遺伝子組換え生物等専門委員会(平成27年度 第2回)議事要旨

1.日時

 平成28年1月22日(金)16:00~18:00

2.場所

 経済産業省別館11階 1115会議室

3.出席者

(委員長) 磯崎博司

(臨時委員)大塚 直

(専門委員)明石博臣、穴澤秀治、伊藤元己、大澤 良、鎌形洋一、五箇公一、佐藤 忍、山口照英

(関係省庁)財務省米澤専門官、文部科学省伊藤専門官、厚生労働省荒川係長

      農林水産省鈴木室長、吉尾課長補佐、経済産業省鳴瀬課長補佐

(環境省) 奥主自然環境局長、奥田野生生物課長、清家課長補佐

  曽宮外来生物対策室長、立田室長補佐、平山移入生物対策係長

4.議事

(1)法施行後5年の検討以降のカルタヘナ法の施行状況の検討

(2)バイオセーフティに関するカルタヘナ議定書の責任及び救済に関する名古屋・クアラルンプール補足議定書に対応した国内措置のあり方について

5.議事要旨

議題1 法施行後5年の検討以降のカルタヘナ法の施行状況の検討

◇事務局から【資料1】及び【資料2】について説明

◆委員意見

■承認されていない遺伝子組換え生物等の第一種使用事例について

○パパイヤの事例については、沖縄県がパパイヤの伐採などの対応を行ったということだが、カルタヘナ法に基づく措置命令は行っていないということ。どういった考え方で対応し、また、措置にどれくらいの費用を要するのか等、これから補足議定書の批准に向けた国内措置を検討するに当たっては、こういった類似の事例が参考になるのではないか。

■ゲノム編集等の新たな育種技術について

○今まさに、新たな育種技術に係る案件の申請が上がってきた場合に、カルタヘナ法の対象となるかならないかの判断のプロセスはどうなるのか。

(事務局)現行の法律の定義に基づいてよく検討し、判断していくことになる。

○申請があってから検討するということで本当によいのか。

(事務局)事前に情報収集をして検討を積み重ね、あらかじめ準備をしておく必要はある。

○事前相談を何らかの形で実施するようにすべきではないか。報告書案にも、「新たな育種技術についてはこのように対応する」といった提言を入れることはできないか。

○NPBTは、現場感覚でいうと非常に緊急を要している話であり、報告書案の指摘事項に特出しするなどして、緊張感を伝えた方がよい。

■育種過程で導入した外来遺伝子が最終的に除去されるもの(以下「null segregant」という。)について

○新たな育種技術研究会の報告書では、null segregantはカルタヘナ法の対象外となる可能性があるとしているが、実際には、誰が、どのように検討し、どうであればカルタヘナ法の対象外にするという判断をすると想定しているのか。

(関係省庁)最終的な規制上の取扱いの判断権限はリスク管理を担当する行政部局にある。新たな育種技術研究会の報告は、現行の条文に則して、そのように解釈できる可能性があると示唆している一方で、勝手に研究者が判断するのではなく、規制当局に相談すべきとしている。

○null segregantについて、最初からコンサルティングをしなくてよいという理屈にすべきではない。新たな育種技術のすべてが審査の対象になっても困るが、公に何も一回も出ないということも困る。null segregantであっても、何らかの形で1回は規制当局がコミットできるようにすべきである。

○コミットするかしないかも含めて検討する必要がある。

○null segregantについて、法律的に規制することはできるのか。

(事務局)判断にあたっては様々な観点から検討する必要がある。

○外来遺伝子が完全になくなることが証明できるのであれば、おそらく対象にしなくてよいと考えるが、完全になくならない可能性がどれくらいあるのかによるのではないか。

○同じプロダクトの規制法として農薬取締法がある。農薬は、製造工程で中間体が生じるが、評価は、最終産物における純度、何パーセント不純物が含まれるかで判断する。規制法のシステムとしては、最終的なプロダクトに対してしか本来は規制ができないはずである。最終産物の純度がどれくらい担保されているかというところが規制対象になると考える。

○本検討会で検討すべき事項は、カルタヘナ法との関わりでどうするかという点である。ゲノム編集その他の新しい育種技術について、例えば、一番極端な例として、新たな技術の使い方自体についてもカルタヘナ法の対象にする場合、あるいはnull segregantも規制対象にすべきだという場合には、本検討会で法改正、その他を考える必要がある。そうではない場合、現行法の下で、出てきた問題についてケースバイケースで対応していく。あるいは具体的に大きな問題や事例が発生する可能性が高いという前提があって、何かしなければいけないということがなければ、本検討会で検討していく内容ではない。現段階では、本法律の改正や運用の変更というところまではきていないとの結論ではないか。

○null segregantについても対象とする場合、どういう根拠で対象とするのかが分からない。例えば、ゲノム編集技術でターゲットに変異があれば分かるが、他の部分に変異が入ってしまうこと(オフターゲット)もあり、場合によってはホールゲノムシーケンスなどをしなければ起きている現象が分からないかもしれないから、ということであればあり得る。適用の仕方の基準については議論しなければならないのではないか。

○null segregantの判定の仕方といった専門的な観点や問題点については、各分野での研究の積み重ねの中で検討していくということであり、現時点で、カルタヘナ法との関係で取り上げるところまではきていないという整理である。

■施行状況の検討結果の報告書案について

○第二種使用等における不適切な使用事例について、法第14条や15条で措置命令や応急措置は可能であると考える。法第14条や第15条は生物多様性影響があるかどうかは直接関係なく措置命令を出すことができることになっている。拡散防止措置を執るように命令をするだけだが、なぜ命令していないのか。

