中央環境審議会動物愛護部会(第7回)議事録

日時

  

平成16年1月14日(水)午後2時00分~午後3時54分

場所

  

環境省 第一会議室

出席者

竹内 啓  部会長    
今泉 忠明  委員  小川 益男  委員
藏内 勇夫  委員  菅谷 博  委員
杉山 公宏  委員  関 哲夫  委員
中川 志郎  委員  中川 李枝子  委員
兵藤 哲夫  委員  丸山 務  委員
山下 喜弘  委員    
小沢 審議官   盛山 総務課長
東海林 動物愛護管理室長

議 題

(1)
展示動物の飼養及び保管に関する基準の見直し案について
(2)
その他

配布資料

資料1   展示動物の飼養及び保管に関する基準(見直し素案)
資料2   展示動物の飼養及び保管に関する基準(見直し素案の新旧対照)
参考資料1   展示動物の飼養及び保管に関する基準の見直しに当たっての基本方針
参考資料2 検討スケジュール 
参考資料3 動物の愛護及び管理に関する法律(関連条文抜粋)
参考資料4   展示動物の飼養及び保管に関する基準(現行)
参考資料5   平成16年度動物愛護管理関連予算(案)の概要等

議事

【東海林動物愛護管理室長】 定刻となりましたので、これから中央環境審議会動物愛護部会を始めたいと思います。
 まず、本日の委員の皆様のご出欠についてご報告いたします。
 本日は、委員15名のうち12名の方がご出席しておりますので、規定により部会は成立しております。なお、欠席していますのは大槻委員、前島委員、松下委員の3名です。それでは、竹内部会長、よろしくお願いいたします。

【竹内部会長】 部会長を仰せつかっております竹内でございます。本年初めてでございますので、明けましておめでとうございます。早々からこういう会議を開きまして、皆さん大変お忙しい時期だと思うのですけれども、大勢のご出席を賜りまして、まことにありがとうございました。本年も皆様方にとりましてもよいお年であることを祈っております。同時にまたこの部会にとりましても、これからお諮りをするような非常に大きな動きもございますので、ぜひ、一歩一歩と着実に動物愛護法の実効が上がるような施策をつくる上で、力を発揮していきたいと思っていますので、どうぞよろしくご協力、ご支援のほどをお願いしたいと思います。
 それでは、座らせていただきまして、ただいまから第7回の動物愛護部会を開催いたします。
 議事に先立ちまして、小野寺自然環境局長からごあいさつをいただく予定だったのですが、ご都合が急に悪くなられたようでございますので、審議官からお願いいたします。

【審議官】 自然環境局担当審議官の小沢でございます。部会の委員の先生方におかれましては、私どもの動物愛護管理行政の推進につきまして、日ごろ何かとご指導、ご鞭撻、あるいはご協力を賜っておりまして、厚く御礼を申し上げます。本年もひとつよろしくお願いを申し上げます。
 さて、本日の部会でありますけれども、ご案内のとおり12月に私どもから展示動物の飼養及び保管基準の見直しについて諮問申し上げております。その前回の部会におきまして、この見直しに当たっての基本方針について議論をしていただいておりますので、本日はその方針にのっとった見直し素案というものを提示いたしまして、ご審議いただきたいと思っております。
  前回も申し上げましたが、この基準につきましては、策定後、非常に時間がたっております。やはり世の中の要請というものを受けて、早急に見直しし、成案を得て実施に移していきたいと考えておりますので、ぜひ格別のご協力をいただき、精力的なご審議を賜りますようお願い申し上げます。
 それから、昨年末の政府の予算編成でございますが、最近の予算編成はその財源が厳しい中で非常に厳しい議論をやっておるのですが、後ほど事務局から報告させていただきますが、動物愛護管理行政関連予算につきましては、もともと非常に少ない額だったのですけれども、多少充実が認められております。このように施策が進むことによって、必要な我々の行政的な対応というのも進むという側面もございます。その点までもご勘案の上、何分今後とも動物愛護管理のためにご支援、ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げまして、冒頭のあいさつとさせていただきます。ありがとうございました。

【竹内部会長】 どうもありがとうございました。
 それでは、議事に入りますが、最初に事務局から配付させていただいた資料についての確認をお願いしたいと思います。

【事務局】 それでは、配付資料の確認をさせていただきます。お手元の資料をごらん願います。
 配布資料といたしまして、まず、資料1として展示動物の飼養及び保管に関する基準(見直し素案)を添付してございます。資料2といたしまして、その見直し素案の新旧対照をつけてございます。参考資料1といたしまして、展示動物の飼養及び保管に関する基準の見直しに当たっての基本方針、これは前回の部会でご審議いただいた内容を添付してございます。参考資料2といたしまして、検討スケジュール、参考資料3といたしまして、動物の愛護及び管理に関する法律の関係条文抜粋を添付してございます。参考資料4といたしまして、現行の展示動物の飼養保管基準を添付してございます。参考資料5といたしまして、平成16年度動物愛護管理関連予算(案)の概要等を添付してございます。
 以上でございます。何か資料の不備がございましたら、事務局までお申しつけ願います。

【竹内部会長】 よろしゅうございますか。
 それでは、とりあえずないということで進めさせていただきます。
 まず、議事の第1でございます。展示動物の飼養及び保管に関する基準の見直し(案)についてでございます。
 これにつきましては、昨年12月11日に開かれましたこの部会におきまして、ご検討、ご審議、そしてご了解いただきました基本方針がございますが、この基本方針に沿いまして事務局でまとめるようにお願いをした素案でございます。既に、お手元にお届けいたしましたけれども、もう一度ここで、大事なところを事務局からご説明をいたしたいと思います。
 それでは、どうぞお願いします。

