鳥獣保護管理のあり方検討小委員会(第3回)議事録

1.日時

平成25年6月28日(金)10:00~12:17

2.場所

経済産業省別館8階 850会議室

3.出席者

(小委員長) 石井 信夫
(委員) 尾崎 清明 小泉  透 染  英昭
坂田 宏志 羽山 伸一 福田 珠子
三浦 愼悟
(環境省) 伊藤自然環境局長
星野審議官
江口総務課長
中島野生生物課長
堀内鳥獣保護管理企画官

4.議事

【事務局】 おはようございます。予定の時刻になりましたので、中央環境審議会自然環境部会鳥獣保護管理のあり方検討小委員会を開催させていただきます。
本日の出席者でございますが、福田委員が、電車の関係で少し遅れておりますが、11名中8名の出席であり、中央環境審議会議事運営規則第8条第5項による定足数を満たしておりますので、本委員会は成立しております。よろしくお願いいたします。
配付資料を順に読み上げてまいります。不備がありましたらお申しつけください。資料1「鳥獣被害防止特措法に基づく取組状況」、資料2「銃刀法について」、資料3「『生物多様性国家戦略2012-2020』の関連部分について」、資料4「特定鳥獣保護管理計画の評価と事例について」、資料5-1、5-2「鳥獣保護管理のあり方検討小委員会現地調査報告」、5-1が知床、5-2が丹沢です。資料6「鳥獣保護管理のあり方検討小委員会において議論すべき項目について」、参考資料1「鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律」、参考資料2「鉄砲刀剣類所持等取締法(抜粋)」、参考資料3「「現地調査資料」、参考資料4「平成25年度第2回鳥獣保護管理のあり方検討小委員会における主な意見」となっております。不備がありましたらお申しつけください。
本日の小委員会の資料及び議事録は、後日環境省のホームページにおいて公表されますことを申し添えます。
本日は、小さい会場ですが、できるだけマイクをお使いいただきますようお願いいたします。それでは石井委員長、よろしくお願いいたします。

【石井委員長】 皆さん、おはようございます。ただいまから平成25年度第3回鳥獣保護管理のあり方検討小委員会を開催します。
本日の議題は、全体のテーマとしては講ずべき措置の検討ということです。まず第1回、第2回の委員会における委員の皆様からのご意見を踏まえて、農林水産省と警察庁からそれぞれ関係法令の説明をいただくことにしております。それから事務局から国家戦略、特定計画の説明、現地調査の報告などをいただいて、最後にこれまでの議論の整理をする、こういうことにしております。
早速議事に入りたいと思いますが、資料の準備の関係で議事次第の議事に6つありますけれども、4番目の「特定鳥獣保護管理計画の評価と事例について」から始めたいと思います。
まず、事務局のから資料4の説明をお願いしたいと思います。今日は個別の項目がいろいろありまして、議論というのは次回の委員会から詳しく行うということで、主に質疑応答というところで進めたいと思います。時間も今日は比較的短いですので、議事進行にご協力をよろしくお願いします。
それでは、まず議題の(4)特定鳥獣保護管理計画の評価と事例について説明をお願いします。

【事務局】 事務局の不手際で農林水産省ご説明の資料に不備がございましたので、急遽議題の順番を入れかえさせていただきました。大変申し訳ありません。
では、資料4の説明をさせていただきます。これまでの議論の中で、特定鳥獣保護管理計画の評価が必要であるということを宿題としていただきましたので、まずは概略ではございますけれども、取りまとめておりますので、ご説明をさせていただきます。
資料4の最初のページ、特定鳥獣保護管理計画の制度でございます。法の7条に規定をされておりまして、計画の狙いとしては地域個体群の長期にわたる安定的な維持ということで、策定主体は都道府県、ニホンジカやイノシシ等の地域的に著しく増加している種の地域個体群、またはクマ類等の地域的に著しく減少している種の地域個体群を対象として作成をするということとしております。
計画策定については三本柱を重視していくということで、これは法に基づく基本指針で環境省が示しているものですけれども、三本柱としまして個体数管理と生息環境管理、被害防除対策、これを必要に応じてバランスよく組み合わせて、総合的な対策をしていくということになっております。三本柱とは言っておりますけれども、種によってそれぞれ重みが違うというところは、この後、少しご説明をしたいと思います。
それから計画を策定した場合に可能な特例措置が設けられておりまして、ここは法律で定められております。いずれも狩猟に関する規制の緩和ができることになっているものでございます。
次のページです。この計画の策定状況ですけれども、現在、ニホンジカ、イノシシ、クマ類はツキノワグマのみ、ニホンザル、ニホンカモシカ、カワウという6種について策定されております。このうちのシカ、イノシシ、クマ、カワウは、狩猟鳥獣となっておりまして、主たる分布地域のカバー割合ということで、厳密ではないのですけれども、38都道府県。2枚めくっていただいたところにそれぞれの種についてどの県が策定しているかというオレンジ色のページの表がございますけれども、それを見ていただくと、分布があるところで特定計画を策定しているか、していないかがわかるように示しております。シカについてはほぼ100%、まれな分布ではなく生息がしっかり確認されているところについては100%の計画策定が行われています。イノシシについては37/41、90%に当たるところでカバーされています。クマ類についてはツキノワグマですけれども、21/31ということで68%、70%に近いところで策定が進んでおります。これを見ていただくと、やはりサル、カモシカ、カワウについては策定の割合が低くなっております。先ほどご説明したとおり、計画をつくったときの法的な特例が、狩猟に関するものになっておりますので、狩猟鳥獣について計画をつくるインセンティブが高いのだろうと思われます。ニホンザルについて見ていただくと、特に西日本での策定が進んでいないことがおわかりいただけるかと思います。
環境省では、24年度よりこれらの主たる種について、それぞれ専門家による保護管理検討会を設置し、現状や課題の評価などを実施しております。これは昨年度に引き続き、今後も定期的に、少なくとも1年に1回は開催していきたいと考えております。
その中身の一部を、ここでご紹介をさせていただきたいと思います。まずニホンジカですが、ニホンジカについては特定計画の三本柱のうち、特に個体数のコントロールが重要だされております。特に被害が生息密度に依存しているという傾向が強いということと、生態系の劣化をもたらすということもありまして、特に個体数コントロールが重要だとされております。そのためには、最近の傾向といたしましては、雌の捕獲をしっかりしていくということが求められております。表がすごく小さいですが右側の棒グラフを見ていただきますと、雌の捕獲割合は、だんだん増えてきているという状況にございます。
狩猟における捕獲頭数の規制緩和を、無制限にしているところもありますけれども、雄を制限して雌の捕獲を促すといったような規制緩和をしている県もございます。課題については、これだけ数をとってきているものの、個体数の低減が達成をされている状況にはないということでございます。それぞれの検討会で課題を議論していただいております。課題の欄については、特定計画の記載内容やヒアリングなどから整理をしているもので、この後の種についても同様でございます。個体数の低減が重要ということですけれども、捕獲目標数として、実際に被害低減のために必要な数ではなくて、捕獲可能な数が目標となっているという場合もあるというような評価がございました。それから、ほかの種についても言えることですけれども、モニタリングの縮小が見られているということが指摘されています。
イノシシについては、個体数の管理だけではなく、被害防除、具体的には耕作地周辺の生息環境を変えていく、進入路を遮断する、誘引する要因の除去をするといったようなこと、長期的には耕作地の配置についても考えていくことが重要とされております。
イノシシは、もともと狩猟資源としての経済価値が高いものだったこともあり、狩猟の割合が高かったのですが、このグラフを見ていただきますと、2000年代に入って急激に許可捕獲、つまり有害鳥獣捕獲が増えているという状況でございます。
イノシシはかなり捕獲が進んでいる、また地域ぐるみでの捕獲が進んでいるという最近の成果があるかと思います。集落単位でしっかり対策をとって成果を上げているところもだんだん出てきていると評価されています。課題としてはいろいろございましたけれども、特に鳥獣行政と農林水産行政が連携した被害対策をしていく必要があるということが挙げられております。
ツキノワグマについてですが、個体数が回復するまで狩猟禁止等の個体群の回復措置をとっていくのが原則となっております。また人身被害・農林業被害の減少・予防措置をとるというのが基本的なスタンスですが、一方で、近年、数年ごとに起きている大量出没やそれに伴う大量捕獲に対応できるような体制を整備するということと、また、最近特に本州では分布拡大が見られているということで、広域で連携した取組の重要性が指摘されております。
課題についても、今申し上げたようなところがそのまま課題として残っているということですけれども、モニタリングを含む保護管理に要する経費が、ほかの種に比べても大きいという傾向があることで、モニタリングの継続が難しい状況にあるだろうということ。また、最近は、シカ、イノシシの捕獲強化が行われておりますので、わなにかかるというケースも増えているということで、そこに対してしっかり準備をしていく必要があるだろうということでございます。
次に、ニホンザルについてです。ニホンザルについては、被害防除と個体群管理でしっかり対策をしていく必要があるということが基本的なスタンスで、これもイノシシと同様に、集落ぐるみでの取組が重要になってまいります。また、特にここでニホンザルの特徴としましては、シカやイノシシとは違って個体群管理をしていくときに、個体数や密度のコントロールではなくて、状況に応じて加害個体の捕獲や、群れの規模を管理していくということ、群れ数を管理する、群れごと間引いていくということもあり得ると思いますけれども、そういったことが重要になってくる。ただ数を減らすということではないというのが大きなポイントかと思います。
この右の小さなグラフですけれども、捕獲数を見ていただくと、やはり近年右肩上がりで年々増加をしております。ただ、増加をしているのですけれども、多くの地域で被害は減少していないというのが現在の状況となっております。先ほど申し上げましたけれども、特に西のほうで特定計画の策定が進んでいないということが大きな課題かと思います。特にニホンザルについては科学的・計画的な保護管理、重要となる種でございますので、計画の策定が求められる状況でございます。
最後の種ですけれども、カワウについてです。カワウについては最近、保護管理の手法についていろいろ知見が増え、対策が進んできている種かと思います。もともと個別の防除対策や有害捕獲の実施が主な対策だったわけですが、近年では簡便なねぐら除去の技術や、高効率の捕獲技術などが見出されていっているということで、そういった技術を取り入れた保護管理をしていくことが必要となっております。また、長距離を移動する種ということで、広域的な視点を持った保護管理が重要となってまいります。
そういったこともありまして、環境省では関東地区と中部近畿地区で都府県と連携をしまして、広域協議会・広域指針を作成して、体制を整備しております。カワウにつきましてもサルと同じように、サルよりももっと少ないのですけれども、取組を行っている件の数に比べて、計画を策定しているという県はあまり多くはないという状況でございます。特定計画ということであれば、2県にとどまっているということで、しっかり計画を立てて、広域協議会として連携をして、対策をとっていくことが重要かと思っております。カワウについては現在そのマニュアルを見直して、パブリックコメントにかけているところです。
続きまして、千葉のほうから、それぞれの種について先進事例を少しまとめておりますので、続けてご報告をさせていただきます。

