中央環境審議会自然環境部会 自然公園のあり方検討小委員会(第7回)議事録

議事次第

  1. 開会
  2. 議事
  3. (1)有識者からのヒアリング
      [1]海洋保護区の必要性
     京都大学フィールド科学教育研究センター 特任教授 向井 宏
     [2]生物多様性保全を踏まえた自然公園のあり方
     江戸川大学教授・日本自然保護境界理事 吉田正人
     [3]慶良間サンゴ礁の保全と活用
     慶良間自然環境保全会議 理事長 垣花武信
     [4]尾瀬保護財団と尾瀬の管理・運営
     財団法人尾瀬保護財団 事務局長 笛田浩行
    (2)必要な措置に関する検討
    (3)その他

  4. 閉会

議事録

午前10時00分開会

○事務局 予定の時間となりましたので、ただいまより中央環境審議会自然環境部会自然公園のあり方検討小委員会を開催させていただきたいと存じます。
 本日の出席数でございますが、所属委員11名のうち7名の委員のご出席をいただいております。定足数を満たしておりますので、本日の小委員会は成立しております。
 会議を始めます前に、お手元にお配りした資料の確認をさせていただきます。
 議事次第、座席表、名簿とございまして、資料がございます。資料1、海洋保護区の必要性、資料2、生物多様性保全を踏まえた自然公園のあり方、資料3、慶良間サンゴ礁の保全と活用、資料4、尾瀬保護財団と尾瀬の管理・運営、資料5、自然公園法の施行状況等を踏まえた必要な措置に係る論点の整理についてでございます。
 また、配布資料とは別に、前回の自然公園のあり方検討小委員会の議事要旨をお手元に配布しておりますので、ご確認ください。
 それでは、熊谷委員長、よろしくお願いいたします。

○熊谷委員長 それでは、ただいまから中央環境審議会自然環境部会自然公園のあり方検討小委員会を開催いたします。
 本日の委員会は公開でございますので、報道関係者や傍聴の方も同席しております。
 会議録は、後ほど事務局で作成し、本日ご出席の委員のご了承をいただいた上で公開することになります。なお、議事要旨につきましては、事務局で作成したものを、私、委員長が了承した上で公開することをご了承いただきたいと思います。
 早速ですが、本日の議題は、1、有識者からのヒアリング、2、必要な措置に関する検討の2点を予定しております。
 それでは、議題1、有識者からのヒアリングに入りたいと思います。各有識者の方のご説明時間は、恐縮ですが、10分程度、その後質疑の時間として15分としたいと思います。議事の進行上、全体で25分としたいと考えておりますので、円滑な議事進行によろしくご協力をお願いいたします。
 最初にご説明いただくのは京都大学特任教授の向井宏先生です。先生には「海洋保護区の必要性」についてご説明をお願いしたいと思います。 

○向井教授 おはようございます。ご紹介いただきました向井です。10分ということですので、駆け足でお話をしたいと思います。海洋保護区の必要性ということで、釈迦に説法になるかもしれませんが、私の考えているところを述べたいと思います。
 近年、漁業資源がどんどん減少している、ここ数十年の間大幅に減少しているということがよく知られています。ただ、漁業資源に関しては、産業ということもあって非常に充実した統計資料がありますけれども、有用な生物資源でない海洋生物というのはほとんど情報がありません。そういう調べられていない海洋生物も大幅に減少していたり、地域的に絶滅している生物は非常に多いだろうと、海洋生物の研究者の間では認識されています。
 主な原因は、一つは過剰に生物をとりすぎたことが言われています。一方、それ以外の原因としては、水質汚染が大きいだろうと言われています。それ以外に、ここで特にお話したいのはハビタットロストです。埋め立てとか、その他の開発によって砂浜や干潟や藻場というような沿岸の環境がどんどんなくなってきたことが、海洋生物の減少や絶滅に大きく寄与しているだろうと考えています。それだけではなくて、残ったハビタットも細かく隔離されてしまって、それによって生物の減少や絶滅も起こってきているだろうと考えています。
 東京湾の干潟の例を少しお話します。干潟の生物の絶滅の一番大きいのは干潟の埋め立てであります。東京湾では95%の干潟が埋め立てられてしまっていますが、瀬戸内海とか有明海でも似たような状況が起こっています。それに加えて水質汚染が非常に大きな影響をもっているだろうと考えます。
 干潟というのは湾の奥のほうで成立しています。湾の奥というのは川が流れ込んでいる、汽水域があることが典型的な例なんですけれども、そういうところに生活している生物は、プランクトン幼生を脱して、それが汽水域の循環に乗って沖に出て、それが再び帰ってきて、沿岸の干潟に定着するというような生活をしているものが多いわけです。これは汽水域循環というものに乗った生活史をもっていることが多いのです。
 そのときに、埋め立てによって干潟が無くなると、生活する場所そのものが無くなっていくということはあるわけですし、汚染によって海底に酸素がない状況がつくられると、汽水域循環で干潟に戻ってくる途中に生活史がブロックされてしまうことも起こる。埋め立てとポリューションというのが、生物の地域的な絶滅の非常に大きな要因になっていると考えています。
 東京湾に残っている最後の干潟と言われている小櫃川の干潟では、こういうふうな巻貝がたくさん生活していたんですが、そのうちのカワアイという種類は絶滅、オオヘナタリ、ウミニナというのは絶滅危惧、ほとんど絶滅に近い状態で、1種類、ホソウミニナだけが残っているという状態になっています。
 なぜホソウミニナだけが安定した個体群を保っていられるのかというと、それ以外の絶滅若しくは絶滅危惧になっている種類は、ほとんどがプランクトン発生をして、生活史として沖に行ってまた戻ってくるという生活をしている、そういうものはほとんど絶滅してしまった。ホソウミニナに関しては、直達発生で、現場でそのまま子どもを産むことができるので、干潟が残っている以上は今のところは安定な個体群を維持しているということが考えられています。
 そういうこともあって、海洋生物の多様性を保全するためには、そういう環境を残していくということが必要であって、そのために海洋保護区がどうしても必要になってくるのではないかと考えています。
 もう一つ、有明海の例をお話したいと思います。これはハビタットが細切れになってしまっている場合の例です。ここにはハルマンスナモグリという種類の動物がいます。これは幼生を脱して色々なところに分散していくわけですが、幼生の供給個体群がこの赤印であります。そこから幼生が供給されて、有明海一帯にスナモグリの個体群がつくられていくということが、研究の結果わかっています。
 要するに、スナモグリというのは砂浜のちょっと沖の浅い海底に生活するわけですけれども、どこにでもいて、それが常にそこで再生産をしているわけではなくて、場所によってはどこかから常に供給されていないと維持できない個体群があったり、ある場所では常にいろいろなところに個体群を供給しているようなものがある。
 そういうふうなものを、どこか1ヶ所だけ保護区として守ってもなかなかうまくいかないだろうと。SinkとSouceと我々は言っていますけれども、ソースになるところをきちんと守っていくということが必要で、そういう形での海洋保護区をつくっていかなければいけないだろうと考えます。
 これは個体群の供給の過程を研究した結果です。こういう地域個体群、特に干潟の生物をここではお話していますけれども、東京湾の地域個体群だけを考えても、干潟の個体群の保全を完全にやることはなかなか難しいと思われます。現在、干潟の生物がどんどんいなくなっている、地域的な絶滅が起こっているということの大きな原因は、例えば有明海とか瀬戸内海、伊勢三河湾、東京湾、こういう大きな干潟を持った海域相互のつながり(コネクション)があったわけですが、開発その他によって断ち切られていってしまっていることによって、メタ個体群としての生物の保全がだんだん難しくなってきていると考えています。
 例えばサンゴ礁の例でも、ソースになる地域とシンクになる地域がある。日本はどちらかというと黒潮の一番北のほうにあたるわけで、サンゴはよそから供給されている可能性が非常に強いわけですね。そういう意味で、日本のサンゴを守るためにはそのソースになるような地域を守っていく必要があると。特に、サンゴ礁に限らず、海洋生物の保全には国際的な取組も必要になってくるのではないかと考えています。
 それから、最近つくられた海洋基本法では、「沿岸の海域について施策を講ずることのみでは、沿岸の海域の資源、自然環境等がもたらす恵沢を将来にわたり享受できるようにすることは困難である」という認識がきちんと書かれています。結局、海のことだけを考えていたのでは海は守れないということを言っているわけで、海洋保護区をつくる場合にも、陸と海のつながりを確保することが非常に大事だと思います。
 沿岸の環境というのは、陸上と強いつながりをもっていまして、森から川を通して海へのつながりというのがつくられていて、それは水だけではなくて、砂の流れについてもそういうつながりがあります。森、川、海のつながりというのは、砂を通してもつくられて、その砂の流れが沿岸の多様な生息域をつくっている。河川の構造、瀬や淵や砂浜、それから、ワンドなど。それから、干潟は、河口干潟、前浜干潟、潟湖干潟など。それから、砂浜とか砂州とか、潟湖、砂碓、こういうような多様な環境が砂の動きによってつくられているということを認識しなければいけないと思います。
 そういう森、川、海のつながりを、水だけではなく、砂の流れも分断するものとして、砂防ダムや貯水ダム、川砂の採取、河川改修、河口域の港湾とか防波堤の建設、砂浜を分断する港湾、突堤・ヘッドランド、最終的には海砂の採取、そういうものによって大きく分断され、壊されていっているわけです。これを何とかしなければ、海域の保全及び海洋生物の多様性の保全は難しいだろうと考えます。
 これは一つの例ですけれども、北海道の東部に野付半島という砂嘴でできた自然豊かな環境があります。この砂嘴で囲まれた中に広大なアマモ場があって、その周辺には湿地帯があり、干潟があり、砂碓があるというような非常に多様な環境をつくっています。ところが、現在、砂浜がどんどんなくなって、砂嘴そのものがなくなってきていると言われています。
 中には日本最大と言われるアマモ場がありまして、そこにはホッカイエビというエビが生息していて、エビの漁業として帆掛け船を使った漁業が行われています。帆掛け船を使っているのは、アマモという生物資源を傷めないようにという配慮から、エンジン付きの船は使わないで、生物資源を大事にしながらの漁業がここでは行われているわけです。
 そういう自然をつくっている肝心の砂嘴そのものがいまどんどん消失していますが、その原因は砂の供給がなくなったこと、陸と海のつながりをなくしてきたことが砂の供給をなくていく方向につながっていったと。土木の人の予測では、三、四十年たつと砂嘴そのものがなくなってしまう危険性があると、そういう事態が進行していると言われています。
 それは、先ほど言ったようにダムとか港湾、防波堤、コンクリート護岸などが、陸と海とのつながりを断ってきたということが考えられるわけです。これは港湾か砂の動きをとめている例です。
 そういう砂浜の消失を止めるために、ヘッドランドという人工工作物による砂浜の維持が全国で行われています。これは確かに一時的に砂の消失を緩和する効果はありますが、逆に砂の供給をも止めてしまっていることがあって、こういうものをつくって砂浜を維持しようとすると、将来的に永久に人工的に砂を入れてやらないといけないという状況が起こってしまう。そういう人工的な砂浜になってしまうと、生物の多様性は大幅に減少するということもよく分かっています。
 砂浜だけではなくて、干潟も陸からの砂の供給がどんどん無くなっているという状況が非常に問題になっています。
 最後に、まとめですけれども、漁業資源の自主管理が今までずっとやられてきたわけですが、それはもう限界にきているのではないかと。これは私の個人的な意見ですけれども、半強制的な保護区の設定が必要であるだろうと思われます。ただし、現在までの保護区の設定、国立公園などによって保護区の設定をやっていても、住民の理解が十分得られているとは思えない。国からの積極的な指導や宣伝・教育・説得がほとんどなされていなかったのではないかと考えていますが、これが大事だと私は考えました。
 それから、海洋保護区をつくるときには、先ほど言ったように、souce populationを保護することが大事だということと、陸上生態系とのつながりを維持することのできるような保護区の設定が必要であると考えます。ですから、陸域を含めた、できれば流域全体を含めたような保護区の設定が最も好ましいのではないかと考えています。
 以上です。

