なども識別法として認めていただいておりますので、それにあわせていただければと思います。
 最後に、特定動物に関する基準は、各自治体で従来定められている条例を、全国一律の規制にするものと理解しております。したがいまして、新たな基準ができましたら、各自治体が独自に定めていた基準を廃止して、特定動物に関する基準の趣旨から逸出するような独自の条例を制定しないよう、行政指導をお願いしたいと考えております。以上です。

【林部会長】 ありがとうございました。
 それでは、ただいまのご発表に対して、ご意見、あるいはご質問等ございませんでしょうか。委員の方々からぜひこの機会に、どうぞ。

【前島委員】 国動協が、医学系の施設中心だと言われましたが、この資料1のデータの中には、京大の霊長研の数も入っているのですか、このサルの。

【八神氏】 具体的な名前を挙げるのはどうかと思いますが…、入っております。

【前島委員】 ブタオザルとかベニガオザルとか、かなり特殊な動物というのは、多くは京大のだと思うのですよ。そうしますと、医学系の動物施設の特定動物の概念と、それから、例の京大の霊長研の行動学とか、そういうものをやっているところと少し違うのではないかということを私はちらっと考えたのですが、この問題は、国動協の中では具体的な議論があったのでしょうか。一緒にやるのだと。医学だから、動物行動学とか、そのようなことは関係なく、特定動物の管理は、国動協として一つの問題であると。要するに別だということではなくてね。

【八神氏】 我々の立場で言いますと、いろいろなサルを使う京大霊長研のような例は、動物実験というより展示動物に近い生態学や行動学の研究などで使われておりまして、ちょっと違うのですね。飼育の方式も檻であったり、野外放飼場を使っておりますので、限りなく動物園に近いと思います。
 ただ、特定動物のことで個々の事情を言っても、全体がまとまらないかと思いまして、特に区別せずに意見を述べさせていただきました。

【前島委員】 ありがとうございました。もう一ついいですか。2ページ目の3)のところに書いてある、私も3年前までは、ある私立大学の動物施設の管理者をやっていましたから、非常にいつも悩むところなのですが、要するに施設全体の管理責任と、それから例えば、これだったら特定動物の管理責任、責務と言ってもいいかもしれない、権限とも義務とも言ってもいいと。これが何となくうまく融合できなくて困ったことは、私もそうなのですが、国動協としては、この問題はどう解決すればいいとか、こうしたいのだという何かお考えがあるのでしょうか。要するに施設全体の管理責任と、それから特定動物の管理責任。何か具体的にどう統合すればいいとか、何かお考えがあるのでしょうか。

【八神氏】 両者の責任は、どこかで一本にまとまっていないとおかしいと思います。大学や研究所についていえば、基本的には学長の責任であり、研究所長の責任であり、その点では問題ないと思います。けれども、大学がある委託会社に業務委託をするとか、それから逆にレンタルラボで飼育施設を借りるとか、そういうケースが徐々に出てきておりますので、そうすると、学長あるいは研究所長といえども、一つ一つの契約までしっかり見ていない可能性があるわけですね。ですから、委任関係をはっきりする書類を加えればいいのではないかと申し上げたわけです。

【前島委員】 ありがとうございました。

【林部会長】 ほかにございますでしょうか。

【中川(志)委員】 今の3)に関連するわけですけれども、今後、例えば動物の管理を業者に委託するということが、恐らく多くなるだろうなという推測をするわけですけれども、そういうときに特定動物の管理をできるような業者の選択、あるいは委託業務をするということについて一つの基準のようなものが、国動協にあるのでしょうか。
 それからもう一つは、基本的に業者に委託した場合に、その動物を実験に供する、あるいは科学的な使用に供するという、その間には、そういうことができる業者が育っているのかどうかという現況について、少しお聞きしたいと思うのですが、いかがでしょうか。

【八神氏】 昨今、こういった法令の問題がいろいろありますので、業者の中でも、勉強会を開いたり、業者の団体が啓蒙活動を進めておりまして、そういった業者は育ちつつあると思います。ただ、契約の段階で、一定の基準を満たした業者でなければいけないかどうかというのは、各大学とか研究所での判断になっておりますので、今それを特別規制するものはありません。
 ただ、実験動物関係では、日本実験動物協会という業者側の団体もあるのですけれども、そういったところでもいろいろ自主規制の取り組みをしておりますので、徐々に専門技術を持ち、信頼できる委託業者が育つ環境になりつつあると思います。

【清水委員】 すみません。先ほど年間5,000頭ぐらいのサルが使われているというお話があったと思うのですが、この資料1の数字を見てよくわからないのですけれど、これは平均数で割っているからあれなのかもしれませんが、どういう計算をすると5,000頭になるか、ちょっと説明をいただけますか。

【八神氏】 それは実験動物学会による使用数調査によるものですが、集計方法が非常に難しいという問題があります。例えば人の場合、ちょうど今度10月に国勢調査をやりますけれども、国勢調査のように、ある時点での飼育動物数を調べる方法は比較的簡単にできます。ただ、人口動態調査のように、出生数プラス死亡数、そういったものを全部把握し、それは個々に把握はできていても、その集計ができていないのですね。
 それからもう一つ難しいのは、使用数と書いたときに、サルは年度を超えて、数年間使われる例があります。そうすると、使い終わった段階で数えるのか。あるいは年間を通して少しでも実験に供したら、それを1と数えるのか。実はそのあたりがまだ統一がとれていないのです。使用数という数字は非常に解釈が難しい状況にあると思います。

【林部会長】 先ほどの5,000というのは、全部合わせて、民間の研究所も合わせた数をおっしゃっているわけで、国動協だけではないのですが、さっきの5,000というのは、正確に言って使用数の方ですか、飼育数の方ですか。

【八神氏】 使用数です。

【林部会長】 使用数ですか。その使用数のあらわし方が難しいとおっしゃっているわけですね。そのことをちょっとお聞きしたいのですが、ニホンザル、例えば、この国動協だけのことで申しわけございません、ニホンザルで大体700頭ぐらいを飼育されていて、使用数が200とか100とか、これだけ使用していながら大体数は維持されていますよね。これは使用して、最後に殺処分することが多いのかどうか。多いのだろうと思うのですが、そうした場合、これの差というのは、国動協の中の施設で繁殖させておられるものが主なのでしょうか。それともほかから入れておられるものが主なのか。そういう把握というのは、どうなっているのでしょうか。

【八神氏】 実はここの数字にも、先ほどの京都大学の霊長類研究所、ここは野外でサルを非常にたくさん飼っておりますので、その数字が大きく影響しています。実際には、各大学で実験に使っている部分は10頭前後。それはコンスタントに飼育と実験使用が大体一致するのですけれども、京都大学の場合は非常にたくさんのサルを長年に渡って飼っています。それが先ほど申し上げたような生態観察とか行動とか、動物園のような使い方ですので、この数字の使用数と飼育数の数が一致しないという問題は、その影響が大きいと思います。

【林部会長】 この国動協の統計は、国立大学法人89全部の、これ54施設と書いてありますけれども、すべてでしょうか。例えばリスザルが5頭しか飼育されていないことになっているのですが、私の知る限り、東京大学の医科学研究所は、奄美の施設でもっと飼っていませんか、リスザルだけでも。

【八神氏】 そうですね。奄美の研究施設は会員校になっておりませんので。

【林部会長】 全部では、89の国立大学法人全体ではないと、この統計はですね。

【八神氏】 はい。動物実験施設が、医学部、医学系の大学を中心に設置されましたので、法人化によって組織がいろいろ変わってきておりますので、一概に言えないのですけれども、医学系の、医学部中心と考えていただければと思います。

【林部会長】 わかりました。ほかにご質問。

【大矢委員】 2点お伺いしたいのですが、一つは、まず54施設の中で、年間に10頭以下を使っておられると。それから、一番最低でどのぐらい使っておられるかの把握はされていらっしゃるのでしょうか。

【八神氏】 すべて把握しておりますけれども、今回、そのままの数字ではなくて、特定動物の基準のために集計をやり直しておりますので、個々の数字はここに挙げておりません。ただ、すべて会員施設がどれだけ飼育しているかというのは掴んでおります。

【大矢委員】 それともう1点、今、54施設ということなのですが、先ほど委員長がおっしゃいましたような、東京大学みたいな、そういう医学部系以外のところでの数字というのはおかわりでございましょうか。施設の数字というのは。

【八神氏】 今回、国動協の施設で持っていたデータをもとにまとめてきました。調査すればそれはわかるかもしれませんけれども、すぐには用意できません。

【大矢委員】 もしできましたら、またお知らせいただければと思います。ありがとうございました。

【奥澤委員】 確認させていただきたいのですが、2ページ目の用語の定義という2)がありますけれど、ここでいわゆるケージと飼育室を明確に区別するということで、例示として括弧の中に二重の逸出防止構造があるのですが、この意図は、例えばケージと、それから外側の施設と、あわせて逸出防止を図るというものの考え方もあろうかと思うのですが、ここで言われているのは、ケージ単体で二重の逸出の防止の機構が必要だと、こういうお話なのかどうか。

【八神氏】 私がそこに二重と書いたのは、ケージが一つ、飼育室が一つという意味です。

【兵藤委員】 5,000頭のサルの件ですけれど、今後この5,000頭というのは、下がるあるいは上がる、どのような考え方を持っていますか。この頭数ですけれども、国動協で構いません。国動協としては、どういう見通しが考えられますか。

【八神氏】 これは非常に難しい問題で、もちろん3Rが出ましたので、削減の方向でいくとは思いますけれども、そもそもサル自体は、一つの実験に対して使用数は少ないものです。これ以上、どこまで削減できるのか。非常にお答えしにくいです。と申しますのは、無理して削減しようとすると、重複実験という問題が出かねないのです。そうすると実験動物の苦痛軽減という本来の趣旨に反することにもなりますので。

【兵藤委員】 3Rができましたので、一つ見守らせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。以上です。

【林部会長】 それでは、これで国立大学動物実験施設協議会からのプレゼンテーションを終わりにいたします。八神さん、どうもありがとうございました。
 本日、ご説明いただいたこと、またコメント、ご質問等を動物愛護部会の論議に生かしてまいりたいというふうに思います。
 それでは続きまして、社団法人日本獣医師会の大森さんからお願いいたします。