【事務局】 鳥獣保護業務室の千葉と申します。特定鳥獣の対策を担当しております。よろしくお願いいたします。
私のほうからは、3種の個別の事例を紹介させていただきます。前回の小委員会のヒアリングでお呼びした都道府県や、先日現地調査に行かせていただいた場所も先進事例ということで取組が進んでいるところですけれども、今回取り上げた県の事例は、いずれも特定計画を策定して2期以上経過していて、計画を実施していく中で、課題整理をしっかりして評価を行って、次の計画へ反映させているというような、先進事例ということで取り上げました。さらに今回注目していただきたいのは、先ほど、山本のほうから各種の保護管理の現状と課題を説明させていただきましたけれども、それぞれの種種種の課題に対応できているか否かというような観点からも、この資料をまとめております。
特定計画を実行していく上では、順応的管理が重要となりますが、このPDCAサイクルの中で、今回の資料では、あえてCとAから説明を始めております。前期の計画による対策の実施の結果をどう分析評価したかというのがCであり、次期計画の策定でどのように見直しを行っているかがAになります。前期計画を踏まえて次の計画にどのように反映させているかというような観点で資料を取りまとめておりますので、併せてご確認いただければと思います。時間が限られていますので、急ぎ足になるかと思いますが、ご了承ください。
まず事例1ということで、兵庫県のシカ保護管理計画の説明をさせていただきます。まずCとAということで、兵庫県では第3期計画で、年間3万頭の目標を立てて実施をしておりました。課題のところですけれども、目標の捕獲頭数はほぼ達成している状況にありましたが、密度や被害は顕著に減少を示していなかった。また、生息頭数の推定精度の向上や、誤差や地域ごとの状況に応じた目標設定が必要ということで、そのためには広域スケールでのモニタリングが必要ということですけれども、労力的制限もありまして、実施が困難な場合が多いというような課題がありました。
それに対して、下の解決策のところで、生息状況の指標として有効性の高い目撃効率の基準というのを設けて、それを農林業被害の状況や、森林下層植生の指導の調査によって、それぞれの基準の整合性をとり、目撃効率を基準とする個体数管理を行うということにしました。
それで、下にそれぞれ目撃効率と農業被害アンケート調査と植生衰退度調査がありますけれども、それぞれなかなか行政だけでは予算も手間もかかりますので、地元にいる狩猟者や住民の協力を得て情報収集を行っています。継続的、広域的に対応の情報を収集可能になったということが注目すべきところですけれども、結果を定期的にフィードバックすることが重要ということで、それぞれの情報を還元しつつ毎年このようなデータを集めていて、それがモチベーションの維持につながっているというような状況です。
また、解決策の二つ目としましては、条件のほうでは近年発達しております統計学的手法を用いまして、個体数推定に取り組んでおります。不確実性を考慮した捕獲目標の設定や、経過のモニタリングに活用していまして、社会的合意のためのツールとしても重要なものとなっております。そのようなCとAを踏まえまして、現在の4期計画の中では、Pのところですけれども、三つの管理を目標立ててやっております。
ここで特にお知らせしたいのは、明確な目標設定をそれぞれ行っておりまして、被害軽減と個体群保全の両面から許容できる被害水準、また生息密度指標の具体的な目標値を設定しているということで、さきに述べました被害アンケート調査の指標や、下層植生衰退度の指標というものが、現状の半減になることが見込まれる目標値というものを明確に設定しております。また、プランのところでもう一つ述べたいのは、最新の調査結果に基づきまして、年度ごとに事業の実施計画を策定しているということが、重要な作業かと思います。明確なこのような目標設定に基づきまして、各種対策に取り組んでいます。
その結果としては、最後のDのところになりますけれども、推定個体数は近年減少傾向にあるということで、特徴を端的に述べますと、このような継続的なモニタリング体制を構築して、生息数の現状と将来予測をしっかり行って、それに基づいてさまざまな対策を積極的に行っている事例ということで、非常に大胆に順応的管理に取り組んでいる事例として挙げさせていただきました。
続きまして、事例の2、長崎県のイノシシの保護管理計画を説明させていただきます。この資料についてもCとAから説明をさせていただきますが、まず前期計画の評価と課題ということで、長崎県のイノシシの事例については、県の管轄部局が異なっていて、施策が総合的に実施されないという課題と、特措法に基づく被害防止計画と整合性がとれず、特定計画に沿った対策が行われないというような課題がありました。
解決策としましては、特定計画の策定と特措法に基づく被害防止計画の作成指導を一つの部局で行うように、平成19年から作成指導を一元化したということが挙げられます。2つ目の解決策としましては、その下にありますが、目標達成のための実施状況の評価、つまり被害の実態調査や、捕獲の状況調査、防護対策が行われている箇所の、それぞれの地域ごとの効果検証を地域単位で綿密に調査するような体制を整えたということが、注目すべき点だと思います。
このような調査をやることによって、イノシシ対策が進んでいない対策遅延地域というのが浮き彫りになってきましたので、そういう対策が遅れている地域への普及が必要ということで、集中的に対策を強化するといったことが可能となっております。その下のところにありますけれども、これらのモニタリング結果を毎年度作成する実施計画や、次の計画に反映するような仕組みを整えて、実情に合わせた特定計画の見直しを行うということにしております。
次にPですけれども、被害管理(防護対策)、個体数管理、生息地管理という、三つの対策を明確な方針に基づいて行うということにしております。下のところの2つの方策ということで、これは捕獲の対策ですけれども、被害軽減のための農地周辺での加害個体の捕獲というものと、生息数を減少するためというものを、明確に区別して実施するという方針にしております。
また、下のDのところですけれども、地域での効果的な対策の実施と、持続可能な捕獲体制の構築ということで、その解決策としてはイノシシ対策のインストラクターというものを県が育成して、農業の普及指導員がそのインストラクターを取得し、各地域でイノシシ対策の指導を直接できるような体制を整備したということと、あと地域ぐるみでの捕獲の推進を進めたというところで、地域、現場に着目した実施体制づくりをしたというところが、注目すべきところと考えております。
下のところの緑のところですけれども、狩猟免許を持たない捕獲従事者を含む地域ぐるみで捕獲を開始しておりまして、被害の軽減、地域の主体性の醸成、新たな狩猟者が地域から生まれるというところを、効果として挙げております。そのほかにも長崎県ではイノシシ対策のホームページでさまざまな情報を発信したり、研修会などを実施したりしております。特徴を端的に申しますと、市町村との連携や、地域の人材育成による現場レベルでの実施体制を整備して、積極的な対策を行っている事例ということで、今回取り上げさせていただきました。
次の事例3ですが、こちらは宮城県のニホンザルの保護管理計画です。ここでもCとAから始めて説明させていただきますけれども、まず第1期目の計画では、加害状況をもとに群れの評価を行い、レベル分けや、レベルに応じた対策を実施しております。また、行動域の変更を目的とした追い上げを基本として、必要に応じて加害個体を捕獲するというようなことを実施しております。
課題としましては、深刻な生活被害を頻発させる群れや、農業被害だけではなくて、人に襲いかかってくるとか、人家に侵入してしまうとか、そういう深刻な生活被害を頻発させるというような群れが出てきてしまったために、従来の評価の区分や対策だけでは対応できない群れが出始めたというような課題がありまして、そのための解決策としては、従来の評価区分を見直しまして、深刻な被害を与えるに対しては捕獲を強化して、規模を縮小して、かつ追い上げによって行動域自体を変えるというような方針としました。このようなことを行うに当たっては、適正な評価のために群れ数や個体数など、個体群の詳細なモニタリング調査の実施が重要でして、それは県のほうでは毎年やっていくということで、計画として実行されています。
Pで管理目標を定めましたけれども、下のところで評価区分を第2期ではWFという、最も人との関係が悪い群れというような評価区分を設けまして、そこへの対策強化というのを盛り込んだということです。それがDのところなのですが、最も評価の低い群れ、人との関係が悪い群れに対しては、多頭捕獲ですとか全頭捕獲を実施するというような方針を盛り込みました。下の個体群管理ですけれども、捕獲だけではなく分布の管理も一緒にやっていくということで、最も人との関係が悪い仙台市の4群に対しては、群れの分裂防止を目的に多頭捕獲を行った上で、追い上げを実施。また、分裂した群れに対しては全頭捕獲を行ったというようなことを実施しております。効果については、被害が減少ですとか、被害が全くなくなったというような報告があり、目的を明確にした捕獲と追い上げをセットでやることによって、明確な効果が出ております。特に加害レベルが高い群れに対しては、明確なビジョンを持った群れ管理を行うということで、問題の群れを取り除く、奥に追い込む、ということを、明確な目標を持って行っているということが特筆すべきことかと思います。
以上ですけれども、今説明しました三つの事例に共通することとしましては、積極的に保護管理に取り組んでいて、先ほど各種で課題として挙げられた事項に、全てではないにしても対応できており、非常に先進的な事例であると考えております。

【事務局】 時間の関係がございますので、質疑は一旦後に回していただいて、農林水産省さんの議題に先に移らせていただければと思います。大変申し訳ございません。
資料について説明をさせていただきます。傍聴者の席にはまだ差しかえ分が届いておりませんので、スクリーンご確認いただければと思います。申し訳ございません。

