中央環境審議会自然環境部会自然公園のあり方検討小委員会(第1回)議事録

開催日時

平成13年12月18日(火)14:11~16:27

開催場所

東条インペリアルパレス5階「曙の間」

出席委員

(13委員)

渡 辺   修  委員長
安 達 瞳 子  委員
磯 部   力  委員
大 沢 雅 彦  委員
奥 山 文 雄  委員
川 名 英 子  委員
熊 谷 洋 一  委員
瀬 田 信 哉  委員
立 花 直 美  委員
服 部 明 世  委員
藤 原 一 繪  委員
三 澤   毅  委員
和里田 義 雄  委員

議題

自然公園において緊急に対処すべき課題と対策について

配付資料

自然公園のあり方の検討について
説明資料
参考資料

会議録

(開会午後2時11分)

田部国立公園課長  先ほどのお約束の時間がまいりましたので、中央環境審議会自然環境部会自然公園のあり方小委員会第1回目でございますけれども始めたいと思います。
 では、渡辺委員長、進行方よろしくお願いいたします。
 
渡辺委員長  ただいまから自然公園のあり方検討小委員会を開催いたします。
 初めに、大変お忙しい中を小林自然環境局長にご出席をいただいておりますので、初めにご挨拶を頂戴したいと思います。
 
小林自然環境局長  大変申しわけございません。先生方にきょう一日朝からご審議をお願いをしておきながら、私は時々出入りをしておりまして、恐縮でございます。
 今日は、自然公園のあり方検討小委員会第1回目でございます。先般も部会でご説明しましたように、自然公園の果たすべき役割が少しずつ時代の要請に従って多少の変化をしてきております。今般生物多 様性の保全という観点から自然公園がどういう役割を果たしたらいいか、できるだけそういう点でも役割を果たしていきたいというふうに思っておりまして、今月の10日に自然環境部会においてこの委員会 を設置していただいたところでございます。
 かなり大きなテーマのご審議でございますので、時間はかかると思いますけれども、ぜひ我々としてお願いしたいことは、緊急に手を加えて社会的要請に応えたいという部分がございまして、環境省としま しては、今度の通常国会に自然公園法を幾らか改正したいと思っているところがございます。そういう緊急の具体的な課題について今日はお話をさせていただきつつ、ご審議をお願いしたいと思います。自然 公園における生物多様性の保全、保護機能の強化という点で慌しいスケジュールの中、ご審議をお願いする次第でございます。
 今日は先ほどから、出たり入ったり、落ち着かなくて本当に申しわけなく思っておりますけれども、幸いこの小委員会はスタートの時間が早くなりましたので、私も4時半ぐらいまではここにいられると思 いますので、ぜひ審議方よろしくお願いを申し上げたいと思います。どうもありがとうございます。
  
渡辺委員長  ありがとうございました。
 それでは、本日の議事に入らせていただきます。
 それから、定足数というものがあるんでしたかね。問題ありませんね。(国立公園課長より問題ない旨伝える。)
 去る12月10日の自然環境部会におきまして、この小委員会が設立をされました。川口環境大臣から中央環境審議会に諮問をされました今後の自然公園のあり方について審議をお願いするわけですが、先日 の部会でもまた小林局長のお話にもありましたように、まずは緊急に対応すべき問題につきまして、自然公園法の次期国会での一部改正も念頭に、先に検討をいたしまして中間答申を出すということでござい ます。本日はこの緊急に対応すべき問題とその対策につきまして、事務局から具体的な説明をお願いしたいと思います。
 よろしくお願いします。
 