○熊谷委員長 ありがとうございました。
 それでは、向井先生からご説明のありました件について、ご質問がございましたら、ご発言をお願いいたします。
 では、桜井委員、お願いします。

○桜井委員 向井先生にお聞きしたいのは、先生がおっしゃっていらっしゃる海洋保護区ですけれども、どのような海洋保護区のイメージでしょうか。かなりいろいろありますね、非常に厳しいものから、漁業者が漁業をできるようなものがありますけれども。

○向井教授 地域に応じた規制の仕方があると思うんですね。だから、全国一律にやるというのは私は反対なんです。地元との話し合いを通じて、どういうふうにすべきかというのを、地元の了解を得ながら規制の内容を決めていくのが大事だと思います。そのときに専門家及び国の説得というか、教育というか、そういうものが必要だろうと考えています。

○熊谷委員長 いかがでしょうか。ほかにございますでしょうか。
 大澤委員、お願いいたします。

○大澤委員 海洋保護区を守るには、海だけ考えていたのではだめだと、陸域とのつながりを考えなければいけないと、その趣旨は大変よく分かりましたが、具体的に何か名案というか、助言というか、そういうものはお持ちでしょうか。陸域と合わせたような海洋の保護区を。というのは、最近、環境省が口永良部を国立公園に入れたんですけれども、そのときに海域のサンゴ礁の部分が大事だということで、そこを保護区にしたんですが、集水域のことも考えないとそこだけ切り離してやってもだめなのではないか、そこだけを切り離して保護区にしてもうまくいかないのではないかと申し上げたのです。実際にはいろいろ難しい問題があるようで、そのままになってしまったのですけれども、そういうことを具体的に解決していく何かいい方法があれば教えていただきたい。

○向井教授 理想としては流域圏を含んだ海域として設定するというのが一番いいと思うんですが、おっしゃるように非常に難しい問題が多くあります。そこで住民の意識が大事なのではないかと私は考えていて、住民の意識がそういうふうになってくるのを待っていたのでは何百年たっても無理ですから、環境省、国なら国、専門家も含めて、なぜそういうことにする必要があるのかを積極的に説いて回る努力が必要ではないかなと私は考えています。
 実際に私がいた北海道の厚岸というところでは、国定公園化するということで、地元のほとんどが賛成したのですが、唯一、漁業組合が反対していて、未だに国定公園はできていません。現状とそれほど変わらないということは言われているのですが、国定公園にすることによって何がメリットなのかということはほとんど説明されていないと思います。それが大事なのではないか。漁業者にとっても、規制をすることによっていいことがあるんだということを説明していく必要があるのではないかなと考えています。

○熊谷委員長 ほかにご意見あるいはご質問ございますでしょうか。
 桜井委員、お願いいたします。

○桜井委員 私も知床にかかわっていまして、同じような悩みを持ったのですけれども、厚岸の場合、例えば、襟裳と比較しますと、漁業は非常に細分化されていて、零細な漁業者が多いです。今、先生がおっしゃった「規制」という言葉ではなくて、漁業のあり方自体を変えていくと、経営が成り立つような方向にもっていく方法もあるのですね。そうしないと、いつまでたっても、小さい漁業者が例えばアザラシに網をやられたとかいう被害がたくさん出ます。漁業形態をうまく変えることによって共存はできるのですけれども、そこに至らないことがあります。その辺はどのようにお考えですか。

○向井教授 アザラシの問題はあまりよく知らないこともあるのですけれども、被害を声高に言い立てる人がほんのわずかいて、実際よりは大分オーバーに言われているのではないかと私は感じています。被害の科学的な調査というのはほとんどなされていないですよね。そういうことがあって、その問題はちょっと置いても、厚岸での国定公園化においても、国が主導的な役割を果たしていなかったと私は思うのですね。地元からの国定公園にしてほしいという要請がこない以上は、国は知りませんというような立場だったように私は思うんです。
 そういうのではだめと思いますね。むしろ積極的に、国定公園にしようとすれば、なぜそれが必要なのかという、それこそ地元でワークショップを開いたり、講演会を開いたりして、地元の人を説得するような努力をほとんどやっていないのではないかなと思います。こういう海洋保護区もつくって規制をかければそれでいいというものでは絶対なくて、それがなぜ必要かを常に積極的に言わないと、単に指定して終りというのでは絶対だめと私は思っています。

○熊谷委員長 はい、いかがでしょうか。
 それでは、質問もまだおありかもしれませんが、時間の関係もございますので、このあたりで向井先生のご説明については終わりたいと思います。
 先生、どうもありがとうございました。
 続きまして、江戸川大学教授で日本自然保護協会理事でもある吉田正人先生のお話をお伺いしたいと思います。
 先生には、「生物多様性の保全を踏まえた自然公園のあり方」について、ご説明をお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○吉田理事 おはようございます。ご紹介いただきました吉田でございます。
 2002年に自然公園法の改正がありました直前の2001年が日本自然保護協会の50周年でございまして、その当時、私は日本自然保護協会の常務理事として、「21世紀の国立公園のあり方」について、委員会をつくり報告をまとめまして、シンポジウムなども開催させていただきました。そういった中で、2002年の改正というのは非常に大きな意味があったわけですが、生物多様性の保全の視点を踏まえますと、まだまだ十分でないところもございますので、本日はそういったことについて意見を述べさせていただきたいと思います。
 私の申し上げたい点は配布資料の中に書いてございますが、10分という限られた時間ですので、これを読み上げることはやめます。これを全部説明するのは時間的に難しいと思いますので、少し絞って事例を挙げて話をさせていただきたいと思います。ただ、最初に生物多様性条約の流れの中で何を押さえなければいけないかという話だけ簡単にさせていただきます。
 生物多様性条約は、ご存じのとおり1992年の地球サミットで採択されました。その中で、2002年のCOP6、オランダのハーグで開かれた生物多様性条約の会議で、生物多様性2010年目標というのが採択されました。2010年と言いますと、COP10が日本の名古屋で開催される年で、非常に重要な年に目標の年があるわけでございます。これは単にCOPで採択されただけではなくて、同じ年にヨハネスブルグで開かれましたWSSDに参加した首相によってもお互いに約束をしているわけです、日本でも小泉首相が出席しています。
 内容としては、2010年までに生物多様性の減少速度を顕著に減少させる。ヨーロッパは「減少させる」ではなくて「ストップさせる」という目標を立てております。この裏に隠れて意外と知られていないのが、保護地域2010年目標というのがございます。2012年目標というのもあるんですけれども、これは2003年にIUCN(国際自然保護連合)が10年おきに開いております世界公園会議がございまして、2年目はアフリカのダーバンで開かれました。この中でこういった目標をつくろうということが動議で出まして、翌年の2004年、クアラルンプールで開かれたCOP7でこの目標が採択されました。
 簡単に言いますと、2010年までに陸上の、それから、沿岸海域は遅れていまして、2012年までに沿岸海域の包括的で代表性をもって効果的に管理された保護地域のネットワークを確立するという意欲的な目標を立てているわけです。その中に16ほど達成期限を決めた目標があります。これを全部読み上げることは避けますけれども、今年が達成期限になっているものも幾つかございます。例えば保護地域の設置管理に関する基準づくりとか、成功事例の収集、保護地域に対する脅威というものを識別して、効果的な管理によって悪影響を回避するといったことがございます。
 2010年には、先ほど言いました陸上の保護地域のネットワークをつくる、あるいは、国境を越えた保護地域の設定による生物多様性の保全をする。あるいは、効果的な管理ができているかモニタリングをする、それから、目標達成を図るというようなことが書かれております。そして、2012年には沿岸海洋の保護地域のネットワーク、このほかに科学的知見と市民参加に基づいた保護地域の効果的な管理をしていくというようなこともございます。2015年には、保護地域を、特別な地域ではなくて、もっと広い生態系ネットワークの中に位置付けられるようにしていくという目標があります。
 これを念頭に置いた上で、我が国の自然公園がどういう状態にあるかということを考えますと、まず、我が国の中で一番守らなければいけないホットスポットといった地域、例えば琉球諸島と奄美群島の中央部分、それから、沖縄島で言えばやんばる、こういった部分が国立公園になってしかるべきですが、国立公園からは欠落している。海岸部分のみ国定公園になっておりますが、重要なアマミノクロウサギとかヤンバルクイナなどの生息地が抜けているわけです。
 それから、その当時の経緯で国定公園にはなっていますけれども、国立公園並みの価値があるのではないかと思われるような日高山脈とか早池峰山、宮崎県の綾の照葉樹林、こういったものについては、国定公園から国立公園ということを考えてもいいのではないかなと思います。
 また、既に指定されているものの、重要な地域が景観上からは高く評価されずに、普通地域となっていたところを生物多様性保全で考え、特別地域、特別保護地区にすべきではないか。例えば、空港問題が大きな問題になりました小笠原の兄島の乾性低木林、それから、この島にしかいない陸生貝類が特殊な進化を遂げている、大陸であるがゆえの進化を遂げている、そういった場所もあるわけです。
 これは、先ほど向井先生がおっしゃられましたので省きますが、一番大きなギャップは沿岸海洋ということで、海中公園地区というのが我が国の制度にはございますけれども、37?、桁を間違えたかと思いましたが、領海の1万分の1の面積しかございません。
 次にモニタリングに移ります。これから日本の自然公園の中の生物多様性も地球温暖化による大きな影響を受けてまいります。南アルプスのライチョウは世界の南限でございますけれども、今、温暖化に伴う捕食者の分布拡大、サルやシカなどの競合する生物も分布を拡大しているということで、非常に脅威にさらされているわけです。
 また、サンゴ礁については後ほどお話があるかと思いますが、西表石垣国立公園の白保のサンゴ礁のハマサンゴで、去年の10月に撮った写真ですけれども、側面が真っ白になっているのがおわかりかと思いますが、毎年のように海水温の上昇によって白化現象が起きています。
 こういった二次的な自然で自然公園にあるものが非常に大きな問題になります。日本自然保護協会は1996年に植物群落のレッドデータブックをつくりました。全国で7,000近い植物群落が危機に瀕しているということがわかってきました。最近、日本自然保護協会のシスパーチームという、保護地域のための戦略的情報システムというものをつくったんですが、このチームがGIS学会で発表した図を借用しております。
 例えば植物群落のレッドデータに入っているものが自然公園区域内にあるのかないかということを見てみますと、53%は自然公園区域外にある。重要な植物群落が日本の14%を覆っているが広い自然公園システムの中には入っていない。上が保護・管理状態の悪いもの、下が対策の必要性のあるものを指していますが、30%近い植物群落が、自然公園区域内にあっても、自然公園区域外にあっても、こういった状態になっているということです。
 そういうふうに考えますと、自然公園区域内にあればいいということではなくて、区域内にあってもこういった状態になっているということです。例えば、保護・管理状態の悪い植物群落の38%は自然公園内にございます。それから、緊急対策が必要な植物群落と言われているものの46%は自然公園内にあるということで、このギャップを埋めて自然公園を指定すればいいかというと、そうではなくて、現状の自然公園の管理というものを考えていかなくてはいけない。いろいろ理由はございまして、人の立入とか開発とかあると思いますが、大きなものは生物多様性の第2の危機と言われている、今まで人手が入って維持されてきた景観、その中で維持されてきた植物群落が危機に瀕しています。
 これは阿蘇くじゅう国立公園の草地ですけれども、今まではクララなどを食草とするオオルリシジミが絶滅の危機に瀕したり、火入れ、採草など、牧畜が行われなくなる時期が増えて、オキナグサなどの草本植物が見られなくなる、そういった現象が起きてきています。
 これに対して、今、自然再生事業が行われておりまして、9月に自然再生専門家会議の視察で、阿蘇市に合併された一宮町に行かせていただきました。肥後一宮があるところですが、そこではバイオマス発電ということで、カヤなどをロールにして、それを発電の材料として使っている。発電するだけではなくて、町で運営する温水プールなどにも熱を供給したり、そういったことが行われていて、生物多様性の保全ということと、地球温暖化の防止が一石二鳥で行われているということを見てまいりました。
 今までは、公園施設というと道路とかスキー場、もっと昔になりますと、三木環境庁長官のあたりまではゴルフ場まで公園施設だった時代がありますが、今の時代を考えてみますと、環境教育施設とか、二次的自然の維持をするものも公園事業として考えていいのではないかということでございます。
 発電所を公園施設にしろなんていったらたまげてしまうような発言ですけれども、提案として、現在、生物多様性保全に関しては、自然公園法だけではなくて、種の保存法を使って希少動植物の保全を図っている地域もございますし、自然再生推進法によって自然再生が自然公園内で行われているところもございます。それから、外来種対策法によって外来種のコントロールを行っているところもございます。
 こういったものをそれぞれの法律でバラバラにやるのではなくて、自然公園の中でインテグレートするというか、包括的にやっていけないものか。例えば、今、小笠原の世界自然遺産登録を目指してアクションプランをつくっているところですが、アカガシラカラスバトとか、陸産貝類といった希少種の保護が行われております。また、外来種の駆除で、駆除したモクマオウ、ギンネム、アカギを観光利用するということで、椅子とか箸をつくるということが行われております。モクマオウ、ギンネムなどは地元のNPOが一生懸命努力して切っています。
 左側の丸い写真は、長崎展望台というところから見た兄島です。かつてはモクマオウとかギンネムに覆われて全く見えなかったところが、こんなにきれいに見えるようになってきた。風景の保護というだけではなくて、外来種のコントロール、それから、在来種の保護にもつながっているわけです。
 ここに写真が出てきたのですけれども、地元の人たちは何が困っているかというと、例えば外来種駆除をするのはいいのですが、切った木を放置しておきますと、シロアリが発生して困ると。だから、なるべく家のそばは切らないでくださいというようなこともあるんだそうです。そういったことを考えると、NPOでこんな施設をつくるのは大変でしょうから、公園施設としてつくってNPOが管理するというのでもいいのではないかと。
 小笠原のガソリン代は日本一高いですが、本土から油を持っていって発電している。そんなことをするなら、こんなにいっぱい木質発電ができる材料が外来種駆除で出ているのだから、活用しない手はないのではないかとも思います。現代的に考えると、そういった公園事業、公園計画をつくっていく必要があるのではないか。
 「今、世界遺産にあって国立公園にないもの」と書きましたが、世界遺産に関しては、知床、暫定リストに入っている小笠原、管理計画をつくって、しっかりと関係者が議論しています。きょう桜井先生もお見えでいらっしゃいますけれども、多様な主体を結びつけるということで、関係省庁、自治体、科学者、市民などが議論してつくっていく。今まで公園計画ではできてないことがやられているわけです。これは外圧もあるんですけれども、世界遺産にするのだったらこういう課題を解決しないとだめだと、IUCNのユネスコから外圧がありまして、それに対して問題解決型の行動計画がつくられている。これは公園計画との大きな違いです。
 これに対して、旧来の公園計画は、環境省内部で行政的に調整してつくっていって、審議会を通すやり方なので、内容的には施設整備とか規制中心である。動的な問題、新しい問題に対処できていない問題点があるのではないか。これを解決するために、公園計画のあり方を多様な主体の参加による公園計画にしていく、あるいは、モニタリングに基づく順応的な管理ができる公園計画にしていく。そして、それぞれの自然公園の状況に合わせた問題解決型の公園計画にして、具体的な年次計画とか、誰が実行するかというような分担なども入れていく。
 そして、先ほど発電の話をしましたけれども、今までのようにレクリエーションとか、普及啓発だけにとどまらない、もうちょっと広い視野の公園計画、包括的な公園計画もやっていく必要があるのではないか。世界遺産の場合は、外からのリクエストに応えるために、各省庁も来てくださいと強制的にやらざるをえなかったのですが、できたら国立公園に関してもそういった枠組みで、省庁の枠を超えて取り組んでいくことができるといいと思っております。
 どうもありがとうございました。