【農林水産省】 農林水産省で鳥獣災害対策室長をしております森澤と申します。今日は説明の機会をいただきまして、大変ありがとうございます。それではお手元の資料1に基づきまして、鳥獣被害防止特措法に基づく農林水産省の取組状況について、ご説明をさせていただきます。
まず1ページ目をおめくりいただきたいと思います。野生鳥獣による農作物の被害の概況でございます。左側のほうに近年の農作物の被害額の年次推移がございます。平成21年以降、200億円を超えて高どまりという形で私ども表現してございますが、こういう状況になってございます。獣種別に見ますと、シカとイノシシとサルで全体の7割を占めているという状況にございます。
右側のほうに少し深掘りをいたしましたグラフを今回新しく載せさせていただいております。農作物の被害面積と農作物の作付面積との割合について示した図でございます。赤の折れ線グラフを見ていただきたいのですが、これは実際鳥獣被害があったところについて、いわゆる全滅した、壊滅した、全損したという形で仮定したときに、農作物被害面積に対して何%程度を示しているかという形で示している図でございまして、やはり平成23年度は2%以上という形で、相当深刻な状況にあるということでございます。それから真ん中辺りに、北海道、東海、九州地域の同じような割合表でございますけれども、非常に平成19年に比べるとこのパーセンテージが上がっているという形で、被害の広域化というものが見てとれるのではないかというふうに、私ども指摘してございます。
一方で、平成23年度の被害金額でございます。226億円という形で、恐らくこれ13億程度でございますけれども、4年ぶりに減少に転じたという状況にもございます。これも少し深掘りした表を右下に載せてございますけれども、各都道府県別でどうなっているかという状況を見ますと、平成22年度から平成23年度にかけまして、被害が減少したという都道府県の数が30ございます。全体の3分の2という形になってございまして、当然今後の傾向をきちんと見ていかなければならないですが、これまでの高どまり一辺倒から、多少変化の兆しのようなものが出てきたのではないのかなというふうに、私ども分析しているところでございます。
続いて2ページ目でございます。こうした被害の状況を受けまして、平成19年度に議員立法によりまして「鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律」、通称「鳥獣被害防止特措法」と呼んでございますが、これが制定されました。この法律のポイントは2つございます。1点目は、鳥獣保護法のほうがいわゆる推進主体が都道府県を主体に考えているのに対しまして、この特措法のほうでは現場に最も近い行政機関である市町村に、その対策の旗振り役をやっていただく、そのために被害防止計画をつくっていただいて、この被害防止計画をつくっていただいている市町村に対しまして、国や都道府県のほうがさまざまな支援措置を行っていくという、こういう法律の立てつけになってございます。
どういう支援措置もあるかということは、図の左側のほうにありますとおり3つございまして、1つは特別交付税のかさ上げ措置でございますとか、後ほどご説明します農林水産省を初めとする補助事業の財政の支援措置、それからいわゆる有害捕獲に関しまして都道府県知事から市町村長に権限移譲ができるという措置、更にこれも後ほどご説明しますが、鳥獣被害対策実施隊への優遇措置を記しました人材確保措置と、こういう3つの主な支援措置を講じているということでございます。
実はこの特措法、昨年春に一部改正がされました。改正の中身が真ん中辺りの黄色のところで書いている、幾つかの条項が新しく盛り込まれてございます。中でも特に注目されますのがこの点線囲みの一番下のところでございます。一定の要件を満たします鳥獣被害対策実施隊員等につきましては、いわゆる銃刀法に基づきます猟銃所持許可更新時の技能講習の義務づけが免除されるという特例が新たに盛り込まれているというところでございます。
また、右側に数字の表がございます。真ん中の欄を見ていただきたいのですけれども、被害防止計画を策定した市町村というのは、年々着実に増加してきてございます。全国1,742市町村のうち、何らかの鳥獣被害があるという報告があるのが、大体1,500程度という形で私ども見込んでございますけれども、今年の4月末現在で1,500市町村の大体9割に相当します1,331市町村が、被害防止計画をつくっていただいているという状況にございます。
続いて3ページ目でございます。この被害防止計画に基づく取組事例等を載せてございます。詳細な説明は省きますけれども、この被害防止計画を策定した市町村につきましては、市町村や農林漁業団体、猟友会など、地域の関係団体で構成します地域協議会というものを設立いただくこととしております。この構成メンバーは地域によってさまざま異なりますけれども、基本的には計画を策定する、運営する審議会的な合議体組織でございます。この協議会を整備させることによってどういう効果があるかということでございますけれども、一言で申しますと、地域ぐるみ、地域住民主導の取組というものの機運が醸成されるきっかけになるのではないかというふうに私ども考えてございます。ここに示しました三重県さんの取組事例も、まさに地域ぐるみに典型事例でございまして、いずれにしましても特措法の中では「地域ぐるみ」ということが一つのキーワードになっているということでございます。
続いて4ページ目でございます。なかなか現場のほう、対策に取り組もうにも人手が不足して、あるいは高齢化してという形で、対策の担い手の確保というのが、現場喫緊の課題になってございます。特措法の中では、こうした対策の中心的な担い手といたしまして、鳥獣被害対策実施隊を市町村に設置することができるという規定が盛り込まれてございます。
先ほどご説明しました地域協議会が、いわゆるステアリングコミッティなものだとした場合に、この実施隊というのは実際の捕獲、侵入防止柵設置といったような、実際の取組を行う中心的な実働部隊という形で、私ども位置づけてございます。この実施隊につきましても、法律の中でさまざまなメリット措置が用意されてございます。左の図に幾つかありますけれども。特に2番目に書いておりますとおり、民間の隊員につきましては、非常勤の公務員扱いとして公務災害の適用が受けられる。これは消防団組織を参考にしてつくった制度でございまして、こういったメリット措置がございますし、先ほど申しました銃刀法の技能講習免除の適用も受けられるということでございます。
手続的にそんなに難しいものではないのですけれども、右側上の棒グラフにありますとおり、法律ができてから3年間は毎年大体30市町村くらいずつしかつくっていただけなかったんですけれども、ここ2年ほどは、私どもも各市町村に制度の趣旨を丁寧に説明して回りまして、200~300市町村程度ずつ増えているという状況にございます。ただ、まだ先ほどの被害防止計画をつくった市町村1,331に比べますと、まだ半分程度でございますので、さらなる推進が必要だというふうに私ども認識しております。
それから5ページ、6ページがこの実施隊の設置事例でございます。近年設置したというところが多いので、まだまだ具体の効果が現れるというのはこれからだというふうに思っておりますけれども、5ページに掲げています五條市、美幌町、高島市の3例は、いずれも捕獲活動を中心にした自治体の例でございます。いずれの事例におきましても、実施隊をつくったことにより、非常に指揮命令系統がきちんとなったとか、計画的な有害捕獲活動が行われるようになったということで、実施隊をつくった前と後では捕獲頭数に大きな変化は見てとれるのではないかと思います。
また、6ページの事例でございますけれども、こちらのほうは捕獲活動だけではございませんで、例えばサルの追い払い活動ですとか、緩衝帯の整備といったような活動事例もこの実施隊の中で行われているということでございます。いずれにしましても実施隊も、地域ぐるみの取組を体現する重要な組織というふうに、私ども位置づけてございます。
続いて7ページ目でございます。私どもの予算措置でございます。特措法が制定されるのと機を同じくいたしまして、鳥獣被害防止のための専門の予算事業というものが措置されているわけでございます。年々細かいマイナーチェンジをしてございますけども、この事業の基本的なポイントというのは、第一に、先ほどの被害防止計画と連動している、まさにあの被害防止計画がマスタープランになって、この事業を行うという仕組みになっているということ。
それからもう1点は、左側の図にありますとおり、個体数調整や被害防除、生息環境管理といったような、さまざまな取組を総合的に行っていただくという支援措置になってございます。こうした考え方を受けまして、右側にありますように、自治体側の事業メニューも地域の実情に応じていろいろ選択していただく選択メニュー方式になってございますし、実際の事業の採択というのも、国が直接採択するのではなくて、都道府県に行っていただくという、都道府県交付金方式という形で事業を運営しているというところでございます。
平成23年度は予算を大幅に増額してございますけども、本予算に対する地域からの要望というのは非常に根強いものがございまして、全国各地でこの予算が活用されてございます。これは資料には書いてございませんけども、実際この事業の中で何が一番よく使われているかということでございますけども、ソフト対策の中では、おり・わなといった捕獲機材の購入といった物品経費が多うございますし、ハード対策は圧倒的に侵入防止柵の費用が多くなっているという状況でございます。
8ページが、この事業を活用した取組事例でございます。いずれも非常に効果が上がっているという事例でございます。これ以外の地域がどうかということでございますけども、まず基本的には、この事業をやっていただくときは投資に見合った効果をきちんと出していただくという形が原則ルールになってございます。いわゆる費用対効果B/Cでございますけれども、1以上にするというのが原則になってございまして、これを義務づけてございます。基本的にはこの事業を行ったところにつきましては、相応の効果が出てきているという状況にあるということでございます。
それから9ページでございます。実は、総合交付金事業で、足らざるところをという形で、平成24年度補正予算で緊急捕獲対策という名称で措置を講じてございます。これは特に鳥獣の個体数を抑制する捕獲活動に手当てをするという形で、有害捕獲を実施した方に捕獲頭数に応じた経費支払いを受けます。例えばイノシシ等では1頭8,000円を上限に頭数支払いをするというような仕組みを24年度補正予算で設けたところでございます。この場合、狩猟活動でございますとか、都道府県の個体数に対する調整は対象にしていないということでございます。
当然、この緊急捕獲を行うに当たりましては、保護管理計画ですとか、市町村の被害防止計画と整合をとってやっていただくという形で指導してございました。この事業の究極目的は捕獲ではなく、まさに農業被害を軽減させるということが究極目標でございますから、現場のほうでも被害を軽減させるためにどういった時期にどういった地域で捕獲を進めていけば、被害が減るかというような緊急捕獲計画を立てていただいて、事業を進めるように今、指導をしているところでございます。これは基金を設置しまして、今まさに事業に着手を始めたという形で、今後の効果につきましては、これから本格的に上がってくると考えてございます。
最後でございます。法律そのものとは関係ございませんけれども、若干紹介をさせていただきたいと思います。実は、私どものほうも予算措置以外に、いわゆる鳥獣被害防止技術でございますとか、知識の普及啓発活動というものを行ってございます。ここに挙げさせていただいているとおり、例えば専門のアドバイザーという方を登録し、紹介するような仕組みでございますとか、被害防止のためのマニュアルを作成して、パンフあるいはホームページに公表するというような取組、それから例えば地域リーダーでございますとか、食肉、ジビエの利活用のための研修会、講習会というようなものも開催させていただいておりまして、詳細な説明は割愛いたしますけれども、随時こういった最新情報は、農林水産省のホームページでもご紹介いたしまして、技術・知識の啓蒙普及に努めているところでございます。
雑駁ではございますが、私のほうからご説明は以上でございます。

【石井委員長】 ありがとうございました。それでは、今のご説明について、質問・ご意見がありましたらお願いします。どなたからでも結構ですので。
では一つ、お話の中で予算に関連して、何かの指標を1以上にするということが、効果をはかるというお話がありましたけど、ちょっと聞き漏らしてしまったので、もう一度そこを説明してください。

【農林水産省】 当然、予算は投資額というものがございます。投資額に見合った効果というものを上げていただくというのが基本原則になってございます。この効果といたしまして、鳥獣被害事業の場合は、一番典型的なのは被害軽減額がこれだけリカバリーできるというような計画を、まず最初に目標を立てていただいて、当然その投資額以上に効果が出る、1以上になるというような形で指導をしてございます。当然、こういう1以上にならなければ、私どもは改善指導という形でちゃんと1以上になるようにやってくださいという形の指導を県を通じましてしてございます。大半のところは、基本的にはもう1以上になるような形で実績も上がっているという状況でございます。

【石井委員長】 ありがとうございます。
ほかにいかがでしょうか。

【三浦委員】 ちょっと突っ込んだことを聞きたいのですが、先ほどの予算の額が平成23年から大幅に増えていて、その内訳の主たるものは捕獲機器とそれから防止機材が主要なものだということですよね。
それで、防止機器についてはもちろん情報は押さえていらっしゃるかなとは思うのですけれども、匂いや光や音など、さまざまな防止機器が販売されていて、設置当初は非常に大きな効果が、新しいものが加わるということで、驚くような効果が出ます。けれども、慣れと順化とともに急速に効果を発揮しなくなるといったような製品が多々見られるといったようなことや、柵自体も電気柵からさまざまな簡易柵まで実にいろんなものが出回っておりGNP全体を上げるのは悪くないとは思うのですが本当に効果に寄与しないような製品が横行しているのを監視するといったようなことや、そのような情報を市町村に流通させるといったようなことについて、ご努力はしていらっしゃいますか。