【東海林動物愛護管理室長】 それでは、議事に従いまして、資料の説明をさせていただきたいと思います。座らせていただきます。
 まず、最初に参考資料1、基本方針をごらんいただきたいと思います。前回12月11日に開催しました動物愛護部会でご審議いただいた基本方針です。きょうの基準の見直し案につきましては、この基本方針に基づいて現行の基準を見直したものになっております。見直したものの素案の資料としましては、資料1と資料2という形で分けて整理してございます。資料1が見直し後の素案の案件そのものでございます。資料2が現行の基準にどこを追加し、どこを削除したかというものが見え消しでわかるように整理したものになってございます。きょうのご説明は、若干見づらいと思うのですが、資料2の見え消し版の資料に基づきまして、内容をかいつまんでご説明させていただきたいと思っています。
 では、資料2に基づきまして説明をさせていただきます。
 まず、資料2の1枚表紙を開きまして、1ページ目を見ていただきたいのですが、飼養及び保管に関する基準の目次構成の新旧対照表をつけてございます。
 変更のポイントは2つになってございまして、まず1つ目は、現行の基準が各種の展示施設、動物ごとに整備されてないためにわかりやすさに欠けるきらいのある構成になっているということで、基本方針に従いまして、共通基準と個別基準に対応させたものです。第3共通基準、第4個別基準という構成になっております。
 それからもう一つの変更点は、基本方針として掲げました改定の4つのポイント、展示動物の福祉の向上を図る、ペット等の販売・繁殖施設等における飼養等の適正化を図る、動物の愛護及び適正管理方法の普及啓発を図る、それから動物による人への危害等の防止を図る、これらを踏まえまして、事項の追加、現行基準の内容の充実を図っております。
 例えば、昨今の状況にかんがみまして、共通基準では、動物に起因する感染性の疾病に係る知識の修得等ですとか、あるいは記録台帳の整備等、施設廃止時の取扱い、こういった事項の追加をしているところでございます。
 それでは、見え消し版の資料2の3ページからご説明をさせていただきたいと思います。
 まず第1一般原則は、基本的な考え方、動物の選定、計画的な繁殖、終生飼養及び処分方法の4つに分けて整理してございます。です。それぞれの主な変更点でございますけれども、まず基本的な考え方につきましては、動物が命あるものであることにかんがみまして、生活の質の向上に関する配慮事項の充実を図っています。2(動物の選定)なのですが、これは外来種問題への配慮の充実を図っております。3(計画的な繁殖)ですが、展示動物の計画的な繁殖をすることにより、余剰動物を生じさせないことへの配慮の充実、4(終生飼養及び処分方法)では、終生飼養の確保の追加等、やむを得ない場合の安楽殺処分の方法に関する記述の充実を図っております。
 見たところ、追加と削除の部分がかなり多いように感じられますけれども、基本的に改定ポイントはこの4つになっておりまして、わかりやすい基準をつくるという観点から記述内容の詳細化、具体化を図った結果、このような結果になっているものでございます。
 それから、4ページ、第2定義に移ります。
 基本方針では、この基準の対象動物の種類としましては、哺乳類、鳥類及び爬虫類とされております。対象施設としましては、動物園・水族館、動物サーカス等の興行・客よせ施設、それから動物とのふれあい施設、さらにペットの販売・繁殖施設、動物対象の撮影施設といった、動物を飼養、保管している施設を対象としています。これを踏まえまして、第2定義の記述内容の充実や、表現の整理を実施しました。
 その結果でございますけれども、例えば(3)展示動物でございますが、結果として、動物園動物・ふれあい動物・販売動物・撮影動物の4つに区分されてございます。なお、前回ご意見・ご質問がありました、ふれあい動物には、乗馬用他の一部に含まれるということになるわけです。
 それから、第3共通基準でございますけれども、まず1動物の健康及び安全の保持でございますが、これは2点、動物の福祉の向上を図るという観点、もう一つは平成11年の改正法の趣旨との整合性の確保を図るという観点、つまり具体的には動物取扱業の届出基準との整合性を図る観点から各種配慮事項の追加と充実を図ってございます。
 例えば、(1)飼養及び保管方法につきましては、5ページの上段の方、片仮名のエ、オ、カ、キの項目を追加いたしました。読み上げますと、「エ群れ等を形成する動物については、その規模、年齢構成、性比等を考慮し、できるだけ複数で飼養及び保管すること。オ異種または複数の展示動物を同一飼養施設内で飼養及び保管する場合には、展示動物の組み合わせを考慮した収容または個別収容を行うこと。カ幼齢時に社会化が必要な動物については、一定期間内、親子等を共に飼養すること。キ疾病にかかり若しくは負傷した動物、妊娠中若しくは幼齢な動物を育成中の動物又は高齢な動物については、隔離又は治療するなどの必要な措置を講じるとともに、給餌及び給水を行い並びに休息を与えること。」を新規に追加してございます。
 それから、続きまして(2)ですが、施設の構造等につきましては、とりわけ動物園動物については、動物本来の習性に近い行動、こういった行動様式の発現を促すことが重要であるといった考え方のもので、アからオまでの事項を追加してございます。読み上げます。「ア個々の動物が、自然な姿勢で立ち上がり、横たわり、羽ばたき、泳ぐなど日常的な動作を容易に行うための十分な広さと空間を備えること。また、展示動物の飼養及び保管環境の質の向上を図るため、隠れ場、遊び場等の設備を備えた豊かな飼養及び保管環境を構築すること。イ排せつ場、止まり木、水浴び場等の設備を備えること。ウ過度なストレスがかからないような温度、通風及び明るさが保たれる構造又はそのような状態に保つための設備を備えること。エ屋外又は屋外に面した場所にあっては、動物の種類及び習性等に応じた必要な日照及び風雨等を遮る設備を備えること。オ床・内壁・天井及び附属設備は、清掃が容易であるなど衛生状態の維持及び管理がしやすい構造にするとともに、突起物、穴、くぼみ及び斜面等により、障害等を受けるおそれがないような構造にすること。」を新規に追加してございます。
 (3)飼養者の教育訓練等では、その訓練内容としまして、展示動物の保護、それから展示動物による事故の防止、これはもちろんなのですけれども、これ以外にも「観覧者等に対する動物の愛護精神等の普及啓発に努めること。」を追加してございます。
 それから、6ページに移ります。2人の生活環境の保全につきましては、ほぼ現行の基準どおりになっております。
 3危害及び逸走の防止につきましては、展示動物による事故の防止はもちろんですが、これに外来種問題などの環境保全上の問題の防止を加えまして、配慮事項の充実を図っております。
 また、6ページの下、三分の一ぐらいのところにあります、(3)災害時等の緊急時対策でございますけれども、こういった緊急時対策における地域防災計画とも整合性を図ることについて規定してございます。
 6ページの下、2行目になりますが、4動物に起因する感染性の疾病にかかる知識の修得等につきましては、感染症予防への適切な対応を図る観点から、この項目を新規に追加したものでございます。読み上げます。「管理者及び飼養者は、展示動物等に起因する感染性の疾病に関する十分な知識及び情報を修得するとともに、その飼養及び保管に当たっては、感染の可能性に留意し、不適切な方法による接触を避けるなどして、飼養者自らの感染のみならず、観覧者への感染の防止に努めること。また、飼養者は、展示動物に接触又は動物の排せつ物等を処理したときは、手指等の洗浄を十分に行い、必要に応じて消毒を行うこと。さらに、管理者は、感染症の発生時には、必要な対策が迅速に行える体制を整備すること。」としております。
 次に、5輸送方法でございますが、これは動物の福祉の向上を図る観点から、(1)必要に応じて適切な休憩時間を確保することや、(2)衛生管理に関する配慮の充実を図ることについての配慮事項を追加しております。
 それから、6記録台帳の整備等と7施設廃止時の取扱い、これにつきましては、新規に追加したものでございます。読み上げます。「6記録台帳の整備等 管理者は、展示動物の飼養及び保管の適正化並びに逸走した展示動物の発見率の向上を図るため、名札、脚環又はマイクロチップ等の装着等による個体識別措置を技術的に可能な範囲内で講じるとともに、特徴、飼育履歴及び病歴等に関する記録台帳を整備するように努めること。」7施設廃止時の取扱い、これは廃業する動物園やペットショップが増えていることから新規に追加したものです。「管理者は、施設の廃止に当たっては、展示動物が命あるものであることにかんがみ、できるだけ生存の機会を与えるように努め、飼養及び保管している展示動物を他の施設等へ譲渡しするように努めること。やむを得ず、展示動物を殺処分しなければならない場合は、苦痛を与えない適切な方法をとるように努めること。」としています。
 それから、7ページの下、4行目からは、第4個別基準ということになります。個別基準は、動物の区分に従いまして、ふれあい施設を含む動物園施設、販売施設、撮影施設、この3つに分けて構成してございます。
 まず、1動物園施設等、これはふれあい施設も含みますが、主な変更点としましては、8ページをお開きいただきたいのですが、ア、イ、ウにございますが、「演芸をさせる場合には演芸及びその訓練は、動物の生態、習性及び生理等に配慮し、過酷なものにならないようにすること。」、続いてカになりますが、「動物園等の役割が多様化している現状を踏まえ、動物の生態、習性及び生理並びに生息環境等に関する知見の集積及び情報の提供を行う等により、観覧者の動物に関する知識及び動物愛護精神についての観覧者の関心を深めること。」この2つについて内容の追加と充実を図ってございます。
 それから、9ページに移りますが、(4)展示場所の移動につきましては移動時における動物の福祉の向上と事故の防止について、また、人に危害を加えるおそれのある展示動物についても含む内容となっており、事故の防止を図る観点から内容、配慮事項の充実を図ってございます。
 それから、(5)展示動物との接触につきましても、動物に起因する事故等の防止、動物に対する苦痛の軽減ですとか、休息の確保という観点から事項の追加を行ってございます。
 以上が、個別基準の動物園施設等に係る主な変更点になってございます。
 次に、2販売施設と3撮影施設でございますけれども、動物の福祉の向上と動物取扱業の取り組むべき姿勢を導入したものとして、改正法の趣旨との整合性を図る観点から、新規に書き起こしているものでございます。読み上げさせていただきたいと思います。「2販売施設 管理者及び飼養者は、販売動物を飼養及び保管する販売施設等においては、次に掲げる事項に留意するように努めること。(1)展示方法 販売動物の展示に当たっては、第3の1の(2)(施設の構造等)に定める施設に適合する施設において飼養及び保管するとともに、販売動物に過度の苦痛を与えないように、展示の時間及び販売施設内の音、照明等を適切なものとすること。(2)繁殖方法 遺伝性疾患が生じるおそれのある動物、幼齢な動物又は高齢な動物を繁殖の用に供さないこと。また、みだりに繁殖させることによる過度の負担を避け、適切な繁殖回数とすること。」、これは年に何回も繁殖させることを防止する観点から書き加えているものでございます。「(3)販売方法 ア幼齢な動物のおける社会化期の確保など、販売動物の種類に応じた生態、習性及び生理に配慮した適切な販売方法とすること。」これは例えば、犬・ねこで言えば、かなり幼齢な犬・ねこを親元から離して販売するといったことに関連する配慮事項でございます。「イ販売に当たっては、動物が命あるものであることにかんがみ、販売先における終生飼養の確保の可能性を、確実な方法により確認すること。ウ販売動物の販売に当たっては、その生態、習性及び生理、適正な飼養及び保管方法、感染性の疾病等に関する情報を提供し、購入者に対する説明責任を果たすこと。また、飼養及び保管が技術的に困難な種については、」これは外来種なども入りますけれども、「終生飼養が確保されにくい傾向にあることから、このような種に関する情報の提供は特に詳細に行うこと。エ野生動物等を家庭動物として販売するに当たっては、特に第1の2」これは動物の選定方法の留意事項に使われているものでございます。「特に第1の2に定める一般原則の遵守に留意すること。また、環境保全の観点から、特別な場合を除き、野生動物は本来自然のままに保護すべきであるという理念にもとる場合が少なくないこと等から、野生動物、特に外国産の野生動物等を家庭動物の用に供する販売動物として選定することについては慎重に行うこと」。
 変わりまして、3撮影施設の個別基準になります。「管理者及び飼養者は、撮影動物を飼養及び保管する撮影施設においては、次に掲げる事項に留意するように努めること。(1)撮影方法 動物本来の生態及び習性に関して誤解を与えるおそれのある形態による撮影が行われないようにすること。また、撮影の時間及び環境等を適切なものとし、撮影動物に過度の苦痛を与えないようにすること。(2)情報提供 撮影施設に撮影動物を貸出しするに当たっては、撮影施設においても撮影動物の健康及び安全の確保がなされるように、その取扱い方法等についての情報提供がきめ細かに行われるようにすること。」以上でございます。
 第5準用としまして、当該基準の準用規定をつけ加えてございます。「展示動物に該当しない動物取扱業が扱う動物については、当該動物の飼養及び保管の目的に反しない限り、本基準を準用する。」としております。
 以上で、資料2の説明を終わらせていただきます。見え消し版では、追加と削除、とくに赤で書いてあったりするものですから、目がちらちらして見にくかったのではないだろうかと思いますけれども、基本的には改訂のポイントは2つに分けてございまして、現行基準が展示施設の種類、つまり動物の種類ごとに整備されていないため、わかりやすさに欠けるきらいがある構成になっているということから、共通基準と個別基準、これに大別してございます。個別基準につきましては、動物園とふれあい施設を一緒にして動物園施設等、販売施設、撮影施設の3つに分けてございます。
 それから、2点目のポイントとしましては、前回12月11日の動物愛護部会でご審議いただきました基本方針に沿いまして、4つの主な内容の変更点、展示動物の福祉の向上、ペット等の販売・繁殖施設等における飼養等の適正化、動物の愛護及び適正管理方法の普及啓発、動物による人への危害等の防止の4つの事項を踏まえまして、新規の事項の追加、それから基準の配慮事項として内容の充実を図らせていただいたものでございます。