【大森氏】 日本獣医師会、大森でございます。よろしくお願いいたします。
 それでは資料準備をしておりますので、5ページをお開き願いたいと思います。今回、動物愛護管理法、法律の目的の達成の手段というのは、私どもはやはり所有者責任をどう確保するかということを基本的に思っております。ということで、今回の改正におきましても、私ども所有者責任の整備の遵守を基本とする見直しと、こういうことで7点、改正要請を出させていただきました。9ページに7項目をお示ししておりますけれども、詳しくはご説明申し上げませんけれども、今回の改正におきまして、ほぼこの7点を実現していただいたということで、大変感謝を申し上げているところでございます。
 また5ページの資料に戻っていただきまして、この中でも、新たに国、環境大臣が定める基本方針に即しまして、都道府県が管理推進計画を定めると。国と地方公共団体が一体となって、愛護福祉政策を計画的に推進する基本計画制度を創設されたということで、大変画期的なことではなかろうかと思っております。恐らくこのことによりますと、法制度の実態面での施策推進の確実性がかなり高まってくるのではないかということで、大変期待を申し上げているところでございます。
 今回審議会におきまして、審議をするに当たりましては、所有者責任の原則に基づく、私どもの場合、これが日本型の動物愛護福祉施策ということで位置づけられるのではなかろうかと思っておりますけれども、広く国民的理解のもとで推進、定着するように、まず基本的にア、イ、ウ、エ、4点をぜひ配慮をお願いしたいと思っております。
 一つは、所有者責任の意識の徹底。国民的理解のもとに、自発的にこれに取り組めるような国、地方公共団体の支援をお願いしたいというのが1点でございます。
 2点目は、既に法律におきまして、推進委員、協議会制度が構築をされておるわけでありますけれども、これの充実・整備ということを基本に、地域全国ネットワークを構築していただきたい。行政と民間のタイアップ、連携の強化を通じて、施則が普及、推進するようなことをお考えになっていただければと思っております。
 3点目としましては、今回、いろいろな意味での規制強化が図られるということでありまして、地方公共団体、行政組織の果たす役割が大変高まるのではなかろうかと思っております。したがいまして、行政組織の機能の充実整備とともに、ぜひ専門職職員の配置の促進ということをお考えになっていただきたいと思っております。
 4点目は、今回の改正を機に、普及啓発のための国民運動の一層の展開と。既に法律の中で位置づけられておりますけれども、改正内容の普及啓発ということでの全体的な、全国的な運動展開というものについて、ぜひ推進をお願いしたいということでございます。
 具体的には2番に、各項目ごとに意見、要望ということで示しておりますけれども、一つは、基本指針の関係でございますが、基本指針につきましてはア、イ、ウと3点をぜひこれからこの審議会でご議論するに当たりまして、定めていただきたい事項ということで3点を挙げさせていただいています。
 一つは、都道府県・政令市による動物愛護推進員の委嘱の推進と全国都道府県・政令市における協議会の組織化の推進でございます。この制度は、前回の改正におきまして新たに設けられまして、この5年間、環境省を中心にモデル事業等の整備によりまして推進をしていただいているわけでありますが、なかなか全都道府県・政令市におきまして、この部分で未整備なところがあると、いろいろお聞きをしております。
 私ども日本獣医師会、全国55に公益法人の獣医師会があります。また、動物愛護管理の公益団体であります日本動物保護管理協会につきましても、すべての55の支部に公益団体というのがあるわけでございますので、こういった民間組織を十分活用していただきまして、地域、全国でのネットワークを計画的に整備するということにつきまして、ぜひ基本方針の中に定めていただければと思っております。
 2点目といたしましては、行政組織の機能の充実・整備ということで、一つは現行の制度に基づきまして、各都道府県動物愛護担当職員を配置するということになっておるわけでありますので、ぜひ、専門職としての獣医師専門職員の配置の促進というものにつきましても、計画的に整備をお願いしたいということでございます。
 あわせまして、今回、動物取扱業に関する規制が強化をされるということで、この面での行政組織の監視、指導、業務というものが非常に高まると思っております。加えまして、後ほど所有者責任の明示措置としての個体識別業務というものを大きく今回クローズアップされるということでございますので、都道府県行政当局のルーチンワークとして、個体識別確認・照会事務執行体制をあわせて整備をお願いしたいということでございます。
 3点目といたしましては、愛護推進協議会組織を通じまして、繰り返しますけれども、動物愛護、国民運動の展開による普及啓発対策の一層の推進をお願いできればと。
 以上が基本方針を定めるに当たりまして、留意していただきたい事項ということでご要望を申し上げたいと存じます。
 2点目といたしまして、動物取扱業に関する事項でございます。申すまでもなく、動物愛護管理法の直接の受益対象というのは、販売対象の飼育動物にあるわけでございますので、とかくアンダーグラウンドという形で規制の対象となりにくい、一つはペット卸売り市場、それとブリーダー間の取引にかかる関係者につきましても、動物取扱業者として位置づけていただきたい。法律におきましては、これらの業態につきましても、当然、動物取扱業の範疇に入るという理解をしておりますけれども、とかく小売販売の規制に焦点がいきがちではなかろうかと思っております。
 したがいまして、取引業の登録拒否基準、飼養方法等に関する基準を定めるに当たりましては、業者間の取引に対しましても規制が徹底されるようにお願いをしたいということと、私ども日本獣医師会という立場で、販売等の対象動物については、過度のストレス防止と健康管理に対しまして、次の4点を基準の中に定めていただければと思っております。
 一つは、幼齢動物販売に関する月齢制限ということで、国際的に8週齢というのは一つの目安になっているということでございますので、この辺をひとつ焦点に、制限規制の導入をしていただきたいというのが1点。
 それと終日展示の制限ということで、特に繁華街等におきまして、終夜、早朝にわたる展示販売が行われているという実態が、東京都内でも幾つか繁華街でそういう実態があるようでございますので、やはり展示動物自体を制限するのは難しいということではございましょうけれども、終日、衆人の目にさらすような販売方法というものにつきましては制限をしていただければ思っております。
 それと家庭動物の小売販売で一番問題になるのは健康の確保ということかと存じます。3点目は、販売時の健康状態のチェックの励行と同時に、通常ワクチン接種が行われて販売をされる形態がほとんどだと理解をしております。ワクチン接種を中心に、感染予防措置を実施した場合におきましては、獣医師が発行した証明書の添付の義務づけを動物取扱業者にしていただきたいというのが3点目でございます。
 4点目は、販売動物の、いわばトレーサビリティの確保でございます。具体的には動物の仕入れ情報、例えば生産情報とか、仕入れ先、輸入先、時期の明示ということと同時に、販売業者、毎日飼育管理を行っているわけでございますので、この辺の記録と書類の保管、それに購買者から情報の提示を求められた場合には、開示を義務づけるというような措置を導入していただきたいと。恐らくこういったことを通じまして、販売動物の衛生に係ることの多くが防止をできるのではなかろうか思っております。
 それと3点目といたしましては、動物の個体識別に関する事項でございます。先ほど申し上げましたとおり、動物に対する所有の明示は、所有者責任も担保措置の基本ではなかろうかと思っておりますし、言いかえれば、所有の明示なくして、飼育者の動物愛護福祉は浸透しないと私ども考えてございます。
 そこで個体識別というものが出てくるわけでございますけれども、確実な個体識別とその後の登録管理というもののニーズにマッチした方法としましては、既に国際標準とされておりますマイクロチップというものが、最も有効かつ信頼性のある措置ではなかろうかと思っております。現に外来生物被害防止が本年6月に全面施行されました。また、昨年、犬等の輸出入検疫規則が整備をされたわけでございますけれども、この中での個体識別措置として、マイクロチップというのが法令上規定をされているということもございますので、ぜひ動物愛護管理法の中にも、家庭動物の個体識別措置として取り入れていただきたい、明確に位置づけていただきたいということでございます。
 それとこの場でご紹介したいのは、動物愛護公益4団体というのがございます。それと日本獣医師会が共同で動物ID普及推進会議というものを立ち上げまして、一つは飼育者の求めに応じまして、マイクロチップの注入と個体データの登録管理、これととともに、飼育者または行政機関からの個体情報照会に至る一連の個体情報管理、照会対応事業を2年前から推進をしてございます。
 ただ、現状、マイクロチップによる識別が飼育者の任意であるということと、この事業の信頼性確保には、行政機関による個体情報読み取りとの連携が不可欠だと理解しておりまして、私どもこの事業を推進するに当たりましても、各団体と行政と連携がうまくいったということで事業推進をスタートさせるということをしておりますけれども、なかなかこの点での全県的取り組みが進展してございません。現在、3都県にとどまっているような実状でございます。
 ということで、今回、動物愛護管理法が改正をされることを機会にお願いをしたいのは、個体識別による所有者責任を担保するために、今回、法7条によりまして、大臣が定める個体識別措置というものを提示するということになっておるわけでございます。
 家庭動物とか展示動物については、マイクロチップによるということを定めていただくとともに、マイクロチップの個体識別の自主的取り組みを推進していただくという観点で、2点お願いをしたいと思いますけれども、一つは、行政機関が法35条の規定に基づく引取り動物、犬猫でございます。それと負傷・死亡収容動物の収容の責務があるわけでございます。ぜひ、これらの動物についての行政機関による個体識別の読み取りと個体登録、登録団体に対する照会事務、また、犬猫の譲渡の推進というものも今回法律に明示をされるわけでございますので、譲渡する際におけるマイクロチップの注入というものを明確に大臣の定めるガイドラインに明示をしていただきたいということと、全国的な推進のモデルケースという形の中でお願いしたいのは、モデル事業、モデル地区整備というものを国、都道府県において取り組んでいただければと思っております。
 それと特定動物に関する事項でございますが、既に外来生物法、またはその他、感染症法等、他法令があるわけでございますので、ぜひ他法令との規制内容の関係に配慮をしていただきたいということ。当然、特定動物の規制ということでありますので、規制の目的は、人の生命等に対する危害防止ということでありますので、恐らく特定動物の基準は逸走防止措置が主体となるということかと思いますけれども、ぜひ、基準の運用に当たりましては、特定動物も動物愛護管理、愛護福祉の対象でございますので、愛護精神による適切な取り扱いをあわせ踏まえた対応をお願いしたいということでございます。
 それでイとしまして、特定動物の個体識別が義務化をされるということかと思いますので、ぜひ、特定動物、危険動物が中心になるということでございますので、より確実な個体識別措置ということで、マイクロチップによる識別措置というものを位置づけていただきたいということ。外来生物法等に基づきましても、特定外来生物に対しましてマイクロチップの識別と登録が義務づけられるということでございます。マイクロチップの注入は動物医療行為でございまして、いわば獣医師の専管領域の話でございますけれども、ただ、対象動物が非常に特殊な動物になるわけでございますので、法に基づく義務化をこれから推進をするということに当たりましては、私ども日本獣医師会、積極的に協力をさせていただきたいと思いますけれども、他の野生動物保護団体、動物園、水族館関係者の協力を得ながら、全国くまなくこの種のマイクロチップの注入が行え得るようなシステム整備というものについての技術研修を、国におきまして対応していただければと思っております。
 5点目は、犬猫の引取り及び負傷動物の収容等に関する事項ということで、これは先ほど申し上げましたとおり、行政機関におきますマイクロチップの読み取り照会、それと死亡収容動物に対する読み取り、さらに譲渡に対してのマイクロチップの注入、登録の実施というものをこの関係規定の中でさらに整備をしていただければと思います。
 最後に実験動物の関係でございますが、今回の改正に際しまして、日本獣医師会としましても、3Rの理念の導入というものをお願い申し上げたところでございます。おかげさまで、法律におきまして、3Rの理念の導入が実現をしたということで、実験動物についての動物愛護福祉概念に基づく飼育管理基準というものは、今後整備をされるということになりますけれども、あわせて今後お願いをしたいのは、動物実験の実施にかかる各種ガイドライン、関係機関、所管官庁が多数にまたがるというような問題もあるやに聞いておりますけれども、ぜひ、実験動物実施にかかるガイドラインの統一的整備をこの機会にお願いをさせていただきたいと。こういったことによりまして、動物実験実施の透明性の確保と適正実施について、社会的理解のもとでの外部評価に対応する体制を前向きに検討をお願いいたしたいと思っております。以上でございます。

【林部会長】 ありがとうございました。それでは、ただいまのプレゼンテーションに対してご意見、ご質問等、どうぞ。

【前島委員】 事情はよくご存じなのに、立場上話さなかったのかもしれないのですけれども、私は日動協の関係ということで、最後の6のところ、例にありますが、ガイドラインとか法規制はともかくとして、例えば3Rを具体的に保証する、あるいは実行するとき、非常に重要なのは、私は動物実験施設にいる専門の獣医師だと。これは先ほどの特定動物のところで、法律では野生動物は外だと言われますけれども、実際の特定動物の、例えば人畜共通の伝染病のようなものの知識ということになると、恐らく野生生物専門獣医師の力はかなり重要だろうと私は思います。そういうことは既に欧米では当然のようにいろいろな資格の獣医師が、普通の獣医師の上に置かれていますね。やはり私はこういういろいろな行政的なこと、あるいは一般の団体はそれでいいと思うのですが、私は獣医師会としては、本当はそういう専門獣医師の教育、技術、知識の認定、そういうようなことを獣医師会はお考えになっているのでしょうねということをちょっと伺ってみたい。

【大森氏】 前島先生と問題意識、全くそこは一緒でございまして、実験動物、野生動物領域の専門医だけではなくて、特に今は小動物医療領域におきまして、いわゆるホームドクターと二次診療、高度医療との連携ということが久しく言われておりまして、各民間、学術団体におきまして、専門医制というものを発足させつつございます。そういった関係学協会をたばねるのは、ある意味では日本獣医師会の役割ではないかなということで、ここ数年、獣医師専門制というものの議論の展開をしているところでございます。その中で、例えば、名称は別として実験動物専門獣医師専門医、野生動物医療専門獣医師というものについても、それぞれの団体でいろいろ検討されているということでございますので、そういった人たちも中に入っていただいて、獣医師分野での専門医制というものの確立に向けて、また努力をしていきたいと思っております。