【農林水産省】 まず、さまざまな忌避剤が出ているというのは、私どももいろんな媒体で承知してございますけども、法令違反のような忌避剤があれば、当然それは厳しく改善指導をして、現場で周知もしてございますけれども、法令違反ではないものを、これはだめだよというのは、なかなか言いにくい部分がございます。
一方で、今委員のほうからお話ありましたとおり、まず被害があった初めの地域は手っ取り早く電気柵から設置してみようというところが結構多うございます。電気柵を設置してきちんと維持管理をしていれば、下草刈りとか維持管理をしていれば、経年効果が非常に発揮するのですけれども、設置しっ放しになって結局効果が出ない、あるいはもう破られて新しく侵入されてきてしまうというところで、結局電気柵を設置してもうまくいかなかったというような事例も聞いております。
私どもはこういうところについては、基本的に維持管理はきちんとやってもらわなければいけません、特に国の補助事業で入れたものについては、維持管理をきちんとやっていただかなければなりません、電気柵の場合はそういう維持管理というのがポイントになるのです、ということは、マニュアルの中でもしっかり示させていただいて、指導をしてございます。最近の傾向は、どちらかというといきなり電気柵を設置するというよりも、恒久柵で、金網柵とかワイヤーメッシュ柵のほうを設置するような地域というのが、結構最近は増えてきているというふうに私どもは分析してございます。

【三浦委員】 もう少しいいですか。何が言いたいかといいますと、直接市町村におろすのはいけないというわけではないのですが、担当者は往々にして十分に理解できないというか、お金が入るということで、往々にして様々な防止機器を試みるという方向が横行しているわけです。だから私はその防止柵が非常に効果的に働くような格好の、独立の市町村単独ではなくて、もうちょっと何と言いますか、情報の枠組みとか、そういう支援の体制というのが、ただ単にお金を入れるというだけではない仕組みを、一方ではやっていく必要があるのではないかなと考えるわけです。

【農林水産省】 おっしゃるとおりだと思っております。なかなかその地域によって被害の対応も違いますし、全国統一の解というのはなかなか出せないというのも当たり前の話でございますので、私どもとしてはできるだけ優良な事例を、ホームページ等で、今日の資料も含めまして公表させていただいております。基本原則といたしましては、予算事業の中でも総合的に取り組んでいただく、いろんな組み合わせをして、やっていただくというのが一番効果的なんです、それから地域ぐるみでやっていただくというのが一番持続的、継続的なんです、という形で指導をさせていただいているところでございます。

【三浦委員】 わかりました。

【石井委員長】 別件があるそうなので、一応11時までの質疑ということでお願いしますけど。小泉委員。

【小泉委員】 先ほど、目標を達成しない場合に指導しているとおっしゃいましたけれども、特に捕獲についてどのように指導を行っていくか、伺いたいと思います。
前回のヒアリングのときに、都道府県から、猟友会の縄張りというのがあって、捕獲が進まないことがあるという指摘がありました。市町村を単位として捕獲実施隊を結成させた場合に、逆にそのような地域縄張りみたいなものを強化させて、広域な捕獲、計画的な捕獲が進まないのではないかと危惧しますけれども、この辺り指導している点がありましたら教えてください。

【農林水産省】 実は、予算というよりも実施隊を今ある市町村単位でつくっていただくという形で普及活動をさせていただいている中で、今委員からお話のありましたとおり、まさに縄張りと申しますか、現場の事情で、なかなか新しい組織なり、新しい人の受け入れというのが難しいというようなご意見もいただいてございます。ただ一方で、私どもやっぱり今全体的なマンパワーが不足してございますので、やはり現有戦力をうまく活用して、そういう実施隊の活動を、そういう形にできるだけ今の仕組みをなるべく壊さない形、あまりあつれきを生まない形で、実施隊という新しい組織体をつくって、その中で新しい人を入れていくような仕組みはできないかという形を、それぞれの市町村さんと相談をさせていただいているところでございます。
それから、捕獲はこれからまさに緊急捕獲という形で、今各市町村さんたちが汗をかいているところでございますので、これから今委員からおっしゃったような捕獲の目標頭数をどうしたらいいかや、人道管理的な手法をどう取り入れたらいいんだというようなところは、これから本格的に話が上がってくるだろうと思いますので、そこはしっかり相談していきたいと思っております。

【小泉委員】 はい、よろしくお願いします。

【染委員】 今日のご説明で、自治体のほうはかなり事例的に数多く出ておりますよね。ただ、予算的には最終的には総合的対策を目指すということで、個体数調整と被害防除と生息環境管理、これをバランスよくやっていくというのが最終目標だと思うんですよね。その場合に、一番どうなっているのかなという感じがいたしますのは、生息環境管理なのですが、いわゆる農村地域でなかなか労働力もない、高齢化している、という状況の中で、計画段階で生息環境管理というのは、どの程度ちゃんとノミネートされて、中身のあるものになって計画が出てきているのかというのをお伺いしたいというのが1点であります。もう1つは生息環境管理で出てくるのは、一体地域でどんな人たちを組織化して、実態的に本当にできるような体制を仕組めるのか、なかなかこれ難しい面があるのではないかという気がいたしまして、その辺の実態がもしわかれば教えていただきたいなと思っております。

【農林水産省】 まず生息環境管理の被害防止計画上の位置づけとしましては、それは書いていただく、被害防止計画の中にもきちんと生息環境管理という項目を設けて書いていただくような形で、位置づけてございます。具体的に、やはり皆さん被害防除とか個体数調整のほうに関心が行きがちでございますけれども、先進的な地域ではこういった生息環境管理をしっかりやっているところ、まさに寄せつけないという対策をやっているところが、非常に被害軽減効果が上がってございます。その主なものといたしましては、ここにありますような餌場の除去や緩衝帯の整備といったような、いわゆる山と里との境目をきちんとつくっていく。その緩衝帯に牛やヤギを放牧して、処理的にやっているというような先進事例も承知しているところでございます。
実際にこういう生息環境管理に携わっていらっしゃる方でございますけども、先ほど申した実施隊員がそのまま活動しているという事例もございますけども、実態的にはやはり農家の方、地域住民の方が実際の出役をしていただいているという事例が多いと記憶してございます。

【石井委員長】 それではよろしいでしょうか。

(なし)

