鳥獣保護管理のあり方検討小委員会(第2回)議事録

1.日時

平成25年6月10日(月)10:01~17:29

2.場所

環境省第1会議室(中央合同庁舎5号館22階)

3.出席者

(小委員長) 石井 信夫
(委員) 小泉  透 染  英昭 磯部  力
坂田 宏志 羽山 伸一 三浦 愼悟
(環境省) 伊藤自然環境局長
星野審議官
中島野生生物課長
堀内鳥獣保護管理企画官
江口総務課長
岡本調査官

4.議事

【事務局】 定刻になりましたので、中央環境審議会自然環境部会鳥獣保護管理のあり方検討小委員会を開催させていただきます。
本日の出席者でございますが、途中の出入りはありますが、委員11名中、福田委員が急遽欠席となり7名が出しており、「中央環境審議会議事運営規則第8条第5項」により定足数を満たしておりますので、本委員会は成立しております。
それでは、配付資料の確認をさせていただきます。資料1「北海道の説明資料」、資料2「長野県説明資料」、資料3「広島県説明資料」、資料4「大分県説明資料」、資料5、「鳥獣保護法の施行状況の検討にあたっての都道府県アンケート調査結果」、資料6が「大日本猟友会説明資料」、資料7「生物多様性保全法制度ネットワーク説明資料」、資料8「福岡県添田町説明資料」、資料9「宮川森林組合説明資料」、資料10「自然環境研究センター説明資料」、資料11「NPO法人若葉説明資料」です。
参考資料としまして、「鳥獣保護管理のあり方検討小委員会第1回における主な意見」をつけております。
配付資料に不備がございましたら、事務局にお申し出ください。
また、委員の皆様のお手元には、第1回小委員会の資料をつづったドッチファイルをお配りしております。会議の参考資料としてご使用ください。今後の小委員会の資料も順次追加していきますので、会議終了後は机の上に置いたままでお帰りください。なお、本日の資料はお持ち帰りいただいて構いません。次回持参いただくことも不要です。
本小委員会の資料及び議事概要は、後日、環境省のホームページにおいて公表いたしますことを申し添えます。
1点訂正がございます。参考資料の、「平成25年度第2回鳥獣保護管理のあり方検討小委員会における主な意見」というタイトルですが、「第1回」です。誠に申し訳ありませんが、訂正をお願いいたします。
それでは、石井委員長、よろしくお願いいたします。

【石井委員長】 おはようございます。ただいまから、平成25年度第2回鳥獣保護管理のあり方検討小委員会を開催いたします。
本日の議題は関係団体のヒアリングです。午後5時半まで、長丁場になりますけれども、よろしくお願いします。
たくさんの方に話を伺いますので、てきぱきとやらないと時間が足りなくなると思いますので、議事の進行にもご協力よろしくお願いします。
まずはそれぞれの分野の関係者の皆様から意見の聴取、それから質疑を行い、最後に委員の皆さんから感想、ご意見をお伺いするということにしております。
それでは、本日の議事の進め方について、事務局よりご説明をお願いします。

【事務局】 お手元に本日の関係団体ヒアリングのプログラムをお配りしております。北海道から順番に17時30分まで、長丁場ですが、よろしくお願いします。
本日は、地方公共団体、狩猟団体、自然保護NGO、農林業関係者、民間捕獲事業者、合わせて10団体からヒアリングを予定しております。地方自治体については、4者にご発表をいただいた後、事務局より都道府県アンケート調査結果をご説明の上、質疑を行うこととしております。そのほかの団体につきましては、持ち時間の前半20分でご発表をいただき、その後10分の質疑を行います。自然保護NGOについては、前半40分に3名の方からご発表をいただき、その後20分の質疑を行います。全ての団体からヒアリングを終えた後に、本日のヒアリングを踏まえた総括的な意見交換の時間として30分程度の時間をとっております。
以上が本日のプログラムの説明でございます。本日は、午前、午後にわたり長時間のヒアリングとなりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【石井委員長】 それでは、ヒアリングに入りたいと思います。
まず、四つの自治体からご発表をいただいて、それが全部終了した後に質疑を行うということが午前中の進め方です。
それでは、まず北海道、エゾシカ対策課の石島課長より説明をお願いします。

【北海道】 ただいまご紹介をいただきました北海道庁の石島と申します。
それでは、お手元の資料、「北海道におけるエゾシカ対策の現状と課題について」ということで、座って説明させていただきます。
それでは、資料1ページ目をご覧いただきたいと思います。
エゾシカの捕獲数及び農林業被害額の推移ということで、カラー刷りのものを載せてございます。それで、明治初期の状況も載せてございます。明治時代、北海道では、エゾシカの缶詰をつくったり、輸出をしたりということで、10万頭以上を捕獲する状況がございました。それで乱獲、それから大雪が2度ほどあって絶滅の危機に瀕したと、そういうことで、2度ほど禁猟政策、保護政策を行ってございます。
その後、個体数が回復して、昭和32年から、狩猟の一部解禁ということで進んできております。
それで、近年のシカ猟開始後の推移ということで、グラフ等を載せてございます。折れ線グラフ、これが農林業被害額ということで、過去、平成8年に50億円ほどの農林業被害額が出た時期がございます。その後、捕獲圧を高めて、農林業被害額が減少していきましたが、平成16年から、また再び増加している状況でございます。
それで、直近の平成23年度の農林業被害額、約64億円。それから捕獲頭数13万5,000頭ということで、いずれも過去最高の状況になってございます。
次に、資料の2ページ目をご覧いただきたいと思います。エゾシカによる各種被害の状況ということで、農林業被害の全道の状況を載せてございます。ご覧のとおり、ほとんどが農業被害ということがおわかりかと思います。
次に、地域別のグラフも載せてございます。東部、西部、南部という形で、北海道は三つの区域に分けてございます。東部は、これはオホーツク、釧路、根室、十勝の4振興局管内を東部地域と言ってございますが、こちらのほうの農林業被害額、23年直近の被害額で40億円ほど出ています。西部地区、こちらのほうは7振興局管内ですが、24億円と。南部はごくわずかということで、東部と西部を合わせて約64億円の農業被害額が出ているというのが現状でございます。
平成23年度の農林業被害額、振興局別に見ても、日高、根室、釧路、十勝、このような振興局が非常に多い状況になってございます。
作物別の被害割合ということで、牧草が半分以上。そのほか、ビート、水稲、ばれいしょ、何でも食べるという状況でございます。
農林業被害以外のものは何かということで、交通事故の件数を載せてございます。物損事故がほとんどでございますが、平成23年では2,300件程度。それからJRの運行支障件数、これは2,600件。それから、希少な高山植物の食害、こういうものもございます。それから、市街地への出没ということで、いわゆるアーバンディアと言われておりますが、住宅地へ侵入してきて、新たな問題が発生しているという現状でございます。
次、3ページ目をご覧いただきたいと思います。保護管理計画対象区域の変遷ということで、北海道としては、積雪の少ない道東のほうでエゾシカが多く繁殖をして、平成9年度に、道独自の任意計画ということで、「道東地域エゾシカ保護管理計画」というのを策定した経過がございます。そして、平成11年に鳥獣法の改正によりまして、特定鳥獣保護管理計画策定制度、その創設に伴って、北海道として、平成12年度に第1期の「エゾシカ保護管理計画」を策定した経過がございます。その後、第2、第3、第4期ということで、昨年、第4期の計画を5年計画でつくった経過がございます。対象地域も全道に拡大をしている状況でございます。
資料の4ページ目でございますが、第4期保護管理計画の概要と個体数管理の実行方策ということで、資料1には第4期計画の概要を載せてございますので、後ほどご覧いただければと思います。
次に、第4期計画の主なポイントでございますが、[2]番目に書いてございますが、5年後の具体的目標を地域別に設定をしている状況でございます。平成23年度の全道のエゾシカの推定生息数、約64万頭と言ってございます。東部地域が27万頭、西部地域が37万頭ということで、合わせて64万頭。そして、5年後、平成29年3月末までに、東部地域27万頭のものを10万頭まで下げていきたいと。それから、西部地域は、37万頭のものを28万頭まで下げていきたい。合わせて38万頭まで下げるような形で計画を策定してございます。
次、二つ目の個体数管理の推進ということで、エゾシカ緊急対策期間の設定。道のほうでは、ご説明したとおり、農林業被害額が60億を超えています。それから、推定生息数も60万頭を超えているということで、平成22年から24年までの3年間、緊急対策期間ということで捕獲対策を強化した状況がございます。例えば、狩猟についていえば、規制緩和措置。そして許可捕獲。市町村が行う許可捕獲については、財政支援、そういうものをやりながら捕獲対策を強化してきた経過がございます。
その結果、ある程度生息数には高止まりという現象が少し見られて、ただ、農林業被害額が一向にして減らないということで、平成25、26年度の2年間、緊急対策期間を延長している経過がございます。
それで、一番下に、捕獲対策、「○「狩猟」による捕獲圧の調整」というふうに書いてございますが、今言ったのは、狩猟の規制緩和の内容でございます。それで、狩猟期間、10月1日~3月31日までとなってございますが、従前は10月下旬からという状況でございましたが、10月1日に前倒しをして、狩猟期間の延長などを行ってございます。
それから、1日当たりの捕獲頭数。これはオスについては、10月、11月の2カ月間については捕獲制限を撤廃してございます。そしてメスについては、平成16年度以降、無制限で捕獲を認めている、このような狩猟規制緩和措置を講じてございます。
資料の5ページ目をご覧いただきたいと思います。次は、許可捕獲の支援のことでございますが、二つ目の○、捕獲環境の整備及び許可捕獲等への支援ということで、市町村への財政支援として地域づくり総合交付金、22年度から緊急対策期間、をやってございますが、例年5,000万ほど市町村への助成を行ってございます。主に捕獲経費ということで助成をしてございます。
それから、一斉捕獲推進月間というのを昨年度設定してございます。これは、3月を推進月間として、エゾシカが一番餌がなくて弱っている状態、そのときに、近隣の市町村が連携をして広域的に捕獲する一斉捕獲、こういうことをやることによって、シカは移動する動物ですから、近隣の市町村へ移動したとしても、日程を調整することによって一斉捕獲ができるということで効果を上げている事業がございます。
それから、担い手の確保。これは全国的な問題なのですが、狩猟者が減少しているということですから、狩猟免許試験を受けやすい環境づくりということで、これまで狩猟免許試験、年2回程度だったものを年4回に増やしております。それから、農作業の少ない農閑期の開催、休日の開催など、受けやすい環境づくりということをやってございます。
それから、狩猟免許出前教室、研修会の開催ということで、免許を初めて取る方に、鳥獣法の解説とか、そのような研修会を開催してきた経過がございます。
それで、グラフに見るとおり、平成22年、23年の新規の免許取得者の推移を見ていただくと、このような形で増加している状況がございます。
次、「○計画的捕獲(カリング)体制の検討」。計画的な捕獲、カリングと言ってございますが、この体制整備を図っていきたいと考えてございます。
それから、法律で禁止されているサイレンサー付小口径ライフルによる、タワー式のシャープシューティングの検証試験、これも環境省からの予算をもとに、北海道では実証試験を行ってございます。小口径ライフルということですから、通常のライフルと違って音が小さい。それにサイレンサーをつけて、いわゆる捕獲しやすい環境でやると。このようなことも、別添資料2で概要をつけてございますので、後ほどご覧いただきたいと思います。
次、6ページ目でございます。有効活用の関係でございます。
捕獲が13万5,000頭とられてございますので、ただごみにするだけではなくて、貴重な自然資源ということで、北海道では平成18年に「有効活用のガイドライン」、それから衛生部局と連携をして「衛生処理マニュアル」、こういうものを策定してございます。
皆様ご承知のとおり、と畜場法上、シカについては、検査をすべき獣畜には該当してございませんので、事業者が判断して出荷をするという形になっておりますので、この辺は衛生部局と連携をして、衛生処理マニュアルを策定して、事業者、保健所と一緒に事業者を回って、監視・指導なども行ってございます。
それから、「シカの日」の設定ということで、四角で囲ったところですが、毎月第4火曜日をシカの日。語呂合わせで「4火=シカ」という。それで、エゾシカ肉を提供する飲食店や食肉販売店をシカの日登録参加店ということで、登録をして、月に一回、第4火曜日はエゾシカ肉を食べようじゃないかと、そういうイベントも北海道としては行っている現状でございます。
グラフがございます。全道のエゾシカ食肉処理施設の推移ということで、これは食品衛生法上の食肉処理業の施設数でございますが、年々増加してございまして、90施設ほどございます。
それから、エゾシカ処理頭数の推移ということで、これも年々増加してございまして、平成23年度、約1万9,000頭が食肉流通している実態でございます。これはあくまで自家消費を除いて市場流通した頭数でございます。捕獲頭数が13万5,000頭のうちの1万9,000頭ということで、14%程度しか利用されていないというような現状でございます。
それで、ちょっと細かい話になりますが、エゾシカからは、大体肉として20kg程度とれるということで、1万9,000頭であれば、380t程度が市場流通したのではないかというふうに推定をしているところでございます。
資料の7ページ目をご覧いただきたいと思います。先ほどご説明をしました約13万5,000頭の内訳でございます。
シカ自体がハーレムを形成する動物でございますので、メスを多く捕獲をしなければならないということで、平成23年度は、メス8万頭以上を捕獲している状況でございます。
それから、狩猟と許可捕獲の割合でございますけど、ほぼ同じ程度で、狩猟による捕獲6万7,000頭。市町村の許可捕獲6万8,000頭。合わせて13万5,000頭の捕獲実績があると。
その結果、推定生息数のグラフが載せてございますが、初めて65万頭から64万頭に減ったという経過が出てございます。
資料の8ページ目をご覧いただきたいと思います。これも全国的な問題だと思います。担い手である狩猟者の減少と高齢化。
それで、北海道も、昭和53年をピーク時として、2万人いたものが、今現在1万人程度となってございます。50歳以上が7割と、このような現状です。それから、毎年やっていただく狩猟者登録、これも、今現在、道内ハンター6,000名、道外ハンター2,000名で、合わせて8,000名で13万5,000頭を捕獲していただいているというのが現状でございます。
次に、資料の9ページ目、最後になりますが、「狩猟」に係る課題ということで書いてございます。エゾシカ猟に対する魅力の低下と、いろいろ書いてございますが、まずは許可捕獲、市町村への許可捕獲の優遇措置による差別感。市町村が行う許可捕獲の場合には、捕獲奨励金を支出してございますので、こういう部分でもちょっと課題としてございます。
そして、三つ目の○で、捕獲従事者の確保と捕獲経費の負担軽減が困難ということで、他の市町村の狩猟者がほかの狩猟地に入る、そういう受け入れに対する拒否感、こういうものも見られるということがございます。先ほど、捕獲奨励金のお話をしましたけど、市町村格差が高いと。それで、北海道の場合は大体1頭当たり3,000円~5,000円が平均単価でございます。高いところでは、1頭当たり2万円という地域もございますので、このような市町村格差があるもので、課題としてございます。
次の○で、実効的な計画的捕獲(カリング)体制の整備がなかなか進まないと。それで、エゾシカの適切な保護管理のための計画的な捕獲を実行する体制及び人材がいないということで、やはり地域には、地域の生息環境をわかっている人材がいなければならない。そういうことで保護と管理、ワイルドライフ・マネジャー的な人材が今後必要なのかなと思ってございます。
そして、スマートディアの発生ということで、北海道も過去に例がないぐらい13万5,000頭をとって、24年度もそれを超えるだろうとは思われますが、強い捕獲圧の継続によって警戒心の強いシカ、スマートディアが発生していると。鳥獣保護区に逃避していることがございます。銃器による捕獲ができない日没後に出没する傾向が高くなっているということでございます。
次、8番目、エゾシカ対策条例の検討ということで、北海道では、将来にわたって道民とエゾシカの共存・共生を図っていくための枠組みとして今検討をしているところでございます。資料3に、「エゾシカ対策条例の検討について」というのを載せてございますので、後ほどご覧いただきたいと思います。
それで、時間がごくわずかになってきましたので、最後の資料、参考資料3を見ていただきたいと思います。
これは、北海道知事名で、環境省に対する要望書ということで、先週の6日に、環境生活部長から、環境省自然環境局長宛てに手交をした要請文でございます。こちらのほうを見ていただきたいと思います。
一つは、二つ目の段落で、夜間捕獲を可能にするなど新たな枠組みを鳥獣保護法の規定をしていただきたいと。ちょっと説明が長くなるので省略いたしますが、参考資料2ということで、今年の3月に、私どもが環境省にお邪魔をして、こういうような条件であればいかがなものかということで、法律改正に当たって一つ検討材料にしていただきたいということを、資料として添付させていただきました。
次に、3段落目ですね。3行目に、「個体数調整における狩猟の必要性や狩猟者の役割を法律で明確化」していただきたい。これはどういうことかというと、狩猟はもはや個人のレジャーではないのですね。個体数調整の貴重な担い手として重要な地位を築いている、このいうような状況がございます。それで、北海道、13万5,000頭のうち個人の趣味による狩猟が半分ということを考えますと、今後、業として、なりわいとして、捕獲会社が北海道としても3カ所程度できていますので、そういうものを法律できちっと明確化することによって、一歩前に前進するのかなと思っておりますので、狩猟者の位置づけをしていただきたいと思ってございます。
それから、最後の4段落目でございます。「個体数調整を推進するための新たな制度の創設」、これはどういうことかといいますと、現行の狩猟と許可捕獲、この二つの制度を中心とした捕獲対策では、もう限界なんですね。頭打ちの状況でございます。それで、都道府県が行政目的、いわゆる公共目的として捕獲できる体制整備、そういうものをきちっと構築していかないと対応できない、そのような状況と思ってございます。
それで、鳥獣保護法も、主な法律の目的が鳥獣保護ということでございますから、今後個体数調整の体制や資源活用、そういうものも視点として入れていく必要性があるだろうと。今後は、その鳥獣の保護と管理、それを組み合わせた法律体系の抜本的な改正をお願いしたいということで、説明を終わりたいと思います。
以上でございます。

【石井委員長】 ありがとうございました。
それでは、続きまして、長野県森林づくり推進課野生鳥獣対策室の宮室長、お願いいたします。

【長野県】 ご紹介いただきました、長野県林務部森林づくり推進課野生鳥獣対策室長の宮と申します。
それでは、私のほうから、長野県の野生鳥獣保護管理の状況等について、できる限り説明をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。座って説明させていただきます。
表紙の次の辺りに目次というページがございますので、ご覧ください。このような順番で進めさせていただきますので、よろしくお願いします。
それでは、1ページをご覧ください。長野県における野生鳥獣の農林業被害の状況につきましては、ここに直近5年間のグラフをお示ししてございます。平成19年には約17億円以上の被害がございましたけれども、5年たって、23年には14億円強と、長期的には少しずつながら農林業被害額は減少しているといった傾向にございます。
下の棒グラフは鳥獣別の被害でございますが、ここにはちょっと記載してございませんけれども、20年前は、カモシカによる被害が大体29%、ニホンジカによる被害が10%という程度でございましたが、23年度のところを見ていただきますと、ニホンジカによる被害が38%に増えて、カモシカの被害は7%に減少しているといった状況でございます。
また、クマやイノシシの被害も、20年前に2%~3%ぐらいであったものが、現在は12%程度ということで、全体の割合が増えているといった状況でございます。
ニホンジカの被害も、この下のグラフの一番下の項目でございますけれども、ここ数年減少しているということで、個体数が相当増えている中で被害を減らせているということは、保護管理計画に基づきまして、防護柵の設置あるいは相当数の個体数調整、これらを進めてきた成果ではないかと考えているところでございます。
2ページをご覧ください。野生鳥獣の捕獲状況でございます。
長野県では、特に個体数が激増しているニホンジカの捕獲対策を進めているところでございます。真ん中の表の右側一番上の23年度、2万7,167頭という捕獲を行っております。内訳は、狩猟が7,000頭、個体数調整が2万頭という割合になっております。
この真ん中の表の3行目のクマにつきましては、年によって集落への出没状況が大分異なるということで、大量出没の年には、特に有害鳥獣駆除で捕殺される頭数が増えているといった状況でございます。
3ページをご覧ください。特定鳥獣保護管理計画の実施状況でございます。
長野県では、ご覧のように、特に保護管理や被害対策が求められているカモシカ、ニホンジカ、ニホンザル、イノシシ、ツキノワグマ、五つの獣について計画を策定しているところでございます。
2の特定計画の全体計画という下のほうの表でございますけれども、基本的には策定前年度に生息状況等の調査、被害状況も含めて、調査を実施しまして、その翌年度に検討委員会を設けて計画を策定するといった形で、計画のとおり進めているところでございます。
それでは、保護管理計画ごとに、かいつまんでポイントを説明させていただきます。
4ページをご覧ください。カモシカの保護管理計画の概要ということでございます。
4の(1)の(イ)でございますが、カモシカの生息個体数、個体群ごとの生息頭数は、安定している状況でございます。
5の保護管理方法といたしましては、被害防除を優先するということを基本にいたしまして、5ページのほうをご覧いただきたいんですが、特に必要な地域では制限を加えた上で、個体数調整を捕獲計画を立てて実施しております。この結果、カモシカの個体数は安定的に推移しながら農林業被害は減少しつつあるといった状況と言えるものと考えております。
6ページをお願いいたします。ニホンジカの保護管理計画の概要でございます。
一番下に記載した表をご覧いただきたいのですけれども、三つ目の項目、生息頭数でございますが、5年ごとの調査を行うたびに、3万1,500頭、6万2,000頭、10万5,000頭ということで、大幅に生息頭数が増えているといった状況でございます。
そこで、保護管理計画では、ニホンジカの個体数調整を徹底的に行うということで、1の(2)のところに記載したとおり、年間3万5,000頭の捕獲を目標に取り組んでいるところでございます。このため、2の(1)の個体数調整につきましては、市町村ごとに捕獲目標を設定したり、メスジカの捕獲報奨金を増やしたり、くくりわな等の効果的な捕獲方法の推進を図るということを行っております。
また、(2)狩猟では、下の表の右側に記載してございますが、狩猟期間の延長、あるいは、くくりわなの径や、1日当たりの捕獲頭数の制限などについて規制緩和をしているところでございます。
ここには記載してございませんが、これまで、1期、2期の計画では、狩猟規制緩和による捕獲増を期待しておりましたけれども、先ほどもお話がありましたが、捕獲の担い手の高齢化や減少といったことで、狩猟による捕獲の伸びに限界が見えてまいりましたので、第3期の計画では個体数調整に軸足を移しまして、市町村が計画的に捕獲を推進する体制をつくっていくということにいたしました。
そこで、県の捕獲目標値を市町村ごとに割り振って、平成23年4月に、全市町村へ説明会を実施いたしまして、市町村ごとの捕獲目標の年次計画を策定していただきました。また、市町村の年次計画においては、効率的な捕獲方法であるくくりわなの捕獲をしっかり位置づけていただいて、くくりわな捕獲の研修会、あるいは指導のDVDの作製などを行って、くくりわなが主軸になるように体制を整備したところでございます。
あと、この年次計画の策定に当たりまして、メスジカの報奨金を拡充いたしまして、市町村、捕獲団体の協力を得ながら、23年度は目標の2万5,000頭をクリアして2万7,000頭の捕獲が達成できたところでございます。
7ページをご覧ください。ツキノワグマの保護管理計画でございます。
上段右の表のように、県全体では生息頭数はやや増加も見られて、安定している状況でございますが、表の下のほうの南アルプス、八ヶ岳などでは個体数の減少が見られるということで、捕獲数の制限により、安定的な個体維持を図っております。
具体的には、2の(1)に記載しましたとおり、捕獲頭数は、狩猟による捕獲も考慮した上で、年間概ね150頭を上限としているということで、八ヶ岳個体群などでは狩猟の自粛も要請しているところでございます。
しかしながら、(2)のところでもございますけれども、平成22年、このほかにも18年、24年など、集落等への大量出没があった年につきましては、人身被害回避ということで、やむを得ず有害駆除による緊急捕殺が増えるといったことで、捕獲数が大幅に計画を上回ってしまっております。なお、その翌年度には、前年の捕獲数を考慮して、捕獲数の上限を下げているといった措置もしているところでございます。
8ページをご覧ください。近年、里山がクマの生息域となっているということがございますので、3の(1)でございますが、対策として、クマの誘引物を排除する。それから、人の生活圏への出没が制御できない個体のみを捕殺して、それ以外は放獣ということを原則として取り組んでおります。
(2)のとおり、伝統的な狩猟の重要性、捕獲圧も必要だということで、「春グマ猟」につきましても、一部地域のみで認めているところでございます。
また、(3)の実行体制につきましては、県下4ブロックごとに、専門家によるクマ対策員を配置いたしまして、対策についての指導を行って推進しているところでございます。
9ページをご覧ください。ニホンザルの保護管理計画です。
3の推定生息数でございますが、平成20年の段階で約130~190群、7,100頭~1万300頭ほどの生息頭数で、5年前に比べて、推定生息数はほぼ横ばいといった状況でございます。
4の基本目標でございますけれども、サルの場合は、やみくもに捕獲しても被害は減らない。かえって状況を悪化させるというおそれもございますので、関係者が協力して、群れごとの被害の状況や出没、行動などの情報を共有化して、加害の程度に応じた対策を講じております。その際の加害レベルの判定と、それに応じた被害対策は、10ページに表がございますが、ここでレベル1~レベル4がありますが、こういった形で取り組んでおります。
なお、11ページの方には、生息の分布状況等を示してございますので、また参考にご覧いただければと思います。
12ページをお願いいたします。イノシシの保護管理計画でございます。
イノシシについては、有効な方法がないため、生息頭数を推定することが困難といった状況でございますが、13ページを見ていただきますと、地図が三つございますが、これは年代別に移っておりまして、生息域が、かつて南部中心だったものが、ほとんど高山帯を除いて全県に広がっているといった状況でございます。
12ページに戻っていただいて、5のところの主なポイントでございますが、イノシシについては繁殖力が強いため、生息頭数の管理といった考え方では被害を軽減することが難しいといったことで、(1)出没しにくい環境の整備、(2)防護柵を主体とした被害防除、(3)加害個体の捕獲を組み合わせた集落ごとの特性に応じた対策を講じておりまして、狩猟期間の延長やくくりわなの径の規制緩和など、狩猟による捕獲圧も強化しているところでございます。
14ページをご覧ください。
以上、五つの特定鳥獣の保護管理計画のポイントを説明させていただきましたが、現在一番大きな課題になっているのは、ニホンジカの捕獲対策でございます。14ページに、その概要ということで記載させていただきました。
1の捕獲の状況及び計画でございますけれども、長野県では、24年度、25年度には、年間3万5,000頭のニホンジカの捕獲を目指しており、24年度については、正確な数字は固まっておりませんが、ほぼ目標近くの捕獲が達成できたと考えているところでございます。
しかし、特に出産前、6月までにメスジカの捕獲をするというのが有効でございますけども、くくりわなによる捕獲が主体となってきた中で、メスを優先的に捕獲するといったことが困難なため、メスジカの捕獲目標2万6,000頭といったのを実現するのは難しいといった状況でございます。
捕獲の推進体制は、2の下段のほうに記載しました五つの項目に取り組んでいるところでございます。これの概略をちょっと説明させていただきます。
15ページをご覧ください。その一つが、集落ぐるみの捕獲推進でございます。
平成24年4月から有害鳥獣捕獲の許可基準の緩和ということで、狩猟免許を有する者の指導の下で、狩猟免許を有しない者が補助者として捕獲に参加するといったことが認められたことを受けまして、集落リーダーを中心といたしまして、農業者や狩猟者で「集落等捕獲隊」というものを編成いたしまして、集落ぐるみで有害鳥獣捕獲を推進しているものでございます。
図は、県内の市町村の配置図、77市町村でございますが、赤丸で示した34の集落でこの集落等捕獲隊が設置をされておりまして、下のほうの表でございますけれども、24年4月~翌年1月までニホンジカ296頭、イノシシやサルなど、その他鳥獣の794頭が捕獲されているところでございます。
16ページをご覧ください。二つ目として、「広域捕獲隊」の取組でございます。特にニホンジカの生息密度が高い地域、自然環境への影響が大きい地域ということで、10地域の重点捕獲地域を図のように設定いたしまして、長野県が熟練指導者と新規ハンターを雇用いたしまして、「広域捕獲隊」を編成して、地域の市町村や猟友会支部を横断した捕獲活動を行っているということでございます。
表の一番下でございますが、24年度に2,468頭の捕獲を実施したところでございます。なお、この事業は、緊急雇用創出基金を活用いたしまして、平成24年度約6,000万、25年度約1億円ということで、長野県で猟友会に委託して進めているところでございます。ただし、26年度以降、緊急雇用基金の財源がなくなりますので、新たな対応について、ぜひ国にお願いしたいと考えているところでございます。
次に、17ページをご覧ください。他県あるいは環境省、林野庁との連携による捕獲でございます。
図に表示しました6カ所の県境、国立公園、それから国有林内などについて、関係機関が連携して捕獲推進の取組を行っているところでございます。しかしながら、それぞれの地域には特性がございまして、取組には温度差もありまして、なかなか効率的な捕獲を挙動するところまで行かないといった実態もございますので、今後、国のさらなるリーダーシップをいただいて、連携した取組が一層推進されることを期待しているところでございます。
次に、18ページをご覧ください。長野県では、部局横断により野生鳥獣対策の推進に取り組んでおります。この長野県野生鳥獣被害対策基本方針というのを共通認識と定めまして、連携した統一的な取組を進めているところでございます。
内容については、この後説明する内容とも若干重複いたしますので、後ほどご覧いただければと思います。
20ページをご覧ください。被害対策の実施体制を図示してございます。多分どこの都道府県でも似たような仕組みがあるかと思いますけれども、図の左側に県庁でございますが、これは、野生鳥獣被害対策に関係する各部局が連携いたしまして、野生鳥獣被害対策本部を設置するとともに、右側でございますが、県内10カ所にある現地機関にやはり部局横断の野生鳥獣被害対策チームを設置してございます。
その下側、中ほどでございますが、野生鳥獣被害対策支援チーム、これは林務部、環境部、農政部及び大学などの試験研究機関の専門家が連携いたしまして、助言・指導を行うチームでございまして、これが地域ごとのチームの支援・指導を行っていくというシステムになっております。
このような体制によりまして、下段にあります被害集落ごとに、市町村や集落ぐるみで行う総合的な被害対策の推進を計画的に、地域に入って一緒に考えて、指導をしつつ取り組んでいるところでございます。
21ページをお願いいたします。野生鳥獣被害対策の本年度の取組を紹介させていただきます。
部局連携の被害対策として、四つの柱を挙げて取り組んでいるところでございます。一つは捕獲対策。二つ目が防除対策。三つ目は生息環境対策。四つ目にはジビエ振興対策でございます。内容については、時間もございませんので、ご覧いただければと思います。
22ページをご覧ください。平成25年度の長野県の野生鳥獣被害対策予算の一覧でございます。各事業の頭に丸で囲った印がございますが、これは、欄外に示しましたが、所管する各部局を示したものでございます。合計欄で7億3,821万5,000円の予算となっているところでございます。
次に、23ページをご覧ください。野生鳥獣被害対策推進における課題と現状の対応についてということで、考えられものを整理してみました。
一つには、有害鳥獣捕獲の担い手不足の問題でございます。猟友会の高齢化、減少ということで深刻化しているという中で、どうやって担い手を育成していくかというようなことが問題となっておりまして、効率的な捕獲の推進に向けた技術伝承、担い手の裾野を広げる研修会、以下、そこに記載したようなことを進めているところでございます。
二つ目は、猟友会の縄張り意識の改革でございます。もともと猟友会は旧市町村単位に支部がございまして、それぞれ縄張り意識があることから、他の支部との連携・協力による捕獲といったことがうまくいかないといった実態もございます。これを打ち破って、多くの人が連携して、捕獲の目標達成に向けていくという意識を醸成していくことが必要ということで、広域捕獲隊や効率的な捕獲の推進という技術伝承などを通じて意識改革に取り組んでいるところでございます。
三つ目は、低密度地域での生態系保全対策ということでございます。特に北アルプスではシカの生息数が増えつつございまして、南アルプスや八ヶ岳などのように、高山植物を含めた自然生態系への影響が深刻になるといったことが予想されますが、現状は生息密度が低いため、効率的な捕獲が困難で、防除が難しいといった実態がございます。
四つ目は、有害鳥獣捕獲の個体の処分でございます。長野県では、23年度に2万7,000頭のニホンジカを捕獲いたしましたが、ジビエとして活用利用をしたものは5%の1,500頭弱ということでございます。いろんな問題があってなかなかできないと、ここに記載したとおりでございますが、県では、信州ジビエ研究会という、民間の方も一緒になって考える組織をつくりまして、今年はジビエの認証制度、ブランド化ということで取り組んでいこうとしているところでございます。搬出あるいは処理加工施設への国のご支援をお願いしたいと考えているところでございます。
24ページ、ここでは法律の関係をちょっと比較させていただいてございます。今後の課題として、下の枠でございますが、どうやってこういう体制をうまくコーディネートしていくかということが課題となっているところでございます。
最後に、25ページをご覧ください。長野県知事から、5月21日に各機関に要望をさせていただいた内容を紹介させていただいてございます。
一つは、広域的に移動する大型鳥獣などについて、国の保護管理対策をお願いしたいというところでございます。それから、17ページでも申し上げましたが、地域の特性もあって、なかなか進まないという県境などでの対応をお願いしたいということでございます。
2項目は、農水省及び林野庁への予算の確保の要望でございます。
三つ目は、捕獲者確保・育成のための養成経費、射撃場や訓練施設への支援策をお願いしたいといった内容でございます。
以上、駆け足で誠に申し訳ございませんでしたが、長野県の野生鳥獣被害対応の状況ということで説明させていただきました。どうもありがとうございました。