【前島委員】 本当は部会の中の議論だと思いますけれども、私は実験動物でいえば、ガイドラインをつくることは簡単だけれども、具体的にそれをどうやって実行し、あるいはどうやって啓蒙していくかということになると、私は獣医師会にもっと先走ったアイデアをお持ちになっていただかないと、ガイドラインだけつくってもらっても仕方がないような気が、私はしています。どうも余分なことで。

【信國委員】 非常に申し上げにくいのですが、獣医師という立場は、この法律の中では非常に特殊な位置にあるのではないか。直接規制の対象になるものではない。しかし、広く動物がかかわりますから、当然、獣医師個人、あるいは獣医師会としての活動というのは、非常にこの法律の中で大変大きな役割を担われると。それで自分たちとしても、そういうことをやるのだというのはわかるのですが。
 一部に、例えば6ページの(1)のイのところで、獣医師専門職職員の配置の促進ということがうたわれておりますけれども、例えば食肉行政において、食肉処理場における食肉検査、これは獣医師でなければいけないと義務づけられておって、現実にやはり獣医師さんの確保に行政として非常に苦労しておられるといったことがあるわけでして、そういう中で、この獣医師専門職職員の配置ということを言いますと、一種の自分たちの権限の拡大ともとれかねない。むしろそれは当然、獣医師専門職の確保ができれば、それが理想的だと思うのですけれども、むしろそういう場合において獣医師として、ここに書いてあるところについて、自分たちとしてもこういうことで協力できるのだとか、いろいろ提案していただくのが重要なのではないかと思うので、真意は権限拡大とか、そういうことではないと思いますけれども、そういう面での積極的な関与、それが現実に55の獣医師会とおっしゃいましたけれども、そういうところの体制を整えていただくというのがあって初めて行政等々とタイアップできるのではないかと思うので、むしろ要望として、そういう取り組みを進めていただいたらと思うのですけれども。

【大森氏】 ちょっと誤解があると申しわけないので、追加でご説明をさせていただきますけれども、前段の都道府県における獣医師職員の配置の促進というのは、まさに動物愛護管理法34条の規定の中で、都道府県には獣医師資格を有する動物愛護担当職員を置くということがあるわけでございますので、この改正の機会をとらえて、獣医師の権限を拡張するということをねらって申し上げたのではなくて、こういう規定がありながら、なかなかそこの配置が進んでいないという実態がこの5年間あるわけでありますので、せっかくの機会ですので、この改正を機に、規制強化がいろいろな意味でなされるわけですので、この取り締まり指導に当たる獣医師専門職員を各都道府県に配置を願えればという趣旨でございます。
 それと日本獣医師会、単なる動物医療提供団体ということではなくて、まさに人と動物の共生というのが、我々獣医師会の大きな目的でございますので、説明の中でも申し上げたわけでありますけれども、特に個体識別事業につきましては、獣医師会は民間団体の一員といたしまして、動物愛護関係4団体と連携をしながら、まさしく法律に基づく普及啓発の一翼を担いたいということと同時に、既にそういった部分を担っておるわけでございますので、ぜひ、私どもの機能も十分活用していただければということで申し上げたわけでございます。よろしくお願いいたします。

【青木委員】 6ページの(2)の片仮名のイについてお伺いします。展示販売に当たっての終日展示の制限というご要望でございますが、この終日展示という概念ですが、これは、例えば月齢制限については前回の審議会の中でも具体的に数字が出てきて、比較的明示しやすいのですが、終日展示を制限するといったときに、具体的にどのようなイメージで語っていらっしゃるのでしょうか。

【大森氏】 私も、こういった展示販売が行われているという実態が繁華街であるということで、この間も新宿の歌舞伎町に行ってきたのです。あと六本木等でも行われているようでありますけれども、昼間、通常オープンするのは10時ごろでしょうけれども、それが深夜を通り越して朝まで同じ動物をケージの中で、照明の中で販売をしているという実態が確かにあるのですね。これはやはり動物の生理生態からいってもよくないだろうという感じがしております。人間にも労働時間というのがあるわけでございますので、動物につきましても、終日、若干早朝終わった後は、もうお客様はいないですから店は閉めるようでありますけれども、24時間の中で20時間近くを衆人の目にさらすような販売というのは、やはりよろしくないのでないかと。具体的にはそういったものの規制についてお考えになっていただければということでございます。

【林部会長】 ほかにいかがでしょうか。

【清水委員】 先ほどのマイクロチップが非常に有効だというのはわかるのですけれども、随分長い間、そのことが言われていて、なかなか進まない大きな原因というのはどういうところにあるとお考えですか。

【大森氏】 ここ数年、やはりいろいろな意味で飼育者の考え方が変わってきているのではなかろうかと思います。私どもAIPO事業というのを2年前に始めまして、特に東京都獣医師会がかなりその辺で力を入れておりますので、アンケート調査を実施しました。その中で、マイクロチップを今まで埋め込んでいなかった理由をいろいろ調査したわけですけれども、そもそもマイクロチップの存在を知らなかったという方が、埋め込んでいない理由の50%。あとは、知っていたけれども機会がなかったと。つまり、技術的提供がうまくいかなかったと。あとは費用の問題。それと、異物を注入するということでございますので、それに対する抵抗感。それとそういったものを注入することによる安全・健康面での不安感。それと、ペットにそういうものを入れることが非常にかわいそうだと。そういうことが埋め込みを行わなかった理由ということでございますけれども、これは飼育者側からの理由ということで、私ども基本的には4団体と獣医師会で、この事業を共同でやっているわけでありますけれども、一つは、所有者責任としてこういうものをやるのが法律上求められたあなたの責務なのですよと言っても、なかなか即は理解してくれないのですね。例えば、迷子になったときに、確実にあなたのもとに戻って来ますよとか、盗まれたときに証拠となりますよとか、あとは大災害ですね。先般も新潟、また阪神・淡路、三宅等々ございましたので、大災害が起こったときにペットとはぐれないというような対応ができますよという話をしてございまして、徐々にいろいろな意味で理解が深まってきているのではなかろうかと思っております。

【林部会長】 よろしいでしょうか。今のこととちょっと絡むのですが、日本獣医師会は、マイクロチップについては随分これまで熱心に取り組んでおられて、しかもマイクロチップが個体識別の中でも最もすぐれた方法の一つであるということが、ようやく社会的な合意になりつつありますが、先ほどの八神さんの特定動物の話の中で、特別な場合にはマイクロチップが用をなさなくなることもあり得るというご指摘がありました。それからもう一つ、私が聞いていますのは、これは本当に悪い人だったら、マイクロチップを埋め込んでも取ってしまう。DNAだととれないのですよ。例えば、DNA鑑別というものであれば。そういう欠点が、依然として飼い主の精神的な反発以外にマイクロチップにまだありそうだということについて、これまで論議は何かなされておられますか。

【大森氏】 手術をすれば、それは取ることはできるということですけれども、確実な方法としては、もちろん先生がおっしゃるとおり、DNAというのは一番担保する上では最高の方法なのかもしれませんけれども、現状ではマイクロチップが一番確実な個体識別方法なのかと。それと割と簡便にできるということでございますね。その辺の特徴があるのではなかろうか思っております。

【林部会長】 よろしいですか。それではどうもありがとうございました。
 それでは続きまして、社団法人日本動物園水族館協会の北村さんからお願いいたします。

【北村氏】 こんにちは。日本動物園水族館協会の北村と申します。どうぞよろしくお願いします。
 日本動物園水族館協会と申しまして、戦争前から組織はあり、昭和41年に社団法人になりました。現在、会員は動物園が92、水族館が70ということで、日本の主要な動物園、水族館が加盟されております。
 このヒアリングに先立ちまして、会員に何か希望はないか問い合わせをしました。それで今の獣医師会さんの話とちょっと反するような話で恐縮でございますが、現場の獣医といいますか園長の方から異口同音におっしゃるのが、マイクロチップの問題なのです。実は私も動物園に20年くらいおり、その前は、ちょうど動物保護管理法ができた昭和48年は、動物管理センターで犬の殺処分をしていました。それで動物愛護管理法はかなりいろいろと私の生活と結びついている法律なのです。例えば、動物園でマイクロチップをライオン等に射つときにどうするかというと、飼育係に話を聞いて「元気か」「いや、大丈夫ですよ」「じゃあきょうは絶食か」ということで、まず前日はえさを与えないということから始まり、次の日、やっていいかという話をして、まず始まるのが麻酔です。麻酔も動物園の動物ですから、吹き矢といいまして、塩ビの1メートルぐらいの水道管をちょっと工夫して作成し、それでふっと吹きまして、ちょうどおしりあたりをねらって、麻酔をかけます。早くて15分、やはり30分ぐらいかかります。それで倒れてすぐ中に入るわけにはいかないわけで、長い竹ざおで体をとんとんとたたきながら「これは麻酔効いているな、それじゃあ」ということで、ドアを開けまして、すぐ終わるときにはそのままですけれども、ちょっと長くかかりそうなときには、ネットの網でぐるぐると巻いたり、いろいろなことをします。マイクロチップを打つのはあっという間に終わります。それで獣医なものですから、ついでにちょっと採血してみようかとかですね。できる範囲のことをしまして、今度は拮抗剤といって、すぐ麻酔が効かなくなる薬を打って、みんな引き揚げる。本当に1日かかってしまう作業です。
 それから、個体識別と申しますと、動物園でたくさん動物を飼っているときには、識別しなければだめですけれども、特に希少動物というのは大体10頭以下なものですから、顔見まして、ジョンだとかタローとか名前をつけていますので、飼育係がほとんどわかっています。そのようなことで、マイクロチップは動物園界では20年ほどぐらい前から使われていますけれども、余り普及していないという理由です。読み取るときも、大体10センチか20センチぐらい近くにいかないとわからないものですから、古くからはあるものなのですけれども、余り多用されていないのです。
 それから、ケース・バイ・ケースですけれども、たまにそのまま永久に眠ってしまう動物もいるものですから、なかなか獣医師はやりたがらないというか、なかなかやる機会がないという感じに動物園界ではなっております。
 そのような状況ですから、一応希望としましては、基本的にマイクロチップは結構ですけれども、そのほかの方法もぜひ認めてほしいと、皆さん強く要望されておりますので、よろしくお願いをいたします。
 それで次の話なのですけれども、この法律は5年ごとに見直しをすることになっておりますので、私どもの希望としましては、例えば特定動物、昔、危険動物と言っていたところなのでございますけれども、例えばゴリラは、今はどういう状況にあるかと申しますと、今、12の動物園で30頭飼われており、みんな高齢化していますので、あと10年たちますと、多分1桁になるのではないかなと思います。それで指定種、外来種もそうなのですけれども、ひょっとしたら、動物園だけが許可を取得する施設になるのかなと、そういう動物が結構これからふえるような気がしますし、これまでは一般の方を対象にということもあったかもしれませんが、だんだん動物園等でないと飼えなくなってくるような状況になりますと、いっそのこと、動物園自体を環境省さんの許可施設にしていただければ、この辺も含めて効率的かなと思わないでもありませんので、ぜひ5年後の見直しのときには、指定種で動物園でしか飼われていない動物については何かちょっと知恵を出し合って、何かいい方法はないのかなと、そのようなことも考えながら、ここでお話しさせていただいております。
 あと小さい話はいっぱいございますけれども、実際に動物園も、今92のうち七十幾つは市や県立で、いわゆる獣医といっても半分は事務屋さんなものですから、手続は何とかやれるのかなと自信は持っておりますけれども、長い目で見て、動物園だけが許可対象施設にならないような形になるといいかな、というふうに思っております。
 以上でございます。

【林部会長】 はい、ありがとうございました。委員の皆様からご意見、ご質問等ございましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。

【北村氏】 ちょっとすみません。ご説明するのを忘れて恐縮でございます。
 あと今の種の話をしますと、実はこの冊子、クロサイについてはベルリンの動物園によって国際登録と申しまして、みんなナンバーを振られているのです。実は動物園の動物の多くは世界中の動物園が役割分担を決めまして、上野はタンチョウをやっていますし、天王寺がマナヅルかな、そのような感じで各動物園で責任を持って血統登録をやっています。中を開きますと、例えばここのページにはジャパンと書いてありまして、動物に番号を振ってありまして、お母さんがワイルドで、お父さんもワイルドで、何番で、いつ生まれたかと詳しい情報がみんな入っています。それとあと日本国内でも同じようにやっていますから、希少動物はみんなダブルでナンバーを持っています。そのような動物に、わざわざ都道府県の許可がいるのかなと、ちょっと頭の隅によぎりましたので、お話しさせていただきました。

