中央環境審議会自然環境部会(第11回)議事録

開催日時

平成20年10月21日(火)9:30~12:00

開催場所

経済産業省別館10階 1020会議室

議題

  1. 開会
  2. 議事(諮問案件)
    1. (1)国立・国定公園総点検事業の実施状況について
    2. (2)生物多様性をめぐる最近の動向について
    3. (3)エコツーリズムをめぐる動向について
    4. (4)改正温泉法について
  3. その他
  4. 閉会

配付資料

資料1
「自然公園法の施行状況等を踏まえた必要な措置について」の検討について
資料1(1)
自然公園法の施行状況等を踏まえた必要な措置について(諮問)
資料1(2)
自然公園法の施行状況等を踏まえた必要な措置について(付議)
資料1(3)
自然公園のあり方検討小委員会の設置について
資料1(4)
自然公園のあり方検討小委員会の運営方針について
資料2
国立・国定公園をめぐる状況と課題について
資料3
国立・国定公園総点検事業の実施状況について
資料4
生物多様性をめぐる最近の動向について
資料5
エコツーリズムをめぐる動向について
資料6
温泉法の一部を改正する法律の概要について

議事録

午前9時33分 開会

○国立公園課長補佐 予定の時刻となりましたので、中央環境審議会自然環境部会を開催していただきたいと存じます。
 なお、本部会委員に異動がございまして、桜井泰憲委員におかれましては野生生物部会に所属しておられましたが、9月18日付で自然環境部会にも追加指名されておりますので、今回の部会よりご参加いただいております。
 では、会議が始まります前に、お手元にお配りした資料の確認をさせていただきます。資料一覧に沿って確認をさせていただきます。
 資料1、「自然公園法の施行状況等を踏まえた必要な措置について」の検討、(1)自然公園法の施行状況等を踏まえた必要な措置についての諮問文、(2)同付議文、(3)自然公園のあり方検討小委員会の設置について、(4)自然公園のあり方検討小委員会の運営方針についてでございます。資料2、国立・国定公園をめぐる状況と課題について。資料3、国立・国定公園総点検事業の実施状況について。資料4、生物多様性をめぐる最近の動向について。資料5、エコツーリズムをめぐる動向について。資料6、温泉法の一部を改正する法律の概要についてでございます。
 資料に不備がございましたら、途中でも構いませんので、事務局までお知らせください。
 続きまして、環境省自然環境局で最近異動があった者の紹介をさせていただきます。
 事務局からは以上でございます。これより先の議事進行につきましては、熊谷部会長、よろしくお願いいたします。

○熊谷部会長 おはようございます。それでは、ただいまから中央環境審議会自然環境部会を開催いたします。
 前回は平成19年7月の開催でしたので、自然環境部会としては1年3カ月ぶりとなります。
 本日は、中央環境審議会に対しまして、「自然公園法の施行状況等を踏まえた必要な措置について」環境大臣から諮問がありましたので、本件について、自然環境部会で今後の検討の進め方も含めて審議させていただきます。また、あわせて、報告事項といたしまして4件予定されております。
 なお、本日10時30分より中央環境審議会総会が開催されることになりまして、私と山岸委員、鷲谷委員はそちらに出席し、当部会での最近の状況について報告することになっております。よって、諮問事項につきましては10時30分をめどに審議を終了させていただきまして、その後は環境省から報告事項について説明を受けることにさせていただきたいと考えております。限られた時間の中で、効率的な議事進行につきましてご協力をお願いいたします。
 それでは、議事に入ります前に、黒田自然環境局長からごあいさつをお願いいたします。

○自然環境局長 おはようございます。自然環境局長の黒田でございます。
 今日は朝から、またお忙しい中、お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。一言ごあいさつを申し上げます。
 今、熊谷部会長からもお話がありましたが、この自然環境部会、1年3カ月ぶりということでございます。また、野生生物部会との合同部会におきまして国家戦略の審議をいただきました。そこから考えると、昨年11月からですから、約1年、11カ月ぶりということになります。この約1年の間に生物多様性に関する内外の動きは、非常に大きなものがございましたので、簡単にご説明をさせていただきたいと思います。
 初めに、今お話しいたしましたとおり、昨年11月、合同部会でご審議をいただいた後、第3次の生物多様性国家戦略が11月27日付で初の閣議決定という形で制定されたところでございます。そして、今年に入って、6月に議員立法で生物多様性基本法が制定され、施行になりました。生物多様性の保全と持続可能な利用という、生物多様性条約を念頭に置いてそれを国内でどう実施するかという施策の基本となるような事項がさまざま定められました。後ほど条文をお手元にお配りしたいと思います。
 生物多様性国家戦略を閣議決定で昨年定めたのですが、この新たな基本法の下で法定の戦略にしなさいと、こういう規定が設けられました。そして、この1年間の内外のいろいろな状況の変化もございますので、これらも踏まえて、今後この基本法に基づきまして国家戦略を法律の物にする作業に取り組んでいきたいと考えておるところでございます。
 一方、国際的な面ですが、今年7月の北海道洞爺湖サミットに先立つ形で、5月に神戸でG8の環境大臣会合が開催されました。この会合におきまして日本が主導する形で、生物多様性のための行動の呼びかけ、コール・フォー・アクションを議論いたしまして、これについて各国の合意を得て、その中身につきましては洞爺湖のサミット本体の首脳宣言におきましても支持されたことがございます。
 それから、もう一つ大きなこととして、ほぼ同じ時期、5月でございますが、生物多様性条約の第9回の締約国会議、7,000人出席という非常に大きな会議でございましたが、これがドイツのボンで開催されまして、この席で次回会合、第10回の締約国会議を2010年10月に愛知県名古屋市で開催することが決定したところです。
 ご承知のとおり、この2010年は非常に重要な年でございます。生物多様性に関する世界共通の目標としての2010年目標の目標年でございますし、国連が既に国際生物多様性年にするということを決定している年でございまして、生物多様性に関しましては国際的に非常に大きな節目になる年です。そういう年の第10回締約国会議、COP10でございます。ちょうど2年後、先週の土曜日がちょうど2年前ということでございます。これからの2年間にわたって生物多様性に関する取り組みの充実・強化に取り組んでいきたいと思いますし、とりわけ大きな国際的なムーブメントもございますので、海外への情報発信を含めて国際的なリーダーシップを発揮していきたいと考えているところです。
 具体的にどういう形でリーダーシップを発揮するかを検討しておるところですが、日本の里地里山の経験を中心に据えて、アジアを初め世界各地における自然共生の知恵あるいは事例を分析・収集して、持続可能な自然資源の管理のモデルというものを構築していこうと。そして、これをCOP10において、「SATOYAMAイニシアティブ」という形で提案をして世界に発信していきたいと、こういうことを考えておるところです。
 さて、今日の審議会でございますが、そういう生物多様性の施策の強化というような流れもございますが、10月7日に環境大臣から中央環境審議会に対しまして「自然公園法の施行状況等を踏まえた必要な措置について」諮問をさせていただきまして、これを踏まえて開催をしていただくものでございます。
 国立・国定公園に対しても生物多様性施策の一層の充実が求められております。こういう観点も含めて生物多様性の保全、また自然とのふれあいに関する国民の期待にこたえられるようにしていきたいと考えておりますので、ぜひいろいろな角度からご意見を賜り、ご審議を賜ればと思います。
 どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございます。

○熊谷部会長 ありがとうございました。
 それでは、これより本日の議事に入らせていただきます。
 議題1、自然公園法の施行状況等を踏まえた必要な措置について(諮問)、議題2、検討の進め方についてを続けて進めたいと思います。限られた時間の中で効率的な議事進行についてご協力をお願いいたします。
 それでは、事務局より説明をお願いいたします。

○国立公園課長 ご説明申し上げます。
 まず、資料1(1)諮問文でございます。朗読させていただきます。
 諮問第247号、環自国発第081007001号、平成20年10月7日。中央環境審議会会長、鈴木基之殿。環境大臣、斉藤鉄夫。
 自然公園法の施行状況等を踏まえた必要な措置について(諮問)。
 環境基本法第41条第2項第2号の規定に基づき、自然公園の今後のあり方について貴審議会の意見を求める。
 諮問理由については、引き続き詳しく説明をさせていただくことで省略させていただきます。
 この諮問を受けまして、資料1(2)で自然環境部会に付議されているところでございます。
 引き続き、諮問の背景等について担当者より説明させていただきます。

