中央環境審議会 自然環境部会 野生生物小委員会 第5回会議録

日時  

平成26年10月16日(木) 18:01~20:21

場所  

環境省第2,3会議室(中央合同庁舎5号館19階)

出席者

委員長

石井  実

委員       

鷲谷 いづみ

臨時委員

石井 信夫    

小泉  透    

高橋  徹

宮本 旬子    

山極 壽一

専門委員     

マリ・クリスティーヌ 

福田 珠子

環境省     

塚本自然環境局長

小川大臣官房審議官

江口総務課長

中島野生生物課長

安田希少種保全推進室長

関根外来生物対策室長

堀内鳥獣保護管理企画官

議事録

【事務局】 予定の時刻となりましたので、中央環境審議会自然環境部会野生生物小委員会を開催させていただきます。

 委員の皆様におかれましては、お忙しい中、日程調整にご協力いただきまして、誠にありがとうございました。

 さて、審議会の定足数についてですが、先ほど出席予定の山極委員から、少し遅れるので、議事は先に進めていてくださいとの連絡があり、石井委員長にご相談申し上げたところ、間もなく到着するとのことなので先に進めさせていただき、状況をみて判断ということになっております。

 それでは続いて、お手元にお配りしております資料の確認をさせていただきます。

 資料ですが、審議事項(1)の関係では資料1-1から資料1-3-9及び参考資料1がございます。資料1-1、1-2は、鳥獣保護区の指定に関する、諮問関係の資料です。

 資料1-3-1、1-3-2は、国指定下北西部鳥獣保護区関係の資料です。

 資料1-3-3は、国指定大鳥朝日鳥獣保護区関係の資料です。

 資料1-3-4、1-3-5は、国指定涸沼鳥獣保護区関係の資料です。

 資料1-3-6、1-3-7、1-3-8は、国指定北アルプス鳥獣保護区関係の資料で、3つの特別保護地区に関する資料です。

 資料1-3-9は、国指定中海鳥獣保護区関係の資料です。

 参考資料1は、国指定鳥獣保護区及び特別保護地区の指定についての、諮問案件の概要説明資料となっております。

 続きまして、審議事項(2)の関係では、資料2-1、資料2-2があり、オオタカの国内希少野生動植物種解除についてというものと、指定解除に関するシンポジウムの開催概要がございます。

 最後、報告事項(3)として資料3、国指定鳥獣保護区の保護に関する指針の変更についてということで、国指定ユルリ・モユルリ鳥獣保護区関係の資料がございます。

 資料に不備等がございましたら、事務局までお申し出願います。よろしいでしょうか。

 それでは、自然環境局長の塚本よりご挨拶申し上げます。

【塚本自然環境局長】 皆さん、こんばんは。自然環境局長の塚本でございます。少し遅れてしまい申し訳ございませんでした。

 本日は、お忙しい中、そしてまた夜になりましたが、こんな時間の開催にもかかわらずお集まりいただきまして、本当にどうもありがとうございます。

 日ごろより、格段のご高配を賜っていることに対しまして、改めてお礼申し上げます。

 今日は国指定鳥獣保護区と特別保護地区の指定についてご審議をお願いします。新規の指定としては、涸沼が1件ございます。再指定の鳥獣保護区については7件で、いずれもイヌワシやライチョウなどの希少な鳥獣が生息する、あるいは渡り鳥の重要な地域になっています。

 それから、涸沼ですが、地元が非常に自然環境保全に熱心でございまして、ぜひ、次回のラムサール条約締約国会議に諮って、ラムサール条約の登録湿地にしたいということで、盛り上がっているそうです。

 環境省としても、これをしっかり支えたいと思います。

 それから、もう一つはオオタカの指定解除ですが、これは従前からいろいろとご審議をいただいておりまして、今までいろんな検討課題を、パブリックコメントを含めまして抽出してまいりました。ようやくその方向性について、このようにしたいということでお諮りしたいと存じます。

 それから、ユルリ・モユルリの件につきましては、報告事項になりますけれども、これについてもご意見をいただければと思っております。

 盛りだくさんではあり、また、時間も非常に限られておりますけれども、ぜひよろしくお願いいたします。

【事務局】 それでは、この後の議事進行につきましては、委員長の石井先生にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【石井委員長】 皆さん、こんばんは。

 本来は、昨日開催の予定だったんですけれども、日程調整の迷走状態になりまして、皆さん、お忙しくて、最後は土日か夜しかないねということで、今日、こんな時間の開催になりました。そういうことで、効率よい議論をさせていただければと思います。

 それから、定足数ぎりぎりということもありまして、山極委員の到着を待って決議をしたいと思いますので、いつもですと鳥獣保護区の指定の議論については一件一件やらせていただいていますが、最初にすべてのご説明をお願いして、その後で一件一件ご意見をうかがうというふうに考えております。そんなことで、ご了承いただけますでしょうか。

 では、まず事務局のほうから、まとめてですけれども、全ての案件についてのご説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

【事務局】 環境省野生生物課計画係長の桝と申します。よろしくお願いします。

 座ってご説明させていただきます。

 国指定鳥獣保護区及び特別保護地区の指定についての諮問でございます。

 お手元の資料1-1をご覧ください。

 10月14日に、環境大臣から、国指定鳥獣保護区・特別保護地区の指定について諮問させていただいております。これらの5つの鳥獣保護区に関して、特別保護地区の再指定が7件、新規の鳥獣保護区が1件、新規の特別保護地区が1件、合計9件ということになります。

 案件の一覧は、次のページ、めくっていただいて、資料1-2に書いてございます。

 次の資料1-3-1以降が、諮問させていただく正式な計画書でございますけれども、今回は、この中身をパワーポイントに取りまとめておりますので、そちらで説明させていただきます。

 今回映写するパワーポイントにつきましては、資料1-3をずっとめくっていただいて、その後にございます参考資料1として、紙に印刷してあるものと同じですので、そちらのほうもあわせてご覧ください。

 それでは、こちらのパワーポイントに沿って説明をさせていただきます。

 まず、国指定鳥獣保護区及び特別保護地区について、改めてご説明させていただきたいと思います。

 国指定鳥獣保護区は、鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律に基づき、国際的または全国的な鳥獣の保護の見地から重要と認める区域について指定されます。この中では、狩猟は認められないことになります。

 特別保護地区に関しましては、鳥獣保護区の区域内で鳥獣の生息地の保護を図るために、特に必要があると認められる区域について指定されまして、狩猟の規制に加えて、建築物その他の工作物を新築したり、水面を埋め立てたり、木竹を伐採したりすることなどが規制、つまり環境大臣の許可を得なければしてはならないということとされております。

 鳥獣保護区の指定区分については、ここに記載のあるとおり4種類ございます。

 一つは、行動圏が広域に及ぶ大型の鳥獣を保護するための大規模生息地。集団で渡来する水鳥など渡り鳥の保護を図るための集団渡来地。それと、集団で繁殖する鳥類・コウモリ類の保護を図るための集団繁殖地。それと、環境省が作成したレッドリストにおいて、絶滅危惧ⅠA類・ⅠB類またはⅡ類に該当する鳥獣もしくは絶滅のおそれのある地域個体群として掲載されている鳥獣の生息地を希少鳥獣生息地として指定するというものです。

 現在、鳥獣保護区は、北はサロベツから南は与那国島まで、81カ所が指定されております。

 指定までの手順ですけれども、我々は、この1年間をかけまして、自治体、利害関係人等との調整、指定案の公告縦覧、公聴会の開催、パブリックコメントを実施してきました。

 そして、現在は、この中央環境審議会の諮問という段階にあるというところです。

 なお、鳥獣保護区の関係で、諮問の案件の対象となるのは、鳥獣保護区の場合に関しては、新規の指定または既に指定している鳥獣保護区を拡張する場合、特別保護地区の場合に関しては、新規指定と存続期間の終了後の再指定、それと存続期間中の拡張です。これらが、諮問すべき案件として法律で規定されております。

 ここでご了解いただけた場合には、官報告示を11月1日までに行うという予定にしております。

 今回諮問する鳥獣保護区・特別保護地区の案件は、こちらに記載されているとおりの9件です。

 下北西部鳥獣保護区の中の奥戸特別保護地区と下北西部特別保護地区、そして大鳥朝日鳥獣保護区の大鳥朝日特別保護地区、そして涸沼鳥獣保護区と涸沼特別保護地区、北アルプス鳥獣保護区の中の立山特別保護地区、北アルプス特別保護地区、乗鞍特別保護地区、そして中海鳥獣保護区の中の中海特別保護地区です。

 涸沼については、新規の指定、それ以外については、今まで指定されてきた特別保護地区を、継続して10年または20年指定をさせていただきたいというものでございます。

 もしもお認めいただいた場合には、鳥獣保護区・特別保護地区の箇所が、それぞれ1カ所ずつ増えるという形になります。

 では、早速、最初の国指定鳥獣保護区、奥戸特別保護地区及び下北西部特別保護地区の再指定について説明をさせていただきます。

 下北西部鳥獣保護区は、青森県の下北半島にありまして、奥戸地区と下北西部地区の2地区に分かれます。北側のほうが奥戸の地区で、南側のほうが下北西部地区になります。

 現地の状況は、このような形になっています。

 位置は、青森県下北郡大間町にありまして、存続期間は、平成26年11月1日から10年間を予定しております。面積は183ヘクタールで、再指定です。希少鳥獣の生息地として、オジロワシ、ハヤブサ、クマタカ、地域個体群となっているツキノワグマに関する鳥獣保護区です。これ以外にも、ヤマドリのほか鳥類が67種類、ニホンカモシカなど16種類の鳥獣が生息しております。

 自然環境の概要ですが、ブナ・ミズナラ群落、ヒノキアスナロ群落が中心となっております。

 あと、指定計画書には、法32条に基づく補償について記載されております。これまで特別保護地区において、補償の規定が適用された実績はありませんが、制度上は、この条項にあるように、損失を受けた者に対して、通常生ずべき損失を補償することになるということが書かれております。どの計画書にも同じように書かれておりまして、ここに関しては、以降、省略させていただきます。

 奥戸特別保護地区ですが、これは渡り性の猛禽類が北海道と本州を行き来する結節点でもあります。オジロワシの餌になる魚や水鳥、ハヤブサやクマタカの餌になるトウホクノウサギやヤマドリなどが生息するといった自然環境の状況にこの10年間大きな変化はなく、引き続き生息地として重要であると考えております。

 特に、またブナ・ミズナラ林は、下北半島の地域個体群となっているツキノワグマの生息にとって非常に重要な地域であるという状況でございます。

 次に、下北西部の特別保護地区の概要でございます。

 場所は、青森県のむつ市と佐井村です。

 こちらも同じく平成26年11月1日から10年間です。

 面積は885ヘクタールでございます。海沿いの斜線が引いてあるところが特別保護地区でございます。下北半島の国定公園に指定されているとともに、文化財保護法に基づく地域として下北半島のサル生息地の北限地に指定されております。