【林部会長】 よろしいでしょうか。

【藏内委員】 実際、今までに動物園の動物が逸走をしたとか、事故があったとか、そういった件数というのは把握されていますか。

【北村氏】 表に出ないものが圧倒的に多くてですね。ということは園内の中で終わったということで、外に出た場合は、そういうわけにはいかないわけですから、当然公表しますけれども、実際に外に出て、一般市民の方にまでご迷惑かけるような例というのはほとんどないと思います。

【中川(志)委員】 質問ではないのですけれども、基本的に動物園水族館でやっていることは、国内のいろいろな統計とか、そういうのも非常によくわかるわけですが、むしろ最近、最後に示されたレッドブックのように、国際的な記録、あるいは国際的な種登録法みたいなものが、ISISとか、そういうものですけれども、それが非常に動物園動物については、ある意味で厳しい目で見られて、整理されているのですよね。そういうものがデータとして、動物園界以外に余り披露されていないというところがあると思うのですよ。ですから、今後はやはりそれらは環境省さんなどに、国際的な仕組みで、北村さんもそうでしょうし、上野動物園、多摩動物園や大阪の人たちが、この間の国際会議にも出ていましたけれども、ああいうところでやられている議論というのは、実はきょう話題になっている外来生物法にしても登録法にしても、みんな関係があるのですよね。ですから、そういう意味では、やはり情報交換をかなり綿密にしておいた方がいいと思うのですね。
 今日あなたの報告を聞いていると、何となく現場の話になってしまっているけれども、もう少し基本的には、そういう動物園というものが、こういう野生生物の中で、どういう位置を占めているのかという国際的な意味での、レベルでの情報をぜひ環境省さんの方にも、できるだけ多く提供していただきたいなと。あるいはこういう中でも、そういうものを披露していただきたいなと。これは要望ですけれども。

【大矢委員】 今、いろいろとご意見伺ったのですけれども、日本動物園水族館協会に加盟している園・館については、そういうレッドデータブックだとかISISだとか、いろいろとやっておられると思うのですが、日本には加盟されていない民間の動物園もあります。中にはきちんとしたデータをつくっておられるところもありますし、またそうではないと思われるようなところもある。その辺を日本動物園水族館協会がどうリードしていくかが、今後の問題になってくると思うのですね。
 今おっしゃいました外来生物法なども、日本動物園水族館協会に入っている動物園なら何でもいいのか、入っていない、きちんとしたところについてはどうするのだという論議も出てくると思いますので、その辺は日本動物園水族館協会の今後の活動になってくるのではないかと、一言申し上げておきたいと思います。

【青木委員】 マイクロチップの問題についてのご発言の中で、ときどき失敗をしてしまって、動物そのものが死んでしまうこともあり得るということをおっしゃったと思うのですが、私は獣医学的な知識は全くなくて、マイクロチップについては動物の健康、あるいいは生命に対する危険はないという前提で理解をしているのですね。
 ただ、今のような、おっしゃったようなことが、大いにもしあり得るとしたら、これは動物愛護管理法の中で、マイクロチップで動物が死んでしまったら、本末転倒になってしまうわけで、今おっしゃったことについて、それはたまたま非常に難しい希少動物であるからなのか。それとも動物一般についても、かなりマイクロチップは危険だというご認識なのか、その辺についてもうちょっと教えてください。

【北村氏】 ちょっと言葉足らずで失礼しました。マイクロチップがどうだこうだではなくて、麻酔そのものが、昔から考えますとだんだん安全域が高くなりまして、昔は量がすごく難しかったのですけれども、それは少しぐらい量が多くても、死に至らないというふうに、だんだん安全になっています。私の話したかったのは、麻酔そのもので、たまにそういうこともありますよということの意味で申し上げました。

【林部会長】 マイクロチップの装着に対して、麻酔を施さなければならない動物がいるという場合には、そういうことが考えられるということですね。一般論としてですね。

【菅谷委員】 中川志郎委員が触れましたが、動物園で飼育される希少野生動物の多くが遺伝的多様性の確保等のために、国際的な血統登録がなされています。このような極めて数の少ない動物まで麻酔によるリスクを侵し、マイクロチップを打つ必要があるのか、動物園としては問題があるのではないかと思われます。仮にこのような動物が逸走した場合において、マイクロチップを活用しなければ所有者が判らないようなことが起こりうるのか疑問です。公的な動物園の施設と個人で飼う場合の管理状況の差はあることと思いますが、どの範囲まで規制すべきかは検討の余地があることと思います。

【兵藤委員】 日本動物園水族館協会に入っていない、今、やはり国民の目が動物園について、チェックでかなり厳しく、動物愛護的な見方で見ていると思うのですけれど、これはもちろん強制力はないのでしょうけれども、日本動物園水族館協会に入っていない人たちの勧誘とか、そのあたりの要請指導というのはなされていないのでしょうか。

【北村氏】 実は私どもは社団法人なものですから、会にお入りいただくときの基準等はございます。それで毎年ということはありませんけれども、あるときは、基準に満たないからお断りしますというのが現状でございます。それで勧誘となりますと、それにあわせて相談しております。

【兵藤委員】 十分な基準を持っていて入ってこない理由というのは何なのですか。

【北村氏】 基準に合格していながら入らないという施設は多分ないと思います。

【兵藤委員】 それは100%入って、基準が合えば100%入って。

【北村氏】 基準に合う施設であれば。

【兵藤委員】 あとは展示動物になるわけなのでしょうけれども、小規模であれば展示動物。あるいは中間的なものがあるのかなとも思われるのですけれども。あるいは公園とか、神社とかで飼っている、そういう特定の動物たちがおりますけれどもですね。そのほかに、もう少しいくのだけれども、基準までにはいかないけれども、公園でおサルさんを二、三匹飼っているのとは違う、中間的なものもございますでしょうね。

【北村氏】 教育的配慮がしてあるとか、いろいろちょっと細かいことがあるものですから、残念ながら、公園でおサルさんだけ飼っているところとか、そういうところはうちの対象にはしておりませんというか、勧誘もしておりません。

【兵藤委員】 そうですか。中間的な動物園、これは入っているかどうかわからないですけれど、途中でつぶれたり、経済的にいかなくなったりする新聞記事等も目立つものですから、やはり相当の問題がひそんでいるのかなというふうに思われます。

【林部会長】 その点ちょっと菅谷委員の方から補足していただけます。

【菅谷委員】 現在、日本には動物園と称することの規制はなく、当然その基準もありません。
 このため、社団法人日本動物園水族館協会に加盟していない、動物園と称する動物園はたくさんございます。協会に加盟を希望される園館については、施設的、人的な要素を含めた倫理基準等による審査がございまして、合格しないものもあります。また、加盟の意思のない施設や移動動物園のような実態的に協会加盟の対象外となるようなものも多くございます。
 ご指摘のように、加盟園館には財政的に厳しい環境にあるものもございますし、残念ながら閉園された動物園もございます。

【兵藤委員】 つぶれてしまいますと、動物たちの行く先がなくて、右往左往する現実がありますよね。だから、むしろもう少し許可は、民間でやる動物園については、供託金を積まなくてはいけないとか、今後の制度になると思うのですけれども、きちっと保護していただいて…。

【菅谷委員】 私が説明するのが適当なのか判りませんが、いくつかの動物園が閉園になった事例では、日本動物園水族館協会全体で動物の適切な措置をはかるべく全力を挙げて取り組みましたが、全てとはいかず、ご批判を受ける部分もあったかとは思いますが、時間的、物理的に制約された条件の中ですので、ご理解をいただきたいと思います。

【林部会長】 大体よろしいでしょうか。

(な し)

【林部会長】 それでは、どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、各自治体で動物愛護管理法を運用する立場から、全国動物管理関係事業所協議会からプレゼンテーションをいただきます。