○国立公園課長補佐 それでは、背景等につきましてご説明させていただきます。
 今ほど諮問内容につきまして課長からご説明させていただきましたが、まず諮問の理由の1つとして、平成14年の前回の自然公園法の改正の際に、5年後に施行状況を見て見直しをすることが規定されているところでございます。
 それから、先ほど自然環境局長のごあいさつで述べましたとおり、最近、生物多様性国家戦略ですとか生物多様性基本法といった生物多様性をめぐる大きな動きがあり、その中でも国立・国定公園に対していろいろな要請がされていると。そういったことを踏まえまして、今回の諮問に至っているということでございます。
 背景につきまして、パワーポイントの資料でご説明させていただきたいと思います。資料2をご覧いただきたいと思います。パワーポイントでご説明する中身と同じです。
 まず初めに、自然公園制度の概要につきまして、もう既にご存じかと思いますけれども、簡単にご説明させていただきます。
 自然公園の目的、すぐれた自然風景地の保護とその利用の増進を図ることが目的です。平成14年の法改正の際に、国の責務ということで、環境基本法に定める基本理念にのっとり、すぐれた自然風景地の保護とその適正な利用を図るように努める。国、地方公共団体、事業者、自然公園の利用者。それから、国及び地方公共団体に対しては生物多様性の確保を旨として施策をすることが位置づけられています。
 次のページでございます。自然公園の体系ですが、国立・国定公園、それから都道府県立自然公園でございますが、今回ご審議いただきたい中身といたしましては、国の関与のある国立・国定公園を中心にご議論をいただきたいと考えているところでございます。
 次に、公園計画制度の概要でございます。こうした自然公園につきましては、施設の計画、規制の計画と大きく2つの計画に分かれて、その両輪で成り立っています。これまで国立公園の管理につきましては規制の側面が強かったのではないかと、そういった指摘もされています。
 以上で、少し駆け足的でございましたが、制度の概要を終わらせていただきまして、続きまして、国立・国定公園の保護と利用の状況についてご説明をさせていただきたいと思います。
 初めに、前回の自然公園法の改正、平成15年4月1日より施行になっておるわけでございますけれども、それ以降についての主な動きを時系列的に整理させていただいております。
 最近の動きといたしましては、先ほど申したような第3次生物多様性国家戦略ですとか海洋基本法、さらには海洋基本計画、生物多様性基本法という、自然公園法に生物多様性をめぐる要請が高まっている。
 一方、自然公園法につきましては、平成17年に三位一体改革に伴う自然公園等事業における国と地方の役割分担の明確化、端的に申しますと、国立公園での補助金の廃止がございました。また、昨年には、尾瀬国立公園ですとか丹後天橋立大江山国定公園を指定するなど、保護地域の拡充にも努めているところでございます。
 続きまして、保護の状況でございます。
 国立・国定公園等の指定状況でございます。ここには都道府県立自然公園も入ってございますが、昨年、尾瀬ですとか丹後天橋立大江山国定公園等を指定するといったこともあり、合計で都道府県立自然公園も含めると国土の14.3%を自然公園でカバーしている。こういったところが生物多様性の保全の屋台骨と生物多様性国家戦略では指摘されておりますけれども、その由縁であると考えております。
 続きまして、重要地域で国立・国定公園等がどういったカバーをしているかということでございます。
 重要湿地はご承知のとおり、重要な湿地500カ所を選定したものでございますけれども、このうち約35%程度が保護地域に指定されている。国立・国定公園を合わせると約30%ほどになっております。
 それから、植生自然度(9、10)、自然性の高いエリアでございますが、それに関して、約4分の1を保護地域がカバーしており、生物多様性の保全にも非常に寄与しているのではないかと考えているところです。
 陸域を説明いたしましたが、一方、海域の状況です。8ページですが、藻場・干潟・サンゴ礁につきまして、カバー率を比較してまいりました。順番に藻場からですけれども、藻場に関して言うと約半分程度、それから、干潟ではこれがぐっと少なくなりまして、1割以下という形になっております。それから、サンゴ礁ですと約4割といった、陸域に比べると若干カバーに差異があるような状況が見られているところがございます。
 こういった保護上重要な地域につきましては、先ほど申しました公園計画の規制計画というところの中で保護を図っております。その地域の重要度に応じまして、特別保護地区ですとか第1種特別地域、重要度に応じまして保護の規制をかけているのが公園制度になっております。こうした規制につきましては、保護規制の中の行為は年間約4,000件に上ります許可により国立公園が管理されている状況にございます。
 続きまして、利用の状況についてのご説明をさせていただきたいと思います。11ページでございます。
 国立公園の大きな目的の一つの利用の面ですが、自然公園、これは都道府県立自然公園も含めてですけれども、ここ数年、9億人程度の利用者を受け入れているということでございます。このうち、国立・国定公園は約6億人で、自然公園利用者の7割程度を国立・国定公園が受け入れている状況にございます。
 こうした利用者を受け入れるために、利用施設を整備しているところでございます。例えば園地ですとか歩道、休憩所、こういったものを整備して利用者の便に帰することで整備事業を行っている。この事業のフローですけれども、公園事業は保護または利用のための施設計画を定めた上で、事業決定を行うことで規模を決めまして、最終的には事業執行者が詳細設計をもって環境大臣の認可あるいは同意を得た上で執行される形になっております。環境省直轄の場合は、事業決定をもとにして予算を獲得して事業を執行する形になっております。
 生物多様性国家戦略の中では、自然とのふれあいや環境学習の場、自然の仕組みを学ぶことができる貴重な場としてその役割、機能を強化、充実していく必要がある。また、自然とのふれあいを求める国民のニーズにこたえ、安全で快適な利用の推進の観点からの施策が必要であるといったことが指摘されているということでございます。
 環境省の直轄事業ですけれども、先ほど申しました三位一体改革を踏まえた国と地方の役割分担の明確化を踏まえまして、特に保護上または利用上重要な場所という形で整備を行っている状況にございます。
 国立公園の施設整備費の推移でございますが、平成16年から三位一体改革で国と地方の役割分担が見直しされた関係で、地方の国立公園の整備費がここでがくんと減っているのですけれども、その後若干ふえている状況もございます、三位一体改革の前後ではおよそ10ポイントほど、環境省事業の占める割合が高くなっている状況です。
 続きまして、15ページでございますが、環境省直轄事業施設の管理でございます。
 環境省で整備した施設は、まず土地の管理。それから、個別の施設を管理。この施設の中には保護施設、自然再生を行っているような場所もありますし、この下の写真が示すように、歩道ですとかビジターセンター、野営場といった公園利用の根幹にかかわるような利用施設を整備している状況にございます。
 国民の方々がこういった自然公園、自然の多い場所での利用についてどういった意識を持っているかでございますけれども、自然とのふれあいの機会の増加を求める声が約7割、それから自然の多いところへ出かけたことがあるといった声が約8割と、非常に自然環境に対して期待されているということでございます。
 一方で、自然の多いところへ出かけた際に不満を持ったことがあるという方が87%、約9割の方。この中には、施設関係ですとか維持管理関係のことに関しての不満の声がある。
 こういった自然とのふれあいを求める国民のニーズにこたえて、安全で快適な利用の推進の観点から施策が必要ということではないかと考えているところでございます。これは、内閣府の世論調査の結果から抽出しています。
 駆け足的になって大変恐縮でございますけれども、そうした保護及び利用をめぐる状況を踏まえまして、最近の国立・国定公園でどういった生物多様性保全への充実の要請があるかを、生物多様性国家戦略、生物多様性基本法、海洋基本計画の3点から抽出して整理しました。
 第3次生物多様性国家戦略の中では、生物多様性を保全するための屋台骨としての役割を担っていく。一方で、海域については、海中公園地区が非常に少ないのではないかとの記述もございます。
 生物多様性保全の観点から、自然公園が積極的な役割を果たすことが求められ、また、自然再生や里山保全などでは、能動的な管理のための管理運営の体制の再構築が必要ではないか。
 自然公園の利用、それから整備につきましては、自然とのふれあいや学習の場として機能の強化が必要であるといったこと。それから、利用の適正化ですとか安全で快適な利用の推進の観点からの施策が必要であるといった話。
 また、海洋生物多様性の保全につきましては、海域の生物多様性保全上重要な浅海域の生態系である藻場、干潟、サンゴ礁など、こうしたところで保護地域が少ないのではないかとの記述もございます。浅海域の生態系は開発などにより面積が減少しているほか、陸域からの環境負荷の増加によって質的な劣化が進行し、その再生や保全管理が必要であるといったことが指摘されています。
 また、野生鳥獣の関係でございますけれども、国立公園の自然植生が衰退して、自然生態系や景観を維持するためのシカの保護管理の実施が課題であるといったことが指摘されています。
 こういった現状と課題につきまして、具体的な施策として、国家戦略の中での整理でございます。海域における国立・国定公園の保護を推進するといったこと。国立公園の管理運営の一層の充実に向け、自然公園法の改正など必要な制度・体制の整備ということ。シカのような鳥獣に関しての科学的データに基づく保護管理ということ。外来種の放出規制について特別地区についての検討ですとか、自然公園利用の質の向上に向けた検討、取り組みを推進するといった話。さらには、海域の適正な保全及び利用を進めるために自然公園法を見直すといった記述もございます。鳥獣関係につきましては、科学的データに基づく保護管理計画を作成した上で順応的な実施をしていくことが必要ではないかといった指摘がされております。
 次に、生物多様性基本法でございます。生物多様性基本法の細かい中身につきましては、後ほど報告事項の中でご説明させていただきますので、ここでは、国立・国定公園に主に関連したところでございます。
 基本原則がございます。保全と利用を図っていくことで、その考え方として、予防的順応的取組方法ですとか長期的な観点、温暖化対策との連携といった指摘がされています。
 また、生物多様性基本法の附則の中には、野生生物の種の保存ですとか、森林、里山、農地、こういった自然環境の保全及び再生その他の生物多様性の保全に係る法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとするとの指摘もございます。
 続きまして、21ページですが、海洋基本計画でどのような指摘があるかということでございます。
 まず、重要な海域について重点的に対策を講じるということ。それから、生態系の特性に応じ、生物多様性を確保するための行動計画を策定するといった話。浅海域につきまして、藻場、干潟、サンゴ礁等については、海洋の生物多様性や環境浄化機能を確保し、海洋の自然景観を保全する上で重要な場所である。自然公園法、鳥獣保護法等に基づく各種保護区域の充実といったことが求められているということでございます。
 これは参考でございますけれども、海洋基本法の中では、海洋の自然景観の保全その他の海洋環境の保全を図るために必要な措置を講ずるといったこと。それから、生物多様性条約では、全球レベルでの海洋保護区ネットワークを構築するといったような目標が掲げられています。
 これまで説明させていただきました中身について、生物多様性保全の視点、それから自然とのふれあいの視点から、保護と利用という2つのポイントから整理をさせていただきました。
 まず、生物多様性の保全の視点でございます。これは繰り返しになるのですけれども、国立・国定公園は我が国における生物多様性保全の屋台骨であるといったこと。それから、浅海域の施策でございますけれども、浅海域は海洋の生物多様性の確保、海洋の自然景観を保全する上で重要な場所であるといったこと。一方で、干潟では保護地域としてカバーしているところが若干少ないのではないかといった指摘もございます。また、浅海域における自然とのふれあいのニーズは高まっているということ、自然とのふれあいの面からもこうした地域の重要性は高まっているのではないかと考えられます。
 次は、予防的・順応的な国立公園管理の必要性としまして、ニホンジカによる自然植生への被害ということで、国家戦略のところでもございましたが、これまでの規制的な管理では対応できない現象が全国的に起きている。予防的・順応的な国立公園が必要とされているのではないかと考えられます。
 これは国立公園でシカによる自然植生への被害を受けている場所でございまして、19の国立公園が被害を受けていると報告を受けているところです。具体的な中身ですけれども、これは南アルプス国立公園でシカによる食害で裸地化した高山植物群落ですとか、シカに踏み荒らされた高層湿原、これは尾瀬です。また一方で、本来生息しないような外来種が放逐されているような事例も見られます。
 次に、自然とのふれあいの視点でございます。自然とのふれあいに関するサービスの向上ということで考えておりまして、自然とふれあう機会の増加を求める世論は非常に高く、また、実際に自然の多いところへ出かけたことのある人も多い中、これらの人々を受け入れる国立・国定公園の役割は重要ではないかと考えております。一方で、出かけた先で不満を持つ人も多く、特に施設や管理に対する不満があるという状況でございます。
 自然公園の中ではビジターセンターでの自然解説ですとか、フィールドでの自然観察会とか自然とのふれあいを今、私どもでも積極的にやっているところですけれども、こういった安全で快適な公園利用の推進につきましては、自然とのふれあいや環境学習の場として、役割・機能の強化・充実が必要である。また、安全で快適な利用の推進の観点からの施策を実施していく必要があるのではないかということで考えています。
 以上、非常に駆け足的にご説明させていただいたのですけれども、今後の検討の方向につきまして、これまで整理した中身を踏まえまして、国立・国定公園における生物多様性保全の充実、海域の保全ですとか予防的順応的な手法による生態系の管理の充実、さらには安全で快適な利用の推進の観点からの施策の充実が必要ではないかと考えております。
 簡単でございますが、諮問の背景についてご説明をさせていただきました。