○熊谷委員長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまのご説明に対してご質問がある方、どうぞお願いしたいと思います。
 では、森本委員、お願いいたします。

○森本委員 意見というよりも、自然保護協会の方から大変イノベーティブな生物多様性の保全というのですかね、いわゆる従来型の保護の枠組みだけではなくて、いろいろなご提案があったというのは大変意義があることかなと思います。私、きのう、大阪の万博記念公園に行ってきたのですが、あそこは都市公園なのですけれども、自然植生の再現というのも一つのミッションにしているんですね。
 あれは単に植えるだけではだめで、その後の持続可能な資源の使い方もあるのですけれども、生物多様性、もともとの再生をするためには単に植えているだけではなくて、パッチ状の間伐もたまにやるとか、或いは周りの市で、近所のシードソースのあるところから導入しなければいけないというので、実際にアダプティブにやっているのですね。そこで出てきた資源は完全にリサイクルすることをテーマにしていて、切ったものを足湯の燃料にしたり、色々な工夫をしているのですね。
 そういうことを考えると、自然公園も、従来型の自然ではなくて、里地里山まで踏み出したことを考えると、公園事業の見直しは不可欠という印象を改めて持ちました。それで、ちょっとお伺いしたいのは、バイオマス発電というお話があったのですけれども、発電だけでは、発電すればいいんだみたいな話になりかねないので、この辺をうまくやっていく仕組み、それだけではないと思うのですが、色々な使い方、要するに資源の使い方だと思うのですけれども、その資源の使い方の枠組みとして、何かいい方法がないのかなと思っていまして。
 例えば京都などでは、ナラ枯れでだめになる木はシイタケのホダギになるのではないかというようなときに、その資源に価値が出てくる。バイオマス発電もそうだと思うのですが。例えば、資源をうまく持続可能な形に使うために、利用ということを考えると、価値を持ってしまう。そのときに使い方の枠組みを考えておかなければいけないので、なかなか難しくなる面があって、これは里地里山の管理だけではなくて、公園の使い方と共通した問題になると思うんです。何かいいお考えがあればお伺いしたいと思うんですが。

○吉田理事 ありがとうございます。
 森本先生からご指摘いただいたとおり、手段と目的が逆になってしまって、木質発電が目的になってしまうと、ちょっとおかしなことになってしまう。外来種駆除をどうするかということでやっていたのに、だんだん木がなくなってきたので、もう一回リュウキュウマツを植えましょうかとか、モクマオウを植えましょうかなんてことになったら、おかしなことになってしまうので。ある面では何の目的のためにやっているのかということをきちっとやっていく。ある時期になったらそれで発電できなくなってもうやめるかもしれないという期限付きでやらなければいけないので、これはNPOではできないので、国がやるべきだろうなと思った次第です。
 もう一つは、生物多様性は自然環境局、地球温暖化防止は地球環境局というふうに分けるのではなくて、こういった問題は自然公園の中においてもクロスオーバーしているものがあるのではないか。一方で、こういう予算はありますよというのがあって、それをうまく使っていくことで、自然公園内の、先ほど「イノベーティブ」と言いましたけれども、新しい閃きに基づいた新しい事業が組めるのではないかと思いましたので、提案させていただいた次第です。

○森本委員 確かにそうだと思うのですね。いろいろ工夫してやるときに、出てきたものが価値を持ってしまうと従来型の保護の枠組みに入らない。例えば里地で米をつくったら、米の生産というのはまた別の枠組みがあるわけですね。その辺がいつも何かやるときに困っているのですね。資源の使い方を参加者が勝手にしていいのかどうかとか、いろいろな問題が実際に出てくるので。何かいい試みをやっておられる事例、あるいは、ご提案があれば。

○吉田理事 今いい事例は思い浮かびません。自然公園法の中では里山を管理しながら、価値を持ったお米なり薪なりが出てきたときに、どう対処していくかということは全く想定されないのですけれども、今後、里地里山の保全が一つ大きな柱になっていくでしょうから。確かにお米などは困るんですね、海上の森なども、県の土地の中でNPOの人たちがやっていますので、自分のものにするわけにはいかない、お祭りのときにみんな配っているのですが、そういうやり方をせざるをえないとか、色々なものがあって、それは農水省のルールとの調整が必要なのかもしれません。今後そういうことが課題として重要なものかなと思っております。

○熊谷委員長 いかがでしょうか、ほかにご質問ございますか。
 では、桜井委員、お願いいたします。

○桜井委員 世界自然遺産並みとは言わないまでも、国立公園についても同じような仕組みが必要であることは理解できたのですが、もう一つ重要な点は人の問題です。施設とかハード面はよろしいですけれども、ソフトの面で、自然公園をこれから管理していくにあたってどのような方法があるとお考えでしょうか。

○吉田理事 人の問題のところは省かせていただいたのですけれども、日本の自然公園では、90年代ぐらいになってからビジターセンターとかの博物展示施設関係が充実してきましたが、今までのところ非日常的な自然とのふれあいをやっていくようなガイド養成といったものしか行われていないような感じがいたします。
 私、ここに書きましたように、自然公園が提供しているのは美しい風景や学術的価値だけではないと。水源涵養とか洪水調整などの調整サービス、あるいは、野生生物とのふれあいの場の提供などの文化サービス、そういった様々な生態系サービスを提供している場だということを、もっとビジターセンターの中でもPRして、国民にこれは税金をもっと使ってもいい場所なんだということを理解してもらうことが大事でしょうし、ビジターセンターなどの施設でガイドの人も少し意識してそういった話をしていく必要があるのではないかなと思います。
 先生のご質問は、教育的なことだけではなくて、管理の面などもあると思うのですけれども、アメリカの営造物型の国立公園に比べますと、圧倒的に常勤の職員とかスタッフが足りないわけですので、私としては、野生生物の専門家、生物多様性の専門家、それから、環境教育の専門家をもっと増やしていく必要があると思っております。