田部国立公園課長  初めに、お手元の資料の確認をお願いいたします。議事次第の後に配席表がございます。その後小委員会の委員名簿でございます。次に説明資料という資料がございまして、開いていただきますとA3にな る紙がございます。その後カラーコピーが入っておりますけれども、これから映像を使いましてこのA3の紙について説明させていただきます。そのときに使用させていただくものが参考資料ということで入 っております。それから、1枚紙で自然公園のあり方の検討についてということで、先般部会の方でご審議いただいたものでございますけれども、自然公園のあり方の検討について、裏側に今後の日程という ことで、スケジュールが入っているものがございます。
 以上が資料でございまして、もしないものがございましたらお申し出いただきたいと思います。
 それでは、説明の方に入らさせていただきます。座って説明させていただきます。
 それでは、最初に参考資料の方を見ていただきまして資料1というところで、総合規制改革会議の規制改革の推進に関する第1次答申の概要という紙をごらんいただきたいと思います。
 これは総理大臣の諮問機関でございます総合規制改革会議の答申でございます。12月11日に出されておりまして、実は本日この内容について政府として最大限尊重して取り組んでいくという閣議決定がな されておりますので、今後政府がこのように取り組んでいくということでございます。
 この中で自然環境の部分でございますけれども、重点的に検討を行う重点6分野の一つに環境が位置づけられております。さらに、土壌保全対策等の並びで「人と自然との共生」という形で課題がございま して、「人と自然の共生」という部分につきましては次のような記載がされているところでございます。
 問題意識としましては、我が国が生物の多様性の観点で豊かであると、しかしこれまで絶滅が危惧されるような種がリストアップされているというような状況になっております。経済成長等による生活水準 の向上、人の営みの場での開発や生産形態と、そういった変化によって起きたところが大きいということでございまして、改革の方向としましては自然再生型の公共事業などで対応し、やっていくということ でございます。
 特に、現行の生物多様性国家戦略、これの改善、実効性を高めていくといったようなことがございまして、現行の戦略を「人と自然との共生」を図るためのトータルプランとして内容充実を図る、その実施 を推進するということでございます。
 その「人と自然との共生」を図るための国家戦略の策定でございますけれども、この中に奥山的自然地域を広くカバーする自然公園ということで、国土の生物多様性保全の屋台骨として積極的に活用すると いう記載がございます。国家戦略の中にこういう内容を盛り込みましょうということでございます。
 さらに、「人と自然との共生」を図るための実現のための措置ということで、イといたしまして自然公園法の改正案の提出ということが書かれております。これらにつきまして目標とする時期が書かれてい ることが特色でございまして、国家戦略の策定は平成13年度中に措置、自然公園法改正案の提出は、次期期通常国会で措置ということになっております。
 これを受けまして、私どもも次期通常国会に向けて法案の提出を図っていくというスケジュールがございますが、それに先立ちましては、当審議会でのご意見をいただくことが必須と考えておりますので、ご 審議のほどよろしくお願いしたいということでございます。
 それでは、映像の方に沿って説明をさせていただきます。
 これは、前回の部会の時にもお示しした国立公園への期待が広がり、深まっているというようなことでございます。国立公園の国民の方々の認識というのは非常に高うございまして、アンケートを行ってみま すと98%の方が国立公園を知っている。しかし、その内容につきましては、地域制の公園であり、私有地がある、民有地があるということを知らない方が6割もいるというような実態、あるいは国立公園の 中の地種区分について、厳しい所から緩いところまで濃淡があるということは8割ぐらいの人は知らないというような状況がございます。
 そういったところで、国立公園の自然と触れ合うという場所であるという認識も6割ぐらいあるところでございますけれども、かつての風景を保護する場というだけでなくて、自然志向の変化でありますと か、あるいは海外の営造物型の国立公園も見たり、体験されたりという知識、情報も増えている中で、我が国の国立公園への期待も広まっているというところで、期待、あるいは求められる機能が広がり、深 まっているという状況でございます。
 保護の面ということでの期待を3つに分けてみました。
 1番としましては、風景の保護というだけではなくて、生物、生態系にも重点を置いた自然保護区的な役割というのが求められていると。それを次世代に継承していく、食いつぶさないで持続的に使って いくというような考えも含まれていると思います。
 2番目は、管理の充実というような意味で、原生的な自然を保護する、また加えて二次的な自然といったものにも対象が広がっていっている。特に二次的な自然の面では生物多様性の面で重要性が再評価さ れているということがございます。
 3番目でございますけれども、これは保護の手段的なことがございます。従来は受身的な規制による手段ですけれども、人手を加えなければ維持できないような自然の保護といったことも求められておりま して、人為を加えた形での維持管理、あるいは傷ついている自然の修繕とか、なくなったものの再生といった積極的な管理が求められているのではないかと考えております。
 利用の面でございますけれども、風景、自然への関心の変化ということで、見た目の風景だけではなくて、風景を構成する個別の木でありますとか、森でありますとか、動物、植物、さらにその基盤となり ます地形、地質、それらを総体した生態系を知り、理解し、楽しむといった自然との触れ合い、五感を通じての楽しみに変化しております。
 施設でございますけれども、施設の整備につきましても自然とのふれあいを進める場所として、人工的な施設整備より、より自然に配慮した施設が求められているということがございます。
 また、3番目、環境教育の場として、自然を生かして自然体験の経験、技術習得の場、あるいはインタープリターなどの人材育成といったようなことも求められてきている状況がございます。
 そういった要請を踏まえまして今回特に3つの項目、保護と利用と管理という形で分けているところでございますけれども、風景、保護に加えて生物多様性等の保護機能の強化を図るということでの検討、 2番目としまして、これは利用の観点で2つに分かれますけれども、ソフト面では適正利用のための方策のあり方、ハード面では山岳登山道等の自然公園施設の適正な整備のあり方、3番目に管理の充実とい うことでございまして、何度も申し上げますけれども、日本の公園は地域制の公園であって管理主体が一元化されておらず、さまざまな主体が参画することが期待されるという中で、パートナーシップの確立 といったような形での管理の充実が検討事項として挙げさせていただいておるところでございます。
 ここでお手元の配付資料の方でございますけれども、説明資料に戻っていただきまして説明資料のA3の紙でございます。
 この表でございますけれども、全体としましては生態系の保全と野生生物保護機能について書いておりまして、先ほどの3項目、保護、利用、管理に沿って検討事項を4つ縦に並べております。
 右欄の方でございますけれども、問題項目ということでここ数年で重点的に対応していきたいと考えている事項を書いておりまして、原生的自然地の保護管理対策でございますとか、二次的自然環境の保護 管理対策とか、こういう項目、その右側に内容でございます。さらに、その右側の欄に対策としまして法改正でございますとか、右端の政令改正とかということにつながっていきます。この対処すべき問題の原 生的自然地の保護管理対策等、この縦軸の部分につきましては特にご議論いただき中間答申に盛り込んでいただきたい事項ではないかと考えております。
 これから項目に従いまして内容、対策等をご説明させていただきます。
 まず、原生的自然地の保護管理対策に関しまして、奥地利用による原生的自然への影響が出ているということでございます。奥地と言っておりますが、遠いとか、到達性が悪いとか、これまでほとんど人が 限られた利用しか行われない中で、原生的な自然が手つかずで残っていた地域でございます。こういった場所にも自然志向の高まり、本物の自然に触れたいとか、野生生物に接したいとか、そういった志向が 高まって、利用が徐々に出てきております。そのことによります影響、特に原生的な自然環境ということでの稀少性でありますとか、野生生物への影響といったものが出てきております。これが1番目の原生的 自然への影響という問題の検討項目でございます。この内容につきまして具体的な場所を挙げてご説明させていただきます。
 これは知床半島の先端部、知床岬でございます。知床は「シリエトク」というアイヌ語からきているそうで「地の果て」という意味だそうでございです。文字どおり辺境の地で我が国の奥地の代表的な場所 でございます。右側の写真で手前が海でございまして、それから浜があって、少し段丘的になって平らな黄色く見える草原がございます。風が非常に強いということで、風衝草原といっておりますが、緯度も 高いため本土で言えば高山帯的な植物が見える。加えてヒグマの密度が非常に高いといったような地域でございます。
 この地域は知床半島ですけれども、知床国立公園に指定されております。図面の方で一番黒っぽく見える場所、これが特別保護地区でございます。薄いところは特別地域ということで、地種区分がされてお ります。海岸線から海にかけて白く塗っていますけれども、海域に普通地域が指定されているということでございます。
 赤い線、緑の線、あるいはその下にマークがございますけれども、これは先ほどの公園計画にありました利用計画でございます。赤い線が車道、黄色く見える線が歩道でございまして、車道が知床半島を横 断する車道、海岸線の車道、それから稜線部になりますけれども歩道があります。これを見ていただくと半分から上の方は何も利用計画がありません。公園上の利用、あるいはそういう施設を考えてない場所 ということで、非常に原生的な環境ということを反映した公園計画でございます。
 それを表現するということで、上の方のグラフは知床国立公園全体の植生自然度の構成比を示したグラフでございまして、藤色で出ておりますのが自然度9、10、これは自然草地、それから自然林でござい ます。
 緑がその次の自然度8、7で自然林に近い二次林等でございます。全国の国立公園全体の平均で見ますと、6割弱が自然度9、10、ところが知床につきましては98%がそういった自然度になっているわけ です。下の方のグラフは自然海岸の構成比でございまして、これも藤色が自然海岸、黄緑が半自然海岸、白が人工海岸という区分でございますけれども、知床はこのような形で99%近く自然海岸が残ってい るという、自然度の高さを示したものです。
 特別保護地区と特別地域、普通地域に自然公園が分かれているお話しをいたしましたけれども、知床では非常に高い比率で、特別保護地区がございます。全国平均で見ますと13%ですけれども、知床は60 %という状況を図で示しております。
 知床は特に動物の種類、数が多い、密度が高いというのが特色でございまして、しかも大きな哺乳類、大きな鳥類がいるというところでございます。ヒグマ、エゾシカ、キタキツネ、それからオオワシ、ク マゲラ、シマフクロウといったような稀少な種も見ることができます。
 ここで先ほどの利用が絡んだ話になってまいりますけれども、奥地利用ということで、最近はここに人が入ってくるようになってきております。本来ならば歩いてまいりますと先ほどの車道の終点から知床 岬までは海岸線に沿って丸1日かかるのが、シーカヤックという海のカヌーですか、それで渡って接岸して上がってくるということができるようになり、一つの問題として、こういった自然草地が荒れてくる という話です。
 もう一つは、クマとの遭遇の事故の問題でありますとか、ごみの放置といった形でクマの生態に影響を与えるといったような問題が出てきております。地元では申し合わせを行いまして上陸をしないように という規制をしているわけですけれども、これは法的なものではございませんので、罰則規定等はございません。
 「植生タイプ別国立・国定公園の指定状況」は全国の国立・国定公園別に自然植生があるところ、高山帯系の自然植生、ブナクラス、あるいは湿原でございとか、そういうふうに分けたものでございます。 全国の高山帯自然植生のうち82.3%を国立国定公園が占めていること、亜高山帯につきましては41.54%を占めているということで、こういった非常に環境が厳しくて脆弱な自然というのは国立、国定公園 が多くを占めております。こういったところはほとんどこれまで利用がなかったんですけれども、新たに人が入ってくるということで、こういった脆弱な自然が壊れやすい状況になりつつあるという問題でご ざいます。
 今の問題は知床を例に、それから全国の話を若干ご説明しましたけれども、参考資料の2で、各地の国立公園においていろいろなところで問題が生じているということを、一覧表に20例ほど書かせていた だいております。
 あえて国立公園の名前と場所をわからないようにさせていただいておりますけれども、この資料が表へ出ますと、後ほどお話しする新しい仕組みにつきましてこの地区がもうすぐ規制されるんじゃないかと いうような形になりますので、まだそこまで地元関係との打ち合わせがない中でやってますものですから、全体地区名を秘した格好になっております。
 いろいろな例が出ておりますけれども、非常に脆弱な自然であるとか、あるいは重要な動物の生息地であるとか、そういったところへの立ち入りとか、カヌーとか、新しい利用が入ってきて問題が生じつつ あるというような例があることをお示しさせていただいております。
 そういうことで問題が生じておるわけでございまして、またA3の紙に戻っていただきますけれども、一番上の欄の原生的自然地の保護管理対策ということで内容といたしましては今申し上げたような内容 でございます。
 その右側の対策というところで、法改正を要する対策ということで、利用者の人数制限等を行う地区の設定を新たに法律の中に規定していくことを検討していきたいということを考えております。この中身に つきましては後ほどまた改めてご説明させていただきます。
 次の項目の二次的自然環境の保護管理対策でございます。
 二次的自然環境ということでございますけれども、農林業の営みとか人手が加わった形で維持されている自然でございます。この自然につきましては、自然公園のとらえ方といたしましても、公園の風景と して重要な要素とこれまでとらえてきている部分があります。草原の景観でありますとか、ツツジの群落でありますとか、そういったものを公園の重要な要素として指定してきているという状況もございま す。
 次の二番目の生物多様性保全の場というところなんですけれども、里地、里山、草原等が豊かな生物層を抱えていると、生物の多様性保存の上でも重要であるという再評価が進んできております。
 二番目として、そういった二次的な自然の減少という問題が生じているわけですけれども、この原因は農林業の変化でありますとか、土地利用の変化でありますとか、それが風景、生態系の変化につながっ ております。
 これは、人為的な管理が行われなくなったことにより、こういった自然が減少しているということで、従来、自然公園法に基づく管理の基本は人為とか、開発によって影響が出てくるものに対して規制をす ることで対策をとるということだったんですけれども、この問題につきましては人為行為が行われないことで変化が起こるということで、対応のとりようが今の方策の中にはないわけでございます。この問題 について具体的な例として阿蘇の草原の状況をお話しさせていただきます。
 阿蘇・くじゅう国立公園ですけれども、この公園の魅力というのは、阿蘇のカルデラ、周囲90キロだそうですけれども、それからこういった草千里に代表されるような草原景観でございます。
 阿蘇の草原というのは、人工的な草でなくて、半自然的なススキとかネザサとかいった地元の種で構成された草原であるということで、この草原というのは1000年ぐらい、平安時代からずっと続いている 土地利用であり、景観であるということでございます。いわば人と自然との共生の結果つくられてきた景観ということで、植物の種も非常に多く1,600種類ぐらい見られると。また大陸とつながっていた時の 遺存種であるようなここにありますヒゴタイとか、ツクシマツモトといったような植物もございますし、またこれらに関係して昆虫なんかも多様に見られるということです。
 この草原が明治、大正から昭和の初め、現代に至るまでずっと減少してきていることを示したものです。図表の外の黒い部分が草原でございます。カルデラの中と外というふうに見ていただきたいんですけ れども、カルデラの中では黒い部分が小さくなり、かつ虫食い状に減ってきて白くなっていると、白くなっているのは造林地などでございます。
 阿蘇の草原を維持するには、野焼きが必要であるということで、毎年春に野焼きが行われますけれども、野焼きだけでなくて、秋の時期には右側にあります輪地切りという作業が必要になってきます。これ は何をしているかというと左側が草原で、右側には木が生えていますけれども、草原に火を入れた時に樹林地、森林の方に火が飛ばないように防火帯を切る作業でございます。こういった作業は、非常に大変 であるということがございます。
 草原の減少ということは、一つは畜産業、牛肉の価格が低下するなどによって低迷しているということ、それからこういった作業に当たる人たちが減少、かつ高齢化していることによる人手不足ということ が挙げられまして、維持の作業に十分手が入らないということで、草原の消失が懸念されているということでございます。
 この図は全国の保存すべき草地の分布として50カ所がリストアップされていますけれども、このうち国立国定公園が34カ所ぐらいございます。赤が国立公園、緑が国定公園でございます。
 さらに、枠でくくってある草地でございますけれども、こういった場所につきましては、地元の一次産業の方だけでなくて、行政とか、あるいは周辺の市民の方、NGOの方の参加の取り組みが行われてい るという場所でございまして、国立国定公園においては、そういった取り組みも割と進んでいる場所があるということでございます。自然景観としても重要な場所が多くて、先ほどの阿蘇くじゅう国立公園な どもありますし、乗鞍高原、あるいは国定公園で秋吉台というような所も重要な場所でございます。
 そういうことで、人の手が加わることがなくなるということが減少の原因という二次的自然の問題、草原とか雑木林とかの問題ですけれども、この対応につきましては、まさに新しい仕組みづくりが必要で ございまして、また先ほどの対策の欄にまいりますけれども、土地所有者と行政、管理団体との風景保護協定の仕組みを新たに規定することを考えております。あわせて公園管理団体の指定制度などを規定す るということでの今回改正項目を考えているところでございまして、これもまた後ほど説明させていただきます。
 次に、3番目の生物生息地の再生ということでございます。
 これは失われた自然を積極的に再生していくため、現在政府としても各省連携で取り組んでいく、また国家戦略の中にも重要な柱として挙げていく予定にしている部分でございます。直線河川の曲線化とか、 干潟の造成でありますとか、産廃の処理跡地の森林化とかいったような内容が出てまいります。それは国立公園、国定公園の外の大規模な工事もございますけれども、自然公園の中でもそういう観点を取り入 れた自然の再生事業というのは積極的に取り入れるということは、まさにこれからの非常に重要な課題になってこようかと思っております。そういう意味でここに掲載させていただいております。
 この対応といたしましては、現在自然公園等事業という公共事業の一環で、植生復元施設でありますとか、動物繁殖施設といったような施設を整備することができております。ただ、これはまだ非常に小規 模なものを想定しておりまして、より総合的な再生事業をするには少しこの辺の操作が必要ではないかということで、配付させていただいております参考資料でございますけれども、その資料の3、5ページ でございます。
 一番上に枠でくくっております自然再生・生態系再生にかかる施設を新たに公園事業となる施設の種類に追加するということを検討しているところでございます。
 下に一点鎖線でくくってありますものが現在の公園事業の施設の一欄でございます。これは自然公園の施行令で定められているものでございます。自然再生にかかわりますのは、下から二段目、第15の植 生復元施設、動物繁殖施設という規定がございますけれども、これをもう少し使いやすいようにというような変更を検討しているところでございます。
 また、元に戻りまして、現に生じている問題の4番目、生態系の管理情報不足の改善ということがございます。先ほどからの問題を3つほど挙げておりますけれども、原生的自然の管理、二次的自然の管理、 あるいは生物、生息地の再生といったような、より積極的な管理をする上で自然環境、生態系にかかわります情報というのは非常に重要になってきます。現況を把握し、推移を押さえ、メカニズムの解明とい ったようなことも行った上で、科学的データを積み重ねて管理を進めていくということが重要になってまいります。その上での情報の収集、あるいは解析といったような部分での体制がまだ我々は不十分だとい うように考えております。この部分につきましても、自然公園事業の中に情報関係の施設を整備する部分を取り込んでいきまして、推進していきたいと考えているところでございます。