【竹内部会長】 よろしゅうございますか。ありがとうございました。それではお聞きになりましたように、確かに読みづらかったかもしれませんが、かなり追加・修文が多いということですね。これで十分という意味ではございませんが、昔からありましたこの基準をかなり大幅に見直したということは事実でございます。ただ、あくまでもその原則は、基本方針というものに沿ってやったということと、それからそれはご承知のように動物愛護管理法の第5条に沿っているものでございますので、その範囲を超えるということはできないということです。その中で何とかして実効が上がるようにしようという、あくまでも基準の案でございます。
 これは、事前に皆様にお送りしてございますので、各内容についてはご承知のことと思いますが、この機会にできるだけ効率よくご質疑、ご審議をいただきたいと思います。
 全体がちょっと長いものですから、幾つかに区切って検討を進めさせていただきたいと思います。1つは、まず第1の一般原則と第2の定義、これをまとめて一区切りとさせていただきます。次に第3の共通基準、そして最後に第4の個別基準と第5の準用を一緒にご討議を進めさせていただきたいと思います。
 それでは、まず第1の一般原則と第2の定義についてご意見、ご質問等をいただきたいと思います。どなたからでも結構ですが、どうぞお願いいたします。兵藤委員。

【兵藤委員】 第3の計画的な繁殖で、いわゆる余剰動物の譲渡の件についてなのですが、私たちは犬・ねこの譲渡でも、しっかりした飼い主でないと渡さないという動きをしています。動物園等あるいは展示動物で余剰動物が出たときに、はっきりした確認、いわゆる施設がきちんとしているかどうかの確認をした上で、譲渡していただきたいということです。この「措置を適切に講ずるように努める」ということの中に、その意味が十分含まれていると解釈してよろしいでしょうか。

【竹内部会長】 いかがでございましょうか。事務局の方からお願いします。

【東海林動物愛護管理室長】 そのようにお考えいただいて結構でございます。確かにこれは基準でございますので、全体的に言葉が足りないといいますか、言葉足らずのところが若干あるかと思います。昨年度ご審議いただきました家庭動物の飼養保管基準のときにもそうでしたが、あくまでも基準は基準としてご答申いただきまして、基準が告示された暁には、その基準を説明する解説資料というのを別途に環境省の方でつくらせていただいております。今、兵藤委員からいただきましたご指摘は、その解説をつくるときに十分に反映させていただきたいというように考えております。

【兵藤委員】 もう一つよろしいですか。

【竹内部会長】 どうぞ。

【兵藤委員】 定義の「イ 興行、客よせ又は動物とふれあいを目的として~」ということで、先ほど説明の中でふれあいの目的に乗馬クラブが含まれるというような説明がありました。これは確認なのですけれども、「ふれあい」の中に乗馬クラブあるいは観光乗馬等を含めて解釈してよろしいでしょうか。

【竹内部会長】 事務局、お願いします。

【東海林動物愛護管理室長】 レクリエーションとしての乗馬用になっている馬は、いわゆる一般的にはふれあい動物に分類されるというように考えております。ただ、現実には一口に乗馬用の施設と言ってもいろいろな形態の施設がございまして、一般的にはふれあい動物に分類されるということで考えたいと思っておるのですが、具体的な判断につきましては、個々別々に、ケース・バイ・ケースで判断したいというように考えております。

【兵藤委員】 一般的には、乗馬クラブが含まれるというふうに解釈をさせていただいてよろしいのでしょうか。

【東海林動物愛護管理室長】 はい。

【竹内部会長】 ありがとうございました。乗馬も、完全なスポーツとしての乗馬、ふれあいを主目的とするものなど幾つか種類がございますね。そういう意味でなかなか一概にはまとめにくかったと思いますけれども、通常、兵藤委員がおっしゃっているような子供を乗せるとかというような乗馬というのは、このふれあいの中に入るという理解だろうと思いますけれども。
 どうぞ、山下委員。

【山下委員】 基本的な考え方のところで、これは言葉の問題なのでしょうが、「豊かな飼養を」という言葉が出てくるのですけど、これは「適切な」とかそういう意味のことなのでしょうか。

【竹内部会長】 いかがですか。

【東海林動物愛護管理室長】 「第1一般原則」の(基本的な考え方)の6行目になろうかと思いますけれども、「展示動物にとって豊かな飼養及び保管環境の構築に努めること。」となっております。この「豊か」なのですが、環境を豊かにするといった意味で「飼養及び保管の環境」として環境に基本的にかかる形となってございます。その意図としましては、クオリティ・オブ・ライフというわけでもないのですが、単に餌が、水が与えられればいい、空間があればいいという動物のその生理・生態・習性にとって最低限のものだけではなくて、もう少し動物にとって好ましいものが必要だろうという趣旨のことを「豊か」という表現を使わせていただいたものでございます。

【竹内部会長】 よろしゅうございますか。「適切」というよりは、もう一歩あるいは二歩踏み込んで取っていただけるとありがたいと思います。
 そのほか、いかがでございますか。どうぞ、中川(志)委員お願いします。

【中川(志)委員】 今の「適切」と関連するのですが、3ページの4の最後のところで、もう一つ同じような表現が出て来るのです。「展示動物を処分しなければならないときは、動物が命あるものであることにかんがみ、できるだけ生存の機会を与えるように努めること。」これはそうですよね。さらに「また、やむを得ず殺処分しなければならないときは、苦痛を与えない適切な方法をとるように努めること。」というふうになっているのですね。それで、前段の「努めること」は相手があることなので、努力目標だと思うのですけども、こういう場合に処分される動物については「努めること」というよりは、「適切な方法をとること」の方が適切に思うのです。何か意味があるのでしょうか。

【竹内部会長】 もっと一言おっしゃれば、「とらねばならない」とすべきではないかということですね。

【中川(志)委員】 そうですね。

【東海林動物愛護管理室長】 はい。お答えさせていただきます。これは現行の基準の表現に倣ったものでございまして、この法律第5条に基づく飼養及び保管の基準になってございますけれども、基本的に罰則のないガイドライン、努力規定といった性格のものになってございます。その関係もございまして、昭和48年にこの法律ができてから、基本的に「努める」というような表現で基準を作成してまいった経緯がございます。それを踏襲しまして、今回も「努める」という表現で整理させていただいたところでございます。

【竹内部会長】 もう少し強いニュアンスはないかというご意向だと思うのですが、そういう意味ではどうですか。「基準」としての限界は当然あるのですが、今、中川(志)委員がおっしゃられたことの中にあったと思いますが、「とらねばならない」までは行かなくとも「適切な方法をとること」ということではどうですか。

【東海林動物愛護管理室長】 気持ちとしては「とらねばならない」という趣旨のものであると考えておりますけれども、この展示動物の見直し基準だけではなくて、既に告示しております家庭動物等の基準、それから、今後見直しする予定の実験動物、産業動物の基準も、基本的にこの表現で統一されておりますので、できれば、趣旨は「ねばならない」、大事なことなんだというところでご理解をいただくということでご容赦いただきたいと思います。

【竹内部会長】 多少行政的な発言でございますが、これは努力目標を規定する基準であるという、その縛りがかなりあるのだろうと思いますね。ですから、お互いの気持ちとしては、恐らく環境省側も「とらねばならない」という趣旨だけれど、そのような表現は難しいとのことでございますので、ご了解いただけるとありがたいと思います。よろしゅうございますか。
 はい。ありがとうございます。
 そのほか、いかがでございますか。小川委員、どうぞ。

【小川委員】 第2定義の(2)の展示のところ、「展示」という言葉も問題があると思いますが、「陳列する」という言葉は、法律で「命あるものにかんがみ」と規定し、この基準でもそういうことが書かれているので、「陳列」というのは少し違和感があります。もう一つ、下の(5)、(6)に「管理者」と「飼養者」の定義があるのですが、ここで「管理者」というのは動物及び施設の「管理」をする人の意味ですね。法律名は、「動物の愛護及び管理に関する法律」となっているわけで。一方(6)の「飼養者」は動物の「飼養」及び「保管」作業に従事する人ということで、「保管」という用語は法律にもあるわけですが、この「管理する」ということと「保管をする」ということの使い分けが、さきほどの「陳列」と同じように何か違和感があります。これは基本に触れる問題であり、後々の検討すべき問題かとも思うのですけれども、とりあえずこの(5)と(6)の定義で、「保管」と「管理」というのはどう違うのか、少なくともこの部会で、「保管」というのはこういうことだというようなことが共通理解できるようにしていただければいいのではないかと思います。その2点について。