【石井委員長】 ありがとうございました。
それでは、続きまして、広島県自然環境課の菅原課長、お願いいたします。

【広島県】 ご紹介いただきました広島県自然環境課長の菅原と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
本日はパワーポイントを使ってご説明をさせていただきます。事前にお手元に資料をお配りさせていただきましたけれども、若干内容が変わっておりますので、こちらのスクリーンのほうをご覧いただきたいと思います。では、座って説明をさせていただきます。
これは、野生鳥獣の生息の現状になります、広島県の森林の分布のほうをお示ししております。
広島県は、森林率が全県の72%になっております。こちらの凡例のほうに樹種を書いておりますけど、青、黄緑色はスギ、ヒノキ、それから赤色はアカマツ、それから黄色は広葉樹ということで、人工林は主に県の北東部、それから北西部に偏って存在している。そして、沿岸部と中央部にはアカマツが非常に広範に分布しています。しかし、このアカマツについては、松くい虫被害によってどんどん枯れてきておりまして、現在は、シラカシとかコナラといった堅果類で混交林化したり、あるいは、既に置き換わったりといったふうになっております。
資料を今用意しておりませんけれども、年間の平均気温が、大体沿岸部が15℃~16℃。それから県北に参りますと、ここら辺りで11℃ということで、県北のほうは青森県と同じぐらいの気温条件というふうになっております。また、年間の降水量も、南部のほうが年間1,200mmぐらい、北部のほうへ行きますと倍の2,400mmぐらいということで、かなり多様な気象条件になっているというところでございます。
本県におきましては、イノシシ、ニホンジカ、ツキノワグマ、3種につきまして、平成15年度から特定鳥獣保護管理計画を策定しております。本日は一応イノシシ、ニホンジカを中心に説明をさせていただきまして、時間があれば、ツキノワグマについても説明をさせていただきたいと思っております。
まず、イノシシについてでございます。イノシシ捕獲データに基づいて分布状況を示したものでございます。一応捕獲頭数によって密度を示しておりますけれども、沿岸・島嶼部で非常に多くの生息が確認できているという状況にございます。また、分布については、もうほとんど全県に分布しているという状況です。
これは、市町別の耕地面積当たりの被害率を示しております。先ほど生息密度が多いと言いました南部のほうで、被害率が高い市町が出ております。また、県北の北東部でも被害率が高いという傾向が出ております。
次に、農作物の被害面積でございますが、これはトータルの数字で、これが果樹、そして水稲ということで、広島県の場合は果樹が特徴的なものになっております。果樹は主に沿岸・島嶼部で栽培されておりまして、ここが非常に最近被害を受けているという状況になっています。
次は、被害金額と捕獲数の関係を示したものでございます。平成20年ぐらいまでは、捕獲数が増えますと被害額が下がる、あるいは捕獲数が下がると被害額が増えるというような関係が見えていたのですけども、近年は、捕獲数が増えるのにもかかわらず、被害金額は高止まりした状態にあるということになっております。
次は、どういった猟法によってイノシシが捕獲されているかというグラフでございます。平成15年以前は銃猟による捕獲が多かったのですが、最近はわな猟による捕獲が非常に増えてきている。これは、農家の方が自ら狩猟免許を取得されて、わなによって捕獲する、そういう事例が増えているということでございます。
次に、特定計画の概要でございますけれども、計画の策定目的としましては、個体数の安定的維持と被害量の軽減ということを掲げております。
それから、管理の目標でございますけども、農業被害を中心とした人間活動とのあつれきを軽減する。個体数管理をしっかりと実行していくということを掲げております。
具体的な取組でございますけれども、数の調整に関する事項につきましては、捕獲目標数、これは「参考値」と書いております。といいますのも、イノシシについては、生息頭数などの情報がございませんので、過去の捕獲実績等を参考に、2万頭以上を捕獲していくという計画にしております。
それから、生息密度の低減を目指すということで、狩猟期間の後ろのほうを2週間ほど延長しまして、2月末までというふうにしております。
それから、くくりわなの規制がございますけど、これについては解除をするとしております。
あとは、担い手である狩猟者の確保、それから技術の向上ということについて述べております。
その他保護管理のために必要な事項としまして、集落ぐるみでの被害防除対策、モニタリング調査に基づく計画の検証ということで、これについては具体の内容を後ほど説明させていただきます。
次に、ニホンジカについて説明をさせていただきます。
これは、平成14年度段階のニホンジカの本県における分布状況を示したものです。ここに山陽新幹線と山陽自動車道が通っております。ここを境に、北側の個体群と南側の個体群、二つの個体群が広島にはございます。こちらを白木山系地域個体群、こちらを竹原地域個体群というふうに呼んで、それぞれに管理区域を設定して、個体数管理を実施している。ちなみに、宮島にもシカはおりますけれども、一応ここは対象外として計画を立てております。
これは、平成19年度のシカの分布状況です。これを見ていただきますと、東側の部分、それから、これは中国縦貫道ですけども、これを越えた部分に生息範囲が拡大しているというのがおわかりいただけるかと思います。また、南部のほうにも若干広がってきているという状況です。
それが、平成23年~24年にかけてのデータを見ますと、今度は東のほうにかなり分布が広がっている。一部は、もう既にここで県境を越えて、島根県のほうにも進出しているという状況がございます。
ニホンジカによります農作物被害の面積でございます。これはトータルの数字ですけども、水稲に被害が非常に目立っているという状況で、野菜のほうもございましたけれども、今はもうほとんど水稲の被害という状況になっております。
ちょっと話が戻るのですけども、先ほどのシカの分布のところで、ここの部分をちょっと注目していただきたいんですが、白木山地域の個体群の真ん中、生息域の真ん中、これは芸備線というJRのローカル線が通っておりますけれども、次の被害の関係の説明のときにここの状況を説明させていただきたいと思いますので、ここを少し頭の中に置いておいていただければと思います。
これは先ほど説明したとおりでございます。
ニホンジカによります被害の金額と捕獲数の関係でございます。シカについては、捕獲数はずっと増えてきているのですけども、金額のほうは、捕獲数と連動するように増えて、今、高止まりといった状態になっておりまして、捕獲圧が被害の防止につながっていないという状況になっています。
これは林業に関する被害でございます。林業に関してはほとんど被害がないというふうになっておりますが、これは現在侵食がほとんど行われていない、要は加害対象がないということで被害が出ていないという形になっております。ただ、成木に対する剥皮の被害、これについては現実にはあると思うのですが、正確につかめていないというのと、被害が発覚したときには、いつの時点で加害されたのかというのがなかなか特定できないというのがございます。
先ほど説明しました芸備線というJRの線路、ここでは非常にシカとの衝突事故が多くございまして、平成12年以降は3桁でずっと推移をしてきております。一番多いときには、平成20年で188件という衝突事故。これは、シカが出て、急停止して、衝突に至らなかったというのは実はここには入っておりませんで、それも含めるともう少し多いのかなというふうに思います。特定計画を立てましたのが平成15年からでございますので、その直後は若干減少をしたのですけれども、また衝突回数が増えてきているという状況になっています。
ちょっとイノシシとグラフの形が違うのですが、猟法別の狩猟の捕獲頭数の推移でございます。平成22年までは若干銃猟のほうが多かったのですが、今はわなによる捕獲のほうが多くなっているという状況です。
計画の概要でございますけれども、計画の策定目的といたしましては、個体数管理、それから被害防除対策の手段を総合的に講じていくと。目標といたしましては、農林業被害を社会的に許容される範囲に抑えていくと。これは生息密度を、通常のところで1km2当たり1頭~2頭に、あるいは保護区等においては、1km2当たり5頭前後に抑えていこうという考え方でございます。
具体の対応でございますけれども、捕獲目標数は年間8,000頭以上としております。生息推定数2万1,600~4万1,200頭を半減していこうというところからこの数値を導き出しております。
それから、生息密度の低減を目的とする捕獲対策でございますけれども、イノシシ同様に、狩猟期間を2月末まで、終わりのほうを2週間延長しております。それから、捕獲頭数については、これまで制限を設けておりましたけれども、無制限で、1日当たり、オス・メスかかわらず、何頭までもとっていいというふうにしております。
それから、くくりわなについては、イノシシ同様規制を解除しております。くくりわなについては、先ほど言いましたように、わなによる捕獲が非常に多いということもございまして、規制解除ということにしております。
4番目の狩猟者確保については、イノシシと同様でございます。
それから、その他の対応については、これもイノシシと同じことを書いておりますが、重要についてはまた後ほど説明をさせていただきます。
それで、イノシシ・ニホンジカに共通する保護管理上の課題について説明をさせていただきます。
まず、モニタリング調査でございますけれども、シカについては、これまで糞粒調査によりまして5年に1回調査を実施しておりましたけれども、頻度が非常に少ないということで、生息状況の把握が十分にできていないということが一つあります。
それから、モニタリングの結果についての評価、これについても十分ではないし、またこれを計画に反映し切れてないのではないかというふうに考えております。
それから、他県では、ニホンジカについては、農作物への被害以外にも、自然の植生への加害というのが非常に問題になっているところと伺っているのですけれども、広島県については、その実態がまだ把握できていないということがございます。
それから、施策の実行手段でございますけども、一つには、専門家がいないということで、県や市町から住民等にしっかりとした説明や対策のとり方について、科学的な観点が不足しているというところがございます。
それから、現在、やはりまだ数を減らせば被害が減るだろうということで、捕獲中心の対症療法的な施策が中心になっているというところがございます。
それから、シカでございますけれども、シカについては、先ほど申し上げたように、自然生態系への影響というのがございますので、現在の狩猟と許可捕獲による個体数調整だけで十分対応できるのかどうなのか、今後検討する必要があるのではないかというふうに考えております。
それから、現在の広島県の執行体制でございますけれども、鳥獣保護法に関することにつきましては、私どもの環境県民局自然環境課というところで所管をしておりますが、被害対策につきましては、農産物については農林水産局の農林業技術課が、最近ちょっと問題になっておりますカワウ、この水産物に対する被害については、同じ農林水産局の水産課が、それから森林対策の被害については、同じ局の森林保全課が所掌するということで、被害対策を担当するところが複数に及んでいる。鳥獣保護法を担当しているところと局が違っているというところもありまして、なかなか意思の疎通が十分でなかったと。これは我々の反省の点でございますけれども、こういった実態があるというところでございます。
今までの取組、基本的には、捕獲圧を高めることを中心とした対策をとっていたのですけれども、出てきたさまざまな課題を整理して、今後の県の保護管理の方向性、あるいは体制について検討するために、この審議会の委員でもございます三浦先生に座長になっていただきまして、外部の専門家や関係団体等で構成された検討会を、平成23年度に設置いたしまして、基本的な考え方や保護管理体制の方向性について整理を行ったところでございます。
基本的な理念といたしましては、人と野生生物と自然環境との調和的共存関係の構築を目指すことといたしまして、当面の目標として、農林水産被害の軽減、中長期的には生物多様性の保全、人と野生動物の調和的共存を目指すということの整理が行われたところでございます。そこで、現在は対症療法的な「捕獲」が中心ではあるのですけれども、今後は、科学的な根拠に基づく計画の策定、あるいは、調査、防除等の専門性の向上、防除や捕獲技術の開発・普及、行政の実行体制の整備というものを一体的に実施をして、ワイルドライフ・マネジメントの考え方に基づいた体制を構築していくという方向性が示されたところです。これについては、「個体数管理」、それから「被害管理」、「生息地管理」、こういったものを総合的に実施していくということにしています。
先ほど、特定計画のその他のところで後ほど説明すると申し上げた点でございますけれども、まずモニタリングにつきましては、出猟カレンダーを策定するということで、平成24年度から取組を始めております。また、シカの生息数調査については、5年ごとであったものを、調査方法も変えまして毎年実施するということにしております。クマについても豊凶調査を実施するというようなことを考えています。
それから、専門的な知見から解決策を導き出すということで、それぞれ科学部会というものを設置しております。それから、専門性の強化については、もうこれは研修等とか、あるいはマニュアルの整備、こういったもので補っていくというふうに考えております。
それから、先ほど説明しましたけれども、鳥獣保護の関係と被害対策の部局が違っているというようなことがございまして、これについては定期的に会議を持つ、あるいは被害対策会議を持つということにしております。
それから、農業の被害対策のほうで今新たな取組が昨年度から始められておりまして、集落ぐるみの取組ということで、集落のエサ場化を防ぐ。あるいは鳥獣対策の指導者を育成する。あるいは、狩猟者の減少に対応して、集落で捕獲をするといった取組が始まっておりまして、これは国のこういった防除あるいはエサ場化を防ぐ、そういったものに非常に詳しい方をスペシャリストとして県にお招きし、各市町のアドバイザーを育成するようにしております。そのアドバイザーは、各集落に出向いて、そこのリーダーを育成する。集落全体で総合的な対策をとっていくということで、取組を進めているところでございます。今まだモデル的に実施しているところでございまして、全県に今後は広げていきたいというふうに考えています。
最後に、鳥獣保護管理に関する課題と要望ということでお話をさせていただきたいと思います。
今までお話ししましたとおり、モニタリングの強化を図っているところでございますけども、また、シカについては、今後さらなる捕獲の強化が必要になってくると思いますが、県のほうが非常に財政的に厳しいというところがございます。これについて、財政的な支援を国のほうからしていただきたいというのが1点ございます。
それから、先ほどから申し上げておりますけれども、専門的な知識・技術を有する職員が不足している、なかなか確保できないといったことがございまして、これにかわる体制というものを国のほうで確保していただければというふうに思っております。
それから、モニタリングについてですけども、ちょっと今日は時間的にクマの説明はできませんが、ツキノワグマについてはどんどん生息域が広がるといった状況がございまして、従来の調査方法にかわる新たな方法を考える必要があるのではないかと考えているところでございます。こういったモニタリング手法についても、技術的な支援をいただければというふうに思います。
それから、最後になりますけれども、県境を越えて広域に移動するツキノワグマ、あるいはカワウ等について、広域連携を進める上で、やはり国の主導的な役割というものを果たしていただきたいなというふうに思っております。やはり各県ごとでありますと、いろいろ調整等うまくいかない点というのもございますので、国のほうで科学的なデータ等をもとに、主導的に指導をしていただければと考えているところでございます。
非常に雑駁ですけれども、これで説明のほうを終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

【石井委員長】 ありがとうございました。
それでは、続きまして、大分県森との共生推進室の三ヶ田室長、お願いします。

【大分県】 ご紹介いただきました、大分県農林水産部森との共生推進室の三ヶ田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、パワーポイントを使って説明をさせていただきます。
本県の鳥獣保護管理の現状について、ご説明をいたします。
本県では、特定計画、ニホンジカとイノシシの2種類、策定をしております。まず、ニホンジカについて説明をいたします。
本県では、平成12年から第1期ということで始まりまして、現在は第4期を、昨年度から5カ年の期間で実行をしております。
本県のシカの生息分布ですけども、ここにありますように、これは平成8年ですけども、本県では四つの個体群がございました。それが平成22年には周辺に拡大をしまして、このように、大分市とか別府市とか中津市とか、そういった市街地を除く全域に生息をしている状況にございます。限られたデータに基づく生息密度分布をもとに、四つのA、B、C、Dという管理区分の中で、いろいろな方策を講じております。ちなみに、この図は、県内のシカの生息密度の強弱を示しております。色の濃いところが生息密度が高いということで、この図は糞粒法による調査をもとに、森林総合研究所九州支所の近藤研究員に、研究の一環として作成をしていただいたものでございます。
この特定計画の目標としましては、生息密度を県内分布の全域において、km2当たり3頭以下にするということで、そのために、平成19年、第3期計画から、ほかの県と同じでございますけども、四つの狩猟の規制緩和を行っております。狩猟期間の延長、それから1日当たりの捕獲頭数の無制限化、それからくくりわなの緩和、そして特例休猟区の活用でございます。
そして、この特定計画の実施状況でございますけども、まず、捕獲頭数の推移でございますけども、この表にありますように、確実に捕獲頭数は増加をしております。平成23年度につきましては、約2万8,000頭、捕獲をいたしました。それから、そういう捕獲頭数が増えることによって被害額も減少傾向にございます。1億円程度あったものが、平成23年度では6,500万ぐらいにまで下がっております。
特定計画の評価ですけども、こういった、特に第3期計画の規制緩和等によりまして、捕獲数が年々増加をし、生息頭数は減少をいたしました。これは、この推定生息頭数の推移にございますように、平成18年のときには、少し幅があるのですけれども、5万5,000頭から11万7,000頭の間で、中央値は8万5,000頭。それが平成22年では、3万6,000頭から7万9,000頭。中央値は5万8,000頭ですけども、こういう形で生息頭数は減少したというふうに我々は考えております。
しかし、適正な生息密度までは達成しておりませんので、しかも、生息密度の高い地域からの移住によると思われる生息分布域の拡大が続いております。そこで、今期の第4期計画においても規制緩和を継続するとともに、捕獲報償金等によりまして捕獲圧を高めて、目標生息密度の早期達成を目指しているところでございます。
課題としましては、ほかの県と同じですけども、狩猟者の減少と高齢化ということで、本県では平均年齢が63歳ということになっておりまして、50代~70代のところに固まっております。ですから、これから10年、20年先には、もう捕獲圧が効かなくなるのではないかということを一番心配しております。
それから、広島県さんからも説明がありましたように、生息密度調査がちょっと不十分と考えております。これは精度とか頻度を高めることが喫緊の課題だと思っております。
それから、県境域での捕獲圧の強化。シカは広域に移動しますけども、また後で説明しますけども、県境付近の密度が高くて、なかなか捕獲圧が効かないということですので、こういったところをどのように攻めていくかということが課題でございます。
そこで、シカの捕獲強化に向けた取組等についてご紹介をいたします。
密度マップと情報の見える化ということですけども、捕獲頭数は、先ほどご説明しましたように、確実に増えております。その要因としましては、平成19年の規制緩和。それから、県では平成10年から、捕獲報償金を出しておりますけども、特に平成21年から、その金額等において拡充をいたしました。現時点では、シカは、猟期外が1頭1万円。それから猟期中が5,000円。今年度も県の予算額として7,000万ほどを計上しております。こういったことによりまして、平成23年度は約2万8,000頭の捕獲。それから、昨年度、24年度も、今、大体の数字が出てきましたけども、同レベル捕獲できたと考えております。
こういった捕獲をしたときには、捕獲の頭数とか場所の報告をしてもらっております。こういったものを今後の捕獲にうまく活用できないかということですけども、これは、報告があったものを地図上に示したものです。
今の捕獲の強弱を、この青い、ブルーの丸に変えてみました。そして、先ほど説明しました生息密度、この濃淡の地図に重ね合わせてみますと、大体は密度が高いところでかなり捕獲が多くされているということですけれども、こういった福岡との県境あるいは宮崎との県境辺りでは、密度は高いけどもあまり捕獲されていないというような、そういったことが見えてまいりました。
いろいろなことをこのようにマップ化しますと、見えてくるものがあろうかと思います。こういったことを、農林業の被害防止対策あるいは効果的な捕獲対策につなげていければと考えております。
あと、今できていないのは、捕獲報告などが紙ベースですので、こういったものを電子化できないかということ。それから、メッシュ報告につきましても、本県ではこのようにしてもらっていますけど、メッシュ報告をされてないところもあるのかなと。広域的に移動するシカが対象ですから、全国的にやるのがより効果があるのかなと考えております。
次は、もう一つのイノシシのほうです。イノシシについては、平成15年から第1期を始めまして、現在、第3期に取り組んでおります。これは、シカと違って頭数の管理ができませんので、目標は被害額ということで、第2期の終わりのときの被害額は1億7,000万でしたので、今計画中にその半減を目指しております。
狩猟規制緩和としては、先ほどのシカとほとんど同じでございます。
それから、捕獲計画につきましては、イノシシですから、計画的な捕獲計画は立てられませんので、集落に被害を及ぼしているイノシシを効果的に捕獲するとか、先ほどみたいな被害とか捕獲とか、そういったマップ化によって、より効果的な捕獲ができないかなということを、今推進をしております。
真ん中は、今、本県のイノシシの生息状況です。こちらは、市街地を除いてほぼ全域に生息をしております。イノシシ、シカ、共通ですけども、被害を減少させるために、実施体制としては、ほかの県と同じになりますけれども、一昨年の8月に副知事をトップとする被害対策本部を県庁に設置をいたしました。そして、県の六つの出先機関ごとにも現地対策本部をつくり、その下に市町村の対策協議会がある。それから、隣接する県とも連携をしてやっております。
やっている内容は四つで、ここに防護策などの予防対策を挙げておりませんけど、予防対策、それから集落環境対策、捕獲対策、獣肉利活用対策の四つの基本施策で取り組んでおります。特に集落環境対策では、県内1,800ほど被害集落がございます。ですから、現在はその中から41ほどについて、戦う集落として被害「0」を達成するためのモデルをつくって、これを周りの集落に広めていこうということで進めております。
このイノシシの特定計画の評価としましては、被害額は、残念ながら、いろいろやっているのですけども横ばい状況。それから捕獲頭数は大体2万頭前後で、こちらも推移をしております。
課題としましては、ハンターの減少と高齢化。それから、先ほど申し上げました、全被害集落へどのように指導して被害を軽減していくか。それから、被害額を挙げておりますけれども、なかなか農産物の場合は、精度の高い被害額を算出するのが難しいと考えておりますので、この辺の推定方法あたりがちょっと課題でございます。
続きまして、他の部局との連携でございますけれども、私ども大分県では農林水産部の私どもの室のほうで鳥獣保護法に関するもの、それから農林水産省の特措法に関する分を一元的に持っておりますので、狩猟も、鳥獣保護も、有害鳥獣対策も、全てやっているということで、この辺の問題はあまりございません。唯一ほかの部局が持っているのは、今、県内でも生息が増えていますアライグマの、特定外来に関するものは生活環境部のほうが持っております。ですから、この辺の連携をとるために、先ほどの鳥獣外本部の中に入っていただいて、情報共有等を行っております。
ただ、県庁のほうではこういった体制がとれておりますけども、実は、各出先のほうに行きますと、振興局、地方事務所では、農産物は園芸が担当したり、畜産が担当したり、林業が担当したりということで、皆さん業務に追われて、ちょっと連携がおろそかになっているところも課題でございます。
続きまして、公的捕獲のあり方ということで、三つほどご紹介をしたいと思います。
猟友会にずっと頼って、有害捕獲あるいは狩猟に頼ってきたわけですけども、先ほど申し上げましたように、高齢化、減少をしております。ですから、もうここに頼った捕獲というのには、もう本当に5年、10年先ぐらいにはかなり厳しいものがあろうかと思います。ですから、公的機関のほうに捕獲もシフトしていくべきだろうと考えております。
その一つの導入になるのかなと考えておりますけれども、鳥獣被害の防止特措法に基づく実施隊でございます。
現状と課題としましては、今言いましたように、狩猟者の関係、それから実際にもう山間部では有害捕獲班の編成ができなくなったような地域も出ております。ですから、そういうところはより大きな区域で編成をして、もう編成できない地域をカバーするというような状況になっておりますし、大体、捕獲班で職を持っている方がいますので、休日の対応が中心となっている。こういったことから、現在も、それから近い将来も、捕獲活動がますます低下していくだろうと考えております。
この実施隊ですけども、特措法によりまして、県内18あるのですけれども、離島のイノシシ、シカがいない一つの村を除いて、17で実施隊を設置しております。ただ、中身を見てみますと、17あるのですけども、全部で147名の構成員がいますけども、ほとんどが市町村職員で、猟友会員は12名。これは延べ数ですけど、これはいい傾向ではあるのですけれども、実際に免許を持っている方は、少ないということで、今後は、この市町村職員の方がやはり免許を取って、実際に捕獲に従事していただくということが必要だろうと思いますけども、いろんな課題があろうかと思います。
一つ、うまくいっている例としましては、県の海辺のセメントとミカンの町、津久見市というところがありますけども、ここでは、かんきつ類にサルがかなり被害を与えますので、そのサルの被害防止ということで、捕獲もしますけども追い払いを中心に、市の職員3名と猟友会員9名、計12名で実施隊をつくっております。かんきつ類の収穫期である10月から翌年の3月にかけて活動をしておりますけども、ここでは、隊員の携帯電話番号を広報によって市民に周知しておりますので、市民からの直接の要請に対応できるようになって、ここでは評価を受けているというような状況にございます。
ただ、問題点としましては、先ほど言いましたように、市町村職員が中心で、今のところまだなかなか実際の捕獲などの効果を発揮できていない。それから、民間隊員を逆に選ぼうとしますと、民間隊員が狩猟税の一部免除や給与などの優遇措置がありますので、他の会員からのやっかみ等もあって、なかなか市町村では民間隊員を雇えないというような状況もございます。
続きまして、公的捕獲のあり方、二つ目としましては、県下一斉捕獲の実施です。
今、有害鳥獣捕獲は各市町村長が許可を出しておりますけども、先ほども説明がありましたけど、ある市町村で許可を出しても、隣の市町村に逃げたときにはもう追えないということで、一斉に有害鳥獣捕獲をやれば、そういったことも少しは防げる。それから、同じ日に、どこに行っても銃の音や犬の鳴き声がすれば、イノシシやシカにもかなりプレッシャーをかけられるだろうということで、一昨年の秋から、県下一斉捕獲をスタートいたしました。これはそのうちの別府市での出猟式の状況です。
結果としましては、平成23年度は秋と春に2回実施しまして、1回当たり大体二百数十頭の捕獲ができております。平成24年度は、秋に2回と春に1回、合計3回実施をしております。1回当たり、それぞれ約900名ぐらいの猟友会員が出猟をしていただいております。
こういったことが新聞記事に毎回していただいているのですけども、こういうことをすることによって、猟友会員も、自分たちが社会貢献活動をやっているということで、捕獲への士気の向上につながっておりますし、また行政側としても、被害を受けている県民に対しても、行政もこういうことをやっているというアピールになっております。
それからもう一つは、九州シカ広域一斉捕獲でございます。シカは広域に移動しますので、先ほども申し上げましたように、県境域での密度が高いのになかなか捕獲圧が効かないということで、九州では、こういった合同捕獲を行っております。
まずこちらは、九州脊梁山地シカ広域一斉捕獲ということで、熊本、宮崎、鹿児島で平成18年からスタートをして、平成20年から大分も加わっております。そしてもう一つは、昭和55年から、大分、福岡、熊本で3県合同捕獲をやっておりました。これを大分県が昨年度呼びかけまして、統一しまして、九州シカ広域一斉捕獲ということで、昨年秋に3日間、それから春に2日間、合計5日間ほど実施をしております。昨年秋は、約500頭ほど県境域で捕獲をしたところでございます。これには国有林の方にも協力をしていただいております。
最後に、鳥獣保護事業全般についての意見ということですので、1点だけお願いをしたいと思います。
内容としましては、特例休猟区の保護区版の創設でございます。保護区に指定されているから被害が大きいので、保護区を廃止あるいは縮小してほしいと、保護区を更新するときにこういった意見が出るわけですけども、問題となっているのは、イノシシやシカの特定鳥獣でありまして、保護区の存在そのものではございません。有害捕獲だけでは限られた人しか入れませんので、捕獲圧が弱いことから、狩猟において捕獲することで、特定鳥獣の個体数を減少させることができるのではないかと考えております。
最後に、参考ですけども、大分県では、先ほど言いましたように、1,800の集落が被害を受けておりまして、41ほどのモデル集落で被害ゼロを目指して活動をしていただいております。捕獲対策として、それぞれの集落で自らとろうということで、狩猟免許を取る動きもだんだん出てきました。こういった動きを促進していきたいと考えております。
以上でございます。