【石井委員長】 それではありがとうございました。
続きまして、議題の2番目になりますが、銃刀法について、警察庁より説明をお願いします。

【警察】 警察庁保安課長の古谷と申します。銃刀法における猟銃その他の銃砲の管理、それから事故防止について説明させていただきます。
本日は、銃刀法の中でも、前回こちらの審議会で技能講習を中心に御議論があったということでございますので、その辺りを中心に、そして技能講習の前提になっております許可制度についての御説明をさせていただこうと思っています。
資料の1ページ目は、所持許可制度についての説明でございます。銃砲といいますのは、産業その他の分野におきまして、社会的に有用性があるわけでございますけれども、本来的に殺傷機能があるわけでございまして、凶悪犯罪の手段に使用される危険がありますとか、事故が発生した場合の被害が極めて大きいという特徴がございます。このような危害の発生を防止するために、銃刀法におきましては、銃砲の所持を一般的に禁止させていただいておりますが、一方でそういった社会的有用性もあるということで、必要な場合には必要な銃を使えるようにということで、所持許可制度を設けて、その両者の調和を図るということでございます。
許可の特徴として2つございますが、まず、銃刀法の所持許可につきまして、用途を限定した上で許可をしているということでございます。猟銃につきましては、狩猟、有害鳥獣駆除、標的射撃、これが基本的な用途であり、基本的にはこれ以外ではありません。また、許可された用途以外で撃ちますと、発射制限違反として処罰の対象となっております。農業被害防止の目的で鳥獣を捕獲するという場合には、これは狩猟ではなくて、有害鳥獣駆除という用途で所持許可を取っていただくということになっています。
もう1つの特徴は、対人対物許可というものでございます。通常の一般の許可は、人に対しての許可でございますけれども、銃砲の所持許可につきましては、所持者について審査するだけではなく、銃についても一丁一丁個別に審査をして許可を出すということでございます。その趣旨は、必要以上の威力を持った銃や、あるいは軍用銃といった悪用された場合に危険性の高い銃などを排除するということ、及び盗難銃砲によって危害が発生するということを予防するということで、一丁一丁の銃を厳格に管理していくため、このようになっているものでございます。
次に許可の基準でございます。まず、あらゆる銃に共通するものとして大きく3つございます。まず人的欠格事由でございます。年齢が18歳以上であること、薬物中毒とかアルコール中毒等とかでない、住所不定でない、禁錮以上の前科が過去5年以内にない、銃刀・火取法の前科がないだとか、ストーカー、DVをやっていない、暴力団関係者でない、その他危害予防の見地から概括規制として公安条項といったようなものがあります。
それから先ほど申し上げた対物許可的な観点から、銃砲の構造・機能について仕込み銃のような変装銃砲や欠陥のある銃は許可が出ないということになっています。それから保管設備については盗難防止という観点で規制をしております。堅固な金属製ロッカーを用意していただくことが原則でございますけども、猟銃については銃砲店等に保管委託するということも可能な制度になっています。
今までの説明が基本的なものでございますけれども、猟銃につきましては、ほかの銃よりも危険性が大きいということで、加重した要件がついております。まず、年齢制限が一般的には18歳以上でありますが、20歳以上ということになっております。また、前科要件が拡大をされておりまして、凶悪犯罪等をした場合は過去10年の犯歴を見るということになっています。これは大阪の昭和54年三菱銀行北畠支店の銀行強盗事件が御記憶にあると思いますけれども、そういったことを踏まえて前科をしっかり見なければいけないということでございます。
それから猟銃等講習会を受けていただくこと。これは昭和41年に規定されたものでございますけれども、そのころ事故多発の原因が知識不足にあるということから、猟銃等の取扱いに関し必要な知識を習得させるための講習会を受講していただくことになりました。次に、技能検定・射撃教習でございます。昭和53年改正で入っておりますけれども、この当時は取扱いの不慣れに起因する事故が多発しているということがあると思います。この昭和53年改正の前は、本当にペーパーテストだけで許可を得ていたといったことになっていると、今だと考えられないような状況でございますけれども、そういった改正でございます。
それから技能講習、これは基本操作あるいは射撃技能の低下といったような問題があって平成20年改正で導入したものでございます。それから猟銃につきましては、連続自動撃発式、これは自動小銃だとか機関銃のような、連続で射撃をすることができるものはだめだということです。それから、消音器の禁止や口径・銃身長も一定の範囲内におさめていくという規制がございます。
さらに、ライフル銃でございます。これについては猟銃の一種ではございますけれども、威力が強く、命中精度が高く、射程距離も非常に長いという特徴を持って、危険性がございますので、いわゆる10年要件といわれる、10年以上猟銃の所持許可を受けているということが要件になっております。ただ、これには例外がございまして、1つは獣類捕獲を職業とする者、これは「またぎ」と言われるような猟師が該当します。それから2つめは、これは今回の御議論の中でも関連するのですが、事業被害防止のため獣類捕獲を必要とする者、それから3番目は体育協会から推薦されたライフルの選手でございます。これらの方々は10年要件というものは適用がなく、最初からライフルの許可をとっていただくということになっています。
この10年要件につきましては、いろいろ誤解があるようでございまして、ライフルの10年要件があるために、農業被害防止のためにライフルの許可を取りたいといってもなかなか取れないといった御批判を伺うところではございますけれども、実際には今申し上げたとおり、農業を含む事業被害防止に関しましては、10年要件の適用はございません。必要な方に必要な銃を許可する枠は用意されております。ただ、必要性ということについては、証明をしていただかなければいけませんので、この3ページのところに証明書の様式がついてございますけれども、市町村から被害実態がありましたとか、ライフルで捕獲をする必要性があるといったことについての証明書を作っていただいて、これを許可申請書とともに出していただき、審査の上、必要と認められれば適正に許可をするよう、私どもは、都道府県警察に指導しているところでございます。
次に、許可の手続でございますけれども、2枚めのフローチャートのとおりでございます。各種手続がございますが、これはどうしても人の生命に関わる銃の性格上、慎重な手続にならざるを得ないというところでございます。しかしながら、申請者の負担を軽減するために、現在、講習会を休日に開催すること、あるいは郵送で新たな手続をする、又は代理人による手続を認めるといった負担軽減措置というものを、試行的にやっておりまして、できれば本年中には全国で実施をし、負担の軽減を図りたいと思っているところでございます。
銃砲の許可をいたしますと、いろいろな規制がかかってまいります。具体的には許可の用途以外での携帯・運搬の禁止、持ち歩くときには格納容器に入れること、射撃するとき以外の実包の装填禁止、鳥獣保護法の規定による銃猟や射撃場で撃つとき以外の射撃の禁止、あるいは、技能の維持向上の努力義務が課せられております。あとは改造の禁止、保管義務、実包に関する帳簿の備付け義務、それから毎年1回春頃に、一斉検査として、銃をしっかり管理しているか、銃の構造・機能が維持されているかということについて、警察官の検査を受けることになっております。そして3年ごとに許可の更新を受けるといったような規制がされております。この更新の絡みで技能講習というのが出てくるわけでございます。
4ページのほうで技能講習の御説明を申し上げたいと思います。これまで申し上げたような許可制度のもとに、平成20年改正で新たにこの技能講習制度を導入したものでございます。この平成20年改正といいますのは、平成19年12月に佐世保のスポーツクラブで起きた猟銃の乱射事件を契機にした改正でございますので、この技能講習制度も乱射事件にひっかけて、規制強化をしたのではないかと誤解があるようでございます。
もちろん幾ら講習をしたところで、ああいった確信犯のような凶悪犯罪を防ぐことはできるわけがございません。ここはもっともでございますけれども、この技能講習の導入の目的はそういった凶悪事件を防止するということではございません。佐世保事件を一つのきっかけにしまして、銃砲管理全般について見直そうという、国会あるいは世論の高まりがございまして、平成20年に警察庁において銃砲行政の総点検ということでいろいろ調査をいたしましたところ、事故の多発の原因が猟銃の基本的操作、あるいは射撃能力、これが低下していることが原因であることが明らかになったので、これらの対策として設けたわけでございます。
当時の調査結果では、平成17年から19年の3年間に合計で83件の事故がありまして、そのうちの約9割が基本操作の不遵守あるいは技能の低下に起因しているところでございます。具体的には実包の不当な装填による暴発でありますとか、矢先の安全不確認、誤認発射、跳弾といったようなものでございます。こういった状況については最近も変わりはございません。
資料の7ページのところに猟銃事故の統計を出させていただいております。猟銃事故の場合、死亡に至らなくても手足の機能喪失といった非常に重篤な後遺症が残る場合が多く、決して軽く見過ごすことはできないようなものでございます。最近の特徴につきましては、共猟者だけでなくて、登山者や、山林で伐採作業中である猟と関係ない一般の方が巻き添えになる事故が非常に増えているという問題がございます。また、有害鳥獣捕獲の期間が拡大しておりますので、従来は基本的には狩猟期間が終われば事故は多少減っていたのですけれども、年間を通じてそういった事故の可能性が続いているということでございます。
事故の原因につきましても、相変わらず不要なときに実包を装填したままにして暴発したものとか、矢先の安全不確認といったものがほとんどでございます。先ほど申し上げました銃の一斉検査というのを毎年やっているのでございますけれども、そこで警察として一番怖いのは、銃に弾を入れたまま一斉検査会場に来場する方が毎年いることでございます。一斉検査会場での暴発事故を防ぐため、今年も、猟友会を通じて再三注意喚起したのですが、やはり今年も2件あったということでございます。多数の方が集まる会場に、弾が入っていることを忘れて検査を受けに来られる方がいるのが実態であります。
技能講習は、銃の基本的な扱いなどに起因する事故防止のために、猟銃につきましては3年に1回更新することになっておりますので、その更新時、あるいは新たに追加して銃の許可をとろうという場合に講習を受けていただくことになっています。技能講習を受けることによって、技能の活用と自覚を促そうということでやっているものでございます。
4ページにもう1回戻っていただきますと、真ん中のところに対象者というものがあります。国体選手やR射撃指導員は、技能はしっかりしているというわけでございますので免除になります。また、先ほど農水省からお話のあった鳥獣被害防止特措法によって、一定の要件を満たす実施隊員等も免除となっています。この免除についてはまた後で御説明いたします。
次に、講習の内容については5ページに表をつけてございます。猟銃の操作と射撃ということでやっておりますが、操作につきましては、猟銃の保持、その他の基本的な扱い、猟銃の点検、実包の装填、実包の扱い、射撃姿勢、動作ということを、座学と実技においてやります。また、猟銃の射撃につきましては、散弾銃の場合はトラップ射撃又はスキート射撃のいずれかを選択、ライフル銃につきましては固定標的に対する実射を行うことになっています。
具体的な状況は映像で御覧をいただければと思います。これは散弾銃のトラップ射撃というものでございます。まず、今は散弾銃の点検と分解、結合の作業をしております。次は、照準と空撃ちです。これらの場合も、銃口を人に向けたりとか、引き金の中に指を入れたりとか、いろんな規定がありますので、そういった点で指導が入ったりするようであります。これから実際に弾を撃つということであります。トラップですので25発中2発ほど命中すればいいということであります。
このような形の講習を座学と実技で2時間以上にわたり実施をいたしております。
この修了基準の合格点として、4ページに書いてございますけれども、散弾銃による射撃につきましては、トラップであれば25発中2発、スキートは25発中3発、ライフル射撃につきましては、50メートルのところにこの標的を置きまして、膝射、大口径で20発撃ちまして40点取るということでございます。実は、この基準につきましては、初めて銃の許可を取っていただくときの技能検定だとか射撃教習と全く同じあり、決して難しいものではないと思っております。
実際の合格率につきましても、散弾銃の場合99%、ライフル銃の場合は85%と高い数字が出ておりまして、平均点につきましても、最低の合格基準を大きく上回っているものでございます。技能講習について、難しいという声をはじめ様々なご意見があるところでございます。その一方で射撃場の管理者ですとか、射撃指導員、それから地方の猟友会、あるいはその他の銃砲関係団体・協会等の方々からは、最近の狩猟者の技量低下が著しいということで、そのレベル維持のためには技能講習が必要であるといった御意見もよく伺っているところでございます。
警察といたしましては、猟銃の使用が、人の生命身体を害するおそれを伴うものである以上、技能講習による基本操作への習熟、そして技量の維持ということは当然の責務であるというふうに考えておりまして、事故の犠牲者が絶えない状況の中で、初心者のレベルの講習をパスできないような方が銃を持ち続けられるようにしようといった議論につきましては、なかなか国民の理解を得ることは難しいのではないかと考えているところでございます。
次に、この技能講習が狩猟者減少に関係があるのではないかという御指摘がございますので、それについてお話をしたいと思います。
まず、狩猟者の数でございます。当庁は狩猟ということでやっているわけではなく、猟銃の許可ということでございますので、必ずしも一致するわけではございませんけれども、9ページに猟銃の所持者数の推移が書かれてございます。平成24年末で10万7,000人程度であります。10年前に比べますと44%減っているということでございます。昭和50年代以降一貫して減っているということであります。その原因を特定するのはなかなか難しいと思いますけれども、基本的には人口の都市集中、それ以外の地域の過疎化、それから農林業従事者の減少、社会全体の高齢化、レジャーの多様化といったことがあるのではないかと推測されるところでございます。
それで、この減少、特に最近の減少につきまして銃刀法による規制の影響が指摘される部分があるわけでございますが、それが技能講習でございます。ただ、この表のところの平成21年と平成22年の間に技能講習制度が施行された時期として線を引かせていただいておりますけれども、統計データを見ます限り、この施行の前後において減少傾向に有意な差は必ずしもなく、または、平成21年から大きく減っている、あるいは場合によっては平成19年から減っているというふうに見ることもできるのではないかと思っております。また、規則の制度上、技能講習につきましては、当初3年の経過措置期間における初回の講習は免除でございます。この更新は3年ごとで、少なくとも経過措置期間中の3年間は技能講習を受けなくても銃を持ち続けられるということでございますので、その間において技能講習があるからといって、銃を手放す理由にはならないのではないかと思っています。
この経過措置期間中に受講が義務づけられるのは、基本的には技能講習免除で更新を受けた後に、2丁め、3丁めの銃の許可をとろうという場合であります。ただ、その場合、技能講習が嫌だから申請しないといっても、もともとの持っていた銃は手元に残るわけでございますので、猟銃所持者ということでの減少には必ずしもつながらないというふうに思っておるわけでございます。
猟銃所持者の減少が続いているのは明らかな事実でございますけれども、今申し上げたようなことを踏まえますと、技能講習制度自体がその減少に拍車をかけているといった仮説は、理論的あるいは実証データという点からの裏づけがなかなか難しいものと思っておりまして、やはり減少の理由というのは、先ほど述べた過疎化でありますとか、許可所持者の高齢化等といったところにあるのではないかと思っています。
そうは申し上げましても、やはり何とか狩猟者人口の減少を食い止めたい、鳥獣被害対策を強化したいという議論はあるわけでございます。様々な御議論のある中で、先ほど農水省からもお話のあったように鳥獣被害防止特措法が改正されまして、実施隊への参加のインセンティブとするというようなこともあって、鳥獣捕獲作業に参加した方については、技能講習の受講を免除するといった規定が設けられたところであり、これは昨年の9月28日から施行されております。
免除の要件は、6ページのところに資料をつけてございます。過去1年以内に捕獲作業に1回以上参加し、それから銃刀法違反によって指示を受けたことがない実施隊員、あるいは捕獲隊員ということになっております。この講習免除の特例は、今年の5月までの8カ月に7,607人の方が免除をされております。現在猟銃の有害鳥獣駆除用途での許可所持者は約5万5,600人とのことでございます。8カ月は更新期間である3年の4.5分の1ですので、それで割り返しますと、概ねこの有害駆除用途で銃を持っている方の6割ちょっとが免除の対象になるのではないか、3年たっていないのでどうなるかわかりませんけれども、今の概算だとそんな感じになるのではないかと思っております。
これだけの方が免除の対象になれば、都市部の空港での有害駆除としてバードストライクを行う人たちも含めた中の62%でございますので、被害防止対策推進という目的は十分達せられているのではないかというふうに思っております。
さらに、この数字につきましては、実施隊への加入促進ということが進めば更に増えていくと思っています。この辺りは先ほど小泉委員からも御指摘があったようでございますけれども、自治体と猟友会の関係というところで、必ずしもすんなりいっていないというような話もあるようでございますので、その辺については大日本猟友会が調整をしていただくといったようなことがあれば、また進むところもあるかなと思っています。
警察といたしましても、この鳥獣による農林被害は非常に甚大であるということは十分承知いたしております。国民の生命身体の安全確保、そういった課題はもちろん基本に置きながら、有害鳥獣対策につきましても、鳥獣特措法によります技能講習の免除制度を円滑に運用するでありますとか、先ほど申し上げました許可手続に関しての負担軽減措置を一層推進するといった形で、側面支援に努めてまいりたいと思っております。
以上でございます。