○熊谷部会長 ありがとうございました。
 ご意見、ご質問については後ほどお伺いすることといたしまして、本件につきましては今後、より専門的、精力的に集中した審議を進める必要があることから、部会長といたしましては資料1(3)のとおり、中央環境審議会議事運営規則に基づきまして、本部会の下にあります自然公園のあり方検討小委員会において審議することを提案させていただきたいと思いますので、まずその点についてお諮りをいたします。
 本件について、ご異議はございませんでしょうか。
(異議なし)

○熊谷部会長 ありがとうございました。異議なしとのお声でございますので、それでは、引き続きまして、自然公園のあり方検討小委員会の運営方針につきまして事務局から説明をお願いいたします。

○国立公園課長補佐 それでは、資料1(4)でございますけれども、自然公園のあり方検討小委員会の運営方針について(案)でございます。
 これは、自然公園のあり方検討小委員会、平成13年に設置されておりますけれども、その際と同様のものでございまして、自然公園小委等も同様でございます。
 まず、会議の公開でございますけれども、1の(1)といたしまして、小委員会は原則として公開する。(2)公開する場合の必要な制限といたしまして、会議の円滑な進行を確保する観点から、必要な制限を課すことができる。
 2、出席者は代理出席は認めません。
 3、会議録、(1)会議録の作成、配付。これは発言の内容を正確に記載する会議録をつくるということ。さらには、会議に出席した委員の了承を得る。さらには、小委員会に属する委員等に配付をするといったこと。それから、3(2)会議録及び議事要旨の公開で、会議録の公開、議事要旨の作成、環境省ホームページへの掲載ですとか環境省の閲覧窓口への備えつけといったことが定められております。
 以上でございます。

○熊谷部会長 それでは、事務局より説明のありました、自然公園のあり方検討小委員会の運営方針については、中央環境審議会の運営方針に基づき、部会長として事務局案どおり決定をさせていただきます。
 続きまして、自然公園のあり方検討小委員会に所属する委員については、同じく中央環境審議会議事運営規則に基づきまして私から指名をさせていただきます。あわせて、おおよその進め方のスケジュールについてお示しをしたいと思いますので、ただいま事務局から名簿及び検討スケジュールの配付をお願いしております。
(事務局より名簿及び検討スケジュールの配付)

○熊谷部会長 ただいまお手元にお配りいたしました委員の方々を小委員会委員に指名をさせていただきたいと思います。ご多忙のところ、大変厳しいスケジュールですが、何とぞよろしくお願い申し上げます。
 次に、小委員会の委員長については中央環境審議会議事運営規則に基づき、部会長が指名することになっております。委員長につきましては自然環境部会長の私が兼任させていただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
(異議なし)

○熊谷部会長 ありがとうございました。それでは、よろしくお願いいたします。
 それでは、事務局から説明のありました、議題1、自然公園法の施行状況等を踏まえた必要な措置について(諮問)、議題2、検討の進め方についてご意見、ご質問がございましたらご発言をお願いしたいと思います。
 また、小委員会における検討に関しましても、ご要望などがあれば、あわせてご発言をお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 岡島委員、お願いいたします。

○岡島委員 小委員会で、利用といいますか、ふれあいのほうを取り上げていただいて、大変ありがたいと思っております。私もこの審議会に入ってもう10年以上、本当の絶滅危惧種は野山で遊ぶ子供たちだということを言い続けまして、ようやくここに来て、生物国家戦略も一段落したんだと思いますけれども、動物のほかに、こちらのほうの自然とのふれあいについて審議会で本格的に議論いただくというのは本当に待ち望んだことでございます。ぜひ、いいご審議をお願いしたいと思います。
 以上です。

○熊谷部会長 ありがとうございました。貴重なご意見ありがとうございます。
 ほかに何かございますでしょうか。
 服部委員、お願いいたします。

○服部委員 大変貴重な資料の説明ありがとうございました。1つ質問させていただきたいと思います。
 16ページの世論調査の結果についてですけれども、目的と内容で平成13年と平成18年の調査結果の比率が出ております。私が特に注目したのは、目的の上のほうで、18年度に24.4%出かけたというのに対して、13年度の調査では28%、これだけ唯一下がっているんです。内容についても過去と18年で出入りがあるわけですが、特にどちらかというとアクティブな利用のほうが減って、パッシブ系が増えている。この結果をどういうふうに理解したらいいのか、環境省のほうの意見を聞かせていただきたいと思います。
 以上です。

○熊谷部会長 それでは、事務局からお願いします。

○国立公園課長補佐 ご説明いたします。
 目的のところで、登山・ハイキング・海水浴・キャンプといった、どちらかといえばアクティブな活動が若干減っているというようなご指摘でございました。これは山岳とか海浜のレクリエーション、そういった屋外でのアクティビティーというのは全般的に今減少傾向にあるということで文献には指摘されてございます。この分析につきましてはいろいろと考えられておるようでございますけれども、一つはやはり経済的なこともあるのではないかとの指摘もされているような状況でございます。
 以上でございます。

○熊谷部会長 よろしいでしょうか。
 ほかにご意見、ご質問ございますでしょうか。

○服部委員 続けていいですか。

○熊谷部会長 それでは、服部委員。その後、山岸委員からお願いいたしたいと思います。

○服部委員 このあたりを環境省ないしは行政側で、与える側で全部カバーするというのではなくて、利用する側とか、市民の側の活力の活用をもっと考えるような施策を盛り込んでもらったら良い。例えば生物多様性の里山は、だれかがやるというのではとても行き届かない。地域の皆さんが、それぞれうちの里山の部分は自分でやらないと隣近所に恥ずかしいという感じでやることによって非常にうまく残っている事例が多いんです。
 だから、行政的な、あるいはボランティア的じゃなくて、地域社会の活性化手法と組み合わせることにより、結果として里山の保全を図ることができるということを論旨とした卒論を書いた者がいるんです。里山の保全を行政的にカバーするという部分をもう少し方向転換して、地域の皆さんにメリットのある形で協力してもらう手法をもっと盛り込んでいただきたいという気がしております。
 以上です。