【石井委員長】 ありがとうございました。
それでは、続きまして、事務局のほうから、都道府県アンケート結果の説明をお願いします。

【事務局】 環境省鳥獣保護業務室の山崎と申します。
昨年度末に都道府県に鳥獣保護法の施行状況の検討に当たってのアンケート調査を行いましたので、その概要を簡単にご説明させていただきます。
まず、鳥獣保護管理において最も推進すべき事項としましては、42県が、鳥獣による被害の防止対策と回答をいたしました。
その中でも、今後推進すべき鳥獣被害対策としまして、種類別に尋ねましたところ、ニホンジカでは個体群管理を挙げる都道府県が非常に多いという結果でございました。
そのニホンジカの捕獲圧を高めるための主要な対策の内容についてお尋ねしましたところ、規制緩和などを実施しているのですけれども、35県、89%におかれましては、現状では十分な効果が得られていないという回答でございました。その十分な効果が得られていない理由ですけれども、主な理由といたしましては、生息数の適正化に必要な捕獲圧となっていないと答えたところが15県、その他、捕獲体制が不十分、メスジカの捕獲目標を達成できていない、効果的な捕獲ができていない、科学的な管理捕獲がなされていない、などの回答がございました。
許可捕獲の対象として都道府県が重視している地域を尋ねましたところ、集落地や農地、その周辺における対策を重視しているという回答が多いという結果でした。
次に、鳥獣の捕獲圧を高めるための規制緩和等に係る要望についてお尋ねしましたところ、狩猟制度に関しましては、狩猟税の見直し、免許有効期間の延長、また、狩猟と異なる有害捕獲等のための新たな免許制度の創設や、わな猟の免許の取得年齢引き下げなど、狩猟及び捕獲許可に関する規制緩和としましては、特定鳥獣捕獲を届出制にする、高山地帯における捕獲個体の放置禁止について緩和してほしいとの要望があり、また、銃猟の制限の緩和としまして日の出前又は日没後の銃使用についての要望が11県からございました。
次に、広域保護管理の必要性についてお尋ねしましたところ、地域個体群の行動範囲が県境を越える場合、特にニホンジカ、カワウ、クマなどにおきまして、広域保護管理が必要という意見が多数ございました。広域保護管理でしか解決できない課題といたしましては、モニタリングや、正確な個体数推計、生息環境整備等が挙げられました。
次に、都道府県内における関連部局との連携についてお尋ねしましたところ、どのような工夫や取組を行っているかという問いにつきましては、庁内に横断的に鳥獣保護管理施策を行う室を設置している、関連部局の会議を設置する、日ごろから情報共有をする、知事や副知事をトップとする鳥獣被害対策本部を設置しているというご意見がございました。
次に、市町村との連携でございますけれども、34県が、十分に意思の疎通や被害対策の連携を行っていると回答がございまして、協議の際に整合性を確認している、県と市町村の実施区域を明確化し役割分担をしている、検討会や協議会の開催、出先機関における助言や指導などの回答がございました。
一方で、8県からは、市町村との連携が十分でないというご意見がございまして、その理由としましては、市町村からはもっと県の積極的な指導を求めている、目的や目標などは市町村の判断に任せている、市町村ごとに温度差がある、市町村の予算の制約、などの回答がございました。
次に、環境省への要望を自由記載でお尋ねしましたところ、「管理」の重要性を踏まえた目的の明確化、狩猟と公的な個体数調整や有害捕獲の区別、特定鳥獣管理計画の見直し、新たな免許制度の創設、国における生息調査の実施などのご意見がございました。
最後に、平成18年に法改正した事項についての実施状況をお尋ねしましたところ、特例休猟区、入猟者承認制度、据え置き型猟具への設置者についての実施の活用状況は資料の上部に示したとおりでございました。
また、鉛弾問題への対応でございますけれども、新たな規制が必要としたところは8県ございまして、その理由としましては、希少猛禽類の鉛中毒発生の原因として、外部からの持ち込みがあり得るというご意見、一方、不要もしくは反対する理由としては、都道府県内では鉛中毒は確認されていない、狩猟者には受け入れられないのではないか、というご意見がございました。
以上でご説明を終わります。

【石井委員長】 ありがとうございます。
それでは、これから質疑応答と意見交換ということですが、12時20分までという予定で進めたいと思います。
まず、自治体からの発表に対して質疑応答をして、それから意見交換という順番でやりたいと思います。それではまずご質問ということで、どなたでも結構ですので、お願いします。

【小泉委員】 各道県の積極的な取組をご紹介いただきまして、どうもありがとうございます。大変勉強になりました。
これから恐らく目標を確実に達成するために質の高い捕獲が望まれているのではないかと感じました。この点についてはまた後ほど改めてコメントさせていただきますけれど、まず北海道の方にお伺いしたいのですが、専門の捕獲業者さんが3社あるとおっしゃいましたが、もう少し詳しく教えていただけますか。

【北海道】 先ほどの説明で、環境省に対する要望書で、狩猟者の位置づけが非常に高い状況になってきていること。それで、道にエゾシカ問題、議会の議論、それから報道などが数多くあって、一つのビジネスチャンスとして事業者が実際出てきているのは現状としてはあります。

【小泉委員】 いわゆる株式会社ですか。

【北海道】 そうです、はい。

【小泉委員】 例えば既存の警備会社と関係しているとかじゃなく、全く独立した会社ですか。

【北海道】 ええ。独立した民間の会社で出てきています。

【小泉委員】 ありがとうございます。

【石井委員長】 ほかにいかがでしょう。

【三浦委員】 私も、非常に各自治体の取組は勉強になりました。もう少し突っ込んでお聞きしたいところが幾つかあるのですが、まず、北海道と長野県の方にお聞きしたいのですが、有効活用が、北海道の場合14%止まり、それから長野県は5%未満ということですが、これの上限というか、進まない理由というのは何なのですか。

【北海道】 北海道の状況を言いますと、13万5,000頭を捕獲して、そして市場流通が1万9,000頭ということで14%程度とお話したのですが、通常、狩猟または市町村が行う有害鳥獣捕獲では、どうしてもおなかを撃っちゃいます。反すう獣でございますので、おなかが胃袋全体なので、どうしても肉が汚染されます。そういうものを有効活用に事業者が利用しようとしても、汚染されている状況ではなかなか有効活用に回せない、こういうことが実態でございます。
今、実際、有効活用で出てきているのは、養鹿をして、そして止め刺しとして頭頸部、頭またはのどを撃って、内臓に傷をつけないような方法をしている。ほとんど腹部を撃ってしまうために有効活用ができないというのが実態でございます。

【三浦委員】 需要はあるわけですか。

【北海道】 だんだん需要は出てきています。それで、シカの日参加店も、今、200店舗ほど、登録参加店が増えてきているのです。前年は20店舗程度だったのですね。

【三浦委員】 要するに、供給側の安定供給と質が変われば、それなりに……。

【北海道】 需要はあると思います。

【三浦委員】 需要がある。

【北海道】 はい。

【三浦委員】 長野県はいかがですか。同様の質問です。

【長野県】 ちょっと時間がなくて説明できなかったのですが、長野県の提出した資料の23ページのところですね。「現状と課題の対応策」というところの一番下の4番、「有害鳥獣捕獲をした個体の処分」というところに、獣肉が利用できない主な理由ということで、[1]、[2]と書いてございます。長野県の場合は、銃猟よりもわなの捕獲が多いので、肉としては比較的利用しやすいところでございますけれども、長野県もやはり衛生ガイドラインを定めておりまして、現場では解体できないということで、放血までしか許されていないということで、1頭丸々山から出してこなければならないということでございますけれども、搬出道路が遠い場合が多いということで、とても搬出できないという実態がございます。
それから、[2]でございますけれども、やはり獣肉処理施設が不足しているというか、これは需要供給の関係もございますが、現在15施設程度しか稼働していないということで、どうしても肉の価格も高価になってしまうということで、流通・販売のシステムがまだ整備できていないということで、需要が少ないというところでございます。
先ほどの信州ジビエ研究会、これは捕獲する人から消費者、消費するお店まで連携してこの会に入っていただいているのですけども、今年はブランド化の認証制度をしっかりやって、安全なジビエ肉ということを前面に押し出して、販売拡大をしていきたいと考えているところでございます。
以上です。

【三浦委員】 続いて、もう少し質問したいんですが、大分県さんは平成21年、22年、23年で2万頭以上捕獲しているんですが、この場合のオス・メスの比というのはいかがですか。

【大分県】 一応報告はいただいているのですけれど、今、大分県はわなのほうが多いものですから、特にメスをとってほしいというのはなかなか、難しい状況ですけど、半々ぐらいと考えております。

【羽山委員】 ありがとうございました。北海道、長野、それから広島県のそれぞれにご質問したいのですけれど、よろしいでしょうか。
まず北海道に2点あります。一つは、7ページの全道の推定生息数の推移と捕獲頭数の推移とを重ねたグラフがありますけれども、東部地域では個体数が減少に転じていて、西部地域ではまだ減少になっていないと。そういう中で、捕獲数は、東部、西部、これ、合算されていると思うのですが、東部地域に限った捕獲数がわかれば教えていただきたいと思います。特に21年以降ですね。減少に転じ始めたころにどの程度捕獲されていたのか、教えてください。

【北海道】 今日ちょっとデータを持ってきてはいないのですけれど、今先生がおっしゃるように、東部地域がもともとエゾシカの繁殖地域ということで、捕獲圧を非常に高めた結果、22年が29万頭から27万頭ということで、結構下がっている経過がございます。また、西部地域につきましては高止まりということで、若干増加、平成22年が36万頭から37万頭ということで、東部地域、西部地域では、捕獲頭数はそれぞれ若干、増加している状況でございます。

【羽山委員】 では、全体から見れば、東部地域のほうが比率として高いと、そういう理解ですね。

【北海道】 そうです。

【羽山委員】 ありがとうございます。
それから、もう一点ですが、これは参考資料3になりますけれども、北海道知事からの要望ということで、趣旨として、最後の、捕獲の「担い手確保に向けた狩猟者確保対策」、これがどうもポイントのようすけども、自由狩猟を行っている方の意味の狩猟者という意味なのか、それとも、先ほど、三つの捕獲事業者がもう既に出てきているという、そういうプロ的な狩猟者の確保という意味なのか、この辺をもう少し詳しく教えていただきたいのですが。

【北海道】 この狩猟者確保対策の部分は、全国的に高齢化、減少ということでございますので、一つは、プロ的な狩猟者ということも考えておりますし、また、ワイルドライフ・マネジャー的な、例えば市町村職員がハンターとしての資格を取って、そして地域の生息環境の保護管理も担う、そういうトータルの狩猟者対策ということを掲げているところでございます。

【羽山委員】 ありがとうございました。
そうしましたら、次、長野県、1点だけお願いいたします。
6ページの資料で、ニホンジカの捕獲目標数が2万5,000~3万5,000ということなんですけども、これはどうやってはじき出した数なのでしょうか。

【長野県】 6ページのところでございますけれども、推定の生息数が10万5,000頭、これを末期、平成27年度には3万5,000頭まで落としたいということで、そこまで落とすのに必要な頭数ということで、23年が2万5,000頭、24年、25年以降は3万5,000頭と、年度別で計画をつくっているところでございます。

【羽山委員】 ただ、上の個体数の推計値を見ますと、相当幅があって、その上限だと16万頭ぐらいになってしまいますけれども、このあたりは、この中央値あるいは平均の推計値をもとに計算されているということでしょうか。

【長野県】 一応中央値をとらせていただいておりますが、本当は最大値でとれればいいのですけれども、その辺は捕獲の能力の問題もございますので、最大限ということで中央値でやらせていただいております。

【羽山委員】 ありがとうございます。
それから、広島県さんにお願いしたいのですが、16ページの上のパワーポイントで、「課題と要望」というところがありますけれども、2番目ですね。事業やモニタリングを実施する専門的な知識・技術を有する職員の不足に対する支援。これをもう少し具体的に、どういった支援が必要だということなのでしょうか。ご説明をお願いします。

【広島県】 県の職員あるいは市町の職員で、動物関係の専門的な知識・技術を持つ者がいないというのがあって、それと、広島県の場合は、県内にそういった動物関係の研究をする機関あるいは大学といったものもない。また、民間の試験研究機関といいますか、そういったものもないというのがございまして、なかなか相談をするといいますか、そういう専門的な組織的なものがないというところがございまして、これは具体に何かというのは特定していないのですけれども、環境省にそういった専門的なことを相談できる窓口を設置していただく、あるいは広島県あるいは中国地方いずれかの場所にそういった専門機関を設置していただくと、そういった何らかの措置を講じていただきたいということで、ここに書かせていただいております。

【羽山委員】 ありがとうございました。

【石井委員長】 ほかには。はい、お願いします。

【坂田委員】 どの都道府県でも同じような状況で、捕獲の担い手や後継者の不足が問題として挙げられていると思いますけども、実際に具体的に、どのような条件で仕事をお願いしようとしていて、結局それで人が来ないのかという、その辺のところはもし把握しておられたら。大体どのくらいの条件で引き受け手がないのかということが明確になってくると、必要な条件などがわかってくると思うのですけれども、現状として、いかがでしょうかね。

【大分県】 大分県ですけれども、有害鳥獣捕獲ということで大分県では進めておりますけども、それにつきましては、先ほどご説明しましたように、捕獲報償金を支給しているという状況です。例えばイノシシにつきましては、猟期外に1頭当たり6,000円。これは県と市町村の折半ですけども、ただ、それ以上の分については、市町村が上乗せしている例もあります。
シカは、先ほど説明しましたように、猟期外が1万円と、猟期中が5,000円ということで、この報償金の「償」は償うということで、かかった経費をそういうところで見ていただいて、インセンティブにしていただいているということです。

【広島県】 広島県ですけども、具体的に狩猟者の方、狩猟免許を取ろうとする方から、こういった条件なら、というところまでは聞いてないのですけれども、広島県の場合は、銃猟免許所持者が減ってきている。わなの免許所持者については増えてきていまして、今、銃猟免許所持者とわなの狩猟免許の所持者がほぼ同数に近づいているという状況がございます。もちろん、捕獲報奨金なども出されておりますけれども、やはり中山間地域は、少子高齢化ではありませんけれども、過疎と高齢化ということで、有害鳥獣捕獲班の従事者そのものが減ってきているというのがありまして、特に県北のほうは、イノシシもありますけれども、クマへの対策とか、出動の頻度が非常に上がってきているということもあって、その辺が狩猟者の方の負担になっているのかなというふうに思っています。
銃猟免許所持者が減っているということを受けて、県としては、今年度から、40歳以下の方と若い方に限定しているのですけども、銃猟免許を取って有害鳥獣捕獲班に加わってもいいよという方については、免許所持にかかる経費の一部について支援をしようということでやっておりますけれども、やはり全体的に、特に鳥獣の生息密度の高いところでは、居住者人口が減っているというのが、有害鳥獣の捕獲班を編成するに当たって非常にネックになっているのかなというふうに思っております。
これはあくまで私の私見でございます。データ的に裏づけを持って今話しているわけではございませんけども、そういったものがうかがえるのかと思っております。

【長野県】 長野県でございますが、シカについては、メスジカに対して、県で1頭2,500円という支援を出しております。市町村別に見ますと、5,000円~3万5,000円と、すごい幅がございますが、これはいいこともあれば悪いこともあるということで、高額な報奨金を出しているところは、予算の切れ目が捕獲数の切れ目になってしまうという逆効果の面もありまして、そこら辺はあまりよくないところがございます。
いずれにいたしましても、捕獲者が職業としてやっていけるようなところまでとても支払うところはできませんので、どちらかというとボランティア的な意識でやっていただいて、一部費用を負担しているというようなところでございます。
とにかく、そういう中でやってもらうには、やはりやる気を出してもらうということが非常に重要だということで、広域捕獲隊の中で体制をつくったり、それから技術の伝承等をやる中で、どうしてとらなきゃいけないという気持ちを高めてもらうというところが、今取り組んでいるところでございます。
以上です。

【北海道】 北海道でございます。必要な条件ということでご質問等がございましたが、一つは、報奨金の市町村格差、そういうことも一つございましょうし、あとは、狩猟免許、または銃刀法に基づく免許、それらに対する各種手数料、これについて非常に高額、また、銃刀法の関係が非常に厳しくて、技能試験、そういう部分でなかなか更新が得られない。そういうことで、なかなか高齢者の方が免許更新を渋る、そういうことも実態としてはあろうかと思います。
以上でございます。

【坂田委員】 ありがとうございました。今の流れでいうと、なかなか、それで必要な経費までは出せなくて、ただ、捕獲は必要で、これからも捕獲数を多くしていかないといけないという考え方の中で、今のお話の中では、やはりただ、今後もボランティア的な、必要経費の報償、ちょっと償うというような考え方で進めていくべきだ、あるいは、そうせざるを得ないという状況だというふうに考えてよろしいのでしょうかね。
民間の企業で捕獲に取り組むというようなところが、北海道のほうであるという話でしたが、その場合も、例えば民間企業だったら、ボランティアでというわけには当然いかないと思いますけども、その辺の見込みなり、このぐらいは出さないと本来は従事者が出てこないのではないかなというようなラインみたいなのは、それぞれ持っていらっしゃるでしょうか。

【北海道】 北海道でございます。先ほども少し北海道知事の要望書の関係でご説明を申し上げましたけど、現行法令上、狩猟と、市町村が行う許可捕獲、この二つの制度を中心とした捕獲体制では、そろそろ限界に来ているのかなと。
それで、都道府県自らが行政目的、公共の目的で捕獲体制ができるような仕組みづくり、それに伴う財源措置というものを、今回、北海道知事名で要望書を出した状況でございます。都道府県が行政目的で捕獲するということになれば、北海道が民間会社に委託をして、捕獲をやっていただける、そういうことも道として開けるのかなと。
そういうことで、先ほども狩猟者の地位が、捕獲の担い手として、北海道の場合は半分以上、6万7,000頭ということで、個人の趣味による狩猟が大きな成果を上げているという実態がございますので、そういう法律の位置づけをきちっとすることによって、ビジネスチャンスとして出てくる。それを都道府県が委託をして、道自らが捕獲するような形が進めば、もっと進むのかなということで、先ほど少し説明させていただいた内容でございます。

【石井委員長】 ほかにどなたか。

【長野県】 すみません、長野県です。資料の16ページですけれども、広域捕獲隊ということで、重点地域で集中的な捕獲を実施しているということで、これは緊急雇用創出基金を活用して、県で捕獲者を雇用してやっております。平成24年度6,000万、平成25年度1億円ということで、相当お金をかけておりますが、これについては、捕獲頭数という成果も上がっておりますけれども、捕獲者の技術向上とか、技術の伝承といった面でも一つの成果があるし、既存の捕獲の体制枠を打ち破るといった意味でも一つの意味があるので、こういうようなやり方を続けていくような財源措置をお願いしたいというところもあると思います。
以上です。

【広島県】 広島県です。幾らぐらいの経費を負担すれば、そのインセンティブが働くかという、その金額については私どものほうでは把握はできておりませんけれども、話としては、特に銃猟免許者については、銃の所持にかかる経費でありますとか、手間でありますとか、そういったものが非常に負担になっていると。
皆さんは、狩猟をやるために免許を持って、銃を持っているわけですけども、それに対して、有害でということで、先ほど言いましたお金もありますけれども、やはり出動頻度ですね、これに対する抵抗もあるのかなというふうに思っております。

【大分県】 大分県ですけども、先ほどご紹介しましたように、大分県では実施隊というのを、試験的というか、導入的にやっておりますけども、説明したような、ちょっと問題点もございます。北海道さんのように、プロのハンターの会社があればいいんですけど、とても大分県辺りではそれは望めませんので、本当に5年、10年先のときに、公的捕獲をかなりやっていかないと、もう民間というか、猟友会には頼れない時代が来るというのは多分明白だろうと思います。
先日新聞にありましたように、山口県の萩市のように、もう予算化して、直接市町村職員に銃の購入費から何から全部公的に見てやるというようなところも出てきておりますので、大分でも、これから市町村のほうにどんどんその辺をお願いしていく。そのときに、財政的なものについてはいろいろとまたご支援をいただきたいと思います。
以上です。

【坂田委員】 すみません。関連する質問なので、もう一つお願いしたいのですけども、今、北海道から話があったように、民間企業に委託していくという方向での捕獲の担い手の話と、市町村の役場の方が免許を取られて、実際にやるという話があるのですけれど、今の行政の中の定員のことなんかも考えると、技術的な業務はやっぱり民間に出していくような形になるのかなと、私などは思ったりはするのですが、この辺の見込みとしては、やはり行政の職員自体が捕獲していくべきなのか、民間にやっぱりそういう技術的なことはアウトソーシングしていく方向なのか、その辺の何か見込みなり、ご意見などはありますかね。

【磯部委員】 今までのご質疑で、問題の焦点の所在はかなり明らかになってきていると思うのですが、つまるところ、安定的な質の高い捕獲の担い手を確保するためにはどうしたらよいかということですね。特に制度的な問題点として、これまでの制度では何が足りないのか、新たな制度的位置づけが必要だとすればそれはどういう点かという話なのですけれど、あえて図式化して言いますと、一つには、単に予算措置ですね、もう少し報奨金を引き上げられるように予算を安定的に確保するというような財政的な措置こそが、やっぱりポイントだという考え方も一つあるでしょうし、他方では、狩猟免許について、手数料であるとか、免許に際しての講習であるとか、いろいろ面倒なことがあるので、そういうもろもろのバリアをもう少し簡易化するというような整理も、一つのポイントなのかもしれません。
しかし、おそらくはもうすこし本質的なところで、狩猟という行為、あるいは有害鳥獣を捕獲するという行為の公益性ということについて、もっとしっかりとした位置づけがあってしかるべきではないかという問題があるのではないかという気がします。さらに、大分県のご説明に一番はっきり表れていたと思うのですけれど、その場合の狩猟行為の公共性の意味合いについてですけれど、公共サービスであるからこそ、行政が自ら直営で主体的にやっていくというルートを一つ言われたと思います。他方で、北海道はそうではなくて、むしろ業務委託というのでしょうか、サービス自体の公共的・公益的な性格はしっかり確認した上で、必ずしも行政直営ではない形で、業務委託という形で運営していくというスタイルを示されたと思います。いずれの場合も、公共性を担保する一定の水準を確保しつつも、柔軟性も確保しつつというところが狙いでしょうけれど、そういう制度の改正が必要というふうに思えたのですが、そういう理解でよろしいのでしょうか。
この最後の点に関して、さらにここがポイントだと思われるという点がございましたら、ぜひ伺っておきたいという趣旨の質問でございます。坂田委員の質問と大体同じ趣旨だろうと思いまして、つけ加えさせていただきました。

【北海道】 北海道でございます。北海道も、国の緊急雇用交付金、これを利用しながら、一応捕獲試験というのは実際としてやっております。ただ、その緊急雇用のお金が、当然予算としてはいずれなくなるということも想定されますので、将来を見据えた形で、都道府県が行政目的のために捕獲するような法改正がされれば、一つ、いいのかな。ただ、技術的な部分については、やはり民間などの活用というのは必要と思っており、狩猟免許取得者を職員として任命というのは、人事上、なかなかハードルが高いのかなというふうに思ってございます。
以上でございます。

【長野県】 長野県の場合ですけれども、ガバメントハンターというのが、一つの市に雇っている方がいるのですけれども、ほとんどの市とか町は、それはそういうわけにはいかないという実態にございます。とても費用負担までできないということだと思います。民間企業はもちろんありませんので、長野県の場合は猟友会が担い手ということになっております。そういう中で、今、一番期待しているのは集落捕獲隊ですね。集落ぐるみで捕獲するという、制度的には認められましたので、それをもっとやりやすいような形にしていけば、今まで狩猟に参加したことのない方がどんどん参加していただけると、そういう方がだんだん免許を取るようになると、やる気がだんだん出てくると、そういうのを何とか狙っていきたいと思っておりまして、今年の春も、何日もかけて研修会をやった市町村があります。これ、私も少し出てきたのですけれども、何かすごくやる気が皆さん出ているなというのは感じられたので、そういう部分を、そういうふうにやってくれるところもあれば、県内にも温度差がすごくありまして、今までの体制の中でというところもあるので、そこら辺を何とか打ち破っていきたいと考えているところです。

【広島県】 広島県では、その捕獲について、民間が担うのか、それとも行政が担うのかという議論は、多分まだしていないのだと思うのですけれども、行政がやるとなった場合は、やはり財政上の問題もありますし、これ、正職員ということになれば、人事的な話も出てまいりますし、いろいろちょっとハードルが高いのかなと思っています。
民間ということですけども、民間の会社がやるということになれば、ある程度、業務量であるとか、利益の話が出てまいりますので、広島県の今の捕獲の量から言って、どうなのかなというのがあります。
先ほど説明しました中に、集落ぐるみの取組ということで、集落で環境改善と捕獲、それから侵入防止、これを総合的にやっていきますよという取組を始めたところでございますけれども、捕獲について言えば、特にイノシシなどは、加害個体をいかにして捕まえるかというところが一番大事になってこようかと思いますので、その点では、農業者の方、猟友会等の協力も得ながら、その地域に応じた捕獲というものを考えていただけたらいいのかなというふうに思っています。シカについては、ちょっと別の観点から、数全体を減らしていかなきゃいけないというのはあろうかと思いますけど、広島県の場合、なかなかシカを、狩猟者の方はとって食べるという経験が今まであまりなかったものですから、どちらかというと敬遠されていたところもあって、そのあたりも、狩猟者の方にシカの魅力なども伝えながら、もう少し狩猟のほうで頑張っていただいて、その状況を見ながら、また検討していかなきゃいけないのかなと考えています。

【大分県】 大分県ですけれども、今は何とか猟友会員のボランティアで成り立っている状況がありますので、会社みたいなところにアウトソーシングするのか、それとも、行政が主導してやるのかというのは、ちょっとここ数年来に見極めていきたいと思いますけども、現時点では、大分県にはそういったプロの会社がないということと、それから、先ほどの実施隊につきましては、これ、農林水産省の特措法の中で、そういった実施隊をつくって被害防止に努めなさいという方向があります。実施隊をつくると防護柵を張る交付金事業を取るためのポイントも上がるというような実情もあって、それを実際にやってみて、そして、見えてきた課題も、先ほど説明しましたようにありますし、逆に、それでうまくいっているという例もございますので、その辺をここ数年で見極めていきたいと思います。
以上です。

【石井委員長】 ここからは意見交換という感じで伺っていきたいのですけれども、どうぞ。

【小泉委員】 ありがとうございます。今のお話を伺っていますと、恐らく、今後、民間の業者さんに求められのは、プロとしての捕獲と同時に、地域において、地域ぐるみで捕獲を行うときの捕獲コーディネーターといいますか、そういったような役目も果たしてもらえるような業者さんであるということ必要になってくると思います。例えば、北海道の資料の9ページ、それから長野県の資料の23ページ、それから大分県の資料の4ページにありますように、これまでボランティアで頑張ってこられた地元の猟友会の方が、外部から人が入って捕獲をすることに対して抵抗感があるようです。今後、公的な捕獲、質の高い捕獲、を進めていく場合に、こうした課題を解決していく必要があると感じました。長野県の「広域捕獲隊」は、地元以外の市町村でも捕獲することが可能ですか。もしそうだとすれば、それによって、捕獲全体にどのような効果が現れたのか、を教えてください。

【長野県】 長野県でございますけれども、広域捕獲隊、10地域につくっているのですが、やはり大きな温度差がありまして、今までの枠組みの中で、旧市町村単位の猟友会の支部の中で、じゃあやりましょうと。支部の中で組織をつくってやりますと、やっているところもありますし、一番進んでいるところは、この区域内、県を10個に分けた一つの区域内はもう関係ないと。誰がどこへ行ってやるのもいいから、とにかくそういう形の中で、技術を持っている人と、若手育成という意味も含めて、チームをつくってやっていこうという形でやっているところもあります。
県とすれば、そういう、今一番進んでいるような形のところを望ましいということで、それを進めるに当たって研修会等をやって、技術を高めて、これをそれぞれの支部の人が出てくるのだけれど、技術をこうやってみんなでやっていこうよという、どこにかけたらわなにしっかりかかるのかとか、そういう技術を、今までも、これも自分の技術は自分の技術で、決して人には教えないというような閉鎖的なところがございますので、そうじゃないんだと。みんなでとらないと、みんなの地域がだめになるのだよという部分で、そういうところまでわかっていただいて、その技術も伝承していくというようなところの効果もあると考えています。

【小泉委員】 もし、ほかの道県の方からも、この件についてご意見ありましたらお聞かせいただきたいと思います。

【北海道】 北海道でございます。先ほど、北海道の資料の9ページ目に、他の市町村の狩猟者の受入に対する拒否感ということで書いてございますけど、これは全体の意味ではなくて、例えば道東でエゾシカの生息数が非常に多い状況、それで、免許取得者、やはり札幌圏が非常に多いわけで、札幌圏のハンターさんをボランティアハンターという位置づけをして、そして、道東のハンターが少ない地域に実際行っていただいて、捕獲活動をやってもらう。そういうものも、一部、捕獲試験としては成功した例はございます。ただ、これはまだ全道まで広まっている状況ではございません。

【小泉委員】 大分県は。

【大分県】 今、おっしゃられましたように、まだ根強く猟友会の区域割りというか、縄張りという意識は残っております。ですから、先ほどもマップで見ていただきましたように、密度が高いのに、なかなか捕獲圧が効いていない、捕獲頭数が少ない。そういったところはやはり全県から選抜隊でやりたいなということで、今年度、ちょっとそういう働きかけをやりたいと考えておりますけど、猟友会のその了解がとれるかどうかというのがちょっと心配ではございます。

【小泉委員】 はい、ありがとうございました。

【石井委員長】 よろしいですか。
一応予定時間はあと5分ぐらいということで、午前のヒアリングはそろそろまとめに入りたいのですが、ほかに何かご意見とかありましたらお願いします。まだ少し時間がありますので。
三浦さんはいいですか。

【三浦委員】 私、さっき、ちょっと質問させてもらったのですが、捕獲が進んでいないという状況が一方であるわけですけれども、一方で、例えば、県の名前を出して恐縮ですが、大分県のように、推定値の幅はあるという格好ですけれども、平成23年度で2万7,000、平成22年度で2万4,000と、結構な数ですよね。それで、この特定計画は、一定の科学性で、この場合、先ほど半々という格好ですが、8万頭であれば、これぐらいの捕獲規模でいけば、有意に減少といったようなことが出てくるはずですね、集団としてはですね。そういう計画を進める上でのモニタリングに対して、とにかく捕獲は一方では強化しないといけないのですが、一方では、やっぱりきちんとした――きちんとした言い方も、なかなか実現しないので問題なのですけれども、それなりのモニタリングを、例えば大分でしたら、九州全体みたいな枠組みの中で、これ、各県がそれぞれに予算をまとめるだとか、それから、例えば中国ブロックであれば、広島も含めて、兵庫も含めてといったような格好で、もう少し広域で効率的なモニタリングという、そういう問題意識はどれぐらい持っているのかなと。
あと、長野も含めて、これは北陸と太平洋岸にまたがりますけれども、ブロック化して、そういうモニタリングを県単独でやっていくということ以上に広域で考えていかないと、例えば広島ですと、それを専門にするような研究機関がないというお話でしたけど、広域で考えると、少しはそういう面もあるのかなと。ただ、県単独のそういう研究機関やなんかですと、県の枠組みという格好になってしまうのですが、一方では、全体にステップを進める上で、そのモニタリングの枠組みというのを考えていかなければいけないという問題意識がどれぐらいあるのかなというのが、今後の展開で重要じゃないかなというふうに思うのですが。

【大分県】 大分県です。今、おっしゃられたような意識は、一応強く持っております。先ほどの九州の県境域の密度マップを見ていただきましたけども、九州の中では、ああいうふうに集まって、いろいろと意見交換する場もたくさんありますし、あの地図ができたのはつい最近で、あれができることによって非常に見やすくなって、これは本当に連携してやらないといけないなと。
それと、もう一点、大分県の生息頭数の変化ですけども、あれは幅がございました。一応はその中央値で8万5,000が5万8,000になったと捉えてはおりましたけども、そうすると、2万7,000頭も続けてとれば、シミュレーション上はかなり減っていいはずなのに、現実的にまだそれくらいとれているということはどういうことだということで、もっと生息頭数が高かったのか、実は中央値よりも、あるいは、隣接県からかなり入ってきているのかとか、いろんな原因がありますので、そういったことを勘案しながら、できるだけ密度調査を頻繁に頻度を高めてやって、そして、その辺を対応していきたいと考えております。今、5年に1回ですので、少なくとも隔年ぐらい。今、5年に1回で、それ以外のときは214地点のうちの37ポイントでのモニタリングになっておりますので、このあたりを改善していきたいと思っています。