(事務局)現状においては措置命令をかけた事案はなく、行政指導にとどまっているが、事案の深刻さや状況の軽重等を勘案しながら措置命令をかけるかについて判断することになる。

(関係省庁)これまでは各機関ともしっかりと事後対応をしているので、それに対して重ねて措置命令をかけるということはしていない。

○第二種使用等に係る不適切な使用事例について、個別の事例を資料として追加してもらいたい。どういう事後対応をしたかということが重要である。

(事務局)追加資料として準備する。報告書案の指摘事項としてどのような文言を入れるかについても相談させていただく。

○科学的知見の集積に関する指摘事項に、ゲノム編集等に関する事項も入れるべきではないか。現場感覚でいえばNBTの取扱いをどうするのかは非常に大きな問題であり、緊急を要していると考える。特出ししてその緊張感が伝わるような文言を入れるべきではないか。

○合成生物学が優先的に議論すべき課題であるとは考えられない。NBTをどのように扱うのかということの方が重要な課題である。

(事務局)報告書の中でも優先順位は整理する必要はあると考える。合成生物学を特出ししているのは、生物多様性条約の中で議論が行われているためだけであり、合成生物学の優先順位が高いということではない。それが分かるように報告書案では整理したい。

○基本的には、平成21年の検討結果にある3つの文言、「○今後、一般向けのコミュニケーション活動を引き続き実施すること、法に基づく申請をしようとする者や一般へのより有効な情報提供が行えるよう、J-BCH等を活用していくこと等の取組が必要である。」「○生物多様性影響評価で必要とされるデータについては、蓄積された知見と経験を踏まえ、適宜点検することが必要である。」「○これまでも知見の集積が行われ、それらを随時生物多様性影響評価に反映してきているところであるが、引き続き知見の充実を行う必要がある。」については、指摘事項として入れるべきである。

議題2 バイオセーフティに関するカルタヘナ議定書の責任及び救済に関する名古屋・クアラルンプール補足議定書に対応した国内措置のあり方について

◇事務局から【資料3】について説明

◆委員意見

○補足議定書における生物多様性の構成要素はカルタヘナ法と変わらないという理解で良いのか。現在、農作物は対象としていないが、それは入らないという理解で良いか。

(事務局)カルタヘナ議定書を担保するカルタヘナ法であり、カルタヘナ議定書を補足する議定書であるので、現在の生物多様性の構成要素と同様との理解で検討を進めるべきと考えている。

○EUの損害の定義のところで、「保護された種及び自然生息地」(protected species)とあるが、野生種の全てということではなく、指定され保護されているものとの理解で良いのか。

(事務局)基本的にはEUで指定され保護されている種であると理解している。

○補足議定書第2条2項(d)「対応措置」の(ⅰ)にある防止と(ⅱ)にある復元については、カルタヘナ法では規定できておらず、第一種使用規程については回収と中止があるが、防止と復元までは入っていないと考える。

○生物多様性損害は、「著しい悪影響」ということで補足議定書第2条3項に基づき考えることになると思うが、現行カルタヘナ法には規定がない。しかも、カルタヘナ法では生物多様性影響は第一種使用しか関係していないが、生物多様性損害は、第一種使用だけでなく、第二種使用にも関係する問題であるので、生物多様性への損害の概念をどのように入れていくかが気になる。

○資料1にあるパパイヤの例は損害の対象になり得るか。

(事務局)EUの例に基づいて損害の定義を想定するとすれば、おそらく対象にならない。

○補足議定書の第2条2項(d)の規定は何の具体性もない。本当に法律が運用できるのか、感覚的に懸念がある。

○EUの規定において、生物多様性損害にあたるものは指定されている種と地域に限るという理解でよいか。

(事務局)そのように理解している。

○外来生物法が国内法として先行して出ている。外来生物法の規制に準じて、種名のついている現存の生物を外来生物法で規制し、それ以外の組換え体を補足議定書に則った国内法として、外来生物法の改造版という形で整備すると考えた方が分かりやすいのではないか。

(事務局)外来生物法は目的規定もカルタヘナ法と異なっており、生物多様性、あるいは農業被害、人の健康ということも含んでいる。また、外来生物法はブラックリスト形式の法体系であるのに対し、カルタヘナ法は承認したものだけが入ってくる(ホワイトリスト)形式の法体系であるなど、異なる点を踏まえての議論が必要になると考える。

○2003年にカルタヘナ法を制定し、2004年に外来生物法を制定しており、外来生物法を制定する際にはカルタヘナ法を参照している。補足議定書の国内措置を考える際には外来生物法を必ずしも参照するということにはならないかもしれないが、既存の法律は参考にして検討すべき。

【取りまとめ事項】

◇資料2の報告書案に「補足議定書については別途検討する必要がある」と記載してあるとおり、補足議定書の議論については、カルタヘナ法の施行状況の検討とは切り離し、次回以降検討することとなった。

◇報告書案の指摘事項の文案について、①事務局で検討し、関係省庁と調整の上、委員に照会をかけ、事務的に調整した上で、最終確定は委員長に一任すること、②次回の専門委員会の開催を待たずに、最終確定した報告書案をパブリックコメントに付すこと、③パブリックコメントにおいて重要な論点や指摘がなかった場合には、報告書案に係る専門委員会を開催せずにその後の手続きに進むこと、について了承を得た。

◇事務局から、追加の意見があれば2月5日(金)までに事務局まで報告いただけるよう依頼。また、次回の専門委員会の開催についてはおって文書により案内する旨連絡。

以上