○熊谷部会長 ありがとうございました。
 それでは、山岸委員、お願いいたします。

○山岸委員 2つあります。1つは、同じことばかり言って、言うのも嫌で、言うとみんなに嫌な顔をされるんですが、方向性の検討の場合に、人の問題というのを最初から考えなくていいのかどうか。これは幾ら言ってももうだめだから、みんなもうあきらめちゃっているんだと思いますが、せめて検討の内容の中へは入れておいてほしいと思います。国立公園のレンジャーの数とか、管理が今のままでいいのかどうか。
 それからもう一点は、シカの害というのは想像を絶するものがあると思います。特に南アルプスの高山植物は、場所によってはもう壊滅状態になっているということを聞いています。事は非常に緊急を要するので、その点、特にご配慮いただいて、検討していただければ幸いだと思います。
 以上です。

○熊谷部会長 ありがとうございました。
 ほかにございますでしょうか。
 それでは、仙田委員、お願いいたします。

○仙田委員 質問と合わせてなんですが、利用状況の中で、割と日本のすぐれた自然環境という資源が、観光的な側面からも、いわゆる海外の方々に対する利用数というか、そういう部分については確実に把握されているんでしょうか。

○熊谷部会長 いかがでしょうか、今の。

○国立公園課長補佐 自然公園の利用者数を調べる中では、海外からの訪問者を特記した調査はしておりおませんので、全体的なところでは把握していません。ただ、地域的には一部把握しているような事例もあると聞いております。

○仙田委員 ぜひそういう、日本の国民の利用はもちろん、やはりもう少しそういう意味での国際的な利用という視点からも検討する必要があるのではないかというふうに思います。

○熊谷部会長 ありがとうございました。
 それでは、岩熊委員、お願いいたします。

○岩熊委員 ただいまのに関連してなんですけれども、国立公園へ行きますと英語のパンフレットがなかなかそろっていないと。全体とか有名なところのパンフレットは置いているんですけれども、指定されているいろいろな箇所のこれを見てみますとパンフレットがないし、外国人を連れて行ったときに説明する資料がないというのは寂しいので、用意していただけるとありがたいなと思います。

○熊谷部会長 ありがとうございました。
 どうぞ。

○国立公園課長 大変貴重なご指摘ありがとうございます。
 私ども、ことし洞爺湖でサミットがあったこともありまして、国立公園隣接地ということで、これを機に海外にも国立公園をアピールしようということで、先生ご指摘のような海外向けのパンフレットを精力的につくったところでございまして、例えば北海道についてはすべての国立公園について英語のパンフレットをつくる、それから、全国の国立公園のブロック別の英語のパンフレットをつくるというようなことも手がけ始めております。
 各地で、先ほど統計はないと申し上げましたけれども、実感として間違いなく、アジアも含めまして、海外からの利用者数はふえてございます。それに対応するように各地で手がけ始めておりますので、これは全体的な動きとして、施策として、強力にやってまいりたいというふうに考えております。

○熊谷部会長 ありがとうございました。
 作成し終わった英文の資料については、ぜひ委員の方々にお送りされたらいかがかと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、時間の関係もございますので、本件についての議論は一応ここで終わりとさせていただきまして、ただいまいただきましたご意見を踏まえまして、別途設置する自然公園のあり方検討小委員会において検討を進めさせていただきたいと思っております。
 これをもちまして、諮問事項に係る議事を終えることといたします。
 なお、冒頭に申し上げましたように、この後、私と山岸委員、鷲谷委員は中央環境審議会総会に出席をいたしますので、この後の報告事項については柏木審議官に司会進行をお願いし、環境省から説明を受けたいと思います。
 それでは、柏木審議官、よろしくお願いいたします。

○大臣官房審議官 それでは引き続き、環境省から、議事次第にあります報告事項について順次ご説明をさせていただきます。
 ご質問等につきましては、すべての報告事項の説明が終わった後にお受けしたいと思いますので、よろしくお願いします。
 それでは、まず初めに、国立・国定公園総点検事業の実施状況について、国立公園課杉村専門官よりご説明をさせていただきます。

○事務局(杉村) 国立公園課で公園計画専門官をしております杉村と申します。座ってご説明させていただきます。
 報告事項の(1)といたしまして、今後の公園指定のあり方等も密接なかかわりを持ちます国立・国定公園総点検事業の実施状況をご報告します。お手元の資料3をごらんください。
 まず、事業の背景のご説明です。国立・国定公園総点検事業は、学識経験者からなる国立・国定公園の指定及び管理運営に関する検討会によって平成19年3月にとりまとめられました「国立・国定公園の指定及び管理運営に関する提言」のうち、指定に関する提言を踏まえて実施しているものです。
 この提言の中では、自然公園の今日的意義と今後の方向性等を踏まえて、既存の国立・国定公園の指定状況の評価・見直し、新規指定に向けた検討、自然公園選定要領の見直しを行うこととされており、まさにこれが総点検事業の目的になっています。
 また、これまでの公園の指定や選定の中で十分に評価されておらず、今後新たに評価すべきすぐれた自然の風景地として、奄美群島であるとか、やんばる地域の照葉樹林、里地里山、南西諸島に見られるようなサンゴ礁等の海域、特徴的な湿地や特徴的な地形・地質、自然現象、こういうものが挙げられております。また、[2]でございますけれども、生物多様性豊かな地域を評価すること。[3]生態系ネットワークへ貢献すること。[4]エコツーリズム等の新たな自然体験型の利用を可能とする場所を評価すること。これらについても必要とされております。この提言を踏まえまして、平成19年度から総点検事業を進めているところです。
 進め方でございますけれども、まず初年度である19年度は、提言の内容や最新の科学的知見、有識者の方々へのヒアリングの結果を踏まえまして、我が国の自然の風景地を代表する地域、その新しい評価方法というのを検討いたしました。この内容については後ほど詳しくご説明いたします。
 また、平成20年度は、国立・国定公園の役割分担の検討であるとか、国立公園・国定公園の面積など、その選定要件の見直しの検討を行います。また、指定候補地や拡張候補地において、区域を実際に具体的に抽出する際の調査項目や調査手法、評価方法、その作業手順の整理を行います。
 これらの検討を踏まえまして、21年度以降に、自然公園選定要領、これは昭和46年に改正されて以降改正されていないものでございますが、こちらの改訂であるとか、国立公園基本調査標準という、昭和28年につくられた国立公園を指定・選定するに当たっての調査の項目を決めたものの改訂などを行いまして、その上で、全国の国立・国定公園の再編であるとか再配置、新規指定などを進めまして、すぐれた自然の風景地が適切に国立・国定公園として保全されるように努めていく所存でございます。この自然公園選定要領の改訂や、公園の新規指定等については、審議会のご意見をお聞きしながら進めていくことになりますので、その際はどうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、裏面になりますけれども、19年度に実施した我が国の自然の風景地を代表する地域の新しい評価方法の検討についてご説明いたします。
 まず、現行の自然公園選定要領では、我が国の自然の風景地として代表的なものを地形に基づいて抽出した上で、それから区域を検討する際に、その景観を構成する要素として、地表を覆っている植生などを評価するという方法をとっております。
 これに対して、19年度の作業の中では、地形と同様に生態系に注目して、地形と生態系、それぞれの観点から我が国の自然の風景地として代表性のある地域の抽出を行いました。
 今回、生態系を取り上げることとしたのは、亜寒帯から亜熱帯まで多様な気候帯に属している我が国の風景というのは、地形だけによって特徴づけられているのではなくて、その地表に成立している豊かな生物群集によっても特徴づけられているためでございます。また、自然公園が生物多様性保全の屋台骨としての役割を積極的に担っていくことが、生物多様性国家戦略で求められている、そのことも背景の一つです。
 具体的な作業内容としては、まず地形については、プレートテクトニクスなど最新の科学的知見を踏まえて、日本列島をその地形の形成史を踏まえた8つの大地形区分に区分しました。例えば東北日本弧であるとか西南日本弧、こういうプレートであるとか、そのプレートの衝突帯、そういったものに分類をいたしました。次に、我が国に見られる典型的な地形を、火山弧峰であるとか非火山弧峰、あと海岸であればリアス式海岸であるとか、そういった形でわかりやすく分類いたしまいした。その上で、大地形区分ごとに、典型的な地形のうち、規模などが上位のものを抽出いたしました。それが地形の観点から行った抽出作業でございます。
 また、生態系につきましては、我が国の生物地理区分ごとに典型的に見られる生態系、これは重要地域Aとして過去に整理されているものでございます。また、高山や湿原、サンゴ礁のような特異な環境要因によって成立した生態系、これは重要地域Bと呼ばれるものとか、あと重要湿地500のうち、典型的な湿地とかマングローブであるとか、そういった場所でございます。そういう典型的なもの、特異なものについて、それぞれ規模が上位のものなどを抽出いたしました。
 そして、これらの地形、生態系両面から抽出された地域と既存の国立・国定公園との重複状況を、GISを用いて図面上で確認をいたしました。
 その結果が下の紫色のボックスですけれども、結果としては、地形については、例えば利尻礼文サロベツ国立公園であるとか秩父多摩甲斐国立公園は、先ほど申し上げましたプレートの衝突帯にちょうど位置する公園でありまして、日本列島の形成史を反映した典型的な地域であることがわかりました。また、地形の観点から抽出された典型的な地形が見られる地域というのは、その多くが既に国立・国定公園に指定されておりまして、国立・国定公園がこういう地形を保護する制度として機能していることが確認されました。
 また、生態系につきましては、すべての国立公園が生態系の観点から抽出された地域を含んでいること、また国定公園でも大半の国定公園がこうした地域を含んでいることがわかりました。このことから、国立公園・国定公園が国土の生物多様性保全の屋台骨としての役割を果たしているということが改めて確認をされました。
 以上が19年度の実施内容でございます。
 今後は、先ほどご説明いたしましたとおり、国立公園と国定公園の役割分担などの検討を行いまして、その後、自然公園選定要領の改訂を行い、そして国立・国定公園の再編等に向けて検討を進めていく予定でございます。
 以上で説明を終わります。