【広島県】 モニタリングの重要性につきましては、先ほどシカのところでも説明をさせていただきましたけども、やっぱり頻度や精度といったものは非常に重要であるというふうには考えております。
今日は、時間がなくて説明できていなかったのですけれども、ツキノワグマにつきましては、島根県、山口県、広島県で、共同でモニタリングを続けております。ただ、これは主要生息地がこの3県の県境にあったものですから、そこで再捕獲法というやり方で調査をし、それ以外の地域については、生息密度の推定から全体値を推測という方法をとっていたのですけれども、だんだんとその生息域が広がっているということがあって、従来どおりの手法でいいのかどうなのかというのを今後は検討していかなきゃいけないのではないかと思っておりまして、これらについては、3県で西中国山地ツキノワグマ保護管理対策協議会というのを設けておりますので、またその中にも専門家の方々の科学部会というのを設けていまして、そういった場で議論をしていただいて、正しいモニタリングのあり方というのを議論していきたいと思っております。
ニホンジカにつきましては、今のところ、まだ他県の個体群と接続したというところは確認できておりませんので、県の中で、単独で、今、モニタリングをしているわけでございますけれども、従来5年に一度の糞粒法というやり方に基づいて今まで捕獲頭数などを決めてきたわけですけれども、少し手法を変えて、糞塊法というやり方で、毎年のモニタリングをやってはどうかというふうに思っています。というのは、糞粒法に基づいて生息数の推定をし、また、中央値をもとに捕獲頭数というのを算定してきたわけでございますけども、結果として、シカの生息頭数も増えていますし、被害金額も増えているというところはありますので、シカについては、広島県の場合、過去に絶滅しかけたというようなこともあって、少し慎重な対応をとってきたわけですけれども、やはり過去の実態というのをちゃんと踏まえて、正しい判断をしていきたい。この辺については、もっと専門的な方の意見を取り入れて、対応していきたいというふうに思っています。
今後については、今、カワウの被害が顕著になってきておりまして、特にこれは、既にほかの地域では広域の対策協議会をつくられているようでございますけども、やはり環境省に主導的に対応をとっていただいて、ちょっと範囲が広域になりますから、我々がそういう場でモニタリングの手法等々を統一的に取り組めるようにしていただきたいなという希望は持っております。
以上です。

【石井委員長】 すみません、遮って恐縮ですが、そろそろ時間なので、ぜひここでということがあれば手短にお願いして、それで、午前中は終わりたいと思います。お願いします。

【長野県】 長野県ですけれども、モニタリングの広域的な実施というのは非常に必要だと。頻度を高めることも必要だと思います。これは私見ですけれども、例えば林野庁が地域森林計画なり全国森林計画を立てるときに、森林の状況をはかるために航空写真を撮らなきゃいけないのですね。これを撮るために、どの県は、いつ、どこを撮るかというのを、国はどこを撮るか、もっと言えば、国交省はどこを撮るかとか。その辺も全部調整されているのですよね。そういうやり方も一つあるのではないかなというような感じもしております。

【北海道】 北海道のモニタリングの調査ですけども、平成4年からライトセンサス調査ということで、東日本ではライトセンサス調査が多いですが、例年10月、日没後4時間以内に、一コース10km2をライトを照らしながら、オス・メス、大人か子供かと、そういう調査をずっと継続しております。そのようなことで、調査路線も、森林コース、農耕地ということで、毎年やっておりますので、ある程度、正確な生息数を把握できるような状況になりつつございます。

【石井委員長】 ありがとうございます。
それでは、午後も少し議論する時間がありますので、ぜひというご意見はそちらでお願いしたいと思います。問題点の整理は、多分次回以降の委員会でやることになりますので、今日はいろいろざっくばらんな意見を、質疑をしていただくということになるかと思います。
では、午前のヒアリングは一旦ここで終わりたいと思います。午後は狩猟団体からのヒアリングから始めたいと思います。
では、事務局に一旦戻します。

午後0時26分休憩

午後1時00分再開

【事務局】 それでは、時間となりましたので、午後の部を始めたいと思います。
石井委員長、よろしくお願いいたします。

【石井委員長】 それでは、まず狩猟団体からのヒアリングから始めたいと思います。
東京都猟友会の澤地会長、お願いします。

【(公社)東京都猟友会】 お疲れさまでございます。大日本猟友会傘下の東京都猟友会の澤地と申します。このような席でのお話は大変不慣れでございます。おつき合いよろしくお願いいたします。
では、早速ですが、議題に入らせていただきます。
狩猟界の現状と将来の見通しについて、私なりに申し上げさせていただきます。
狩猟界を取り巻く環境は年々厳しく、自然環境の変化、地域社会の変革などにより、特定の鳥獣が減少したり、あるいは特定の鳥獣が著しく増加したり、自然生態に重大な影響を与え、狩猟者の理想とする調和がとれない現況にあります。
近年、シカ・イノシシ・ウ、また、外来種による農林水産業への食害が出ており、タヌキ・キツネ・テン・イタチなどの増殖により、ウズラ・キジ・ヤマドリ・ライチョウなど地上で産み育てる鳥類が減少し、自然界のバランスの破壊が進み、特に北海道ではシカによる牧草・水稲・小麦などに甚大な被害が出ております。
その原因として、考えられることは、地球の温暖化による、野生鳥獣の死亡率の低下。その年に生まれた子供が冬には何%か死亡する。それが温暖化により、死亡率が低下したのではないかと考えられます。また、高齢化による狩猟者の減少。耕作放棄による餌場の拡大。このようなことが考えられます。
都道府県猟友会は「特定鳥獣保護管理計画」に基づき個体調整を行っておりますが、狩猟者の不足により、思うように成果が上がらないのが現状で、担い手の育成が急務となっております。
狩猟者の育成について。まず、高齢者の狩猟者救済について、最近の銃刀法の改正に伴う技能講習と称する実技選考により、多くの指導的立場の会員までもが選考不合格の烙印を押され、泣く泣く退会するに至っているのが現状です。早急に法改正をしていただきますようお願いいたします。
本来、狩猟の公益性について大切な事業は、人間社会と動物生息域とのすみ分けであります。国土の3割に私たち人間が生活し、7割の山間部に動物が生息している現状が、狩猟者の減少により、銃猟の激減により、人間社会が有害鳥獣の脅威にさらされ、里村においては離農農家が出ていると聞いております。
銃刀法改正のお願いについてです。3年に一度の猟銃更新時の技能講習、先ほど述べましたが、実技の考査がございます。狩猟の公益性について、一番大切な鳥獣を追い払う、当たる、当たらざるじゃなくて、鳥獣を追い払う。人間社会を有害鳥獣から守る、追い払うことが大切で、そこを理解せずに法改正をしてしまったことが一因と思われます。要するに、当たらなくても、安全に音を立てれば、鳥獣がすみ分けができるということを申したいのでございます。昨年、3年に一度の大量の狩猟免許更新が都内でございましたが、1,100人の方が更新をせず、狩猟をやめているということでございます。
私ども猟友会狩猟射撃研修会、大日本猟友会傘下の都道府県猟友会が毎年行っているフィールド射撃研修が最もふさわしいと思います。例えば、ライフルであろうと、散弾銃であろうと、フィールド射撃研修会で違反クレー、例えば、クレーはお皿ですが、オレンジ色のお皿の中に白いお皿がぽっとまざって出ると。これに対して、この白いお皿は人であり、車であり、人家であり、全ての向けてはいけないものですね。それに対して発砲しなければ、得点に関係なく合格させると、そのようなことでしていただきたいと思います。問題は、銃の取り扱いです。点数など関係ないのです。
私ども猟友会は、毎年研修会を春・秋に開催しており、この研修会の参加者は猟銃更新時の技能講習の考査実技の免除を与えていただきたいと思います。
初心者育成事業について、毎年、狩猟免許試験を、青年が受験しておりますが、残念ながら猟友会への入会までは至っておりません。会員の減少に歯止めがかからないのが現状で、現代の青年、若い人たちは、自分のパソコンを眺め、そのパソコンから閲覧ができないものは世間に存在しないものと認識するような傾向があります。私ども猟友会の各地区に対して、地区のホームページを掲載し、狩猟の公益性を訴え、会員を募り、猟野において初心者の指導に至るところまでお願いしているところでございます。
これは警視庁の調べですが、本年1月~5月、昨年より若い方が銃を持つ、試験を受けるのが67%増えたと。203名が受けたということを先日お聞きしました。そのきっかけは、漫画本で「山賊……」、名前は聞き取れなかったのですが、その漫画本の中に狩猟の記事が載っている。そして、猟をすると。その野生の肉、ジビエ料理がそういう人たちの中でブームになっていると。そのように聞いておりますが、その方たちは、私どもの会にまだ入っておりません。確かに狩猟の試験は、これから9月にかけて東京の場合は2カ所ございます。その方たちが入ってくだされば、最もよろしいことでございます。
また、一方で、私ども猟友会が行っている愛鳥奨励校指定事業として、毎年15校~18校に、金額で1校当たり5万円を贈呈しております。その金額で巣箱をつくろうと、何をつくろうと結構なのですが、そういうことで贈らせていただいております。狩猟の公益性を訴えており、品川区の小学校の教科書、都内の教科書にも、もちろん載っていると思うのですが、「大造じいさんとガン」という教科書の中にありまして、頭のよい水鳥と鉄砲を持つ猟師との話が掲載されております。この都度、学校より私たちの仲間に、実際の狩猟について講演していただきたいと依頼があり、生徒さんたちに狩猟の大切さについて話をしてまいりました。後に寄せられた感想文には、狩猟に対し意識の変化と成長ぶりがうかがえましたということを私も伺いました。このように、上辺だけの訴えではなく、草の根運動をしていくことが大切なのかもしれません。
次に、鳥獣保護事業について、自然界の鳥獣適正化は、「特定鳥獣保護管理計画」に基づきまして保護管理されておりますが、一般的には狩猟者と鳥獣保護と相反することのように理解されているのがとても残念であります。自然の鳥獣をただ猫かわいがりしたり、餌付けをしたり、本来の保護管理とは言えません。
人間社会には医学の進歩により、すばらしい社会の営みがあり、自然界の動物社会においては、増え過ぎれば病気などが発生し、お互いにうつし合い、結局は滅びる事態にあります。このような単位面積の適正生息数を維持するには、我々猟友会の狩猟活動が最も大切であることは疑いのないところでございます。しかしながら、公益事業を継続している猟友会の活動を各地区独自の広報活動を通じ広報することが肝要であると思います。
一方で、鳥獣保護の高まりとともに、一般社会から狩猟者への風当たりが強く、5年前の佐世保で起きた散弾銃乱射事件と、秋葉原の無差別殺傷事件が重なり、銃の所持そのものを否定する厳しい指摘が引き金となり、銃刀法の改正が行われ、厳しい現況に置かれました。
全国各地の田畑や山林から狩猟者が消え、約30年前には40万人を超える狩猟者が、現在は全国で12万人を切っております。これが現況下であります。その対策として、北海道では、何年か前ですが、自衛隊の応援を受け、ヘリコプターを飛ばしたりして捕獲をしましたが、費用ほどの成果は上がらなかったのは事実でした。1日目が0頭で、2日目が25頭か27頭くらいだったと思います。
今年も各地でクマが出没し、福島県では人が亡くなりました。人に危害が相次ぎ、その都度、猟友会員が出動しておりますが、高齢者に対しての銃の規制が厳しいため、銃を返納し、狩猟をやめる者が増え、駆除隊編成にも人手が不足する状況にあると聞いております。平日は、若い方は仕事に出ており、駆除隊は高齢者が行っているのが現状です。
クマに限らず、獣が出没する理由は、先ほども申し上げましたが、生活圏・里村で狩猟者の活動が減り、「けもの」とのせめぎ合いがなくなり、分布域が生活圏まで拡大したと考えられます。人に追われた経験をしていない「けもの」が人里に出没していると、有識者は分析しております。
農業、林業、水産業の人たちが、安心して生活ができる状況にするには、現在の法制度の規制緩和により、担い手づくりが必要であると考えます。
全国に生息する野生鳥獣は、鳥類が550種、獣類が80種、合計で630種、そのうち狩猟鳥獣は49種です。現在、ウズラは自粛で、この秋にはきっととれなくなると思います。捕獲は生態を乱し、農業、林業、水産業に被害を与える、人間に危害を及ぼすものに限られております。
猟友会は「特定鳥獣保護管理計画」に基づき個体の調整をしております。公益的な社会貢献をしております。よろしくお願いいたします。

【石井委員長】 ありがとうございました。それでは、今のご説明について、ご質問、ご意見ありましたらお願いします。いかがでしょうか。

【(公社)東京都猟友会】 よろしいでしょうか。私ども、決して警察が厳しく銃を取り締まっていることに対して反対をしているわけじゃないのです。ライフル銃の的が、オリンピック、国体、大学の公式戦で使う、このくらいの的です。この中の40点に当たらないと不合格ということで、ライフルには大変厳しいのです。そういうことで、私どもは言っているのであって、そのライフルを撃つ団体の弾をお見せいたします。これは空薬きょうです。皆さんも、昔、ボールペンがなくて、手帳の横についていた鉛筆がございますね。そのところについている、このような輪の中が専門銃の的を撃つ鉄砲の弾です。私どもが撃つのは、このような大きなけものを撃つ弾だと。それで撃ちますから、引き金の重さが2kg以上なんです。あまりにも軽いと暴発事故を起こしますから、2kgなんです。こちらの弾は、引き金をさわっただけで発射します。なぜかというと、ここで1mmずれると、先方に行ってこの的に当たりません。私どもの鉄砲では当たりません。警察が8割の方が合格しているというんですが、これを当たるためには、かなりの練習をしないと当たりません。東京には射撃場がございません。現在は栃木に1個、群馬県、それから、今年から静岡県の西富士で練習すると。そういうことで、ひとつ皆様、ご理解願いたいと思います。

【石井委員長】 いかがでしょうか。お願いします。

【小泉委員】 私も猟銃を所持しておりまして、昨年、技能講習を受けました。銃を所持して思うことは、銃を所持するまでも大変だけれども、実は銃を所持した後に捕獲ができるようになるまでの鍛練が大変難しいと感じております。
大日本猟友会は、新人ハンターの教育や会員の捕獲技術を向上させるために、例えば狩猟何段とかというような資格制度を設けると、上手にきちんと銃を撃てるハンターが増え、事故の起きない捕獲が進むと思いますが、その辺はいかがでしょうか。

【(公社)東京都猟友会】 おっしゃるとおりでございます。銃は危険なものですから、猟友会の先輩に当たる方が、初めて銃を持ったそのときに、誰に相談していいかわからない。それで、一人で山に行ってシカを撃つ、または動物にしろ鳥にしろ撃つと。そういうことになってきますと大変危険ですし、やはり今おっしゃられたように、都道府県の猟友会がみんなで初心者のための教室を、大日本猟友会でも昨年から教室を始めまして、今年から力をもう少し入れていくと。私ども東京都猟友会も、その初心者の方がやめていかれるので、せっかく銃をとったのにやめていかれて、どうしてやめたのと。いや、誰も相談する人がいなかった。残念なことにそういう話を聞きましたので、私ども、今委員の方からおっしゃられたことをしかと胸に刻んで、また私ども含めて、全国の猟友会に大日本猟友会から発信したいと思います。貴重なご意見をありがとうございました。

【小泉委員】 よろしくお願いいたします。

【石井委員長】 ほかにはいかがでしょうか。

【染委員】 銃刀法のいろいろな問題について、現在の鳥獣保護法の仕組みで、今回、猟友会としては、特にこういう点に問題があるということがあったら教えていただきたいのですが。

【(公社)東京都猟友会】 今、委員長のほうからお話が出ましたが、猟友会に関する仕組みというよりも、やはり一番大きいのは、5年前の乱射事件後の法律改正で、クレーの散弾銃のほうは全然厳しくないのですが、ライフルだけが国体の選手が当てるような的に弾を当てるという大変無謀な技術を求められたことです。実際、講習会なんですが、試験で落とされるということで、できましたら、反対するんじゃないんです。的を大きくしていただくなり、何かしら対応していただきたいと、そう思っております。よろしくお願いいたします。

【染委員】 すみません、ちょっと銃刀法について不勉強なもので、念のためにお伺いするのですが、今、話題になっている、この銃刀法改正の技能講習の目的、趣旨あるいは実技考査ですか、それの目的、趣旨なりと、今、大日本猟友会さんがおっしゃっていることとの意味合い、これを事務局のほうでわかれば、教えていただきたいと思います。私、銃刀法を知らないもので、わからないという意味で聞いているだけです、これは。

【事務局】 事務局ですが、私どもも、実際の試験に関わるところはわかりませんので、勉強させていただくか、次回、警察の方に来ていただいたときにご説明してもらうなどして、対応させていただきたいと思います。

【石井委員長】 ほかにいかがでしょうか。
もう一つ、伺いたいのですが、食肉類ですね、キツネやテンが増えて、地上で卵を産むタイプの鳥が減っているということが書いてありますけれども、これは何か、調査に基づいておっしゃっているというか、何かこれを裏づけるような調査結果というのはあるんでしょうか。

【(公社)東京都猟友会】 私ども、東京都猟友会だけのお話になりますが、東京都では、毎年、約150~160万のお金をかけて放鳥しております。そこは保護区、要するに、私どもが撃つ場所じゃないんですね。その減っている保護区へ放鳥しますが、ほとんどは野生化していないものを放すことのせいもあるのでしょうが、イタチ、キツネ、そういうものの餌になってしまうような状況で、現状はほとんど翌年まで残っているというのは少ないのでございます。そういうことで、確かに、キジ、ヤマドリは、今から20~30年前はどこの山に行っても、どこの畑に行っても出たのですが、もちろん鳥が少なくなっただけではなく、鳥を追い散らしたのかもしれませんが、開発に伴ったり、いろんな条件がついているのだろうと思いますが、確かに私ども山に行って、けものは増えているけど、鳥類は減っております。そう感じます。データはございません。すみません。

【石井委員長】 放鳥されたものが、どのように減少しているとか、そういう調査は幾つかあると聞いたことがありますが、その結果を踏まえた、一部は推測であると、そういうことですね。

【(公社)東京都猟友会】 そうでございますね。明くる年、足環のついている放鳥した鳥が何羽いたかというと、ほとんどゼロに近い状態でございます。その年に食べられてしまったのではないかという感じでございます。

【石井委員長】 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。よろしいですか。

(なし)

【石井委員長】 それでは、ありがとうございました。

【(公社)東京都猟友会】 今後ともよろしくご指導をお願いいたします。

【石井委員長】 それでは、続きまして、自然保護NGOからのヒアリングに移りたいと思います。
生物多様性保全法制度ネットワークから世界自然保護基金ジャパンの草刈さん、日本野鳥の会の葉山さん、日本自然保護協会の藤田さん、続けてお願いします。

【(公財)世界自然保護基金ジャパン】 WWFジャパンの草刈です。よろしくお願いします。
私と野鳥の会と自然保護協会の3団体で、順番に説明させていただきますので、よろしくお願いします。
私のほうからは「将来的を見据えた今後の法制度に向けて」ということで、お話をしようかと思います。
まず、この鳥獣保護管理の検討小委員会ですけども、鳥獣保護法に基づくということで進められておりますけれども、きちんと鳥獣法の目的を認識した上で進めていく必要があると、1回目の検討会で思いました。目的の1条を書いてありますけども、鳥獣の保護を図るためには、いろいろな事業を実施していくということで、最終的には、生物多様性の確保を目指していくということが、もともと目的に合っているということと、定義の2条に、この鳥獣法は、そもそも鳥類と哺乳類に属する野生生物をいうとなっておりますが、これまでの委員会は、特定鳥獣の議論中心でしたが、哺乳類、鳥類、全般について、どのようにして行くのか議論しておく必要があるのではないかと、1回目の小委員会を聞いていて思いました。
それから、「特定鳥獣保護管理計画」から「野生生物地域管理計画」へ。99年の鳥獣保護法改正のときに特定鳥獣保護管理計画制度が鳥獣保護事業計画の下につくられ、個体数管理と被害管理と生息地管理の三本立てで、これを計画的・科学的に進めていくということだったのですが、もう14年ぐらいたちますけども、結局、個体数管理がほとんどで、生息地管理については、ほとんどうまく動いていない。14年たって、科学的・計画的な保護管理計画制度は崩壊しているのではないかなという印象を持っております。
その後、農林水産省の鳥獣被害防止特別措置法ができて、多額な予算が被害対策にかけられているという事業が進められているわけです。この資料は、前回の資料をそのまま使っておりますが、鳥獣保護法と被害防止特措法をしっかり連携していくというのが、そもそもの計画だったと思います。特定計画が立てられている都道府県では、この特措法の被害防止計画との整合性が、そもそもの法律の仕組みとしてあったわけですが、この整合性が、今のところ、ほとんどとれていないことを、まず一つ、指摘したい。
私も、千葉県、愛知県等、色々なところの特定計画の委員をしておりますが、その委員会でも、特措法の動きとの整合性の議論はほとんどされていない現状があります。
99年の改正以来、何度か鳥獣法の改正がされています。2002年だったと思いますが、乱場制を廃止して、野生生物の保護管理の仕組みが必要ではないかという提案を当時しておりました。提案していたのは、野生生物の保護ゾーンと狩猟管理ゾーンを分け、そのほかの部分は人と野生生物との共存ゾーンということで、生息地管理や被害防除をしていったらどうだということを2002年に、私どもが提案していました。
その後、様々な法律の施策がつくられてきており、生物多様性地域連携促進法や自然公園法及び自然環境保全法の一部改正という流れの中で、いずれも星印をつけておりますが、地域連携促進法でもシカによる被害対策で何とか活用できないかということが入れられたり、自然環境保全法や自然公園法の改正で国立公園の生態系の回復事業をしていかなければならない、特措法の後、様々な法律ができて、対処していこうとしている訳ですが、なかなかそこがうまく進んでいないということです。
これも前回の資料ですが、鳥獣保護法の沿革ということで、明治6年から平成19年の特措法のところまで、スライドで書いてありますが、その後、今申した様々な政策がつくられてきているのですが、野生鳥獣をめぐる新たなニーズに対処すべきではないかということが一つの提案です。特に海のことですが、海洋基本法がつくられて、海洋基本計画が立てられ、海洋の生物多様性の保全が重視されてきている。それから、2010年の愛知目標で海洋保護区の保護区の設定について、これは世界的にやっていかなければいけないという話があります。この関係で、海洋生物多様性保全戦略の策定が上がってきている。また、沿岸・海洋の自然エネルギーということで、海洋の風力発電等の検討もしなければいけないということです。陸域の生き物だけではなく、海生生物までも含めて、議論を展開していく時期になっているのではないかということです。
以前、出した話ですが、80条の適用除外がつくられておりますが、これから鳥獣保護法を抜本的に見直す場合は、先ほど指摘したとおり、鳥獣法に求められているニーズが海まで広がってきていること、先日の種の保存法改正の国会議論でも、水産庁との覚書は無効という議論もございましたので、海生生物、海棲哺乳類についても、鳥獣保護法の対象として議論していく必要があるのではないかということ。この適用除外種を定期的に見直す科学委員会を設置して、検討していったらどうかというのが、このスライドでございます。
では、どういうふうに進めていくかということで、生物多様性を軸とした国土計画ということで、環境省の2001年につくられている生物多様性の国土区分というのが、以前ありました。10区分に区分けされてきているということで、このような生物多様性の国土区分に応じた野生生物の保護管理や保全管理の仕組みを考えていくことが重要ではないかなと考えているところです。
今の国土区分の話は、国がやっている国土強靱化計画や、地域主権改革、地方分権、そのような大きな流れがあるわけですけが、それらの制度と、その野生生物の生物多様性の国土区分がマッチしていないということも、一つ申したかった。そのような視点から、見直す必要があるのではないか、ということを入れているのがこのスライドでございます。
私の話を簡単にまとめますと、科学的・計画的な保護管理計画制度はもう既に崩壊していて、鳥獣被害特措法も、特定計画とはほとんど連携されていない。幾つか環境法令の改正等で対処してきていますが、その範囲も超えたという状況ではないか。
さらには、沿岸・海洋などの新しいニーズの対応も求められているということですから、鳥獣から野生生物まで、対象範囲を拡大していくということと、地域主権や道州制など、国土強靱化など、いろんな時代のニーズがありますから、そのような時代のニーズに応じた野生生物の保全計画をつくっていく必要があるのではないかということを提案しているところであります。
あとは野鳥の会ですね。バトンタッチいたします。

【(公財)日本野鳥の会】 日本野鳥の会の葉山でございます。よろしくお願いいたします。
今回、第1回の配賦資料で見ますと、中央環境審議会に諮問されたものとして、大きく二つあると思います。一つは鳥獣の保護管理についてということで、多分この委員会、小委員会の主要な議論はここになると思いますけれども、もう一つ、平成19年4月以降の鳥獣保護法の施行の全体の見直しということがありますので、今日は鳥獣の保護管理についてお話をして、最後に鳥獣保護法全体を通して、今後、見直すべき問題を羅列して、終わりにしたいと思います。
鳥獣の保護管理についてですけれども、平成11年に鳥獣保護法が改正されて、特定鳥獣保護法管理計画制度が創設されました。平成19年度に鳥獣被害防止特別措置法が施行されましたけれども、現状として農業被害や森林被害はおさまっていません。このことから、もう法律の一部変更による対症療法では対応が不十分じゃないと考えております。
確かに、この法律ができて、シカの捕獲数、イノシシの捕獲数ともに増えております。特にシカは特定計画による捕獲もかなり増えてきていますけれども、右側の図にありますように、被害金額はほぼ横ばいか、増加傾向。イノシシ科の分布域は拡大しているということで、狩猟、特に自由狩猟による個体数管理を基本とした現行の鳥獣保護法では対応は難しいのではないかなと思います。
その一方で、都道府県では、イノシシやシカの狩猟範囲を拡大するということで、鳥獣保護区の削減が相次いでおります。これは朝日新聞の記事ですけれども、6年間で7.2万ヘクタールの鳥獣保護区が更新の見送りをされています。
これは「早わかり鳥獣被害防止特措法」という、自民党の関係の議員さんたちがまとめられた本ですけれども、そこに被害対策の基本というのが載っていまして、農業被害対策の方法としては四つありますよと。一つは、浸入防止柵の設置と環境整備、この柵の外側ですね。あと被害を受けない作物への転換、あと個体数管理、被害が出る地域からの撤退と、四つの選択肢がありますよということで、それを小寺さんという方が、その中にコラムとして書いていますけれども、対策は個体数管理と環境整備、両方が必要だと。特にシカに関しては、生態系への被害もあることから、計画的な密度管理が必要と言われています。
ところが、このことを、今後、地域で担うことが難しくなと考えております。理由といたしましては、先般、出ております狩猟者の減少、高齢化による狩猟圧の減少、地方では耕作放棄地が増えて、最近、20年間では3倍に増えております。2050年までには人口が減少して、無居住地がかなり増えると言われています。限界集落も増えてきますし、その時点で人口のほとんどは都市に集中すると言われています。そういう地域では、農業被害は少なくなっても、特に生態系被害をもたらしているシカのコントロールというのは難しくなってくるのではないかなと思います。
これは鳥獣被害特措法の施行規則の附帯決議ですけれども、被害対策の基本としては、鳥獣の生息地の環境を整備するとか、耕作放棄地や里山の適切な管理が大切だというふうなことがうたわれています。このとおりだと思います。
近い将来に予測される社会変化である人口減少、過疎化、都市への人口集中、高齢化が引き起こすものは、この鳥獣被害の拡大だけではないと思います。里地・里山の生物多様性の低下、人工林の放置、それに伴う食料や木材資源の海外依存の拡大、そういうことが起きると考えております。
これを一つ解決するのに、新しい土地利用のあり方というのがあるのではないかなと考えております。都市とか、農地とか、人間の活動エリアとして人間が防除する部分、その外側に野生生物の共存のためのゾーンというふうな考え方を持つことが必要じゃないかなと思います。外側は原生的な環境が主な部分ですね。これまで、いろんな土地の区分が出されています。国土利用計画では、都市、農業、森林、あと自然保護地域というふうな大きなくくりで、これは高度経済成長期に対応したものでありました。一方、生物多様性国家戦略では、奥地・奥山から里地・里山・田園、都市地域というふうに分けられていますけれども、今後、人間が都市に集中し、農地もだんだん減少していく中では、地域が一体となって人間の生活圏を守り、動物とのあつれきを防ぐためのゾーンが必要じゃないかと考えております。
このゾーン等をどういうふうに使うかというイメージですけれども、一つは、人間の活動エリアでの野生動物のあつれきを防ぐための環境管理を行う場ですね。その管理の方法としては、一つは、里地・里山的な管理ということになりますと、見通しのよい林や草地ということで、生物の多様性の保全にも役立つと考えます。また、遊水地ですとか、河川の自然再生などによる防災と生物多様性の確保、人と自然の触れ合いの場、草地や人工林での木材の生産の場ですとか、木質・草などのバイオマスエネルギーの生産の場など、さまざまな利用をする場と考えております。
管理のイメージですけれども、もう一次産業の生産者だけ、もしくは地域の自治体だけで、野生生物とのあつれきを解消するのは無理ですし、また、さまざまな利用が考えられますことから、政府、地方自治体、生産者はもちろん、都市住民も含めた地域主体の管理の場とすることが必要と考えます。そのほか、環境省だけでなく、農林水産省や国交省など、そういういろんな団体の関わりが必要になってくると思います。
鳥獣保護法は、狩猟の規制による鳥獣保護が基本で、生息地管理というのは、鳥獣保護区の中でしかできません。そのためには、新たな法律が必要ではないかなと考えております。
鳥獣管理の特定計画以外の鳥獣保護法の改正のための今後の検討ということで、加えるものですが、一つは、乱場の廃止、可猟区の設置と狩猟の場のあり方、あと使用禁止猟具の所持規制、愛玩飼養制度の廃止、流通規制の制度の見直し、輸入証明書の除外規定の廃止、罰則の引き上げ、あと海棲哺乳類の除外規定の廃止、特に防除特措法ではトドも対象となって、北海道の幾つかの市町村では、トドを対象にした計画もつくられておりますので、これを盛り込むことが必要かと考えています。
本日は、突然、アイデアレベルの話をさせていただきましたが、特定鳥獣の保護管理問題は、根本的に解決するには、鳥獣保護法の枠にとらわれない、活発な議論を先生方にやっていただきたいと思います。今回の答申に盛り込むことができなくても、その議論をさらに上の親部会等で議論いただき、根本的な解決に向けていただければと思います。ありがとうございました。