○熊谷委員長 それでは、大澤委員、お願いいたします。

○大澤委員 今との関連で、特に今出ている画面について言うと、上から2番目のモニタリングに基づく順応的な公園計画というあたりが、現状で実現するのが一番難しい部分かなという気がするのですが、公園スタッフの問題とか、研究者との共同とか、そういうことについて何か具体的なお考えがあれば聞かせていただきたいのですが。

○吉田理事 小笠原の場合は、今、暫定リストに上がっていて、クリアするためには単に管理計画をつくるだけではなくて、年次計画のようなものまで要求されるであろうと予測して、アクションプランを管理計画に付随したものとしてつくっているわけです。公園計画は10年ぐらいは改訂されないということが今まででした。
 それがこのフィードバックがちゃんとできてこなかった理由ですので、公園計画も年次目標を決めて、10年計画だったら、そのうちの最初の3年間ではどこまで達成し、5年目ではどこまで達成し、7~8年目ではどこまで達成し、10年までにどう達成するというのを、目標をちゃんと決めてやるような法改正をして、その中でそれに向けた努力をしていく、予算をつけていくということが重要だと思います。ただ、国のスタッフだけではやりきれないということはあると思いますので、公園管理団体という制度が2002年の改正でできたわけですから。
 今の公園管理団体というのはどちらかというと、装置の維持とかいったことをやる、力仕事をする公園管理団体というイメージがあるのですけれども、モニタリングをするような管理団体があってもいいだろうと、そういったものがNPOとして成立してもいいだろうと思いますし。そういったものをもっと盛んにしていく必要があるのではないか。知床などはヒグマの調査とかをやっているわけですけれども、そういった人たちがいるような団体がプロとして成立し、公務員ではないですが、様々な予算とかファンドを使って動いていくと。アメリカでは国立公園に対して、例えばヨセミテアソシエーションとかいう、公園に対して1つの財団が必ずあります。そういったものも必要なのではないかと。全国的な国立公園協会がありますけれども、それ以外にも公園ごとの協会があってもいいのではないかなと思います。

○熊谷委員長 ありがとうございました。
 それでは、ご質問は尽きないようですが、時間の関係もございますので、このあたりで終わらせていただきたいと思います。
 先生、どうもありがとうございました。

○熊谷委員長 続きまして、「慶良間サンゴ礁の保全と活用」について、慶良間自然環境保全会議の垣花武信理事長からお話を伺いたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○垣花理事長 今から32年前に復帰記念ということで沖縄海洋博が開かれました。テーマは「海、その望ましい未来」だったのですが、あの当時のサンゴの状態が100とすると、今現在は5%もない、沖縄のサンゴは。特に沖縄本島は5%も切っているのではないかと。その中で、かろうじて慶良間諸島は20%から40%ぐらいまでサンゴがまだ残っている。そういうエリアになっています。
 これは慶良間海域の海図です。沖縄海岸国定公園の海中公園の一部に入っています。
慶良間の中に渡嘉敷村と座間味村があるのですが、この中心の10kmの円を描くと15ぐらいの島々がありまして、高さ400mの山の3分の2は海の上に出て、あとは海底に入っているという地形です。ですから、かなり入り組んだ地形になっています。そして、潮の流れも速い。
 島の周辺はサンゴ礁がかなりありまして、陸からすぐサンゴ、そして深くなっていくと。水温も沖縄本島よりも1℃ぐらい低い、夏は低くて、冬は黒潮の反転流があるものですから、温かいということで、この海域では魚が約360種類、サンゴ礁も含めて無脊椎動物が、貝を入れると1,600、海草が220で、ここにはかなり多様な生き物が生息し、保存状態も非常にいい。
 もう一つ、この海域の周辺では、12月後半から4月頭ぐらいまでザトウクジラがやってきます。これは、子どもを産んで育てて、それから北上していくのですが、その間はこの海域に生息しています。6月ぐらいからサンゴの産卵が始まりますが、このサンゴの卵が大潮の流れに乗って沖縄本島側に流れていくので、このエリアがサンゴの卵の供給源にもなっている。ザトウクジラも含めて里海宣言をしました。クジラにとってもそうだし、サンゴにとっても、ここは里海ではないかということで、里海宣言をしました。
 慶良間は70年代ぐらいからダイビングが盛んになりまして、現在では座間味村で約9万人、渡嘉敷村でも8万人ぐらいのお客さんが来ています。それ以外に、沖縄本島に泊まって慶良間海域でダイビングをする、あるいは、ホエールウォッチングをする、あるいは、日帰りの海水浴をするということで、年間約100万人がこの海域を利用しているということで、この海域のサンゴに対するストレスなど、色々な面で問題になっていまして、この海域を保護しようと。
 1998年に白化現象が起きましたが、その年に自主ルールをつくりまして、守っていくことを決めました。これは座間味村の漁業組合の理事会で決めました。皆さんの資料では1番から3番、これは重要なポイントで、このポイントは魚もとらない、もちろんダイビングも禁止しようということで、地域で保護区を決めて3年間休ませたおかげで、サンゴの状態が50%回復しました。ただ、98年に白化現象が起きて、2001年にオニヒトデが異常発生しました。前の2つは絶えずリーフチェックをしたり、地域の皆さんやダイビングをする皆さんがチェックするのですが、この裏の方は保護区域ということで休ませていたら、オニヒトデにほとんどやられてしまいました。
 今度は重点地域を決めてやろうと、オニヒトデの駆除を、地域を指定して、ここに来るオニヒトデは徹底して駆除しようということでやって、去年、リーフチェックをやったときに、この5地点、渡嘉敷側の2つと座間味の3つの地点ではオニヒトデは1匹しか見つかりませんでした。ですから、今年は完全にオニヒトデはいなくなっています。どこへいっているのか、ひょっとしたら八重山へいっているのかもわからないですけれども、いなくなっています。そういうことで、休ませるのはいいのですけれども、海の場合は絶えずリーフチェックしながら、監視をしながらでないと保存もできないということが分かったのではないかと思っています。
 そういう問題があって、今までは組織というのがなくて、活動をするにも大変だったんですが、2001年にダイビング協会という組織が座間味にも渡嘉敷にもできて、連合会もできました。この中で、先ほど言ったようにオニヒトデ駆除も、地域の皆さんが「守るべき・守りたい・守りきれる」という考えの下で、サンゴの研究をやっています臨海研究所というのがありまして、そこの皆さんと一緒にリーフチェックやモニタリングをしながら、絶えず海域のチェックをやっています。これが1年間でとったオニヒトデの総数です。
 そういうことで、2005年に、座間味側のポイントと渡嘉敷側のポイントも含めて、海中公園のエリアがラムサール条約に登録されました。近くの行政同士というのはあまり仲がよくないですので、我々商工会が中心になって、この慶良間の海というのは共有の海だから、行政というのはないはずだということで商工会が中心になりまして、慶良間海域保全会議を発足したのですが、現在は自然環境保全会議と名前を変えました。
 海だけではなくて陸域の保全もやっていこうということで、両村の村長を顧問にして、商工会の会長が交互に理事長を務めていこうと。その中に行政あるいは漁業、それ以外にダイビングショップの皆さん、漁をやっている皆さんを入れまして、組織をつくりました。その組織を母体にして、エコツーリズムの推進協議会をつくりまして、今勉強をやっているところです
 目的から始まって、理念、基本方針。今、基本方針の中の5番目ですが、先ほども言いましたように、沖縄本島から約40kmの地点です。沖縄本島から、ホエールウォッチングもそうですが、ダイビングもそうですが、自由に入ってくるわけですね。だから、ルールも何もないですね。我々がルールを決めても向こう側はそういうのがないので。この5番目はあえてそういう具合にうたっているのですが、資源を利用する人は、優先的に守る人じゃないと利用しては困りますよというひとつのルールを決めながら、今、沖縄本島側の業者の皆さんといろいろ話し合いをしていこうと。これは法律でないと縛れないので、公園法とかの中で法律的な縛りをぜひもっていきたいということで、今その議論をやっているところです。
 財団法人JTBが一昨年と去年、沖縄に来るお客さんのアンケートをしました。これは沖縄県の調査ですが、この中で、沖縄は海水浴、シュノーケル、ダイビングという、海をテーマにした観光が多いですが、一番満足度が高いのはダイビングで、「大変満足」、「満足」を入れますと、98%の非常に高い満足度がある。去年やった調査の中で、沖縄にまだ来てない人が沖縄で何をしますかというイメージを調査したら、これもダイビングとか海水浴、マリンスポーツで、九十何パーセントで突出しています。そのぐらい沖縄にとって海というのは非常に重要ですが、その辺のルールづくりも含めて、管理面も含めて十分なされていないと。
 琉球大学が福岡で開かれる日本公衆衛生学会で発表するらしいですが、うつ病に海水を使って活動することによって、セロトニンというのですか、このセロトニンが低下した場合にうつ病になると。臨床実験をしたら、これが脳の中から分泌して、精神安定効果があると、これを7日に発表するらしいです。そういうことで人間の健康に海は非常に役立つ。
 また、最近はダイビングもただレジャーのダイビングではなくて、企業の社員教育、社員研修に使っていこうと。ダイビングを通して、危機管理もそうなのですが、コミュニケーション能力を高める。海の中でどうしようもないような状況で、相手とのコンタクトを取りながら、相手とバディを組ながら、相手を気遣いながらやることによって、チームワークがつくっていける。今の若い人たちでコミュニケーション能力がない者も、ダイビングを終わった後の効果が非常に高かったということで、今盛んに企業向けの研修なども研究されています。
 それから、中高年ですね、私は宿泊業をやっているのですが、最近はシニアダイバーが増えました。女性の方ですね。つまり、スイミングスクールから始まって、泳げるようになって、ダイビングのカードまでとって、中高年の皆さん、元気のある女性の方たちが結構増えてきました。それから、外国人のダイバーもいます。また、最近は修学旅行でも、ダイビングがかなり増えていまして、去年、慶良間地域だけで150校が修学旅行でお見えになっています。
 最後になりますが、この海域を保護するには国定公園では厳しいのではないか、ぜひ国立公園に格上げしてほしいと。あのエリアの中にいろいろな生態系があって、国立公園としての面積ではなくて、そういう面から見た場合は資格があるのではないかと。なぜ国立公園ではないのか。沖縄県は開発があって、それと県行政は県域バランスを考えているものですから、今回の沖縄本島側との話し合いにしても、我々はオーバーユースなのでもう少しその辺のルールをお互いに決めましょうといっても、なかなかその辺が難しく。それは法律の中で、この地域はこうなんだと縛ってもらったほうが管理はしやすいのではないかなと思います。

○熊谷委員長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまのご説明についてご質問のある方はご発言をお願いいたします。
 鹿野委員、お願いいたします。

○鹿野委員 慶良間のほうでは、海域の利用に対して地元でダイビングショップなどを、自主規制の形でルールをつくっているわけですが、大変すばらしいと思います。今のお話でも出ましたが、沖縄本島からそんなに遠くない。そうすると、そちらから船で直接入ってくる、協定破りみたいなものがあると思うのですが、具体的にどんなトラブルになってくるのでしょうか。