 また、情報に関しましては、情報を集めるだけでなくて、インターネット自然研究所というようなことで、新たに進めておりますけれども、生物多様性のデータとか、動植物のデータとかいったものの情報 を発信していきたいということで、情報発信の施設も充実させていきたいと考えているところでございます。
 問題事項の5番目でございます。これも法改正を検討している事項でございますけれども、問題事象としましては、高山蝶などの動物の捕獲が現在特別地域の中では規制がされていない。また、廃車とか廃 タイヤとかいった物を集積する行為も規制がないということで、現在多くの場所で問題が生じておりますので、これも生物多様性の観点からも国立公園を保護の場としていくということの必要性も含めまして 法改正を行い、規制の強化を図っていくということを考えたいと思っているところでございます。
 次に、大きな項目の利用の方にまいります。
 利用の項目は適正利用のための方策の利用調整のあり方、これがソフト面と言いましたけれども、それから登山道と自然公園施設の適切な整備のあり方ということで2つに分かれております。1つ目の奥地 利用の増加の対応ということにつきましては、これは実は一番最初にご説明した原生的自然地の保護管理対策の問題と同じことを言っているわけでございます。先ほどは原生的自然地の立場での問題が生じて いるということですが、今回は利用の方から見て、奥地利用者がふえているということで、問題としては一緒でございますので説明は省略させていただきます。
 2番目の登山道等の自然公園の施設の適切な整備のあり方ということで、これは先ほどの部会の中でもご指摘がありましたけれども、山岳トイレの改善の問題と、それから登山道整備の推進という2つの問 題について、これが現在まさに非常に各地で大きな問題になっていまして緊急に対策をとっていく事項と考えております。
 お示ししている図は登山利用の変化のグラフでございまして、利用者の増大というのが見られます。昭和40年ぐらいから350万、400万ぐらいで推移しておりましたのが平成9年に至りまして500万人 まで伸びております。その後、少し景気の関係もあって下がっている状況でございます。それが全体の状況です。ちょっと見えにくくて恐縮ですけれども、緑の線で書いたのがその登山者の中で中高年の方の 比率といいますか、実数でございます。
 昭和54年ぐらいから中高年の方の増大が非常に見られるようになりました。平成3年からずっと総体としてふえている分、これはすべて中高年の方が増えたことで登山者がふえたという状況になってまい りまして、今では6割ぐらいが中高年の方ということです。利用者数の増加とともに、そういった利用者の方の層が変ってきている。またそういうことで行動のパターンも変ってきております。百名山登山と か、花を楽しむ登山とかということで、割とゆったり自分のペースで歩かれる。当然食事つきの小屋泊まりになる。昔の若い人たちの登山ですと征服するとか、チャレンジするとかいったような急いで登る、 そういった登山でございましたけれども、今は非常にゆったりと利用する方が多くなっているという状況がございます。
 次にお示ししている図は、山岳トイレの問題でございます。山小屋の施設の処理状況のグラフですけれども、緑色の部分がほぼ処理をしているということ、青と水色というのが、これはくみ取りによって地 下浸透したり、周辺に放流処理をしているということでございます。この右側の写真は富士山の山小屋の例でございまして、貯留をしたし尿を時期が来ると、シーズンオフになると一気に流します。そのとき トイレットペーパーが残って白い川と呼ばれる現象が生じている状況でございます。山岳地域のし尿処理は技術的に非常に難しいということとと、コストがかかること、管理も大変だということでこれまでト イレの整備が進みにくかったのでございましたけれども、一方で山小屋の方々の意識も高まるとともに利用者の方も非常にそういったことを気にされるということで、現在民間の山小屋の方々がこういった問 題を解決しようという機運が非常に高まってきております。
 これを受けまして環境省でも緊急対策を進めているところでございまして、平成11年度から補正予算の対応がとられ、今年度は5,000万という小額ではありますけれども、初めて民間の方に補助金を出し て、トイレの整備に取り組んできております。この制度をぜひ拡充して早いうちにこの問題を解決していきたい。民間の機運が高まっているということも含めて解決していきたいということです。技術的な面 での検討ということでもそういった施設がふえればふえるほど、非常に難しい場所での検証ができるわけでございまして、山岳トイレの整備例の写真ですが、上の方の写真は今年静岡県と山梨県が実験的に実 施したおがくずを使ったバイオトイレ、下の方の写真は環境省の先ほど申し上げた補助金でつくっております焼却式のトイレでございます。こういった形で徐々に広がってきているという状況でございます。
 それから、登山道の問題でございますけれども、これも各地で問題になってきております。登山者がふえるということで、洗掘などで登山道が荒れてくる、踏み荒らしができる。そうするとぬかるみが出て くることで、さらに周りの方を歩くようになる。左の上の写真ですけれども、どんどん道が広がり、植物がない荒地が広がるというような状況でございます。あるいは右側のように根が露出してしまって植物 にも影響が出ているというような実態があろうかと思います。
 これらの対策としまして、自然公園の整備をどんどん進めていくということがあるんですけれども、実は各地でやり過ぎじゃないかというような問題も出てきております。人工的過ぎるのではないか、過剰 施設ではないかというような批判、あるいは歩きにくいといったような問題も出てまいりました。この点につきましても先ほどの部会の中でもご意見をいただいておりますけれども、計画段階の路線のとり方 の問題とか、工法の問題、さらには施工段階での施工のやり方の問題といったようなことで、いろいろな段階で対策をとらなければいけない。加えて施工だけの話だけでなくて、管理をきっちりやっていくと、 余りハードなものをつくらずに、柔らかい施設をつくり、きっちり管理をしていくということが重要であるということを考えております。
 対策の方としましては、既に環境省の方で平成12年度から登山道のあり方の検討などを行っておりまして、ことしも大雪山国立公園で石組み歩道などの実験施工をしております。お示ししている写真は屋 久島で地元の町が既に実施した事業でございまして、たまたまこの地区は周辺に石がたくさん転がっていると言いますか、石が使えるということで、その石を石組み工法を使いまして、伝統的な工法なんだそ うですけれども、それを組んで使っていくということで、歩きやすく、かつ屋久島のように雨の強いところでも壊れにくいものができているということで、そういった技術、ノウハウを広げていきたいというふ うに考えております。
 それから、次に3番目の管理というところに入らせていただきます。パートナーシップの確立による管理の充実ということでございますけれども、これは我が国の公園システムが地域制ということによる部分 と大変関係が深うございまして、公園の指定と行為規制の権限は国が持っておりますが、その土地は持っておりません。今いろいろ問題となっております公園の管理の仕事といいますと、例えば二次林の保全 事業でありますとか、登山道の整備、管理の問題でありますとか、野生生物の生息地の保護でありますとか、そういった管理の事業というのはすべて土地に根ざした管理でございます。ですから、その管理を どういう形でやっていくかということになりますと、いろいろな機関がかかわらざるを得ない。具体的には、環境省を含め国の機関、地方自治体、公園事業をやっている民間事業者の方、土地の所有者、ある いは利用する人もあろうかと思います。このように関係者が多いわけですけれども、その関係者間の連携と協力が大事だということはいつも言われるわけでございます。
 しかし、問題はこういった事業をするための経費とか、人とか、そういったものをどう負担していくかという負担割合の話、関係者がどのようにかかわっていくかということでございまして、その仕組みを どうしていくかというのが特に二次林のように従来の規制手法ではどうしようもないような問題を考えていく上で重要な課題と考えております。それで、緊急に対応すべき事項の中に土地所有者との関係、そ れからNGOなどの団体との関係ということで2つに分かれております。土地所有者の関係の部分で言いますと、現在日本の国立公園は民有地が25%ぐらいあるわけですけれども、所有者の方々には国立公園 に指定されるということで規制を受けるわけですけれども、何ら見返りがないということがございます。
 税制上の優遇措置というのがございまして、規制の厳しい特別保護地区ですとか、第一種特別地域でございますと優遇措置がございます。例えば、固定資産税がかからないとか、相続税が8割免除されるとか、 評価が8割ぐらい安くなるとかといったような形でのものがございますけれども、これが規制の緩い第二種、第三種になりますと優遇措置もない。通常二次的な自然は第三種特別地域とか、あるいは第二種、 あるいは普通地域でございますので、こういった税制上の優遇措置もないという状況でございます。
 昨年の春でございましたけれども、埼玉県の秩父多摩甲斐国立公園で両神山という日本百名山の山があるんですけれども、そこの森林所有者がこれまで森林も切らずに協力してきたのに、相続税を払う段階 になって、全然減免の措置がなかったということで非常に問題だという指摘を広く世間に出したわけでございます。
 森林の木を切らないというだけでなくて、登山道を整備するのにも土地を使わせてあげるということで県が整備したんですけれども、そういった協力をしてきているし、遭難救助とか美化清掃にも協力して きている。にもかかわらず何の見返りもないということを訴えました。それをテレビや新聞等でも取り上げられたわけですけれども、中には国立公園の中に民有地があったのかというような反応もありました し、そういうような民有地に負担をさせているんであれば、もっと対策をとるべきじゃないかというような議論もあったところでございます。
 そういうことも関係ありまして、対策といたしまして直接対応できるという形ではないんですけれども、新たに風景の保護協定というような仕組みを自然公園法の中に位置づける、あるいは公園の管理団体 の指定制度といったものを位置づけるというようなことを考えているところでございます。
 以上、この表についてのご説明でございますけれども、これを受けまして法改正を検討している事項について続けてご説明をさせていただきます。
 法改正を検討している事項は4項目ほどございます。まず、一番最初の利用調整地区の制度でございまして、これは一番最初に申し上げた奥地利用のような場合の従来対応がとられていない 地域で、利用のコントロールをしようということを法律的に位置づけることを考えているところでございます。
 従来、自然公園は、人が入ることを規制するというようなことは考えておりません。利用過剰が起きた場合は左にありますように登山道が非常に洗掘されて周辺の植物が荒れているということになります と、登山道、木道を整備してそこからはみ出さないというような形で対策をとってきているところでございますけれども、そういったような形での施設の整備による対応ということになりますと、利用者がさ らにふえて、さらに施設を整備しなければいけないといった悪循環が起きるというようなことで問題が解決できない。そこで右側にありますように利用コントロールしていくということが必要ではないかとい うことで、利用の限定により優れた風致景観を守っていくという仕組みを取りたいということを考えております。
 このやり方なんですけれども、どういう場所を位置づけていくかということですが、縦軸に自然環境保全の必要性といいますか、必要度の高さということで、貴重性とか、原生性とか書いております。横軸 は自然の脆弱性といったような軸でございます。こういうことでの対応を考えるのは非常に貴重であり、しかも弱いところであると、地域区分でいきますと特別保護地区と第一種特別地域の一部であろうとい うように考えております。当然こういうところを指定するとなりますと、管理が重要になりますので、管理のしやすさといったことも必要になりますし、また一番大事なことは、土地所有者たちの合意という ことが得られている場所というのが前提になろうかと考えております。
 利用調整地区ですけれども、公園計画に基づいて特別地域内に利用地域を設定し、公示します。このことにより利用者は立ち入りをする際に、国等の認定をとらなければいけないというような仕組みになり ます。認定証を持った人だけが調整区域内に入っていくということで、認定を行うに際しては認定基準、これは人数とか期間、人数というのは1日例えば50人とか、あるいは期間というのは12時間とか、1日 とかといったような形での利用の仕方の中身を基準としてつくりますけれども、その地域の基準に合ったものかどうかということの認定を受けないと入ってはいけないというようなことにしたいと考えており ます。認定をするのは、法律上国もできますけれども、実際には現地に近い場所で何らかの機関がないと実行上困難なため、国にかわって認定を行う指定認定機関というものを設置していくということを考え ております。
 次に、風景の保護協定の制度でございます。この背景は先ほどの二次的自然の保全というところで規制的手法では限界があり、別の方法をとらなければいけないということをご説明いたしました。
 具体的な中身でございますけれども、土地の所有者が国、地方公共団体、NPOなどと協定を結びまして場所を提供し、その土地の森林の管理をゆだねることができるような協定を結ぶということでござい ます。この協定は良好な自然風景地を守るということに資するような協定であることの認定を国が行うことで法的な位置づけを行うということでございまして、この協定を結ぶことで土地の所有者は一つはそ の土地の管理を他の人にやってもらうことができるということ、もう一つは税制上の優遇措置をその土地に対して受けるようなことができるということを考えております。
 現在、税制上の優遇措置についての税制当局との交渉を行っているところですけれども、相続税、あるいは特別土地保有税に関しての非課税、あるいは減免を検討しているところでございます。土地所有者 から場所の提供を受けまして管理を実施する国、地方公共団体、NPOなどのうちのNPOなどにつきましては、直接的な支援という形では今法律上の位置づけができていませんけれども、予算的な措置であ ります環境省のグリーンワーカー事業といったような事業で、支援をしていきたいということを考えておるところでございます。
 そのグリーンワーカー事業でございますけれども、これは平成13年度からの予算措置で実施している事業でございます。国立公園などの貴重な自然地域、そこでの自然環境を管理するための作業、事業を 地元の自然や社会を熟知した方々を雇用することで進めていく、具体的には草原や二次的な自然の管理でありますとか、登山道の補修、あるいは水中などの非常に対策のとりにくいところの清掃活動とかいっ たようなものをやっておるところでございます。
 この内容につきましては、参考資料の2でございますけれども、3から4ページに各種のグリーンワーカー事業ということで参考資料の4でございます。6ページですけれども、今年度から実施しておりま す国立公園の管理事業が掲載されております。こういった事業はこれまでも各地で必要性が高かった事業でございまして、こういうことを行うことにより国立公園の自然環境を守っていくための管理作業のグ レードアップが行われるわけでございますけれども、予算的な部分での措置がとられていなかったということで、こういった予算については今後ぜひ拡充していきたいと考えておるところでございます。
 次に、法改正を検討している事項の3番目でございますけれども、先ほどの2つの項目ともリンクするわけでございます。自然公園は国土の14%も占めるわけですけれども、実際に管理ということでの対 応というのは行政的にも非常に不十分です。その一つは地域制公園ということで、先ほど申し上げましたような管理作業をだれがやるかということの位置づけがしっかりしておりません。そのために登山道の 荒廃とか、森林の荒廃の問題等が出てきているわけでございます。
 自然公園においてこのようなきめ細かい管理を進めて行くということを目的としまして環境大臣、または国定公園においては都道府県知事ですが、一定の要件を備えた公益法人や特定非営利活動法人を公園 管理団体として指定することによりまして、地域に密着したきめ細かい自然公園の管理を進めていきたい、その際地元の住民の方とか、民間の活力といったものの活用を図っていくということでございます。 今回改正しようとしております利用調整地区の制度、これの利用調整地区を保守管理するような作業でありますとか、あるいは風景保護協定で土地所有者と協定をとってその地区を管理していくといったよう な作業。それを行うにはどうしてもNGO等の団体の活用ということが不可欠になってこようかと思うところでございます。
 次の図表でございますけれども、現在そういうようなことをやろうという機運がかなり高まっているということでございまして、これは里地、里山における民間団体がどんな活動をしているかというところ で、この中に四角でくくってある部分が、そういった管理事業的な作業をくくったものでございますけれども、こういう形でかなり伸びてきているということでございます。
 この管理団体が行う作業、役割でございますけれども、まずは風景保護協定に基づく環境保全、環境管理活動、それから利用調整地区の管理でございます。指定された公園の管理団体がそういった作業をす る場合は自然公園法上の許可行為を不要にし、許可をとらずにできるようにするといったような措置もとろうと考えております。それから、公園の登山道などの維持管理、こういったものに対応する公園管理団 体も指定していきたいと考えているところでございます。
 次に、最後の項目になりますけれども、特別地域において現在既に各種行為が規制されておりますけれども、この規制項目を追加したいということで3点挙げております。
 一つは動物の捕獲の規制でございます。国立公園ですと、通常全域が動物を捕獲することが規制されているというように思われがちですけれども、実際には特別保護地区だけということで、その特別保護地 区というのは国立公園ですと13%、国定公園ですと5%ということで非常に限られた場所になっております。したがいまして、マニアの方とか業者の方はその辺十分知っていて、特別地域の中で高山蝶など を採るということで、北海道や中部山岳地区などではそれらが見られなくなっているような問題も生じております。これにつきましては、今般の改正におきまして動物の捕獲の規制というのを追加したいと考 えているところですけれども、農林水産業が行われている特別地域ということで全部の動物を対象にすることは考えておりませんで、その公園別に特に重要な種類、規制を必要とする種ということに環境大臣 が指定した種について規制をしたいと考えております。
 次の図ですけれども、これは主な高山蝶の生息状況を示したものでございます。橙色が特別保護地区ということでウスバキチョウですとその生息地の8割は既に特別保護地区で規制されているということで ございます。下の方のオオイチモンジになりますと、生息地の7%しか現在は規制されていない。これを特別地域を規制の地域にいたしますと、こういったような形で広がってくるということを示したもので ございます。高山帯だけを生息地にしているウスバキチョウ、タカネヒカゲなどですと既に網がかなりかかっておりまして、特別地域を加えるということでほとんど押さえられます。それから高山帯以外の特 別地域内に生息しているチョウについてもこういうような形でかなり規制が効き効果が出てくるのではないかと考えています。
 次に、規制の新しい項目として追加を考えておりますのが物の集積でございます。先ほどの動物と同じように特別保護地区ですと、物を集積したり、貯蔵したりする行為が規制されておりますが、特別地域 にはその規定はございません。従いまして、現在建設残土でありますとか、廃車でありますとか、廃タイヤといったようなものが貯蔵、集積されるというような事態があっても対応がとれないということでご ざいます。
 通常、自然公園地域というのは、人家から離れてまた土地も安いということで、廃棄物がかなり出てくる中で、公園地域に集まってくる傾向もありますし、不法投棄の問題も増加しており、緊急に対策をと る必要があろうと考えております。これは景観的に見た目の景観にも問題もございますし、生物にとって有害な物質が含まれていることも想定されて周辺への影響というものが出てくるということで緊急な対 策として追加を考えているところでございます。
 最後ですけれども、自然公園法で規制されている行為を一覧として書いております。水色で示したところが先ほどの動物の捕獲、物の集積でございます。現在、特別保護地区では動物の捕獲も物の集積も規 制制度がございます。今回指定した動物、あるいは指定されたものにつきまして特別地域においても規制を追加したいと考えているところでございます。
 それから、その一番下の欄でございますけれども、各種行為の最後にその他政令で定めるものという項目を追加したいと考えておりまして、「その他、前号に掲げるもののほか風致の維持に影響を及ぼす恐 れのある行為で政令で定めるもの」という規定を追加することを考えております。これは自然環境保全法の原生自然環境地域では既にある規定ですけれども、自然公園の利用形態とか、公園を取り巻く社会状 況が変化していることで現在想定されていなくても、今後問題が生じた場合、機動的に対応することができるというふうに考えているところでございます。
 以上、法律の改正を考えている項目の4点につきまして、ご説明をして私の説明を終らせていただきます。
 どうもありがとうございました。
 
