中央環境審議会自然環境部会 自然公園のあり方検討小委員会(第7回)議事要旨

開催日時

平成20年11月5日(水)

開催場所

三田共用会議所(東京都港区三田2-1-8)

議題

  1. 自然公園法の施行状況等を踏まえた今後講ずべき必要な措置について
  2. その他
    1 有識者からのヒアリング
    (1)海洋保護区の必要性
    京都大学フィールド科学教育研究センター 特任教授  向井 宏
    (2)生物多様性保全を踏まえた自然公園のあり方
    江戸川大学教授・日本自然保護協会理事 吉田正人
    (3)慶良間サンゴ礁の保全と活用
    慶良間自然環境保全会議 理事長 垣花武信
    (4)尾瀬保護財団と尾瀬の管理・運営
    (財)尾瀬保護財団 事務局長 笛田浩行 (敬称略)
  3. 必要な措置に関する検討

議事経過

  • 自然公園の保護管理及び運営に関する有識者からのヒアリングを行った。
  • これまでの小委員会での検討を踏まえた論点の整理を行った。

 なお、主要な発言は以下のとおりである。

1 有識者からのヒアリング

(1)海洋保護区の必要性
【説明】

○海洋生物の大幅な減少の原因は、過剰な採捕、水質汚染、生息環境の喪失。このうち、生息環境の喪失には、開発等の他、生息環境が細かく隔離されたものがある。

○埋め立てと汚染が海の生物の地域的な絶滅の大きな要因。海洋生物の多様性を保全するためには、生息環境を残していくことが必要であり、そのためにはSinkとSouceを守るような海洋保護区が必要。サンゴ礁などでは、海外にも及ぶので国際的な取組も必要。

○海のことだけを考えていても海は守れない。海洋保護区をつくる場合にも、陸と海のつながりを確保することが大切。森から川を通して海へのつながりは、水だけではなく砂の流れもある。その砂の流れが沿岸の多様な生息域を形成していることも認識する必要。また、水だけではなく、砂の流れも分断する構造物や砂の採取への対応をしなければ、海域の保全及び海洋生物の多様性の保全は難しい。

○漁業資源の自主管理は限界ではないか。個人的には、半強制的な保護区の設定が必要と思う。ただし、現在までの国立公園等の保護区の設定に住民の理解が十分得られているとは思えない。国からの積極的な働きかけがほとんどなされていなかったのではないか。

【質疑】

Q海洋保護区のイメージは。

A地域に応じた規制があり、全国一律は反対。地元との話し合いを通じて、地元の了解を得ながら規制の内容を決めることが大切。その際に専門家及び国の説得、教育が必要。

Q陸域とのつながりを考えた海洋保護区とは。

A理想としては流域圏を含んだ海域としての設定。しかし、非常に難しい。住民の意識が大切だが、意識向上を待っていては何百年たっても無理。国や専門家が必要性を積極的に説く努力が必要。

Q規制ではなく漁業経営が成立するような方向に誘導する方法もあるのではないか。

A海洋保護区で規制をかければそれでいいというものではなくて、それがなぜ必要か、常に積極的に言う必要。単に指定して終りでは絶対だめだと思っている。

(2)生物多様性保全を踏まえた自然公園のあり方
【説明】

○現状の自然公園の管理の中で、生物多様性国家戦略の第2の危機が課題。今まで人手が入って維持されてきた景観、その中で維持されてきた植物群落が危機に瀕している。

○自然公園内の生物多様性保全は、自然公園法だけではなく、種の保存法による希少動植物の保全、自然再生推進法による自然再生、外来種対策法による外来種コントロール等が行われており、それぞれの法律でバラバラにやるのではなく、包括的に進める必要。

○世界遺産地域では問題解決型の行動計画が作られている。これに対して、旧来の公園計画は、環境省で行政的に調整した上で審議会を通して作成しており、内容的には施設整備とか規制中心。動的な問題、新しい問題に対処できていない。

○これを解決するために、多様な主体が参加し、モニタリングに基づく順応的な管理ができる公園計画とする。各公園の状況に合わせた問題解決型の公園計画として、年次計画、実行主体、分担なども含め、省庁の枠を超えて取り組むことができるとよいのではないか。

【質疑】

Q二次的自然の管理の上で、資源を利用すると価値が生じる。資源の使い方の枠組みについての考えは。

A手段と目的が逆になるとおかしなことになる。目的の明確化と、期限の設定等。また、生物多様性は自然環境局、地球温暖化防止は地球環境局と分けるのではなく、自然公園の中においてもクロスオーバーしているものがあるのではないか。

Q資源の使い方で何か提案は。

A良い事例は直ちには思い浮かばない。海上の森なども、県の土地で栽培した米をNPOが収穫して、自分のものにはできないのでお祭りで配っている。

Q自然公園を管理するにあたって、ソフト面でどのような方法があるか。

A自然公園が提供しているのは美しい風景や学術的価値だけではなく、水源涵養や洪水調整などの調整サービス、野生生物とのふれあいの場の提供などの文化サービス、そういった様々な生態系サービスを提供している場であるということを、ビジターセンターでPRし、国民にもっと税金を使ってもいい場所であることを理解してもらうことが大切。アメリカの営造物型国立公園に比べて、圧倒的にスタッフが足りないので、野生生物の専門家、生物多様性の専門家、環境教育の専門家を増やしていく必要がある。