○垣花理事長 今、ダイビングの客というのは80パーセント、沖縄観光の人気の中では、50万人前後ですが、これは10年間変わってないです。ダイバーそのものは増えてないです。増えてないですが、ダイビングショップが5年前から1,600、前は800ぐらいだったのが5年間で1,600も増えているのですね。ということは、保護とか環境に配慮したダイビングではなくて、値段でやってくるわけです。今まではちゃんとしたダイビングショップが、ちゃんとしたガイド、それも渡嘉敷に入るにしても、皆さんは入口のほう1ヶ所に集中するんです。1ヶ所に30名、40名、大きな船で来るものですから、完全にオーバーユースになっています。あるいは、アンカーを投げてサンゴを引っかけたり、環境に配慮したダイビングがなされてないですね。
 「このままだと完全にだめになりますよ」と言っているのですが、皆さんはここがだめになったらよそのところにいけばいいわけですけれども、我々住んでいる者にとってはここしかないわけです。だから、ちゃんとしたルールで、ちゃんとした会社、保険も含めてちゃんとしたところでやれば、「入っていいですよ、パスを出しましょう」と。そのかわりいろいろな講習、慶良間のダイビングはこうです、このポイントはここですというものをちゃんとやった上でダイビングをやってくださいとものをつくっていきたいなということです。

○熊谷委員長 原委員、いかがでしょうか。

○原委員 増えているショップの人というのは大体よそ者が多いでしょう。

○垣花理事長 ほとんどそうです。地元じゃないです。中にはちゃんとした営業証を持たないで、マンションあるいはアパートに住んで電話で商売をやっているわけですね。

○原委員 お行儀悪いんだよね。

○垣花理事長 それで、今、ボートにしても相乗りで行くものですから、大丈夫なのかなと思うような状態で、ネットで募集しているものですから。そうなったら大きな事故になるし、何かあった場合の補償も含めて大変なことになるのではないかと思います。

○熊谷委員長 それでは、桜井委員、お願いいたします。

○桜井委員 知床でも悩んだのは、来るお客様から自然保護に対して、どのように受益者負担をもらうか、我々の科学委員会で議論ができなかったのですが、どういう方法がありますか。

○垣花理事長 財源の問題も含めて、5番目に「訪れる観光客に対しても保全のために負担を求める」と書いてありますが、これは資源の管理、ダイビングのポイント、何日何時からこのショップが潜るというのがわかるような方法で、予約、ポイントの管理も含めて。あとは、ポイントにアンカーを投げないで、ブイでやるとか。それから、那覇から40km来て、1日いて帰るのですが、そうではなくて、近くの座間味の港、あるいは阿嘉の港、渡嘉敷の港にお昼休憩で上がってくださいと、トイレの水、あるいは、食事もやってくださいと。そのときにチェックができる。その地域で水を使ったり、ごみとかいろいろなことがあるので、100円いただきますと、そういう制度ができないか。そのかわり、ずっと船の中では大変でしょうから、どうぞ港に上がってくださいと。そういうことを今考えております。

○熊谷委員長 ありがとうございました。
 質問は尽きないようですが、時間の関係がございますので。
 それでは、引き続きまして、尾瀬保護財団の笛田浩行事務局長から「尾瀬保護財団と尾瀬の管理・運営」について、ご説明をお願いしたいと思います。
 どうぞよろしくお願いいたします。

○笛田事務局長 尾瀬保護財団の笛田でございます。よろしくお願いいたします。
 それでは、尾瀬保護財団と尾瀬の管理・運営についてご説明いたします。ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんけれども、尾瀬保護財団の概要から簡単に説明をしたいと思います。
 尾瀬保護財団は、平成7年8月に、地元の自治体、企業が推進いたしまして、成立した財団法人でございます。寄付行為上の目的は、尾瀬の自然環境保全への寄与ですけれども、その大本にありましたのは、尾瀬が3県にまたがっていることであり、関係者で話し合いの場を持つ、尾瀬の保護活動を一元的に実施しようと、それから、国立公園の管理・保護の新しいモデルをつくろう、こういった意思、目的の下に設立したということでございます。
 現在の基本財産が15億3,000万ほど。事業予算は約1億5,600万、これは平成20年度の予算です。職員は16名ですが、派遣職員、プロパーの職員、嘱託職員等を含めて16名でございます。
 19年度の決算の状況では、事業活動の収入が1億4,000万ほどで、ここに出ています運用財産の収入と寄付金、これが自主財源となりますが、35%程度で、それ以外は補助金と受託収入になっています。支出のほうは1億2,900万ほどですけれども、利用者啓発、環境保全、施設管理等々の事業をやっております。管理費が42%と多くなっていますけれども、派遣職員の人件費をすべてここにあてはめておりますので、このような形になっています。これを実際に合わせて修正いたしますと、管理費は10ポイントぐらい減るのではないかと思っております。
 財団の主な事業につきましては、入山者啓発から始まりまして、先ほど説明いたしましたけれども、啓発、PRや、自然の解説事業、それから、環境保全等の事業、施設の維持・管理、調査研究等々の事業をやっております。
 尾瀬国立公園のビジターセンターの管理の状況でございますけれども、現在、尾瀬国立公園には2ヶ所のビジターセンターがございます。環境省が設置したものと群馬県が設置したものであります。この2つのビジターセンターの管理・運営につきまして、尾瀬保護財団が受託いたしまして、管理をしております。
 特に、今回は環境省の関係でありますので、尾瀬沼のビジターセンターの管理でありますけれども、今年度については、受託内容、管理員3名以上でビジターセンター、見晴の休憩所の2ヶ所を管理することになっております。受託上は3名以上で管理となっていますけれども、現状は管理責任者を含めて管理員8名を配置しております。実際上、ビジターセンターの管理委託費だけでは賄えないので、複数の業務受託をすることによって管理員等を確保している。具体的には植生復元、橋の開通、公衆トイレの清掃、こうしたもろもろの事業を総合的に請けまして、管理員等を配置しているところです。実際のところ、施設等の受託費だけでは収支マイナスになっているわけですけれども、管理業務等受託を行うこと自体が、保護財団設置の目的であり、そういうところから今年度も受託事業をやっているところであります。
 次に、ビジターセンターにおけるサービス向上への対応状況です。財団としても、複数の業務を受託することにより管理員のローテーションを組むことを可能にする人数を確保してある。それから、環境省のビジターセンターは檜枝岐村にあります。一方、群馬県のビジターセンターは、群馬県側の片品村にありますが、それぞれの村に遭難救助隊がありますので、そういったものに応援をすることになっております。そうしたことから職員全員にMFAのベーシックプラスという救急対応のための講習も受講させております。
 それから、両ビジターセンターは、環境省の所管、群馬県の所管になっておりますが、それぞれについて連携をとってやっているということであります。また、管理については、尾瀬国立公園全般に関する知識が必要ですから、尾瀬地域全体に対する情報収集の面からも、担当区域以外も含めて派遣等も行っております。また、傷病者が出たり、クマの出没とか、災害発生といったときには、両ビジターセンターで連携をとっています。そのためにも両ビジターセンターは無線を配置しまして、すべての情報が外に出ている管理員にもつなげられるように、いつでも情報交換ができるような体制もとっております。
 また、個々のビジターセンターの対応につきましては、基本的に両方のビジターセンターでそれぞれやっているのですけれども、職員が創意工夫しまして、手づくりの企画展の実施、展示物を作成しておりますし、繁忙期には臨時のインフォメーションカウンターを設置して、案内をすることもやっております。もちろん、自然観察会やスライドショーなどのプログラムについても、管理員が創意工夫して改善、プログラムの作成を行っております。
 尾瀬国立公園における施設管理の課題であります。尾瀬の地域的特殊性でありますが、尾瀬の活動期間は6ヶ月間のみです。ですから、プロパー職員と、1年を通して雇用している嘱託職員も配置はしているのですが、多くの管理員は6ヶ月間のみの季節雇用になっております。
 また、尾瀬はほとんどが特別保護地区になっておりまして、山小屋等の関係もありますので、特別な収益事業等を行うことはできません。単独の事業を行うしかない。また、交通アクセスも非常に悪い。これはご存じかと思いますがそこで管理する人間は住み込み状態で、6ヶ月間そこで暮らすというような状況になっております。
 それから、これは契約関係の話になりますが、管理業務委託手続の問題であります。現状、単年度契約でありまして、必ず受託できるという保証はないという状況になっております。特に近年は随意契約ではなくて、競争入札とか、場合によってはコンペ方式による企画提案方式が導入される方向です。ただ、それに伴って、決定時期が遅くなって準備に支障がある状況があります。例えば、今年の場合、事業の実施、尾瀬沼のビジターセンターでは、5月1日から管理受託になるわけですけれども、それ以前に、季節雇用の管理員を雇用しなければならないということで、「もし受託できたら雇用します」というような約束の下に雇用している実態があります。そうなると、当然のこととして良い管理員が集まらない状況も出ております。
 それから、尾瀬沼では特に直接関与しないのですが、木道の維持管理について群馬県から受託しております。補修するための材料の手当もなかなか厳しいこともありますので、そういう場合には木道の更新等を行っていますが、木道を自由にというと語弊があるかもしれませんけれども、使えるものはなるべく使っていけるようなシステムがあればということであります。
 それから、法規制上の問題。これは自然公園法、特に尾瀬の場合には文化財保護上の規制もありますので、何をやるにも二重の手続が必要だというような問題があります。
 それから、受託者の創意工夫を活かした施設のあり方ということで、先ほどの制約とパラレルな関係になっていますけれども、業務運営、委託契約の手続については、長期的な契約、複数年契約にしてもらえればありがたいし、契約手続については前年度の早い時期から決定してもらえればありがたい。
 また、複数事業の一括受託。これは、環境省側の部分についてはできていないところがありますけれども、受託できるものについてはやっております。こういったものを一括して受託できるような仕組みができれば非常にやりやすくなると。随意契約的なもの、それから、柔軟な受託内容があれば非常にありがたいなと。
 柔軟な業務委託の内容ということで、現在、業務の受託でありますから、仕様書が詳細に決まっています。これについても、仕様書は簡素化してもらって、現場の判断でいろいろな対応ができるような仕組みがあればありがたいなと思います。
 それから、施設数のことですが、尾瀬の場合は、先ほど言いましたように、群馬県と環境省の施設が2つあります。その2つの施設の人の往来というか、連携はなかなか難しいところもあります。例えば、一方の施設が受託仕様書に記載されている以外のことはできないとか、目的外の使用をしてはいけないとか、そういうような問題もあります。それらも相互のビジターセンターが柔軟に対応できるような仕組みができればありがいと思います。
 次に、収益事業を可能にする仕組みというのが書いてありますけれども、尾瀬の場合には、特別に収益事業というようなこと、例えば喫茶店みたいなものを営業するとか、宿泊所を営業することはできないわけでして、本当にささやかな、例えば物品の販売、物品といっても現在やっているのはパンフレットとか本とか、その程度のものを販売しているわけです。それらも自由に販売できるような、現状ではできないということになっているのですけれども、そのような仕組みもしてもらえればということですね。
 住環境の整備、これは尾瀬の特殊な問題かもしれません。管理員がビジターセンターに泊まり込みでなければならないので、それに対応する整理が必要ということです。
 それから、法制上の運用という問題については、職場の創意工夫がすぐに活かせるような迅速な対応がほしい。
 また、維持管理面から、事業者と設計段階からの調整と書いてありますけれども、木道の整備は、今はメインのところは環境省、あるいは、尾瀬の場合は東京電力が木道の整備をやっているのですが、出てきた廃材、廃材といってもいろいろな程度がありまして、非常にいいものもあれば、外に出して処分するのがもったいないようなものもあります。そういったものを、現場の状況に応じて使えるようなものは再利用していくような、あらかじめ決めておくのではなくて、その場で再利用できるような仕組みがあればいいなと思います。
 また、文化財保護法と自然公園法と二重の規制がかかっているわけですけれども、特に文化財保護法の関係については、教育委員会が許可権限をもっているわけでが、現実には教育委員会独自の判断ではできなくて、文化庁と協議をしながらの手続があります。そういう意味では、保護面での規制という部分であれば、自然公園法と文化財保護法上の規制がある程度マニュアル化できるのではないかという期待もあります。逆に、そうではないとしても、レンジャーがある程度の了解をすれば手続がとれると、そのような仕組みがあればと思います。
 最後に、参加型の管理・運営体制の構築ということがよく言われていますが、尾瀬について言えば、地元の自治体、企業等が支援して、多くの皆さんからの寄付等を基に事業を運営しております。そういったシステムのできているものについて、契約の手続については通常の受託契約、例えば競争入札とかいうようなシステムを要求しなくてもいいのではないかということで、このようなことを書かせていただきました。