○大臣官房審議官 続きまして、生物多様性をめぐる動向について、徳丸生物多様性地球戦略企画室長よりご説明をいたします。

○生物多様性地球戦略企画室長 徳丸でございます。 
生物多様性をめぐる最近の動向についての資料をご覧下さい。先ほどの黒田局長のごあいさつとほとんど重なってしまう面がございますが、再確認の意味でもお聞きいただければと思っております。
 資料の最初のページの下の方に最近の動向、第3次生物多様性国家戦略より後の流れを簡単に示してございます。最初に、今年5月でございますが、ドイツのボンで第9回の生物多様性条約締約国会議が開催されております。最終日の30日に2010年の第10回締約国会議、いわゆるCOP10と称しておりますが、これが日本の名古屋で開催されることが採択されております。
 資料の2枚目の上の部分をご覧いただければと思いますが、2年後の第10回締約国会議につきまして検討すべき議題はたくさんございますけれども、主なものとして2つ、まず、2010年目標の評価と2010年以降の次期目標の採択というのがございます。
 この2010年目標と言いますのは、第6回締約国会議の時に2010年までに生物多様性の損失速度を顕著に減少させるという、やや漠然とした目標が掲げられておりまして、この最終年度に当たるのがCOP10ということになっております。国内でも、どのような指標をもって、2010年までに生物多様性の損失が緩くなったのかを検討する段階に今入っているところでございます。また、この評価と合わせまして、中期的あるいは長期的に、生物多様性の保全のための次の目標を決めなければいけないというのが一つの大きな議題となっております。
 もう一つは、その下に、ABS(遺伝資源へのアクセスと利益配分)に関する国際的枠組みの検討完了というのがございまして、これも条約ができた頃からの大きな課題になっております。いわゆる途上国から採取してきた生物資源を使って主に先進国において利用がなされた場合、たくさんの利益が生じるわけですけれども、それをいかにして途上国に還元するかという部分で、なかなか途上国と先進国との折り合いがつかないという状況になっております。COP9のときには2010年までに段階を踏んで何らかの同意をしましょうということだけが決まっておりまして、どのような形の合意をするのかについて、この2年間で検討をしていかなければいけないという状況になってございます。
 その他にもたくさん議題はございますが、説明は割愛させていただきます。黒田局長からも申し上げましたが、開催までに既に2年を切っておりまして、環境省では外務省その他各省庁と一緒になってこの会議に向かうために、9月には局長級の関係省庁連絡会議を立ち上げております。議題によっては環境省以外の省庁がイニシアティブをとるものもたくさんございますけれども、議長を務めます環境省としましては、リーダーシップをとっていきたいと考えているところです。また、明後日の23日には、この会議に向けてNGOや企業、自治体、研究者等、多様な主体の方々と連携をするための意見交換会を開催したいと思っているところです。
 次に、また最初の表に戻っていただきますが、今年の5月28日に生物多様性基本法が議員立法で成立し、6月6日に公布・施行されております。概要は、3枚目の資料にございますが、条文そのものを今お配りしたところでございますので、後ほど参照していただければと思っております。
 詳しくご説明する時間はございませんけれども、この法律においては、生物多様性の保全と持続可能な利用、この2つの推進が法的に定められ、国として一生懸命やっていこうということになっております。主な項目を挙げますと、法律では年次報告をするということになっておりまして、いわゆる白書を毎年作成して国会に提出するということを生物多様性の枠組みでやるということが決まっております。
 また、これも局長からお話がありましたが、国家戦略が法に基づくものとして規定されましたので、今後、昨年策定しました第3次生物多様性国家戦略を元にいたしまして、この戦略を法定化するという作業がいずれ生じてまいります。その折はまた委員の皆様のご協力を賜ることになろうかと思いますので、よろしくお願いしたいと思っております。
 また、この基本法では、地方レベルの生物多様性戦略の策定も推進することがうたわれております。千葉県など先進的な都道府県あるいは自治体もございますけれども、環境省としましては全自治体が戦略をつくっていただけるように、これから声をかけて推進してまいりたいと思っております。また、今年度からの事業としまして、地方版の生物多様性戦略の手引きを作成する事業を行っているところでございます。こういったものを通して自治体レベルでも戦略をつくって、生物多様性の保全を図るように推進していきたいと思っております。
 次に、7月に神戸で、先進国G8の環境大臣会合が開催されております。その成果といたしまして、「神戸・生物多様性のための行動の呼びかけ」が採択されております。これは、資料の2枚目の下の表に概要を示してございます。項目はたくさんございますが大きく分けて5つにまとめますと、[1]先ほど申し上げました生物多様性条約の2010年目標の達成とそのフォローアップ行動、そして[2]生物多様性の持続可能な利用の推進、[3]生物多様性と保護地域、これは保護地域の指定管理の推進及び国際的なネットワークをつくっていくということを含んでおります。あと、先ほど申しました民間参画ということですが、生物多様性につきましては政府レベルだけではなくてNGO、あるいは生物資源を使って利益を得ております企業の参画が不可欠なため、民間参画をうたっております。[5]もう一つは生物多様性のモニタリングのための科学の強化であり、モニタリング技術その他を強化していかなければいけないということを、G8環境大臣会合で合意をしております。
 これに基づきまして、日本政府としては、次のページにありますが、「神戸・生物多様性のための行動の呼びかけ」の実施のための日本の取組みということで、大きく4つの項目を宣言しております。
 1つが、SATOYAMAイニシアティブの推進で、日本の里山のような自然と調和した社会に関する伝統的、地域的な知恵や事例の収集をして、これを世界に適合させてその推進を図っていくというものであり、うまく自然と調和した開発を、東アジアをはじめ主に途上国でこの知恵を生かしていっていただければなという事業でございます。今後、ワークショップや専門家会合の開催等を進めていきたいと思っております。
 2つ目が、東アジア・サンゴ礁海洋保護区ネットワークであり、保護地域のネットワークに関連してこのようなことを考えていきたいと思っております。
 3つ目は民間参画との対話ですが、「神戸・生物多様性対話」、これは神戸で宣言したのでこの名前がついています。来年度予算要求中でございますが、何カ所かでこういった対話をもって、政府と企業、そしてNGO、研究者等が一緒に話し合う機会を持ちたいと思っております。また、年1回ぐらいはアジアの人達を集めて同じような対話を行っていきたいと計画しているところでございます。
 4つ目は、地球規模生物多様性モニタリング・ネットワーキング・イニシアティブであり、モニタリングの国際的な協力ということで、気候変動の影響等もあわせてネットワーク化を考えていきたいということでございます。
 続いての項目ですけれども、7月7日から9日にかけて洞爺湖で開催されましたG8の首脳会合、ここでも生物多様性が首脳文書に含まれました。これは2枚目裏の下に概要を示しておりますので、ご覧いただければと思います。
 最後に、3枚目上にございますが、エコアジアと申しまして、第16回アジア・太平洋環境会議を9月13日に名古屋で開催いたしました。これは生物多様性をテーマとして、アジア・太平洋地域から11カ国、また生物多様性条約事務局を含む16の国際機関にご出席いただきまして、国家戦略の重要性やSATOYAMAイニシアティブの推進、あるいは生物多様性の主流化などを共通認識として把握して、COP10に向けて第一歩を踏み出したということになっております。
 以上が、今年に入りましての大まかな生物多様性をめぐる動向でございます。終わります。