【石井委員長】 ありがとうございました。
それでは、ご説明について質問・ご意見がありましたらお願いします。

【羽山委員】 ありがとうございます。質問というか確認をさせていただきたいのですが、先ほどの資料で3ページ目です。事業の被害実態説明書という様式ですけれども、最後の証明を与える者は市町村長等となっていますけれども、これは例えば県とか国の行政機関の長でも構わないのかどうか、教えてください。

【警察庁】 絶対にその市町村長でなければいけないということではないと思います。これは参考としてつけたまででございます。実際にその証明をするだけの十分な知見を有し、事業被害に関する管理等を行う役所のしかるべき立場の方が出していただければ、県警のほうではそれを踏まえて判断をするということだと思います。

【羽山委員】 ありがとうございます。

【石井委員長】 ほかにいかがでしょうか。

【小泉委員】 すみません、今の質問にもう少し御説明いただきたいと思います。資料1ページの、事業被害防止のため獣類捕獲を必要とする者として、具体的に許可された方がありましたら教えていただけますか。特に実施隊というものが、その対象になっているのかどうかということでいいですか。

【警察庁】 事例については、まず、北海道の雄武町で、鳥獣被害対策実施隊員が使用するライフル銃の管理体制を町が作った上で、その隊員にライフル銃の所持許可申請をさせたというものでございます。現在、その処理は最終的には終わっておりませんけれども、おそらく属人的な問題等がなければ許可されるものと思います。
それから、知床の斜里町で、地元の公益財団法人の職員を実施隊員に指定し、環境省から保管場所を借りた上で、管理体制を作ってライフル銃の所持許可申請をしているというようなものでございます。基本的にこういった市町村の実施隊員は公務員、又は非常勤公務員ということでありますので、恐らくその必要性等については自治体がしっかり説明をしていただけるのだと思います。もちろん個人の許可になりますので、御本人に前科がある場合などは許可ができませんが、大きな問題はなく許可できるものと思っております。
まだ、この辺、御理解が十分にないことがありまして、先般も某県の幹部の方が狩猟対策強化のために、10年要件の撤廃をお願いしたいと言って来られたのですが、こういうふうに、そもそも10年要件の適用がないことを申し上げたところ、地元からの陳情をそのまま伝えたということでございましたので、その辺の御理解が進めば、もうちょっとこの議論はよくなるものと思っております。

【石井委員長】 ありがとうございます。

【染委員】 前回の都道府県に対するヒアリングの、この資料を読みますと、たしか北海道から夜間の消音器つきのライフルによる狩猟の話が出ていたのですが、この1ページ目を見ますと、消音器の禁止というのが書いてあるんですが、これとの関係で何かコメントをいただきたいんですけれど。

【警察庁】 現在、北海道でやっているのは、鳥獣捕獲の試験研究という形で狩猟をしておりますので、その限りにおいて合法的になるということ。やはり、その結果を踏まえて、夜間のシャープシューティングみたいな話で消音器を使うとかで、そういう方法が適切に行われるかどうかというのは、また検討していきたいということで、私どもとしては結果をお待ちしている状況ということでございます。

【染委員】 今は、消音器は禁止なんですね。

【警察庁】 試験研究という枠組みでやっているので。

【染委員】 限定している。

【福田委員】 所持許可の基準で、人的欠格事由というのがありますけれども、ここで最初のほうはずっとわかるのですけれども、ストーカー等というのがございますよね。ストーカーはどのようなもので、どのように調べるのでしょうか。

【警察庁】 ストーカーにつきましては、ストーカー規制法で警告をし、または命令を受けた日から起算して3年を経過していない者ということでございますので、警告なり命令をすれば、それは公安委員会がしますので、警察はそれらを把握しているということでございます。
ですので、いわゆる一般的な意味ではなくて、ストーカー行為をやって、ストーカー規制法に基づく処分を受けた者ということでございます。ちょっと省略して書いてございますので、その辺はそういうことでございます。ただ、別途他人の生命身体もしくは財産もしくは公共の安全を害するおそれがあると認めるに相当な理由がある者も許可は出ませんので、そういうものに当たるということであれば、警告なり命令を受けていなくても、許可は出ないということはあります。

【福田委員】 当たるというのは、どういうふうに。

【警察庁】 その申請者の行為です。いわゆるストーカー行為をしているということが、警察や何かで把握をしていて、まだ警告でありますだとか、命令は出していないけれども、その者はそういうことをしておって、今後いろんな暴力行為に及んだりするおそれがあると認めれば、許可は出さないということでございます。

【福田委員】 じゃあ変な話ですけど、隠れてというか、そこまではわからないことですね。

【警察庁】 世の中にわからないこともあるのでございますが、その辺りはしっかり調査をして、あるいは関係の方からもお話を聞いて、問題ないかということをしっかり確認をするように努めてはおります。

【福田委員】 わかりました。

【羽山委員】 今度は質問ですけれども、銃の所持ですが、例えば行政機関ですとかあるいは企業が法人として、あるいは公共団体として銃の所持をするということは可能なんでしょうか。

【警察庁】 基本的に銃については、自然人に許可を出すということになっておりますので、法人などの場合には、どなたかを指定していただいて、その方の名前で許可を出すということになっております。

【羽山委員】 その場合、例えばそこの職員がその銃を所持、発射、実際に使用することはできるのでしょうか。

【警察庁】 基本的には、使用発射される方の名前で申請をするということになります。

【羽山委員】 ということですよね。そうすると、例えばじゃあ購入するときの代金を、行政なり会社が支払うことは可能ですか。それは関係ないですか。

【警察庁】 それは問題ないです。

【羽山委員】 全く問題ないですか。はい、わかりました。

【石井委員長】 ほかにはよろしいでしょうか。

(なし)

【石井委員長】 それではどうもありがとうございました。
続いて議事の(5)に移りたいと思います。(3)は時間の関係もあって、とりあえず省略ということにしますが。
それでは、(5)の現地調査報告について、ご説明をお願いします。

【事務局】 鳥獣保護業務室の松本でございます。資料5-1の知床の現地調査の報告をさせていただきたいと思います。
5月30日~31日に石井委員と、坂田委員、佐々木委員、福田委員にご参加いただき、知床の現地調査を行いました。
知床でのエゾシカ対策の場合を最初に説明いたしますと、明治の初頭からシカが減って激減してきたということで、保護政策がとられてきたとことですが、その結果シカが急増したことから、対策を講じていくということになり、現在様々な取組が実施されているということでございました。
対策の中身でございますが、1ページの右の下に知床半島の地図をつけてございます。上のほうから順に、知床岬では個体数の調整や仕切り柵、しれとこ100平方メートル運動地では植生の保護柵、その他それぞれ密度の調整や侵入防止柵などなど、さまざまな対策をいろんな条件のもとでされているというところで、非常に参考になるお話を伺うことができました。
2ページ目をご覧ください。シカ対策の体制でございます。まず知床世界遺産の科学委員会のエゾシカ・陸上生態系ワーキンググループというのが設置されておりまして、そこでさまざまな計画や対策成果の評価というものが行われております。また、その下に植生指標検討部会というのがございます。そこで今対策が必要な場所を選ぶための植生指標の検討が行われており、科学的な知見のもとに計画的に対策を進めておられるということでございました。
計画につきましては、釧路自然環境事務所、北海道森林管理局、北海道の三者により知床半島エゾシカ保護管理計画が策定されております。これは、いわゆる特定計画ではないのですが、北海道特定計画の中で、知床についてはこの計画で管理を行うということが明記されており、特定計画と同じような役割を果たしているということになっております。また、その下に、毎年度の実行計画がつくられておりまして、現在シカの年度ということで、6月から翌年5月までを1年度として計画をつくられているということでございました。
対策の実施主体でございますが、捕獲につきましては、遺産地域内は環境省釧路自然環境事務所が知床財団にお願いして対策をしております。また、遺産地域外では、国有林では北海道森林管理局が、斜里町、羅臼町、それぞれの市街地の周辺では、それぞれの役場が猟友会の協力を得て、対策をされているというお話がございました。
知床については、もちろん知床独自の条件といいますか、特徴があるということでございまして、その下の青枠に記載しております。道路が少ない、それから雪が多い、流氷で船も使えないという、非常にアクセスが困難な道もたくさんある。こうした中で、どのような対策が良いか試行錯誤をされているということです。また捕獲手法につきましても、やはり岬のほうはアクセスが大変であるということや、シマフクロウなどの希少鳥類がいる、それからヒグマなどもいて、また観光地でもあるという、こういった様々な配慮という点で非常に苦慮されているということでありました。
下の(3)でございますが、捕獲したシカにつきましても有効活用に取り組んでおられるということで、基本的には捕獲許可については後でご説明しますが、株式会社知床エゾシカファームに引き取っていただいて、食用またはペットフードということで活用されているということでございました。
3ページ目をご覧ください。以降、幾つかの場所での対策の実施状況、簡単にご説明させていただきたいというふうに思います。
1つ目が、知床岬の先端でございます。ここも増加率が非常に高いところで、平成19年から銃を使用した個体数調整、巻狩りに取り組まれておられます。さらに平成23年の秋に仕切り柵、下の真ん中の図で赤い線でついているところが柵になりますが、これを使うことで巻狩りをさらに効率的に行うことができるようになったということで、昨年度シーズンが終わった後の密度が、平方キロ当たり3.4頭、目標はもともと5頭でしたので、これについては達成できたということでした。今後どうしていくか更に検討をしていくという話がございました。
4ページ目をご覧ください。こちらは羅臼側になります。今回、現地調査で実際に訪問した箇所での捕獲対策でございます。水側の○時印に人家でありますが、こうした場所で、いろんな捕獲の対策を行われておられました。赤い線は流し猟式シャープシューティングの実施区間で24シカ年度では6回実施されております。そのほか定点のシャープシューティング、青い枠で囲んでいるところは巻狩り、それから大型のわな、小型のわな、さまざまな対策をそれぞれ地形の条件等々を勘案して、対策をとられています。実施状況でございますが、21シカ年度から24シカ年度の捕獲数414頭という実績でございます。
手法ごとに課題が整理されており、例えば大型の囲いわなであれば、わなの中に雪がたまってしまって機能しないとか、わな内部の積雪のためシカが逃げてしまうというような問題とか、わなの操作も人が行くのはなかなか大変な部分があって、自動捕獲ゲートを導入したということであります。
5ページをご覧ください。先ほど出てきましたシャープシューティングを少し詳しくご説明したいと思います。このシャープシューティングといいますのは、人に慣れてしまって警戒心が強くなったシカ、スマートディアと通常呼ばれておりますが、こういうものをつくらないように捕獲を進めるという工夫でございます。一般的には定常的に餌付けを行って、小さな群れを全頭、射撃技術の高い方が全頭捕獲を行うものです。これを道路沿いに餌場を幾つか複数設けて、車で移動しながら取り組むということをされております。
実施体制でございますが、捕獲車両が1台、ここに射撃手が1名、それから観測手、シカを見つけて記録される方、それから運転手3名が乗ります。さらにその後ろから捕獲個体の回収車両がすぐについて行き、撃ったシカを速やかに回収していく。さらに、必要に応じて、特に公道をとめて対策をされているということで、連絡等も含めて見回りをしているということでございました。
課題につきましては、やはり一般に供用されている道路をとめて使っているということですので、安全管理のための方面への調整ですとか、人の配置とか、なかなか苦労があるということでした。また、雪が降りますと除雪をしていないとできない、シャープシューティングには精度の高い射撃技術が求められるためライフル銃が必須なのですが、ライフルが撃てる人が少ないことが課題ということで、お話がございました。
6ページをご覧ください。これは知床半島のウトロ、斜里町側にあるのですが、幌別、岩尾別の実施状況です。こちらの囲いわなを見せていただいたのですけれども、ここの生息数が2003年に391頭だったものが、2011年は1,300頭と爆発的に増えていたということで、平成23年から捕獲手法の検討を行い、平成24年から個体数調整を開始したということでした。目標としては、平成26年までに2003年の水準まで個体数を下げるとなっております。ここもシャープシューティングや小型のわな、くくりわなを使った取組が進められているところです。今回、渡した羽、手法の課題等の中の四つ目にある岩尾別囲いわなの現地にお伺いしました。近くにさけ・ますふ化場があり、車両でのアクセスが可能であり、電力確保ができるということで、わなの設置ですとか、捕獲個体の搬出という点で条件が整っているということをおっしゃっておられました。
最後の7ページ目ご覧ください。現地にご案内いただいた後に、北海道、斜里町、羅臼町、知床財団、北海道森林管理局の皆様と意見交換をさせていただきまして、いろいろとお話を伺うことができました。簡単な概要だけ書いてございますが、特に要望というか、ご意見が多かったのが、一番下になりますけれども、規制の緩和に関することでした。は今の規定は山間部にある規制と都市部での規制が一緒になっているが本当にそれでいいのか、何とかならないかというお話や、シャープシューティングはライフルが必須であり海外では夜間で実施されているものなので、その辺りどうした対応ができるか、取組の負担軽減について話がありました。
最後でございます。(6)のエゾシカファームでございますが、こちらは、知床半島で捕獲された個体の有効活用をされている会社であす。平成19年からエゾシカを活用した食肉の製造・販売をされております。年間、食用2,000頭、ペットフード用3,000頭の処理をされております。
基本的には、囲いわなで捕まえた、生きている個体については養鹿し、少し太らせてから加工されております。捕獲後2時間以内に持ち込まれたものも食用に回すことになっているということでした。それ以外のもの、内臓が破損し汚染されているものなどはペットフードになっています。需要としては、東京、大阪の洋風レストランに販売しているけれども、ジビエの時期である10月から12月に集中しているということでした。供給は年間通じて可能であり工場も年間稼働したいが、需要と供給の時期の違いがあり大型の冷蔵庫などの設備の増設をしないとなかなか規模の拡大というのは難しいということでした。また、衛生面の心配もあり、食肉の仲介業者さんが入ってくれないと、なかなか小売店、レストランでは扱ってもらえないというお話がございました。
あとは、原材料はある意味無償で入ってくるとしても、やはり歩どまりが悪い、それから養鹿は餌代がかかるということで、なかなか利益が上がっている状況ではない。歩どまりが悪い反面、残渣が出るのですが、それについては工場で処理し養鹿している敷地の中で肥料として使っているということでございます。
簡単でございますが、以上でございます。次に丹沢の報告です。