○熊谷委員長 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの笛田事務局長からのご説明に対して、ご質問おありの方はご発言をお願いいたします。
 川名委員、お願いいたします。

○川名委員 今お話にありました競争入札ですけれども、競合相手はどこかあるのですか。

○笛田事務局長 一部の企業は、例えば今年の例ですと、参入したいという話があったと聞いています。結果として、今年の場合、契約については企画提案という形で提案を出しまして、もう1社やると聞いていた企業が結局は出さなかったということです。ですから、最終的には今年の場合は私どもの財団だけが応募したようでございます。

○川名委員 今年についてはそうですけれども、ここ数年については。

○笛田事務局長 この形になったのは今年からで、それ以前はほとんどが随意契約でやっていました。群馬県の場合にも、契約は基本的には随意契約でやっています。今後、例えば入札、あるいは、コンペ方式にしろ、複数の事業者によって争うことになった場合には、それだけの手間はかかる。争いになったといっても、財団そのものは、先ほど言いましたように事業が収支マイナスで請け負っているわけですから、価格競争的には絶対負けるはずはないと思っていますけれども、手続をすることになれば、それだけの手間がかかることになると思います。

○川名委員 出てきそうなんですか。

○笛田事務局長 それはちょっとわかりません。

○熊谷委員長 いかがでしょうか、ほかに何かご質問ございますか。
 大澤委員、お願いいたします。

○大澤委員 自然解説事業というのは、この段階では主にビジターセンターでの解説ですか。○笛田事務局長 そうです。

○大澤委員 例えばガイドみたいに、グループについて実際に現場で解説をしたりとか、そういう人は含んでないのでしょうか。

○笛田事務局長 尾瀬保護財団は尾瀬ボランティアという制度を持っていますが、その中には自然解説員になっていただいている人もいます。専門のプロガイドと契約しているのではなくて、財団のボランティアの中の自然解説ガイドを提供することはやっております。そういう方たちについての要望があると、ボランティアのガイドの手配をいたしまして、尾瀬の中を案内してもらうこともやっております。
 それから、これは尾瀬沼のビジターではやっておりませんけれども、山の鼻のビジターセンター、群馬県のほうでは自然解説についての事業を、ビジターセンターの管理・運営とは別に、個別に受託しております。受託している内容は、嘱託職員、専門の職員の人件費、主に人件費ですけれども、それをあてまして、そこの専門の職員が中で団体のレクチャー、あるいは、ミニツアーといったガイドを定期的にやっているわけですが、そういった事業そのものを群馬県から受託して実施しております。

○大澤委員 そうすると、ガイドそのものはボランティアで、アレンジメントを財団でやっておられると。

○笛田事務局長 財団がやっているということです。ただ、ボランティアといっても、尾瀬の中に幾つかのコースがあるわけですが、例えば山の鼻の研究見本園の一周とか、牛首とか、竜宮とか、コースごとに1人500円とか1,000円とか。希望者が2人いれば、500円のところなら1,000円、そのような形でのボランティアによる自然解説ガイドをやってもらっています。

○大澤委員 この主な事業の一番下に環境保全事業がありますね、植生復元事業とか至仏山保全対策とか。自然解説事業と環境保全事業というのは全く別な発想でやっておられる。

○笛田事務局長 別ですね。環境保全事業は、環境省からも受託していますけれども、まさに植生復元の事業は環境省、福島県、群馬県から受託している事業です。それから、至仏山の保全対策は、至仏山での気象観測などを群馬県から受託している事業です。自然解説はビジターセンターにおける純粋な自然解説の事業ですので、環境保全事業とは全く別なものです。

○熊谷委員長 いかがでしょうか。
 以上で、本日の有識者の方々からのヒアリングはこれで終了させていただきます。どうもありがとうございました。
 それでは、続いて、議題の2、必要な措置に関する検討について、事務局より説明をお願いいたします。

○国立公園課課長補佐 国立公園課の中澤でございます。資料5、「自然公園法の施行状況等を踏まえた必要な措置に係る論点の整理について」(案)について説明させていただきます。
 この資料は、1番目といたしまして、検討の背景と進め方、前回の小委員会の際に進め方についてのご質問が幾つかあったことを踏まえて、その辺を明確にしたいということ。2番目といたしまして、課題と検討の方向性として、項目として大きく2つに整理しております。
 まず、検討の背景と進め方についてでございます。前回の小委員会、また部会の際にお示しした諮問書の諮問の背景から整理しておりまして、前回の改正から5年後を踏まえた改正であること、さらには、最近の生物多様性の保全の充実についても、国家戦略等の要請を背景としている点を整理しております。このような状況を踏まえて、検討の方向といたしましては、自然公園制度に係る必要な措置につきまして、当面必要となる制度的な内容を基本とし、中長期的な課題も含めて検討を行うと整理させていただきたいと思っております。
 2番目の課題と検討の方向性についてでございますが、前回小委員会の際に3点大きな枠組みとして整理させていただきました。1つが、生物多様性保全の充実の中で、海域保全の充実、もう1つが能動的な管理、さらには公園施設の利用、その3点に沿いまして、現状の課題と検討の方向性を整理させていただいております。
 海域保全の充実でございますけれども、現状につきまして、前回、私どもでご説明させていただいた資料を概要としてまとめて整理し、ご提示させていただいているものでございます。
 その下の課題と検討の方向性につきましては、私どもでご説明した内容、それから、前回いただいたご意見を踏まえて、内容を整理しているものです。前回、国立・国定公園は生物多様性の屋台骨であるという話をさせていただきました。海域においてもそうした役割を積極的に担っていく必要があること、それから、海域における国民の自然とのふれあいニーズの高まりに対応する上で、海中から陸域の連続性を確保した海域の保護区の拡充等、海域での生物多様性・景観の保護と適切な利用を図るための措置の充実が課題であると整理しています。
 次のページにまいりまして、保護措置の検討にあたっては、前回もご意見をいただきました、沿岸域においては漁業をはじめ多様な利用が既に行われている、これらの海域利用との共存・調整が重要な課題であるということ。
 その次でございますけれども、国立・国定公園の保全によって、公園利用者だけでなく、漁業関係者を含め広く生態系サービスの便益がもたらされるとの視点、そういったものが海域での生物多様性保全の保全と持続可能な利用を図る上で特に重要であると整理をしています。
 その次、海洋レクリエーションの多様化により、利用の集中や動力船による不適切な利用が海域の動植物に対して悪影響を与えている事例もある。これは前回、私どもから、動力船の不適切な接近で海鳥が減少している事例をご説明しましたけれども、そういった事例もあることを踏まえまして、海域保全と適切な利用の推進について必要な措置を講じることが重要であると整理させていただいております。
 その次、[2]予防的順応的な手法による生態系管理の充実等でございます。現状については、前回ご説明させていただいた中身を簡単にまとめております。
 次の課題と検討の方向性でございます。まず、生態系の管理には規制的な手法では限界があるということ。モニタリングを基にして、それに基づき必要な地域において、管理のための具体的な対策を、幅広い参画を得て実施する新しい生態系管理の枠組みが必要ではないかというようなご意見をいただいております。
 さらに、シカが国立公園内で自然植生に被害を与えているという話をさせていただきましたけれども、国立・国定公園の中だけではなく、外で発生している被害も考慮して、市町村や都道府県といった広域的な視点での対応が必要ではないかとのご意見をいただいています。
 その次でございますが、本来生息しない動植物の放出に係る管理強化を図ること。前回の小委員会で、キク科の植物が交雑によって色が変わってしまった事例をご説明させていただきましたけれども、そういった動植物の放出に関する管理強化。それから、外来種規制についてわかりやすく方針を示した上で、ボランティア等も活用しながら事業を進めることも検討すべきではないかというご意見をいただいています。
 さらには、温暖化の話をいただきました。中長期的な課題として、脆弱な生態系を有し、その保護の一端を担う国立・国定公園における地球温暖化の影響への対応についても考えていくとまとめさせていただいております。
 3ページにまいりまして、今度は利用の観点でございます。安全で快適な利用の推進の観点からの施策の充実でございます。現状のところは前回の資料を簡単にまとめております。
 課題と検討の方向性ですけれども、自然とのふれあいの推進にあたっては、利用の集中等による自然環境への影響の防止、これは土屋先生からご指摘がございましたけれども、利用の集中がございます。その中で、より深く質の高い自然とのふれあい体験を利用者に提供するためには、適切な施設整備等を進めることが重要ではないか。
 さらに、利用者の満足度を高めることについてもご指摘いただいています。安全で快適な利用の推進の観点から、国立公園事業施設の管理運営の充実を図る。安全で快適ということと利用者の満足度を高める必要があること。さらに、環境省で整備しているものは国立公園の中核的な施設でございますが、こういったものについても管理運営の充実を図ることで、現場に即した創意工夫によるきめ細かで質の高い管理運営の導入が必要ではないか。
 それから、その下でございますけれども、国立・国定公園の利用の推進を検討する上では、公園内外にわたる利用の実態、利用の動態を十分考慮したものであることが重要である。公園の利用計画をつくる際にはそういったものも含めて検討すべきであること。また、地域振興についても十分な配慮が必要ではないかとご指摘をいただいております。
 さらには、外国人に向けた国立公園や美しい自然の紹介のための取り組みの強化が必要であるといったご指摘をいただいています。
 さらに、(3)といたしまして、その他の課題を整理させていただきました。自然環境部会の中でも、現地の管理体制を強化すること、ボランティア等の力をもっと活用することを考えるべきではないかといったご指摘をいただいています。こういったものも含めて、自然公園法の施行状況等を踏まえた必要な措置に係る論点の整理について、事務局でまとめています。
 以上でございます