○大臣官房審議官 続きまして、エコツーリズムをめぐる動向について、岡本自然ふれあい推進室長よりご説明をいたします。

○自然ふれあい推進室長 岡本でございます。
 それでは、資料5、エコツーリズムをめぐる動向についてというペーパーをご覧下さい。
 まず、エコツーリズムとは何かということでございますが、一番上の段落にございますように、地域の自然環境や歴史・文化を体験・学習し、それらの保全に責任を持つ観光のあり方といたしまして、環境保全はもとより、観光振興、地域振興、環境教育の場としての活用にもつながるものということで、環境省が関係省庁と連携しつつ主導的に推進をしております。
 前回ご説明したところでございますが、エコツーリズム推進法が平成19年6月の国会で議員立法により成立いたしまして、今年4月1日に施行されたところでございます。この法律は、先ほど申し上げました自然環境の保全、環境振興、地域振興、環境教育という4つの理念の推進を図ることを目的としておりまして、環境、国交、農水、文科の4省が共管をしております。
 このページの最後の段落でございますが、この法律を受けまして、政府が定めるエコツーリズム推進基本方針を今年6月に閣議決定をしたところでございます。
 次の2ページ目にうつります。
 エコツーリズム推進法の枠組みでございますが、一番上のボックスにございますように、法律上はこの3行に書いてあります定義、先ほど申し上げましたような活動を定義しております。この法律ができた背景といたしましては、環境問題への関心の高まり、また一部の地域において観光による自然への悪影響が懸念されるため自然保護に配慮した観光の推進を図る必要があるという、この2つを背景としております。
 矢印の下のボックスですが、基本理念は先ほどの4つの点でございます。政府がエコツーリズム推進の基本方針を策定いたしますが、この法律において推進の中心は、主に市町村になります。全ての市町村ではなく、特にエコツーリズムを推進したい市町村、地域がこの法律を活用できるというものでございます。
 市町村は、事業者、NPO、専門家、その他関係行政機関等による協議会を組織することができることになっており、その協議会はその地域におけるエコツーリズムの推進全体構想を作成することができるということになっております。その全体構想の中で何を定めるかということでございますが、地域におけるエコツーリズムの実施の方法であるとか、自然観光資源の保護措置等を規定することになっております。
 一番下のボックスでございますけれども、その全体構想につきまして、市町村は主務大臣4大臣に対して認定を申請することができることになっております。認定された場合のメリットは何かということですが、一つには、先ほどの4つの基本理念に基づいて立派にエコツーリズムを進めている地域であることを国が認定したわけですので、国が広報に努める等の配慮をするということでございます。
 一番下の行でございますけれども、もう一点は、市町村は認定された全体構想に基づきまして、保護を図るべき特定自然観光資源を指定できるということでございます。例えば国立・国定公園や、天然記念物のように保護されている動植物、地形等がございますけれども、そうでない地域、あるいは自然公園においても普通地域のようにあまり保護が図られてないような地域において、現場でもよく耳にする話でございますが、観光のためお客さんを色々な野草の群落に案内してその後に行ってみたら、翌月にはもうみんな採られてしまっているとか、あるいは地域で大事にしているので採らないで下さいと注意をすると、最近では何の根拠を持ってそんなことを言うのかと言われてしまうこともあると。
 このような事例もある中で、地域で自然観光資源を大事にしながら、でも地域活性化のために観光資源としても活用していきたい、保護と利用を両方図っていきたいという場合に、国や県からこれを守りなさいということではなく、地域のボトムアップによって、すなわち先ほどの協議会の方々が、皆さんでこれは守りながら活用していきましょうということで、このエコツーリズム推進法に基づいて、採ったり、傷つけたり、あるいは立ち入り制限をしたり、そういた規制をかけることができるというものでございます。もちろん法的な罰則規定がかかりますので、その際に4大臣の認定を受けるということになります。場合によっては、光を当てるというような行為に対しても規制をかけることができるということになっております。
 次のページをご覧下さい。今年6月に閣議決定をいたしましたエコツーリズム推進基本方針の概要でございます。2ページにわたりますので、アンダーラインを引いているところを中心にご説明させていただきます。
 この基本方針でございますが、「はじめに」と第1章につきましては、我が国でどういうふうにエコツーリズムを推進していくかという基本的な方向を定めております。第2章以降は、実際に地域がこの法律に基づいて推進していく場合のマニュアル的な部分でございます。
 まず、「はじめに」の部分でございますが、いろいろな地球環境問題が深刻化する中で、なかなか人々の主体的な行動に結びつかないのは、私どもが地球とつながっている、つまり自然の恵みで人も生きているという実感が決定的に不足しているからではないかと思います。先ほど岡島委員からも子供たちの自然体験の不足というご指摘がございましたとおり、頭で理解しても体で理解していないのではないかといったことが指摘をされております。
 そういう中で、エコツーリズムとは、人と自然のつながりあるいは人と人とのつながりを取り戻し、生物多様性を保全しながら元気な地域社会をつくるものであり、観光旅行者や関係する地域の方々が地球環境とつながる糸口になるのではないかといったことを序章で述べております。
 続きまして第1章でございますが、推進する意義といたしまして、まず[1]先ほど申し上げました法律に基づくルールの設定による自然環境の保全ができるということ。それから、旅行者や地域住民の方々の環境意識が高まり、地域環境から地球環境まで含めた保全に関する行動につながるという効果があるのではないか。[2]といたしまして、地域固有の自然環境や生活文化等の魅力を見直す効果。今までの観光として認知されていた大きな滝とかそういうものだけでなく、地域の生活に根ざしたものも資源として見直されていくというものでございます。それから[3]といたしまして、観光地としての競争力の向上や新たな観光振興の可能性。先ほどの里地里山での地域の方々による活性化というご指摘もございましたが、まさにそういった点、今まで観光地ではなかったような地域において観光の振興の可能性が出てくるといったことでございます。そういった持続的な地域づくりに対する意識の高まりや住民の誇りにつながる効果があるということでございます。
 第1章の真ん中より少し下のアンダーラインでございますけれども、3つを基本の視点としています。まずは「自然環境や歴史・文化を大切にしながら」、それからあくまでもこれは旅行でございますので「楽しみながら」という視点、それから「地域が主体」であるという視点。この3つの視点が基本であるといったことでございます。
 重点的に取り組むべき課題といたしまして、人材育成や戦略的広報、地域への支援等というものをうたっております。
 第2章以降がマニュアル的な部分でございますけれども、協議会をつくる場合には、効率的な運営に配慮しながらも多様な主体の参加・連携が必要であること、あるいは、原則公開として相互に情報を共有して合意形成を図っていくことが必要である、といったことをうたっております。
 次のページをご覧ください。第3章は、全体構想をどのようにつくるかという基本的な事項でございます。
 アンダーラインの部分をご覧いただきたいと思いますが、エコツーリズムを実施するに当たりましては、対象となる自然観光資源などが損なわれないよう事前にルールを決め、ガイダンス・プログラムすなわちお客様の案内をしていき、継続的に地域の自然観光資源の状態をモニタリングしていく。さらにそれを科学的に評価し、ルールやガイドなどの活動に反映させていくという順応的な管理が重要であるといったことでございます。
 3つ目でございますが、モニタリングの実施に当たりましては、特に原生的な自然の区域、これは世界遺産のような区域ですとか国立公園の重要な地域でございますが、そういった地域のモニタリングに当たりましては、専門家や研究者などの積極的な関わりを得て、よりきめ細かく実施する必要があるであろうと。[2]でございますけれども、里地里山のような場所でエコツーリズムを実施する場合には、むしろガイドや地域住民などが主体となってモニタリングを行っていき、その結果を専門家や研究者が評価するといったように、その地域の自然や社会的な特性に応じて実施していくことが必要であるということをうたっております。
 最後でございますが、推進に当たっての重要な事項といたしまして、[1]地産地消の取り組みなど農林水産業をはじめとする関連産業との連携・調和が重要であります。特に地産地消につきましては生物多様性保全上も重要な観点であるというふうに考えておりまして、例えば、阿蘇の赤牛を食べて畜産を振興していくことが草原の保護、維持管理にも結びついていくということであるとか、地域の里山の管理につながっていくといったことがございます。ましてやこれは旅行でございますので、そういった地域ならではの食を楽しむということも、その推進につながるということでございます。
 それから、[3]地域の生活や習わしなどへの配慮。これは地域の古くからの慣習、あるいは立ち入ってはいけないというタブーのようなもの、そういったようなことを無視してエコツーリズムは行われないということも必要であるといったことをうたっております。
 続きまして、第4章でございますが、認定に関する基本的事項ということで、この認定のメリットというのを述べております。先ほどご説明しましたように、[1]といたしまして、これまで保護措置が講じられていなかった自然観光資源を特定自然観光資源として指定し、法的に保護するということで、持続的かつ質の高い利用が可能となるということでございます。場合によっては立ち入り制限をいたしまして、混雑の緩和等も図りながら持続的に利用していくといったことでございます。[2]といたしまして、地域のブランド力が高まるといったこと、国が積極的に周知に努めるということでの効果があるということでございます。
 続きまして第5章でございますが、これは生物多様性の確保などの実施上配慮すべき事項でございます。
 1つ目でございますが、特に里地里山のような地域でお客さんを呼ぶためにもう一度メダカを復活させようとか、あるいはホタルを復活させようというような動きがございますけれども、そういった際にも遺伝的に異なるようなものを持ち込まないようにということ、すなわち遺伝的攪乱にも配慮することが必要であるといった点でございます。2つ目は、特に里地里山などでは維持管理活動をプログラムに取り入れることによる生物多様性の回復も期待されるということでございます。
 次に、例えば埼玉県の飯能市というところで市が中心になってエコツーリズムを進めております。小さな湿地の復元事業をお客さんに手伝ってもらったり、孟宗竹という外来種の竹が繁茂してしまったところを伐ってそれを管理をして、お土産に竹細工を持って帰るというような、そういったようなプログラムも実施されておりますが、そういったことも期待されるということでございます。
 それから、3つ目でございますが、先ほどもご指摘がありました子供の視点でございます。子供たちは自然とのふれあいの体験が非常に少ないということがございますし、それから、将来にわたって地域の活性化を保っていくためには将来のお客さんも確保していかなければいけないということがありますので、潜在的なニーズがある子供の視点が重要であると。あるいは、来ていただくお客さんとして家族の視点、家族向けの対応といったことがございます。
 それから、地域で宝探しを行いながら地域の新たな宝を見つけ、プログラムづくりをしていくわけですけれども、そういったときに地域の子供たちの積極的な関与というものがあれば、子供たちの自分のふるさとに対する誇りや愛着にもつながっていくのではないかといったことが指摘されております。あるいは、農林水産省や文部科学省等が中心になって推進しております小学生の長期宿泊体験など、そういった学校教育との連携も重要であるといった点でございます。
 以上が基本方針の概要でございます。こちらの基本方針は、検討委員会を設けまして、委員の方々のご意見等を伺いながら、またパブリックコメント等を行い閣議決定をしたものでございます。
 最後のページのカラーの絵でございますけれども、現在環境省で進めておりますエコツーリズム推進の各種施策でございますので、参考にご覧いただきたいと思います。
 またお手元に、緑色の「さあ、はじめよう、エコツーリズム!」というパンフレットをお配りしておりますが、こちらは今ご説明いたしました法律を少しビジュアルにご説明させていただいたパンフレットでございます。
 それから、白い表紙のエコツーリズム推進法法令集というものもお配りしておりますが、こちらに法律の条文ですとか、それから基本方針の全文等が載っておりますので、ご参考に見ていただければと思います。
 以上でございます。