【竹内部会長】 前段でおっしゃいました「陳列」の問題もですね。

【小川委員】 はい。

【竹内部会長】 確かに「陳列」というと物品を陳列しているような感覚になるからということかと思います。いかがですか、何かございますか。

【東海林動物愛護管理室長】 「陳列」につきましては、もう少し適切な用語がないかどうか、次の動物愛護部会までに検討させていただければと考えております。

【小川委員】 ありがとうございます。

【竹内部会長】 それから、次の「保管」と「管理」の話しですね。これは、この言葉が法律、基準に使われているのにはいろいろな経緯があったかと思いますので、なかなか明快にはおっしゃりにくい部分かと思いますが、コメントがあればお願いしたいと思います。

【小川委員】 この法律第1条にも、「動物の管理に関する事項を定めて」ということを最初に規定しているのですね。後の方に「保管」と出てくるので、この「管理」と「保管」の関係というのは、もともとわかりにくさがあるということは私も十分承知しているのですけれども。

【竹内部会長】 一般に「管理」と使っているわけですが、この基準では、「飼養と保管」といって「管理」と変えている。その「保管」という言葉は、ちょっと意味が違うというようなことがご説明いただけると、小川委員のご質問の意図が生きるかと思います。

【東海林動物愛護管理室長】 ご説明させていただきます。簡単に申し上げますと、「保管」というのは、しまっておくこと、といっては動物に対して不適切かもしれませんが、しまっておくことというような意味が強い言葉でして、その前の「飼養」というのは、餌や水を与えるといったような行為が中心になる言葉になっております。これに対して「管理」というのは、全く別の意味で使われております。動物愛護管理法の「管理」という言葉は、これは愛護という概念の一部をなす行為であるというふうに整理されているのですが、動物が人に危害を加えないように、あるいは適切な状態が保たれるように、人間がコントロールするといった意味で使われています。確かに「管理」と「保管」は「管」というところで共通の文字があるのですが、全く別な意味でございます。

【竹内部会長】 ありがとうございました。いろいろご意見があるかもしれませんが、理念を持って使い分けている言葉であるというところをご理解いただければありがたいと思います。
 そのほか、いかがでございましょうか。
 よろしゅうございますか。では、先に進みましょうか。
 それでは次に、第3共通基準についてご意見、ご質問をいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。特段ございませんでしょうか。
 どうぞ、小川委員、お願いします。

【小川委員】 第3共通基準の1の(1)のア、展示動物のところなのですが、2行目の「~展示動物の飼養及び保管環境の質の向上を図るため、種類及び習性等に応じた給餌方法を工夫すること。」ということが、意味がわかりにくいです。保管環境の質の向上を図るために食事に、給餌方法に工夫を、となるとちょっとわかりにくいのですが、ご説明いただけますでしょうか。

【東海林動物愛護管理室長】 4ページの第3共通基準の1の(1)のアですね。このアの項目につきましては、給餌、給水方法を定めた事項として整理してございます。それで、質の向上について掲げましたのは、動物にとって餌を食べること、食事については、単にエネルギーを補給するといった無味乾燥なものだけではなくて、場合によっては楽しみでもあるわけです。遊びながらできるだけ時間をかけて食べさせるとか、あるいは肉食動物であれば、本来、襲いかかって捕獲して餌をとるところが本能としてあるので、そういったものを100%実現できないにしろ、それに近い形で実現できないかといった意味で質の向上を図るという趣旨です。給餌方法についても質の向上を図るといった観点があることを確認させていただいております。

【竹内部会長】 ご質問にございました「展示動物の飼養及び保管環境の質の向上」というのは、今の説明にありましたように、どちらかといえば、その2つの中の前段の「飼養の質の向上」に強くかかっているということですね。ただ、一方ではその後にある保管環境というのも、先ほど東海林室長がご説明されましたように、「食べる」ということも、いい環境で食べるという意味で、ある意味のエンリッチメントを考えての表現だというふうにとっていただけたらよろしいのではないかと思いますが。よろしゅうございますか。
 はい、どうぞ、杉山委員。

【杉山委員】 今のことなのですが、ご説明で大体わかりました。ただ、給餌、給水とよく言います。これはいかがなのでしょうか。

【東海林動物愛護管理室長】 杉山先生のご指摘を伺いまして、給餌と給水は基本的にセットで行われるかと思いますので、この表現は修正する方向で検討したいと思います。

【竹内部会長】 給餌・給水ということですね。

【杉山委員】 わかりました。どうもありがとうございました。

【竹内部会長】 どうぞ。

【兵藤委員】 エの「群れ等を形成する動物~」について、犬・ねこというのはこの概念に入るのでしょうか。それともう一つ質問、カで「幼齢時に社会化が必要な動物については、一定期間内~」というのは、大体どのあたり目安とするのでしょうか。というのは私達が運動を進めるなかで、余りにも幼弱動物を販売しているところに注意を与えるような場合、どの程度を基準にして運動を進めていけばいいのか。私たちが指導的な範囲の中で注意していくとき、解説書に記述するのだと思うのですけれども、そのあたりを教えてください。

【東海林動物愛護管理室長】 群れ等を形成する動物に犬が入るかどうかでございますけれども、犬と一口に言っても、愛玩動物としての犬から、かなり野生状態に近い犬まで、犬という種に限っても、結構いろいろなものが出てきます。確かに、野生動物に近いような犬につきましては、群れといったものが必要になる場合もあろうかと思いますけれども、基本的に販売施設・ペットショップなどで愛玩動物用として販売されている犬は、かなり野性味が薄れている、行動形態が野生のものとは変わっておりますので、群れとして複数で飼育する必要は成犬の場合はなかろうと考えております。
 それから、カの「~社会化が必要な動物については、一定期間内、親子等を共に飼養すること。」の「一定期間内」というのは、具体的にどれくらいの期間に当たるかというところでございますけれども、これは、例えば犬・ねこであれば2カ月とか、あるいは1カ月、3カ月とか、いろいろなことが言われております。これも犬と一口に言っても、小型のチワワのような犬、あるいはシェパードなど大型犬などありまして、社会化期というのは、犬の品種によって変わるようでございますので、ここでは「一定期間内」ということで表現させていただいております。品種によってもいろいろと変わりますので、解説のなかで専門の方のご意見を聞きながら、目安というのを示していきたいと考えております。

【兵藤委員】 解説書の中で、できれば具体的な種類を挙げていただきながら、「一定期間内」を解説していただくと、わかりやすいと思います。幼弱動物が売られている現状を、何とか変えたいという願望がございまして、そのあたりを解説書の中でも結構ですので、しっかり説明をしていただいて、それを私たちの教科書として取り扱いたいと思っているので、よろしくお願いいたします。

【東海林動物愛護管理室長】 承知いたしました。

【竹内部会長】 社会化の必要な時期に関しては、ご案内のとおり家庭動物の基準の解説書の中に、品種別にはなっておりませんけれども、一応資料として犬とねこについてそれぞれ掲載されています。初めて入れたということですね。今のご要望の件で、今度解説書をつくるときには、さらに品種による違いなど考慮した数字が示されれば、余計良いものとなるかと思います。
 そのほかは、いかがでございますか。
 どうぞ、丸山委員。

【丸山委員】 6ページから7ページにかけてなのですが、この「4動物に起因する感染性の疾病に係る知識の習得等」を追加したということは、大変うれしく思っております。7ページの3行目のところ、「~動物の排せつ物等を処理したときは、手指の洗浄等を十分に行い、~」とあり、排せつ物は、場合によっては感染性のものがあるということを明確にしたわけですね。こういう表現になると排せつ物そのものはどう処理するのかということが、浮かび上がってきてしまう。私は前々から動物の排せつ物による微生物汚染、それから環境汚染を非常に心配しているのですが、ここまで明記するのであれば、後段に排せつ物の取扱いについて追加できないでしょうか。すなわち「また、排せつ物を適切に処理すること」とか。これが可能であれば、この法律の所管は環境省ですから、環境への影響をできるだけ少なくしていくという観点から、ぜひそういう記述があっていいのではないかなというふうに感じておりますが、いかがでしょうか。

【竹内部会長】 ありがとうございます。大変貴重なご意見だと思いますが、環境省としては何かお考えでございますか。

【東海林動物愛護管理室長】 次回の部会までにご趣旨を踏まえまして、修文の方を検討してまいりたいと思っております。

【竹内部会長】 ありがとうございました。
 どうぞ、お願いします。

【関委員】 ちょっと細かいことなのですけれども、第3共通基準の1の(1)イのところを見ますと、動物については「疾病及び負傷」というのが出てまいりますね。病気になった動物や、負傷した動物、4ページの下から5行目あたりです。それから、5ページの上から3分の1くらいのキ、ここでは、「疾病」「負傷」のほかに「妊娠中」とか「幼齢」「高齢」というふうに、さらに細分化されていますね。例えば、これ類するものとして、病気でも負傷したわけでもない先天的に何か障害を持った動物なども想定されると思うのですが、それは明記しないのでしょうか。