○熊谷委員長 ありがとうございました。
 それでは、ただいま事務局から説明のありました件について、ご意見、ご質問をお願いしたいと思います。
 それでは、石坂委員、お願いいたします。

○石坂委員 この論点の整理はこれまでの議論を大変うまくまとめてある、よくできていると思いますが、これから先はどうするのでしょうか。つまり、これは論点の整理ですけれども、この論点についてより具体的な提案を委員に求めるということでしょうか。それとも、たたき台みたいなものを出してきて、それを基に議論しようということでしょうか。その点をお願いします。

○熊谷委員長 それでは、国立公園課長、お願いします。

○国立公園課長 今回お示しした資料5は、前回プレゼンテーションした内容と前回議論いただいた内容をまとめたものでございます。今日これからの時間を使って、この論点のほかに、最初の「検討の進め方」にありますように、当面必要となる制度的な内容でどういうものがあるかという新たな視点、この論点の整理のペーパーに不足しているところ、足すべきところをご指摘いただきたい。
 そういう点を今日のヒアリングも含めてご指摘いただきまして、これに肉付けをしたものを次回、答申の素案としてご提示申し上げ、それについてもご議論いただく。その素案をつくるための骨子として、今回出させていただきました。

○熊谷委員長 いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、次回骨子をまとめるにあたってご質問なりご意見をいただきたいと思います。
 では、鹿野委員、原委員の順でお願いしたいと思います。

○鹿野委員 そういう意味で、この中で検討項目として漏れているのではないかという感じを持っていることを一つ。公園の快適な利用という面では、施設の充実と適切な管理をうたっているのですが、公園の施設は環境省の直轄施設だけではなくて、多くの民間施設が公園の中で、半分以上、むしろ民間施設のほうが多いと思います。そういったものは、公園法の中では、例えば国立公園であれば国立公園の事業として認可している施設が多いはずです。
 そういうものが近年経営破綻でしょうか、そういうことが各地に見られまして、ちょっと見苦しい、極端な例は廃屋に近いもの、もしくはいつも真っ暗なホテルとか、そういう状態が各地で見られます。こういうのがあると、幾ら公共的な施設だけ一生懸命やっていても、地域全体としては明るくなってこないので、対応は難しいですけれども、少なくとも問題点ではあると思いますので、何らかの対応を考えていくということにしていただきたいと思います。

○熊谷委員長 ありがとうございました。
 それでは、原委員、お願いいたします。

○原委員 海域の保全の充実という問題の中で現状の問題ですね。一番初めに向井先生からポイントの具体的なお話をいただいているのですけれども、全国的に大事なところとか、準大事なという、いわゆる国立公園とか国定公園というような形での押さえというか把握はできているということでいいのですか、国立公園の担当としては。そのことが1つです。
 もう一つは、今日もご説明いただいた個々の事例の中で、最大かどうかわかりませんが、長年の問題はオーバーユースの問題ですね。30年とか40年、国立公園絡みで言えばオーバーユースの問題はずっと続いているわけです。何が解決していて、何が解決できないのかと。僕の感じでは同じような課題が続いているような。その辺のところでそろそろというか、生物多様性の問題とか今までの話とは違う、枠が広がった時点で人間の利用によるオーバーユースの問題も含めて、きちっとしておく必要があるという感じがするのですけれども、どうでしょうか。

○熊谷委員長 それでは、ただいま鹿野委員、原委員から出ました3点のご質問について、本日お答えできる点があれば事務局からお願いしたいと思います。
 それでは、国立公園課長からお願いいたします。

○国立公園課長 まず第1点目の重要な部分、我が国で重要な自然環境について国立・国定公園を対象にするのだろうから、そういう場所がどこにあるのかという、全体的な評価ができているのかということだったと思います。これについては、全国の自然環境を把握する自然環境保全基礎調査があり、それに基づいて重要湿地の抽出、それから、生物区ごとに典型的な部分がどこにあって、どこに残っているかという調査はなされておりますので、マクロな意味の重要な場所を選定するための材料は、今後とも情報を積み重ねなければいけないと思いますけれども、かなり集積されてきていると考えております。
 前回、部会でご説明いたしました国立・国定公園の総点検事業は、そういう材料を基にして今の保護区がどうなっているか、どういう指定になっているか、新たな視点で評価された場合ギャップがないかについて作業をやっていることをご説明したところです。その意味ではベースとなる情報はあると。それを今日的な視点でどう評価していくかを、総点検事業の中でやらせていただいております。先ほどのヒアリングで吉田先生のお話にあったような意味のギャップも出つつありますので、今後保護区の適用の対象として検討していく作業はできていると考えております。基本的な情報の集積はある程度できていると考えております。
 それから、オーバーユースの点で、これまで何ができていて、何ができていないかということでございます。オーバーユースにもいろいろな意味があって、車のオーバーユースという意味でいうと、各地でマイカー規制の取り組みがあって、それに対しては何がしかの答えが出てきていると思います。自動車による環境影響も含めての話ではございますけれども、上高地の例とか尾瀬の例とか各地で進んできておりますので、これはかなり定着してきている、この部分は進んできていると考えております。
 ただ、車からおりた後の人のオーバーユースについては、オーバーユースをどこでとらえるかで、まだちょっと模索されている状況にあるのかなと考えております。というのは、それが自然環境に対する影響という意味でいうと、制度的には、先回、利用調整地域とか立入禁止地域の制度を用意していただいたところでございまして、そういうものはございます。
 一方、自然公園の場合は、自然環境直接の影響ではなくて、利用環境としての適正数、オーバーユースはどこまでなのかという議論については、尾瀬などで試行的に検討されていいますけれども、この点はさらに検討する必要がある部分だと思います。そういうものをベースにして、特に自然環境への影響に対する部分については、これまでできてきているというか、今取り組んでいるものとしては、ハード面の登山道の整備、木道の整備という形で、過剰利用、利用による影響を抑えるという取り組みは進めてきております。しかし、ハード面ではなくてソフト面の部分はさらに課題が残っている部分と考えております。

○熊谷委員長 よろしいですか。
 原委員、お願いいたします。

○原委員 最終的なオーバーユースというのは、車の問題はそのとおりでうまくいっていると。それはもっとアピールしたほうがいいという話。それから、きょうお話のあった慶良間のオーバーユースの問題とか、屋久島の自然道が云々とか生態系がやられているとか、そういう個々の事例は変わってないでしょう、知床にしても。そういうことに対して、この研究会で具体的に手立てをしようという話になっているのかどうかということを聞きたい。今、環境省がそういう問題に取り組んでますよという話と、何かひとつ施策として具体的に提案するとか、法制化するかと、そういうことがあるのかどうかということを聞きたい。

○熊谷委員長 いかがでしょうか。

○国立公園課長 今回、検討の進め方のところでご説明申し上げましたので、重ねてのご説明になってしまいますけれども、ここ小委員会では地域の個別の対策という議論よりも共通的な課題を中心に据えて、制度がないゆえにできないもの、制度があったらできるもので対処すべきものがあるのかないのかを中心的に議論していただいて、制度的に抜けているものについては制度化を検討させていただくというのが全体的な枠組みでございます。そういう意味で、利用によるオーバーユースの影響について、制度的に何が足りて何が足りてないのかという点が、まさにここで議論いただきたい点かなと思っております。
 これまでの歴史で非常に難しかった点は、我が国の自然公園が、営造物ではなくて、地域性であるということで、地べたの権原がない中で、一番基本的な自然の中に立ち入るということについてどういう制度的な対処ができるかという点は、かなり難しい話でございます。

○原委員 具体的にいうと、いつも出てくる有料化の問題があります。どこでお金をとって、どこで利用の人間を制限するかというのは、結構議論されているでしょう。だけど、それは具体的になってないですよね。車の問題については、先ほど課長が言われたようにある程度規制になっているけれども、今問題になっているオーバーユースの問題で具体的に顕著に出ているような話は、集中的に人が登山をしたり、海に潜ったりすることによって、マイナスが出ているという話ですよね。そういうものはお金で解決できることもあるのではないかということも含めて、有料化の問題というのは結構議論されているというか、課題になっていると思うのだけれども、そういう問題に切り込むことがあるのかどうかということを聞きたい。

○国立公園課長 入園料とか入山料では昭和50年代の初めごろに審議会等で検討を行った経過がありますが、直接には難しいだろうという結論となり、今は協力金というスタイルで利用者負担をスタートさせて、これまで30年ぐらいやってきております。
 施設の受益に対して、それに対する何らかの負担ということで協力金は動いていますので、その延長線上で考えることは今後ともあり得るかなと考えます。ただ入ることだけに何かかけると、それをコストで負担してもらう、それをハードルにして制約するという手法は、これまでの検討の中では難しかったというのが現状でございます。

○原委員 これからも難しい。

○国立公園課長 なかなか難しいと思っております。
 併せて、先ほど鹿野委員からご指摘のあった、民間施設の経営の悪化に伴った廃屋化等について何か対策が必要ではないかという点はご指摘のとおりだと思います。これも財産権の問題とか色々かかわってきて難しい面もあるけれども、今の制度を考える上で何かできるのかできないのか、さらに検討させていただきたいと思います。

○熊谷委員長 それでは、鹿野委員からのご指摘は、その他の課題の中でもう一度整理させていただくということで、事務局にお願いしたいと思います。
 引き続いて、大澤委員と石坂委員、そして、森本委員の順で、よろしくお願いいたします。

○大澤委員 2番の課題の(1)の国立・国定公園における生物多様性保全の充実、その大きなタイトルは結構だと思うのですが、その中が[1]と[2]に分かれていて、生物多様性について、海域は別として、具体的な内容を予防的順応的な手法による生態系管理の充実等とまとめておられる。その中を読むと、例えば現状認識においても、生物多様性、国家戦略の第2の危機と第3の危機への対応が求められていることが明記されていまして、現状の上の方で第1の危機を内容的に含めているつもりなのかとは思うのですけれども、そのことをきちっと明記して。
 先ほど来の専門家のご意見にもありましたけれども、国立公園の生物多様性保全のためのネットワークとしての意味がきちっと実現されているのかどうか。それから、国定公園の格上げというようなお話もありましたけれども、そういうことも含めて、「生物多様性保全の屋台骨」というキーワードを使っておられるのですが、そういう視点から見た国立公園の見直しをきちっと明記すべきだと思うのです。それは「予防的順応的な手法による生態系管理」という言葉の中に明確には含められていないという印象を受けるのです。
 その意味からすると、例えば国立公園の現状の全国の自然をカバーしているカバーの仕方もきちっと見直す必要があるし、特に2ページの一番下に書いてある地球温暖化の影響への対応というのは、シカとか人間の影響による変化とか、第2とか第3の危機で言っているようなこととは構造的にも違うし、取り組み方としても、国家的な国土全体についてのきちっとした自然の構造についての視点を踏まえて考えていくということをこれからやっていかないと、なかなか難しいのではないかという気がするのですね。
 ですから、言葉として「地球温暖化の影響への対応」ということを言うだけではなくて、それを実効性があるものとして考えていくためには、以前の世界遺産の検討委員会のときに、日本の中の重要な地域がリストアップされたわけですので、そういうところも踏まえて、国立公園の体系そのもの、あるいは、ネットワークそのものについても検討の枠の中に入ってくるような問題の取り上げ方が必要という気がします。
 それからもう一つは、生物多様性の保護を言うのですけれども、それを具体的にしていくのには、今申し上げたような保護区の枠組みというかネットワークというか、地域を囲うというか、そういう視点だけではなくて、モニタリングの視点が絶対に必要で、課題の検討の方向性に「モニタリングを基礎とし」との言葉は入っているのですけれども、それを具体的にどうやっていくのが一番いいのかを、この場できちっと検討していくことが必要という気がします。
 今日のご説明の中でもボランティアの協力を得ながらとか、国だけではなくて、「市町村や都道府県とも連携した」というような言葉も入っているわけで、それを具体的に今の制度の中できちっとやっていけるのかどうかについても、現状の認識と今後検討していく課題の方向性などについても提示していただくことが必要なのではないかなと考えます。