 こちらの指定区分も同様に希少鳥獣の生息地であり、オジロワシ、ハヤブサ、クマタカ、ツキノワグマの保護のための鳥獣保護区となっております。鳥類は、ヤマドリほか67種、獣類はニホンカモシカほか16種が確認されております。

 自然環境の概要としては、高低差10から100メートルの切り立った断崖。こちらの写真のように、海沿いの非常に切り立った断崖になっておりまして、エゾイタヤ・シナノキ群落などの風衝地植生、その上部にはブナ・ミズナラ群落があるというような状況でございます。

 海岸部の切り立った岩場とか断崖はハヤブサなどワシタカ類の営巣の場になっております。オジロワシなどの渡り鳥が北海道と本州を行き来する際に、こちらの崖地に向かって吹く西風によってできる上昇気流を利用していると考えられまして、渡りのルートを維持する観点からも、非常に重要になっております。

 ちょうど青森県の津軽のほうから来た渡り鳥が、こちらの下北半島西部鳥獣特別保護地区のルートを使って北海道に渡っているというような状況になっています。

 前回の指定当時は――前回の指定が平成16年でしたが、そのときから、鳥獣保護区管理員2名による巡視、鳥獣の調査、制札の管理を実施しております。

 希少な野生動物の餌を供給する良好な森林植生があるという状況は変わりませんので、こういったことを踏まえて、区域については現状を維持しつつ、希少鳥獣の採餌環境となる広葉樹林を保全するため関係機関と連携を図りまして、鳥獣保護管理員による巡視や、関係行政機関と協力して、地域住民や利用者への普及啓発を行っていきたいというふうに考えております。

 公聴会に関しては、9月25日に実施しました。公述人11名、全てに賛成をいただいております。国指定鳥獣保護区管理員によるモニタリング調査結果を閲覧・入手できるようにしてほしいというご意見もいただいておりますけれども、それぞれ対応することにしております。

 最後、この鳥獣保護区のうち下北半島のホンドザルのことに関して、補足でご説明させていただきます。

 実は、この鳥獣保護区の再指定に当たりまして、平成26年1月から2月にかけて、地元と事前の調整を行いました。この中で、地元の自治体から、ホンドザルによる農作物被害が著しいので、ホンドザルを保護するために鳥獣保護区を更新すると、いうことであれば、それには反対したいというような考え方が示されました。これを受けて、この鳥獣保護区におけるホンドザルの位置づけについて我々も検討しました。

 この国指定鳥獣保護区は、当初指定が昭和59年11月でございます。

 その当時の指定計画書を見ますと、指定理由として、北限のニホンザルのほか、カモシカ、あとミサゴ、オオタカ、クマタカ、ハヤブサなどの希少鳥獣の存在が挙げられています。つまり、ニホンザルは、指定理由となる希少鳥獣の一部を構成しており、鳥獣保護区の指定の目的の一部でございました。

 2番目に、ニホンザルのレッドリストの掲載状況です。確かに、平成3年に出しました環境省の1次レッドリストでは、「保護に留意すべき地域個体群」として、また、平成10年の第2次レッドリストには、「絶滅のおそれのある地域個体群」として掲載されていました。

 しかし、平成18年の第3次レッドリストから削除されて、下北半島のホンドザルに関しては希少鳥獣ではなくなりました。

 その理由は、一言で言えば個体数の増加でして、平成18年には1,600頭を超える状況にありました。指定当時は290頭というような状況ですが、かなり大きく増えています。ちなみに、2010年では56群、1,923頭です。

 数が増えたということに加えて、生息区域も大きく広がっています。そのほか、ホンドザルによる果樹・野菜等の農作物の食害が生じて、地元からは対策を求める声が非常に強いという状況でございます。

 また、ホンドザルの管理に関しては、青森県が特定鳥獣保護管理計画に基づいて、個体群及び個体数の詳細なモニタリングをしております。

 どの群れが何匹いて、どの区域に生息しているかというのが全てわかるように、モニタリングが非常に充実した体制でやられております。そこでは、下北半島の中でゾーニング、すなわち保全区域、調整区域、サルを排除する区域を定めて、被害対策を実施しながら、個体数の維持・調整を推進しております。つまり、絶滅しないように十分な管理をされた状況にあります。

 こうした状況を踏まえまして、今回の鳥獣保護区の更新及び特別保護地区の再指定に関しては、指定計画書うち、「指定目的」の項にはホンドザルに関しての記述はせず、「動物相の概要」、「鳥獣リスト」に、ホンドザルが生息しているということを記載するというような対応とさせていただきました。

 下北西部に関しては、以上でございます。

 次に、国指定大鳥朝日鳥獣保護区の大鳥朝日特別保護地区の再指定についてでございます。

 場所は、山形県鶴岡市、川西町と、新潟県村上市にまたがる朝日山地に位置しております。存続期間は、平成26年11月1日から20年間を予定しています。面積は8,611ヘクタールでありまして、全域が磐梯朝日国立公園になっております。こちらも希少鳥獣生息地として、イヌワシ、クマタカ、ハヤブサ、オオタカなどの希少鳥獣を保護するための鳥獣保護区です。

 これらの鳥獣のほかに、ヤマドリほか102種、ニホンカモシカなど30種の鳥獣が確認されております。

 こちらの朝日山地は非火山性の山地ですが、積雪や雪崩など雪に特徴づけられる自然環境を有しております。標高1,200メートル付近までは、ブナを中心とした落葉広葉樹林帯ですけれども、それ以上になりますと、ブナ帯上部は偽高山帯といいまして、ミヤマナラ、ミヤマカエデなどの落葉の低木林が、それ以上の稜線部は雪田群落、ハイマツなどの植生なっております。

 こちらが特別保護地区で見られる猛禽類などです。

 稜線の周辺部には、風衝植生及び雪田植生が広がりまして、こうした開けた環境は、イヌワシが上空を旋回して獲物を狩る採餌の場として非常に重要でございます。原生的なブナ-チシマザサ群落には、イヌワシの餌となるトウホクノウサギなどが生息して、林内に関しても、ギャップや林縁も採餌・休息の場として重要になっております。このような自然環境の状況に、大きな変化はないような状況でございます。

 イヌワシに関して申し上げますと、特別保護地区を活動範囲としている個体も多く、巡視の中で、平成25年においては、清太岩山という場所ですが、上空を旋回している個体を確認しております。そのほか高山低木植生、高山ハイデ植生などのところで、イヌワシの重要行動―採餌のためのハンティング、ディスプレイ飛行―がたびたび確認をされております。

 これら特別保護地区の前回指定(平成16年)からの管理状況ですけれども、鳥獣保護区管理員4人が、鳥獣保護区の巡視、制札の管理などを実施しておりました。山形県・新潟県にまたがる非常に険しい山岳地帯ですので、鳥獣保護区へのアプローチが長くて、各管理員の担当エリアが広いため、巡視・管理にはかなり時間を要しているということが課題でございます。

 そのため、適切な巡視ルートやポイントを検討しつつ、区域に関しては現状を維持し、採餌環境整備のための関係機関との連携と協力を図っていきたい。さらに、巡視などを通じて、利用者や地域住民への普及啓発を図っていきたいと考えております。

 こちらの公聴会は9月24日に開催しました。22人の公述人の皆さん、全てに賛成をいただいております。

 希少猛禽類の生息地として、鳥獣保護区として指定することについて、賛成であるという積極的なご意見もいただいております。

 モニタリング等の調査を実施して、必要に応じて区域の見直しを行うことが重要であるとか、あと、鳥獣保護区周辺の獣類の農作物や森林被害が発生する場合は、有害鳥獣捕獲の許可を適切に行うことが必要だというようなご意見もいただいております。

 次に、国指定涸沼鳥獣保護区及び涸沼特別保護地区の新規指定です。

 涸沼は、茨城県のちょうど水戸市の南側にりますが、涸沼及びその周辺の水田地帯について、鳥獣保護及び特別保護地区にそれぞれ指定をするものです。

 これが涸沼の状況になります。

 位置は、茨城県の鉾田市、茨城町、大洗町で、平成26年11月1日から20年間を予定しております。面積は、鳥獣保護が2,072ヘクタール、その中に位置する涸沼の沼の部分が特別保護地区で、935ヘクタールでございます。

 指定区分は集団渡来地で、特にスズガモが毎年平均5,000羽以上渡来する状況です。鳥類に関しては88種、獣類に関しては、タヌキなど4種類おります。

 他法令による規制に関しては、涸沼の沼の部分が河川区域になっておりますほか、茨城県立自然公園に基づく規制区域もございます。

 自然環境の概要ですが、涸沼は、那珂川の河口から10キロぐらいに位置する汽水湖になります。明治30年代から昭和40年代まで、干拓によって埋め立てが進んで現在の区域になりました。ヨシとかマコモとかの抽水植物群落、淡水魚のほか、ボラとかといった回遊魚も生息しております。昆虫類では、特にヒヌマイトトンボが確認されて有名になっております。貝類は、シジミが多く見られて、この地域の産業となっております。

 ガンカモ類の飛来は、概ね毎年約1万羽以上で推移しております。特に、先ほど申し上げたとおり、スズガモが毎年約5,000羽以上程度飛来しております。平成19年から平成25年のデータを下に示しておりますけれども、その中で、特に平成21年から25年の5年間の個体数が、平均すると約4,900羽となっております。スズガモ東アジア個体群の1%の数が2,400羽ですので、それ以上飛来しておりますので、これがラムサール条約の登録基準に合致している状況でございます。

 涸沼は、ガンカモ類の採餌、ねぐら、休息の場として利用されておりまして、この周辺の水田に関してもガンカモ類の採餌の場として利用されております。

 オオワシが定期的に越冬しておりまして、これは関東地方ではまれのようです。

 オオワシは、こちらに書いた青丸の部分によく越冬し、餌をとっています。ちょうどこの丸をつけた部分の上の水域が、一番涸沼の中でも浅い水域だそうで、餌がとりやすい状況になっています。

 涸沼はこれまで、県指定の鳥獣保護区と特別保護地区でした。県雇用の管理員3名によって、巡視などが行われてきました。環境省では、これを国指定鳥獣保護区にしまして、関係地方公共団体や地域住民と連携した管理を行い、さらに持続可能な利用が促進されるよう今後は努めていきたいと思います。さらに、利用者への普及啓発というところにも力を入れたいと考えています。

また、今後のラムサール条約の登録もにらんで、茨城県が関係地方公共団体や関係団体とともに、この前の8月20日に、「涸沼ラムサール推進協議会」という地元の組織を立ち上げました。

 今後は、この協議会を中心として、ラムサール条約の推進を地元としても目指していくということですので、登録後の管理・利用に関しても、関東地方環境事務所と連携して、しっかりと実施をしていくという予定になっております。