渡辺委員長  ありがとうございました。
 いろいろな関係から大変この小委員会の検討日程が制約を受けております。前回もそして今回も配られました自然公園のあり方の検討についての裏側に今後の日程というのがございますが、本日説明のあり ました法律事項につきまして、きょうは十分委員の皆様方のご意見をちょうだいしまして、次回は1月16日ですが、有識者のヒアリングと中間答申案の提示というのが入っております。1月29日には結論 を出したい。大変慌ただしい日程でございます。そこで、今日は法律項目として、今提起されました点について、ご審議を賜りたいと思います。
 ご意見、もちろんご質問でも結構でございますのでどうぞお願いをいたします。
 藤原委員。
 
藤原委員  最初に資料の中で訂正をお願いしたいんですが、7ページの植生タイプ別国立国定公園指定状況の表が載っておりますね。この中で寒帯と亜寒帯というのは日本にはございませんので、これは削ってくださ い。寒帯、亜寒帯、熱帯というのは緯度的といいますか、平面的な分け方で気候的区分で垂直的な分け方でいきますと高山帯の方がそのまま使えますので、日本は温帯、亜熱帯に入ってきます。
 一つ質問なんですけれども、きょういろいろ説明していただいたんですが、きょうの話し合いでメインに行われますのは法改正についてだけなのでしょうか。2ページの国立公園の期待1、自然環境保全面 への期待から見ていきますと、そこから緊急に検討すべき事項が出てきたというように解釈いたしましたけれども、そのようなものでいきますと、ここで例えば教育の問題、これは利用の中に入るのかもしれ ませんが、今レンジャーが非常に少ないという問題があります。教育面では何も行われていない状態で今年度はほかの省の人たちが加わってさまざまな教育関係もできたというお話を聞きましたけれども、来 年度からまた元に戻る。しかも法改正をしたときに一体だれが監視するのかということにもなってきます。人間的に足りないんじゃないか。それはここでは触れられていないのが一つと、もし教育という面で国 立公園、国定公園ですと教育の面が利用の面では入ってくると思います。その面では多少ほかの省との連携も出てくる問題ではないかと思うんです。そういう問題がどのような形で出てくるのか、法改正とは 関係ないので別になるのか、そのあたりを教えていただきたいんですが。
 