○熊谷委員長 それでは、石坂委員、お願いいたします。

○石坂委員 2つ申し上げようと思います。
 今回のテーマは、海域について国立公園の指定区域を広げる、あるいは、新しく指定することも含むのかもしれませんけれども、そういうことをしていく必要がある。それは生物多様性あるいは景観の両方の点から、今まで陸上に比べて手薄だったので、そこを拡大していく必要がある。では、どうすればそれができるのか、そのために法のどこを改正したらいいのか、あるいは、公園法ではなくても、どういう政策手段をとればいいのかということを一つの結論として提示することが必要と思うのですね。そういう点からいきますと、ここに書いてあることは極めて抽象論であって、それに対する答えにはなっていないわけです。
 そういうものを拡大していくときに一番問題になるのは、漁業関係者との問題だろうと思います。生物多様性の保護という点、あるいは、景観を楽しむという点から、国立公園地域が拡大してもらうのはだれしも望むところだと思います。それに対して、そういうことをすると自分たちの生業にかかわることで、漁業関係者だけではないかもしれません、ほかにもあるかもしれませんけれども、そういう方々との折り合いをつけていかないと、それはなかなか実現していかないと思います。その折り合いをつけるのにどういう考え方・手段があるのだろうかということが問題だろうと私は思います。それを一つの軸にして議論をしていく必要はあるだろうというのが一つです。
 もう一つは、2つ目の予防的順応的な手法です。これを講じていく基礎は、今、大澤先生がおっしゃいましたモニタリングですね。モニタリングを基にしてどうするかということを考えていかなければいけないわけです。ここに書いてあるのは、環境省がやるという意味だろうと思うのですけれども、やるのは環境省だけでなくて、地方公共団体でもいいのだろうと思いますが、いずれがやるにしてもやる場所、多くは国有地でもなければ、地方公共団体の所有地でもありませんし、そこで林業をやっている人もいれば、農業をやっている人もいるわけです。そういう権限関係からいきますと、ここが一番いいからここでモニタリングをやろうと決めても、簡単にそれができるとは限らないわけですね。
 必要な場所で必要なモニタリングをするには、どう仕組みをつくったらいいかということがもう一つのポイントだと思います。それから先の展開は、規制的な方法にしても、予算的な方法にしても、いろいろな方法がありうるし、今までもそういうふうな手段が講ぜられておりますから、そう難しくはないと思うのですけれども、一番の原点のところが難しいと思うのですね。そういう権限調整をどうするかをきちっと議論しておきませんと、抽象論ではおさまらないという話だろうと思いますので、そういう点をポイントに置いて議論していくべきだろうと私は思います。

○熊谷委員長 ありがとうございます。
 それでは、森本委員、そして、桜井委員、お願いします。

○森本委員 この論点整理は大変よく書けていると思います。ただ、やや抽象的なので、今度以降ぜひ具体的な内容に展開していけたらなと思いました。特に、2ページの課題の検討の方向性で、「生物多様性の保護」以下3行の文章は本質的な課題を言っていると思います。では、幅広い参画を得て実施する新たな生態系管理の枠組みというのは一体何なのかというときにいろいろな展開があると思うのですね。具体的な枠組みで検討していく必要があると思います。
 海のところで、向井先生からもご指摘ありましたように、山からの砂の供給を踏まえた海の保全は、もちろん環境省だけではできないし、今の国立公園の枠組みでもできないわけで、ほかの省庁連携も口先だけではなくて、どんな枠組みをつくっていくのかも大事と思います。特に砂防のやり方をどうするかはものすごく大きなところになろうかと思います。
 それから、これをまじめに考えるいい時期と思います。この前の2日・3日と京都で川のシンポジウムをやったのですね。川を中心として専門家と市民が集まって、これからの川のあり方を議論した中で、川を、利水の面から見ても考え直す必要があるのですけれども、利水と防災だけではなくて環境の面を考える。その本当のことを考えると、今の考え方を根本的に見直さなくてはならないということを、改めていろいろなところで確認したんです。
 そのときに、例えば、最初に原先生からお話があった利用に関する支払いの話ですけれども、生態系サービスという考え方がこのごろ議論されるようになって、単に地主として、入園料ではなくて、いい状態に維持管理すること。それは生態系サービスを享受するのに必要な経費と考えて、それにプラス自然の生態系サービスがあって、それを享受するためには当然支払いを伴うという考え方が出てきているように思います。だから、色々なお金を払う枠組み、生態系管理の枠組みにもそんなことも考えられるのではないかという意見を持っております。

○熊谷委員長 ありがとうございました。
 それでは、桜井委員、お願いいたします。

○桜井委員 海域管理の部分が今回かなり大きいですけれども、今、森本委員が言われたように、私たちも学会等でその辺を扱おうということで、海を見るのではなくて、海から陸を見るという発想で、例えば、流域圏環境管理に水産はどのように取り組んでいるかとか、あるいは、森・川・沿岸と生態系サービスといったテーマでこれからシンポジウムをやります。その中で考えなければならないのは、国立公園あるいは国定公園にするにしても、これは知床でも経験しましたけれども、規制の強化という論理で海域を保護することは非常に難しい、現実に。
 どういうことかというと、流域全体を保護することによって、海に恩恵が持ち込まれるという発想から海を見ていくことも必要になります。法律的な規制を強くすることによって守られるものではなくて、自主的に守るべきものを検討するというか、金を出しているような法律の、法律はどうなるかわかりませんけれども、そういうものにしていかないと、いつまでも議論がかみ合わないと。それも全部できるかというと不可能だと思うのですね。
 そうしますと、やっぱり事例がある。例えばリアス式海岸の三陸では、森を守ることによってカキ養殖はうまくいった。あるいは、襟裳が木を植えることによって沿岸のコンブとサケができる。襟裳の場合ですと、コンブを拾っているだけで出稼ぎに行かなくても済む、あるいは、1年間のうち3ヶ月ぐらいの定置だけで年間の収入が賄える。あるいは、青森県の十三湖は岩木川水系ですけれども、あの水系を保全することによって、十三湖のシジミで漁業者は年間1,000万の収入を稼げる。ですから、具体的な事例を拾いながら、規制の強化ではなくて、共存できる道をどう探るか、その辺をやっていかないと。次の海域の保護区の設定にもかかわりますので、ぜひその辺を検討していただきたいと思います。

○熊谷委員長 ありがとうございました。
 いかがでしょうか。ほかにございますでしょうか。予定の時間が近づいてまいりましたので、ご質問、ご意見があればいただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
 それでは、今までいただいたご意見も大変多かったとは思いますけれども、ご質問に事務局から答えをお願いしたいと思います。国立公園課長、お願いいたします。

○国立公園課長 広範囲にわたってご意見をいただいたと認識しております。基本的には、今回資料5でお示しいたしましたのは、最初に説明しましたように、骨子であると。今のご指摘の中で骨子であるだけに答えがないと。これにどういう答えを考えていくのか、その姿もおぼろげすぎて見えないというご指摘でございました。海で言えば、海域の保護を図るのはいいけれども、生業とする漁業との調整とか、そういうものと共存しながらやるというようなキーワードもいただいております。それから、モニタリングが重要であるというご意見をいただきながら、それをいかに具体化するのかが重要ということだと思います。
 その辺を含めて、今日いただいたご意見も含めた答案をまとめてご提示することを、次回までにしっかりやりたいと思います。いただいた課題に対して、基本的にはまずは制度でどういう答えが考えられるかという姿を次回のまとめではできるだけ示したいと思います。また、広範なご意見をいただいておりますので、制度に要らない部分についても、こういう形で答案と言いますか、対処していくことも考えられるというようなことも用意して、課題に対する答えを含めた答申の素案を次回までに用意したいと考えております。

○熊谷委員長 よろしいでしょうか。課長もしくは局長のほうから、もしよければどうぞお願いします。

○国立公園課長  海の面で言いますと、私どもも海に対して国立・国定公園が果たす役割が十分ではないという認識を持っています。それを広げたい、そのときのキーワードは、現在の海中公園地区という制度が共存をあまり前提としていない。共生とか共存、それから、持続可能な利用とかいう観点を想定してつくっていない制度であるかもしれないと思っております。その辺があるものですから、海中公園地区を共存型にできないか。もっと言いますと、生物に関するものは規制的な方向以外で担う、かつ、基盤のところはしっかり押さえるというような制度が考えられないかということを念頭に置いております。
 それから、モニタリングにつきましては、今の自然公園の制度と申しますのは、ご指摘あるとおり規制が中心でございます。どんな行為をやるのにも規制をかけるというのが大前提でございます。ですから、保護のために為になると思われるもの、管理を充実するために為になると思われるものについても、制度上は規制をかけるのが大前提でございます。規制をかけるということですから、ゼロベースでスタートするということですので、1個1個その必要性を吟味するというような仕組みで、自然公園の調査もしくはモニタリング、管理行為が組まれているというのが現状だという認識をしております。
 現在、自然公園の生物多様性保全、あるいは、生態系保全の役割を果たすために重要なのは、能動的順応的な管理ということであるならば、規制でそれを押さえつけるのではなくて、それを制度として位置づけていくことが考えられないかということでございます。そのときのキーワードとしては、ある一定の方法を示した上で必要な管理行為、あるいは、モニタリング行為を提示した上で、それを公式に定めた上で、それに沿う活動については広範な参加を得て実現していく、そういう制度の実現が念頭にあり、方向性で書いてあるところでございます。
 すべては難しいかもしれませんが、今、各先生からいただきましたご意見に沿う形で、海の保全あるいは生態系管理、生物多様性保全の部分でと思っているところでございます。

○熊谷委員長 ありがとうございました。
 それでは、時間の関係もございますので、本日の議論はこのあたりで閉じさせていただきたいと思います。
 以上をもちまして、本日の議事はすべて終了いたしました。事務局におかれましては、本日ご欠席の委員の方々にも資料等をお送りして、ご意見をお伺いするようにお願いしたいと思います。
 また、本日の有識者からのご説明及び各委員からのご意見を踏まえて、事務局で報告書骨子案を作成し、次回の小委員会に提出をお願いしたいと思います。事務局、ぜひよろしくお願いいたします。 それでは、事務局にお返しいたします。

午後0時35分閉会

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