 参考で、ラムサール推進協議会の概要をつけております。茨城県、鉾田市、茨城町、大洗町のほか、農協、漁協、商工会、観光協会にも参加をいただきまして、登録に関すること、自然環境の保全に関すること、さらに、いわゆるワイズユーズ、持続可能な利用に関することを事業内容として、関東地方環境事務所と連携をして管理を進めていく予定です。

 さて、公聴会は、公述人17人の方が出席されましたが、全てに関して賛成をいただいております。県からは、自ら推進協議会を設置したので、ラムサール条約の登録推進について支援願いたいというようなご意見もいただいております。

 次に、場所を中部地方に移しまして、北アルプスの鳥獣保護区のうち、立山特別保護地区、北アルプス特別保護地区、乗鞍特別保護地区でございます。

 北アルプスの鳥獣保護区の中で、一番北の立山の部分が立山特別保護地区、真ん中の上高地や槍ヶ岳などの区域を中心とした部分が北アルプス特別保護地区、さらに南に離れまして、最南端の部分が乗鞍特別保護地区でございます。

 一つ一つご説明させていただきます。

 まずは立山特別保護地区についてです。

 行政区としては富山県の黒部市と立山町に、位置しております。

 平成26年11月から10年間、1万2,485ヘクタールを再指定するものでございます。こちらは全て中部山岳国立公園になっておりまして、文化財保護法による地域も含まれます。

 指定区分は希少鳥獣の生息地で、こちらはライチョウやイヌワシの保護区として指定するものです。全体の鳥獣としては、オオタカを初め、イヌワシなど96種、ニホンカモシカなど獣類が32種確認されております。

 自然環境の概要ですが、立山を中心とする標高600から3,000メートルぐらいの区域です。高山帯、夏緑広葉樹林帯からなっておりまして、また、立山は火山でもあり、またカールなどの氷河地形も見られます。

 ここに、立山の特別保護地区の図とライチョウの生息確認がなされた場所を図示しておりますけれども、ライチョウの生息にとって重要な風衝地群落、ハイマツ群落、雪田植物群落が大きく広く発達している場所であることが分かります。立山ではなわばりが非常に大きな領域に形成されておりまして、日本で最大の連続したライチョウの分布域であるということが言えます。

 さらに、イヌワシの生息も確認されております。

 その理由として、急峻な地形や岩場が営巣に適していることが挙げられます。それと、こちらは植生などを表した図で、青色が高山低木群落、紫色が雪田草原、赤紫色が高山ハイデ及び風衝草原になっておりますが、こうした高標高地域にある開けた環境が採餌のハンティングに適しているためです。2012年・2013年の調査で、イヌワシが実際に利用していることが確認された場所をこちらに青く記しております。

 次に、真ん中のほう、北アルプス特別保護地区です。

 位置として、行政区としては、富山県富山市、長野県の松本市、安曇野市、大町市でございます。

 存続期間は、平成26年11月から10年間、1万1,868ヘクタールの特別保護地区を再指定するものです。

 全域が、こちらも中部山岳国立公園になっておりまして、上高地の部分が文化財保護法による地域となっております。

 こちらも同じくライチョウとイヌワシの保護区です。槍ヶ岳・穂高連峰を中心とする標高1,600メートルから3,200メートルまでの区域で、高山帯、亜高山帯の区域、それとカール、モレーンといった氷河地形が見られます。

 三つの特別保護地区の中で、最も標高が高い山域が連続していることがポイントでございます。こうした高標高の地域のハイマツ群落、高山草原群落から成る高山帯にライチョウが生息しております。

 今後の気候変動を考えた場合でも、ライチョウの生息の中心になり得る地域ということですので、極めて重要であると考えております。

 イヌワシに関しても、ハンティングに適した場が広がっておりまして、こういった自然環境に関しては変化がなく残されており、イヌワシにとっても重要な生息の場所であると考えております。

 次に、乗鞍特別保護地区でございます。

 場所は岐阜県の高山市です。

 こちらも平成26年11月1から10年間、997ヘクタールを再指定させていただきたい。

 他法令の規定に関しては、中部山岳国立公園と重複しております。

 指定区分は、こちらも希少鳥獣生息地で、ライチョウとイヌワシの保護区でございます。

 こちらは、乗鞍岳の標高2,200メートルから3,000メートルまでに位置し、ハイマツ群落や高山草原群落からなる高山帯です。複数の小火山から構成された成層火山で、火山壁や火山丘が見られるという特色があります。

 乗鞍に関しては、ほかの生息地から比較的離れた場所に分布しておりまして、分布域を広域に確保する観点から、非常に重要な生息地であると考えております。

 この区域は、風衝地群落、ハイマツ群落及び雪田群落が広く発達しております。ある程度大規模なライチョウの個体群が生息する地域となっておりまして、さらにイヌワシも生息が確認をされております。

 これについても、他の特別保護地区と同様に生息地として資質が残されており、非常に重要な地域が今までどおり維持されています。

 管理の概要ですけれども、前回の指定当時(平成16年)から鳥獣保護管理員8名で巡視、鳥獣の調査、制札の管理を実施しております。北アルプスの高山帯でも、他方でシカが目撃されている状況になっております。

 今後、個体数の増加によって生態系への影響も懸念されることから、「中部山岳国立公園ニホンジカ対策方針」を定めまして、これに基づいて対策を実施しております。

 こうした管理の状況を踏まえ、区域に関しては現状を維持しつつも、ライチョウの生息数が安定して維持されているということから、ライチョウの保護・増殖事業計画を定めていますが、これに基づき関係機関と連携して、その保護に努めていきたいと思います。また、利用者や地域住民への普及啓発も引き続き実施していきたいと考えております。

 公聴会については、非常に広範な区域にわたりますので、3会場で実施して、いずれも賛成のご意見をいただいております。

 主な意見として、例えば県境を越えた保全のための取組の支援と、国及び県の連携体制の構築を検討してほしいというご意見をいただいております。現場を管理する長野自然環境事務所は、自治体と連携をしながら広域的な管理をするというのがもともとの仕事でございまして、ごもっともな意見として、必要な情報収集、対応などをしていきたいと考えております。

 こちらが最後になります。国指定鳥獣保護の中海特別保護地区の再指定でございます。

 中海の状況が、こちらの写真です。

 位置は、鳥取県の米子市、境港市、島根県の松江市、安来市にまたがります。平成26年11月1日から10年間を予定しておりまして、こちらは集団渡来地の保護区として、特にガンカモ類やハクチョウ類などが非常に大量に飛来する場所でございます。鳥類は、このほか302種、獣類に関しても、タヌキなど3種が生息しています。

 自然環境の概況ですが、斐伊川水系にありまして、境水道を通じて日本海につながる汽水湖になっております。塩分濃度は、海水の約半分程度ということです。大部分が水深3~4メートルと非常に浅くて、最深部では8メートル程度。アオサ、アオノリなどの海藻類、スズキ、ボラなどの魚類も生息しております。

 特に中海に関しましては、ガンカモ類の最高個体数は、平成20年から24年程度まで見ても約6万羽で推移しております。特に平成22年度は最高で7万5,000羽も飛来しているという状況です。

 これらのガンカモ類は、中海特別保護地区の全体を利用しております。これは中海を七つの区域に分けまして、それぞれで数を数えたというものです。これにおきましても、満遍なく利用していることがわかります。

 ここにある、右手に丸で大体の飛来数の規模が描いておりますが、これは平成20年から24年の11月の飛来数の平均値を示したものです。それぞれの区域で約5,000羽から1万羽程度が飛来しているという状況です。

 コハクチョウに関しても、毎年1,000羽以上飛来しております。これは中海の鳥獣保護区の南にある能義平野というところで勘定された数です。広大な中海の区域で数を数えることは困難ですが、中海のコハクチョウはほとんど全て能義平野に集中して採餌をすることが知られておりますので、その数を中海に渡来した個体数と扱うことができます。 さらに、オナガガモ、ホシハジロ、キンクロハジロ、スズガモに関しても、東アジア個体群の1%以上が飛来しています。スズガモに関しては2万5,100羽、キンクロハジロについては平均で1万3,400羽、ホシハジロに関しては平均で8,100羽、オナガガモに関しては平均で3,100羽という状況でございます。

 前回の指定は平成16年でしたけれども、これに関して、国指定鳥獣保護の管理員による巡視、鳥類の調査、制札の管理を実施しております。

 この10年間管理を行う中で、鳥インフルエンザの発生が1回だけ確認されております。鳥インフルエンザ対策については、中海において野鳥死亡個体調査等を関係機関の協力などを得て今進め、監視を進めているところです。

 こうした管理の状況を踏まえて、区域に関しては現状維持をさせていただきたいと思いますが、希少種を含む、引き続き多様な鳥類相を保護するために、生息環境の整備などを引き続き行っていきたいと思います。また、鳥獣保護区管理員による巡視や、利用者への普及啓発、住民への普及啓発というのを引き続き実施していきたいと思います。

 こちらの公聴会は8月に行いまして、公述人18人の方々、皆さん賛成をいただいております。

 主な意見として、中海がラムサール条約の登録湿地になっているということを踏まえて、より一層、生業や生活と野生生物保護のバランスのとれた生態系の維持や保全に努めてほしいというご意見もありまして、そのとおりに対応していくこととしております。

 鳥獣保護区の説明に関しては、諮問の中身に関しては、以上でございます。

【石井委員長】 桝係長、スムーズにご説明を全部やっていただいて、お疲れさまでした。ありがとうございました。

 山極委員が到着されましたので、事務局から、改めまして定足数についてご報告をお願いいたします。

【事務局】 失礼いたします。

 定足数のご報告を申し上げます。現在、部会所属の委員・臨時委員13名のうち、7名の委員のご出席をいただいておりますので、中央環境審議会議事運営規則第8条第5項による定足数を満たしておりますので、本委員会は成立しております。

 ご報告いたします。

【石井委員長】 ありがとうございました。

 本当に定足数ぎりぎりです。山極委員、どうもありがとうございます。

 そうしましたら、ただいまご説明を全部で9件いただきました。

 資料1-2を見ると一覧でわかりやすいんですけれども、再指定が全部で7件あって、涸沼は4、5に関して、新規指定となっています。

 ご説明は一気にやっていただきましたが、少しずつ区切りながらご意見を伺いたいと思います。

 それでは、同時にご審議いただければと思いますが、最初の、1番と2番が青森県関係です。下北西部鳥獣保護区ですけれども、奥戸の特別保護地区、それから下北西部特別保護地区ですが、この2件に関していかがでしょうか。ご意見、ご質問等があったらお願いいたします。

 どうぞ。

【山極委員】 下北のニホンザルについてちょっとお聞きしたいんですけど。ページ番号20の資料の下北半島のホンドザルについて、これは2010年(平成24年)というんだけど、平成22年の間違いですよね。

【事務局】 すみません。間違いです。

【山極委員】 ページ番号21の資料の下の被害額は、平成22年までしか書いていないんだけど、23年、24年、25年というのはどうなっているのか。そういうデータはないんですか。