【(公財)日本自然保護協会】 日本自然保護協会の藤田と申します。着席にて発表させていただきたいと思います。
自然保護協会は鳥獣法に関して、昔から提言などを行っておりまして、ここにいらっしゃる坂田委員や羽山委員にも協力いただいた、こういう普及書のような、一般の人にもわかりやすいような、そういう提言をしっかり世の中にちゃんとわかりやすくするというようなこともやってきた団体です。
鳥獣法は、保護と被害の防止というのが主に目的となっていて、それをもって、生物多様性の確保や農林水産業の健全な発展に寄与しようということになっています。
平成11年に大きな改正として、科学的な管理をしっかり個別の種ごとにやりましょうという「進化」があった。しかし実際は、法改正を行った後、捕獲は進んできたが、被害が減っていないのが現状です。
生物多様性に関しても、2007年にレッドリストを見直しをして、今、2012年にまたレッドリストを見直していますが、植物では、シカの被害によって、レッドリストのランクが上がるというものが多数出てきておりまして、生物多様性に対しても非常に大きな影響を与えていて、それが止まっていないということですので、今の現状では、抜本的な改正をしなければ、この状況は変わらないということだと思います。
この課題に関しては、一つは、先ほど自治体の方々が発表したように個別の対応に追われていて、計画の有効性の検証や生物多様性の確保というのも入っていても、とてもそこまでできていないというのが現状だと思います。
それから、特措法と鳥獣法という縦割りがあるということと、あとは県境をまたぐような広域システムというのが不足していて、調査方法だとかが県境をまたいで、そもそも調査方法が違うとか、メッシュの形が違うなど、全体を見たときの広域な管理システムというのがまだ不十分だと思います。
都道府県の鳥獣法管理計画に関して、本来、三つの柱でやっていくということになっていますが、個体数管理が先行していて、実際のその生息地管理や被害対策というのはまだまだできていない。それは、土地利用に関わるような法律との調整が難しいということが、一番に挙げられるかと思います。
あとは、市町村の現場、主に特措法でやられていることに関して、例えば群馬県などで、実際に現場を見させてもらっています。その中では、地域ぐるみの被害対策やモニタリングなどをやることになっていても、現場では補助金の処理をすることに、市町村の担当者は追われているのが現状のようです。
一方で、羽山先生が関わっている先進事例として、地域ぐるみの被害対策の事例もも、見させていただきました。地域ぐるみでしっかりやっていこうということを一つずつモデルをつくって、それを広げていこうということでやられているというのを幾つか見させてもらったんですけども、そこでは、その予算とか人材が不足している。特に地域で、受益者負担なので、地域の人が主体で担ってもらうということですが、地域のリーダーがやっぱり不足しているとか、その人に対する負担が重過ぎるとか、あとは、地域ぐるみの対策をやったときに、フェンスをつくるとか、耕作放棄地に草刈りをするというときでも、土地利用がとても複雑で、それをちゃんと調整するというのは非常に難しくて、本来望ましい計画が書きづらいなどの課題があるようです。あの人の土地にはフェンスは立てられないとか、そういうところの調整というのが、結局、地域だけで担うだけでなく、地域をサポートするコーディネートする人がもっと関わっていかなければ、到底できないのではないかというのが私の印象です。
先ほど、葉山さんからもあったように耕作放棄地について、2050年までの姿というのは、人が住まなくなるようなところがたくさん増えてきて、しかも、その場所というのは日本全国に広がり、それはほとんどが農林業地域であると予測されています。今までのやり方でやっていては、人とのあつれきをなくすということもそうだし、そのグランドデザインをどうするのか。特にさっき言った、「地域ぐるみの獣害対策」については、この地域の将来がそもそもどうなりたいのかということがまず先にあるべきで、あくまで獣害対策はその中の一部でしかない。そういう将来の姿もちゃんと見据えた上で、一体どんな野生動物管理をすべきなのかというところまで踏み込まないと、これからはできないであろうというのが、もう近い将来、来ているということだと思います。
あとは、狩猟の場の問題としては、NGOからずっと言ってきたことですけども、狩猟の制限区以外に、基本的には狩猟ができるということになってますが、それには大きな課題が二つあります。一つは、例えば農耕地などで銃が撃たれるということに対して、住民から苦情があったりだとか、危険だと思われることや、その制限区域がわかりづらいこと、自由狩猟のために個体数管理が難しいこと等、これらの課題を解決する必要があると思います。
自然保護協会としての提言としては三つあります。一つ目は、先ほど言いました、省庁横断型でしっかりやる必要があるということです。特措法と鳥獣法で、それぞれ連携してやるように、法律上ではそうなっているんですが、それは不十分であって、特措法、鳥獣法それぞれでバラバラに対策が実施され、また個体数管理しかできていないのが現状です。長野県とかでもお話がありましたけども、例えば内閣府にしっかりした対策チームみたいなものを設けて、農水省と環境省、しっかり連携してやるべきだという提言です。今日、農林水産省の方とかいらしていますけど、この会議の中にはいなくて、外であくまで傍聴しているという状況は、これは典型だと思うんです。農水省も会議の中に入って議論する場にしていかなければいけないと思います。
それから、あとは国に関しては、基本方針だけ立てるということになっていますけれども、先ほど来ずっと自治体の方々が、やっぱり広域的な管理が、国が主体になってやってほしいという話があったと思いますけども、そこをしっかり担保するような組織だとか体制、特にモニタリングなどは、国が率先してしっかりやるとか、人材育成というのもやるべきではないかと思います。
それから、もう二つ目の提言は、先ほど言った、将来どうするのかというゾーニングの見直しを含めた、鳥獣法の改正を考える必要があるということです。詳しくは、葉山さんのほうから言っていましたけども、鳥獣法の枠組みの中での話で言いますと、乱場制をまずは廃止して、狩猟は猟区の中でやっていただく。ただ、狩猟の個体数調整機能というのは非常に強いと先ほども言っていましたので、その経過措置なり、どういうふうに区分するのかというのは、しっかり考えていく必要があると考えております。
それから、3番目の提言に関しては、狩猟に依存しない、その野生動物管理をするための人材をしっかり確保しましょうということです。これは、平成20年度の環境省の調査で、都道府県で担当している人たちの職種を見ると、1,000人だけで見ても、都道府県の中で326人いるんですけども、そのうち事務職が3割ぐらいを占めていて、しかも異動が多いという中で、専門家をしっかり育成できるような状況にはないというのが現状です。そのため、自治体においてまずは専門職の職員を確保するべきです。また、幾つか先進的な事例として、群馬県と日獣医生命科学大学が一緒にやっているように大学などととの連携も含めたその人材をちゃんと育成するという仕組みをしっかり国のほうでも考える必要があるということです。
二つ目の鳥獣保護員ですが、今は、法律の中では非常勤となっているんですが、この人たち、最前線を担う大事な方々でして、今は2005年時点では3,000人、日本全国にいるということになっていますが、給料は、年間平均で言うと14万程度しか出ていないという状況で、現場で頑張っていただいているということです。予算で言うと、2005年、この保護員自体は狩猟税の中から6億円が支出されていますが、この狩猟税のうち、さらにキジの放鳥に実4億円使われていました。このキジの放鳥だけに4億円の税金を使うのであれば、鳥獣保護員の方々にも、もう少し予算を振り分けるなど、今まで税金の使い方を見直すだけでも、大分財源というのは出ると思います。
それから、今まで挙げたもの以外にも、海生哺乳類の除外規定であるだとか、あとは「種の保存法」で、今、2030年までに600種追加するとなっていますが、絶滅危惧種になる前の適正な管理というのが大事ですので、そういったところもしっかり将来的には見据える必要があるというふうに考えております。
以上です。

【石井委員長】 ありがとうございます。
それでは、今のご説明について、ご質問、ご意見がありましたらお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
予定よりも少し早く終わったので、もし、補足したいようなことがあれば、それを言っていただいてもいいのですが、特にございませんか。質問に対しての回答でよろしいですかね。

【(公財)世界自然保護基金ジャパン】 では、補足というよりも、一つ思い出したのですが、99年の改正の後、または、2002年改正の後に、幾つかの部会に分かれて議論していた話がありましたね。人材育成のグループなどグループ分けして、随分前ですけど。あのときに、たしか鳥獣保護法改正の本当の目玉は人材育成かなという話があったのですが、それは法改正につながらないままで終わっていて、結局、毎回、開催していろんな議論をしていくのですが、それがうまく積み上がっていないのも、結構問題点としてあるのかとおもいます。あの時は、三浦先生も、そのメンバーだったと思いますが、何年でしたか?
何かあれで幾つか、私も何かのグループに入って話をしていた記憶があるのですが、あのようなグループ分けして議論することは、非常によかったと思うのです。その後、発展がないままだったので、もったいないと個人的に思っています。

【石井委員長】 何か。

【事務局】 当時、いろいろとグループを分けて、精力的に議論をしていたということは、もちろん承知しておりますので、その議論の結果、その過程も含めて、今回の改正といいますか、見直しの中では検討していくということになるかと思います。一部、当然そのままということではなくて、人材登録事業は制度にはならなかったですけど、事業という形で実施をしているといったことはございますが、改めて、今回の議論の中でも、その当時の議論も踏まえて、検討していきたいと思っております。

【(公財)日本野鳥の会】 教えていただいてよろしいですか。ちょっとどなたにお聞きするのがいいのかわからないですけれど、やっぱりシカの問題というのは、野鳥の会の会員も、非常に何かこれはもう大変な問題だなと言っておりまして、常々は、どちらかというと、狩猟に反対する会員も、シカの問題をどうにかしなきゃいけないなと言っています。シカが今すごく増えてきていますけれども、明治の最初のころや、江戸時代のころって、もっとシカが住む草地環境がたくさんあって、シカの生息にはもっと適していた自然環境だと思うのですけれど、何でこの草原などがどんどん減っているこの時期に、シカが増え続けているのでしょうか。どなたか、ちょっと教えていただいて、この後、シカの問題をいろいろと考えるに当たって、ヒントにさせていただきたいと思うのですけれども。

【小泉委員】 今、シカが増えている、捕っても減らない理由の一つに、妊娠率が高いということがあります。メスジカは生後16カ月ぐらいで性成熟するのですけれども、その時点で約8割の個体が妊娠します。妊娠から230日~240日後に、6月ぐらいに1頭の子供を産みます。そして、その秋に再び妊娠し出産する。満2歳以上の妊娠率は約90%です。高い妊娠率は10歳を超えても低下せず、16歳ぐらいまで妊娠します。また、高い妊娠率は長期間維持されます。これらのことから、シカの増加ポテンシャルというのはかなり高いと考えられます。4~5年で個体数が倍ぐらいになるのではないかという予測もあります。
個体数がこれまでに多くなった理由の一つに、メスジカを捕獲しなかったことがあります。鳥獣統計を見てみますと、1990年ぐらいまで、全捕獲数に占めるメスジカの割合は1割か2割ぐらいです。増加ポテンシャルの高い動物のメスの捕獲を戦後約60年間規制してきたことが、現在の状況の根本にあると思います。ただ、全国的にシカの個体数が著しく減少していた戦争直後の状況では、メスジカの捕獲を厳しく規制した間違いではなかったと思います。保護増殖を図り、将来は資源管理しようという思いが途中から薄れ、メスジカの捕獲制限だけが残ってしまったのが問題だったと考えています。

【石井委員長】 ほかにいかがでしょうか。

【坂田委員】 最初に、草刈さんから、科学的・計画的な保護管理計画が崩壊しているという話がありましたけれども、そのあたり、具体的に、例えば一番重要だと思われる点で、どういうところで崩壊していて、それのために必要な対策といいますか、求められることは何か、もしよければ具体的にお話を聞けたらと思います。

【(公財)世界自然保護基金ジャパン】 都道府県の検討会に出ていても、ほとんど個体数の管理、個体数については、妊娠率や科学的なデータなど、確かに資料はたくさん配付されて、議論されているのですが、被害対策については、では具体的にどのような計画を立ててやっているのか、その点は、ほとんど資料がない、やれるところだと、柵を作るデータしかない。ましてや、生息地管理については全くないです。本当は、科学的・計画的な保護管理制度で、個体数管理と被害対策と生息地管理の三角形が、きちんと正三角形として機能すればよかったのですが、やはりその点、地域に人材育成がないとか、人の問題はあるとは思うのですが、そういった人が育てられていないというのも一つあると思う。少なくとも私の経験では、愛知県の特定計画では、生息地管理があまり進んでいないということです。
被害対策については、特措法の関連で動いているのですけれど、先ほどお話ししたとおり、特定計画と特措法については、連動・連携がされていないので、本来であれば、特定計画と特措法がうまく連動して、被害対策について特措法のこの部分でうまくカバーし、計画しましょうという議論もされていない。やっぱりそこら辺をうまく機能回復したら、それがうまく進むのかどうか? ちょっと検証していかなきゃいけないのかもしれませんが、少なくとも私が関与しているところでは、二つの法律の連動は見受けられないということです。

【坂田委員】 ありがとうございました。個体数管理などが、なかなか思うようにいっていないというところもありましたけど、午前中の都道府県のヒアリングでも出てきたように、間違っているところをだんだん修正しながら、精度を高めていくということは進んでいるのではないかと考えています。例えば生息地管理、どういうことが、具体的に現場でやられてみて、実際問題として、例えば被害対策なり、今、一番起こっている、皆さんが困っていらっしゃる問題に関して、生息地管理ということで、例えば具体的にどういうことをやれば良いのか、その生息地管理の効果が出る手法というのは何かありますかね。

【(公財)日本野鳥の会】 よく言われている話で、やっぱり農地と山との間に緩衝帯をつくって、そこをきちんと管理していくということではないのかなと思います。特に最近、耕作放棄地ですとか、果樹をその木につけたまま放棄されているような場所、そういうところで、要は野生動物と人間との適正な距離がとれていない、活動圏の間に距離がとれていないというのも問題ではないかなと思います。特に農地の周りは、草地や、見晴らしのいいような環境をつくるとか、そういうことがまずは必要なんじゃないかなと思います。
森林に関しては、基本的には、やっぱり個体数管理を徹底してやる。エリアを選んでやるということじゃないのかなと思います。
今回、この特定鳥獣の話が出るということで、昨年ぐらいから狩猟の本も読んだりもしていますけども、やっぱりヨーロッパなんかでは、森林なんかはエリアをちゃんと決めて、そこで入る狩猟者からお金を取って、お金を払ってじゃなくて、お金を取ってやるのですけど、狩猟者はちゃんとその狩猟をしたことによって獲物がちゃんと流通する、そういう仕組みもつくっていますので、個体数管理と生息地管理というのはセットで回していくということではないかなと思っています。

【(公財)世界自然保護基金ジャパン】 WWFジャパンで、四国のクマの事業を長くやっているのですが、四国のツキノワグマは10頭ぐらいで、絶滅のおそれが高いと言われています。四国のクマは、山頂のわずかに残っている広葉樹の森を利用して生活しているわけです。本当はもっと針葉樹を広葉樹の森に転換していく、彼らの生息地も広まると思いますが、そういうところがなかなかうまく進んでいない、それも一つの生息地管理で大事なものだと思います。四国のクマの場合は、そのような生息地をもっと増やしていって、個体数を増やすということもある一方で、非常に深刻な問題が起きていて、四国のシカを駆除しなきゃいけない。どちらかというと、シカの対策がウエートが高くなってしまっているがために、クマの保護区の拡大にならないという現状がある。これも科学的・計画的に進めていくときには、両方のバランスを考えなきゃいけないと思うのですが、そこもうまく進んでいないというのもある。そこら辺も、今後、改善していかなければいけないポイントもあるのではないかと思います。

【羽山委員】 3団体の方、どなたにお答えいただいても結構ですが、共通するご提言の中に、やはり狩猟のあり方を見直すべきだということがあると思います。鳥獣保護法第2条第4項で、鳥獣保護法でいう狩猟とは、「法定猟法により、狩猟鳥獣の捕獲等をすること」となっているんですね。ですから、私が聞いた範囲では、それぞれの団体がおっしゃっている狩猟というのは、いわゆる自由狩猟、個人のプライベートな目的で猟期に捕獲を行うということを指されているのかなと思うのですが、一方で、午前中の行政の方もそうですし、先ほどの猟友会の方もそうなんですが、そこで使われている狩猟というのは幅広の鳥獣法による定義で、なおかつ、それには公益性があるのだと、そういうご主張だったと思います。NGOとして、この狩猟というのは、どういう範囲のものをどうすべきだと、あるいは、それ以外の捕獲については、誰がどう行うべきだと、そのあたり、ちょっとはっきりしなかったので、お答えいただきたいと思います。

【(公財)日本野鳥の会】 3団体、それぞれ、一つは場の話というのが出ていたと思うのですけれども、それでいう場というのは、結局、全国乱場制ということを指していますので、自由狩猟を指している言葉ですね。
日本で、例えばこの鳥獣保護管理で狩猟をやる、狩猟というか、捕獲等を行う場合というのは、猟区でもないですから、ボランティアという活動、位置づけ、もしくは行政からの委託、依頼という形でのものですので、そこは、私どもがさっき使っていた狩猟という言葉とは区別するものだと思います。

【羽山委員】 そうすると、その部分は自由狩猟じゃない、個体数調整に関しては、公的な意味づけの中で行うべきだと、そういう意味でしょうか。

【(公財)日本野鳥の会】 はい、そういう意味です。

【羽山委員】 ありがとうございます。

【小泉委員】 午前中の論議で出たと思いますが、プロの捕獲技術者が求められた仕事をきちんとこなす、通常の事業と同じように専門業者が捕獲事業に参画するというのは、ポジティブなイメージでしょうか、それとも、あまり受け入れがたい、ネガティブな感じがあるのでしょうか。

【(公財)世界自然保護基金ジャパン】 私、千葉県の特定計画の委員をやっているのですが、千葉もプロのシャープシューティングができる方がいて、かなり捕獲される方がいます。先ほど免許を取るために的を拡大したほうがいいというお話もありましたが、やはりきちんと技術者が1頭を確実に射とめるということは大事なことだと思います。そのようなプロの技術者が地域・地域にいて、保護管理の目的をちゃんと達成するというのは大事なことだと思います。特定計画で、冬季の妊娠中のメスジカをとることによって、個体数を落とせるというのは前々から言われているわけですが、冬季のメスジカが、多分うまくそのように獲られていないので、コントロールできないということだと思うので、それはきちん捕るべきところで捕ることを進めることができれば、科学的計画的なものが進められていくと思うので、重要なことではないかなと思います。

【小泉委員】 崩壊させないためにも技術者は必要です。

【(公財)日本野鳥の会】 野鳥の会でも、滋賀県のカワウ、やっぱりプロの集団に駆除を任せることによって、初めてうまくいき出したということがあります。そこはちゃんと技術を高めたプロの集団をつくっていくというのは大事なことかなと思っています。

【石井委員長】 ほかに。お願いします。

【三浦委員】 ありがとうございました。3団体の方の大枠のところで、ちょっと個別的に違うところもあったけれど、大きく見ると、今回の問題点は、乱場制の問題、つまり保護区の場の問題、鳥獣保護員の問題を提示していくべき、海生哺乳類も入れるべき、特定計画は破綻しているということでここのところをまず変えなければならないということだけれど、何というか、ウエートを置くとしたら、どういうことになるでしょうか。

【(公財)日本自然保護協会】 自然保護協会としては、ちょっと個人的だと思いますけど、やっぱり人材育成が一番大事だと思っています。

【三浦委員】 人材育成とはどのいうことでしょうか。もう少し詳しく。

【(公財)日本自然保護協会】 被害対策もそうですし、あと捕獲もそうですけども、それは、結局、地域の方々や行政の方々が担っているので、その人たちがしっかり職につき、しかも、その人たち、ちゃんとステータスもあるというものにしていかないといけないと思います。狩猟にだけ依存している現状を変えていかなければならない。今、捕獲数は、狩猟と捕獲が半々ぐらいになっているが、そこをもう少し計画的に実施可能な捕獲を増やす必要があり、そのための人材をしっかり育成していかなければ実現できないと思っています。

【(公財)世界自然保護基金ジャパン】 私も、人材育成は大事だと考えます。今からそのような狩猟者を育てるにしても、大型獣を獲れるというのは、かなり経験を積まなければいけないものですし、やはり現場では、被害対策をどのようにしていくのかというところ、その被害対策ができる専門の従事者もありますし、現場でそういう状況を見ながら、科学的に計画するような専門家の従事者もいると思うので、そういう専門家のいろいろなカテゴリーのプロのレベルの人たちが、うまく現場に配置してやっていくことが大事だと思うので、人材育成というのは非常に重要なことではないかと思います。

【三浦委員】 特定計画は破綻しているという話ですから、ちょっとコメントさせてもらうと、個体数調整というより個体群管理は、真っ当な形、つまり、科学的な格好でやれていないわけです。特定計画の制度そのものというよりも、それを担っている人々も含めて、まともにウエートがかかっていないのですよね。その個体数の調整、個体群の管理ということもまともにできていなくて、それで、もう一方では、個体数調整ばっかりに偏ったという言い方をしていると思う。被害の管理や生息地をどうするのかという問題も絡めて、できていないというか、そういう現状だと思うのですね。だから、個体群管理ばっかりに偏ってという言い方ではなくて、やはり当初どおり、三位一体で進められるような人材の体制を、NGOも含めて、つくり出していくことが重要だと思っています。

【石井委員長】 少しそれに関連して質問ですが、個体数調整というのはやっぱり即効性があるので、うまくいっていないところもあるけれども、それなりの意義というのは果たしていると思います。ただし、足りないことはいっぱいあって、特に人材育成、もっともっと担う担い手が増えてこないと仕方がないというところで、一つは、いろんな仕組みを考えるということがあります。もう一つは、やっぱり日本の自然というのが、今、激変していて、積極的に人が介入していかないといけない状況にあるということを一般の人はほとんど知らないと思うのです。別のところへ行くと、動物は減っていて、人間が山を荒らすので、人里におりてきているみたいな認識をもっている人がほとんどです。そういうのはやっぱり変えていかなきゃいけなくて、一般の人たちの理解というのも必要だし、それができてくると、担い手になるというような人も増えてくると思うのです。そのときに、自然保護NGOとしては、一体、そういうふうに今の状況を変えていくときに、どういう役割を果たしたらいいと思っているか。普及の役割もあるし、いろいろ行政に要求も一方でしていきつつ、自分たちがどういうことをこれからしていくと状況が改善していくと考えているかを伺いたいと思います。

【(公財)日本野鳥の会】 先ほど申しましたように、野鳥の会というと、よく狩猟反対と言っている。けれど、やっぱりシカをどうにかしなきゃいけないと認識している人というのは、やっぱり現場を見ている人なんですね。ですから、これから国民がもっと自然との距離を近くして、自然に触れ合う機会を増やしていくということが大事なんじゃないかなと、私、野鳥の会では思っています。

【(公財)世界自然保護基金ジャパン】 この鳥獣検討会で何度も出てきている話ですが、鳥獣保護事業計画は、都道府県がつくることになっています、何故、国の鳥獣保護事業計画をつくらないかということです。やはり国の計画を作ることで、広く社会に訴えるわけですから、計画は都道府県に任せて、ではなく、大きな方針を示す必要がある。今後、鳥獣法の見直しを考えるときに、国は、生物多様性の国家戦略はあるが、鳥獣保護法もしっかり計画を立て、鳥獣行政なり、野生動物行政なりを国として計画を立てて取り組んでいくことを広く知らしめていかない。普及啓発教育というのはなかなか進まないと思いますし、やはり外来生物法のときも、普及啓発教育は重要だという議論もされています。つい先日の種の保存法のときにも、やはり学校教育、社会教育、これは条項で設けられましたから、これから普及啓発が進んでいくと思いますけれども、やはり鳥獣行政なり、鳥獣保護管理についても、何が正しい保全管理なのかというのを普及啓発で広めていくということは大事だと思いますの。これを検討する目玉の中にいちづけて、議論していくことが、非常に良いかもしれません。
マスコミについても、本来計画があるべきだという、一般の普及啓発と同時に、マスコミで広める人たちに対しても、正しいものを伝えていくことも大事だと思いますので、その役割分担と中身を議論して整理していくということは大事なのではないかと思います。

【(公財)日本自然保護協会】 個人的な部分になってしまうと思うのですけれども、自然保護協会というと、狩猟をしないでくれみたいに見られてしまうところがあると思うのですが、決してそんなことはないです。そういうのを会員の方々全員が知っているかというと、そうではないところがたくさんあると思うので、今までの事例も含めて、やっぱりちゃんと人間の手を入れることが、生物多様性の保全にちゃんとつながるのだ、狩猟もその一つであるということを、私はぜひ入れたいと、普及していきたいと個人的には思っているということです。あともう一つは、私自身が「赤谷プロジェクト」という林野庁との共働プロジェクトをやっているのですけれども、その中で、鳥獣被害というのは、常に地域の方々の大きな関心事でして、それを話題として出すと、じゃあ、赤谷プロジェクトがやってくれるのかと思われ、まずは要求するという地域の方々というのも一方でいます。さっきも言いましたけど、この地域をどうしたいのかということとセットで、やっぱりその森全体をどうしていきたいのかというのを一緒に考えていかなければいけない場だと思うのです。そういうのをどのようにつくっていったらいいのかというのを日々考えるのですけれども、それは、何かそういう役割がNGOにもあるのだと、その中の一つとして、鳥獣も一緒に考えていくというプロジェクトに私はしたいと思っています。いろんな人にそれをわかってもらいながらやるというのがとても難しいのですが、そういうところをNGOとしてつくっていかなければいけないと思っています。

【石井委員長】 ありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。

【羽山委員】 またわからなくなってしまったのですが、日本語だと鳥獣法の定義が幅広過ぎるので、英語でハンティングとカリングというふうに分けたときに、今のご意見は、ハンティングについても公益性があると、そういうご意見でしょうか。結果的に公益性があるということをおっしゃったのでしょうか。

【(公財)日本野鳥の会】 野鳥の会ですけども、カリングというのは公益性があるものですけれど、ハンティングというのは趣味の一部だと認識しております。

【羽山委員】 でも、自然保護協会さんのご意見だと、それを、必要なものだということを広報、普及されるという。それはどこから出てきたのでしょうか。

【(公財)日本自然保護協会】 ごめんなさい。「狩猟」という言葉をちょっと私が間違えて使っていました。本来であれば、公益的機能を先にちゃんと置いた上で計画的に捕獲するというのが、本来の姿であるというふうに考えています。答えになっているかどうかはわかりませんが。

【羽山委員】 わかりました。ありがとうございます。

【(公財)世界自然保護基金ジャパン】 千葉県の例ですが、猟期の捕獲数は、狩猟者が行って獲るわけで、それに鳥獣被害対策とか保護管理での個体数を上乗せして、どのぐらい獲とられたということで進めている。どこの自治体もそうかもしれませんけど、やっぱり猟期に獲るということ、そのハンターの人たちが保護管理の一部を担っているというふうな意識改革をしていかなければいけない。公益性を担うための狩猟としてやってもらっていくためには、それも一つの要素ではないかと思います。

【羽山委員】 ということは、将来的には、やはり狩猟をきちっと公益性のある活動だと、そういう位置づけが必要と、そう理解してよろしいですか。

【(公財)世界自然保護基金ジャパン】 そういうふうに流れを変えていく必要があるのではないかと思います。

【羽山委員】 なるほど、ありがとうございます。

【石井委員長】 ほかにはよろしいでしょうか。

(なし)

【石井委員長】 そしたら、ちょうど予定の時間になりましたので、一旦ここで休憩をとりたいと思います。15分間なので、2時45分に再開したいと思います。それまでにお戻りください。