○大臣官房審議官 それでは、報告事項の最後でありますけれども、改正温泉法について、正木参事官よりご説明いたします。

○自然環境整備担当参事官 正木でございます。よろしくお願いいたします。
 本日は昨年11月に改正されました温泉法につきまして、経緯を含めて概要を報告させていただきます。資料にはございませんが、まず、経緯をご説明させていただきます。
 昨年6月でございますが、東京渋谷区の温泉施設におきまして、温泉採取に伴う可燃性天然ガスによる爆発がありまして、3人の方が亡くなるという痛ましい事故が発生しました。環境省としては、このような事故の再発を防止するための対応をすぐに始めました。同6月には直ちに温泉に関する可燃性天然ガス安全対策検討会を設けまして、災害防止対策の検討を開始いたしました。
 9月25日には中央環境審議会温泉小委員会を開いていただきまして、熊谷部会長に小委員長になっていただきましたが、温泉法改正の方向性について説明を申し上げて、ご了承をいただきました。その後、10月12日には、温泉法の一部を改正する法律案につきまして閣議決定を行って国会に提出いたしました。法案は11月2日に衆議院本会議で可決、11月26日に参議院の本会議で可決して成立いたしました。両院とも全会一致でございました。そして、11月30日には改正温泉法の公布に至ることができました。本日の機会に改めて御礼を申し上げます。
 続きまして、改正温泉法の内容を資料に基づきまして、かいつまんでご説明を申し上げたいと思います。
 まず、温泉法は、温泉を目的として土地を掘削する際に周りの温泉資源に影響がないかどうかということで、自分の土地を掘削する時に都道府県知事がちょっと待てと、許可をとりなさいという、それが基本的な制度でございます。それまでの温泉法は、可燃性天然ガスによる災害防止ということについては具体的な規定がございませんでしたので、法律の目的にそれを加えるととともに、温泉の掘削及び採取に当たりまして、具体的な災害防止対策の実施について義務付けを行いました。
 それまでは、簡単に申し上げますと、温泉の掘削を行う時と湯船等に利用するときにだけ都道府県知事の許可を受ければ良く、温泉の採取、つまり、くみ上げる行為についての許可は必要ございませんでした。しかし、可燃性天然ガスは温泉の掘削後であっても、くみ上げている間にも危険性がありますので、採取という行為も今回の改正で許可の対象となったものでございます。そして、許可を得るためには、環境省令、温泉法の施行規則で定めます可燃性天然ガスによる災害の防止に関する技術基準に適合するとことが条件とされました。
 資料1ページ目一番下にございますが、技術基準の主なポイントでございますけれども、温泉水とガスの十分な分離をする。それから、周辺の火気使用を禁止する等でございます。それから、ガス換気設備の設置、ガス警報設備の設置等でございます。それと、基準に適合することにつきまして、書類の審査だけではなくて、都道府県職員による実地の確認が必要という、この3つが主なポイントでございます。
 そして次のページでございますが、許可を得て採取をしている間にもし技術基準に合わなくなったという場合は、許可の取り消し、災害防止措置の命令等が出せることになりますし、その他にも災害発生のおそれが生じた場合には緊急の措置命令が出せるようになっております。また、掘削している時におきましても、許可の条件として、ガスの噴出防止装置の設置や周辺の火気使用禁止等、可燃性天然ガスによる災害の防止に関する技術基準への適合、繰り返しになりますが、この技術基準への適合が追加されておりまして、緊急時の措置も命じられることになっております。
 一方で、日本全国で可燃性天然ガスがどこでも発生するかというと、必ずしもそうではございません。例えば東京や千葉あたりでは出る確率がかなり高いのですが、どこでも出るというわけではございませんので、ガス濃度を測定していただいて一定濃度以下の場合、または都道府県知事がガスを含まないと認めた場合には、災害防止措置が必要ないという旨の知事の確認を受けることができる仕組みになっております。
 この確認を受けることは、法律の施行日に先立つ8月1日から行っております。改正法の施行日はこの10月1日でございましたが、この施行日は新規の場合でございます。既に温泉の採取をしている場合は、2番目ですが、許可制度の適用が来年21年4月1日とする経過措置も盛り込まれております。
 その次のページは改正施行規則でございまして、一番下に概要をお示ししてございます。どんな基準を守ればいいかということでございますが、主なものだけご紹介いたします。まず掘削口から敷地境界線までの距離を8メートル、ガスの噴出のおそれがない場合にも3メートル以上とってくださいということにしております。それから、その範囲内における火気の使用禁止、立ち入りの制限。それから、1つ飛びまして、携帯型ガス測定器及び消火器の備付け。一番下ですが、掘削時災害防止規程をつくっていただいて、それをきちんと備付けていただくということでございます。
 最後のページでございますが、採取に係る災害の防止に関する技術基準でございます。これは温泉の井戸等が屋外にある場合と屋内にある場合で分けて基準をつくってございます。後ほどご覧いただければと思います。
 それから、お手元にパンフレット、ピンクのものとブルーのものの2種類お配りしてございます。これは温泉をくみ上げる事業者、それから温泉を掘削する事業者にお配りしまして、現場で混乱がないように慎重にやっていただきたいということで、広く配布したものでございます。
 大分はしょってしまいましたが、以上で改正温泉法の概要報告とさせていただきます。ありがとうございました。

○大臣官房審議官 環境省からの報告事項は以上の4件でございます。
 これまでの件につきましてご意見、ご質問ございましたらご発言をお願いしたいと思います。
 岡島委員、どうぞ。

○岡島委員 2点ございます。国立公園の総点検とエコツーリズムのところですが、国立公園の総点検の裏側のほうで、新しい評価方法ということで、結構なことだと思いますけれども、ただ、これだけ見ますと、地形と生態系だけで決めているというふうに受けとれるんですけれども、例えば景観とか、伝統とか、文化とか、歴史とか、国民感情とか、そういったもののところがないと、ただただ動物のための国立公園ではしようがないと思うんです。その辺のところは書かれていないだけだと思うんですけれども、ちょっとご説明いただければと。
 それから、エコツーリズムなんですが、非常にすばらしい法律もできて、いいと思います。ただ1点だけ、第5章にちょっと触れられているんですけれども、各省庁との連携なんです。実はグリーンツーリズム推進法はあるし、文部科学省でもいろいろ野外体験、自然体験活動などをやっている。グリーンツーリズムという概念からいくと、それが大体全部包めるとは思うんですけれども、そういうグリーンツーリズムや自然体験やエコツーリズムというような、各省庁がいろいろやっていることで連携が大事だと思うんです。大枠の連携がないものでしょうかと。大きな枠組みですね。それぞれの法律はいいんですよ。それぞれはいいと思うんですけれども、ばらばらになってしまうと、国民のほうから見ると使いようがない。
 ですので、それを大きくとりまとめる覚書でも何でも、何かわかりませんけれども、そういうようなものをつくっていかないと、うまくないんじゃないかなと。それはどこでどういうふうにするのかわかりませんけれども、そういう要望として、特に人材育成の場合など、ここで一番に挙がっていますけれども、人材育成、例えばグリーンツーリズムのガイドとエコツーリズムのガイドと自然体験活動のガイドと、それは例えば共通性もあると思うんです。養成するときの共通的な課題、それからグリーンツーリズムだけの必要なものと、そういったものの整合性を持たせないと、国民のほうは理解できないし、それからガイドのなり手が非常に困ると。ガイドになった人がそういう形で利用できる。それもやはり各省庁との連携だと思うんですね。ですから、大変だと思うんですけれども、連携の部分を、大きな枠組みのようなものを意図していただければありがたいなという感じがいたします。
 以上です。