【竹内部会長】 ただ、なにか障害があると。

【関委員】 そうですね。だから、ここまで細かく明記するのなら「等」で補うなど、何か表現ぶりがあるのではないかと考えます。

【竹内部会長】 それについては、どうですか。この中に入ってないのは事実ですが。

【東海林動物愛護管理室長】 すみません、質問で申しわけないのですが、障害がある動物が生まれた場合には、障害動物に対しては健常な動物以上に目をかけるといいますか、手厚い飼養・保管が重要であるというようにお考えであると理解させていただいてよろしいでしょうか。

【関委員】 その障害等の種類によって、もう生存の見込みがない場合などもあるかと思うのですけれども、ある程度の配慮でかなり普通の動物と同じように生存できるというのであれば、考慮すべきではないかと思ったのですけど。

【竹内部会長】 これはもう少し踏み込むと、先天的なことを含めて障害のある動物は展示するべきではないというようなお考えのもとでのご発言でしょうか。

【関委員】 今、申し上げたように、両方あると思うのですね。その障害が、人間に対する危険を伴うということもありましょうし、それほどの障害ではなく、ちょっと面倒を見る、あるいは保護すれば動物としての生存を全うできるというのもあるでしょう。だから、法改正により、単に管理するのではなくて、愛護するのだというふうに法の趣旨も変わったので、その辺を目配りすることも必要と思い発言したわけです。

【竹内部会長】 ありがとうございました。いかがですか。

【東海林動物愛護管理室長】 4ページの第3の1(1)飼養及び保管方法ですけれども、ご趣旨を踏まえまして、どのように記載すべきか、少し検討させていただきたいと思います。
 それから、8ページ上から5行目について補足的に追加させていただきます。これは、個別基準で動物園やふれあい施設における展示方法の配慮事項を定めたところですが、(1)のアで、障害を持つ動物の展示方法についての配慮事項を定めてあります。例えば、群れを形成する社会性のある動物ですと、障害を持つ動物だからだといって隔離して飼養・保管すると、不具合が生じたりするわけです。そういう場合には、例えば猿山の猿など、たとえ障害があっても群れのなかで飼育するというのが、動物にとっては適当かと思います。ただ、その場合、何も知らない観覧者の場合には、なぜあのような障害のある動物を展示するのか、かわいそうじゃないかというような声が起きる場合がございますので、このアに掲げましたように、「障害を持つ動物又は傷病中の動物を展示する場合は、観覧者に対して展示に至った経緯等に関する十分な説明を行うとともに、残酷な印象を与えないよう配慮すること。」と規定してございます。

【関委員】 これは大変よく配慮なされた規定だと思うのですけれども、バランスもあると思うのですね。ここで詳細に記述しているにもかかわらず、最初の総論的な記述がない、法的な考え方からすると若干不備というように感じます。

【竹内部会長】 そうですね。具体的なことはここに記述されておりますので、その中に先天的な問題のことが含まれるような表現を加えると良いと思いますね。群れで飼う動物、群れで展示をしなければならない場合に、病気を含めて異常なものがあったときに、具体的にどのようなところを適切とするのかは難しいところだと思うのですが、この辺、ご経験の多い菅谷委員はいかがですか。何かコメントございますか。現場での判断の難しさなどはいかがでしょう。今のような表現で大体カバーできるのではないかと思ったのですが。

【菅谷委員】 ええ、結論的にはそのようなことだと思うのですが、一般的に先天的異常は発現しうる可能性がございますし、例えば私どもの動物園のイリエワニは、けがで前肢が片方ないのですが、全然問題なく飼育、展示しております。一方、例えば人間に近い猿などは、日本人の感性の問題といいますか、嫌だという人もいれば、いいことをやっていると評価する人もあるでしょう。ですから、そこに説明のための掲示板を置くなど、何らかの手段を用いて来園者にアピールできる方法があれば、ある程度観覧者に受け入れられるのではないか、今、東海林室長のご説明された内容で十分フォローできると思います。

【竹内部会長】 ありがとうございました。関委員、よろしゅうございますか。
 それでは、その他、いかがですか。

【今泉委員】 幾つかあるのですが。最初に5ページの上から5行目、やはり群れの問題なのですが、群れをなすのは群れで飼育する、そうすると単独で暮らす動物は単独でということですね。例えば、クマを多数飼育するとしますね。すると大変死亡率は高くなるのです。そういったところは逆にどうするのか、という問題があると思います。それから、群れであっても、例えば猿の餌付けなどで、1,000頭を超えるという大きな群れになっているところがありますね。そういう場合の規制も必要かという気もするのですが、いかがでしょうか。

【竹内部会長】 群れのサイズあるいはその数、密度の問題ですが、それについてはいかがですか。

【東海林動物愛護管理室長】 まず、後段の群れがかなり大規模になった場合、あるいは過密になった場合でございますけれども、基本的には次の(2)施設の構造等、広さですとか、そういったものが適切に確保されるようにといった配慮事項が適用されます。そちらの方でカバーできるのではないかと考えています。
 それから、最初のご指摘のクマの件でございますけれども、基本的にはケース・バイ・ケースで判断することになろうかと考えています。例えば、野生状態のクマを一時傷病鳥獣として預かって、しかるべき時期にまた野化させる、奥山放獣するといったような場合については、野化という目的があるわけですから基本的には単独で飼育し、適切に野化できるような状況にするということではないかと考えております。
 ただし、いわゆる動物園でクマを展示動物として飼育する場合なのですけれども、これは施設の目的によって、単独で飼える場合、複数で飼わざるを得ない場合、いろいろな形態があろうかと思います。いろいろ難しいですが、ケース・バイ・ケースで判断していくべき問題ではないかなと考えております。

【竹内部会長】 確かにケース・バイ・ケースしかないのですが、そういうところは十分配慮されるような文章にしてほしいというご要望だと思います。このようにクマ牧場は確かに国際的にも話題になっているところですが、今のことと関連して、指名をして申し訳ありませんが、中川志郎委員、いかがですか。いろいろとご経験があろうかと思いますが、何かコメントございますか。

【中川(志)委員】 それとの関連なのですけども、今の5ページの、今泉委員がご指摘になった「(2)施設の構造等」というところがありますよね。この部分も今の議論と関係があると思うのですけれども、この前段の方は、いわゆる最近取り上げられている環境福祉というか、エンバイロメンタル・ウェルフェア、アニマル・ウェルフェアという観点で書かれているのですね。ところが、ア、イ、ウ、エ、オという個々の事例はミニマム・スタンダードなのです。これは、我々が現行基準を作った頃は、こういうものがほとんどであったのですが、あれからもう随分年数が経過したわけですし、動物愛護法という法律の名前も変わり、愛護がかなり前面に出ている社会背景なので、この基準を特徴づける一つの大きなポイントであると思うのですね。従って、前段は特に動物園のことについては推奨基準のようなことになっているのですけれども、下の個別事項は最低基準というふうに少し論旨が離れてしまうのですね。
 特に、我々の経験からいうと、最初の基準を策定した際、我々は最低基準として、猛獣の場合の面積、構造、部材など具体的に一覧表にしたのです。そうしたら、それがいつの間にか最高基準というか、それでいいのだということに変わってしまったのです。それは、非常に我々にとっては不本意だったのですけれども、ミニマム・スタンダードと思ったものが、むしろそれが最高基準的にとられ、それを満たせばもうお墨つきというふうに受け取られるようになってしまったのです。
 これは、今回の基準改訂の中でぜひ変えなければいけないと強く思っていたのですけども、そういう具体的な数値でなく提示されているので、その点はこのような誤解を招くことはなくなったと思います。ただ、このア、イ、ウ、エ、オというのは、あくまでも最低基準なのであって、現在、動物園等で盛んに用いられている、動物の福祉を考えた施設構造、飼育方法にしていこうという流れからすると、若干言葉足らずかという気がします。この辺のところは、今回の基準改訂を特徴あらしめるためにも、もう少し適切な表現方法があってもいいのではないかと考えます。
 他の部分は、資料を事前にいただいて、ずっと読んできたのですけれども、あらゆる部分で非常に改善されていて、いい方向に向かっていますね。動物園動物の福祉というのは、これは日本だけではなくて世界から注目されているので、やはりいろいろな点で具体的な改善が必要なわけですけれども、その法的な根拠となり得るような書き方をしていただいた方がいいのではないかと思うのです。
 それから、群れということですけれども、群れを形成する動物というものを考えると非常に難しくて、特に哺乳動物の場合は、状況によってきわめてフレキシビリティの高いものなのです。ですから、例えば動物園において雌雄で飼育していると、その雌雄のきずなというか、コネクションというのがものすごく強くなって、通常の雌・雄よりも特殊な関係で結ばれてくるというプロセスがあるわけですよね。通常野生のクマというのは単独生活で、ある1シーズンしか、あるいはそれこそ10日以内のような短い時間じゃないとコンソートしない動物で、飼育下で条件が変わると、その習性も微調整を彼ら自身が行うというところがあるのです。問題なのは、そのような彼らの持っている調整の幅を超えて過密になった場合に、いろいろな不具合が起きるわけですよね。
 ですから、(2)施設の構造等の前文のところ は非常に格調高く書いてあって、その後ろがミニマム・スタンダードになってしまうというところを少し考えていただくと、先ほどの今泉委員がご指摘になった部分も含めて、ある程度改善できるのじゃないかなと思います。