【下村氏】 それでは、全国動物管理関係事業所協議会を代表いたしまして、私、下村の方から、意見、要望等を述べさせていただきたいと思います。
 意見、要望を大きく分けまして、3点ございます。一つは、特定動物に対する基準等に対するお願いでございます。2点目が、動物取扱業に関する基準などに関する意見、要望でございます。最後の3点目が、小動物の収容に関する措置要綱、要領、これに関するお願いでございます。
 それでは時間もございませんので、さっそく本題に入らせていただきたいと思いますが、私ども全国の加入101機関という組織に対してアンケート調査の形でお願いをして、各自治体のご意見の集約をさせていただきました。いろいろな角度からの意見がございまして、なかなか取りまとめはしにくい状況がございましたけれども、その中でも特にご意見の多い部分を集約させていただいております。
 まず、特定動物に対する基準等に関する1点目でございますが、指定の種についてでございます。新たに追加をされました無脊椎動物のクモ属の4科でございますが、これについての指定はいかがなものでございましょうか。でき得るならば、削除をしていただきたい。こういうお願いでございます。その理由といたしましては、現在の動物愛護管理法の中で、動物取扱業にかかわる第10条の部分では、無脊椎動物についての規定を持ってございません。動物愛護という観点、または管理という観点からして、クモ類、昆虫類まで含めるというものがどういう対応になっていくのか。なかなか各自治体の中では、担当部署が異なる。哺乳動物、爬虫類、鳥類、こういったものと昆虫類を取り扱う部分の部署が異なるということが多うございますので、そういった観点からも、日常業務の円滑な執行体制というものに混乱を来してくるおそれがございます。外来生物法の規制で、できるならば十分な対応をとっていただくのが本筋ではなかろうか。そのように考えてございます。
 特定動物に対する基準等の第2点目のお願いでございます。許可の適用除外の規定でございますが、外来生物法の指定動物は、特定動物の指定から除外をしていただければと考えております。その理由といたしましては、外来生物法の指定動物を動物愛護管理法の許可対象から除外をするということでございますので、外来生物法と重複する動物は、特定動物の指定から除外した方が整理が明確になるのではないかと考えてございます。
 指定をしておいて、許可を適用除外とすることは、なかなか文字上での考え方としては整理がついたような気がするところでございますけれども、実際に業務を運用するという流れの中では、動物愛護管理法の中で指定を受けているけれども許可は必要ございませんという整理の仕方は、実務面では非常に混乱を来すおそれがございます。
 例えば、特定動物が町中にいるという通報が、多々私どもの動物愛護センターに頂戴するわけでございますけれども、所有者がいるのかいないのかとか、特定動物の該当性の有無といったものにかかわらず、今すぐの捕獲のための出動または確認というものが求められております。特定動物の除外規定に該当する動物で対応根拠がない場合、そういった場合でも、住民の方々の理解がなかなか得られないという状況がございまして、そこからしますと、大変行政に対するおしかりを頂戴する局面といったものが想定されます。
 そういった点ともう1点、特定動物の許可申請があった場合でございますが、事前の確認行為として、現地調査がなされている一方、外来生物法の許可申請に当たっては、この中では確認行為がないか手数料も不要だとされています。そういったことからしますと、飼養をされている方々が、なぜ動物愛護管理法では有料で外来生物法では無料なのか。また実査も必要ないのか、調査も必要ないのか。大変バランスを欠く、そういったご認識を与えてしまうと、その辺が行政に対する大きな不満という形になってあらわれてくるおそれがある、そんなふうに考えてございます。
 3点目でございますけれども、許可及び取扱基準に関してです。せっかく動物愛護管理法を強化していただきまして、全国一律の規制というものをつくっていただいた、その上で、さらに自治体間で条例による強弱というのでしょうか、温度差を出すということは、せっかく法律で求めている全国一律の対応という理念が崩れてしまうのではないかと思います。できる限り、具体的に施設の規模ですとか構造、それから飼養や保管の方法といったものの基準を明確に定めていただいて、各自治体間で余り温度差のあるような状況ではない取り組みというものをつくっていただけると大変ありがたい。かように考えております。
 この点に関しまして、約半分の自治体の方々にお話をお伺いいたしました結果、数値基準を現在でも条例で設けて対応しているというところが大変多うございます。お話しを伺った中で、その半数近くの自治体が数値基準を設けている。今回、施行規則の中で、やはりこの辺の、各自治体が条例をもって、どのように対処しているのかという現状をお踏まえいただきまして、施行規則の中でも明確な規定を設けていただきますと、大変助かる点でございます。
 もう1点、つけ加えさせていただきますと、今回こういった施行規則で、数値基準等明確な規定がないということになってまいりますと、規制緩和がされたのかというような印象を与えてしまう。今の社会は規制緩和の流れでございますので、その流れと同じだという理解をひょっとしたら与えるかもしれません。従前から非常に強い姿勢を持って指導をしてきている自治体にとっては、「今までは何なのだ」というおしかりを受けてしまう。そういった問題まで考えて、手を打っておく必要がある。そのような観点からも、このお願いをさせていただければと思います。
 特に今まで、法律の規定に加え条例を設けて、各自治体が地域の実情に合った規制を作成して、運用してきておりますので、今回の改正によっても、条例で築き上げた実績というものを大切に考えていただければ幸いかと存じます。
 次の大きな2点目のお願いでございます。動物取扱業に関する基準等についてでございますが、1点目が、登録の拒否及び遵守基準に関してでございます。登録する際に、土地や施設に関して必要な権原の所持という規定が設けられてございますが、ここで言う権原というものが、借地権であったり、所有権であったりということですので、それを証する書類、こういうものが必要になってきますと、各自治体は、業の登録にその確認ということがどうしても必要になってくる。現在、各自治体では、いろいろな業の許可を条例もしくは法令で実施をしてきてございますけれども、関連するところを確認した結果、こういった権原規定を持っているものはございません。そういう今までの行政の流れの中で、この動物愛護管理法の規定による登録について必要な権原の所持というものを、さらに書類をもって確認をしていくもしくは提出をさせる、そういったことが果たして本質的に必要性のある規定かどうか、もう一度、ご再考をいただけると大変助かると思います。
 これに関しては、個人情報の管理、保護が大変厳しい状況があり、その管理に私ども自治体も大変慎重を要している状況がございますので、でき得るならば、個人情報に該当する、非常に個人的なというのでしょうか、申請者の方々が、ここの部分は人様に知られたくないというような情報が明記されている書類はご提出いただかなくてもよいように、それは例えば抵当権の問題ですとか、そういったものも明記されている部分が付随的についてきてしまう可能性が多分にございますので、個人情報を保護するという観点からいたしましても、ここの部分については、ご再考をいただければと考えております。
 2点目が、動物取扱責任者の研修でございますけれども、初回の研修というものを実施して、毎年の研修を受けるという規定になってございますが、2年目、2回目以降につきましては、時間数を相当程度減じていただいても、3分の2の2時間程度でも十分対応できるのではないかと考えます。既に1回研修を受けていらっしゃる皆様でございますので、新しい情報、その後に変化した状況、その後に必要な知識として獲得をしていただかなければいけない情報、こういったものを中心とした講義内容を盛り込んでいくということであれば、2時間という時間数でも十分ではないかと考えております。毎年、同じ方々がずっと永続的に研修を受けていらっしゃるということを考慮していただきまして、時間数の設定というものも、ご再考いただけると大変ありがたいと考えております。
 それからもう一つ、研修の内容でございますけれども、ペット業界の方々も大手になられますと、全国で営業を展開されている方、全国の規模までいかなくても近隣の都道府県で営業を展開されている方は結構いらっしゃるのではないか。そういった状況を考えてみますと、研修内容が各都道府県市でばらばらでありますと、なかなか何が必要で、何が必要でないのかという統一性がとりにくい状況が出てこようかと考えております。そういった観点からいたしますと、研修内容につきましても、全国一律、共通の教材もしくはカリキュラムをお考えいただきますと、大変統一のとれた、またレベルの均一化された動物取扱業の管理運営というものができようかと考えております。
 3点目でございますが、動物の所有者明示の件でございます。マイクロチップ等で所有者の明示をという規定になってございますが、犬に関して特にお願いをさせていただきたいのが、狂犬病予防法に鑑札の装着義務というものがございます。なかなか最近の状況を見てみますと、私どもに収容される犬の首輪に鑑札がついているという状況がございませんで、所有者を明らかにする、探し出すのに大変苦慮している状況がございます。そういう状況の中で、さらにマイクロチップという新しい所有者明示の方法を加味されますと、一つの鑑札でさえも徹底が難しい状況の中で、さらに新しい方法をということになりますと、この徹底というものが、私ども自治体としたら大変難しい状況が出てこようかと思います。犬に関しましては、どちらか一方で徹底をしていく。狂犬病予防法で徹底をしていくということが非常に昨今の中では重要ではないかと考えております。
 最後の3点目でございます。犬猫の引取り並びに負傷動物の収容に関する措置要領についてでございますが、保管期限につきまして、期間を7日以上とするという案をお示しいただいてございます。これにつきましては、やはり収容能力、施設能力というものに大変かかわる要素がございますので、この点につきましては、それを十分踏まえるということ、そして期間については施行規則の中では明示を避けて、それぞれ各自治体が必要と認める期間という自治体の判断にお任せをいただくと大変助かると考えてございます。
 なかなか施設維持というもの、また、新たに施設を増強するということに関しまして、昨今の自治体の予算の関係等からいたしましても、大変難しい状況がございます。新しい改正法が施行をされましても、その円滑な運用は、現行の施設をもって対応せざるを得ない各自治体の苦しい状況をご勘案いただきまして、この辺につきましても、日数を明確に示すのではなく、自治体にお任せいただけるような形での表記に変えていただきますと大変助かる。そんなふうに考えてございます。
 私ども、全国動物管理関係事業所協議会では、以上3項目、7点につきまして、ご要望をさせていただきます。よろしくどうぞお願いいたします。

【林部会長】 ありがとうございました。それではご質問、ご意見等、委員の方からお願いしたいと思います。

【青木委員】 最初の特定動物に対する、基準等の指定種のところで、クモ類は削除した方がいいのではないかというご意見を承りましたが、理由として、私がお話から理解した範囲では、もともと法律自体がクモまで大きく扱う対象にしていないのではないかと。こういうことが一つ、それから行政側の組織の問題として、哺乳類等を扱っている部署と昆虫やクモを扱っている部署は違うことが多いのでということを確かおっしゃられたと思うのですが、後者の点につきまして、私がお話を伺う前までの考えでは、これは動物愛護管理法を踏まえた特定動物についての基準が変われば、特定動物の基準を扱っている行政の部署の仕事が当然ふえるだけと、こういう理解をしていまして、扱う部署が違うからという理由が、ちょっとピンとこないところがございまして、もうちょっとそこを詳しく教えていただけないでしょうか。

【下村氏】 現在、私どもの動物愛護相談センターにおきましては、犬猫、そしてまたウサギ、ニワトリ、アヒル、こういった動物について住民の方々からのご依頼を受けて、引き取りをする。またはけがをしているのであれば、収容して治療をする。こういった仕事を担当させていただいてきております。その中にクモというものが新たに入ってきたとき、今現在でも、私どもの大変すばらしいネーミングの愛護相談センターという名前のもとでは、住民の方々は、こちらにお願いをすれば、飼養して大切に育てていただけるのではないか、このような期待をお持ちの方々が結構いらっしゃいます。言ってみれば、アメリカの中では結構普及している組織、運営形態だろうと思うのですけれども、まだまだ日本の中では規模的な問題もございまして、そこまで進んだ、言ってみれば、引き取った動物全部について、大切に飼養していくというキャパシティを持ってございません。そういった観点からいたしますと、必然的に引き取り手のない動物についてはやむを得ず殺処分というところに行き着くわけでございますが、クモ類まで入れて考えていったときに、非常に考え方の整理が難しくなってきます。そもそも危険な動物という観点の中で、人との共生というよりも、むしろ人への危害防止という観点から入っている、そこのところの住民の方々への整理の仕方というのが非常に難しい。クモは愛護の対象ではないことを、愛護及び管理法という2面のネーミングの法律であるならば、そこいら辺のところがよく理解をされるような体制というものをある程度考えていただくとよろしいのではないかと考えます。
 それともう1点、行政側の内部の問題として、範囲を広げればという、今の青木委員さんからのご指摘でございますけれども、なかなか対応をとりかえるというのは、各自治体とも難しい状況が出てくるのではないか。考え方としては、おそらく成り立つことであろうかと思いますが、実態としてどのように実施をしていくのかというのは大変苦慮する状況が出てこようかと考えております。以上でございます。

【青木委員】 それでは簡単に申し上げますが、まだちょっとはっきりしない感じがしまして、私、行政が今まで特定動物、あるいは危険動物の飼育、飼養許可をしていた業務に、クモというものが入ることによって、どんな不都合が具体的に生じるのか、これをちょっと教えていただきたいということなのですけれども。引き取りの問題は、私の質問とは関係がとりあえず、直接はない問題でございまして。

【下村氏】 それでは実務を担当している岡崎の方から、お答えをさせていただきます。

【岡崎氏】 お答えになるかどうか、ちょっとわからないのですが、クモ類は種類によっては衛生害虫的として考えられてきており、私ども行政、多くの自治体がそうなのですが、一応環境衛生、特に鼠族昆虫等を担当する窓口が、基本的には愛護といった概念ではなく、防除・駆除などの観点からすべて対応してきたという経緯がございます。
 今回、動物愛護管理法の見直しで新たにクモ類を特定動物という形で取り込みますと、従来の部署から、哺乳類、鳥類、爬虫類の担当部署が担当することになり、経験、知識等の面で、現場でかなりの混乱が生じる可能性があります。セアカゴケグモ等が空港近くで発見された場合、環境衛生部門が的確に対応している状況があります。そういう面からも、動物愛護管理法の特定動物に改めて指定をすることはないのではないかというふうに考えております。

【東海林動物愛護管理室長】 青木先生の質問に答える形で、制度面の補足説明させていただきたいと思います。ただ、全国動物管理関係事業所協議会さんのお答えは、ある意味、制度面の話と実態面の話で分けて考えれば、かなり赤裸々な部分にまで踏み込んだ実態面のお話をされたので、多分わかりにくいところがあったのではないかと思います。
 まず、制度面の方ですけれども、危険動物、特定動物の規制に関しましては、基本的に動物の種類、分類群ですね、これの限定は現行法ではございません。動物愛護管理法は、なかなか読みづらい法律になっておるのですが、各措置、施策によりまして、動物の範囲を限定しているものと、限定していないものとがあります。例えば引き取り、これに関しては犬猫に限定している。動物取扱業の規制に関しては、哺乳類、鳥類、爬虫類に限定している。クモ類は入ってございません。
 ところが、特定動物の規制に関しましては、動物一般ということにいうことになっておりまして、法制上はクモ類もクモ鋼も、それから当然サソリもすべてが入っているということになってございます。
 ということで、今回、特定動物の政令指定をしているわけでございますけれども、先日の審議会でご説明させていただきましたように、危険であって飼養の実態があれば、法制上は政令で指定をする必要性が生じるということになっています。それから、これをどういうふうに運用するかというところでございますけれども、基本的には、今、全国動物管理関係事業所協議会の岡崎さんの方からいろいろご説明がありましたけれども、法制面で必要性が生じましたので、政令で指定してはいかがかという案を出させていただいたのですが、その後で、他法令、特に外来生物法でクモ鋼、クモですとかセアケゴケグモ等に関しましては規制されているということで、その規制で足りるだろうということで、適用除外ということで骨子案を出させていただいておりますので、今お話のありましたように、クモについての実態的な規制の業務というのが、結果として生じ得ないということになるという状況に、骨子案ではなってございます。ただ、全国動物管理関係事業所協議会さんが申し上げたかったのはそのことではなくて、特定動物の規制というのは、管理関係の規制の措置、施策になります。動物愛護管理法は二つ目的がございまして、動物の愛護、動物を虐待等から守るということと、それからもう一つ、逆に動物の危害から人を守るという管理の施策、この二つに分かれてございます。中には愛護と管理と両方まじった政策をやるところもありまして、これは今回、動物取扱業もそうなるわけでございますけれども、危険動物、特定動物の規制に関しましては、愛護の目的は一切ございませんで、基本的に管理の側面、動物から人を守るためだけの施策ということになります。ただし、こういう法学的な解釈をなかなか一般の国民の方に言っても、きれいに理解してもらえませんので、特定動物、これは管理だけの施策なのですが、これにクモですとかサソリを入れることによって、これの愛護まで行政がすべてやってくれるのかという誤解が生じがちで、いろいろな問題が持ち込まれるのではないだろうか。それでいろいろな業務とか、軋轢がふえてしまうのではないだろうかというところをご懸念された発言ではないかと解釈しています。