 それから、個体数調整、ここはやっていると思うんですけど、どのくらい毎年とっているのかという、データがあればお聞かせ願いたいと思います。

【石井委員長】 回答の準備に時間がかかりますかね。

 では、質問だけお聞きしておいて、後でご回答ということでいいですね。

【事務局】 はい。

【石井委員長】 では、宮本委員、お願いします。

【宮本委員】 奥戸と、それから下北西部の保護地区の概要のところで、資料として、平成25年度風力発電施設に係る渡り鳥・海ワシ類情報整備委託業務報告書というのが上がっていますが、この対象となっている地域の付近に、既に風力発電施設があるのか、あるいは、この報告書というのは、建設等が新しくされるために行われているものなのか、もしおわかりでしたら、教えていただきたいと思います。

【石井委員長】 これもお聞きしておくということで、後でお答えいただければと思います。

 ほかに、この2件に関してございますでしょうか。

(なし)

【石井委員長】 そうしましたら、次ですけれども、大鳥朝日特別保護地区ですが、これは一つだけ独立していますので、この再指定に関して、いかがでしょうか。

 これに関してのご意見をお願いいたします。

(なし)

【石井委員長】 よろしいですか。そうしたら先へ行きますね。

 4番と5番が新規指定になりますけれども、茨城県の涸沼鳥獣保護区ということです。4が鳥獣保護区、それから5番のほうが涸沼特別保護地区の2件です。

 この2件に関して、ご意見、ご質問があったらお願いいたします。

【鷲谷委員】 質問ですが、水田が範囲の中に入っているようですけれども、環境保全型の稲作などが行われているのか。生物多様性に優しい農法などがとられているか、わかれば教えていただきたいんですけれど。

【石井委員長】 これもお聞きしておきますね。覚えておいてくださいね。私もメモをしておきますけれども。

 どうぞ、山極委員。

【山極委員】 涸沼なんですけど、これは県から国へと指定が変わるわけです。

 そうすると、これまでは鳥獣保護員3名による巡視及び鳥獣調査というような話で、年間80日程度。これは国になるとどのくらい増員されたりするんでしょうか。

 というのは、国の管理になると県が手を引いてしまうということがあり得るので、その辺りが不安になったんですけど。

 緊密な協力をしていくということなんですけれど、その辺りの変化というのをお聞かせ願いたいです。

【石井委員長】 わかりました。

 ほかに何かご質問、ご意見ございますか。

 どうぞ。

【鷲谷委員】 ここ以外にも、鳥獣保護区管理員とか、鳥獣保護区の管理員という言葉が出てきて、若干、年間何日働いているかというような情報も記されているんですけれども、その管理員の方が、どういうお立場の方なのかとか、雇用形態がどうなっていて、職務内容というのが、どういうふうに決められているか、ここだけではなくて、いろんな場所で出てきますので、お願いいたします。

【石井委員長】 わかりました。これは全地域についてのご質問ということですね。

【鷲谷委員】 そうですね。

【石井委員長】 ほかは、よろしいですか。

(なし)

【石井委員長】 そしたら、今度は6、7、8の北アルプス案件ですけれども、6が立山特別保護地区、それから7が北アルプス保護地区、そして8番が乗鞍特別保護地区ということで、いずれも再指定となっております。

 これに関して、ご質問、ご意見等あったらお願いいたします。いかがでしょうか

 私のほうから。

 ここは温暖化の絡みかもわからないですが、ニホンジカの問題が結構厳しくなっていると思うんですけれども、現状がどのようになっているか。それから、対策としてどのようなことをされるのかというのをお聞きしておきたいと思います。

 最後の9番目ですけれども、中海特別保護地区の再指定に関して、ご意見、ご質問があったら、お願いいたします。いかがでしょうか。

(なし)

【石井委員長】 そうしましたら、1番から9番まで全て通してですけれども、言い忘れたとか、そういうことがありましたらお願いいたします。

 石井委員、何かございますか。

【石井(信)委員】 質問というよりコメントに近いんですけど、大鳥朝日、それと下北については、哺乳類のリストが一応上がっている。

 ただ、見せていただくと、これもいるはずだけどというのが出ていません。それから、ほかのところについては鳥のリストだけになっています。

 それで、せっかく国指定の鳥獣保護区なので、せめて何がいるかぐらいは、基本的な調査というのを、全部一度にというのは難しいと思いますけれども、やっていただきたい。それで、何かそういう計画はないかなというのが質問です。

 それから、いつもどなたか言っていることですけども、管理計画の中に、生息状況をモニタリング調査で把握するというようなことだけが書いてあるので、もう少し、ここにいる鳥獣を守っていくような、積極的な計画というのができないかどうかというのが要望です。

 以上です。

【石井委員長】 わかりました。

 ほかに、何かお気づきの点等ございましたら。

 ではどうぞ。

【小泉委員】 全体に公聴会の実施結果を見て感じた印象を申し上げます。

 保護区というのは、指定するという時代から、積極的に管理するという時代に入ってきているのではないかということを強く感じています。

 実際に、ある特定の動物が保護区の中にいるのだったら、保護区の更新が反対されるというようなことが出てきています。

それから、シカに関し、地元の要請を待って駆除を行うというような対応が書かれていますけれども、日本全国のシカの状況を考えれば、もっと積極的に保護区の中で管理していくという意思表示が必要だと思います。

 それから、例えば立山のほうでは、方針を立てて調査を行っているということが書かれていますけれども、もう一つ、何の目的でその調査を行っているのか、調査の結果を受けて、どのような具体的な方針を立てて実行しようとしているのか、というところまで踏み込んで関係者で議論をしていただきたいと考えます。

 保護した動物が、保護されたことによって数が増えて、それが自然保護区の運営・管理の中で支障を生じるようなことになってはいけないという気がいたします。予防的措置も含めて積極的な管理をお願いしたいと思います。

 以上です。

【石井委員長】 ありがとうございました。

 ほかはいかがでしょうか。

 ちょっと私から素朴な質問なんですけれども、大体10年で再指定になっているんですが、涸沼については20年ということになっていますね。これについてコメント等をいただければと思います。

 では、特になければ、まとめてですけれども、順番にお答えいただければと思います。よろしくお願いします。

【事務局】 それでは、お答えさせていただきます。

 最初は、山極委員からの被害額に関するご質問ですが、青森県が平成24年3月に作成した「第3次特定鳥獣保護管理計画」(下北半島のニホンザル)という資料を根拠としていまして、そこに平成23年以降の被害額が掲載されていないという状況です。調べれば把握することができるかと思いますが、今は申し訳ありませんが、ここでお示しすることはできません。

【山極委員】 1点確認なんですけど、これは下のほうにも平成24年3月、第3次鳥獣保護管理計画と書いてあるけど、これは2010年(平成22年)の間違いだね。平成24年だったら最近だけど。ここを確かめたかった。

 データとしては、平成22年のしか出ていないから、この報告書は平成22年3月なんですねという。どっちが正しいのか。2010年が正しいのか、平成22年か。

【事務局】 この報告書自体は、平成24年3月です。

【山極委員】 24年3月。

【事務局】 その中身は平成22年までの状況が取りまとめられています。

【山極委員】 そうすると、この……場合は2012年ですね。

 パブリックコメントにもありましたから、これは非常に重要な問題だと思うんですが、「現在」というのが今から大分前というのはいただけないなと思って。

 だから、ほかでは平成25年までのデータも出ていますから、22年で止めてしまうというのはお粗末かなという気がしたものですから、そういうことを申し上げました。

【事務局】 パワーポイントに書かれている記載は「2010年(平成22年)」が正しくて、22年に56群・1,923頭というような状況になっています。

 これがさらに増えている状況だというふうに聞いています。

【石井委員長】 ページ番号20の資料の一番下に書いてある※のところですね。

【事務局】 そうです。はい。

【石井委員長】 2010年(平成24年)ではなく・・。

【事務局】 ではなく、「22年」です。

【石井委員長】 「平成22年」の誤りということですね。

【事務局】 はい。

【山極委員】 ページ番号21の資料、ここに地図がありますよね。その下のところも、「平成24年3月」とあるけれども、これは間違いではない。報告書に平成24年3月と出ていると。

【事務局】 そうです。

【石井委員長】 では、山極委員、ここのところはよろしいですか。

 データが古い。ここはどうしたらいいですか。現状は、今はわからないと、この場では。

【事務局】 数字に関しては、お答えするのができない状況です。

【山極委員】 多分、これ以上、頭数は増えていると思いますし、分布域も被害額も拡大していると思うんだけれども、そういうデータを少し足して根拠にしていただいたほうがいいのかなと思いましたので、改善をお願いしたいということです。もしデータがあるんでしたら。

【事務局】 わかりました。

 次に、ニホンザルの捕獲の実績なんですけれども、これも平成22年までの話で恐縮ですが、例えば平成22年での捕獲頭数は93頭。

 ちなみに、たった今鳥獣保護業務室から参りました情報で、平成23年での捕獲頭数は41頭であることが分かりました。

 次に、涸沼の件でございます。今回は周辺水田も含めて指定はされておりますが、生物多様性に配慮した農法などが行われているか、今、現時点で情報を持っていない状況です。

 むしろ、今回、ラムサールの条約に登録されることによって、そういったワイズユースというか、鳥類の保護や生物多様性に配慮した利用というのが進められるというきっかけになると思います。そして今後、これをきっかけに、そういった農法も広まっていくということは期待されますし、我々としても、そのように働きかけをしていく必要があると考えております。

 もう一つ、国指定鳥獣保護区になると、県指定の鳥獣保護区の管理員というのはどのようになるのかということです。これに関しては、引き続き、限られた予算の範囲ではありますが、国指定の鳥獣保護区の管理員に移行することが基本であると思います。そのほか、環境省で雇用している、非常勤の国家公務員であるアクティブレンジャー―自然保護官補佐―も対応できるようになるのかなと考えております。

 国指定鳥獣保護区の管理員全般についてですが、これは非常勤の国家公務員という形で、出勤した日に関して日当をお支払いするというような形の雇用形態をとっております。多くは地元で鳥類の保護とかに携わっている方何名かお願いしているということでございます。

 主に巡視とか管理、あと鳥獣保護区で確認された鳥獣類のモニタリングというところを一番の大きな業務としております。毎月、業務の報告書ということで、巡視のときに確認された鳥獣がどこにいて、幾ついたのかというところを報告いただくのが大きな仕事です。

 次に、北アルプスの・・・。

【山極委員】 すみません。そのときに、今まで雇われていた県の3名の職員のやっている役割というのは、国に移管されるわけ。つまり彼らがやっている仕事はもう国がやるので、彼らはやらなくてもいいという話になるんですか。県はどういうことをこれからやっていくんですか。