Qモニタリングに基づく順応的な公園計画の実現は難しい。何か具体的な考えは。

A公園計画も年次目標を決めて、10年計画だったら、年次毎にどのように達成するか、目標を決めて進めるような改正をして、それに向けて努力し、予算をつけていくことが重要。
 国のスタッフだけではやりきれないので、公園管理団体の活用も検討。全国的な国立公園協会があるけれども、それ以外にも公園ごとの協会があってもいいのではないか。

(3)慶良間サンゴ礁の保全と活用
【説明】

○慶良間の海域は、ザトウクジラの繁殖地でもあり、沖縄本島等へのサンゴの卵の供給源にもなっていることから、「里海」と呼んでいる。年間100万人くらいの利用者がある。

○1998年に白化現象が起き、座間味村の漁業組合で自主ルールをつくって、重要なポイントでは、魚もとらない、ダイビングも禁止して、3年間休ませてサンゴの状態が回復した。しかし、2001年にオニヒトデが異常発生して、休ませている間にオニヒトデにほとんどやられてしまったので、オニヒトデを徹底して駆除した。休ませるのはいいが、絶えず監視をしていないとサンゴ礁の保全はできない。

○ホエールウォッチングも、ダイビングも、沖縄本島から自由に入ってくる。我々がルールを決めても向こう側にはないので。資源を守る者が優先的に資源を利用するというルールを沖縄本島の業者とも話し合っている。これは法律でないと縛れないので、公園法等の法律的な議論を進めている。

○この海域を保護するため国立公園に指定してほしい、オーバーユースなのでルールを決めましょうといってもなかなか難しく。法律で縛ってもらったほうが管理しやすいと思う。

【質疑】

Q具体的なトラブルは。

Aダイビング客数は10年間ほど変化がない中で、5年前に800程度であったダイビングショップが現在は1,600に増加。保護とか環境に配慮したダイビングではなく値段が重視されており、1ヶ所に集中して大きな船で来るから、オーバーユースとなっている。アンカーでサンゴを引っかけたり、環境に配慮したダイビングがなされてない。「このままだと完全にだめになりますよ」と言っているが、沖縄本島の業者はここがだめになってもらよそにいけばいいが、住んでいる者にとってはここしかない。

Qお客様から自然保護に対して、どのように受益者負担をもらうか方法があるか。

A沖縄本島から来た船に対して、トイレや食事とか船の中では大変でしょうから港に上がって下さいと。ただし、ごみ処理とかがあるので、100円いただきますと、そういう制度ができないか考えている。

(4)尾瀬保護財団と尾瀬の管理・運営
【説明】

○ビジターセンターにおけるサービス向上への対応として、複数の管理員を確保するために複数の業務を受託している。

○職員が創意工夫して、手づくりの企画展の実施、展示物の作成、繁忙期の臨時案内等を実施。自然観察会やスライドショーなどについても、管理員が創意工夫して改善、プログラムを作成している。

○委託手続は単年度契約で、必ず受託できる保証はない。特に近年は随意契約ではなくて、競争入札、場合によってはコンペ方式による企画提案方式が導入されている。これに伴って、決定時期が遅くなり準備に支障が生じている。例えば、今年の尾瀬沼のビジターセンターは、5月1日から管理受託で、それ以前に、季節雇用の管理員を雇用しなければならないが、「もし受託できたら雇用します」との約束下で雇用しているので当然のこととして良い管理員が集まらない。

○受託者の創意工夫を活かした施設管理には、関係する手続として以下が好ましい。

  • 長期的な契約、複数年契約
  • 契約手続については前年度の早い時期からの契約決定
  • 複数事業の一括受託の仕組み
  • 収益事業を可能にする仕組み
  • 業務受託では仕様書が詳細に決まっている業務委託ではなく、仕様書を簡素化し、現場の判断でいろいろな対応ができるような仕組みが創意工夫を活かせる。
【質疑】

Q競争入札に競合相手はどこかあるのか。

Aもう1社から参入したい意向があったと聞いているが、最終的には尾瀬財団だけが応募。これまでは、随意契約であった。

Q実際に現場で解説をする人は。

A尾瀬保護財団のボランティアには自然解説員もいる。山の鼻のビジターセンターでは、ビジターセンターの管理・運営とは別に自然解説事業を受託。この事業では、専門の職員が団体のレクチャー、ミニツアーといったガイドを定期的に実施。

2 必要な措置に関する検討

委員 資料5でこれまでの論点はうまくまとめて整理されているが、この先はこの整理をもとにどうするのか。

事務局 当面必要となる制度的な内容を検討する上での新たな視点、もしくはこの資料に不足しているところをご指摘いただきたい。そうした点を今日のヒアリング内容も含めてご指摘いただき、これに肉付けをしたものを次回、答申の素案として提示し、それについてご議論を進めていただきたいと考えている。