【林部会長】 私は、論議が逆転しているのではないかと思うのは、すべての法律、条例とか、政令を論議しているわけですが、これは自治体の実態に合わせてつくるのではないのですよ。法律が正しければ、それに自治体は合わせてもらわなければいけない。ほかの問題についても、例えば、ちょっと私の方から聞きますけれども、3番目の保管期間の確保。これは7日以上、これは7日でも70日でも構わないですけれど、この明示を避けるということは、7日間も保管しないということですか。実態がどうなっているかというと、確かに7日間保管をしないところがあるのですが、これはいかがなものかというふうに思っていまして、これはミニマムのところを申し上げているのですが、これすらできないという実態が物すごく多いのですか。それ、ちょっとお聞きしたいのですけれど。

【岡崎氏】 はい。実際、施設のキャパシティの問題から対応困難な自治体は多いです。

【兵藤委員】 私がちょっと聞き間違い、聞き落としたかもしれませんが、幼齢動物の件で、どれぐらいを延長したら、具体的な数字をお考えでしたら、ちょっと教えてください。

【下村氏】 実際の日取り、期間としては、8週程度がよろしいのではないかと思っております。

【兵藤委員】 ありがとうございました。2番目に、鑑札の装着の件ですけれども、非常に鑑札の装着の率が悪い。ほとんどない。指導してもほとんどが聞かない。バンザイ状態だということはもうおわかりになっていますね。認識はしていますね。これにかわるものについては、マイクロチップというお話が出ているのですけれど、このあたりは、だろうという考え方をお持ちですか。もう鑑札はだめだというところまで認識は深まっているのではないかと思うのです。

【下村氏】 まだ、狂犬病予防法の中での規定がございますので、そのところと今回の動物愛護管理法の規定と整合性を持っていただくと…。

【兵藤委員】 それはわかるのですけれども、狂犬病予防法の中での鑑札は有名無実であって、今までずっとそれをやっていたのだけれども、そこについて7日間とか、むだにずっとおいても元の飼い主があらわれるものではないということで、鑑札のかわりに何か個体識別ができれば、その日のうちに帰れる可能性が非常に高いですね。今ほとんど行政以外のところは警察官がやっていまして、土日あるいは早朝・深夜は、警察の分野なのですね、逸走した動物に対しては。これは警察も困っている状況で、遺失物として取り扱ったらどうかという状況もあります。そのあたり非常に混乱していまして、何か個体識別がはっきりすれば、もっと費用がかからなくて、飼い主のところにすぐ戻れる。そして飼い主責任を問えるというところまできているのですけれども、私はどちらでも構わないと思うのです。狂犬病予防法であれ、今やっている動物愛護管理法であれ。狂犬病予防法でやるのでしたら、データベースを関係省、今後どうなるかわかりませんが一元化していただいて、登録をするときに、鑑札のかわりに新規登録のときにマイクロチップを導入する。早く立ち上がっていただきたいなと。そうすれば、3日保管しようが7日だろうが、こんな議論はすっ飛んでしまうのではないかと思っておりますけれど、いかがでしょうか。
 それからごめんなさい、もう一つ。いわゆる始末するときには動物を苦しめないように殺そうということで、今ガス室を導入しているのですけれど、ガス室の導入については今の質問とどういうふうに考えているか、ちょっと教えてください。

【下村氏】 鑑札の件とマイクロチップの件は、先生のおっしゃる部分に、私は大賛成でございます。ただ、いずれつかずという状態が非常に残存してしまいますと、問題が生じやすいのではないか。鑑札制度があるにもかかわらず、鑑札制度の中でマイクロチップがどういうふうにうまくできるのか。どちらを優先的に、何をやろうとするのか。もしやるのであれば相当整理をして、やりやすい、徹底しやすいという方法を導入していただくと助かるな、そういうふうに考えています。

【兵藤委員】 鑑札はだめだという結論がもう出ていますので、もう一つ上のステップにぜひ踏み切っていただきたいなと思っています。

【下村氏】 私どもは、実態としてだめかどうかという問題もありますが、法律の規定の中で現在あるという、そこを…。

【兵藤委員】 法律を変えればいいのですよ。

【下村氏】 そこのところをお願いしている。整合性を持った対応を、こちらがあるのに余り徹底されないから、こちらだということではなくて。

【兵藤委員】 現場がそれだけ不便して混乱しているのですから、ワンステップ何をしたら現場が混乱しない、それを整備できるかということを考えていただければ、おのずから答えは出てくるというふうに私は思っているのですけれど。

【下村氏】 おっしゃるとおりでございます。

【丸山委員】 質問ではないのですけれども、今までに出たお話にちょっと関連するのですが、私はこの全動協、それから各県の自治体の動物愛護センターという、名前は幾つかあるようですけれども、この役割は、動物行政にとって非常に重要なポイントだろうと思うのですね。
 お話を伺ってみますと、ほかの方から出たように、何かいつも後ろ向きのような印象を、どうしても今のヒアリングのお話で受けてしまうのですね。2の(1)の○の二つのところも、現在の流通実態にかんがみとかですね。そういうところから、どうしても管理をするお役所だと、そういうふうになりがちなのですけれども、せっかくこういういろいろな法律ができてきたので、もう少し全動協としても前向きに、ポジティブにいろいろなことを考えていただきたいなということを強く申し上げたいと思っております。

【林部会長】 それではよろしいですか。どうもありがとうございました。
 それでは続きまして、これで最後になるかと思いますが、動物との共生を考える連絡会からプレゼンテーションいただきます。では、青木さん、お願いいたします。