午後2時30分休憩

午後2時45分再開

【石井委員長】 それでは、会議を再開したいと思います。
まず、農業関係者からのヒアリングに移ります。
福岡県添田町の長谷川係長、よろしくお願いします。

【福岡県添田町】 皆様、こんにちは。福岡県添田町で鳥獣被害の対策の担当をしております長谷川と申します。よろしくお願いいたします。
本日は、本町におけます農業被害の対策等につきまして、ご発表させていただきたいと思います。本日は、さまざまな分野でご活躍の皆様を前にしまして、一市町村の担当職員でありながら、こういった場で発表させていただきまして、皆様のご参考になるかどうか甚だ不安には思っておりますけども、最後までご清聴いただければと思います。また、何分不慣れなものでして、お聞き苦しいところがございましたら、ご了承いただきたいと思います。
それでは、ご説明をさせていただきます。
まず、簡単に、添田町の概要です。福岡県南東部、大分県の県境に位置しております。町の面積は132km22、森林率が84%、586ヘクタールの耕作耕地を抱えております。本町は、一昨年度に町制施行100周年を迎えております。基幹産業といたしましては、主に林業、農業となっておりまして、基幹作物といたしましては、水稲、それから野菜、主に白菜、大根を中心とした野菜、それから果樹、それから花卉などになっております。花卉につきましては、トルコキキョウという花が、全国的にもメジャーな花になっております。
添田町の自然と歴史ということで、簡単に添田町といたしましては、耶馬日田英彦山国定公園に位置しておりまして、その英彦山という標高1,200mの英彦山の麓に添田町はございます。英彦山と申しましたら、古来より山岳信仰による修験道で栄えた山で、日本三大修験道の一つとして数えられております。現在もヒコサンヒメシャラなど、希少動植物が点在しております。この英彦山の中腹には、英彦山神宮という神社が鎮座しておりまして、国の指定重要文化財であります奉幣殿という建物、それから佐賀藩の鍋島公から拝受いただきました「銅の鳥居」と書きまして、これは「かねのとりい」と申しますが、こちらも国の指定重要文化財になっております。
早速農業被害の現状ということでご報告させていただきますが、添田町の農業被害の現状といたしましては、まずは水稲の食害、それから収穫前の踏み倒し、それから人家の庭先であるとか、公園など、人の生活圏内への出没、そして、特定猟具禁止区域での野菜被害、最後に、こちらは被害とは直結はしておりませんが、農業後継者の都心への流出による過疎化、それから高齢化による山間部の被害対策の限界というものが、農業被害の現状として挙げさせていただいております。写真は、山間部で実際にイノシシが稲を踏み倒している写真でございます。
そこで、鳥獣被害カレンダーということで、添田町における被害がどういったものがあるかということで、まず、春は水田、それから山林内におけますタケノコの被害、食害になります。水田につきましては、シカが、稲を植えた、田植えを終わった後に新芽が出ますが、そちらの葉先を食べていくというような被害でございます。夏につきましては、大豆、それからスイカ、ウリといった果樹にも被害が出ております。
秋になりますと、先ほども申しました水稲の踏み倒し食害、それから栗等のドングリにもありますが、栗、それから芋類、サツマイモであるとか、山芋であるとか、そういったものの食害に遭っております。
冬になりますと、今度は稲を刈り取った後の田畑、それから田畑の掘り起こし、それから庭先の掘り起こしといったものが主に被害として年間通してこういった被害が上がっております。
では実際に、被害に対しまして駆除従事者というのはどういったものになっているかと申しますと、速報で平成25年度まで有害の許可を出してございますので、平成25年度まで上げさせていただいておりますが、青いところが銃猟、赤いところがわな猟ということで駆除従事者の推移を示させていただいております。
全国的にも、銃猟につきましては後継者等が高齢化による減少ということになっておりますが、添田町におきましては、今のところ26、7名を境に推移をしております。わな猟につきましては、増加の傾向にございますが、大体35名等が有害の駆除ということで捕獲許可として出している人数がこの数になっております。
次は、イノシシの捕獲の推移といたしまして、これは平成20年度から平成24年度までということで、出させていただいております。青い部分が銃猟、赤い部分がわな猟ということですが、こちらイノシシにつきましては、わな猟での捕獲が主な捕獲になっております。平成23年度につきましては、前年度に捕獲がかなり上がっておりますので、その影響を受けてなのかどうかというところが、ちょっとまだ考察ができておりませんが、合わせても30頭ぐらいの捕獲となっております。
添田町は、年間有害駆除期間というのは、イノシシにつきましては100頭前後の捕獲となっておりまして、捕獲数で見ると全国的にはさほど多い捕獲をしているところではございません。
次に、シカの捕獲の推移でございますが、こちらはわな猟の捕獲よりも銃猟の捕獲が主な捕獲になっておりまして、平成23年度につきましては半々の捕獲量になっておりますが、あとはほぼ銃猟の捕獲が大半を占めているといったようなものでございまして、シカについても平成23年度、平成24年度あたりで170頭前後捕獲を行っているということでございます。これは先ほどもイノシシもございます、あくまでも有害駆除ということでの捕獲数でございます。これは添田町で把握している数で、資料は狩猟期における捕獲は入っておりません。
今回、こちらにお呼びいただいてお話をさせていただく上で、何が一番メインなのかということになりますと、添田町といたしましては、鳥獣被害対策実施隊というものを活動の中心において被害対策を実施しております。
こちら、実施隊結成への道ということで、平成19年度に協議会を設立いたしまして、平成20年9月に実施隊の委嘱状を交付しております。全国的にも、いち早く実施隊対策を取り組むということで、何をやっていいのかと、まず全然右も左もわからない状況の中で、発足したこの実施隊でございましたが、当時の町長からいいんだと、とにかく被害を食い止めるために何でもやってみろということで、結成し活動を行ってきたというところでございます。
実施隊の人選といたしましては、こちら、まず役場の職員が12名、これもなかなか全国的にも役場の職員が12名実施隊になっているというのは、ちょっと珍しいところだと思いますが、こちらは各課職員を対象といたしまして、町内の各地域に地元から選抜ということになっておりまして、これは全員わなの免許を取得しております。
それから、農家が3名で、こちらは生産者で被害対策組合を設立した若手後継者6名の中での、そのうち3名を任命させていただいております。
最後に、わなの猟師が2名ということでわな猟のベテランの方、それからわな猟から解体に精通された方ということで、2名の実施隊の人選を行っております。添田町といたしましては、三本柱で被害防止の対策を行っております。
添田町行政といたしましては、まずは有害駆除員への助成、それから捕獲機材の整備、こちらはハード面でのサポートを行っております。
次に、先ほども申し上げました鳥獣被害対策実施隊。こちらは17名おりますが、こちらは実動部隊ということで動いております。
最後に、有害鳥獣対策協議会というのを設立。平成19年度に行いまして、担い手の育成であるとか、技術の継承を行う、こういうことでこちらはソフト面でのサポートというような三本柱での対策を行っております。
まず、実施隊員としては、こちら役場の職員がおりますが、こちらは担当課を中心に平均年齢37歳、設置当時でございますが、よくある町役場にございます総務課であるとか、住民課であるとか、建設課と、そういった課に所属しておりながらも実施隊員として活動しております。かくいう私もこの写真にもございますが、実施隊員として日々現場のほうに赴いております。
じゃあ、実施隊員は何をやっているんだということで、添田町における実施隊の活動といたしましては、まず被害相談、それから現地調査ということで、住民からの被害相談の連絡を受け、概ね当日対応を心がけて現地調査を行っております。これによって、山間部とか、それから耕作放棄地を掘り起こし、それから獣道の動きを観察する中で隊員内での情報の共有を行っております。
これをすることによって、被害品目、それから獣種の特定や侵入箇所の確認、こういったものを現場のほうで行っております。
これをすれば、何がいいのかというと、被害の拡大をまず防げるということと、それから即日対応を心がけて現場のほうに行っておりますので、生産者の方の感情を和らげるという効果が現れております。
それから、次に、侵入防止対策と、それから環境整備指導ということで、防護柵の設置方法の指導であるとか、放任果樹の状況、伐採、そういったものを行う、それから指導を行うということで、農家の皆さんの自己防衛の意識が向上します。
それから、周辺環境を改善しないとノリ網などの簡易な防止柵では、再度被害に遭う確率が高いということを皆さんに知っていただこうということで活動しております。ノリ網と申しますのは、福岡県におきましては有明海というノリの産地がございまして、こちらで3年に一度、ノリ網が交換されます。使用済みになったノリ網を安価にノリの漁師さんから仕入れさせていただいて、これを各農家さんにあっせんしております。
そのノリ網を各圃場に張っていただいて、簡易的ではございますが、その侵入防止柵をしております。その侵入防止柵をプラスアルファということで、こういったこともやったほうがいいんじゃないかというような現地指導を行っているということでございます。
3番目に、わなによる捕獲ということで、実施隊イコール捕獲ではないということがございまして、捕獲はあくまでも最終手段であると。すぐに捕獲ができない場合でも、わなの設置によって加害獣が警戒し、寄りつかなくなるなどの追い払い効果も期待できておりますので、農家の方、いろんな侵入防止対策を行った中でわなの設置を行いますが、よく申し上げるのは、これはお守りだから獲れる、獲れないじゃなくて近寄らないのが一番の対策だからということをよく農家の方には申し上げております。
それから、実施隊独自の活動として、技術の向上ということで実施隊員の中のベテラン猟師から指導を受けつつ、くくりわなの設置の方法等の講習会を開催いたしまして、実施隊員の技術向上を図っております。
それから、定期的に勉強会を行いまして、被害獣の傾向とか、そういったものの意見交換を行い次回の出動に対応しております。
この実施隊を設置したに当たって、それによる効果というものは何かといいますと、実施隊設置前、設置後については、農家から添田町の役場に連絡があるのは変わりませんけども、まずは設置前は駆除を依頼する。それはどこにするのかというのは、猟友会のに駆除を依頼しておりました。
これは、猟友会は主に皆さん、仕事をお持ちですので、週末の対応がメインであったということがありますが、実施隊ができますと、まず実施隊に連絡を行いまして、これは実施隊が被害調査を当然行います。これを、いつ行うのかというと、即日対応で行うといったこれによる効果が現れております。
この中で見えたことというのは、やっぱり我々が実際に被害対策で現場に出ておりました中で考えられるのは、まず猟友会にあまりにも依存し過ぎたのではないかということ。それから、活動時間の制約というのがあるのだなと。それから、実際に現場へ行くと、皆さん、防護柵をして自信誇らげにやっていらっしゃいますけども、見るとやはり間違いだらけの被害防止対策をやっている。
そして、先ほども申しましたように、猟友会に依存をし続けているということで、猟友会への負担が増加した、こういった4点が実施隊設置によって見えてまいりました。
最後に、被害対策における今後の課題ということで、私が実際に現場を回っている中で、5点ほど感じたことを挙げさせていただいております。
まずは、先ほども冒頭のほうで申し上げましたが、高齢化等による耕作放棄地の整備、それから緩衝帯整備の推進、こちらをやっていくべきだ。
それから、猟友会中心の捕獲体制から、農林家の自衛による捕獲の推進へシフトをチェンジしなきゃいけないんだ。
そして、捕獲専門員を配置しまして、迅速かつ効果的な捕獲を行うことで適正な個体数を確保していこうと。
次世代の狩猟後継者を育成しまして、中・長期的な被害の対策を講じると。2年、3年後の被害じゃなくて、10年、20年先の見える被害対策を行っていくべきじゃないかと考えております。
最後に、実施隊の活動でも申し上げましたが、被害イコール捕獲の施策から、まず農家の皆さんにも防護、それから緩衝帯整備等によるすみ分けなど農林業の皆さんの意識改革の啓蒙に努めていくべきだと。この5点を今後の課題として挙げさせていただいております。
以上で、添田町からのご報告になります。どうもご清聴ありがとうございました。

【石井委員長】 ありがとうございました。それでは、今のご説明について、質問、ご意見ありましたらお願いします。

【坂田委員】 即日対応というのは、結局は役場の職員の方がやっておられるので、即日対応はできるということですかね。ほかの農家の方や猟師さんも即日対応するように待機をしてもらうということですか。

【福岡県添田町】 はい、当然、一番最初に行けるのは、おっしゃるように実施隊の職員が行くようにはなっておりますが、実施隊の中でも班分けは一応行っておりまして、農家の方でも班をつくっておりますので、その班のテリトリーであれば、その農家の方にも行っていただくようにはしております。
ただ、その辺は打ち合わせというか協議の中で、職員も行くことはございますが、原則としては班割をしている中での活動を行っているということでございます。

【羽山委員】 ありがとうございます。福岡県の場合は、シカの特定鳥獣保護管理計画が策定されていると思うのですが、その場合の捕獲目標ですとか、あるいは個体数調整の捕獲枠ですとか、そういったものと、それから町でやられている有害捕獲の頭数と、どのような形で調整されているのでしょうか。

【福岡県添田町】 福岡県の捕獲管理計画におきましては、添田町が割り戻したところによると500から600頭ぐらいが年間に獲らないとだめだと。だめだというか、適正数ではないというようなことが出ております。まだまだ、その数値から行くと、今現在、行っている有害捕獲というのは、まだまだ200頭弱であるということから、有害での捕獲はまだまだやり足りていないなというのが正直なところでございます。

【羽山委員】 この会議で、いろいろな局面で議論になっているのですが、特措法の被害防止計画と、それから特定計画、県のほうの計画と、そのあたりのすり合わせは、例えば定期的に会合を持つ、それが年に一度なのか数回なのか。具体的に、どうやってすり合わせを行っているかというあたりを教えてください。

【福岡県添田町】 正直なところ、すり合わせというのは今のところは行えてはおりません。ただ、我々も防止計画というのは3年に一度更新がございますので、その中で、県とは直接、協議というのは行いませんが、まだまだ先ほど申した500頭が目標の中で、実際にやっているのが300頭弱、200頭強、弱ですので、それで行くと3年スパンの防止計画の中では実情には合っていないなというのを正直、感じております。

【三浦委員】 今の、もうちょっと続けたいと思いますが、そうすると、実際には県のほうは、特定計画を遂行するために地元の猟友会に要請を行い、町は被害が起きたときに、猟友会に要請すると。地元の猟友会は、二重に要請されているという格好になるのですか。

【福岡県添田町】 有害捕獲につきましては、駆除許可というのは市町村で許可が出せますので、捕獲につきましては町からのみの依頼です。要請にはなってございますので、それまでは管理計画に基づく捕獲ということで、県のほうからシカにつきましては出ておりましたけども。現在のところは、シカもイノシシも市町村で有害許可を出しておりますので、これで猟友会には対応していただいているということになります。

【三浦委員】 そうすると、はっきり言ってしまうと、特定計画はつくっただけなんですね。そういうことですね。ついでにお伺いしたいのですが、この取組を始めてから、町民の皆さんの評判はいかがですか。

【福岡県添田町】 実施隊ができる前は、被害があれば町に連絡が来る、できた後もそうなのですけれども、今度は町が何とかしてくれるんだというところから、今度は実施隊ができると、私たち、職員でありながら実施隊で、町はやっているんだという目に見えて行政が動いているんだという安心感はいただいているのですが。
ただ、今度は実施隊が何でもやってくれるんだという勘違いという言い方をすると語弊がございますけども、どちらかというと実施隊がひとり歩きしてしまって、実施隊はどちらかというと見に行ったら捕獲をやってくれるんだ、捕獲隊なんじゃないかというふうに皆さんから見られております。今は、捕獲隊じゃなくて我々は、皆さんが被害が出ないための対策を講じる手助けをさせていただいているという立場なんだというご説明をやっているというところであります。

【三浦委員】 もう一点ですが、最後のページの今後の課題として、狩猟後継者を育成し、中・長期的な被害対策を講じるという話なんですが、これはどうですか、展望は。何人か予備軍がおられますか。

【福岡県添田町】 今のところは、若手農家の方が、6名の中で3名実施隊に入って、またそれ以外の方もやってはいただいております。ただ、添田町は過疎化が進んだところですので、どうしても職員が若手後継者、狩猟の後継者になってしまうという、いわばちょっと最悪な。職員が大体、わなも免許を持って捕獲に行くなんていうのは、あまり聞いたこともないとは思いますけども、実際それぐらい過疎化限界集落も多くなる中で、過疎化が進んでいく。
そうすると、一番の若手がどこにいるんだとなると、やっぱり役場にしかいないという状況がありますので。この脱却も含めながら、両輪しながら若手といいながらも、やっぱり65歳、リタイアされたアクティブシニアの方をいかに人材投与というか、有効な人材としてやっていけるか。その中で20年、30年後はじゃあ、添田町の被害対策というのは、どうなっているんだというふうな展望を開いていこうかなというふうには考えております。

【小泉委員】 どうもご説明ありがとうございます。大変感銘を受けました。二つ、伺いたいことがあります。一つは、役場の職員の方がこれだけの割合を占めている実施隊というのは、極めて珍しいと思います。その他の地域では、猟友会員の方が実施隊になっているケースがほとんどだと思いますので。

【福岡県添田町】 今のところ、私が聞く範囲では、職員が実施隊になっている市町村は、それ自体はあまり珍しくはないところでございます。ただ、職員がわな免許を持って実施隊に入っているという事例はあまり多くないといったところで、実際に他の市町村の実施隊の職員の方というのは、結局は猟友会の方にお願いをしたりとか、そういったふうになっています。我々、唯一違うところは、私たちが直接見に行って、被害農家の方と顔を合わせてお話をさせていただくというのが、大きな違いになっているということでございます。

【小泉委員】 はい、ありがとうございます。9ページの上のスライドを見せていただきまして、添田町の成功の秘訣というのは、専門技術者は大切だが、むしろ専従者が対応したことが住民の方からの信頼感につながったのではないかと感じています。
猟友会の会員は、専門的な技術は持っているが、兼業であって専従に対応しているわけではありません。通報があってもすぐ対応できません。最良のタイミングを逸してしまうことも多いのではないかと思いますが、専従担当者が通報を聞いて対応してくれるように変わって、住民の方に非常に好意的に受け入れられているところではないかと思います。ここがきっと地域での大事なところになってくるのだと思うんですね。
この専従制度が捕獲に結びついていくと、県の計画を達成する捕獲数になっていくのではないかと思います。添田町では、例えば地元ではないが専門的な捕獲業者さんがいたら頼めるでしょうか。地元の方と調整しながら外部の方を導入することは可能ですか。

【福岡県添田町】 その二つ目のご質問につきましては、実際、猟友会の方も有害許可を出していただいておりますけども、実際には疲弊をされているのが現状です。特に、銃につきましては、平均年齢も65歳を超えた方々がやっていらっしゃいますので、なかなか山の中に1日入ってというのは難しいということがございます。
そういった民間の業者のそういう参入であるとか、そういったものは私は実際、現場で猟友会の方ともお話はするのですが、有害ということであれば、縄張りというもの、まずないのではないかなというような期待はしておりますし、実際、実感はしております。
ただ、じゃあそういう会社が今後出ていただけるか、そこが一番我々も不安なところでありまして、そこがあれば10年、20年も先もまだまだ捨てたものではないのかなと感じます。

【小泉委員】 ありがとうございます。実施隊が調整役になって、そういう業者さんも出てくるといいと思います。

【染委員】 1点は、聞き落としかもしれませんが、有害駆除の捕獲数は書いてあるのですが、これに伴う被害面積なり、被害額は減っているのかどうなのか、定量的な話があれば教えてください。
それと、2点目は、添田町は大分県との県境にあるということですが、特措法による駆除は県境にあると隣の県に逃げ込んだりして、やりづらい面があるというお話を聞くのですが、その辺は実態的にどうなのか。
もう一点は、最後に今後の課題ということで、耕作放棄地の整備の話が書いてありますが、最近は農業・農村の振興ということで、農地の中間保有機構をつくって、耕作放棄地をまとめて、それをちゃんと耕作できるようにしていきますというようなことも検討されています。多分、こんな中山間地にある耕作放棄地というのは、極めてやりづらい場所じゃないかと思うのです。この整備をどのようなことをお考えになっているのか、それを教えていただきたいと思います。

【福岡県添田町】 まず、1点目の被害の面積、それから金額でございますが、実際には、これを自治体がやっているからどうだと言われますと、正直、これだけの84%の森林率を占める中で、シカの被害というのは一向に減らないというのが現状でございます。それに伴いまして、被害額というのも若干減少する傾向はありますが、それでも格段な減少には至っていないというのが現状でございます。
それから、大分県との県境に位置しているというところは、実際のところは、そこは鳥獣保護区に、今まさに皆様、ご審議していただいている鳥獣保護区の中で県境が線引きされておりまして、添田町側からも手をつけづらい、それから大分県側からも手をつけづらいというようなことで、鳥獣保護区の中はイノシシ・シカについては楽園のように今なっている。猟期には、鳥獣保護区に逃げ込む、終わるとまた出てくる、そういったイタチごっこを繰り返しが年々行われているといった中で、今後は福岡県と大分県との協議にはなると思いますが、市町村レベルでもそういった連携を深めていけばというふうには考えております。
それから、最後の耕作放棄地の整備ということですが、直接、我々は関わっておりませんが、今、添田町では、耕作放棄地の対応といたしまして、町が出資した農業法人ができておりまして、そちらの目的がまさに耕作放棄地を有効利用するということで、その耕作放棄地を果樹園にしていったり、それから水田にしていったりといった施策を今、展開中でございます。そういった施策とも連動しながら、耕作放棄地の整備というものを行っていければというふうには考えております。
以上でございます。

【石井委員長】 そろそろ、次に移りたいのですが、特にほかにいかがですか。

【羽山委員】 すみません。もう一回、実施隊のことで詳しく教えていただきたいのですが、役場の職員の方が12名従事されているというところですが、実際には、ほかの業務等の兼任になられていると思うのですね。ただ、当然、土日の出勤ですとか、それからこれの実施隊の業務をやっている間にたまった仕事ですとか、そういったものを補うためにどんな工夫をされているのか、あるいは経費的なものですね、そういったものをどのように負担されているのか、ちょっと教えてください。

【福岡県添田町】 まず、実施隊員が出動する上では、消防団のような形で職免というか、有事の際は出動を可能にしていただけるということで、町長からの指示がありまして、各課長ともその辺につきましては、ご了解をいただいているところでございます。
ただ、業務につきましては、小さい町でございますので、一担当が一業務を持っているというような状況でございますので、やはり残務整理は5時以降になってしまう。それから、土日に出動がある場合はということですけれども、その辺は代休処理という申し訳ない処理でしかできておりません。残業につきましても、極力、出動があれば残業手当は出してくれというようにはお願いしておりますが、本人もなかなか肩身が狭いようで、サービスで人知れず夜、残ってやっているというのが現状でございます。

【石井委員長】 それでは、よろしいでしょうか。
ありがとうございました。それでは、林業関係者からのヒアリングに移りたいと思います。三重県の宮川森林組合の岡本課長、お願いします。

【宮川森林組合】 三重県から参りました、宮川森林組合の岡本と申します。よろしくお願いします。着席させていただきます。
私どもの取組としましては、林業関係者ということで、林業におけるシカ食害にほぼ特化した内容を紹介いたします。シカによる食害の被害内容とその防護対応、それと食害対応の今後の検討課題及び可能性をご紹介させていただければと考えております。
まず、私どもの位置ですけども、三重県の南西部に位置していまして、奈良県境から伊勢湾に細長く東西に管内を持っております。西端には、吉野熊野国立公園があり、自然豊かな立地環境になっております。皆様ご存じのことかと思いますが、吉野熊野国立公園の食害状況としましては、シカによる被害がかなり高頻度に起きている状況です。
一方、民有林の状況をご紹介させていただきたいと思います。先ほど、宮川森林組合の管内位置ご紹介させていただきましたが、吉野熊野国立公園から東の伊勢湾のほうにずっと民有林が広がっております。ここも同様に造林未済地の植生回復はほとんど見込めず、自然林の林床も、シカの不嗜好性植物だけが占めるかなり植生の多様性に乏しい環境になっております。
次に、人工林被害のご紹介をさせていただきます。左側に見えますのが、新植地になります。新植地の斜面上部はヒノキを植えていまして、斜面下部がスギというような樹種で造林された現場ですが、ヒノキについてはシカ食害により全滅、残るスギについても、シカによる食害により被害が拡大しております。まばらに赤茶色くポツポツと見えるかと思いますが、これがシカによる剥皮被害により苗木がどんどん枯れている状況です。
また、右側の成林地のほうもシカによる剥皮被害が進行しており、森林資源がどんどん低下していっている状況になっております。
林業被害の現状と課題ということで、ここに6点まとめております。先ほど、ご紹介しましたように、シカによる苗木被害がかなり拡大しており、現状においては、これまでどおりの防鹿対策では、人工林を育成することが、かなり難しいような状況になっております。
また、今、成林しています人工林の林齢構造が50年生をピークにひとやま構造になっております。その下に続きますように、なかなか新植地をシカ食害から保護できない事から、どんどん林齢構造が高齢化していく事が想定され、将来的に安定した木材資源の供給という面にも悪影響を及ぼす可能性が示唆されるというような状況になっております。
あと、経済的な要因としましては、防鹿対策費が近年、かなり増大しています。このような状況下では、木材の生産コストの増加につながり、林業経営に大きな影響を与える事になると考えております。また、生産コストの増加に反するように効果が低下しており、森林所有者もしくは私どものような認定林業事業体の造林意欲の低下に拍車をかけている状況になっていると考えております。その結果として、造林未済地の増加による森林の荒廃が進行していると考えております。
これが新植地を拡大した写真です。防鹿柵を設置しているにも関わらず、シカが侵入し、皮を食べて枯らしてしまい、悪循環が続いております。
続きまして、人工林の成林地の状況です。40年~50年生のスギ・ヒノキ林への被害ですが、これもご紹介させていただきましたように、成木の剥皮被害が急速に拡大しております。それと、その剥皮被害に伴って、これまで数十年かけて育ててきた人工林木材資源の価値が低下するといった経済的な被害が拡大しております。広大な面積を占めている人工林に対して、適切な防鹿手法が見当たらず、食害対策を実施する気持ちになれない状況になっております。
林業は、生産サイクルが数十年要することから、新たな生産コストとして、上記の人工林成林地の剥皮対策が、森林所有者に負担を強いる状況となっております。
成長量に応じた木材資源の価値向上が林業の本来の姿でありますが、木は太るけども、剥皮被害によって材価がどんどん低下していくということで、最後の項にもつながるのですが、人工林資源の価値の低下に伴い、林業自体の生産活動への影響が否めないような状況になっております。
これが成林地の剥皮被害の一例です。左側の切り株の写真を見ていただきたいと思います。切り株の真ん中の下に、シカの剥皮が数年前に行われた跡があって、その剥皮が起きたところからずっと腐りが入り、林業における根本の部分の一番、価値の高い部位の木材が、ほとんど建築材としては使えない状況になっております。
右側のヒノキ林、スギ林ですけれども、一見さほどシカの被害が起きていないように見えるのですが、根張りの部分に数十センチ、剥皮被害を受けることによって木材の価値が急速に低下してきていることが、先ほど紹介しました左側の切り株の事例から想定できると思います。
これまで実施してきました防鹿対策としまして、造林地の外周を柵で囲う方法で、私どもは、ゾーンディフェンスと呼んでいる施工地を紹介します。左側が約5ヘクタールの造林地で、ヘクタールあたり、5,000本程度の本数密度で植林した現場です。現状は、シカ食害により、全滅といっていいような状況になっています。
また、この現場の防鹿対策の内容としましては、直径2.3ミリの金網に、ステンレス入り、ポリエチレン製の5センチ目合いのネットをかけて、さらにポリエチレン製の緑に見える5センチ目合いのネットをスカート状に張るという三重構造にしているにも関わらず、シカ道、獣道ができていますように、シカの侵入を許しており、既存対策の限界を感じているところです。
続きまして、苗木の単木をガードする方法としまして、マンディフェンス呼んでおります施工地の状況を紹介いたします。マンディフェンスによる防鹿対策は、過去に3種類の資材で、多数実施してきましたが、成林させることは出来ませんでした。したがって、対策に対する憤りを感じているところです。
これまで実施してきました防鹿対策の結果としましては、ゾーンディフェンスにつきましては、20年ほど前には効果が得られていたが、それ以降、効果が得られることは困難になっております。シカの個体数増加等の森林を取り巻く状況が急速に変化してきたということが現場サイドからの感覚として感じており、これまでどおりの方法では効果が得られないことが現実の問題として重くのしかかってきているというように思っています。
3点目に、ご紹介しましたように、既存工法に対して資材の強度や構造を強化するために幾らお金をかけても、結果的には効果が得られないことを現場の結果から感じているところです。
むしろ、異常気象後の防鹿柵の迅速な巡視・補修等の維持管理が重要であると感じており、先ほど猟友会の方の週末対応という話がありましたように、林業でも兼業林家の方がほとんどで、定期的な巡視とか補修とか、異常気象後の月―金での対応が、100%困難な状況になっており、シカはなかなか待ってくれないというふうな状況の中で、被害が拡大していると理解しています。また、造林意欲の低下になっています。
マンディフェンスにつきましては、効果が低いということと、設置コストがあまりにも高額ということで、なかなか林業においては採用することが難しいのではないかなと考えております。
これまで、ゾーンディフェンス、マンディフェンス、両方の対策の課題としましては、現状に応じた防鹿対策を改めて検討する必要があるのではないかということと、初期投資だけではなくて、数十年という生産サイクルの中での維持管理費を生産コストの中に組み入れ、きっちりと考えながら、費用対効果の高い対策を実施していく必要があるのではないかと感じております。
最後に、これまで防護だけの林業でしたが、捕獲ということも一つ要素に組み入れて、検討していく必要があるのではないかなと考えております。
現状の課題に対する対策としまして、パッチディフェンスと呼んでいる手法の採用という形で、このような小規模防鹿柵の設置を約6年ほど前から実施しております。この事業につきましては、3年ほど前から林野庁さんの事業に採用していただいて、この技術的な確立であるとか、汎用性の向上に努めているところでございます。
どのような対策なのかとしまして、簡単な定義として、将来の林冠高木の成立期待位置に小規模防鹿柵を設置する手法としており、一辺が現状約10メートル程度の方形区のサイズを使用しております。また、スギ・ヒノキの人工造林ではなくて、自然再生型の広葉樹植栽に活用しております。
この対策のポイントは、シカは柵は越えるけれども檻に入らないという特徴を考慮した手法であり、小規模に閉ざされた檻のような柵であるというようなことをシカに認識させることにあります。
この手法の効果としましては、良好な防鹿効果を得ております。施工実績は、6年前から34施工地で実施しており、小さな10メートル四方程度のパッチをこれまで450基設置しており、今のところ特に大きな問題はございません。
さらに、維持管理という観点からも、メンテナンスフリーに近い状況に現在のところなっております。ゾーンディフェンスと比較すると、防鹿柵の設置距離が約2倍程度になります。この課題に対しては、パッチディフェンスのサイズであるとか、その他もろもろ工夫していく必要があるのですが、現状、設置コストは約2倍になっているところです。この辺のところを、維持管理費との兼ね合いを十分に考えながらやっていくことが必要ではないかなと思っています。
あと、シカ食害に対するリスク分散という形で、万が一、1カ所やられても、あとの何カ所かは守られるというような効果もあると思っています。
さらに、植生の多様性の観点からの、パッチディフェンスの効果を紹介致します。又、林床植生についての問題は、生物多様性や防災面から最近クローズアップされていると思います。
左側の写真をまず見ていただきますと、向かって左側がパッチディフェンス内部になりまして、右側が外になります。シカの誘引効果というのも当然あるかもしれないのですけれども、右側のほうはシカによって植生がかなり高頻度のダメージを受けています。パッチディフェンス内は、草本類、低木類を含めて、いわゆる多様性は維持されたような状況になっております。
保護から捕獲へということで、これも林野庁さんの事業の中で可能性として浮かび上がってきた成果ではあると思うのですが、同じ事業の中で、静岡県の農林技術研究所・林業研究センターさんが、乳牛の首をカチャンとはめるセルフロックスタンチョンという畜産用の資材をシカの捕獲に活用する研究、技術開発を行っております。これをパッチディフェンスの柵に組み入れる検討を今行っておりますので、ご紹介させていただきます。
写真が、先ほどの資材を組み合わせて、パッチディフェンスの一つの面です。一面に捕獲用器材である、セルフロックスタンチョンを組み入れています。先ほど、パッチディフェンスの周辺には誘引効果があると申し上げましたが、シカはかなりパッチディフェンス内の豊かな植生に誘引されてきます。その中で、シカが首を突っ込んだときに、カチャンと捕獲ができるというふうなことを今、模索をしているところです。
あと、昨年度の取組としましては、シャープシューティングとの融合というか、連携を行っておりまして、捕獲に成功しているところでございます。
これが、パッチディフェンスに誘引されるシカで、セルフロックスタンチョンの周りにシカが集まってきている状況です。
これは、林業に関する特措法で、今、三重県では、間伐、林道開設、さらに助成の優遇というような形で積極的に集約化、団地化、森林作業道の開設、間伐が行われております。これにつながるのですけれども、まずそういった中で、県と市町村との連携・役割分担というものがかなり重要になってきております。
市町村の担当者におきましては、市町村森林整備計画が、林業のマスタープランとして位置づけられておりまして、市町村の理解・意識共有がないと、なかなか新たな取組には踏み込めないというような状況になっております。
その中で、まずパッチディフェンスの有効性の理解と共有というものをきっちりと地元自治体と共有している状況です。
さらに、有効性を確認した上で、町及び県事業への積極的な採用というような形でパッチディフェンスの採用をしていただいております。
さらに、この後に紹介させていただくのですが、森林経営計画というものに基づいて、今、林業が行われているのですが、その認定も市町村が担っています。その認定において、新たな取組の効果について、深く理解をしていただいて事業化をしていただいております。
あと、地元の猟友会さん等含めて、セルフロックスタンチョンで捕獲されたシカの対応等は、現状、協議しているところでございます。
これが森林経営計画による施業という形で約60ヘクタールの施業団地を組んでおりまして、間伐を実施しています。当然、間伐はするのですが、森林作業道も同時に高密度に作設していまして、現場の写真がこのような形です。この取組は、通常の林業においては、少し特異的な手法なのですが、スギ・ヒノキの適地性を判断して、スギ・ヒノキの大径木化がなかなか望めないようなところとか、価値向上が望めないところにつきましては、現状の森林資源を有効的にまず活用するというような形で、群状間伐というような手法を採用します。
群状間伐後の山に、パッチディフェンスを設置しまして、林相転換による広葉樹の植樹を行っています。こういったところに捕獲わなであるとか、先ほど紹介しましたセルフロックスタンチョンというようなものを設置して、一体的に林業被害を食い止めていくというようなことを検討模索しているところでございます。
今後の課題としましては、捕獲と森林施業が一体となった取組の実施と、さらに、地域が一体となった、あらゆる分野の研究者、地元行政及び関係者の指導・協力というように書いてあるのですが、私どものこれまでの地域の反省としまして、若干場当たり的な対応が多かったというような反省があります。そういった中で、やはりいろいろな捕獲の研究者の方であるとか、いろいろな例えばシカ肉の流通の専門家の方であるとかというような、あらゆる方にきっちり協議の中に入っていただいて、これからの課題に対する対応をしていく必要があるのではないかなというように考えております。
捕獲による防鹿効果の検証と事業化という形で、捕獲することによって剥皮被害等の森林被害が減少されるというような検証をきっちりした上で、林業の観点から事業化というようなものを検討していただけたらありがたいとも考えております。
最後に、冒頭触れましたが、シカ肉利用というような形で、やはり林産物というような形で、今後、シカ肉をどのような形で活用していくのかということを含めて検討していくことが、大きな課題になってくるというように考えております。
以上でございます。ご清聴ありがとうございました。

【石井委員長】 はい、ありがとうございました。
それでは、今のご説明について、質問、ご意見お願いします。

【小泉委員】 大変興味深い結果をご報告いただきましてありがとうございます。
気になったのは、コストの面です。どのようにして、やはりちょっと割高になってしまう、パッチディフェンスの設置コストを支払っているのですか。