田部国立公園課長  今おっしゃられたことにつきましては、国立公園、国定公園、自然公園の課題ということで非常に大変重要な問題だと考えております。しかし、今回検討事項として中間答申といったような形でのスケジュ ールも含めて緊急にご検討いただきたいという項目につきましては、先ほどのA3の表の中にありますような検討事項ということで、生物多様性の保全等、保護機能の強化の部分、利用の部分、それから管理 の部分ということの大きく3つに分けまして、さらに恐縮なんでございますけれども、今回次の欄の問題の項目で出してある部分について中間答申のときにはこの辺はぜひ触れていただきたいということで申 し上げているところでございます。
 したがいまして、教育の部分とか、人材の部分とか、そういったことを軽視しているわけでは全くございませんで、それにつきましては全体的なあり方、もちろんそういった教育の話にしろ、人材の部分に つきましても多様性の保全に関連することではございますけれども、それにつきましては、より大きい検討の中でさらにご審議いただければと考えているところです。
 
小林自然環境局長  補足申し上げますけれども、今日から3回でご審議いただく中で将来にわたるところで、将来というかそんなに遠い将来じゃないんですけれども、次の課題として検討すべきことについてご指摘いただけま したらば、中間報告の中に今後の課題というような形で次につながる形で受けとめさせていただいて、議論は2月以降に設定していただけると大変ありがたいと思います。先ほど最初にご説明したように、政 府の方針として自然公園法の改正ということがありまして、そこに絡めて少し最初に中身のあるご議論、答申をいただければ大変我々の勝手な都合でございますけれども、幸いだというふうに考えているとこ ろでございます。
 
渡辺委員長  委員長としてもいささか言葉が足りなかったかと思いますけれども、今後の日程のところに自然公園にかかる中・長期的課題の検討というのは4月以降に、あるいは2月以降というのが正しいのかもしれ ませんが、あるわけでございまして、課題の指摘はなさっていただくことは大歓迎でございます。
 ほかにどうぞ。
 
三澤委員  どんなふうなスタイルの中間報告がつくられるか、これは今全然私もわかりませんけれども、その様式、形式にもよると思いますけれども、一つは実現の可能性のあることについては当然触れなければいけ ないけれども、実現の可能性がないものを余り書くと、そのときの段差が大きくなりますので、その辺は注意した方がいいんではないか。その意味で申し上げますと、先ほどご説明いただきましたけれども、 固定資産税、相続税の減免というのは、実はかなり森林の方でも苦労しているテーマでございまして、今までの経験で言いますとなかなか容易ではないと思っております。
 そういう意味で、今回少し改正になるはずでございますけれども、党税調、政府税調の方と、もちろん財務省当局を含めていろいろ折衝していかないと、ここになかなか書けない問題ではないかという気が いたしますので、その辺ひとつ頑張ってほしいと思っております。
 それから、もう一つは用語の問題、これは非常に小さなことですけれども、何か仮名文字を使うと非常にハイカラに見えますし、何となくわかったような気にさせるという魔力があるような気もいたします けれども、バックカントリーという言葉は、これはちょっと私も引っかかるので、この言葉は世になじんでいる言葉なのか、あるいは国際的にこういう言葉が使うことが一種の現在の流れになっているのか、 その辺のことをちょっと懸念いたしますので、島しょとか、何とかと言っているわけですから、それ以外にバックカントリーという何かちょっと引っかかるものを感じております。
 今、グリーンワーカー事業、これはある意味では出発しているから、これはなじませる以外にないのかなと思うけれども、こういったものもある種、事業を始める場合のネーミングとしてはいいと思いますけ れども、少なくとも法律みたいな話になりますと、かなり厳しいものがあるだろうと思っておりますので、その辺も今後の課題として少しいろいろご検討いただけたらと、こんなふうに思っております。 以上です。
 
渡辺委員長  ありがとうございました。
 磯部委員。
 
磯部委員  私は法律学が専門なものですから、ちょっと専門的なことも含めて意見とご質問と述べたいのですけれども、基本的には従来の自然公園法の地域制の公園としての限界とか、規制、仕組みの限界から思い切 って一歩踏み出してといって体系的に原理的に新しい仕組みになるというところまではいかないんですけれども、しかし重要な一歩を生み出すという感がありまして、歓迎したいし、応援したいと思います。
 その前提の上なんですけれども、まず利用調整地区という仕組みを設けるのは非常に結構だし、むしろ遅きに失した感があるわけです。これは結構なのですが、とりあえずは14ページの下の図で見るのが 一番わかりやすいのかもしれませんが、縦軸、横軸で要するにどういう基準で利用調整地区を設定するかというところの考え方として、貴重性とか、原生性が高いもの、あるいは脆弱性の高いものという、こ れはわかりやすいのですけれども、逆にそういう場所じゃなければ、よほどそれが言える場所じゃなければ利用調整というような手法、発想に基づく行政的なコントロールができなくなってしまうとなると、 やや残念な気もするわけで、私の気持ちとしては、利用調整という手法はもっと原理的といいますか、汎用的なもので、この環境との共生ということを考えた場合にいろいろなレベルでいろいろな形で使い得 るものであると。
 だから、脆弱性が高いとか、貴重性が高いところでも使えるだろうけれども、それはいわば調整の中身の強度の話であって、もっと緩やかな調整、しかしノーコントロールじゃなくて、計画的なコントロー ルをするのはもっと必ずしも貴重性が高度でないとか、脆弱性が高度でない地区でも、あるいは地方自治体がいろいろな工夫をしようとしていることを今念頭に置いているわけですけれども、えてして国が自 然公園法の中にきちんと一定の基準でこれ以上じゃないとつくれない、使えない制度としてこういう制度をつくってしまいますと、反射的な効果としていろいろな自治体が工夫しようとしてきたことを制約 してしまうという思いがけない効果もあるところなので、だからこの手法自体は汎用的にいろいろな所で使えるものだと。むしろ今後の環境と行政ということを考える場合の基本的な仕事だと。ただ、今回は 国立公園、国定公園の一番大事なところでかなりきつい調整も可能にするという仕組みとしては導入するんだというふうに制約しないような形で広げるような形で制度化することが望ましいのではないのかな ということが一つございます。
 あとは運用の具体的なあり方に関しては、いろいろな法律問題が生じ得るところで、恐らくこれはどういう基準でどう調整するのか、調整というのは結局あんたは入っちゃいけませんよというようなことを どっかでやらなければならない。そういうのを先着順で早いもの勝ちで一定限度きたらだめよとやるのか、それとも利用の趣旨とか、程度とか、あるいはガイドつきの利用なら認めるけれども、そうでないの はだめだと。そういう機械的な運用じゃなくて、柔軟な運用の方がいいと思うのですけれども、これはえてして恣意的な運用だと言って断られた方は非常に腹が立ちますから、これは行政処分で争うのかとか、 どっさり法律問題もついてそうなんですけれども、この辺は立ち入りませんが、基本的には柔軟な運用であって恣意的な運用ではないものを可能にする。これは結局情報の公開とか、透明性とか、そういうこ とで担保として、機械的に何人以下とか何日、何時間以下みたいな余り機械的な基準によるべきではないのではないか、そうお考えではないんだろうと思うんですけれども、ちょっとその辺ご質問を兼ねて申 し上げたいと思います。そういうふうに単に機械的なものじゃない、管理手法というのは結局営造物公園ではないんだけれども、そういうものに近づけていくと。
 ついでに伺うならば、ご説明がなかったんですが、参考資料の一番最後に資料5というのがついていて、これまた後からご説明があるのかな、平成14年度に予定している云々で、1番の項目の説明の文書 の最後の方に営造物的管理手法の導入可能性というような言葉を発見したんですけれども、これは例えばどんなイメージなのかというのも後で伺わせていただければと思います。
 長くなって恐縮ですが、2番目の協定制度ですけれども、これもまさにもっと早くあってしかるべき手法だと思いますけれども、しかしこれもいろいろ法律的に考えると、難しいところがあって、こういう のは法的に言うと契約的な性格のものなのだろうとは思いますけれども、契約の自由があるのか、協定なるものの中身を相当柔軟に場所、場所に応じて、あるいは土地所有者の意向を尊重して、場所によって 全然違うような協定があり得るというふうな柔軟性をもって考えていいのか、かなり確立的なモデル協定というもの、恐らくそっちなんじゃないかと思うんですけれども、役所で用意してそれを一括でのむか、 のまないかみたいな話になるのか、これは両方一長一短があるので、そう一概に言えないのですけれども、これからの時代は規制手法だけではない、もうちょっと一歩広げてパートナーシップということを踏 み出されている以上は今までの役所の常識を超えて柔軟なその地域の情勢に一番合致したものを協定として認めると望みたいところですけれども、これは先ほどご指摘があったように、環境省の認可で、しか も租税特別措置にリンクするなんていったら、がちがちの制度をつくらないと説得力をもたないと、本当に悩ましいところだろうと思うんですけれども、要するに何をどの辺を獲得目標としていくかというこ とをもうちょっとご説明いただければありがたいと思います。こういう新しい制度ができてくると、これは行政法の教師としては講義の種ができてどっちに転んでも非常におもしろい材料ではあるんですけれ ども、理論的にも実務的にも大事なところじゃないかなと思います。
 あと同じように、今度は公園管理団体が協定の面で利用調整地区の運用の面でもかなり主役的な役割をすることになるんでしょうけれども、この団体もかなりかたくNPO法人、公益法人、法人でなければ ならないということを前提になっているのか、かなりいい加減ということはないんですけれども、いろいろなNPO、必ずしも法人格を取得してないけれども、地域で実績があるとか、そういうものも育てて いくようなスタンスで臨むのか、ちょっと指定法人的発想でいくと、硬い制度になりそうな予感がします。もうちょっと教えていただければと思います。長くなって恐縮です。
 