【事務局】 続いて、資料5-2につきまして簡単に現地調査についてご報告いたします。
まず現地調査ですけれども、午前中は神奈川県自然環境保全センターにおいて、シカの保護管理の現状についてご説明いただき、午後はニホンジカの保護管理事業地である堂平の視察を行いました。資料の1ページから4ページ目は自然環境保全センターの方にご説明していただいた内容をまとめております。
まず、丹沢におけるシカの保護管理の経緯ですけれども、神奈川県では、学識者やNGOの方たちが主体となって、自然環境総合調査を実施しまして、科学的・総合的保全管理の必要性を提起したのを受けて、1990年に県が保存計画を策定し、実行機関として神奈川県の自然環境保全センターを設置しました。科学的なシカ管理が開始したのですけれども、2003年にニホンジカ保護管理計画を策定し、さらにその総合調査を実施しまして、それを踏まえて基本構想を作成し、それをもとに再度計画を見直ししまして、2007年から第2次の保護管理計画を開始しております。
第2次の計画では、中途の下のほうにありますような[1]から[4]の課題が明らかとなりまして、それをもとに計画を見直して、2012年から第3次の保護管理計画を策定・開始しております。第3次では、2次で浮かび上がった課題を踏まえて、中高標高域での新たな取組としまして、森林管理とシカ管理の一体化、標高の高い山稜部等での管理捕獲、シカ捕獲等に従事する専門職員(ワイルドライフレンジャー)の配置を行っているとのことです。
次のページにつきまして、2012年からの第3次保護管理計画ですけれども、こちらは、計画対象区域のうちの保護管理区域におきまして、自然植生回復エリア、生息環境管理エリア、被害防除対策エリアにゾーニングをしまして、エリアごとに特定計画の3本柱をバランスよく実施して、合意形成を図りながらデータに基づく管理を実施しているとのことです。
下のほうの図にございますけれども、高標高域のところでは自然植生の回復を当面のゴールとしまして、個体数管理としてワイルドライフレンジャーによる山稜部の管理捕獲を行い、生息地管理や被害防除としましては、植生保護柵の設置や土壌防止対策を行っております。中標高域のほうでは、生息地の確保を当面のゴールとしまして、森林とシカの一体的管理として水源林整備地における周辺管理捕獲や人工林間伐、植生保護柵の設置などを行っているそうです。
3ページには推進体制を載せております。4ページには、捕獲の実績を載せておりますので、こちらも後ほどご覧いただければと思います。
次に、5ページに参りまして、実際に視察をしました堂平についてご報告させていただきます。堂平は、丹沢山の北西のほうに位置しているのですけれども、シカの植生による土壌流出が発生した等で、上の2枚の写真にございますように、土壌流出対策を実施するとともに、下の写真にあるような植生保護柵を設置して、対策をしております。また、県の猟友会によるシカの管理捕獲も実施しているそうです。そのモニタリングによって効果を検証しており、事業の効果としましては、下層植生が復活した、シカの密度が低下したという結果が得られております。
最後の6ページに行きまして、今回の現地調査には、シカの捕獲に従事するワイルドライフレンジャーの方3名にも同行していただきました。ワイルドライフレンジャーについては、専門的知識や経験を有しており、専従的に管理捕獲に携わっているそうです。平成24年から3人を配置しており、予算は県の水源税を利用しているそうです。特徴としては、3名とも射撃の技術が高く、1名は県の猟友会の理事を務める熟練者の方で、ほかの若手の2名に指導をするとともに、県の猟友会などとの密接な調整や連絡を行う連携役となっているそうです。ワイルドライフレンジャーは、高標高の、今まで捕獲が少なかったような場所での捕獲手法の検討実施などを行っておりまして、モニタリングも実施しております。
下のほうの水色の四角ですけれども、ワイルドライフレンジャーからいろいろなコメントをいただきました。日没後の捕獲やライフル銃の所持、銃の保管や諸経費の助成などによって捕獲が進むのではないか、各地域により合った方向を選択する必要性、また、育成した担い手が十分機能するためのバックアップ体制や設備、組織といった条件の必要性などをコメントいただきました。
以上でご説明は終わります。

【石井委員長】 ありがとうございます。今日の議事次第には12時までとなっているのですが、もともとプログラムとしては12時20分ぐらいまでを予定していたようですので、ご了承願います。
それで、まず今の現地調査の報告について、参加された委員、この方から特にコメントがあればお願いしたいのですけれど、いかがでしょうか。

【坂田委員】 知床を見させていただいたのですけれども、手短に言うと、やはり誰かが責任を持ってきちんと捕獲なり個体数調整をやるということが一番重要で、それをやればそれなりの相応の成果が出るものだなということを強く感じました。

【福田委員】 本当に私、わからずに行ったのですけれども、見てみなかったらわからなかったなということがとってもよくわかりました。本当にエゾシカは人間なんか怖くなくて、そこまで出てきて、私は、これだともう知床の自然遺産が取り消されてしまうのではないかというような不安を感じました。
それから丹沢ですけれども、ワイルドライフレンジャーの方のお話で、私ちょっとうっかりして違っているかもわからないのですけれども、上のほうでシカを殺したときにそこに埋めると言いましたよね。そうするとその人たちの技術はとても高いのに、埋めるのにとても時間がかかるということを言っていたんです。ですから、埋める人と撃つ人というのが2人組になっていったら、もっと効率がいいのではないかなということを感じました。

【石井委員長】 ほかに。

【小泉委員】 この小委員会では一貫して捕獲について意見を述べさせていただいています。その点からいきますと、知床報告の7ページの意見交換会概要を、大変興味深く読ませていただきました。それから、丹沢の6ページのワイルドライフレンジャーからのコメントというところも大変興味深く読ませていただきました。両者に一致しているのは、ライフルの10年規制というのを何とか考えてほしい。それから夜間発砲ということも考えてほしいということです。
実際に数を減らして生態系保全に貢献している最先端の現場の人たちから共通して上がっている意見ですので、この点警察庁の方は帰られてしまいましたけれども、「簡素化ができないか」と書いてあるところを見ると、1枚ものの書類を出せば通るというものでもないのかもしれないようなので、引き続き関係官庁と交渉をお願いしたいと思います。
以上です。

【三浦委員】 坂田委員に知床に行った感想を聞かせていただいて、私も同じく今度は丹沢へ行った感想として、シカについては個体群管理を確実にきちんとやれば、それ相応の被害の問題も、それから自然についても緩和できるということを確信しました。その際、問題点は多分2つあるんだろうということですね。基本的には、従来のこれまでのレジャーハンティング、狩猟と、それから地域に結びついたような被害、有害駆除というレベルを超えて、やっぱり新たなワイルドライフレンジャーといった、そういう枠組みをいかに創出していくのかということです。
もう1点は、多分これは丹沢を見ましたけど、環境行政としても非常に需要があるのだなというものは、将来国立公園の姿のお花畑か自然植生とかというのは、いかに保全管理、次世代へ残していくかということについては、やっぱり高標高域の個体群管理がいかにできるのかというところにかかっていると感じました。そのためのこれからの制度的な、あるいは組織的な整備が必要だと感じました。

【石井委員長】 よろしいですか。私は両方、いろんなことをほとんど知らずに出かけました。それで、特に知床で感じたのは、1つはやはり全体を俯瞰的に見て、どこに捕獲圧をかけていくとか、どのような成果が上がっているかというのを、全体を見渡して進行管理をするような仕組みというのが、環境省の担当者もまだまだ不十分なところがあるとおっしゃっていましたので、そのような仕組みをどうやって確立していくか。いろいろ試行錯誤をされているようですけれども、そこは洗練の余地があるなと思いました。
それから、捕られたシカの利用ですけれども、やっぱり利益を上げるというような仕組みにしていくのはとても難しい。だけれども、いろいろな管理のためのコストがかかっている、それを一定程度でもカバーできるような仕組みというのは、検討の余地があるなと思って見てきました。
それから、丹沢については、やはりきちっとシカをとれば、植生は、元通りに戻るかどうかわかりませんけれども、回復してきています。そういうのは知床でもあると思いますので、そのような成果を整理して、いろんなところで伝えていくというのが大事だと思いました。
あと、神奈川県の担当の方が言っていたのは、シカをとるというのは治山事業でもあるということです。コンクリートで堰堤を入れたりするのも一つですけれども、もっとソフトなやり方として、シカの個体数調整というのがあって、そういう意味でも公的な事業という色彩が強いことなのだという印象を受けました。
以上です。ほかに何か現地調査について、ご質問・ご意見等あればお願いしたいですけれども、よろしいでしょうか。