【事務局】 それはこれからの調整や、予算などいろんな関係があるのですけれども、県の鳥獣保護区の管理員だった方を、そのまま引き続き国のほうの鳥獣保護の管理員として雇い続けるということが、対応の一つとして考えられます。

 すみません。風力発電の話をしてしまいました。

 下北西部鳥獣保護区です。

 この鳥獣保護区のすぐ近くには風力発電施設はないのですが、その周辺大間町の先端部分に確かに風力発電施設は存在しています。今、下北半島では風力発電施設が結構多くできているところです。

 平成25年度風力発電施設に係る渡り鳥・海ワシ類情報整備委託業務報告書のことについてですが、これは、我々野生生物課で発注した業務でして、風力発電の推進というよりも、むしろ自然環境に配慮した形の風力発電施設を整備することを目的として、そのためには、まず基礎データとして渡り鳥・海ワシの情報を、特に東北地方などで整備する必要があったため実施した調査の成果の一部ということでございます。

 次に、北アルプスのニホンジカの問題ですけれども、確かに今、特に乗鞍岳のほうではシカが高山帯や亜高山帯で目撃されているというような状況があります。これはご説明でも触れさせていただきましたが、「中部山岳国立公園ニホンジカ対策方針」というものを立てて、それに沿って対策を実施しているところです。

 この対策方針の策定主体は「中部山岳国立公園野生鳥獣対策連絡協議会」ということで、環境省と林野庁、それと関係県と地元の市町村からなるものです。

 この中で、北アルプスに関して、シカなどの鳥獣の侵入のリスク、侵入度合い、危険度等の観点から、状況をレベル1からレベル4まで設定をしています。例えば稜線付近で、目撃頻度が3カ月以上で1回程度確認されるような状況だったらレベル1とか、高標高地域で1日1回程度目撃されるようだったらレベル4とか、そういったレベルを定めて、それに応じた対応をすることとしています。

 現状としては、確かに乗鞍のほうでシカが目撃されていますが、レベルは1としています。レベル1の段階では、環境省長野自然環境事務所のほうで、シカなどの侵入・移動経路の把握、モニタリングを実施する、関係県、市町村に関しては、低山帯での捕獲を強化する、というような方針で対応を進めています。

 次に、鳥獣に関する哺乳類の、鳥獣類のリストや生息状況のモニタリングについてでございます。

 こちらに関しては、国指定鳥獣保護区の管理員によるモニタリングに基づいて生息を確認されたものを掲載しているというような状況でございます。

 これに関しては、当然、鳥獣保護区の中に実際生息しているものが適切に反映されなければならないと思っておりますので、引き続き、抜けがないかどうか常に精査して、更新等のタイミングで、もし不備があるのであればそこはしっかりと改めていかないといけないと考えております。

 鳥獣保護区に関して、積極的な管理はできないかという点ですが、今回のご説明は指定に関する説明でしたので、管理の部分は詳しく触れることができなかったと思うんですけれども、管理については国指定鳥獣保護区の管理員が管理するだけではなく、予算として、国指定鳥獣保護区管理強化費という予算を持っております。それを全国に配分をすることにより、例えばネズミが鳥獣に被害を与えることの対策、積極的に生息地を改善していく対策など、必要性が高いところに関しては事業を実施しているという状況でございます。

 この管理強化費については、正直申しまして潤沢に予算があるわけではなく、全国約80ある鳥獣保護区の中で、全ての場所において積極的な手を加えるような管理というのが難しい状況であり、場所を選びながら予算を使っているところですけれども、こういった管理予算の充実というのも、今後の課題としてしっかりと考えていきたいと思っております。

 鳥獣保護区の指定期間の10年、20年の違いですが、これは地元との話し合いの中で決まっていくというところが実情です。傾向としましては、指定にすぐに賛成してくれるようなところ、特に利害関係人から問題提起があまりされないようなところに関しては存続期間の最大である20年とする例が多いです。

 ただ、農林業の被害があるような鳥獣保護区に関しては、更新を10年ごとにして、その時々の状況に応じて意見を言う機会を増やしたいというような考えで、10年にしてほしいという要望が多いというふうに考えております。

【石井委員長】 大体、これで一通り答えていただいたと思いますけれども、委員の先生方、いかがでしょう。

 山極委員のことに関わって気づいたんですけれど、資料1-3-1というのがありますよね、計画書のほうですけれども。この2枚目の裏のところに被害に関する表が出ていまして、20年、21年、22年となっています。

 この数字とパワーポイントの数字が違うんですけれど、多分、計画書のほうは、大間町と佐井村の二つで、パワーポイントのほうは、これにむつ市が加わっているから数字が違うという理解でいいんですかね。パワーポイントのページ番号21の資料と、それから資料1-3-1の4ページ目に記載のある、被害額及び被害面積の違いについてです。

【事務局】 そのとおりでございます。

【石井委員長】 それで、いいんですね。

【事務局】 はい。

【石井委員長】 山極委員のご注文は、計画書のほうについてが、パワーポイントは説明のためだけだと思うんですけれど、例えばこの20年、21年、22年の資料に関して、もうちょっと先まで書けるんだったら、書いていただきたいというご希望ということで、いいですかね。

【事務局】 調べて、データがあれば修正させていただきます。

【石井委員長】 ほかの委員、何かございますか。

 事務局から、補足等ございますか。よろしいでしょうか。

(なし)

【石井委員長】 そうしましたら、9件一気なんですけれども、他にご意見等がなければ、この議題についてお諮りしたいと思います。

 9件の再指定、それから新規指定、これにつきまして、事務局案のとおり、適当と認めてよろしいでしょうか。

(異議なし)

【石井委員長】 どうもありがとうございます。それでは、ご賛同いただけましたので、適当と認めることとしたいと思います。

 この諮問事項につきましては、事務局において、部会長にご説明していただいて、その後、中央環境審議会会長にご報告するということにさせていただきたいと思います。

 この件に関しましては、報告の(3)と関連がありまして、国指定鳥獣保護区の保護に関する指定の変更についてという議題があります。これについても、事務局からあわせてご報告いただければと思います。よろしくお願いします。

【事務局】 簡単に、ユルリ・モユルリ鳥獣保護区の保護の指針に関する変更についてご説明をさせていただきます。

 鳥獣保護区の中に、保全事業という制度がございまして、法律の第28条の2に基づいて、鳥獣保護区における鳥獣の生息環境が悪化した場合に、その生息環境を改善する必要があると認められるときに保全事業というのを実施するということになっております。

 これに関しては、鳥獣の繁殖施設とか採餌施設などを設置するなど、鳥獣の生息環境を改善することを行います。

 これを実施するに当たって、鳥獣保護区ごとに定めている保護の指針というのを改定する必要があると通知で定められております。これに基づいて保護の指針を改定し、その内容を官報告示にするとともに、事後に中央環境審議会に報告するということとされております。

 今回のご報告は、平成26年3月31日の官報において、ユルリ・モユルリ鳥獣保護区の保全事業を実施するための保護の指針の変更を行ったことについてです。なお、現在、具体的な事業を実施中でございます。

 資料3の最後のページですけれども、北海道の根室半島の沖合にあるユルリ・モユルリの鳥獣保護区は、国内で唯一残されたエトピリカの繁殖地でして、最近は、ドブネズミの侵入によって、植生の破壊とか営巣斜面の崩落というような、生息環境の悪化が深刻化しているところでございます。

 そこで、この場所、今現在はネズミが両島合わせて約3万頭生息し、ネズミが地表面を荒らすことによって、土砂流出など島嶼生態系への影響が出ています。ネズミを捕獲してみると、鳥の羽毛が見つかって、なかなか繁殖が難しいような状況で、エトピリカ自体も、現在では10つがい程度まで減少しています。

 そこで今回、保護の指針を改定して、保全事業を適用できることとしましたので、ユルリ・モユルリ両島において、殺鼠剤によるドブネズミの駆除を実施したり、駆除効果の検証(モニタリング)を行います。

 また、法令上は繁殖施設という位置づけですが、デコイなどを設置して、繁殖しやすいような環境をつくることによって、希少海鳥の生息環境を図るということで、今、取組を進めているところでございます。

 以上でございます。

【石井委員長】 ありがとうございました。

 それでは、ただいまのご報告ですけれども、何かご意見等ありましたらお願いいたします。いかがでしょうか。

(なし)

【石井委員長】 よろしいでしょうか。それでは、このご報告を受けたということにさせていただきたいと思います。

 それでは、審議事項の(2)番に戻らせていただきます。国内希少野生動植物種の指定解除についてということで、オオタカの案件でございます。

 環境省では、昨年からオオタカの国内希少種の指定解除について検討を進めているところです。この間に行われたパブリックコメント、それからシンポジウムも幾つかあったようでございますけれども、その中で課題とされた事項が幾つかあるようです。これについて、これからご説明いただく対応方針(案)をもって、指定解除の方針で作業を進めたいということでございますけれども、この案件について、ご説明をまずお願いしたいと思います。

【事務局】 こんばんは。希少種保全推進室の徳田でございます。

 それでは、座って、オオタカの指定解除の件についてご説明をしたいと思います。

 お手元に資料2-1がございます。それをご説明をさせていただきたいと思います。

 まず、オオタカの国内希少野生動植物種からの解除ということで、検討経過を改めてご説明したいと思います。

 オオタカは、種の保存法による国内希少野生動植物種に現在指定をされています。

 一方、環境省レッドリストを5年に1回程度、ずっと報告というか、発行していますが、その中で、平成18年と直近の24年の2回連続で、準絶滅危惧(NT)に選定されたという経緯があります。

 それで、準絶滅危惧(NT)につきましては、同じ資料2-1の別紙4を見ていただくとおわかりになると思いますが、レッドリストの中でカテゴリーを定めておりまして、絶滅したもの、あるいは野生絶滅したもの、その下が絶滅のおそれのある種、これは一般的に絶滅危惧種というふうにしておりますが、その中には、例えばCR+ENの中にCRとEN(ⅠA類、ⅠB類)というのがあって、それよりランクの低いものでVUというものがあって、これらが絶滅危惧種になっています。

 オオタカは、それよりもう一つランクの低いNTに、平成18年、24年のレッドリストで選定をされています。

 昨年の5月の野生生物小委員会で、そういう現状を受けて、国内希少野生動植物種から解除することについて検討を始めてよろしいかということについて了解が得られたということで、いろいろなことを今まで行ってきました。

 それで、まず国内希少野生動植物種というものはどういうものかというものを、別紙3を見ていただきますと、国内希少野生動植物種に選定をするものについては、絶滅のおそれのある野生動植物種であって、政令で定めるものということですので、先ほどご説明を申し上げた「絶滅のおそれのある種」という中に入っていなければいけないということがございます。

 「絶滅のおそれとは」というのは、そこに書いてありますように、①番から⑤番までの事情を満たすものを絶滅のおそれと言うということです。

 それから、もう一つ、平成4年の総理府告示の希少野生動植物種保全基本方針というものがあります。その中で、希少野生動植物種の選定に関する基本的な事項というところで、国内希少野生動植物種について記述がございます。