【竹内部会長】 ありがとうございました。ということは、前段のところは、そういう感じで総論的といいますか、もう少し大きい目標を掲げた形にしておいて、後段の方はその目的を遂げるために少なくともミニマム・リクアイメントとして、これだけはしなくてはいけないというようなことが明瞭に出るような文章にすればいいのではないかと思います。事務局では、その辺を修文の際にご検討いただけますか。よろしいでしょうか。

【東海林動物愛護管理室長】 アからオまで掲げましたけれども、今、部会長からご教示がありましたように、これがミニマムであるといった趣旨がわかるような形で、逆に言えば、全体の総論も含めまして、環境エンリッチメントを向上させていくというような趣旨が、より出るように工夫をしてみたいと考えています。

【竹内部会長】 お願いします。ありがとうございました。
 その他、いかがでございましょうか。
 どうぞ。

【今泉委員】 もう一つお願いします。7ページの6記録台帳の整備等というのは大変結構なことだと思います。ペットショップの人に聞くと、もちろん整備していますね。これは税金上整備しているのだと思いますけれども、動物園もありますね。
 一例ですが、例えばワシントン条約に係る動物を飼っていて、新規には購入できないが、それまで飼育していた動物が死んだときに切りかえるという場合があるようです。外見、大きさ等が似てれば、すり替えて、許可された動物がまだずっと生きているのだというふうにし、必要な許可申請をしないで飼養していくわけです。
 これを許さないという観点では、マイクロチップによる個体識別というのは大変いいと思いますね。犬ねこについて、福岡県でも、ほんの数パーセントしかまだ埋めてないということですが、これは所有者が個人的にやっているからだと思うのです。展示動物の場合は、動物園ですとか、概ね利益を生む一面がありますね。個人で経営する動物園は少ないのではないかと思うのですが、優位性があるものとして、もっとマイクロチップを強力に推進してはどうでしょうか。それは、できないのでしょうか。

【竹内部会長】 これは、実は大分悩んだところなのです。あまりに限定して明記するのは具合が悪いのではないかとの悩みがありまして。いかがでしょうか、室長。

【東海林動物愛護管理室長】 既に、委員の皆様方におかれましてはご存じのことと思うのですが、平成11年に動物愛護管理法が改正されまして、新たな規定が設けられました。第5条第3項、所有者の明示義務の努力規定でございます。それを踏まえて、基準にも所有者の明示措置、個体識別措置の重要性を入れさせていただいたところです。この基準でマイクロチップを明記するという話ではなかろうかと思うのですが、環境省としましては、マイクロチップに限定する訳ではないのですが、数ある動物愛護団体の皆さん、それから獣医師会の皆さん方のご協力を得ながら、マイクロチップを中心とした個体識別措置というのができるだけ広く普及し、定着していくように施策を講じていきたいと思っております。
 あとで少々ご説明いたしますけれども、来年度の予算案でございますが、2,000万円ほど動物愛護管理行政の予算が増額してございます。その内容として、マイクロチップ等の個体識別を普及させていくためのガイドラインづくりの予算になっておりまして、このような形で、段階的ではございますけれども、できるだけ普及していくように頑張っていきたいと考えております。

【竹内部会長】 いま、ご説明がありましたように、この基準の中に盛り込むというより、実効を上げるような方向で進みたいということですね。マイクロチップに関しましては、藏内委員が福岡県でいろいろ指導してらっしゃると思いますが、何かコメントはございますか。

【藏内委員】 マイクロチップは、福岡県では、福岡県の行政が取り組むという形で47都道府県の先頭を切らせていただきました。ただ、これは狂犬病予防法との整合性を図る観点で、同じことを2つの法律に明記できないというもので、動物愛護管理法に努力義務という形にしか盛り込めなかったわけなのです。できれば動物愛護管理法の改正で明確にマイクロチップ等を明記するということになれば、一層浸透するだろうと思うのですけども。
 現実の問題といたしまして、まず、飼い主の方に新たな負担を強いらなければならないということと、飼い主の方にとって、マイクロチップの埋め込みでペットが痛がるのではないかとかいう拒否反応もあるようなのですね。こういった問題を解決していくためには、やはり少し時間がかかるという印象です。段階的に、このマイクロチップというものを国民の皆さんに理解をしていただく必要があるということです。例えば移入種問題も、これから環境省の大きな課題になってくると思いますが、そこで第一歩を踏み出して、さらに次の段階として動物愛護管理法で規定するなど、そういった軟着陸の方がいいのかと思います。私は、実は日本でかなり積極的な推進論者でありますけれども、現在の心境はそういうことでございます。

【竹内部会長】 ありがとうございました。
 どうぞ、中川委員。

【中川(志)委員】 基本的にマイクロチップを推進するという方向は、家庭動物にせよ展示動物にせよ、最近の一つの傾向だと思います。特に展示動物に関しては、海外でもそうなのですけれども、ワシントン条約や国内法によって保護されている個々の希少動物たちをどうするかということが非常に重要な課題になっています。特に、遺伝的に交雑してしまう、あるいは個体がどのような履歴をもつのかということがわからないままにペアを組んでしまうことによって、せっかくの個体が繁殖に不適切なものとなってしまう。そういう危機が、特に希少動物の数が少なくなればなるほどあるのですね。そういう状況がマイクロチップにより、その経歴がわかる、来歴がわかるという、そういうものを国際的に移動する展示動物にまず採用するというのも一つの方法かなとも思います。それによって、野生の希少動物のトレーサビリティというのが確保できるし、現在、(社)日本動物園水族館協会で希少動物の血統管理ということで、各動物種で血統管理者を置いて大変な苦労をされているのですが、その苦労がかなり軽減されるのですね。しかも、それは確実に個体の識別が可能であるということのメリットはすごく大きいと思います。確かに今、今泉さんや藏内さんがおっしゃったとおりで、この部分は「記録台帳の整備等」というわずか4行ですけども、これをもうちょっと積極的な記述にするとペットへの波及効果というのも期待できるし、動物園はそのようなことをやっているとアピールとしての波及効果も大きいのではないかという気もします。もしできましたら、この点はもう少し踏み込んだ表現を検討していただきたいと思います。

【竹内部会長】 ありがとうございました。応援演説をいただいたようでありますが、それではまた修文の際に内容を膨らませていただけるといいのではないかと思います。
 そのほかは。どうぞ、小川委員。

【小川委員】 6ページの一番上の2の「人の生活環境の保全」というのがありますけれども、改正案では「人の」と対象がはっきり明示されたのですが、この部分は動物にとってもやはり非常に大事なことだと思うのです。動物の飼育環境については、害虫の駆除や悪臭が出ないようにというようなことが、5ページのアからオの施設の構造等に該当するということでしょうけれども、例えばイに「排せつ場~等の施設を備えること。」と書いてありますけれども、適切に管理をして臭気を出さない、昆虫の侵入を防止するという管理の部分が抜けているような気がするのです。6ページの2「人の生活環境の保全」と同様の内容が、このアからオあたりに記述されるように工夫をしていただけたらよろしいかと思います。現状では、このアからオではそのことが読みきれないと私は思うのですけども、いかがでしょうか。

【竹内部会長】 6ページの2人の生活環境の保全のところ、これは余り修正がなされていないが、詳しい説明がないのかというご質問だと思いますが、いかがでしょうか。

【東海林動物愛護管理室長】 6ページの2人の生活環境の保全でございますけれども、確かに小川委員ご指摘のように、5ページに書かれているような動物の飼養・保管のための施設の向上、こういった配慮事項が守られることによって、生活環境の保全といったものが確保されるというようなことになろうかと思います。

【小川委員】 ちょっと逆ではないかと思います。私は、この基準では動物に対して環境エンリッチメントや福祉などを重くみようとするわけですから、動物に対しても2と同じような配慮をしなければいけないのではないかと考えます。そのことが、(2)「施設の構造」のアからオで書かれているのだとは思うのですが、ここでは、施設構造だけで、まだそのことが書ききれていないのではないかということなのです。例えば排せつ場を設けるということは、その場に排せつを限定し、そこをきれいにして臭くないようにするとか、昆虫が発生しないようにするとかというような適正管理の趣旨が、含まれているのだとは思うのですが、一読しただけではわからないのではないかということです。少しその点を補足していただくと、この6ページの「人に対する配慮」について、動物に対してもされているということが読み取れるのではないかということを指摘しているわけです。

【竹内部会長】 恐らく小川委員がご指摘になった意図を持って、この部分をつくったのだと思うのですけれども、おっしゃられるようなところが、ちょっと言葉足らずであるというところかもしれませんね。
 いかがでしょうか。

【東海林動物愛護管理室長】 基本的には、動物の飼養及び保管方法を4ページから5ページにかけて定めているわけですけれども、単にその基準を満たすだけではなくて、動物にとっての豊かな飼養及び保管環境、そういったものを構築できるような配慮事項を定めたというような考え方でおります。
 もう一度、全体を精査しまして、多少表現足らずのところがあろうかと思いますので、小川委員の指摘を踏まえて、工夫してまいりたいと思います。