渡辺委員長  ありがとうございました。
 大変的確なご指摘をいただきましたが、事務局どうぞ。
 
小林自然環境局長  まず、1点目の利用調整地区のことでございすけれども、余り厳しく用件を規定してしまうと、いろいろな自治体の工夫を制約することになるからということでございました。ご意見を受けとめまして少し 考えてみたいと思いますけれども、法律で規制するだけの意義といいますか、そういうこともありますので、全くフリーでどこでも環境大臣が思ったところに利用調整地区ということが指定できるというわけ にもいかないだろうというふうに思っております。何よりも土地利用者の了解を得られなければならないわけですから、ある程度生態系保護という自然環境保全という観点でどうしても必要というところ、そ の辺の用件というのは定めざるを得ないかなというふうに思っております。
 それから、2点目ですけれども、具体的な調整の仕方、できるだけ柔軟でかつ恣意的でないことはなかなか難しい課題でございますが、先生ご指摘のとおり透明性の高いやり方ですね。結局最終的には抽選 とか、先着順とか、そういう形になろうかと思います。
 それから、協定のことですけれども、ご指摘のとおりどうしてもこの協定制度をつくるというところは、最初にご説明を申し上げましたように、例えば相続税の問題とか、そういうことで協定を結んで自然 保護を図る、そういうことに協力している方に何らかの特典を与えることによって自然環境保全が図られるというところがねらいでございますので、これは協定なら何でもいいということになりますと、ねら っているところがぼやけてまいりまして、むしろそういう制度だったら任意でやればいいじゃないかということになります。わざわざ法律事項として協定制度をつくるということで、今ちょっと考えています のは、森林の伐採を制限すると、そういうことで少しいろいろな税制の面で優遇がとれないかというようなことをねらっていますので、ある程度伐採制限というようなことは最低限の用件として考えるといっ たようなことを考えてございますし、それから管理団体につきましては、これは法人でなければならないとは思いますけれども、最近はNPOというのも法人格を取得できていますので、NPO法人というと ころまでは射程に入れて考えて、そんなところまで考えております。いずれにしても、人格がないところとは行政体として協定を結ぶというところまではいかないと思っていますが、そのようなつもりででき るだけ緩やかなところでも環境保全に協力してくれる団体とパートナーシップを組みたいと、こんなふうに思っているところでございます。
  
渡辺委員長  ありがとうございました。
 どうぞ、ほかの委員の方。
 
服部委員  今の磯部委員のお話は法律的にということだったんですけれども、行政的に考えますと、課長の説明にもありましたけれども、自然公園に民地があるというのを初めて知ったみたいな人が結構いるという話 があったんですが、新たに利用調整地区という新しい名前の地区をつくるというのは、多分特別保護地区と特別地域、地域、地区と2つに分かれているんですけれども、特別保護地域という人がたくさんいた り、特別地区といったりする人が結構いたりする。そのぐらいのレベルのところで、新たな地区という名前をつけるような地域をつくっていくというのはいかがなものかと。だから、自然公園というか、国立 公園を国民にわかりにくくしてしまうのではないかという気がしまず。
 この利用調整地区が何でいるかというと、イメージからいくとどうも余り入ってくれるなというよりも、入るなという感じの性格を持ったようなところじゃないかなと。自然の景観とか生態系を保全するの が最優先で、最優先と言ったらちょっと語弊があるかもわかりませんが、そっちが優先していて人の人為が入ったり、利用が過多にならないようにというようなことよりもむしろ入ってくれるなみたいな感じ のところのイメージが今の説明の内容から言うと強いんですよね。
 知床のあそこの地図で話があったのも、入らない方がいいというような感じが強いので、そのあたりに利用調整と言ったら、磯部先生がおっしゃいましたけれども、どういうふうにコントロールするのかと いうのが非常に難しい。現場の事務所が難儀するというのか、今話がちょっと違うかもわかりませんけれども、京都の桂離宮とか、修学院離宮が規制していますけれども、ものすごく利用に対して、不便とい うのか、煩雑になってる。そのための人員だって要るしということになるんで、国立公園でそういうことをやって、自治体としてどうなるのかなというのは甚だ不安というのか、私はこういう奥地保護区みた いな地区指定はしない方がいいんじゃないかなと。もしもそれがさっき言ったように景観なり、生態系を保全したりするのに非常に重要なところだということは人為のできるだけ配慮するという意味であれ ば、自然環境保全法との絡みをもう少しうまく活用して、区域の指定の見直しみたいなことをしていった方がむしろいいのかなと。基本的には、地区の名前をどんどんふやすというのは役人の世界では普通な のかもしれませんけれども、国民にとってはわかりにくいということです。営造物と地域制との課長の説明では、地域制なるがゆえに問題点が非常に難しいところがあるんだというふうな観点でおっしゃっている ように聞こえたんですけれども、営造物を狙うとすれば、土地を持つことによる難しさと言いますか、土地を営造物的に持つことが管理上物すごく難しいという反面もあるので、むしろ地域制の、これも先ほ どありましたけれども、地域制の有利な点をうまく活用するということで私有地の減免というよりも、保護、援助といいますか、プラス何かを出すという方向が入った方がいいのかなと。税を減免するよりも 何か手を差し伸べたり、補助金を出すとか、何かそういうふうなことが考えられないのかなあというのがもう一つです。
 それから、もう一つはこれも現場の方になるとものすごく難しいと思うんですけれども、土石等の集積ですね。これの規制は非常に大きな問題なんだけれども、これは管理をするのは難しい。これを具体的 に法律で規制するのは簡単なんですけれども、それを維持して管理を全うするのはものすごく難しいし、敵はそれを見越した上で網の目をくぐりながら捨てていくとか、堆積するという常套手段をとりますの で、風致地区なんかで経験があるんですけれども、ものすごく難しいというあたりをどういうふうに処理するか、古都保存の関係とか、風致地区でそういう例から言うとものすごく難しいので現場の体制が伴 うのかなあというのがちょっと心配になりました。
 大体そんなところでございます。個別の問題で恐縮です。
 
渡辺委員長  事務局から、その際に磯部委員から資料5の、今もちょっと出ましたが、営造物的管理手法の導入可能性を調査すると、この辺へのお答えもあわせてお願いをします。
 
田部国立公園課長  そもそも新しい地域を指定するよりも自然環境保全についてのような制度をしたらどうかというような点でございますけれども、今我々が考えておりますのは、全く利用を排除するということを国立公園の 中では考えておりませんで、国立公園ということでの非常に原生的な自然であっても、全く利用しないんじゃなくて、むしろそれに接することで感動を得るという自然公園の利用を維持したいということを考 えております。そのために利用調整というような言い方で、原則として利用ができるというようなことの地域でございます。それは屋上屋を重ねるというところなんですけれども、そこは必要性ということで のご説明とわかりやすさをPRしていくといったようなことで対応しなきゃいけないのかなと思っております。
 それから、営造物と地域制ということですが、その地域制で難しさはありますが、それを営造物公園にしようということはさらさらなくて、地域制の制度の中でどうやっていこうかというところを考えてお ります。税制的な減免の措置ではなくて補助とか援助というような形での手を差し伸べた方がいいんじゃないかということでございまして、それについては先ほどグリーンワーカー事業といったような形で の支援というのをできるだけ広げていきたいということを考えておるところでございまして、制度的になかなか補助とか援助というのを取り込んでいくのは難しいのかなと思っております。
 それから、物の集積の関係ですけれども、まさに管理の難しさはご指摘のとおりだと思います。しかし、一方でこういう対応をとらないことによる問題というのも非常にあるところでございまして、網の目 をくぐってくるようなものに対する対策、それについては先ほどの管理体制をどうしていくかということもステップになってまいりますけれども、何とかやっていく対策をこれから考えていきたいと考えてお ります。
 それから、14年度の検討事項を資料5の中で幾つか挙げております。これは先ほどのA3の表自体が今まさに急いでやるべき課題ということを縦に書きまして、法改正を要する対策でありますとか、その 他の対策で私どもすぐにやっていこうということを示しているものの中で、事業、調査の実施というところに書いてあるものを列記させていただいたものでございます。
 したがいまして、1番の生態系の調査の話、それから山岳浄化ということ、山小屋関係のトイレの補助金の話、グリーンワーカーの話等が出ているところでございます。そういう趣旨でございまして、こう いう事業を今予算措置ということでの新規要求とか継続要求をやってる中ということがあります。そこで一番頭にあります生態系特定管理手法、検討調査の実施の中で、先ほど営造物的管理手法の導入可能性 を調査するという文言でございます。
 予算を要求する時期と今法律的な検討をしている時期のずれがあるもんですから、言葉づかいがちょっとずれているんですけれども、考え方といたしましては先ほどの利用調整地区を指定し、それを管理運 営していく上での先ほど言われたようないろいろな問題をどう具体的現場に落としてやっていくかということを検討するための調査という意味でございまして、利用調整地区の管理自体が土地の所有者とも話 をつけた上での管理になるので、しかもやり方が利用のコントロールといいますか、人の数をコントロールしていくというものであるものですから、営造物的管理手法という言い方をしているという程度にご 理解いただければと思います。
 