 その中に、1番として国内希少野生動植物種については、その本邦における生息・生育状況が、人為の影響により存続に支障を来す事情が生じていると判断される種ということで、以下のア、イ、ウ、エに該当するものというふうな記述もございます。

 それから、次のページにもう一つ、レッドリストでNTというのは、個体数の推移、生息地などの面積、生息条件、個体群構造、捕獲・採取圧の状況により評価をしたものです。

 今、オオタカは、その評価で2回、通算10年、準絶滅危惧にランクダウンをしているわけです。そういう種については、解除の検討を始めなければいけないということになります。今年の4月に出しました絶滅のおそれのある野生生物の保全戦略においても、2回続けて準絶滅危惧に選定された場合は、希少野生動植物種保存基本方針という規定を踏まえて、解除による周辺への影響も含めた、指定解除についての検討を開始すると記載をしているところでございますので、そういうもろもろの要件に該当するということで、この審議会でも検討を始めてもよいということで、検討を始めたわけです。

 それで、2-1の1枚目の資料でございますが、そういうことを始めた後の、取組について順に書いております。

 先ほど申しましたように、25年5月のこの小委員会で検討を開始することを了承していただいて、25年6月3日から7月2日まで、指定解除の検討についてのパブリックコメントを実施しました。これにつきましては、ホームページ等々でも紹介しています。

 そこで、浮かび上がってきた問題について、野生生物小委でも報告しながら、25年10月23日、それから26年3月9日にはシンポジウムへの参加等、26年7月にはアンケート、それから26年10月4日にはシンポジウムを開催しました。

 シンポジウムの概要につきましては、お手元の資料2-2のほうに、簡単ではありますが、まとめております。

 まず、25年10月23日のシンポジウムでございますが、これは、主催は日本自然保護協会と日本造園学会というところで、環境省は後援ということで、「オオタカ問題シンポジウム」ということでシンポジウムを開催していただきました。

 オオタカについては、指定されていることによって、保全技術の向上等に今までいろいろなことで寄与をしてきたということで、保全をされてきた経緯があって、解除後のフォローアップとか配慮の必要性などの意見が出されました。

 それから、26年3月9日の「東京オオタカシンポジウム」ですが、これは東京だけではなくて、首都圏のオオタカについての生息状況の報告、あるいはいろいろなご意見をいただく場として、都市鳥研究会、日本野鳥の会東京、それから、後援として日本野鳥の会ということで開催をしていただきまして、ここにも参加をさせていただいています。

 これについては、国内希少種に指定されていることによって、生態系も含めて保護対策が進んできたと。生息地の開発に関わる情報とか、カメラマンによる対策、開発事業者への情報提供の重要性についての意見が出されました。

 それから、直近の10月4日のシンポジウム、これは立教大学で環境省と立教大学の共催、日本野鳥の会、日本オオタカネットワークの主催ということで開催をしました。

 参加者は235人という多くの方に参加をしていただいたところでございます。参加者の属性は保護の活動をされている方が34%ぐらい、それから、いろいろ事業に関わるコンサルタントの仕事をされている方が25%、あとは研究者、もろもろというような割合でした。

 里山を象徴する種であるので、里山環境を保全していくためにオオタカの指定を解除すべきでないということを強く訴える方が結構いらっしゃったということで、主な意見としては、大阪府では、そんな増えていないんじゃないかとか、全国調査をしなければいけないので推定値を出さなければいけないんですが、推定値をレッドリストの評価に使うのはよろしくないんじゃないかというようなことなど、ここに書いてありますように、オオタカは右肩上がりに増えているというふうにおっしゃっている方もいらっしゃいますし、密猟や違法飼育なども相変わらずそれなりにはあるというようなことが報告されました。

 生息環境(里地里山)の保全については、アセスでは、法に基づく指定種なので調査をする対象とされてきた、それから解除後も調査されるのかは疑問だとか、アセス調査対象と保全対象は違う、法指定種以外では、保全は無視されるとか、アセスとオオタカというものが、かなり皆さんの認識の中で問題視されているというようなことが、いろいろ意見として出てきたところでございます。

 それで、解除に向けた方針ということで、環境省は、こういうことをいろいろやって、問題を明らかにしようと思っていろいろな検討をしてきたわけですが、2-1の2枚目を見ていただきます。

 オオタカを指定解除した場合に、どういう問題があるかということで、その次の別紙1を見ていただいたほうがわかりやすいかもしれません。

 横長のポンチ絵がございますが、現状では、種の保存法で捕獲規制、それから流通規制、それから輸出入の規制というものが法律の中で規制がされています。

 それが解除をされると、このまま担保できるのかということが問題になっていますので、まず、捕獲等の禁止については、従来どおり鳥獣法の中で捕獲をする場合は許可が必要になりますので、これは種の保存法から外れても、そのまま法的には担保されます。

 それから、流通規制というものについては、鳥獣保護法の第22条の中に、販売禁止鳥獣というものを定めて、販売できないということをできるという規制がありますので、それに現在ヤマドリだけが指定をされていますが、オオタカを追加してということで検討をするということを考えています。

 例えば野外で違法に捕獲したのに、外国から来たオオタカとすりかえて、これは外国から来たとされるようなことについては、鳥獣保護法に特定輸入鳥獣制度というものを平成18年に創設をしましたので、その中にオオタカをさらに加えて、足環をつけて管理をするという制度に追加をして対応することを検討しています。

 種の保存法の国内希少種という意味では、鳥獣保護法の今言った3点で、基本的には同じように法の規制で担保できるということで、そういう措置を今考えているところでございます。

 その下のオオタカを象徴とする環境の保全ということで、委員の方には、今、お手元に「猛禽類の保護の進め方」(改訂版)というものをお配りしています。これは、平成24年に改訂をして出しているもので、先ほどご説明をさせていただきましたように、平成24年には、既にオオタカはレッドリストでNTになっています。そういうことも加味した上で、「猛禽類保護の進め方」の改訂版をつくっております。

 中身的には細かいことがいろいろ書いてございますので、26ページを見ていただきますと、基本的には、北海道から九州まで、全国的に生息をしているということがいろいろ記載されておりますし、31ページに国内の分布概要及び生息動向というところで、例えば(3)の生息動向の国内の分布概要及び生息動向の段落の5行目に、実際の生息数は、これよりも多いことになるという記載とともに例えば1,136つがいという数字があったり、同じ段落の最後の方には1,909つがいよりもかなり多くのオオタカが日本に生息しているというふうに考えられることで、そういうようなデータも含めて、今現在、NTということになっています。希少性という観点ではなく、オオタカを象徴とする環境の保全という意味では、解除後の対応としては、猛禽類保護の進め方と考え方は、環境影響評価などにおける生態系の上位という位置づけに今後も変化がないということで、改めて、この「猛禽類の保護の進め方」を都道府県に周知したいというふうに考えています。

 それから、新たな取組としては、定期的なモニタリングの実施によって基本的にはいろいろなことが今後もモニタリングをされていくわけですし、現状から考えても、解除して、こういうふうな対応を進めていく中で、特に大きな変化が起こるというふうには考えられないと考えているわけですが、万が一、個体数が減少して再び絶滅危惧種として評価される場合には、再指定するということを、環境省の方針として進めていくことを考えています。

 資料2-1の最後、今後のスケジュールなんですけど、昨年、パブリックコメントをやったわけですが、今ご説明したようなことをもとに、さらにこういう対応を環境省でしたいということを丁寧に説明した上で、もう一度、パブリックコメントをするということについて、この小委員会でいろいろご意見をいただきたいと考えています。時期については、まだ決めておりません。特に、今、説明した内容について、いろいろご意見をいただいた上で、さらにこういう対応はこうしたほうがいいんじゃないか、こういう対応は抜けているんじゃないかというようなご意見を伺った上で、きっちり国民の皆さんに、環境省の対応として、こういう対応をするということを前提にパブリックコメントをしたいということなので、これについてご意見をいただけないかということでございます。

 以上でございます。

【石井委員長】 ありがとうございました。

 今日は軽食をいただいていますので、どうぞ、委員の先生方――傍聴の方と事務局には申し訳ないですけど――食べていただければと思います。

 そうしましたら、オオタカの国内希少野生動植物の解除ということで、資料2-1を中心にご説明いただきました。

 ご審議いただきたいところは、特に資料2-1の1枚目の裏にあるところです。先ほどポンチ絵のほうで説明していただきましたけれども、指定解除に向けた方針(案)というところ、それから、もう一つは、その下にある3.今後のスケジュールというところでして、今後、時期は未定ですけれども、指定解除に向けた、この今2に書いてある方針についてのパブリックコメントをかけるというやり方です。

 この辺りをご審議いただければと思っております。

 それでは、ご意見、ご質問あったら、お願いいたします。

 では、鷲谷委員。

【鷲谷委員】 もう既にレッドリストでランクが下がってしまっているので、制度上、選択肢というのが狭められていて、解除するしかない状況になっているわけですが、恐らくレッドリストのランクを下げるときに、もっとしっかり科学的なことも含めて議論すべきだったのではないか。

 ほかの種でもランクが下がって何らかの影響が及ぶということは、きっと今まで起こっていると思うんですけれども、議論が十分でなかったのじゃないかと思うんです。

 それで、どうもこれを見せていただくと、生息環境モデルって、ニッチモデリングで推定しているようなんですけれども、過大評価になりがちだと思います。というのは、適した環境があったら、必ずその種がいるということはないんです。もちろん、適した生息環境が制限になっていれば、それだけ少なくなるんですが、生息環境としては広くまだ残されていたとしても、そのほかの要因で個体数が少ないということは十分考えられるので、こういう、皆さんが関心を持っている種の場合には、科学的にも妥当なやり方で生息数を把握なり推定して、レッドリストのランクを決めたほうがいいのではないかと思います。

 全ての種についてできればいいですけれども、そこまできっと余裕はないと思うんですが、ランクが下がったら、こうせざるを得ないという、今は議論の余地のないところにきっと私たちはいると思いますので、この生息環境モデルで推計するというやり方が妥当ではないんじゃないかというふうに感じました。

 以上です。

【石井委員長】 これは重要なポイントかもわからないんですけれども、事務局側としては、これに関していかがでしょうか。

【事務局】 レッドリストの分科会がありまして、環境省で国内の専門の方を数名選んで、具体的には生息数なり、生息状況の評価ということにきっちり関わっていただいています。

 そうではないと、国としてレッドリストを出す意味が、いろいろなご意見は当然あるんだと思いますけど、今、その中で推定できる一番的確な情報をそれなりに集めて、座長も含めて、それなりの方を選定した上で結論を出していただいておりますので。