【青木氏】 動物との共生を考える連絡会の青木でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 今回の法律改正で、国と自治体が動物愛護にかかわる施策を考えるということで、私どもは法律を改めて見直させていただきました。なおかつ今度の法律の指針だとか、そういった方向の中に組み込んでいただければありがたいということを含めて考えてみました。このレジュメというか資料の中に書いてある項目の中には、多分法律の中でなければいけないのではないかという項目も多分に入っていると思います。
 いずれにしても、動物との共生を考える連絡会は、現在の動物愛護管理法、通称ペット法などと言われていますが、ペットだけではなくて、それ以外の動物にも対応できるような法律の仕組み、できれば動物虐待防止法、あるいは動物福祉法という形になっていただきたいという最終的目標がございます。その上、ここに14項目を書かせていただきました。最初から順番にご説明させていただきたいと思っております。
 最初の1番目は、5つの自由の保証ということがうたわれているわけですが、この5つの自由は、国際的に既に共通な認識となっていまして、動物福祉の基本といえるものであります。この5つの自由を保証しない飼い方は、動物虐待の第一歩であるというふうになっております。虐待の判断や虐待の定義に、このことを大いに参考すべきであると考えております。この5つの自由というのが、そこに書かれているものでございまして、まず1つが、飢えと渇きからの自由。2番目に、肉体的苦痛と不快からの自由。3番目に、外傷や疾病からの自由。4番目に、恐怖や不安、あるいは抑圧からの自由。5番目に、正常な行動を表現する自由。たびたび我々はこのことを提唱しているし、あらゆる機会を使って、これを判断の材料にしていただきたいと思っております。
 2番目の虐待内容の例示ということがございまして、今までいろいろな事件に我々の連絡会に所属する団体が取り組んできているわけでございますが、非常に虐待の判断が、特に自治体の職員が、残念ながらできていないという実態がございまして、このように例示をさせていただきました。
 動物の虐待を、精神的、肉体的苦痛を与えること(むやみに恐怖を与えることや酷使すること)を含めて具体的に例示します。
 1つ目は、適切な食事や水を与えないで、不健康な状態に陥らせること。2、動物にとって不衛生、危険な突起物がある等、不適切な飼育環境で飼育すること。3、みだりに殴る、蹴る、酷使する、動物同士を闘わせる、犬を動物にけしかける、傷を負わせる、動物に毒物を摂取させる、殺す等。4番目、動物にとって必要な健康管理を行わないこと。5番目、恐怖を与えたり、激怒させたり、パニックに陥らせること。6番目、動物の本来の行動を無視した飼育管理をすること。7番目、3番目の動物同士を闘わせる項目なのですが、改めてここで闘犬と闘鶏は最たる虐待の一つと考えておりますので、これはなくしていきたいと思いますので、別項目として挙げさせていただきました。
 それから、3番目、虐待や遺棄された動物の保護及び救済ということで、虐待や遺棄された動物が、命の危険や精神に影響を及ぼすおそれがある場合やさらなる虐待のおそれがあるときに、緊急的な救済措置がとれるようにしていただきたい。その場合に、地方公共団体等の施設に保護収容できるようにすること。犬猫だけが引き取りということで特化されておりますが、それ以外の動物についても、一時的保護ができるような仕組みを配慮していただきたいと思っております。
 虐待や何かを受けた動物自身が、自分が虐待されたのだよと訴えるわけではありませんので、どうしてもさきの2番目の事例とか何かを含めて、外で見ている人たちが、これは動物が虐待されているのだということを判断できるようにしていただきたいし、その救済を直ちにできるような仕組みをとっていただきたいということです。
 4番目として、法令違反の再犯防止。悪質な動物虐待等の法令違反に、動物取扱業者には登録の取り消しとか、あるいは無期限または一定期間の営業停止ということで対処できると思います。それから、一般の動物の飼い主が実際に起こした場合には、無期限、あるいは一定期間の飼育禁止を課せるような仕組みがとられてほしいと思って、これについては、ひょっとしたら法律でなければいけないのかもしれませんが、ぜひ条例等にもこのことが加味できるようにしていただければと思います。
 それから、ここでちょっと書いていないのですが、先ほど皆さんの議論を聞いているときにちらっと思ったのが、こういう事件とか事例を見たときに、特に私は獣医師が告発義務を持ってもいいのではないかと思っているのです。その辺のところで、獣医師の事例をいろいろと見てみますと、獣医師の診断書が裁判で極めて大きな証拠になっておりますので、そうなりますと、獣医師自身が告発できる人というふうに位置づけられるといいと思っています。
 それから、動物の売買についての項目でございます。子犬、子猫の販売については、生後8週齢というのが既に数字的に出ておりますが、この数字を60日、あるいは2カ月齢というふうに言いかえてもいいかと思っております。ペットショップの店頭に置かれて動物の仕入れた日にち、それから生年月日も、性別、あるいは親の血統書の番号等を、いわゆる子犬、子猫の個人情報をちゃんと明示して販売していただきたい。なおかつそれに健康証明書、あるいは検査の証明書みたいなものをつけて売っていただきたいと。
 というのは、私、動物病院をやっておりますが、生年月日がわからないで買って持ち込まれる子犬が圧倒的に多い。もう99%といっていいくらいです。これはやはり一個の動物の命を考えたときに、生年月日がわからないということはとんでもないことだと私は考えておりますので、その辺のところを義務づけたいと思っています。
 8週齢以下の幼齢の動物、特に出産時に親が死んでしまったような小犬や子猫の場合に、非常に問題のある行動を起こします。これは私もドッグ・トレーニングとかやっておりますが、非常に直しにくいのです。生涯にわたってこじれてしまうような性格を持ってしまうことがありますので、絶対早目に新しい家庭に行かないような仕組み、しかし、先ほど言ったような、出産のときに親が死んでしまったようなときは残念ながら、それに対応するような仕組みがとられればいいのですが、それは願いをするしかないので、それを売ってはいけませんよということはできないと思うのですが、問題は先ほどの個人情報、子犬の情報の中に、これを正確に加えておいてもらいたいということなのですね。そうしますと、それを理解した新しい飼い主が、それでもやっていきましょうということで飼うのであれば、これはやむを得ないと思います。
 当然のことに、次の商業動物も、販売を禁止していただきたい。動物病院をやっていますと、なぜこんなの買ってきてしまったのというのがあるのですね。鼻ぐちゃぐちゃ、目やにぐちゃぐちゃなどというのを買ってきて、連れてきたその日から治療をしなければならないということも現実にはあるわけです。こういったのは、やはり新しい飼い主の保護ということも含めて考えたときに、禁止すべき項目としてあっていいのかなというふうに思っております。
 それから、その次のインターネット販売とか、あるいは露天で販売する、それから移動販売をするというのは、常設でないので、動物取扱業の登録要件を満たしていないと私たちは考えておりますので、こういったものは受けつけないようにしていただればと思っております。
 それから、幼齢動物販売のための展示、先ほど終日というふうに自治会の先生方もおっしゃっていましたが、たった1匹だけでケージの中に入れておかれる小犬や子猫があるわけですが、この時期、非常に社会性を求めていく時期なものですから、できれば集団で展示していただきたいと。また、ストレスを避けるために、展示時間の制限、あるいは夜間の展示販売はやめていただきたいと思っています。
 それから、長期間、店頭での狭いケージの中で飼育されているために、問題行動として、排泄行動が起こってくるわけです。この排泄行動が、長くなればなるほど、新しい飼い主の家に行ってから、トイレ・トレーニングが難しくなっていきます。非常に直すのに時間がかかってしまいます。ややこしいという形になりますので、動物を取り扱う業務としては専門家として、この部分も配慮されてしかるべきであろうと考えております。
 それから、次の6番目の動物取扱業関連、動物関連の専門学校というのがたくさんございまして、そこの学校の中で教育実習用に動物をたくさん飼っておりまして、それを授業に供しているわけです。この中で飼育管理のあり方に問題があるよということが、我々の連絡会に所属している団体に報告がきているわけです。ですから、ここも査察ができるような仕組みを考えていただければと思っております。
 次の乗馬クラブ、観光乗馬、観光馬車、馬そりなどは、ほかの動物取扱業と比べて大いに異なっている部分があります。そのために、利用者の危険を回避し、責任の明確化のために基準等が独立したものを用意していただけばと思っております。
 馬は、祭りやイベントなどで一時的に貸し借りが行われておりまして、過度な殴打(むちで殴る等)や酷使されて問題になっています。また、骨折などの故障馬をその場で目に見えないようにさせたいということがあるのでしょうけれども、クレーンでつり上げたりして、暴れて苦しがっているようなことも実際に起こっていることもあります。こういった事故の場合の対処法を明確に指導していただけるといいと思っております。
 それから、先ほど来からのマイクロチップについての問題ですが、我々もマイクロチップはぜひ制度化していただきたいと思っております。この情報の一元管理のために、どうしても個人情報の管理とか、その信頼を得るために、ホストコンピューターを環境省の管理下のもとで設置してくださるよう望みたいわけです。このことが出発点であろうと私たちは考えております。
 何とかその普及を図りたいということが、先ほどから議論になっていますが、犬種団体とか、犬種団体として一つの名前を挙げますとJKCとか、猫の団体ですね。そこらが発行している血統書が、実は今まで随分いいかげんなものがあったり、インチキなものがあったりして発行されているということがありまして、信頼がなかった。その信頼を確保するために、マイクロチップのナンバーを血統書の中に入れ込んでいただければと。これを義務化しますと、かなり普及ができてくるのではないかと思っております。
 それから、動物の新しい飼い主、ちょっと面倒くさいので里親と言わせていただきますが、里親、里子によく引き取ってもらっているのですが、その小犬や子猫にマイクロチップの登録を呼びかけることによって、普及、促進と同時に、同じ動物が遺棄やあるいは迷子になってしまうということも防止することができるのではないかと思っております。
 それから、危険動物。先ほどありましたが、危険動物にマイクロチップを埋設するときに、獣医師が多分実施者となると思うのですが、ワニだとかライオンだとか、そういったものに対して実施するときに、どうしてもやはり研修が必要であろうということなので、その研修のための策もあってほしいと思っております。
 それから、8番目、多頭飼育の登録制ということですが、動物が1軒の家でたくさん飼われていることによって起こっている問題。いわゆる不衛生な中で飼っていたりとか、いろいろな問題が起こってきていますが、その改善策がなかなか示されていません。そこで立ち入り調査ができるような条例ができたらいいかと思っています。
 実験動物の福祉については、先ほど来、3Rが追加されたということなのですが、我々としては、3R以外に8項目が担保できる方法を模索していただきたいと思っております。実験動物の小委員会でも、この部分にこのことが組み込まれるような議論をしていただければと思っております。
 それから、10番目の動物の景品ですが、これはときどきありまして、販促だとか集客のための手段としてやっているので、これをぜひ明確に禁止をしていただければと思っております。
 先ほどの無脊椎動物についてもちょっと議論がありましたけれども、これも昆虫だとか何かが景品になっている場合もときどきあります。ですから、これもやはり一つの判断をしていただいて、入れておいていただいてもいいのかなと私は思っております。
 それから、次の安楽死についてですが、引き取られた動物たちが、ペットの動物、犬や猫であればあるほど、一括して炭酸ガスで殺すとなどということはやめてほしい。1頭、1頭、麻酔剤でやっていただきたいと。その中に凶暴な動物がたまにはいます。その場合には事前に動物に鎮静剤を投与して、対応していただけれと思っております。その理由として、動物愛護、終生飼養、飼い主責任を推進している一方で、福祉に反する方法だと思っておりますので、このことが子供たちにちゃんと説明できるのであろうかと。説明するときに非常に難しいと思っております。
 12番目は、学校飼育動物の福祉の向上について。この辺については、今、学校飼育動物にかかわる獣医師がたくさんおりまして、かなりの改善を示しているのですが、特に長期休暇、年末年始などにおけるボランティアがいない、かかわっていない学校にまだまだ問題があります。中には飼育施設にちょっと問題があるなどというのもありますので、そこら辺のところを改善を図っていただくということですね。同時に、動物愛護推進員やボランティアの協力を仰げるような仕組みも考慮されていいのではないかと思っています。
 13番目、動物愛護推進員ですが、動物愛護推進員の活躍が残念ながら、余り認められていません。ここら辺について、どうあるべきかなどについて動物福祉や法律だけの勉強ではなくて、さまざまな動物の問題についての研修が必要であると思っております。この動物愛護推進員は社会啓蒙の大きな役割を担ってくださる存在だろうと思いますので、ぜひ、年1回とかという回数ではなくて、何回かの開催、セミナーみたいなものをやっていただければと思っております。
 最後の14番の農場動物、畜産動物の福祉とフリーダムフード、ここのことについては、動物愛護管理法では今回全く触れられておりませんが、次回を含めて考えるときに、この辺のところを考慮していただければと思います。特に養豚だとか養鶏の中で、狭いケージだとか何かで飼われていることがあります。これはヨーロッパでは禁止の方向に向きました。ぜひ、我が国でもそういう方向に向いていただければと思っております。
 この5つの自由が保証されている畜産動物から得られた畜産食品は安全であるということが、だんだんと認識されております。こういった安全の得られている畜産食品のことをフリーダムフードと言っております。この実態は、この間、イギリスに行ったときにお聞きしてきたのですが、15%程度、毎年消費がふえているというふうに認識されつつあります。対象動物はここに書かれておりますが。それから、OIEという組織がございまして、ここでも提言をしております。また、農水省の管轄で、既に2回ほど、家畜動物の福祉についての検討会が既に開催されておりますので、この部分についてもご議論されてもいいと思っております。
 産業動物に関する基準の見直しの際にはぜひ、家畜の福祉を図ることによって、食の安全と安心をうたうことができますので、このことで動物愛護管理法が寄与できるように望んでいるわけです。
 以上でございます。どうもありがとうございました。

【林部会長】 ありがとうございました。それでは、ただいまのプレゼンテーションに対して、どうぞ。

【前島委員】 一つだけ聞きます。16ページの8の多頭飼育の登録制というのがありますけれども、先ほど、数値をいろいろ示すべきだということですが、多頭飼育というのは青木先生の方で、こういうものを多頭飼育というのだという、何か提案といいますか。定義がございますか。

【青木氏】 我々で散々議論しまして、犬猫あわせて10頭と。ペット動物に関しては、そういうふうな形になっております。

【前島委員】 1人が扱うとか、1軒が扱うのが10頭ということで。例えば、密度といいますか、1平米当たり何頭、こういうことはないのですか。

【青木氏】 残念ながらそこまで書いておりません。特に実験動物の中に、一つのケージの中に何十匹も入れて飼っているなどというのもありましたね。そういうのはこれから議論されて、数字制限があってしかるべきだろうと思っております。

【信國委員】 今の一つ、17ページ、産業動物についていろいろ問題、議論があるということは承知しておりますけれども、今回の提議の中で、直ちに議論せよということだと、ちょっときついなというのがいたしました。
 それから、全般に非常に高いレベルに底上げするということ、そのこと自体は非常にいいのだろうと思いますけれども、反面、基準を高くすれば、例えばそれで飼える状況の人というのは、逆に少なくなってくると。そうしますと、既に生を受けている動物について逆に安楽死であるとか、そういうものが非常に大きくなるという、非常になかなか難しい議論だろうと思うのです。この手の議論、一つの基準でもって、それに沿うようにというのは、非常に議論としては楽なのですけれども、物事には常に逆の面があるので、そこらをどういうぐあいに調整とっていくかというのが難しいところだろうと思うので、私としてはそれを意識しながら議論には参加していきたいと思いますけれども、そういう側面があるということはご承知おきいただきたいと思いますが。

【青木氏】 その部分については、我々も理解しております。

【松下委員】 動物との共生を考えるというお立場から、大変示唆に富んだご意見をいただいたと思うのですけれども、全体とすると、5つの自由を持った動物たちを保証してほしいという、動物側からのご意見が全体的なように思うのです。
 特に私は5番の正常な行動を表現する自由といったことに関して、当然のことなのですけれども、今、全体的には、人間がそういうところを理解していないために、自分の方に引き寄せた動物との対応をしているように思うのですね。
 それで、動物愛護推進員の仕事が余りよくできていないのではないかというようなご意見もございましたけれども、5つの自由を謳歌して動物が生きていくために、人間がそういうことを理解するのに、どのような運動、活動が要り用なのだとお思いになりますか。
 例えば、法令違反者の再犯防止というのは、無制限、あるいは一定期間の飼育禁止を課すというのですけれど、一定期間禁止をすることが、人間にとって非常に苦痛だと、そういうことはもう一切しないとなるのだと思うのですけれど、期間が終わってまた戻ってくれば、その期間があるだけで、もとの木阿弥ということも考えられるように思うのですが、いかがでしょうか。

【青木氏】 5つの自由についての研修制度というのが、いろいろな形であってしかるべきだろうと思うのですね。特に動物愛護推進員の方たちは、この5つの自由というものを動物に保証するという考え方は、共通認識として持っていただきたいというのが我々の願いなわけです。ですから、それがベースとなって、飼われている動物がかわいそうな状態になっているのか、そうでないのかという判断をするための基本的なものというふうに続けておりますので、まず、そこら辺の共通認識を確実に得ていただくための研修会というものがあっていいと思うのですね。
 先ほどの動物園だとか、いろいろなところで飼われている動物たちが、本当に5つの自由になっているのか、どうしても見たくなってくるようになると思うのですね。それが国民の意識の向上というふうに私どもは思っています。ですから、一人一人の国民がそういったことを理解していく一つのステップとして、まず、動物愛護推進員たちがこのことを理解する。その上でいろいろなところに広がりを持ってもらいたい。
 もう一つの再犯防止についてなのですが、これは残念ながら、裁判事例なのですね、ほとんどが。裁判官が違反した人たちに対して、どう判断するかということなものですから、なかなかその辺の再犯、飼育禁止ということが、我々としては願っていても、裁判官がそう判断するかどうかというのは、残念ながらわからない。
 たまたま1カ月、あるいは2カ月の飼育禁止という判決が出てしまったときに、その人が判決が終わったというのでまた飼い始めて、また同じことをやってしまったということになると、また同じように訴えられるわけですね。そうすると今度裁判官は、もう生涯、お前は飼ってはいけませんよという判決を下すかもしれませんが、残念ながら司法制度というのはそういうふうな仕組みになっておりますので、それを待つしかないのではないかと思っております。