小林自然環境局長  ちょっとだけ付け加えますけれども、物の集積のことについては特別保護地区でも既に大臣の許可制になっているんですけれども、特別地域でどうしても目立ってくるものですから、違法投棄なのにこれは 貯めているだけだと言い張られると、なかなか処理ができないので、そこのところは管理の大変なところはよくわかっているんですけれども、ここは自然公園の風致、景観を保護していく、ひいては生態系の 保全にも役に立つようなことでやらざるを得ないと思っているところです。
 それから、新しい利用制限の地区をつくるということに関しては、今、公園課長からもご説明しましたが、非常に時間をかけてPRするということが一番大事です。既に夕張岳あたりでも地元で制限して1 年に一回だけとかいう形でやっているところがございますし、国立公園の中でもまさに尾瀬などは歩道以外のところには行かないようにと、景鶴山、平ヶ岳の方には入らないようにということが一応普及し たことで徹底してございますので、むしろ地区の名前がわずらわしいとかというよりも全国あちらこちらにたくさんこういうところをつくるわけじゃなくて、自然環境に入り込みによって大きな影響を与える 所を中心に行うということですので、そこの地区でのPRというか、そういうことを重ねてやっていきたいと思っています。
 服部委員ご指摘の自然環境保全法の中に立ち入り制限地区というのがございます。現在原生自然環境保全地域にそういう制度ができることになっていますけれども、南硫黄島という東京から1,300キロ離れ た島に1カ所だけ人の立ち入りを拒む場所がございます。それとは全く違う制度だということを我々としては考えているところでございます。
 
渡辺委員長  ありがとうございました。
 大沢委員。
 
大沢委員  全体としては生物多様性国家戦略を踏まえて国立公園の考え方を整理して大きく2つに分けると、それで自然環境保全面への期待というのが一番目に挙がっているというのは非常に積極的に支持したいと思 うんですが、ただ具体的にそれをどうやって実現していくのかというところが気になるんですが、内容を見ていくと自然環境保全面というあたりのところの方策としては、例えば特別保護地区をふやすとか、 あるいは国立公園の指定をふやすとか、そういうことをお考えなのかなと、例えば5ページの地種区分の割合とか、あるいは植生タイプ別の国立国定公園の指定状況というのを見ると何となくそういう手段で 自然環境保全といいますか、生物多様性の保全というのを考えていこうとしているのかなと。つまり保護区の拡大という意味ですか、何かそういうことをもしお考えなのであれば、あるいは指定地域が現状で はなかなか具体的に特定の生態系を保全するとか、特定の生物種を保護するということにとって余り有効でない場合が大分昔に指定したものでしょうから、現実にはそういうところが生まれてきていると思う のですけれども、そういうものの指定の仕方を変えていくとか、何かそういうことを考えておられるのかなと思ったんですけれども、もしそうだとすれば例えば特定の国立公園の中にどういう重要な生態系が あるとか、どういう生物種が生息しているとか、そういう生物多様性保全ということを念頭に置いてデータ整備といいますか、そういうものが具体的に策として挙がってくる必要があると思うんですよね。そ うでないと言葉としては言えても具体的に何をするのかというのが見えてこないところがあって、そういう意味では例えば群落のレッドデータブックなんていうのもありますし、特定種の分布とか、そういう ことも調べておられるので、何かそういう目標を設定した上でのアプローチというか、そういうことが欲しい気がします。それでもしその辺を具体的なステップとして考えておられるようなことがあるのでし たらちょっと教えてほしいんですが。
 それ以外のことについては、主として利用面に関する規制とか、そういう形だと思うんですが、それは何か受け身というか、確かに適正な利用の強度とか、そういうことはもちろんあるのだと思うんですが、 それをある程度規制してやっていく、先ほど来話題になっております利用調整というのは、韓国の国立公園ではたしかサバティカルとかいう制度があって、登山道によって今年はこれは使うけれども、こっち は使わないとか。そういう形で人為インパクトを軽減するような策をしていましたけれども、それは特別な指定じゃなくて、利用の仕方の調整みたいなのでやっていたように思いますけれども、そういうもの も場合によったら使えるんじゃないかなという気がします。
 それから、パートナーシップの確立というところが先ほど来問題になっている、その営造物的管理手法というのと関係してくると思うのですけれども、私は営造物化するというのが必ずしもよくはないんだ という根拠をちょっと知りたいんですが、国立公園の指定地域が現状で指定されている地域が余り適当でなくて、現在の例えば特別保護地区と同等とか、あるいはそれよりも良好な部分があったとしても、そ れが林野庁との調整の中でうまく拡張できないとか、そういうことが現実に起こっていたりして、その辺の現場での区域指定のしっかりとした見直し等をしていく上でも、それが営造物的なものになれば、自 分の土地ですから自由にできるようになるのかなと、ちょっと余り知識がないんで、それほど単純ではないのかもしれません。もしそうだとしたらちょっと理由を説明してほしいです。 以上です。
 
渡辺委員長  ありがとうございました。
 
田部国立公園課長  最初に公園の地域、区域を増やすとか、特別保護地区を増やすことを考えているのかということと、そうした場合の環境情報等の整備、あるいは検討とかそういったことをしっかりやるべきではないかとい うようなお話だと思ったのですけれども、公園区域を増やすとか、特別保護地区を増やすということは、必要なところがあれば今後ともやるべきことと考えておりまして、随時やっていきたい。きょうも大山 隠岐国立公園の近くの部分での拡張をご審議いただいたところでございますけれども、なかなかそれは相手もある話で難しい状況がございます。それから、それをやる上では非常に環境データ的なものを積み 重ねて重要性を説明して、説得しなければいけないということがあろうと思います。ということでそれは地道にやっていくことだと考えておりまして、今回の緊急にという部分ではむしろ地域を広げるという よりも管理の質を高くしていくといいますか、新しい手法を加えていくというところに重きを置いたところを現在考えているところでございます。
 それから、利用面で規制をすることで受け身であるという話はちょっと私は十分理解できなかったんで申しわけないんですけれども、利用調整ということで今韓国の手法等をご紹介いただいたところで、そ ういったのも一つの利用の仕方の調整ということで参考にさせていただきたいということで考えているところでございます。
 それから、営造物化するということでのどんな問題があるかというようなお話がございました。一部今の公園の仕組みの中にも土地を取得していくような民有地の買い上げ、制度的な対応、あるいは公共事 業の中で施設の用地を買っていくというような対応をしておりますし、また引き続き国有林から土地の買い上げを受けていくといったようなことでの対応をしておりまして、営造物的な部分、どうしても必 要な場所についてはそういうのをやっていくという方向はありつつ、一方で地域制の仕方をやめるというのではなくて、むしろ今の地域制の規制を中心とした手段に新しいパートナーシップ的な手法でありま すとか、協定でありますとか、先ほどの利用調整の手法でありますとか、従来の規制的手法プラスそういったものを加えてやっていくという、より地域制の公園の新しい手法も入れた形での運営というのをや っていくことを考えているところでございます。
 ちょっとお答えになってないかもしれませんがお許し下さい。
 
渡辺委員長  ほかにいかがでしょうか。
 川名委員。
 
川名委員  最後に配られました自然公園のあり方の検討について、ちょっと気になるところがあるのでお伺いします。真ん中のところで、このことから始まるパラグラフのところで今後予想される国民生活及び経済生 活の変動及び生物多様性の保全の必要に応じて公園のあり方云々とありますけれども、このとき国民生活及び社会経済への変動というのはどういうことを想定されているんでしょうか。また、何年後を考えて、 多分公園利用者が増えるということをおっしゃりたいと思うんですけれども、その時点はいつを想定されたのかとか、余暇時間がどのくらいなのかとか、高齢化がどのくらい進むのかとか、経済成長がどのく らいになったのかということは想定されているんでしょうか。ちょっとお伺いしたいですけれども、何となく並列になって、まるでよくお考えのように書かれているので、ちょっとでもお考えだったら失礼だ と思ってお伺いしたんですけれども。
 結局これはこういうことを書いてありますけれども、要するに国民生活やなんかが変ってきて、利用者が増えているけれども、それに対して生物多様性の保全をするために公園はどうあるべきかということ を検討しているという感じがしまして、何かちょっとこの文章と今検討している内容とがちょっと乖離があるような気がしたんでお伺いしたんです。
 
田部国立公園課長  今回の自然公園のあり方の検討というところで、一つは緊急な対応ということを考えている部分と、もう一つは長期的なこと、大きなことを考えているという2つがあります。
 国家戦略ということで策定が進んでおりまして、それに対応して大きく変化、それに向けての対応というのをこれは全体として考えていく部分ですけれども、一方で即応できる部分ということで緊急に対応 をとるべきことというものが二本立てみたいな形になったものですから、その辺がちょっと混乱しておりまして、こういう書き方になっているというようにお許しいただければと思います。
 したがいまして、国民生活及び社会経済の変動及び生物多様性の保全の必要性に応じてということで、生物多様性の保全を重視しておりますけれども、ほかの部分についても自然公園のあり方への影響があ り、期待が変ってきているということもあり、そういうのも踏まえて総合的にご検討をお願いしたい。総合的にご検討いただく部分は中間答申の後というような形で考えているところでございます。
 