【竹内部会長】 ありがとうございました。
 その他は、ございますか。
 よろしいようでしたら、先へ進みましょうか。時間の都合もございますので。
 それでは、今度は、7ページの下の第4個別基準、それから最後の準用のところも含めてご発言をいただきたいと思います。
 それでは、まず兵藤委員からどうぞ。

【兵藤委員】 8ページ、第4の1(1)の「ウ動物に演芸をさせる場合~」という項目でございます。ことしは猿年に当たり、テレビ等でも、あるいは全国でもそういう演芸が広がったという状況ですが、現行基準と比べますと、見直し案は後退なのでしょうか。習性等をかんがみて、なるべく過酷な訓練をさせないということなんでしょうけども、現行の「訓練を伴う演芸をさせないこと」と「させない」と強い言葉を使っていて、見直し案では「過酷なものにならないように」と非常にソフトな表現になっている。これについては、なるべく動物には過激な訓練させる演芸、それを見せ物にすること自体、余りよくないのではないかと思うのです。世界的には、動物に訓練したり、演芸をさせたりすることは容認されているのでしょうか。それとも、不適切なことと受け取られているのでしょうか。そういうあたりを説明していただきますと、この文言がよく理解できるのですが。ちょっと教えてくれますでしょうか。

【竹内部会長】 恐らく、先ほど他の部分で事務局から説明がありましたように、これはあくまでも努力目標であって、恐らく現行では「訓練を伴う演芸をさせないこと」となっていたのを、「過酷なものにならないようにする」という努力目標のような表現にされたのだろうと思いますが。今のご質問の趣旨を考えます上で、世界的に動物の演芸に関しては、一体どのような流れにあるのか、これは、動物園関係に詳しい委員で、よろしければ菅谷委員、お願いできますでしょうか。

【菅谷委員】 この「演芸」という日本語が気になります。海外の動物園等でも、動物のもつ本来の習性・能力を利用し、鳥やチンパンジー等の動物達に人もからませ芸を行っているものが多数ございます。しかし、その内容は、私達が一般的に感じます「演芸」ということばのニュアンスと異なっていると思います。

【竹内部会長】 いま、おっしゃったのは「演芸」という日本語では、なんとなく演芸場を連想させたりして、動物が珍しいことをやって見せてくれるというのとちょっとそぐわないようですね。海外ではショーといいますね。「ショー」だとわかりやすいと、そんなことを含めてのご意見でしょうか。

【菅谷委員】 おっしゃるとおり、例えば鳥をつかった芸でも、世界でも著名な旧く歴史あるショー系列がいくつかございます。また、チンパンジー等でも本当にうまく習性を引き出して人とコミュニケーションを取ったおもしろいショーもあります。しかし、やはり兵藤委員がおっしゃったような感じの演芸とはちょっと違う感じを受けます。

【竹内部会長】 ありがとうございました。この点については、何か他で情報なり、ご意見をお持ちの方、いらっしゃいますか。
 特にございませんか。
 事務局、それでは、見解をお願いします。

【東海林動物愛護管理室長】 前回の繰り返しになってしまうのですが、ご欠席の委員もいらっしゃいますので、もう一度ご説明させていただきます。この「演芸」というものをどうとらえるかというのは、事務局の方でもあるいは検討会の方でも議論の俎上に上がっておりました。ただし、例えばアシカのショーですとか、今ご指摘のあった猿回しですとか、あるいはヤマガラがおみくじを引いてくるとか、種々の動物の演芸というものがございます。非常に娯楽性の強いものから、文化的な芸能的なものまで、非常に幅広い分野があるというふうに考えております。演芸については、幅広いものであり、さらには日本の社会風土、国民性を考慮した場合、現時点では一定の評価を得ているものだと考えております。
 このようなことから、演芸について否定的に考えるというご意見も確かにあろうかと思いますが、この基準では、過酷な演芸をする、その過酷なというところをもう少し踏み込んで生理、生態、習性に合わないような形で訓練する演芸については規制をし、動物に合った演芸というのがあるのかどうか、なかなか難しいところもあるのですが、とにかく悪くない演芸と悪い演芸を整理しておこうと考えて、こういう表現にさせていただいたところでございます。

【兵藤委員】 一定の評価を受けているということなのですけど、これは一般的なもので、時代により評価が移ってくるのだと思うのです。我々のこの部会ではやはりある程度、動物側に立っての意見を出したいと考えます。人間が喜ぶからといって、動物の習性に合わないような芸をさせる、それを見て、ただ単純に楽しんで終わってしまうという風潮については、いけないのではないかと思っています。いかがでしょう。

【竹内部会長】 基本的には、おっしゃるとおり動物を苦しめないというのがあるのですが、かといって、菅谷委員からも発言がありましたように、世界的に多くの市民が楽しんでいるショーを余り規制するということも具合が悪い、と私はそう理解しております。一体どこから規制をするのかというのは非常に難しいんのですけれど。
 あくまでも、一般的に見ている人が残酷だと、多くの人が社会通念上、残酷だと思うようなショーというのは、やはり規制するべきであるというのがあるということですね。見直し案のなかでどのような表現にするかというのはなかなか難しく、今のような文面になっていると思われるのですが、恐らく解説書の中であれば、具体的な例示ができますね。そういうところで、わかりやすくしていくことが適切かと思っていますが、いかがでしょうか。

【兵藤委員】 わかりました。

【竹内部会長】ありがとうございました。
 どうぞ。

【山下委員】 第5準用のところなのでございますけども、この「展示動物に該当しない動物取扱業」ということでございますけれども、この基準は、家庭動物や産業動物、実験動物、それぞれ策定されていますね。そうなりますと、ここで言及しているのは、具体的にはどういう動物取扱業でありましょうか。

【竹内部会長】 わかりました。
 どうぞお願いします。

【東海林動物愛護管理室長】 具体的には、展示動物を飼養保管する施設にあたらない、例えば犬の訓練施設ですとか、あるいは保管を目的としたペットホテルですとか、そういった動物取扱業について、内容的に適用できる内容のものが非常に多いものですから、準用するという整理にしてございます。
 ちょっと説明が長くなってしまうのですが、実はこの準用規定というのは、昨年度ご審議いただきました家庭動物の基準でも規定しております。なぜかと申しますと、動物の飼養・保管の基準は、ご存じのとおり家庭動物、展示動物、実験動物、それから産業動物でございます。基本的にその4つというのは、これですべてきれいに動物を4分類できるというものではございませんで、便宜的に中心的なものをとらえて、4分類した基準を定めていこうということになったものでございます。結果として、数的に、あるいは問題の発生の程度のニーズ的にはレアなケースになろうかと思いますけれども、その4つの基準のどれに当てはまるのだろうというところで悩む部分が、本当にレアなケースですけれども、出てくる場合がございます。そういったものにあらかじめ対処するために、基準を適用できるようなもの、類似性の高いものについては準用するという規定を、必要に応じて各基準につけさせていただいているところでございます。

【竹内部会長】 よろしゅうございますか。ほかの基準にも大体このような規定がありまして、4つの基準になっている動物以外の部分についても、どこかに該当するようにしておこうというのが、事務局の意図だと思います。従って、現在、特定の何かあるかというとそうではなくて、漏れがないようにという趣旨ですね。
 このほかは。
 どうぞ、藏内委員。

【藏内委員】 10ページ、(3)販売方法のイ終生飼養の確保の可能性を確実な方法により確認するとの部分です。これは具体的に、どういうことを想定しておられるのですか。例えば誓約書を取るとか、あるいは終生飼養に向けてマイクロチップ等を推奨するとかですか。具体的にどういったことが考えられるでしょうか。

【竹内部会長】 どうぞお願いいたします。

【東海林動物愛護管理室長】 具体的には、販売時にしっかり飼養できるのかという確認をきちんと取ること。基本的には口頭が中心になろうかと思いますけれども、これも具体的な内容と考えております。と申しますのは、平成11年の法改正で、動物販売業者の責務規定が第6条として新たに設けられました。ちょっと読み上げさせていただきます。「動物の販売を業として行う者は、当該販売に係る動物の購入者に対し、当該動物の適正な飼養又は保管の方法について、必要な説明を行い、理解させるように努めなければならない。」というようになっております。これは、販売時にこういった確認をしないと、愛玩動物等の安易な飼養を助長してしまうことから設けられた規定です。安易な飼養・保管ではないかというところを、販売業者の方は、販売時点で責任を持って確認してもらうといったことをこの規定では設定しておるわけです。
 具体的にどのような確認方法があるか、場合によっては、質問票のようなもので確認する、飼育の例を見せて、購入しようとする方の状況について聴取するとか、種々の方法が考えられますが、具体的な手段につきましては、解説書で例示等をいたしまして、各販売業者の方が具体的に何をすればいいのか、わかるようにしていきたいと考えております。

【竹内部会長】 よろしゅうございますか。
 その他ございますか。
 どうぞ。

【小川委員】 8ページの一番上、(1)展示方法の2行目に「~、動物本来の形態、生態及び習性を観覧できるようにすること。」という部分があります。例えば草を食べる動物がいる、一方肉を食べる動物もいるのだということを観覧するというのは、これは非常に教育的な意味もあると思います。そのためにも「生理」という言葉をやはり入れていただいた方がわかりやすい。例えば「生理、形態、生態」。「習性」というよりはやはり「生理」とした方が良いと考えます。つまり身体の仕組みにかかわって草を食べたり、肉を食べたりするのだと思うのですね。というのは、先ほどもちょっと出てきましたけれど、演芸のところに「生理等を配慮し」とあるのですね。ですから、演芸のところだけじゃなくて、この部分にも入れた方がわかりやすいということです。