【宮川森林組合】 今、事業としてパッチディフェンスの設置をしているのは、県の単独事業もしくは町の単独事業で実施していただいています。初期投資云々はあるのですが、例えば安価な対策で結果がゼロになってしまうより、やはり多少コストはかかっても、きっちりとした結果を残していこうねというような共通認識がかなり重要になってくるというように考えております。

【小泉委員】 確かに、これまでコスト計算は設置コストというのはありましたが、それでどのぐらい被害が軽減されたかという調査がなくて、ゾーンディフェンスはこれだけお金がかかるという情報だけしかなかったです。パッチディフェンスによってメンテナンスフリーで防護できるというようなことになると、今後コストの考え方が変わってくるように思います。

【宮川森林組合】 そうですね。

【小泉委員】 はい、ありがとうございます。

【羽山委員】 ありがとうございます。三重県の場合は、ニホンジカの特定鳥獣保護管理計画が策定されていると思うのですが、この宮川森林組合の管轄している範囲の中で、そういった捕獲の目標が、例えば達成できているのか、できていないとか。あるいは、その効果が一部では見えるのか、見えないのかとか。県の計画との関係をちょっと教えてください。

【宮川森林組合】 私は、林業に従事しているものですから、有害獣駆除に対する施策というのは、申し訳ないですが、知識はございませんので、数字についてはわかりません。ただ、大台町においては、昨年度、有害獣の対策で捕獲したシカの頭数は830頭捕獲しています。猟とは別にということですね。830頭捕獲したにも関わらず、まだまだ軽減されていないというのが現状だということを町の担当者から聞いております。私

【三浦委員】 捕獲の要請は、町からは来るということはないのですね。

【宮川森林組合】 森林組合に対してですか。

【三浦委員】 ええ。

【宮川森林組合】 今のところないです。

【三浦委員】 そういう何というか、流れはもう全くないし、森林組合のほうから、あの当たりの被害がひどいから捕獲に入ってくれとかという、そういう町の環境部局との間に相互の交流というか。

【宮川森林組合】 それが今年度、まさに課題としているところで、森林施業をすると、何がしかシカが誘引されるということが現場の感覚としては私ども感じております。例えば、植林をするとか、間伐をするとか、そうするとかなりシカが誘引されてくるという傾向が強いというように感じます。
その森林作業道の開設の情報であるとか、森林施業の工程であるとかというものを地域の自治体と狩猟される猟友会等ときっちり情報共有して、計画的に有効性の高い対策を選択しながら打っていくということが私ども大きな課題として受け止めております。

【三浦委員】 ここに書いてある最後の、うまくとれれば森林組合の成果物として、産物としてという位置づけを、猟友会などとのやりとりで最後はそういう流れの中で。

【宮川森林組合】 将来的には、森林資源はかなり低迷していますので、やはり僕らも木ばかり扱っていてもいいのかというような課題もあります。経済活動が向上されることには積極的に取り組んでいかないといけないなというような認識を持っております。当然、自治体を含めての調整の結果という形になると思いますが。。

【石井委員長】 すみません。聞き落としてしまったと思うのですけど、群状間伐ってありますね、これ自体はどういう目的でやるのか、そのシカ被害との関係というのは何かあるのでしょうか。

【宮川森林組合】 群状間伐もしくは帯状間伐と言われる手法ですが、これは一般的に国の造林補助事業の中の一つのメニューとしてございます。どういうことかと申し上げますと、通常の間伐のちょっとアレンジされた形ということで、大径木化していく林地、スギ・ヒノキの資源の価値を向上させていくというような目的と、あと林相改善というような両方の側面の目的があろうかと思います。
そこで、何でもかんでも群状間伐をするのかというような形になってくるのですが、剥皮被害を例にすると、簡単なので申し上げますと、面的に被害に遭ってしまった場所というのは、どうしても一番値段の高い元玉のところに腐りが入ります。それを10年、20年また育てて大径化していくという選択が本当にいいのかどうなのかを検討する事が必要だと考えています。そういうふうなところには思い切って群状、帯状間伐というような手法を入れながら、再度スギ・ヒノキを造林するという選択肢もあるでしょうし、林相を変えていくというふうな選択肢もあると思います。
これは、市町村の森林整備計画というものがありますので、地域の自治体と地域の森林のデザインを含めて、共有しながら実施していくということが望ましいのかなというようには思っております。

【染委員】 聞き落としかもしれませんが、セルフロックスタンチョン、これはパッチディフェンスに基本的に組み込まれてやられているのですか。また、その場合、効果なり実績はどうなっているのかということをお願いします。

【宮川森林組合】 昨年度、年度末ぎりぎりに試験施行的に行っております。前に誘引はされてきているのですが、まだ捕獲には成功しておりません。今年度は、さらにこの取組を拡大させていって、どのような形で手法をとれば捕獲できるのかというようなことを追求していきたいというふうに考えております。

【石井委員長】 ほかはよろしいでしょうか。

【坂田委員】 お話の中に、成長量に応じた木材資源の価値向上が望めないとなっている場所もあるということなのですけれども、やっぱりシカがどのくらいいるかどうかで、結局、被害を受けるリスクなり、被害を防ぐためのコストがかかるとすれば、実際の伐採の計画などは少なくとも既に成林している場所でも、これから生産する場所でも、その辺はもう既にその計画を、それを考慮して変えているということですか。

【宮川森林組合】 これはですね、森林生産の理解、認識というのが物すごく重要になってきていまして、なかなか見た目上では、被害はわかりにくいという問題がありまして、やはりそこまで踏み込んだ事業計画というのは現状のところできておりません。

【坂田委員】 その辺のリスクの計算だとか、大体防護しようと思ったらどのくらいのコストがかかるかはわかると思いますけど、今度はどのくらいの確率で樹皮剥ぎされるのかみたいな、その辺の把握は大体できているものなのでしょうか。

【宮川森林組合】 一言で申し上げると、把握はできていないというのが現状です。ただ、シカの分布する地域性というか、緩斜面地であるとかというようなところには、高頻度に出てきているというようには考えておりますが、把握はできておりません。

【染委員】 この場所は、大台町ですよね。極めて雨の多い地域だと理解しているのですが、当然、この地域の下流域は洪水被害などがかなり起きている地域だと思うのですが。このシカの被害が出始めて、いわゆる森林の保水量は減ってきているのではないかというような気もします。結構、裸にされて、雑木も生えなくなっているという状況で数字を伺ってくると、地域全体として、かなりの危機感を持ってこの辺の森林計画を今後ともきちっとやっていかないといけないということです。
そういう意味で、地域ぐるみのこのようなシカの管理なり駆除の計画なりというのを全体としてもっともっと取り組んでいこうと、単純に森林組合に任せるだけじゃなくて、やるべきであるというような機運というのはないのですか。

【宮川森林組合】 そこまでの機運は、なかなか結果としては効果が出ていないので、現在のところ残念ながらそこまでの機運はないというように思っています。
ただ、業として私どもは山に日々入って仕事をしていますので、そのような機運もやっぱり林業というような立場から高めていくことが重要かなというようには思っておりますが、現状のところ、そこまでの機運はないというようには思います。

【石井委員長】 よろしいでしょうか。
それでは、一旦ここで休憩を少しとりたいと思いますけど、どうしましょう、10分かな。では、5分、短いですけれども、休憩を少し挟みます。それで、4時に再開ということでお願いします。

午後3時55分休憩

午後4時00分再開

【石井委員長】 それでは、再開します。
これからは、民間捕獲事業者ということで、まず、自然環境研究センターの黒崎部長、お願いします。

【自然環境研究センター】 ご紹介にあずかりました一般財団法人自然環境研究センターの黒崎と申します。今日は、民間団体等のという形で私のほうが、まず説明させていただきます。すみません、座って説明させていただきます。
まず、民間という形で私どもの沿革を簡単にだけ説明させていただきます。1978年に、昔の方はご存じだと思いますけれども、日本野生生物研究センターとして発足、設立させていただきました。後でちょっと出てきますけれども、その後、2003年に派遣事業の許可をとっております。この設立から近年にかけまして、一番大きな状況としますと、1999年の鳥獣保護法の改正の特定鳥獣保護管理制度と思います。私どもは、その制度に初めから立ち会っていまして、いろんな調査、モニタリングをやっております。
その中で、やはり一つ、今日のお話のポイントになると思うのですけれども、捕獲という一つのキーワードを私どもは考えまして、なかなか進んでいない理由というのは、一つここにあるんではないかということで平成22年、2010年に野生鳥獣被害防止事業部を新設しております。
その後、2012年に一般財団へ移行し、今年、錦糸町のほうに事務所を移転しまして、組織改編により、私ども、鳥獣被害防止部という名前で今、活動させていただいております。
簡単に言いますと、私ども研究部、この第1研究部、第1研究部、それから私がおります鳥獣被害防止部、前はこの第1研究、第2という形でここにあります鳥獣保護管理とか、保護増殖とか、こういうのをいろいろやっていました。この中から、私どもがこちらに派生して捕獲に特化したような部をつくって、今やっております。ですから、初めからこちらのほうのスタッフともども、こちらで一緒に全体をやっているという形になります。
最初に、今日の一つのまとめのほうを先に話させていただきますけれども、先ほど申しましたように、私ども当センターは、この第1研究部と、被害防止部が協力して鳥獣保護管理に取り組んでおります。
そのため、先ほど申しました調査、それから計画をつくったり、実際に実施、捕獲、モニタリング、評価、このようなPDCAサイクルの全てを一貫してやっているというところです。今日は、この中の「Do」の部分について説明させていただきます。
先ほど言いました私ども、今現在、部員は6名です。後で説明しますけど、そのうち1名は神奈川県自然環境保全センターに派遣しております。
先ほど言いましたように、私ども全て関わってきますので、今現在、スタッフの中に環境省でやっています捕獲コーディネーターが2名、それから保護管理プランナーが1名、それから農林水産省のほうでやっています被害対策アドバイザー、こちら2名、このほかに第1種、第2種、それから網、わなの狩猟免許を所持しているメンバーが6名です。
ただ、先ほど言いました第1研究部のほうにも、狩猟免許、わな、銃を持っているのが数名おります。それは、現在はちょっと私の事業部には入っておりませんけれども、こういう状況です。
これから、すみません、私どもが実際どのような事業をやっているのかということで、ちょっと4つ紹介させていただいて、その後に私の意見を述べさせていただきます。
まず、小笠原諸島におけるノヤギ・ノブタ駆除事業というのを私ども、やらさせていただいております。詳しくは、後で資料を見ていただきたいのですけれども、聟島、それから媒島、嫁島、兄島及び弟島でノヤギ、ノブタの駆除を完了させていただいております。今現在は、2010年度から父島でノヤギの排除、これをやらさせていただいております。
私どもの業務というのはどういう形でやっているかというと、小笠原では、私どもと地元の小笠原猟友会支部の会員の方と共同で捕獲をやらさせていただいています。特に私どもは、先ほど言いましたように排除計画ですね。それから、実際に排除をしたり、それから何頭いるかというモニタリング、それから次回の計画をつくったり、検討会開催をやりながら、実際に現場では地元猟友会員と協力しながら捕獲をしているという形です。
実際に、直近のデータになりますけれども、2010年から100頭、500頭、300頭という形で環境省と東京都のほうから業務をいただいておりますので、こういう形で捕獲をしていると。これを見ていただくとわかるように、やはり小笠原は結構、急峻なところです。ですので、やはりスキルの高い職員を配置しまして、例えば船上から斜面にいるノヤギを射撃するとか、またノヤギを探す野ヤギ探索犬をつくって実際に導入して成果を上げているという形になっております。
次に、先ほど、森林組合からお話がありましたけれども、こちらは奈良県のほうの大台ケ原、こちらのほうでも吉野熊野国立公園の中で、シカの個体数調査をやらせていただいています。ここに関しましては、やはり地元の上北山支部、こちらと共同で捕獲を実施しております。こちらの場合には、私どもはメインでくくりわなで獲っております。地元猟友会には銃器の捕獲という形で、捕獲手法をすみ分けしながら共同で捕獲をしているという形です。
実際に、2010年度は70頭、それから59、97頭を捕獲しております。目標頭数は資料に書いてあります。私ども、やはり事業で受けている団体としましては、一つは成果が求められます。ですので、近年、くくりわな、それから先ほどの猟友会と共同で目標頭数をクリアするように努力しています。
その結果、2009年の25.5頭/km2という密度が、2012年には約6頭という形で密度が下がってきたという形です。それに、この頭数自体は、最初に説明していませんけれども、大台ケ原の特定鳥獣保護管理計画の目標頭数という形で毎年見直しています。
次、これは、群馬県赤城山におけるニホンジカの個体数調整事業という形です。ここも、群馬県立赤城公園、それと赤城山鳥獣保護区という場所です。ここも、先ほど言いました関東の方皆さんご存じだと思うのですけれども、赤城山という、結構、観光地です。冬はワカサギ釣り、それから春先はカタクリの花とか、たくさん皆さん来られます。今回、群馬県のほうから調査の委託があったのですけれども、やはり観光業者との連携をどううまくするかという形で、先ほど言いました植生保護の一分野としての捕獲を理解していただくということをお願いしました。
それから、この業務は、地元猟友会と連携でやりますけれども、3年後には私どもは手を引きますということでお話をしてやらせていただいています。ですので、後で説明しますけれども、今年はもう3年目になりましたので、地元猟友会のみでやっています。そのために、地元猟友会のほうに、技術移転を3年かけてやりましょうという形で、ここ、2つ書いております。先ほど言いましたように、観光シーズンは装薬銃による捕獲はちょっとまずいので、観光シーズンは、先ほど言いましたくくりわな、観光シーズンでない時期には少人数の巻き狩りというのを地元猟友会のほうに技術移転しております。
特に、今回、こちら地元猟友会のほうは、くくりわなというのをあまり使ったことがない場所でしたので、それをきちんと技術移転しましょうと、また後で詳しくは説明いたします。ここも、先ほど言いました自然研と地元猟友会、このような形で共同でやっております。実際、赤城での結果です。一応、毎年、大体100頭という計画目標で、いずれも100頭以上の成果を上げさせていただいております。
先ほど、言いました富士見猟友会の技術移転という形で、3年を目処に私どもから猟友会でお願いしますという形になっておりますので、先ほど言いましたように、くくりわなを指導いたしております。それと、あと一つ、特に私どもの場合には、くくりわなによる捕獲を行うときの見回りというのは、コストがかかります。今までお話があった、例えば有害鳥獣捕獲、これを猟友会の方にお願いしている場合には、先ほどからお話がありましたように、結構ボランティアという形で、多分そこの部分は、コストは見ていないと思います。
私どものほうは、先ほど言ったように、目標頭数があって計画をつくって捕獲をする。そのために、やはり見回りというのは、コスト換算しなければいけないという形で、くくりわなの場合は、私どもと業者が開発しましたこの自動通報システムというのを用いてやっています。これについても、猟友会のほうに全部、技術移転をしました。
簡単に説明しますと、これが送信機という形で、ここにマグネットがあって、これがくくりわなについています。ですから、くくりわなで何か動物がかかったら、ここがはじいて外れるという形で、この電波を中継器、それから本機が拾うと。この本機1台で60個のわなを管理できます。ここに来たデータが携帯のほうに飛んで来るということになっています。
ですから、赤城でやっていても、夜中、例えば電話がかかってきて何番で捕まったよとなった場合には、じゃあ、明日行こうかとか。猟友会の誰々さん、こういう状況ですよという形で見回りのコストを下げているということをやっております。
あと一つ、これ、私ども先ほど言いました。2003年のほうに、人材登録、こういうことをやり出しまして、その一環としまして、私どもは、神奈川県自然環境保全センターへワイルドライフ・レンジャーとして今、職員を3名派遣しております。
経緯は、もう皆さんご存じだと思いますけれども、やはり丹沢のシカ、これがなかなかうまく進んでいない。その一つとして、高標高地域でシカの捕獲を行う専門の人がなかなかいないという形で、こういう技術・技能を持った人を派遣してくださいという形で私どもが受注して、今現在、3名ほど派遣しております。
そう言いつつも、実際、職員を派遣しまして実際やりますと、やはりニホンジカの保護管理全般、なかなか捕獲だけではなく、やはり管理捕獲の指導や、実際に計画をつくるということ、また、県の管理捕獲のための指導とか、そういうこともやりつつ、自分たちも自ら丹沢、大山、高標高地に行ってシカを捕獲しているという状況です。
実際、私どもと先ほどの神奈川県保全センター、前から仕事をさせてもらっていましたので、ただ単に人を派遣して終わりではなく、やはりその業務内容以外でもシカの保護管理について、お互いアドバイスをしながらやっているという形になります。
今までご紹介しましたとおり、小笠原、大台ケ原、こういう地域でやっています。これ以外に、例えば南アルプス国立公園の高標高地域でのシカの捕獲、検証事業、それから神奈川県からいただきました三国山地でのシャープシューティングとか、そういうことをいろいろやらせてもらっています。
ただ、私どもが今現在、どのような形でどのような内容の事業をとっているかというと、大体この5本です。
今まで見ていただいたように、やはり今まで法的規制で捕獲があまりなされていなかったところに、シカが増えているのでどうにか対処をというような形が一つあります。
それと私ども、東京に会社がありますので、東京から行って捕獲をしますけれども、やはり鳥獣法行政、例えば根絶を目指すのではなく、これから共存する場合には、先ほどのお話がありました地元密着する必要があります。地元猟友会と必ず協力・協働してやっていくという形を今とらせていただいています。そのために、やはり地元猟友会に技術移転というのを行っています。
一番最初、冒頭にも言いましたように、私ども、やはり捕獲という一つのツールですけども、それを計画の中にどうやって埋め込めていくかということも考えながらやっているという形になります。
それで、先ほどの部員のほうで説明しましたけれども、いろんな専門技術を持っている職員がいっぱいいますという形で、このごろ各種研修会の講師依頼というのが大変多くなってきております。今まで、シカの生態の話はよく聞くけども、捕獲、どうやって獲るのという話がなかなか聞けなかったということで狩猟者も含め、それから行政担当者、それから被害、こういう方たちへ研修をやってきております。
最後になりますけれども、今後の捕獲充実という形で考えました。平成22年、シカが大体37万頭、それからイノシシが48万頭捕獲されています。実際、猟友会というか、狩猟免許を持った方が約19万人、これで獲っています。イノシシもシカも大体半分強が許可捕獲、大体半分弱が狩猟でとっています。ということは、やはり狩猟者というのは、保護管理に貢献しているということ。ただし、そう言いつつも、被害量があまり軽減されていない、全国的に見ると。高止まりだという場合、やはり2つ考えられるのかなと思っています。
1つは、やはり被害対策として、機能していない捕獲の仕方をしている。簡単に言いますと、被害を出している個体をとっていないのかとか、例えば先ほど言いましたイノシシ48万頭獲っていますけれども、ほとんどウリボウなのか、成獣を獲っていないのではないかとか、そういう問題もあります。
また、例えば借金を考えたら、つまり利子分が獲れていない。つまり元金まで獲れていないので、まだ被害が高止まりということがありますので、やはり捕獲をこれからどうするかと思ったときに質と量、これをどうにかしたいと私は思っています。
それで一つ、量の問題です。今現在、この青色のところ、ここが通常の狩猟者で猟をやっていただいてとか、有害鳥獣駆除をやっています。この下の潜在的な捕獲者、ここは被害農家とか、被害林家、先ほど宮川森林組合の方から発表もありましたけれども、今、ここの農家の方をどうにか新たな捕獲者にできないのか。私、これから言葉を考えて使います。狩猟者と捕獲者というのは明確に区別して、これから話していこうと思っています。ですので、狩猟者を増やすのか、捕獲者を増やすのかというのは、もう違うと私は思っていますので、今後、やはり捕獲に特化した従事者、そういう方を増やすにはどうしたらいいかという形で考えています。
例えば、今、農家の方、あまり農業はよくないよと言いつつも、多分250万人ぐらい農業人口はいます。林家でも、大体7、8万人、森林組合を加えたらもっといると思います。そういう方の1割でも自分の畑、自分の被害地は自分で守るということをやっていただければ、まずここが一つ、捕獲できると思います。
あと、このプロ、アメリカのほうとか、外国では多少ありますけども、日本ではまだなかなか育っていないと思いますけども、このプロ化。実際、今いる猟友会と、このプロ化、多分ここの方がすぐなりやすい。ほかの方がなってもいいのですけれども。そうしたときに、ここの部分に乖離がすごくあると思っています。
ですので、私どもは、質の部分も含めて現在の猟友会の中から、やはり新たな捕獲従事者になるように教育をしていくとか、そういう人たちも考える必要があります。また、先ほど言いましたここ、潜在的捕獲者に対しても、ただ免許をとっても獲れません。ですから、やはりそこは技術面での向上を目指すような教育をしていくということが必要かと思っております。
最後になりますけれども、じゃあ、本当にどうしていくのか、これをうまく動かすのには、1つは狩猟の免許制度を考えるべき、あと1つは、前も出ていましたけども、狩猟の場、これももう一度考え直すべきだろうと。この2つをやはり考えていって、ここの新しい、またプロ化、こういうところをどんどんつくっていくというように思っております。
すみません。最後、ちょっとだけ宣伝させてください。先ほど、ノヤギ探索犬、それから私ども、マングース探索犬もやっていますけれども、今、イノシシ探索犬というのを飼育しまして、被害を畑で出したイノシシのにおいを追って、寝屋まで行って突き止めるところまで生育させましたので、これも事業展開していきたいと思っています。
すみません。ちょっと時間が延びましたけれども、これで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

【石井委員長】 ありがとうございました。
それでは、今のご説明について、質問、ご意見あればお願いします。

【坂田委員】 自然研さんのほうでやられている捕獲事業の特徴として、地元の猟友会との連携ということが大きい、あと、技術移転というところが大きい特徴かと思いますけれども、もし猟友会の地元の人たちが少ないとか、なかなかできないとかいう状況になったら、もし自然研さんで仕事をやられるとしたらどういう展開の仕方になるでしょうか。

【自然環境研究センター】 多分、2つ考えられます。1つは、先ほど言いました、私ども今現在6名です。ですから、6名なら6名しかできない仕事なんですよね。となった場合に、1つは外部、もしかしたら後で発表なされます、例えばNPOの若葉さん、実際、富士宮で一緒に仕事をさせていただきますけれども、そういうところの団体さんとチームを組むと。
また、先ほども言いました、すぐには無理かもしれませんけれども、地元のやはりやる気のある方、ちょっと失礼かもしれませんけれども、そういう方を教育、研修しながらやっていくという形です。
ただ、先ほどから言いましたけども、私どものスタンスとしましては、事務所は東京だけです。日本全国全てできるというようには思っておりませんし、やはり鳥獣被害、日本全国を考えるのであれば地元、そこと私どもがどう本当にコーディネートできるかというのが使命かなとは思っております。

【坂田委員】 それともう1つ気になるのは、やっぱり安全性。銃器を使ったりすると特にですけれども、その安全性の確保というのは重要だと思います。自然研さんで業務を受けられたときに、そういう地元の人と協力してやっていく段階で、安全性が十分に確保できるというようにお考えでしょうか。

【自然環境研究センター】 それは、正直言って、なかなか難しいところがあります。例えば、あるところでやろうといったときに、その参画される猟友会のほうの腕というのは、私どもは正直に言ってわかりません。技量があるランク以上の人を配置してくれとは言いません。ですから、猟友会長もしくは支部長のほうに、目的はこうこうこうですので、こういう方法でやりますから、それを考えて人選してください、ということしかやっていません。
例えば、クレー射撃協会のトリプルAの方じゃないとだめですよとか、ダブルAじゃないとだめだということは言えないのが実情です。

【坂田委員】 実際には、万一のときの責任の分担は明確にそちらでお願いしますというような形でするという考えになりますかね。

【自然環境研究センター】 ですから、今のところ銃器による捕獲につきましては、混合チームではやっていません。私どもは私どもの少人数だけ、勢子銃を入れながら巻き狩りをやるとか、地元の猟友会がやる場合には、私どもはそこに例えば安全確保のために林道に立つとか、勢子をやるとかぐらいだけです。そこは分けています。

【羽山委員】 ありがとうございました。11ページのスライド7のところでのご説明について、ちょっと教えてください。
ご提言として、今回の法改正に向けてのポイントとして、このようにスキルに応じた階層的な免許制度が必要だということ。これは、非常にクリアでよくわかったのですが、場の問題を取り上げる、この辺をもう少し詳しく教えてください。

【自然環境研究センター】 私が思っているのが、実際、狩猟、それから有害鳥獣捕獲、現在やっている方は同じ方ですよね。実際に捕獲しているところも、私はほとんどダブっていると思っています。ですから、畑周辺で有害鳥獣捕獲をやっているかというと、銃器に限っては、法律上なかなかできないと思います。そうしますと、実際、自分が狩猟している、慣れている場所で有害鳥獣捕獲をやっている方が多いのかなと思っています。
ですので、先ほど言いましたように、私の場の考え方というのは、有害鳥獣捕獲をやる場と、狩猟をやる場をきちんと分けられないのかということです。例えばの話ですが、標高500メートルから上は狩猟でいいけども、標高例えば500メートルから下は狩猟ではないですよと、有害鳥獣の場ですよということをはっきりさせるのと、免許を持つ方を変えることによって、例えば資源性を求める狩猟まで影響を出さないと。ただし、有害鳥獣捕獲のところは根絶とは言いませんけれども、極端にゼロに近くてもいいのではないかということができるんではないかというように思っております。

【羽山委員】 そのときに、経費的な問題、これは一言で言うと、例えば被害農家さん、林家さんの個人の財産を守る場合に、それをパブリックな経費で考えるべきなのか、あるいはプロ化されたような方がやるような仕事については、公的にやるべきなのか、その辺りの費用負担との関係について、ご意見をください。

【自然環境研究センター】 私は、両方ありだと思っております。1つは、やはり受益者負担という形で、被害農家の方は、例えば自分ちにヌカガが来たらプチュッと殺すでしょうと、同じようにシカが来たらプチュッと殺しなさいよ、それは当たり前でしょうという形は、私は思っております。
ですから、まずは自分の畑を守るのだったら、まず自分のお金で。ただ、そこで手が足りない、貸してくれという話だったらば、そこはプロでも結構です。そういうところが、例えばお金をいただいて共同してとるとか、そういうのがありかと思っております。

【羽山委員】 最後に1点よろしいでしょうか。隣の10ページの6番ですね、捕獲だけではなくて、5つあるうちの4点目で、計画からモニタリングからということになりますと、マネジメント全般で行政は要らないのではないかという話になりかねないんですけど、これはどういう役割分担をお考えでしょうか。

【自然環境研究センター】 実際問題、行政がなければ私はだめだと思っていますし、何でも全て最終的に仕事、それから保護管理計画を進めるというのは、行政の判断で行政がやるべきです。私どもは、計画はつくりますけども、それは案です。行政がそれを煮詰めて肉を足していったりとかするのであって、私どもがつくった計画をそのまま行政がうのみにしてやるというのはあり得ないし、あってはいけないことだと思っていますので、そこは、私どもはそういうデータをとって、こういうふうにしたほうがいいですよというスタンスでやらせていただいています。

【羽山委員】 そうなりますとね、免許も複雑化し、高度化していく、民間にそういったプロの捕獲者がいて、あるいは計画から含めた、そういったものを支援する民間の担い手がいて、ただ民間ばっかりプロ化していくというのは、いかがなものかと思うのですけど、黒崎さんのお考えとして、行政の中にはそういうプロ化といいますかね、専門的な職員というのはどのように位置づけていくべきだとお考えか、ちょっと教えてください。

【自然環境研究センター】 基本スタンスは、私もやはり行政の中にそういう専門家がいるべきだと思っております。ですので、よく数年で異動するというお話がありますけれども、そうではなく、やはり各県、本庁に一人、二人、出先に一人、地方にその一人の方がいればその関係している市町村にもそういうことができますので、必ず行政にはそういう専門家はあるべきです。
その方と民間がタイアップをして、一緒にやっていくという形で、民間だけがいればいいというようには私は初めから思っていなくて、やはり行政が主導はそこはすべきだと思っています。

【小泉委員】 二つ伺いたいことがありまして、一つは、これまで捕獲を事業として実行されてきて、もう少しこうであればいい。事業を請け負って捕獲を行ったものとして、こういう構造的な部分を改善してほしいというところがありましたら、教えていただけますか。

【自然環境研究センター】 そうしますと、ちょっと言いにくいですけども、簡単に言いますと、私ども事業者は、皆さんおわかりのように仕様書というのがまず出てきます。その仕様書に対して、例えばお金が決まっている場合とか、お金を入れてくださいという内容で、それで私どもも業者ですから、この内容だったら仕事を受けようかとか、これはやめようねとかいう判断をさせていただいています。
ただ、そう言いつつも、やはりある程度、100何人も職員がいますから、じゃあ、ここまではやろうといったときに、この仕様書はおかしいよね、これがなくてこっちにもう少しお金を投入したほうが絶対いいよねというのはあります。そこがやりづらいです。
アメリカの例えばホワイト・バッファロー社のデニコラ氏みたいに、自分が計画をして、これだけお金がかかる、それでもいいのかというような、こちらからの企画書を提案し採用してくれるといったことはなく、現在はこのスタンスでこれだからこれをお願いねというのが多くなってきています。そこがちょっと難しいところです。すみません、ちょっとぼかしましたけども。

【小泉委員】 そうすると、事業を依頼する側にも事業者を育てるのだという明確な意志、育成するという認識があってほしいというところですよね。

【自然環境研究センター】 そのとおりです。すみません、あと1つ言わせていただければ、多分、こちらの委員の皆さんは何県何々の例えば検討委員になられていると思いますが、そのときに県に出ている方を今回、委員の方も、教育というのはちょっと失礼かもしれませんけれども、そういう仕方をしなさいよとか、それからまた仕様書の段階で、皆さんがちょっとここはこうしたほうがいいのではないかというアイデアをどんどん出していただけると、私は日本の鳥獣保護管理というのは一歩進むと思っています。
私どもに来た段階ですと、なかなかそこは変えられません。ですので、そこはすみません、ちょっとした横道にそれましたけども、そんな意見を持っております。

【小泉委員】 ありがとうございます。もう一点は、過去の捕獲によってスレてしまったシカをどうやって地元の方々と協力しながら獲っていくのか、という質問だったのですけれど、もう時間も来ていますし、ちょっと専門的になりますので、後でまたご相談できればと思います。
以上です。

【石井委員長】 ほかはよろしいでしょうか。
そうしたら、次に移りたいと思います。ありがとうございました。
それでは、最後になりますが、NPO法人若葉の岩崎理事、お願いしたいと思います。