 今、鷲谷委員が言われたこと、それはそうだと思いますが、レッドリストの分科会の中できっちり議論していただいて、細かいデータも入れ込んだ中で評価をされています。

 一つの方法について、その評価では足りないところがあるんじゃないかと、過大評価になるんじゃないかと、こういうご意見は、多分、いろいろな方法を使うことによって出てくるとは思うんですけど、そういうことについては、しっかりこちらもこれからご意見はいただいた上で進めていきたいと思います。

【鷲谷委員】 推定された値が存続可能な個体群というものになっているかどうかですけれども、空間的な構造などもあるので、関西と関東ではというご意見もあったと思うんですが、何個体という数字から、直接的に個体群が存続可能かどうか結論が導かれる――専門家の方が大丈夫とお墨つきをくださったという、エキスパートの意見を重視して決められたということなんですね、これですと。そういう存続可能性とかを分析したり、その方たちがされたということになるんでしょうか。

【事務局】 もともとオオタカ自体は、関東、あるいは北海道に多くて、西はもともと少ない。それでも、西は少しずつ繁殖が増えてきたりしているので、全体的に、要するに絶滅のおそれのあるという状態では現在ないということは、エキスパートの方の、いろいろな繁殖率とか生息地の状況からして、そういう状況だという判断を、2回連続そういう判断をいただいているということです。

【鷲谷委員】 シンポジウムで違うご意見が出たりしているわけですよね。ということは、専門家の中でも若干意見が分かれているところがあるのか、そうではなくて、異論というのは本当に少数の意見であり、専門家の方は、大体合意できているというふうに判断できるのかということを伺えればと思います。

【事務局】 環境省としては、NTというランクは妥当だというふうに考えていますし、例えば地域、地域で、例えば西日本は、先ほども言いましたように、もともと少ないですし、オオタカは、ほかの猛禽類と比べて、産む数も年によってかなり変動をしますし、そういうことも含めまして、全国のレベルで今絶滅のおそれがあるという種には選定できないということを分科会で判断していただいたと考えています。

 現在、レッドデータブックは全都道府県で出しています。例えばAという都道府県では、オオタカが絶滅危惧種になっているところも当然ございます。それは、それできっちりその都道府県で判断していただいて、希少種条例とかをつくっていらっしゃる県であれば、そこにいれていただくということをしていただければとは考えているんですが、環境省としては、全国レベルとしてNTというランクについては妥当だというふうに判断しています。

【中島野生生物課長】 補足です。

 ここ1年間で行われましたオオタカ関係のシンポジウムに3回出席して、いろんな意見を承ってきたところなんですけれども、専門家の方が判断されたデータの一部に、先ほどご指摘があったように、生息環境から推計で、過大評価になりやすいやり方でやっているものがあるのだから、それで判断するんだったら、まずいんじゃないかというようなご意見があったり、あるいは、西日本のほうでは、それほど、言うほど増えていないというようなご意見があったりしていますが、そういったご意見を述べられている方々は、大体の場合、地域で保護活動をされている方、特にオオタカを普段からずっと見ておられる方とか、そういう方も中にたくさんいらっしゃって、そういった方のご意見が多かったと思いますけれども、全国的に、オオタカに関するデータを全てご存じで、かつ判断してというような形ではなくて、一部の地域ではこうだと、全体的には本当に増えているのかどうか疑問だとかというような意見はいろいろありましたけれども、全てのデータをわかった上で判断されている専門家からは、基本的には絶滅のおそれがないということで一致しているのだろうと思っています。

【山極委員】 よろしいですか。

【石井委員長】 これに関してですか。では、お願いします。

【山極委員】 反対ではないんですけど、この前の話で、例えば絶滅のおそれがある種を保全するためにカルテをつくるという話がありましたよね。これは、だからモデルケースになると思うんです。一旦、絶滅のおそれがあると判断したものが、それを解除する。

 つまり、病態ということで改善策をしてきて、その経過を見守ってきたときに、こういう点が、もはや絶滅のおそれはないだろうと判断したので、そのカルテを修正する、要するに健康状態に戻ったというふうに判断するわけです。

 ですから、その基準というのを明確に示さないといけない。次回、パブリックコメントをおやりになるならば、これに納得していただく方を増やさなければいけないわけです。

 そのときに、なぜ解除したのか、つまりNTのものは日本の法律では絶滅のおそれがあるというところに入れられませんよというだけでは、あまりにも根拠がなくて、その絶滅のおそれがあると判断した理由がこういう点でなくなりましたということを、根拠を示さなきゃいけないと思うんですよ。それは次の対策に、つまりカルテをつくって、これからやっていこうという環境省の姿勢に関わってくる問題ですから、そこはお願いですけれども、数値基準だとか、シミュレーションというものを駆使して、きちんと納得できるようなことを説明していただきたいと思います。無理な注文かもしれないけど。

【石井委員長】 ありがとうございます。これに関していかがですか。

 どうぞ、お願いします。

【石井(信)委員】 オオタカの指定解除の件ですけど、私は、基本的に指定解除の方向に行くことに賛成なんですけど、それは専門家が、これは明らかにVUには該当しないと。いろんな推定の幅はあると思いますが――データというか、事実に基づいて判断した。

 それで、種の保存法の指定種というのはこういうものを指定するんだという、理屈というか、さっき説明いただいたいろいろな条件に従っていくということのほうが、きちっと法律を運用しているんだという信頼度はむしろ高まるというように考えています。

 それで、種の保存法の指定種というのは、鳥の場合だと一羽一羽が大事で、1羽見つかったら、これを何とかいなくならないようにあらゆる手を打つというような、そういうレベルの種について指定するんだと思います。

 現状でアセスがいろいろと行われていて、このアセスがきちっと行われなくなるんじゃないかという懸念が示されていますけれども、幾つか見ていると、特定のつがいだけに注目していろんな調査をしている。個体群レベルでその地域で維持できるかどうかというような視点は、ないものがほとんどです。

 オオタカというのは、そういう一羽一羽でなくて、個体群の維持という観点から保全を考える、そういうレベルまでは来ている。それがNTという判断だと思います。

 実際にいろんな方が懸念しているのは、オオタカの指定が外れると、今まではオオタカがいるということでいろんな開発計画がとまったり、それから、いろんな手を打たれていたけれども、そういうことがこれからはなくなるんじゃないかというところだと思うんです。

 指定解除後のいろいろな対応というのが書いてありますけれども、今後、オオタカが環境に見つかった場合に、アセスでどういうことをやり、それから対策というのは今後どうなっていくんだろうかと、もう少し何かはっきりした方針を示すということが、指定を外すと開発がどんどん進んでしまう、歯止めにならないという懸念をある程度払拭することにつながるんじゃないかと思います。

 それで、オオタカが指定されていると、いろいろと開発とか、極端な場合はとめるということができるので指定しておいてほしいというのは、本末転倒の考え方だと私は思います。

 指定しておくと、言葉は悪いですけど便利だというようなことでいくと、事実に基づかないような指定の仕方というのがあると、むしろ、例えば開発側が適当なことをやってきた場合に、それをきちっと批判できなくなる。オオタカは絶滅のおそれが高くないのに指定種のままでいるというようなことをしているのだから、そっちだって同じじゃないかというような批判をされるというか、相手を批判する際の立場が弱くなると思うので、きちっとした事実に基づいて、種の保存法の指定種というのは指定していくのが必要じゃないかと思います。

 ただ、解除すると、じゃあ、これからアセスをどうやっていくんだ、保全はどうやっていくんだということをきちっと示していかなきゃいけないので、今までより大変なことになると思いますけれども、それは今のオオタカをめぐる、いろんなやりとりをレベルアップさせていくということにつながるし、種の保存法の指定種というのは、こういうものについて指定していくんだということが明確になると思いますので、私は、普及啓発という面でも指定解除という方向に検討していくのかというふうに思います。

 以上です。

【石井委員長】 ありがとうございました。

 では、小泉委員、お願いします。

【小泉委員】 一部、石井委員と重複するところがありますけれども、状況が随分違うんですけれども、シカという動物の管理に携わっている立場から意見を申し上げます。

 恐らく順応的管理ということの「順応的」という部分に、絶滅危惧種も含めて取り扱っていこうという、その1回目のケースになっていくんだと思います。

 3ページ目、横書きに書いてあるところを見ますと、恐らくまだまだ順応的という感覚がまだ定着していないために、今までオフだったスイッチがオンになって、オンになりっ放しだという、状況に応じてオンとオフを切りかえるんだというところに関して、もう少し説明が必要なのではないかというふうに思います。

 オン・オフの切り替えを責任を持って進めていくということを宣言しなければいけないと思いますし、それを社会に受け入れてもらわなければいけません。こうした考えを、法律と制度の中に、明確に示していく必要があるのではないかというふうに思います。

 全体的な傾向として判断すれば、今回の方針というのは妥当なものだというふうに思いますけれども、それを進めていくために、どのような点に責任を持って説明をしていくかというところが、もう少し考えられる必要があるのではないかというふうに考えます。

 以上です。

【石井委員長】 ありがとうございました。

 ほかにご意見、ございますか。

 クリスティーヌ委員。

【クリスティーヌ委員】 日本の例ではないのですが、アメリカでは、オオタカを絶滅危惧種に入れようとしていますが、まだ入っていません。

 ただ、私がとても感心しましたのは、絶滅危惧種として入れようとするときのリポートが、物すごく膨大なもので、その中に書かれているものが、日本の場合は、開発を何とかとめようとする中で、オオタカが出てくれることによって、その開発をとめる材料としてオオタカを利用している。

 だけれども、欧米の場合は、一つのバイオダイバーシティの中で、オオタカがいることによって、そこの自然環境がどのように存在しているかということのリサーチとかスタディがそこにすごくあるのです。

 百何ページの中でも、どういう森のキャノピーの状態の中で生存しているかとか、またはどういう木が多い森の中でと、生物多様性というのがあるんですけれども、そこの中に一番多く存在しているわけなんです。

 なので、そういう森を切ってしまうと、本当の意味での持続可能な環境が保たれていない。本当に自然環境というものをきちっと考えた上で、だからこの種をきちっと守っていきましょうというリポートが出されている中で、環境省も同じようなことをしていかないと、私たち一般社会の者に対しての説得力というのが、さっきも話がありましたけど十分ではないのではないかなと思うのです。

 環境問題ということをどうやって市民が守っていくかということになると、結局、そういう何か印籠になってくれるものが出てくれることによって、開発をとめることができる。

 本来ならば、国がそういうもののバランスとか、そういう環境の持続可能な形をきちっと守っていくための一つのストーリーといいますか、一つのポリシーを国が持っていてくれなくてはならないところに、今までそういう「あっ、ちょうどいい具合に絶滅危惧種のこういう動物が出てきてくれたから、これを使って私たちの地域を守りましょう」と。