【中川(李)委員】 動物愛護推進員というのは、何かに所属していらっしゃるのですか。どういうあれなのでしょうか。

【青木氏】 今、私が理解しているのは、全くそういうことがなくて、いわゆる自治体からの呼びかけに対して、ああ、私なってもいいよと言って手を挙げた人。あるいは獣医師会の中で、あなたなりなさいよみたいなという形で選任されてなっている人もいます。ですから、残念ながら…。

【東海林動物愛護管理室長】 動物愛護推進員は、動物愛護管理法に基づきました職名といいますか、ボランティアということになっております。それで任命権者は都道府県知事等ということで、自治体の長になっておりまして、そういった意味では非常にグレードの高いものということになっております。
 ですから、中川先生からのご質問で、所属といった意味では、各自治体の長に属するというところでご理解いただきたいと思います。

【中川(李)委員】 もしね、ちょっとそこに何か相談に行きたいというときは、わかるわけですか。何かそこの家の表札がかかっているとか。そういうのはないのですね、別に。

【東海林動物愛護管理室長】 はい。すべての自治体が推進員を置いているわけではございませんで、5年前の法改正でできた制度ですので、今、正確な人数は忘れましたが、全自治体で3,000人ぐらい、自治体数にして二、三割ぐらいということになっております。ただ、いままさに指定の検討をしている自治体が多うございますので、もう少し待っていただければ、ほとんどの自治体に流通してくるのではないかと思います。各自治体では、こういう方が推進員になっていますよと積極的にPRをしておりますので、自治体によってはホームページ等でわかるところもあれば、ちょっとそういうところまで積極的にやっていないところもあるといったようなところでございます。

【中川(李)委員】 ぜひ、はっきりとあの人、この人とわかるように、地域に配置していただければ。

【林部会長】 そうですね。2000年の施行のときには、各自治体が、動物愛護推進員を置くことができるという表現だったですかね、たしか。そうですね。どうぞ、東京都の状況を、奥澤委員。

【奥澤委員】 今の件、ちょっと補足させていただきますが、本来的であれば、そういう推進員の方々がどこにいらっしゃるかというのを大きく公表して、活動していただくということもすごく効果的だと思うのですが、一面では、個人情報を公表することによって、いろいろなものが全部そこの方のところに持ち込まれてしまうということも配慮しなければならないということで、なかなか苦慮しているのが現状でございます。

【林部会長】 はい、ありがとうございました。ほかにご質問、ご意見。清水委員とそして次に大矢委員。

【清水委員】 すみません。さっき青木さんからお話のあった、生年月日のわからない犬猫は99%と。ほんまかいなと思いまして、僕びっくりしたのですけれども。野良犬、野良猫とか、だれかにもらってきた、友人からもらえばわかると思うのですが、ペットショップから買ってきて、そんなのもわからないのかって、ちょっと仰天したのですけれども、聞き間違いではないかと思ったぐらいなのですが。
 先ほどのお話でも、鑑札のないのが随分いるという話がありましたけれども、みんなで議論して、今回の法律に掲げられたものは非常にグレードが高いというか、高い理想を掲げているわけですけれど、現実がこんなことで、ではマイクロチップをガイドラインとか何かで義務づけたり、盛り込んだから何か動くのかというのは、非常に悲観的にならざるを得ないわけですよね。狂犬病予防法というのは、ものすごく強いものだとばかり僕は思っていたものですから、私は犬や猫を飼っていないからかもしれませんけれど、そういうことに全然無頓着な人たちがたくさんいるということは、実態は僕なんかが考えるのと全く違うと。はるかに後進国というか、天真爛漫というか、そういう事態なのだと思うのですね。それをやはりもう一度ちゃんととらえないと、まっとうな議論ができないのではないかと思うぐらい、私の理解が悪かったのでしょうけれど、ちょっとあきれてしまって、何でこんなことになっているのだという感じがするのですが。こういう法律の改正によって、いい方に向かうという可能性があると思われますか。

【青木氏】 いわゆる個体識別の問題については、これはどこまでやられるかというのは実際に運用してみないとわからない部分があると思うのですね。特に狂犬病予防注射の鑑札の装着率というのですか、これがさきの改正運動のときに、厚生省から示された数字を見たときに、私自身がびっくり仰天をしたわけです。余りにも低いので。

【兵藤委員】 実態は、昔は番犬で、首輪の立派な皮のやつをやって、それとあわせて鑑札ができていたのです。今はほとんど小さくなってしまって。こんな鑑札をつける余裕がない犬がほとんどになってしまいまして、実態があの当時の法律からいって、もう時代がずっと進んでしまって、日本で飼っている犬の種類すら変わってしまったと。こういうのがつけられない。首輪をやっていない犬たちですので、首輪をつけたところに鑑札をつけるということ自体が非常に困難な時代に突入しているという、そういうことでございます。

【林部会長】 狂犬病予防法については論議がありまして、もう40年近くも日本で狂犬病が発生してないところに、この予防注射が本当に必要なのかどうかという論議が、まずあるのです。これは流行していますと、飼い主たちも絶対にやりますよ。これはいいの悪いのではなくて、例えばヨーロッパなど見ると、隣の国で狂犬病が流行しているのにもかかわらず、自分の国ではこれを義務づけていないという国すらあります。だから、これについて論議が将来いくのだったら、法は法ですから、それを守らない人がたくさんいるということは余りいい事態ではないと思いますけれども、それで日本人の意識が低いということには、僕はならないと思っています。
 ほかにご意見あれば、どうぞ。

【大矢委員】 15ページ、動物の売買の一番最後のところ、インターネット販売、露天販売、及び移動販売は常設でなく、動物取扱業の登録要件を満たしていないと思うということなのですけれども、今度の改正法の中で、常設ではなく、見えない部分の人たちも登録制にして絞っていこうという目的があるわけですけれども、それに反するような感じなのですけれども。

【青木氏】 まさにそのとおりなのです。というのは、実態がつかみにくい部分を登録要件として認めてもらうと、やはり難しい部分がどうしても起こるのではないかなということがあって、これは事務所とか何かと便宜的に言っていますが、何とかそこら辺をはっきり見える形にしたい。何が言いたいかというと、やはり対面販売を主張したいのです。

【大矢委員】 おっしゃることはわかっているのですけれども、前回の委員会でも審議したのですけれども、販売するとき、第三者でもいいから、2日間ぐらい、必ずその現物をチェックしようとか、それなりの手当をする。それから、登録されていない業者での動物の売買、移動は禁止しようとか、そういう次の手を打っていくわけですから、ちょっとこの部分については、私は逆行しているのではないかな。動物を取り扱っている者としてもですね。また、私も動物の売買をやっておりますけれども、事務所だけなのですよね。店舗は持っていないわけです。ですから今まで登録されていなかった。以前も申し上げましたけれども、私は外国から動物を輸入して、動物園や水族館に納めさせていただいているわけですから、自分では動物取扱業だと認識しているわけですね。でも、現行の法律の中だと動物取扱業ではないから登録しなくていいという、何かどこかで捨てられたような感じがあったわけですけれども、今度はきちっとそういうものも登録される。これが今度の改正の一つの大きな部分だろうな、自分で販売業をやっていながら、そう思うのですね。ですから、このご意見に対しては、真っ向から反対させていただきたい。

【青木氏】 わかりました。我々の連絡会でも、大矢委員の意見を受けて、もう一回議論してみたいと思います。

【林部会長】 ほかにいかがですか。私も最後に一つ、これは全面的に高いレベルで書かれておられて敬意を表しますが、今度の法改正の中で、先ほど信國委員もおっしゃいましたけれども、外れている部分がありますので、ここを全部生かせることはなかなかいかないだろうと。それから、なかなか政省令になじまないところも随分お書きになっておられるというところで、これは最大限尊重させていただきたいと思いますが、1点だけ。
 私たちが今論議しているもとになります法律は、動物愛護に関連する法律ですが、この愛護というのは、正確にいえば虐待防止だろうということを考えますと、虐待防止のその内容をある程度はっきりさせるという、15ページの2番目の例示のところですが、これはこれで一つのお考えで大変いいことだと思うのですが、この中の闘犬、闘鶏ですね。闘犬はちょっと別にして、特に闘鶏、ニワトリの場合には文化的な行事として行われている。日本でいいますと新潟県などがかなりそれに近いのですが、そういうものを考えますと、必ずしも全面的にこれを入れることが正しいかどうか。タイなどの例を見ますと、あそこは6,000万人いる国なのですが、闘鶏を飼っている人が300万人、5%いるのです。1990年代ずっと闘鶏を禁止する方向で動いたのですが、アンダーグラウンドにいってしまうものですから、今度は逆に表に出して、そこできちんとした虐待防止等の配慮をさせようという方向に、政府全体が方向転換しているのですね。日本も若干そういう面がなきにしもあらずというところが、私の知っている知識の中でありまして、これはきちんとしたレクリエーションのもとで、文化的なものとしてやらせるということは、それなりの意味があるのではないかと思いますので、こういう闘犬、闘鶏を行うことという例示の仕方がいいかどうかということについては、ちょっと私は逆の意見を持っているのですが。

【青木氏】 いずれにしても、闘牛を含めて、いろいろな動物を闘わせる、闘わせ方ですね。特に闘鶏の場合は、一時期私も悲惨な例を見ているわけですが、蹴爪に安全かみそりつけて戦わせると。出血だらけですよね。むちゃくちゃなのがあったりするわけです。非常にどうしようもない。これは間違いなく子供たちに見せられるものではない。そういうのがありましたので、やはり原則禁止という方向が望ましいかなと思ったわけです。

【林部会長】 ありがとうございました。それでは、これで大体終わりたいと思いますが、どうもありがとうございました。
 本日予定しておりましたプレゼンテーション、すべて終わりました。これまでのご説明いただいたことを今後の論議に生かしてもらいたいと思います。
 この後、議題では、2のその他とありますが、何かございませんか。

【大矢委員】 幼齢動物のことなのですけれども、業界の方から以前いただいた資料には、犬猫等と書いてあるのですけれども、ペットショップの方から手乗り文鳥だとか、手乗りのインコや何かはみんな幼齢でなければ商品にならないので、そのことだけをきちんと委員会の中で発言しておいてほしいという要望がありましたので、一言申し伝えておきます。

【林部会長】 はい、承知しました。

【青木委員】 おわびをかねて委員長に要望です。私、あした、本校の業務によりどうしても出席できません。おわびを申し上げます。それからもしかしたら、あしたご発言予定の方がいらっしゃるかもしれませんが、あわせておわびしたいと思います。
 そして、今日のヒアリングという名前を私は素直に信じて、要するにご意見を、どういうことをおっしゃっているのかをとにかく細かく伺うと、こういう趣旨で来たのですが、比較的皆さん議論をなさったように思います。そしてそのうち多くは複数の方がご指摘なさったように法律レベルの問題であって、今できている改正動物愛護管理法を受けて、その下の政令、省令で何を決めればいいかという本来の付議事項から外れた議論で、時間がかなり使われたような印象を持っておりまして、せっかく20分という短い時間でプレゼンテーションをしてくださる方が、その中で言えなかったことを、自分の意見との違いはちょっと置いておいて、たくさん聞き出して記録に残していただきたいと思います。ちょっと生意気なことを申し上げましたが、以上です。

【林部会長】 いや、丁寧なご意見、ありがとうございました。あしたはその方向で頑張りたいと思いますので。ほかによろしいですね。
 そうしたら、今後の日程等について、事務局からご連絡いただきたいと思います。

【事務局】 ご意見いただいた関係団体の皆様におかれましては、ありがとうございました。また、林部会長を初め委員の皆様方におかれましては、長時間にわたりご審議いただきありがとうございました。
 今後の日程なのですけれども、明日、9月27日火曜日、14時から場所は経済産業省別館第944会議室、9階に変えまして、引き続き関係団体からのヒアリングを予定しております。
 本日はどうもありがとうございました。

【林部会長】 それでは以上をもちまして、本日の動物愛護部会を閉会いたします。ありがとうございました。