【竹内部会長】 ご指摘のとおり、「生理」というのは、ほかの基準その他でも多々使っているのですが、今回これを使わなかった理由ということだと思いますが、どうぞ。

【東海林動物愛護管理室長】 実は「生理、生態、習性」というのは、一つのセットの言葉でして、この基準の随所で使っています。ここから「生理」という言葉を除きましたのは、「生理」というのは、内的な機能といいますか、例えば代謝機能ですとか、そういったものを表現する言葉と思われますので、観覧者に見えないところであるという意味で、「生理」を踏まえたいろいろな外見的な行為、形態の発現というのは「生態と習性」という言葉で表せるのではないかということで削除させていただきました。「生理」について外観的にも見られるものがあるというご指摘であれば、「生理」という言葉の使用について、また検討していきたいと思っております。

【竹内部会長】 従って「生理」といっても食性などに関しては、生態その他の言葉で表現できるのかということですが、ほかの委員の方、何かご意見ございますでしょうか。
 今のご意見は、他では考えて3つの言葉で記述されているものですから、再検討させていただくということにいたしましょうか。
 どうぞ。

【関委員】 今の8ページの上の(1)のウですね。先ほど問題になりましたけれども、動物に「演芸をさせる」という表現なのですが、これは日本語として考えましても、演芸というのはあんまりよろしくない。つまり人間が行うのが「演芸」であって、動物は「芸」と言うのが一般的だと思います。だから、言葉の問題ですけど、例えばこんなのはどうですか。「動物に演芸をさせる場合」ではなくて、「観覧者」という言葉が上に出てきますので、「観覧者に対して見せる目的で、動物に芸をさせる場合には」とか、「芸の内容及びその訓練は」と、この方が日本語として表現がいいのではないかと思います。

【竹内部会長】 先ほどもございましたけれども、「演芸」というのはちょっと違うものをイメージしてしまいがちですね。かといって、片仮名の「ショー」というのはちょっと具合が悪いと思います。

【関委員】 部会長のおっしゃった「ショー」というのが一番言い表しているのでしょうけど、やはり横文字というわけにはいかないでしょうから。

【竹内部会長】 ありがとうございました。これについていかがですか。コメントありますか。

【東海林動物愛護管理室長】 検討したいと思います。

【竹内部会長】 中川李枝子委員、どうぞ。

【中川(李)委員】 8ページの(2)観覧者に対する指導のところなのですけども、(2)のア「動物園動物又はふれあい動物にみだりに食物等を与えないこと。」この「みだり」って言葉は要らないのではないですか。もともと「与えてはいけない」とすべきで、小さい子たちにもそのように教えていますけれども、この「みだり」にという言葉は不要と思います。観覧者にも一定のルールというものがありますから、責任を持ってそれを守る、守らない人には出て行ってもらうなど、それぐらいの意向があってもいいと思います。そういう掲示をあちこちに出して、それを遵守できない人には遠慮してもらうような、そういう姿勢は取れないのでしょうか。

【竹内部会長】 これは検討会でも検討されたことだと思うのですが、動物園によっては園の中で、餌を販売し、与えるところがあるのですね。そういうこともあって、全面禁止にはちょっとしにくい事情があると思います。この件について、菅谷委員、すみませんが、検討会でのまとめ役としてちょっとお話しいただけますか。

【菅谷委員】 部会長のご指摘のとおりで、動物園の中には餌を販売し、与えるということを一つの営業政策としているところがあり、一日の食餌量の何割かは、それによって与えるということをやっております。また、ふれあい教室として、積極的に子供に給餌をさせるというものもありますので、一律に原則禁止となりますと、ちょっと厳しいということで、「みだり」という言葉を入れたということであったかと思います。

【竹内部会長】 中川(李)委員おっしゃるとおり、その場で販売されているものでない餌、観覧者が持ってきた餌を適当にやるということは、これは絶対禁止なのですけども。

【中川(李)委員】 与える人がいるのですよ。いつの時代になっても、ちっとも進歩しない人が。動物園に行って気になるのは、そういうよくない観覧者ですね。

【竹内部会長】 おっしゃるとおりですね。それで餌をやってなくなると、今度はビニール袋までやってしまってということがありまして、非常に問題なのですが。

【中川(李)委員】 そうなのです。非常に困る事態が生じるので、そういうところを少し厳しくできないものでしょうか。

【竹内部会長】 これは、今ご説明があったような理由もございまして、これ以上の強い表現はできないようですが、他の部分に記述がございますように、動物園として観覧者に対しての注意事項を徹底させるという部分がございましたね。そういうところで各園が、そこの事情に応じて、餌を販売していない動物園もあるわけで、そこは厳しくできますので、そういうところで実質的な問題の解決をするというところかと思います。よろしゅうございましょうか。
 その他は、いかがでしょうか。
 よろしゅうございましょうか。ありがとうございました。
 それでは、いろいろとご審議をいただきまして、誠にありがとうございました。全体にわたり、少し文章を直してはどうかというような提案がございましたが、今後、パブリック・コメントに出すわけですけれども、どの段階で修文をするかというのは、事務局にお任せをいただくことにしたいと思います。基本的にはきょうお諮りいたしましたこの原案で、パブリック・コメントを募集するという方向で作業させていただきたいと思います。よろしゅうございましょうか。
(な し)

【関委員】 すみません。それで結構ですけれども、ちょっと言い落とした点があるので、一つだけ。
 前の方なのですが、4ページの第2定義の(2)ところですね。先ほど議論がありましたように、「不特定の人の前に陳列する」という部分。これはやはり「陳列」というのは言葉としてよろしくないと思うのですね。それで、私の案なのですけれども、これはむしろもっと柔らかく、本当は「展示」なのですけども、「展示」とするとトートロジーになってしまって、立法の技術としては具合が悪いということなので、別の言葉で「見せる」とした方がいいのではないかと思います。「陳列」のかわりに「見せる」でいかがかなと提案いたします。

【竹内部会長】 事務局、よろしゅうございますか。

【東海林動物愛護管理室長】 はい。

【竹内部会長】 参考にさせていただきます。ありがとうございました。
 それでは、以上のようなことを全部含めまして、ご了承いただいたということで、次のステップに入りたいと思います。どうもありがとうございました。
 それでは、次の議題でございますが、その他ということになります。冒頭の審議官のご挨拶にもございましたように、その他として予算や、ご報告を兼ねた問題がございますので、それではこれは事務局の方からお願いします。

【東海林動物愛護管理室長】 最後の資料、参考資料5をお開きいただきたいと思います。
 まだ、案の段階でございますけれども、平成16年度動物愛護管理行政関連の予算(案)の概要をおつけしてございます。決して多いとは言えない予算なのですが、来年度の予算(案)としましては、「家庭動物の終生飼養推進事業」が案として認められまして、2,000万円の増額ということで、5,200万の予算が7,300万円になってございます。
 この家庭動物の終生飼養推進事業というのは、次のページに概略を載せておりますけれども、簡単に申し上げますと、マイクロチップを含む個体識別措置、これを推進するためのガイドライン作成。それからもう一つが、犬やねこの処分数をできる限り減らすために、新しい飼い主を効率的に探すことができるようなデータベース・システム、全国的なデータベース・システムの統一的な規格づくりといったようなことが事業の内容になってございます。
 それから定員について、これは予定でございますが、係長が1名増員予定になってございます。
 以上でございます。

【竹内部会長】 ありがとうございました。なかなか国全体としての予算が厳しい中で、少額とは言いながらも一つの新しい事業を行うための予算案を認めていただいたというのは、それなりの理解をいただいていると考えてよろしいかと思います。これは私どもがさらに元気を出して、動物愛護の実効が上がるように皆さんとご一緒に努力をしたいと思います。
 今の説明につきまして、何かご質問ございますでしょうか。よろしゅうございますか。
 それでは事務局、その他はございませんか。よろしゅうございますか。

【東海林動物愛護管理室長】 今後の予定をご説明申し上げたいと思います。本日は、竹内部会長を初めといたしまして、委員の皆様方におかれましては長時間にわたるご審議をいただき、ありがとうございました。
 今後の予定でございますけれども、先ほど部会長の方からご説明がありましたように、1月下旬を目途に約1カ月間、パブリック・コメントを始めたいと思っています。今回のこの見直し素案を1カ月間開示して、国民の方々からご意見をいただくという作業をしたいと思います。その結果、本日いただいたご意見とパブリック・コメントで寄せられたご意見を踏まえまして、本日の見直し案を修正して、3月の下旬になろうかと思いますけれども、展示動物の飼養及び保管に関する基準の見直しの案という形で事務局の方でご呈示させていただきたいと思っております。3月下旬の動物愛護部会にお諮りしまして、できればご答申いただけるような方向でご協議いただきたいということでございます。

【竹内部会長】 ありがとうございました。それでは、長時間にわたりまして、大変建設的なご意見をいただきまして、誠にありがとうございました。
 それでは、皆様方のご健康を祈りながら、本日の会議はこれで終了させていただきます。ご参加の皆様方、本当にありがとうございました。