委員 この中で検討項目として漏れているのではないかという感じを持っていることを一つ。
 公園の快適な利用という面では、施設の充実と適切な管理をうたっているが、公園の施設は環境省の直轄施設だけではなくて、多くの民間施設を国立公園の事業として認可している。最近、そういうものが経営破綻等で、極端な例は廃屋に近いもの、そういう状態が各地で見られる。こういうものがあると、地域全体としては明るくならないので、対応は難しいと思うが、何らかの対応を考えていただきたい。

委員 国立・国定公園で重要な自然環境の何を押さえているのか把握はできているのか。また、オーバーユースの問題で、何が解決していて、何が解決できないのか。

事務局 国立・国定公園の重要な自然環境については、自然環境保全基礎調査に基いて、重要湿地や生物区分ごとの典型的な部分等、マクロな意味の重要な場所は完璧とは言えないが、集積されてきている。国立・国定公園の総点検事業は、こうした材料を基にして実施していくこととしている。
 オーバーユースに関しては、自動車については、上高地や尾瀬等の各地でマイカー規制の取り組みがあり、何がしかの答えが出ていると思う。自動車からおりた後の人のオーバーユースについては、制度的としては、利用調整地域とか立入禁止地域が用意されている。一方で、自然公園の利用環境としての適正数の議論は、尾瀬などで試行的に検討されているが、さらに検討する必要がある。自然環境への影響については、登山道の整備等で、利用による影響を抑える取り組みを進めている。

委員 車の問題はうまくいっているのでもっとアピールしたほうが良い。しかし、慶良間のオーバーユースとか、屋久島の生態系が被害を受けているという個々の問題は残っている。そういうことについても検討していくのか。

事務局 利用によるオーバーユースの影響について、制度的に何が足りていないのか、ご議論いただきたいと考えている。

委員 国立公園の有料化の問題に切り込むことがあるのか。

事務局 過去の審議会等の検討を踏まえ、入園料とか入山料では難しいということで、これまで協力金として利用者負担をスタートさせ、30年ぐらいやっている。施設からの受益に対する協力金の延長線上で考えることはあり得るが、国立公園に入ることにコストを負担してもらい、それをハードルにして利用を制約する手法は難しい。

事務局 廃屋化等への対策が必要ではないかとのご指摘は、財産権等の難しい面もあるが、制度についてさらに検討したい。

委員長 廃屋の課題は、その他の課題の中で整理することで、事務局にお願いしたい。

委員 生物多様性国家戦略の第1の危機への対応と「生物多様性保全の屋台骨」の視点から見た国立公園の見直しを明記すべき。また、実効性のある「地球温暖化の影響への対応」から考えた国立公園体系等について取り上げる必要。モニタリングについては、その具体的な方法と、ボランティアの協力、市町村や都道府県との連携についての現状の認識と今後の課題も提示する必要。

委員 生物多様性あるいは景観の両方の点から、今まで陸上に比べて手薄だった海域の国立公園の指定区域を広げる、あるいは、新しく指定することを進めていく必要がある。そのために法のどこを改正すべきか、どのような政策手段をとればいいのかを一つの結論として提示することが必要。
 生物多様性の保護、あるいは、景観を楽しむという点から、国立公園地域が拡大するのはだれしも望むところだと思うが、漁業関係者等との折り合いをつけないと実現しない。その折り合いのつけ方が最大の問題で、これを一つの軸にして議論をしていく必要。
 また、予防的順応的な手法について、必要な場所で必要なモニタリングをするには、どう仕組みをつくるべきか。農業や林業等との調整を議論する必要がある。

委員 この論点整理はよく書けているがやや抽象的。幅広い参画を得て実施する新たな生態系管理の枠組みというのは一体何か、具体的な枠組みで検討していく必要。山からの砂の供給を踏まえた海の保全は、環境省だけではできないし、今の国立公園の枠組みでもできない。他省庁連携をどのような枠組みとするのか。 生態系サービスを享受するためには支払いを伴うとの考え方が出てきているので、いろいろなお金を払う枠組み、生態系管理の枠組みも考えられるのではないか。

委員 規制の強化という論理で海域を保護することは非常に難しい。流域全体を保護することによって、海に恩恵が持ち込まれるという発想から海を見ていくことも必要。法律的な規制を強くすることによって守られるものではなくて、自主的に守るようにしていかないと、いつまでも議論がかみ合わない。規制の強化ではなくて、共存できる道をどう探るかを検討していただきたい。

事務局 海中公園地区を共存型にする方向で検討したい。具体的には、基盤をしっかり押さえながら規制強化の視点ではなく保全を進める方向。また、ある一定の方法を示した必要な管理行為、あるいは、モニタリング行為を定めた上で、これに沿う活動については広範な参加を得て実現するような制度が実現できないか検討している。
 すべては難しいかもしれないが、各委員からいただいたご意見に沿う形で、海の保全あるいは生態系管理、生物多様性保全の部分の答案として次回用意したい。

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