【NPO法人若葉】 お世話になります。NPO法人若葉の岩崎といいます。よろしくお願いいたします。
今日は、こういう場で話すこと自体が初めてなものですから、非常にいっぱいいっぱいになっております。もしかしたら、あらぬことを言ってしまうかもしれませんので、そのときはピー音を入れながら聞いていただければなと思いますので、よろしくお願いいたします。失礼します。
手持ちの資料のほうを見ながら、説明しながら行きたいなと思います。
まず、NPO法人若葉、何ぞやという方が多いと思います。設立は平成20年2月ということで、まだ若い団体です。設立出生などは、いろいろ書いているものはあるのですけれども、簡単に言いますと、捕獲法人的なイメージが持たれている方が多いのですけれども、もともと自然保護団体として、人間と野生動物の共存を考えながらやっていくために設立されております。
その中で、現在の山の状況を見ていきますと、このままではだめだというところで、ここにもちょっと書いてあるように、特定の地域とかしがらみにとらわれずに、効果的な捕獲をしていかなければこの問題は解決できないということで活動を始めています。特に、日本版のホワイト・バッファローみたいな存在になっていかなきゃいけないのだなと思いながら、人材教育をここには行ってきたと書いてありますけど、私自身が受けてきたような立場であります。
ホワイト・バッファローというのが、先ほど自然研さんからも出ましたけれども、下のほうに書いてあるような形で、捕獲団体、NPOですけれども、こちらのホームページに飛んでいただきますと、いきなり翻訳ソフトを入れてもらうと、捕獲達成率100%と、そんなふうにうたわれております。年間数百頭あるいは数千頭とっているのですね。その方々、じゃあ何千人ぐらいの規模でやっているのだと思うと、実はその学者さんあるいは捕獲者合わせてメイン5名程度でやっているということを聞きました。
これが自分たちの進む世界なのかなと思いまして、努力してきたわけですけれども、ここにも書いてあるように、2010年頃に日本に来日されまして、直接話をする機会があったわけなんですけれども、そのときに言われたことは、極論かなとは思ったのですけれども、レジャーハンターさんはたくさんいても捕獲はできませんと。苦労がなければプロでなければできないんですというような話を、その代表のデニコラさんが言われていました。すごいことを言うなと、そこまで言うのかと思っていたら、その後、今度はミュンヘン大学の教授の方、ドイツのほうでやられている、結果を出されている方がまた同じことを言われたんです。
その意味が、やっといろいろと勉強させていただく中でわかってきました。例えばどういうことかというと、何百頭獲りました、何千頭獲りました。それはいいのですけれども、残った数、全部獲り切るわけじゃないですから、共存していく中で、例えば50頭、100頭残したときに、それが今後どうなるのか、あるいは自分たちが有害かかったところもそうなんですけれども、なかなかものが獲れなくなってしまいました、スレたシカばっかりですというところが結構あるのです。実際、海外では食肉用に日本のシカを輸入したりして、数十頭放しただけで、今現在、数千頭とか、数万頭になっている地域があると、その駆除を頑張っているという話を聞きますと、このニホンジカというのは、恐ろしい繁殖力があって、山を破壊する能力が非常に高くて、こういったものが数十頭残っているだけで、また数万頭になるんだと。獲り方も、ただ獲るだけじゃなくて、非常にきれいに獲っていかなければ解決はしないんだということを勉強させられたのです。
その中で、そういうことをやっていくにはどうしたらいいのかということで、組織をいろいろつくってきました。会員数は、役員・社員合わせて15名程度という形になっております。本当の捕獲者は数名でございます。ただ、捕獲隊員43名とかになっていますけれども、いろんな猟友会を受け入れたりもしていますので、こういった大人数になってきております。
そのほか、友好団体、これは射撃の団体、研究関係の団体さんなども含めていろいろご指導いただいているところであります。
あと、先ほどもありましたけれども、環境省さんのほうで人材登録事業、鳥獣保護管理捕獲コーディネーターというのが去年度で16名ぐらい国内にいたと思うのですけれども、そのうちの2名が私を含めて在籍しております。
もう1名、紹介したいと思うのですけれども、後ろのほうにうちの副理事長の早川といいます。こちらは、もともと南アルプスのプロのシカまたぎの人たちと一緒にやってきた人たちで、通常は技術を教えてくれない人たちの中に潜り込んで、技術を学んで来て、さらにそれを自分たちに教えてくれた非常に例外的な人であります。
今回の捕獲に対しても、いろんな誘引捕獲等があるのですけれども、その山を見切って、こうしたほうがいい、ああしたほうがいいというところをやってきまして、この若葉の頭脳的な存在になります。まだ若いですけれども、既に1,000頭以上の捕獲実績があるという人材であります。
私自身は、もともと射撃畑で来ていまして、ISSF、今のランニングターゲット競技なんかで全日本で準優勝とか、あるいは猟友会さんの感じですと、猟友会に一番大きな大会である一都八県の大会でスラッグ部門は3回ほど出させていただいて、そのうちの2回個人優勝、もう1回が準優勝というあたりにつけております。ここ5年ぐらいの入賞・優勝歴は34回ほどありました。
そんな中で、早川氏の考える捕獲のやり方等々を実践してやっている社史であります。そのほか団体には、国際審判員さん、あるいは教習所指導員、あるいはこれは銃砲店絡みですけどね、武器製造販売の認可を持っている人間が5、6名います。あとは、昨日、落成式をやってきたのですけれども、私設射撃場をつくったりしまして、近くの射撃場で間に合わないところ、その辺を若手を含めてやれるような体制を今も続けております。改善点があれば、どんどんやっていきたいと思います。
そういう中で、入ってくる若手の人たちは大体1、2年で地域のナンバーワンぐらいまで育てるような形をしていまして、既に十数名が各地域で優勝歴を持っております。平均年齢も年々低くなっていまして、今後10年以上にわたって活動が可能ではないかと、そのような団体になっております。
先ほどから、狩猟者が減っているとか、あるいは年齢がということを聞くのですけれども、現在、私どもの団体では、むしろ年齢は低くなりつつありまして、増加に歯止めがきかないような、そんな状況であります。
入りたい、入りたいという方が多いものですから、それではホワイト・バッファローのような活動ができないものですから、もっと選別してこういった条件でなければうちはだめですと、そういうようなことをやっている状況であります。
主な活動としましては、まず最初にやったのは、伊豆の国有林内で有害捕獲あるいは管理捕獲等をやっております。こちらのほうは、例外的に糞粒法でも個体数低減が確認されているということであります。
あとは、緊急雇用費ですね、こちらのほうはもともと静岡はやっていなかったのを、依頼を受けまして、いろいろ模索しながら仕様書をつくりまして、他の模範となっております。
あとは、止めさし等、問題になっているところの研究であるとか、そういうところの協力もやっていますし、先ほどあった富士宮の件ですけれども、これはシャープシューティングの中でも誘引狙撃法というものを実践したわけですけれども、そういったものを実績として持っています。
長々、初めのところで時間をかけてしまいましたけれども、実際は皆さんの中で聞きたいところは、実は誘引狙撃のところではないかなと思っております。新聞なんかにも出ておりまして、通常の巻き猟等の地元の方々の50倍以上の数字ということと、どうやったらそんなのができるのかとか、いろんな話があちこちで質問を受けております。この場をかりて一番のポイントを話したいと思います。
これは、自分たちが腕がどうこうで、というように皆さん、とられている方が多いのですけれども、実際には三位一体のチーム体制が成功した最大の要因だと思っております。
行政サイドあるいは地権者の方が非常に適正なスタンスでいろいろなしがらみ等もあるのでしょうけれども、有識者の方々と相談しながら公正な形で事業を依頼していただいたというところがあります。また、安全対策に対しても非常に高度なことをやっていただきました。
また、それに伴って、有識者の方あるいは研究者サイドの方々は、本当に国内最先端の誘引技術を使っていただきまして、さらにその辺のデータもタイムリーに情報をいただきながら、自宅にいながら山の状況がわかるようなところまでつくっていただきまして、それをベースに我々はどうやって獲ったらいいかというのを、その与えられた条件の中で仕事としてどうしたら結果が残せるのだということで、それこそその捕獲に合った銃の製造、あるいはその地域、その時期によってシカの個体も変わってきますので、それに合った弾頭の選定、火薬量、その辺のところも含めましてつくり上げ、そしてそれに合った射撃練習、模擬をさんざんこなしてきました。
どのぐらいやってきたかというと、この2年間でその射撃だけで40回、通算3,000発以上打ち込んで練習してあります。
先ほど、技能講習どうこうと言っていましたけれども、これがオリンピックなどで使う50メートルシャープです。これになかなか当たらないという話なのですが、今回来たメンバー全員、100メートルでも簡単に当てます。自分たちは、移動的でもこれをほとんど入れることができます。そういう技術を持っている人間だけを選定して捕獲のほうを行いました。
あとは、やはりこういった成功事例を各地で欲しいという話を聞くのですけれども重要なのは自分たちが行くだけではなくて、こういった体制づくりにポイントがあるのではないかなと、自分は強く感じております。
ですから、行政サイドの方あるいは地権者の方もそうですし、そこに有効な捕獲方法をアドバイスいただける研究者の方々、そういった人たちが一丸となって初めて、アメリカのホワイト・バッファローのような体制づくりができ上がり、自分たちもびっくりするような自分たちの技量とは思えないような捕獲実績ができるのだと思います。
総括していきたいと思います。
まず、ハンターの減少、高齢化の対応ということだったのですけれども、こちらは今までの伝統的な巻き狩り等々ではなくて、そこの場所に合った適正なやり方を、やはりできるだけのノウハウ等を持ちながら、コーディネートしながらやっていく。あるいは、そういったコーディネーターを育成したり、あるいは地元の人たちも含めて育成できるような環境づくりというのは重要じゃないかなと思っております。
あと、やはり先ほどから言っているような形で、成功するにはチーム体制あるいは専門知識だけではなくて、ここでこのようにやってくれと言われたときに、いろんな引き出しを持っていることも重要ではないかなと思っております。
あとは、この辺はちょっと割愛させていただきまして、今、話の中で、誘引狙撃という話が幾つか出てきているのですけれども、これが、じゃあ有効だからどこでもやりましょうというと、それもまた難しいなと思っております。
例えば、群れ全体をとるのには小口径ライフルは非常に有効ですけれども、これは有効である、あるいは専門的な特化した道具であると同時にほかに融通がきかない銃であるものですから、あるいは弾もそうなので、射手が非常に技量を求められるというか、あるいはいろんな団体さんを含めて連携が非常に難しいという感じを受けております。
実際、自分たちがやったところに対して許可をとらず、そんなことを真似されたところもあったんですけれども、その地域などは本当に見るも無残な状況、捕獲が続けられないようなところ、荒らされたところもありまして、なかなかこの辺は今後、精査していかないと大変な問題かなと思っております。その辺のことをちょっと書かせていただきました。
結論的に、我々から行政サイドのほうへの要望としましては、やはりいいものはいいでいいんですけれども、規制すべきところはきっちり規制していただきまして、安全を確保していただきたい。ただし、そうした安全が確保できる、担保できる状況であれば、今がんじがらめになっている、いろんな法律を一部で結構ですので緩和していただいて、大量捕獲ができるような条件をつくっていただければなと思います。
そうすれば、今問題になっている高齢化とか、ニーズが減っているなんてことはありますけれども、その中でも今後の捕獲体制を何とかできるような兆しが自分は感じております。その結果がこういった新聞にも載っているのかなと思ってはおりますが、なかなかここまで言っていいのかわからないところがあるので、言葉が詰まってしまうのですけれども、問題点も多々ある中ですけれども、我々としても要請があればどんどん参画していきたいなと思っております。
以上であります。

【石井委員長】 ありがとうございました。
それでは、今、ご説明いただいたことについて、質問、ご意見お願いします。

【羽山委員】 ありがとうございます。最後におっしゃった規制の緩和という部分について、もうちょっと具体的に何をどう緩和したらよろしいのか教えてください。

【NPO法人若葉】 はい、わかりました。今回の会議の一番最初に北海道の方も言われていましたけれども、例えば用地の問題であったりとか、あるいは銃の規制ですね、あるいは我々の若手の中でも、これだったら本当はこの銃を持たせればできるのかなと思う人間であっても、ライフル10年規制で持てなかったりとか、いろんな条件があります。
訓練させても、なかなか道具が所持できないとか、あるいは本当だったらこの時期、このもう少し遅い時間帯まで、せめて日没後であってもまだ見える範囲のところまで撃たせてもらえればとか、いろんなことを考えるのですけれども。そういう融通が、例えば先ほど言ったデニコラさん率いるホワイト・バッファローは、特別許可を持ってそういうことをやっているということを聞いていますので、やはり条件つきで構いませんので、この条件をクリアしたら逆にここは規制緩和できるというような体制づくりができたらなと思っております。

【羽山委員】 ありがとうございます。もう一点、よろしいでしょうか。
今のは、新たなスキルの高い免許を新しくつくるというようなイメージかなと受け止めたのですけれども、それは個人に対してなのか、あるいは事業者に対してそういう要件を求めるのか、特に三位一体でないとだめなんだということを強調されていましたけれど、そのあたりについてのお考えはいかがでしょうか。

【NPO法人若葉】 やはり、三位一体は絶対条件だと思っていますし、受け入れる側も個人ではなくて法人格を持っているようなところで。例えば、今言われたのは、その撃ち手だけの話をしていますけれども、それ以外にも自分たち自体も安全対策をいろんなことをやっております。撃つだけじゃなくて、やはりいろんなところがスキルが高い団体に限定していくべきではないかなと思っております。

【坂田委員】 今は具体的にはいいのですけれども、その判定基準というのは、つくれそうですか。項目を挙げていって、大体、例えば今の流れだとそれを発注する行政の人がある程度判断しないといけない。それをそういう認定ができる団体なのか、あるいは個人なのか判断する項目なりリストづくりというのは、大体、今までのご経験の中で、イメージが上がってくるものですか。

【NPO法人若葉】 ここまでというのは非常に難しいのですけれども、ぼやっとしたものはあります。やはり、その中でないと今回の狙撃なんかもなかなか難しいところがありました。やはり、紙に穴をあけられるだけでは物との駆け引きができないものですから、その辺の細かな技術も含めて算定基準にさせていただきました。

【小泉委員】 若葉さんの資料を見せていただいて、これまでいわゆる捕獲の事業体と全く違う印象をもちました。二歩ぐらい進んだ感じがあります。銃を預かったり、修理したりすることができる、射場も運営している、というところまで踏み込んだ会の構成になっているからです。
ところで、環境省の捕獲コーディネーターに登録されていますけれども、これまで環境省の捕獲コーディネーターとして仕事をされたことがあったかどうかということをお聞きしたいのが1点。
もう1点は、これからの捕獲コーディネーターにどのような資質や要件が必要だとお考えでしょうか、ご意見いただければと思いますけども。

【NPO法人若葉】 それは、自分の個人的な意見も含めてでよろしいでしょうか。

【小泉委員】 はい、それで結構です。

【NPO法人若葉】 まず最初に、捕獲コーディネーターとしての仕事といいますと、それこそ先ほど自然研さんからありました、神奈川県のワイルドライフ・レンジャーさん率いる自然環境保全センターさんから環境省さんのほうに依頼が行きまして、そちらから捕獲に関するアドバイザーとしての要請がありまして、そういった仕事は受けて行っております。
あとは、そのまま今回の誘引狙撃等もそうですけれども、そういう中で自分たちの持っている知識というのは、やはり会議の中で出させていただきまして、より効率的ないい形に少しでも修正できるようにやっております。
あと、その捕獲コーディネーターの要件ですけれども、一つは、例えば先ほどのデニコラさんたちたちがやっているところもそうなのですが、射撃とかそういうところです。線引きというのが1つあります。それは、基礎的な技術としては重要だと思っています。
ただ、それだけではなくて、やはりものを獲った経験とか、どんなことをやってきたかとか、例えばそれが何十年経験があっても、巻き猟だと撃ち手としかやったことがないというのがありますと、山の中を歩いたことがない方が結構いるのですね。そうすると、そういう方にヘッドショットしたときにシカはこういうふうな動きをしてこういうふうになるんだとか、こういうふうにすれば全頭捕獲できて、すれたシカをつくれないんだという話を、何時間話してもわかってもらえないですね。
そういう人は、何種類あってこれくらいやってきたという経験があっても、やはりちょっと難しいのかなと思います。ですから、そういった経歴というのは、見定めていただきたいなと思いました。
よろしいでしょうか。

【小泉委員】 はい、岩崎さんが書かれた引き出しというやつですね。

【NPO法人若葉】 そうですね。

【小泉委員】 ありがとうございました。
以上です。

【染委員】 1点だけお伺いしますが、NPO法人若葉さんみたいに、高い技術レベルを持った団体というのは、日本で若葉さん以外にあるかどうかということと、今後そういうのが生まれるとすれば、どのくらいの数が出てくる可能性があるのか。

【NPO法人若葉】 これは非常に難しいのですけれども、今現在、動物学会のほうに伺わさせていただいたときには、大型獣関係では現在、自分たちぐらいとか、いろいろ言われました。自然研さんはちょっと別格ですけれども。そういう中で、ただ、我々も急にぽっと出たわけじゃなくて、実は昔から数字をそれなりに持っていたんですね。それを研究者の方々が拾い上げてくれて、表に出てきたところがありまして、結構、日本中にそういった可能性のある人は眠っていると自分は思っています。
既に、自分たちは静岡ですけれども、神奈川さんもそうでしたけれども、今、会員は東京あるいは千葉とどんどん増えていますし、その中で、やはりそれなりのメンバーが出てきていますので、もっともっとそういう表に出る場、あるいはそういう教育する場、あるいはそういうところに予算がついてくれば、団体は無数にできる可能性があると自分は思っております。

【石井委員長】 今現在、猟友会と、組織としてあるいは会員の方個人が猟友会と何かつながりを持っているとか、何かのメンバーに入っているというあたりはどうですか。そういうことはあるのかないのか伺いたいのです。

【NPO法人若葉】 猟友会さんとの関係がと、もう1つのほうは。

【石井委員長】 組織としての友好団体とか書いてありますよね、そういう中に猟友会が入っているかというのと、あとは会員の中に猟友会の会員の方はおられるかと。

【NPO法人若葉】 説明が足りなかったかもしれません。ほとんどのメンバーは猟友会員です。ちょっとこういう形をつくったのは、みんな猟友会員なんですけれども、地域という形で縛られる、猟友会単位にどうしてもいろんな仕事が来やすいものですから、それだとやはり広域的に捕獲ができないと、効率的にできないということで、猟友会という単位ではなくて、猟友会員を選別して広域における組織をつくってきたというような流れになります。
その中で実績が出てくると、今度は逆にもともと猟友会長さんのグループが入りたいよといって、そういうのを受け入れたり、自分たちも言っているようにそういう人たちが来たら、これはうちらの縄張りだなんて言わずに、どんどんやってくれという形も含めて、交流を持っていますし、逆にその反対に自分たちが行って捕獲したりというのもあります。その中でやはり猟友会さんの中では理解できない方もいまして、理事会なんかでいろいろと問題になったりもしたみたいですけれども、その中で今度はほかの猟友会長さんがそうじゃないのだと、こういうのを見習って逆にそういった組織を猟友会の中につくらなきゃいけないのだという会長さんも出てきて、そういう人たちとの連携は非常に強くやっております。

【石井委員長】 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
よろしいですか。大分、委員も少なくなっちゃいましたけれども。
じゃあ、以上で、本日予定の関係者ヒアリングというのは全て終了ということです。
それで、今日、10団体ですね、ここからヒアリングをしまして、その結果も踏まえて、鳥獣の保護及び狩猟の適正化につき講ずべき処置ということで検討していく事項について、委員の方々から自由な形で意見を言っていただきたいと思います。
それで、1つは、この参考資料というのは何か説明は要らないですか。
参考資料といいましたのは、前回の1回目の会議のときにいろいろな意見がありまして、この委員会の中で、今後こういうことについて議論をしていくとか、こういう規制が必要なこととかがあったのですけれど。
今日の話を踏まえて、大体1回目に出てきた意見というのが当たっているというか、主なものは取り上げられていたのかなと思いますけれども、それにつけ加えるべき項目とか、あるいはより重点的に検討すべき項目があるかないかとか、そのあたりをもう少し議論していただければと思いますけれども。その他のことでも結構ですが、いかがでしょうか。

【羽山委員】 鳥獣保護法は鳥獣保護が目的の法律だということになっているのですが、今日は1日いろいろな立場の方のお話を伺っていて、その中でとりわけ問題になっていることは適切な保護管理をどのように進めるのかということでした。しかし、特定鳥獣の保護のための管理ということで「保護管理」という言葉が初めて条文の途中からに出てくるわけですけれど、やはり、いわゆる従来の規制法という考え方から、マネジメントのための法律なのだという位置づけをもっと明確にすべきだなと思いました。
それから、当然、そのマネジメントというのがパブリックな仕事だということです。しかし、その担い手、これは捕獲だけではなくて、マネジャーとしての仕事をされる方も含めて、やはりプロフェッショナルな方がパブリックな仕事をされると、そういう位置づけが今、法律にないということが非常に重大な問題だなと思いました。
もう1つは、パブリックであるということを前提として、だけどじゃあ、そのコストを誰が負担するのか。個人の財産とか、そういうものまで公的に管理するということは、やはり納税者も納得しがたいものもあるでしょうし、そのあたりの切り分けですね。逆に、現状でのコストパフォーマンスが本当に適切なのかどうか、このあたりの検証がないと、今、負担しているものが多いのか少ないのか、こういう評価もできませんので。
ですから、その説明責任を行政が果たせるような仕組みにしていかないと、幾らパブリックだからといって、無限に人もお金も出していいということにはならないだろうと思います。ですから、水とか森林とかこういった自然資源の管理で、現在行われているような発想も含めて、この鳥獣の保護管理の制度設計の中に費用負担の問題を盛り込んでいかなければいけないのではないかなということを感じました。
以上です。

【染委員】 私は、午前中は出ておりませんので、午後からの感想を申し上げたいと思います。
この前も、ちょっと申し上げましたが、やはり特定鳥獣保護管理計画をきちんとやらないと、鳥獣害は、なかなか減っていかないだろうと思っております。
その場合、今日も話が出たわけでありますが、生息地の管理と被害防除対策、それと個体数管理、これをバランスよくやっていくということでありますが、ただ実態を考えますと、バランスをよくやるべきだというお話はよくわかるのですが、なかなか難しい面もかなり出てきている。それは、過去の実績からできなかったということは、それなりの理由が十分あったのではないのかと考えております。
そういう意味で、今後進むべき方向というのは、そういう中からどういう方向に行くのかというのを、やはり十分検討していただかなければならないのではないかと考えております。
その場合に、いろんな意味での規制改革、いろんな規制があるというのをある程度緩和していただくとか、あるいは特例的なものをつくっていただく。全体としてのバランスある行政というのは必要ですが、そういう中から効果を上げていくには何をやったらいいのか、そこを明確にして一定の例外規定なり規制の緩和、この辺をやっていくべきではないのかと考えています。
以上です。

【石井委員長】 私も、この間の議論を聞いていて、鳥獣保護法あるいは鳥獣保護管理を考える中で、ますます明らかになってきたことというのは、鳥獣保護管理というのが非常にパブリックな側面を持っているというか、それが今後ますます重要視されなければいけない部分だろうと思います。
そういう観点から、現在の制度はいろいろと限界があるので、仕組みを考え直していかなければいけない。具体的にどういうふうにしていったらいいかというのは、私自身はまだアイデアもありませんが、というのが全体的なことですね。今日の話をずっと伺って気になった点は、やはり鳥獣保護管理上の問題といってもどうしても農林業被害というのに注目が集まるのだなということです。
本当は、多分、パブリックな仕事というふうに考えると、よく生態系に対する影響という言葉が出てきますけれども、それが本当はどういうものなのかというのが、まだまだ調べることも十分行われていないと思います。
シカの影響は、大体、植生を変化させるというところに注意が集まっていますけれども、ほかのいろんな生物に対する影響というのは、とても大きいと思うのですけれども、それについてまだまだ注目が足りない。そちらは、農林業被害と同じように、あるいはそれ以上に環境省の仕事としては重要なのかもしれないということです。
ただ、じゃあどのようにどういうところで着地点というか理想的な状態を見出すかというのは、科学的にもすごく難しいし、あと日本の社会が今、激変しているわけです。過疎化、高齢化に伴って起きている現在の農林業被害というのが、林業は違うかもしれませんけど、農業被害というのは、あと何十年かたつと、もう中山間から人が撤退するところが多くなると、自動的に消えていくようなところもいっぱいあると思うのですね。
だから、中長期的に見て、どのような状態で社会が安定するのかしないのかわかりませんが、そういうのを見据えて、現在やるべきことというのを考えなければいけないので、それはちょっと難しいのですけれども、そういう視点も必要なのではないかと思いました。
繰り返しになりますけれども、目標ははっきりしているけど、いろいろ人手が足りないとか、技術がなくてできないというのではなくて、目標自体も結構不明確だと思うんですね。不明確というか、考え方が一つに集まらない。それで、それを決めるときに、すごく専門的な科学的な判断というのが必要になるのですけども、そこのところもまだまだ不十分ということで、どのようにまとめたらいいかというか、進んでいったらいいか、ちょっとまだ見えていないのですけれども、そういう点にも注意を払って、今後のあり方というのを検討していかなきゃいけないと思っています。ちょっと長くなりました。

【坂田委員】 被害の問題なり、あとは、今回はあまり出なかったですけど、人身事故なんかも少ないとはいえ、徐々に目立つようにもなってきたりしていますので、そのような意味でも野生動物の管理に対するコスト、捕獲に関しても防護に関しても必要になってくるということは、皆さんの認識だと思います。
コストが高くなってくるということになれば、結局それに誰がどういう責任を持つかということですね。費用を払う人が誰かということと、責任を誰が持つかということが重要になってくるのではないかと思います。
今までの議論の中でも、個人の財産に対する被害は、個人でやればいいことじゃないですかという意見もありましたけれども、一方で、今、蚊を殺すのだったらという比喩もありましたけど、蚊ならそれは個人でいくらでも対応しますが、これが人間と同じ大きさの体力もあるクマだったりシカだったりイノシシだったということになると、それは個人個人で防いでくださいよと言えなくもなってくると思います。
そういうときに、誰がどこまで責任を持つべきかみたいなところは、もう少し明確にならないと、次の話ですね、結局、費用対効果をバランスよくとか、どういう手段を選んだら効果が出るかということは、例えば農業被害に対して責任を持つのであれば、それに対する費用対効果とそれに対する選ぶべき手段ですね、そういうことを責任を持ってみて、それを説明するための指標を集めるということになってくると思うのです。
これが、個人の責任だということが明確になれば、これはもう行政にぐだぐだと物を言うのではなくて、個人の責任で自分の身を守るように腹をくくって国民全体が努力しないといけないということになると思います。その辺を個体数の調整の部分だったら、誰がどの程度、完璧にそれをどこかにということではできないかもしれませんけれども、ある程度明確にこの部分は行政がやるけども、あとの部分は個人でやってくださいとか、自分でこういう業者があるので頼んでくださいというような、その辺の責任分担のところをもうちょっと明確にしていくところで、そうするとさらに費用対効果なりコストなり、その辺の議論が進んでいくのかなと思います。
午前中の都道府県からのヒアリングのときでも、やはり捕獲してくれる人が増えたほうがいいと、増えてほしいという願いはあったとしても、実際にじゃあ、捕獲するのに現実どのくらいの費用を払っているのか、あるいはどのくらいの将来的見込みなのか、みたいなところまでは明確でないまま、捕獲してくれる人が増えたらいいと漠然と思って。(←ここでは、漠然と思っているだけでは、従事者を増やすことはできないと言おうとしたのではないかと思います。)
そこでは、さらにある程度の責任の分担なり、役割分担が明確になって、かつ自分で事業をするということの中から、もう少し具体的な数字がきちんと算定できるようになるかというふうに思いますんで、そういう感想です。

【小泉委員】 特定鳥獣保護管理計画における捕獲について意見を申し上げたいと思います。
まず、本日の総括を述べさせていただきます。その後に、今後、検討すべき点を3つ、お話しして今後の検討課題としていただきたいと思います。
まず、総括です。特定計画は崩壊したというご指摘をいただきました。私は、崩壊はしていないし、させるべきではないし、それはものの見方だとは思います。ただ、やはりこの15年間、きちんと個体群管理できなかった場面が多かったということは、これは認めなければいけないことだと思います。
私は、この原因は、研究者も捕獲技術者も、実は個体群を管理する技術のレベルがあまり高くなかった、経験も積んでいなかった、ことにあるのではないかと考えます。にも関わらず、法的規制を緩和して、たくさん獲れば減るだろう、問題はおさまるだろうとして進めてきたところを、これから考え直さなければいけないのではないかと感じています。
午前中に申し上げましたが、たくさん獲るための規制緩和は必要ですが、もう一方で質の高い捕獲を推進していく必要があるのはないかと感じています。質の高い捕獲には、専門性の高い捕獲技術者、それから一般の狩猟者、一般の被害を受けている人たち、をうまく結びつけるための捕獲コーディネーターが必要で、なおかつ、その人が専従的に配置されるということが大事なんだということを大分県や福岡県の事例から強く感じました。
今後、検討いただきたい点として3つ申し述べます。1つは、捕獲組織、これは捕獲体制といってもいいかもしれません。これに対して大きな改革を加える必要があるのではないかと思います。
捕獲の担い手を育成するという文言はいろんなところに出てきましたけれども、実は今日はっきりしたのは捕獲の担い手を育成するのではなくて、「公的な捕獲」の担い手を育成するということが大事なのではないかと感じました。
そのために、捕獲事業者と呼ばれる組織体の人たちが今後出てきて、公的捕獲を担っていただく必要があるのではないかと思います。このときに考えていただきたいのは、既に特措法に基づいて多くの地域で実施隊がつくられています。添田町の実施隊は市町村の役場の方が入っていましたが、こういった既にある実施隊とこれから公的捕獲の担い手を託したい専門性の高い捕獲事業者とうまく溶け合って捕獲を進めていくようになるよう、仕組みをご検討いただきたいと思います。
第2点は、捕獲技術に関しての規制緩和です。最初に北海道が提案されたことと、最後のNPO法人若葉の方が総括されたことが非常に似ているところが大変印象的でした。一般的な危険回避のためにもうけられた規制によって、捕獲技術の革新が進められないというのは、今後のことを考えたときに望ましくないと思います。これは、ぜひ考えていく必要があるのではないかと思います。
最後に捕獲の場にかかる規制も緩和していく必要があるのではないかと思います。国有林や自然保護区では大分規制が緩和されてきておりますが、たとえば防衛省の演習地など、シカはいるが管理できない場所についてさらに検討が必要であると考えます。さらに捕獲の場については捕獲後のシカの処分方法も含めて考える必要があります。今後も捕獲数を増やしていかなければならないわけですから、処分問題が捕獲の推進に障害にならないよう、法ないしは制度の基準の緩和等を含めて検討する必要があるのではないかと思います。
以上です。

【石井委員長】 ありがとうございます。
あとはよろしいですか、特に言うことがなければ。
それでは、意見交換は、ここまでということにしたいと思います。
以上をもちまして、本日の鳥獣保護管理のあり方検討小委員会の議事を終了します。 ご協力ありがとうございました。
あとは事務局でお願いします。

【事務局】 委員の皆様、本日は午前、午後と長時間にわたりまして、熱心なご議論ありがとうございました。
次回の小委員会ですが、6月28日、金曜日10時より行いますので、ご出席よろしくお願いいたします。
なお、本日の資料は、お持ち帰りいただいて構いません。次回、ご持参いただくことも不要です。ご不要の方は机の上に置いていただければ、次回、ドッチファイルにとじてご用意いたします。
今後の小委員会の資料も順次、そのドッチファイルに追加していきますので、ドッチファイルは机の上に置いたままお帰りください。
本日はどうもありがとうございました。
これをもちまして、本日の鳥獣保護管理小委員会を閉会いたします。