 だけど、本来ならば、そういうものが出てこなくても、地域を守るべき一つのポリシーというものがなくてはならない状況の中で、だから、オオタカを取り外すということに関しては、もちろん科学的な観点からすると、そういう専門家の方々が、これ以上、これだけ多いから絶滅のおそれはないですよということをきちっと証明してくださることがすごく重要だと思うんですけれども、それを取ってしまったときに、だから、じゃあ好きにやってもいいのかという話になってしまうので、私は、もう少し環境省としての立場をきちっと保つべきではないかなと思いますので、欧米のレポートなどが一つの参考になるのならば、そういうものを見て、どれだけの情報量がそこにあるかと、読んでいると、一般的の方々が読んでいてもおもしろいことがたくさん書いてありますし、むしろ、どういう森に生息するか、そういうところのバイオダイバーシティがどうなっているのか、だからこそ、これが私たちの国にとって重要な種ですということがきちっと伝えられるような形での説得力があったほうがいいと思います。単なるパブリックヒアリングをするだけでは、私たちの地域は欲しいから残してください、私たちにとってはこれが大事ですということばっかりになってしまうと、本当の意味での環境問題をきちっとアドレスしていないような感じがすると思うので、そこのところをもう少し掘り下げてもらいたいなという感じがいたします。

【石井委員長】 ありがとうございます。

 ほかはいかがでしょうか。

 一つのポイントとして、レッド種のNTのランクダウンというのが適切かどうかというのがあるんですけど、当然、この委員会の立場としては、それを尊重して進むべきと思います。

 委員のほうからは、鷲谷委員も納得していただけたかなとは思うんですけど・・・。

【鷲谷委員】 私は、最初から、もう制度的に推進するべきだということなので。

【石井委員長】 そういうことですね。わかっているけれどもという……。

【鷲谷委員】 十分議論があったのか、リストのランクを変えたときに、それが心配だったので発言させていただいただけです。

【石井委員長】 わかりました。

 だから、この委員会の立場としては、二度にわたって、3次リスト、4次リストでNTということが続いたということに関して、レッドリストの分科会の立場は尊重しましょうと。これについては委員の皆さん、よろしいでしょうか。

 その上でですけれども、各委員が述べられているのは、そうなった場合に、環境省として保全策をしっかりやってほしい、できるのかということです。

 山極委員のほうからは、せっかく保全カルテのようなものを考えているので、それを利用したらどうかということがあったり、それから、小泉委員のほうからは、順応的管理というものの中にレッド種ということが入ってくることもあるのかなというようなご意見もあったかと思います。

 ということで、今までの意見としましては、とりあえず解除の方針というのは、この委員会としては認めましょうということです。しかし、それだけではだめですよということですが、これについて、事務局のほうでもう少しコメントをいただければと思います。

【安田希少種保全推進室長】 今回、この方針をお示ししたのも、こういうことについてしっかりと国民の方々に説明していくということを前提にご議論していただければということで考えています。

 カルテとか、あるいは順応的な管理ということについては、ご意見をいただきましたので、その辺もしっかり考えていきたいと思います。

 それから、もう一つ、里山等について、どういうふうに保全を図っていくのかということについては、現在のところは、ここにも書いていますけれども、生態系上位種としての位置づけは変わらないので、そういう観点から、しっかりとアセスなり、里山についていろいろ考えるときには、調査なり評価なりをしてくださいということをしっかり伝えていきたいというふうに考えています。

 生態系上位種としてどういうことなのかというようなことを、もう少ししっかり説明すべきだというご意見もあったと思いますので、そこはパブリックコメント等をやる場合に、その辺のところをもう少し明確にできるようにしていきたいと思います。

【石井委員長】 ということでございますけれども、いかがでしょう。

 この冊子ですね、猛禽類保護の進め方。私は、これは委員の皆さんには見ていただいたほうがいいのではないかということで配付していただいたんですけれども、この冊子に関しては、猛禽類ということで当然、イヌワシ、クマタカ、オオタカも含まれているわけです。この方針については、環境省はもう今後も変わらないという立場ですね。

 これで都道府県にもご説明しということで、今後もこの立場を貫いていく。何か担保が欲しいということだと思うんですが、その辺のところで、これが担保になるのかどうかということですが、どうでしょう。

【安田希少種保全推進室長】 猛禽類保護の進め方が一つの担保になると思っています。

 それから、もう一つは、環境影響評価などのときに、さっきも言いましたけれども、生態系の上位種であるということを明確にしていくということが再度必要なんじゃないかなというふうに考えています。

【石井委員長】 ということで、そろそろ時間も時間なんですけれども、ほかにご意見はございますでしょうか。

(なし)

【石井委員長】 そうしましたら、この議題についてお諮りしたいんですけれども、今般の議論では、特に資料2-1の1面の裏、2ページ目のところ、指定解除に向けて作業を進めてきたということ、その中で今後、パブリックコメントを、時期は未定ですけれども、1カ月程度かけたいということです。これについてお認めいただけますでしょうか。よろしいでしょうか。ご意見ないですね。

(異議なし)

【石井委員長】 それでは、この方向を認めるということにさせていただきたいと思います。ありがとうございました。

 それでは、議題はこれまでですが、その他という案件がございますので、委員の皆さん、全体を通して何かございますでしょうか。

【クリスティーヌ委員】 、一つ。

【石井委員長】 どうぞ、クリスティーヌ委員。

【クリスティーヌ委員】 質問があるんですけど、この中に大町と出てくるんですが、ついこの間、遠い親戚の方が畑にいましたらクマに襲われまして、もちろん、やられた本人もかわいそうだったんですけれども、クマも食べていけないような状況で里におりてきちゃっているような状況の中で、今後、どうしていくんですか。

 こういう野生動物がどんどん、サルもそうですし、シカもしかり、クマもこうしておりてきて、食べ物がないときにおりてくるわけですから、どういうふうな形でのバランスのとり方を、今後、この狭い日本と言っていいのかどうかわかりませんけど、森から里にこざるを得なくなっている動物を守っていくんでしょうか。

【中島野生生物課長】 動物の種によって事情が相当いろいろと違っていまして、クマの場合は、山に餌が十分にある年と、そうでない年と、これは植物の側の戦略によって年により相当変動するわけですけども、その変動の中で、ほとんど食べ物がないという年には、里におりてくるという傾向が、これは今までの状況でほぼ正しいと思うんですけれども、その場合は、通常、餌がたくさんあるような年はあるわけですから、毎年毎年、ずっと餌がないというわけじゃなくて、餌のない年は時々あるけど、そうでない年もずっとあるので、それほど心配することはなくて、餌がなくて里におりてくるときは捕獲して、もう一度山に戻すとか、あるいは、それ以外の方法で、人間とクマのあつれきを何とか減じさせるということをその年には一所懸命やるということで、何とかなるんじゃないかと。

 ただ、もっとクマの生息個体数が今よりもどんどん増えていくような状況が今後発生すれば、もう少し根本的な対策も考えなければいけないのかもしれませんけど、今はまだそこまでは行っていないかなという気がいたします。

 一方、シカとかイノシシについては、これはふんだんに餌がある状況で、どんどん個体数が増えていると。これはあまり場所とか年に関係なく、どんどん増えている状況ですので、今回、法改正をして、積極的な管理、減らすということを全国的にやっていかなければならないという位置づけをして、個体数管理をしていかなければいけないものと位置づけてやっていこうとしています。

 このように、種によってそれぞれ事情が違うものですから、それぞれの種の生態、あるいは置かれている状況によって、それぞれの考え方を都道府県に示していくというようなことを環境省でやっておりまして、そのための科学的な委員会なども開いて、ガイドラインをつくって示していくというようなことをやっていきたいと思っております。

【石井委員長】 福田委員、どうぞ。

【福田委員】 私も同じようなことですが、ニホンカモシカが庭先まで来るんです。どうも病気のようなんです。

 それで、どうしようかと思いましたが、博物館のほうからは追い払うようにと言われました。

 追い払うのはいいのですが、毛が抜けているので病気ではないかと思うのです。隣に保育園がありますので、簡単に追い払ったら何が起こるかわかりませんので、簡単に追い払うわけにはいかないと伝えました。そうしましたら、鳥獣保護の人が時々博物館に来るので、そのときに様子を見に来てくれることになり、実際来てくださいましたが、その時はニホンカモシカはいないんです。

 そういうときに、どういうふうにしたらいいのか。このごろ、本当にニホンカモシカをよくうちの山で見るんです。

 シカは確かに、このごろは撃ってもいいということはありますが、ニホンカモシカは、とにかく触ってはいけないというぐらいのものですよね。そうすると、病気のものとか、そういうのはどうするかということが、とても心配です。

【中島野生生物課長】 ニホンカモシカについては、これは特別天然記念物ということで、文化庁所管の法律で管理されているんですが、全てさわっちゃいけないとか、捕獲を一切してはいけないという状況ではなくて、決まったところ以外では、計画を立てれば捕獲をしてもいいというのが今の制度になっています。

 奥多摩の場合どういうふうになっていたか、私は存じ上げないんですけれども、捕獲しなければならない状況であれば、捕獲はできる制度には今一応はなっているということなので、その辺、具体的な例を、奥多摩町の・・・。

【福田委員】 青梅市です。

【中島野生生物課長】 青梅市ですか。青梅市の教育委員会に聞いてみないと、はっきりここで解決策を申し上げられないんですけれども。申し訳ありません。

【福田委員】 わかりました。

【石井委員長】 ほかはよろしいでしょうか。

 

 特になければ、事務局にお返ししたいと思うんですけど、何かございますでしょうか。

(なし)

【中島野生生物課長】 最後に、ご挨拶させていただきます。

 長時間にわたりまして、また、今日は非常に遅い時間帯に開催をすることになりまして、先生方には非常にご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げますとともに、熱心なご議論、大変ありがとうございました。

 今日は、鳥獣保護区の指定の件と、それからオオタカの件と、大きく二つございました。鳥獣保護区のほうにつきましては、毎回ご指摘いただくわけでございますけれども、国立公園等に比べて管理面がしっかりしていないところがあるということで、これは我々としても認識はしているところでございますが、保全事業のような形で、少しずつ課題に対して対応するようなことができるようになって参りました。しかし、そもそもそ鳥獣をしっかり管理していくための計画、あるいは事業をやっていくというような抜本的な対策というところまでは、正直申し上げて到達しておりませんので、この辺はこれからの課題だというふうに受け止めたいと思います。

 それから、オオタカにつきましては、我々、昨年から、我々自身も非常に悩みながら、これだけ非常に大きな社会的な影響のある問題をどういうふうに国民の皆さん方と一緒に考えていけるかということで、基本的な態度としては、あまり急がずに、いろんな課題について、一つ一つしっかり説明をしていきながらやっていきたいというふうに考えております。

 本日も、たくさんのご意見をいただきましたので、これを踏まえまして、少し考え方を練った上で、パブリックコメントに進んでいきたいなというふうに思っております。

 今後とも、よろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。

【石井委員長】 では、以上をもちまして、本日の野生生物小委員会を閉会したいと思います。

 本日は、遅い時間まで本当にお疲れさまでございました。