小林自然環境局長  川名委員のご質問ですが、これまであまり自然公園、国立国定公園と国民生活とか社会経済活動というのとのリンクの分析というのは余りやったことなくて、非常に弱いんですけれども、前回の部会のとき に少しご説明しましたように、自然公園に対する期待が国民の意識調査の中から少しずつ変ってきているとか、それからまた百名山、特定の山に非常に集中して人が来るというような、それも中高年が来る、 そういうような状況とか、その辺を漠然と思いまして、そういう中で自然公園というのは今後100年先を見通すのは非常に難しいですけれども、10年とか、20年とか、そういう先を見て、どういうふうに 国民の期待に応えていくかというような程度のつもりを大げさに書いたと、こう理解してください。
 
川名委員  その数字を利用者がどのくらい増えるという数字をおつくりにならなくても、何か昔の国土庁とか、ほかのところで使っている数字を代用されてもよくて、なんかそういうものがあった方がちょっと説得性 が強まるんじゃないかと思ったんです。
 
渡辺委員長  和里田委員。
 
和里田委員  先ほどの大山のときにちょっと発言させていただいたものが反映されているので非常にありがたいと思ったんですけれども、ただ登山道整備の際の問題についてですが、先ほどお話ししましたように、諸施 設を整備する際もそれを置いたことによる崩壊その他に及ぶ事例も多々ございますので、そういうものも含めて扱っていただく必要があるんじゃないかというふうに思っております。
 それから、公園管理団体の指定制度の問題ですけれども、このグリーンワーカー事業はいわゆる補助ありきなのか、それとも原則としてまずボランティアででもやるというような意気込みを前提において、 そしてそれを支えるという次の段階としての助成というような形なのか、金目当てにこういうものがどんどん出てきてということまでを前提に置いているのか、その辺をよく整理しないと後で困ることになるんじゃないかと思います。
 
渡辺委員長  ほかにいらっしゃいませんか。
 
熊谷委員  私自身がまだ未整理のままご質問するようなことになって申しわけなく思っているんですけれども、この公園のあり方小委員会の諮問を受けたときに私は一番最初に感じたのは、そもそも今のこの自然公園 法はもともと土台が昭和6年の国立公園法であって、そのときには風景の利用と保護を図るということであって、必ずしも生態系とかバイオダイバーシティーという概念は取り込んでなかったと私は理解して おります。したがいまして、そもそもそういうことを考えてないものの中に法改正で今回取り込むというところをどういうふうに整理したらいいのかというのが私自身の中でも今課題なんですが、それで風景 の保護協定ということは大変お考えになったと思います。つまり自然公園法の17条、18条でははっきりと特別保護地区は景観、それから特別地域は風致、そして普通地域を風景と、一応そういう分け方をし ておって、それで多分生物多様性に対しては、私は特別地域とか、特別保護地区、景観風致の維持のところではかなりの部分多様性が現行でも保全できるんだろうというふうなそういう位置づけもあっていい と。
 残ってくるのが先ほどの利用者のコントロールだと思いますけれども、17条、18条の規制というのは大変厳しい内容になっておりますから、そうすると資料にもごさいましたように二次林、あるいは里山、 こういったようなところ、こういった場所については、必ずしも一般の土地所有者である民有地が含まれる可能性が高いと。そこの部分に何とかコントロールなり、あるいは新しい方法を持ち込もうというこ とになってくる。ましてそういうところは実際に土地を買い上げようと、国有地化しようとしても現行では非常にプライオリティーが低い、そういうようなところではないかというふうに思っているわけです。
 それで、その場合に今回はっきりとその辺にターゲットを絞って議論を進めていくのか、それとも自然公園全体の中で保護とか利用とか風景、景観と多様性を調整をとろうとしているのか、その辺が私とし てはちょっとまだよく理解できておりません。
 それで、もしそういうような民有地を含めて相続税とか、何かまでもし議論をされるんであれば、私は環境省だけではなくて、林野庁とか何かと調整をとりながら話を進めていく必要があるなというふうに 思っております。以上でございます。
 
渡辺委員長  ありがとうございました。
 何か事務局から。
 
小林自然環境局長  前段の部分のことだけお答えをしておきたいと思うんですけれども、自然公園法の目的条項の中には風景の保護という形で入っているんです。それで実際問題として、風景の中の例えば動物とか植物とか そういうような構成要素という形の中で、現在運用してきてまして、例えば森林ですと伐採率とかそういうのを決めてますし、それから特定の高山植物などは環境大臣が指定する植物の採取規制というような もの、ですから現在の我々が今考えているのは、多く目的規定を変えて生態系の保護という形で自然公園法を変えていくという作業は先送りの議論にしたいと思っていまして、一つの風景の構成要素としての 植物、動物の保護というものを考えるという中でとりあえず考える。2月以降の抜本的なところでご議論いただいて直すということであれば、目的のところまでいきますけれども、まだそこまで大議論をする だけのちょっと時間の余裕がないので、生態系の保護というよりもむしろそこに生態系の構成要素である動植物というのを自然公園法の中に取り込めればというふうに思っています。
 後半部分につきましては、ご指摘のとおりだと思います。
 
渡辺委員長  立花委員。
  
立花委員  今のお話と似たようなところかもしれないんですけれども、きょうのご説明がありました中では、主として今ある状態に対しての利用と管理の方法について新しい方策を導入するというところで何か理解で きた気がいたします。
 もう一つ常々気になっておりまして、どこかで何とかする方法があれば、これこそ直ってほしいと思っていることが、これは国立、国定公園に限らず自然地の中でつくられる公共事業の事業の方法、建設に かかわる手法と技術の問題、それからそれぞれの関連の設計段階から完成、その後に至るまでのところで生物多様性の国家戦略というレベルのものが国家的要請として出てくれば、これからならばできるだろ うと期待していることが多々あるわけです。その辺については2月以降引き続き検討が続くものかどうか、それだけ確認させてください。
 例えば、小さな道路から大きな道路まで、それから建設物、これは民間のものから、国の施設まで。あらゆる柵一つに限っても生物多様性というのは非常に細かいところから大型動物まで、非常に小さい土 壌中微生物からかかわってくるわけですので、工事中のことから気になることばかりですので、よろしくお願いします。
 
小林自然環境局長  私どもは非常に短絡的に考えていまして、当面の政府の方針として、自然公園法の中に生物多様性の考え方を少し入れなきゃいけないという、当面の法改正のことだけで頭の中いっぱいでありまして、次のこ の中間報告をいただいた後、わりあい自由度が広くございますので、むしろ2月以降のご審議のときには、いろいろな課題が山ほどあると思います。そういう意味で諮問も自然公園のあり方というのは非常に 幅広いテーマで検討、ご審議をお願いしてございますので、むしろ最初にいろいろな課題を挙げていただいて、それを一つずつこなしながら、できるところからどんどん現実に移していく、そういうようなや り方で進んでいきたいなと考えております。
 
渡辺委員長  藤原委員。
 
藤原委員  法改正を検討している事項の中に、風景保護協定制度というのがございます。その中で里山やあるい阿蘇の野焼きなどもできるだけ協定しながら続けてほしいという話が出てくるんですが、実は協定をする ときにできればどのようなところまでの管理だということで協定していただきませんと、物事には過度にし過ぎてしまいますと全くだめになることがあります。野焼きが非常に有名なんですが、実際に調べて みますとエロージョンが激しくて下の方にまで泥が流れております。これは生物多様性の面ではいいんですけれども、土地利用としては全部を野焼きにしてしまいますと、本当に斜面が流れているところは幾 つもございますので、どのあたりまでというそういうものを行うかを環境省として、ある程度把握しなくちゃいけないと思います。雑木林に関しましてもきれいにすればいいということで、落ち葉も全部とっ てしまっては裸地になってしまう。いわゆるまさに古い昔の公園景観にしてしまいますと土壌動物もなくなって、裸のままになってしまうんです。昔の方は落ち葉を使う程度にやってらっしゃったんですけど、 そのあたりの管理法もある程度役所として考えておかれなければいけない研究課題になりますので、この制度を入れられる時には気をつけていただきたい。
 それから、もう1点税制のことが先ほどから問題になっているんですけれども、私は何となく感じましたのは、環境省として生産緑地的なもの、かつての農林省が生産緑地として租税についての措置をしま したけれども、そういうものを自然に対してこれからつくっていかられるとしたら、これは環境省としては非常に大きいものだと思うんです。
 各県、東京都の場合も世田谷区などは随分模索していましたけれども、結局税制については、壁が破れなかったということを聞いておりますし、せいぜい補助費を出すだけで税金のかわりになる。でも、そ の補助費に対してまた税金がつくという悪循環になっています。そういう意味での生産緑地法的なものができるのであれば、これは画期的なことだと思ってますので、よいご検討をお願いしたいと思います。
 
渡辺委員長  ありがとうございました。
 それでは、そろそろ時間になりました。予定した時間を少し超過をいたしましたが、きょうはこの辺で閉じさせていただきまして、念のために次回の日程、時間も含めてお知らせをしていただけますか。
 
田部国立公園課長  次回でございますけれども、年が明けて1月16日水曜日ということで予定しております。中身といたしましては、有識者の方々のヒアリングということで、現在4名の方ぐらいを予定しているところでご ざいます。その後中間答申案の提示をさせていただきまして、ご審議をいただきたいと考えております。
 そういうことで、ちょっと時間につきましてはヒアリングの時間をどの程度にするかも絡んでまいりまして、まだ何時からということは確定しておりません。
 
渡辺委員長  スタートは1時ですか。
 
田部国立公園課長  実は午前中からという案も出ておりまして、申しわけないんですが、ちょっと……。
  
渡辺委員長  それは早くしていただかないと。ヒアリングの方への連絡もあるわけでしょう。
 
田部国立公園課長  恐れ入ります、まだヒアリングの方々には調整しておりませんので、一部の方に1時というのが入っているということでございました。1時からということでさせていただきたいと思います。
 
渡辺委員長  終わりが少し長くなるかもしれないということですね。
 
田部国立公園課長  恐れ入りますけれども、また5時ぐらいということで、お願いしたいと思います。
 よろしくお願いいたします。
 
渡辺委員長  どうも今日は長時間にわたりまして、貴重なご意見をちょうだいし、ご審議をいただきまして、まことにありがとうございました。
 それでは、明けて1月16日午後1時ということでよろしくお願いをいたします。

(閉会午後4時27分)