(なし)

【石井委員長】 ありがとうございました。それでは次に議題6番目になりますけれども、資料6、これまでの議論の整理について、これを説明お願いします。

【事務局】 それでは、資料6をご覧ください。こちらは、これまでの委員会や現地調査で、各委員からご意見をいただいたものを、5つに分類をしたものでございます。今後の議論をどのように進めていくかということで、さらにつけ加えていただくもの等々、ご意見をお伺いするためにまとめさせていただいたものでございます。
まず1点目でございますが、鳥獣の保護管理を担う法律として、鳥獣保護法はどうあるべきか、ということで、たくさんのご意見をいただいておりました。管理という視点が必要がある、国家戦略との関係、それから個体数も捕獲だけでは解決できないような問題もあるのではないかと、さまざまなご意見をいただいておりました。
2点目としまして、責任・役割分担を誰が持つか、関係機関の連携はどうあるべきか、という観点のご意見もあったかと思っております。国、都道府県、市町村の位置づけ、それから個体数調整と有害捕獲における国、自治体の責任と役割分担。特措法は市町村の支援の仕組みですけれども、都道府県が主体的にやっていくにはどうしたらいいか。それから、広域対策への国の関与ということに関し、ご意見があったかと思います。
それから3点目でございますが、鳥獣保護管理における公的な捕獲のあり方はどうあるべきか、ということでご意見をいただいておりました。公共目的の捕獲と、私的な目的の捕獲は、義務や制限が異なるべきではないかなど、今後、公共目的での捕獲という部分をつくるための仕組みがどうあるべきかについてご意見がありました。また、狩猟に公的なサービスとしての目的が生じてきたということであれば、今の法律の仕組みでいいのか疑問がある、公的捕獲の担い手という意味は「業」として捕獲を行う者に重点を置いた議論が必要、場所の問題について国立公園や鳥獣保護区等の「保護地域」におけるシカ等の捕獲のやり方、公的な捕獲のコスト等についてもご意見があったと思います。さらに、今このような状況になっていると、大変な状況になっているということを、しっかり国民に理解をいただくということが大事であるというご意見もいただいておりました。
4つ目としまして、やはり捕獲を効率的にするということで、どのような制度改革ができるかといったようなこと、効果的に捕獲すべきだというお話がありましたが、実は、こうして担い手が減っていく中でどうしていくか、今の法制度では対応できない点もできるようにすることも念頭にした議論が重要、というお話もいただいておりました。
最後の5つ目としてまとめましたのは、誰が保護管理に当たるというところで、地域で保護管理を進める人の確保や配置、地域で科学的・計画的な管理を行うための人材が必要、である、そういう意味では「業」としてやる人たちがいるのであれば、その人たちが地域の中で中心的に動いていくという役割もあるのではないかといったご意見があったかと思っております。
今後、こうした視点で議論を進めていきたいと考えておりますところ、さらにつけ加えるべき観点やご意見等についてご意見をお願いします。

【石井委員長】 どうもありがとうございます。この資料6の、今後議論すべき項目というところは、これからの議論の方向性を示したものになりますので、とても重要なのですけれど、ここで時間をかけて詰めた議論をするということはちょっと難しいので、特にお気づきのこと、ご意見の趣旨が違うとか、大きく落ちているようなところという意味で、お気づきのことがあればご指摘いただきたいと思います。それで、この後でも、もし何かお気づきのことがあったら、事務局のほうに連絡をいただくということで、とりあえず今はご意見何かあればお願いしたいと思います。

【羽山委員】 資料6の(1)のところですけれども、この法律自体は鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律なので、2つ並列で書かれて、いろいろ使われてきていると思うんです。前半の部分については項目出ししていただいているんですけれども、法律上の「狩猟」というのが、法定猟法により狩猟鳥獣の捕獲等をすることといって、非常に幅広に捉えられています。けれども実際には、これは捕獲の中に狩猟等と許可捕獲がある、あるいはその他の捕獲があるというのが、この法律自体の構成になっているので、やはり狩猟の適正化というよりも捕獲の適正化であって、やはりこの法律の狩猟の定義自体を根本的に見直す必要があるのではないかなと考えます。
以上です。

【石井委員長】 ほかに、お願いします。

【小泉委員】 資料6の(3)公共目的の捕獲のための仕組みについて、さらに議論が必要と思います。危惧する点が1点あります。当初特定計画と鳥獣被害防止計画は、それなりの整合性はとれているという説明をいただきましたけれども、鳥獣被害防止計画で市町村を単位として捕獲実施隊が選定されているということが、実質的に私的な、ないしは趣味で行う狩猟の延長が公共目的で実施されているのではないかということを危惧します。正統的に論じられるべき公共目的の捕獲の導入が、それによって阻害されるということがあってはならないと思いますので、引き続きこの点は鳥獣被害特措法との整合性について、関係官庁と意見調整をお願いしたいと思います。
以上です。

【石井委員長】 そのほか、いかがでしょうか。

【染委員】 確かに、ここに書いてあるのは、いろんな意味で出たご意見だと思うのですが、ただ、これはある意味ではただ並べている感じですよね。ですからそれぞれ個々に見れば、かなり矛盾した意見が並びで入っています。それをどのように解決して一つの方向に持っていくのかということを、本来十分考えていかなきゃいかんのだと思うんです。
そういう意味で申し上げるのですが、やはり個体数管理の問題、生息環境管理の問題、それと被害防除の問題、これ確かにバランスよくきちっとやっていくというのが大前提だと思うんですが、やはりそれぞれの時代の状況に応じてメリハリとバランスのつけ方というのは違ってくるんだと思うんです。そういう意味で、この辺同時並行的に書くのはいいのですが、ただ最終的な出口として、最後で同時並行というのはあり得ないと思うんです。やはりメリハリ、その上でバランスというのは、要は人間と動物とあるいはいろんな生態系が全体としてうまく調和したような世界をつくっていくという大目的が多分あるんだと思いますので、そこに向かってどのような政策が必要なのかというのを、もう少し詰めていかなければならないのではないかと思います。

【尾崎委員】 どこに入るかはよくわからないのですけれども、以前、有害鳥獣駆除の現場に立ち会ったことがあって、実際担当している方に聞きますと、対象は何かよく知らないというような安易な感じで参加されている方もいましたし、撃った後、何をどれぐらいとったかということもきちっと把握されていないような状況がありました。
先ほども丹沢のお話で、とったシカを埋めているというような話もありまして、人と鳥獣との倫理的な関わりということで、ただ撃ち殺して放っておいていいのか。やはりきちっと利用したほうがいいのではないかと私は思います。そうした倫理的な関係の部分を、どこかに盛り込む必要があります。

【坂田委員】 先ほど染委員から言われたことと同じようなことになるとは思いますけれども、やはり総合的にという話の中で、例えば農水省の方の話を聞いている中で、B/Cを高めることが必要だというご意見がありました。でも全部を総合的にということになりますと、例えば私が考えるに、被害対策の効果を一番手っ取り早く上げるなら、被害防止の直接的な策をやったらよくて、捕獲をしていたり、あるいはさらに生息地管理みたいな話をしていれば、全然当面のコストは上がらないわけです。だからそういう意味でも総合的にということは、総合的に取り組んでいこうということで、何年も前からそういうかけ声は出てきていますけれども、その中で今改善すべきところの焦点がどこかということを、きちっと絞るべきところがあるかなと思います。
その辺で、今のところ捕獲のことがかなりこの議論の中では出ていると思いますけれども、実際にこの鳥獣の保護の狩猟の法律自体が、管轄できる部分がやっぱり捕獲のところが一番大きくて、生息地管理とかそのような話になってくると、例えば法はどうあるべきかの中では、法の範囲の中かどうか難しいところが結構出てくると思いますので、その意味ではターゲットになることを絞ることも必要、総合的に考えることは、その中でのターゲットの絞り方だとは思いますけども、その労力なりをきちっと焦点を定めることが必要かなというふうに、私は思いました。

【石井委員長】 ほかにはいかがでしょうか。
それで、この今指摘されたことをつけ加えていただいて、項目の整理はされると思いますけれども、この後はこれを使ってどのような予定になっているか簡単に説明いただけますか。

【事務局】 この資料は先ほど委員よりご指摘がありましたとおり、議論を整理しておりますけれども、特に濃淡をつけているわけではございません。前回のヒアリングの際の意見なども踏まえて、次回、議論を深めていく論点を整理し、1回で恐らく全部の論点を議論することは難しいでしょうから、幾つかの論点ずつに分けて議論を深めていただき、まとめていきたいと考えております。次回、先ほどのご意見を踏まえて、論点としてお示しをしたいと思います。小委員会よりは少し早目にお示しをできるようにこれから準備をしていきたいと思います。

【石井委員長】 ありがとうございます。それで、あと1つ、まだご紹介いただいていない資料3の国家戦略の関連部分についてというのがあります。これ、どんな文書かだけ、ちょっとご紹介お願いします。中身については時間がないと思いますので。

【事務局】 資料3についてですが、第1回の委員会で、国家戦略には鳥獣保護管理で行っている重要な事項が掲載されており、これに対応できていない事項の検討が必要というようなご意見をいただいておりました。国家戦略には、具体的施策を記載しておりますが、本資料にゴシック体で書いている部分は戦略に記載されているものでして、それに対し、明朝体で書いている部分が、現在、農林水産省と環境省が取り組んでいる内容の進捗状況をお示ししたものです。今後の検討にご参考にしていただければと思います。

【石井委員長】 ありがとうございます。
委員の方々から全体を通じて特にコメントとかございますか。

(なし)

【石井委員長】 よろしいでしょうか。それではちょっと慌ただしいことになりましたけれども、意見交換はここまでということにしたいと思います。
それでは、以上をもちまして、本日の鳥獣保護管理のあり方検討小委員会の議事を終了したいと思います。ご協力ありがとうございました。では、あと事務局のほうでよろしくお願いいたします。

【事務局】 委員の皆様、本日は熱心なご議論、ありがとうございました。資料の不手際がありましたこと、申し訳ありませんでした。
次回の小委員会ですが、8月7日水曜日14時より行いますので、ご出席をよろしくお願いします。
なお、本日の資料はお持ち帰りいただいても構いません。次回ご持参いただくことも不要です。ご不要の方は机の上に置いていただければ、次回、そこに上がっておりますドッチファイルに綴じてご用意いたします。今後の小委員会の資料も順次追加していきますので、ドッチファイルは机の上に置いたままお帰りいただいても結構です。
本日はどうもありがとうございました。これをもちまして、本日のこの委員会を閉会いたします。