○事務局 それでは、ご質問の1点目の国立公園の総点検の関係について、ご回答いたします。
 今回、地形と生態系の観点から、まず抽出することにしておりますけれども、これは最初に我が国の自然の風景地として代表的な地域を大くくりに抽出する際にこの2点に注目しようということでございまして、実際にこの後その区域を決めていくときには、例えば景観面であったら視点場はどこにあるかとか、あと利用面についても利用拠点がどこにあるかとか、ふれあいの場がどこにあるかといった観点を入れていきます。あと、文化とか伝統といった面についても文化的景観があるようなところは取り込んでいくようにいたしますし、古くから親しまれてきたような景観というのは評価していこうと。そのような要素も考慮しながら区域を決めていくというふうに考えております。

○岡島委員 わかりました。

○自然ふれあい推進室長 岡島委員からご指摘いただいた2点目のエコツーリズムについてお答えいたします。
 まさにその点につきまして、様々な場面でご指摘をいただているところでございます。
 一つにはこの法律、これは議員立法でできた法律でございますが、議員立法だからこそ、4省が共管という点をかなり重視されたと聞いております。先ほどのお話のように、エコツーリズムは環境省、グリーンツーリズムは農水省という縦割りではなく、特に日本型のエコツーリズムは農山漁村でのグリーンツーリズムと重複する部分が非常に多いので、地域によってはもう既に、いいか悪いかは別といたしまして、「エコ・グリーンツーリズム」という名前を使ったり、あるいはどちらの名前も使わずに、地域の体験とかそういった名前を使ったりと、その地域にとってはどちらでも一緒のことという例もあるようです。ただし、単なる農作業体験、農村でのステイということだけでなく、そこに自然環境教育のような視点であるとか、それは勉強というようなやり方だけでなく気付きという観点が必要かと思いますけれども、そういった点とか、資源を守るルールというものが加わってくると、それはもう立派なエコツーリズムになってくるかと思います。結論といたしましては、この法律自体が、先ほどの大枠の連携の第一歩であるというふうに4省では考えております。
 具体的にはこれからその魂を入れていくわけでございますけれども、先ほどの人材育成等も含めまして、特に農山漁村の共生・対流の視点。それから国交省とは特にニューツーリズムという観点でエコツーリズムの期待感が大変ございますので、そういった視点。それから、文科省とは子供たちの教育の視点。この法律は4省が協働なわけでございますので、連絡会議等を通じまして、今までよりしっかりと連携をとって進めていきたいと考えておりますので、またご指導よろしくお願いいたします。

○大臣官房審議官 小泉委員、どうぞ。

○小泉委員 今エコツーリズムの話が出てきたので、ちょっとそれに関連してお願いがあるんですけれども、実は自然史の教育ということを文科省に働きかけてほしいんです。自然史の教育というのは広い意味での環境教育だと思うんですけれども、実は実際にはやっていないんです。環境教育で学校でやっているのは、やっぱりごみやリサイクルの問題とか、地球温暖化の問題とか、砂漠化とか、そういうのにほとんど限られていまして、自然史の教育というのは全く抜けちゃっているんです。
 ですから、例えば北海道と本州で生物が違いますけれども、どうして違うかなんて言われたら誰も答えられませんよね。それから、高山植物がなぜ大事ですかなんて聞かれてもほとんど答えられない。そういう点がすごく問題だと思うんです。やっぱり自然の歴史をどこかできちんと学習していく必要があるんですけれども、今の指導要領では全く抜けたままになっているんです。これは国立公園のことをいろいろ考えたりしていく上で非常に困った問題だと思っています。
 私自身はエコツアーをやっているんですけれども、それには実は自然史とかジオという、地形・地質ですけれども、これを加えてジオエコツアーという形でやっています。そうするとやっぱり、普通の市民の人とかは非常に喜んでいます。自然の成り立ちから動植物まで全部わかりますから。すごくわかるんですけれども、その後、何でこんなことを学校で教えてくれないのかと必ず言われちゃうんです。
 子供のときの自然体験はすごく大事だと思うんですけれども、大人向けには、やはり自然史というか歴史の教育がすごく大事だと思います。そういうのをわかっていないと、国立公園がなぜ大切かと言っても説明できませんし、それから生物多様性が大事だというのはもちろんわかるんですけれども、生物多様性がなぜでき上がってきたかというような話は全然できないんです。ここはホットスポットで大事だと、そういう話で終わっちゃうんです。ですから、いろいろな高山植物が大事だとか言う前に、やっぱり自然史の教育というのはちゃんとしないといけないと思うんです。
 ドイツとかイギリスとかフランス、こういったところは非常にそういうことを熱心にやっていますからやはり環境教育が非常に充実してくると思うんです。日本は全くそれが抜けていまして、さっき言ったように、ごみとかリサイクルとかそんなのばっかりに行っちゃうんです。それは大事なんですけれども、やはりそれだけじゃちょっと困ると思うんです。
 さっきの高山植物とか植物が盗掘されてしまうという話もありましたけれども、ちゃんと植物の歴史とか、それから分布がなぜここにあって、それからどういうふうに偏って非常に限定されているとか、そういうのがわかれば、やっぱり個人で所有してはいけないというのがわかると思うんです。でも、そういうのを全然聞いたことがないものですから、急に欲しくなって取りに行っちゃうということをやると思うんです。
 ですから、これは日本全体の社会の問題だと思うんですけれども、やっぱり自然史教育というのが、環境省としても、文部省としても、もうちょっと本気で推進していく方向をとったほうが私はいいと思うんです。ですから、省庁のさっきの関連の委員会とか何かでそういったのを話題にしていただいて、ぜひもうちょっとそこら辺を充実することを考えていただきたいなと思っています。よろしくお願いします。

○自然ふれあい推進室長 今のご指摘についてでございますけれども、私どもも現場などで、そういった自然観察会であるとかエコツーリズムのお手伝いをしていく上で、今おっしゃられました地形・地質的なことは非常に重要だと思っております。
 地元のガイドの方々は、この花は何の花ですよということまでは説明ができても、今先生がおっしゃられましたように、どういう地球の歴史の中で第3期層としてこういうものが特異的に生えているのであるとか、この地形がどうして成り立っているのかということを説明をすることはなかなかないようです。地域の子供たちにとりましても自分のふるさとを再認識するということ、あるいは訪れたお客さんに好奇心といいますか、そういったことをさらに持たせるような、まさにこのエコツーリズムの題材として非常に重要なものだと思っておりますので、文部科学省にもそういったことは申し上げていきたいと思います。また実践として、先ほどの国立公園の検討の中にも大地形の成り立ちのようなことを分析したといった説明がございましたが、そういった視点も今後、国立公園等を紹介していく中で少し重視をしていきながら検討していきたい。そういう題材も非常に役に立ちますし重要ですよ、といったことを地域にも伝えていきたいと思っております。ありがとうございます。

○大臣官房審議官 関連ですか。それでは、廣瀬さん、どうぞ。

○廣瀬委員 エコツーリズムと、それから生物多様性に関する日本の取り組みについてなんですが、SATOYAMAイニシアティブということで1番目に取り上げられている日本の取り組みなんですけれども、里山という地域は日本の重要な知恵の集積した場所であるという認識が広くこれで取り上げられているということで、非常にありがたい視点だというふうに思っています。
 しかし、私どもが各地を歩いていて非常に深刻だなと思っているのは、里山が、かつては確かにそう思っていたんですが、奥山が人も住まない状態がどんどん現出していて、まさに絶滅状況にあると。この奥山に関する視点というのが非常にこの日本の取り組みのSATOYAMAイニシアティブの部分でもちょっと欠けているのではないかというふうに懸念しております。
 同じく、エコツーリズムに関しましても同様に、これまで屋久島とか知床といった非常に自然地域としてすぐれている場所についての取り組みは多々行われてきているんですが、これがようやく里山地域に対しても取り組まれているということについてはありがたいというふうに思っています。
 しかし、日本の川でいいますと、上流というか源流地域ですね、この奥山地域がどこ行ってもエコツーリズム推進法から全く外されているというような、捨てられていると言っているような認識を持っている人たちが大変多いということで、どうも対象地域として見られていないように思われているというような声を聞いておりますので、こうした地域に対して、優先順位もあると思うんですが、重点的な視点として里山及び奥山というのを出していただければありがたいなというふうに思っています。

○自然環境計画課長 計画課長の渡邉でございます。ご指摘ありがとうございます。
 前段の里山の関係についてです。まさに日本の里山における知恵の意味という点にも関わると思うのですが、日本では人と自然を対立したものとして捉えないで、生きとし生けるものは一体という自然観がベースにあって、自然に対して畏怖の念、あるいは感謝の念というのが根底にあります。それによって奥山、里山、人里というふうに、意図しないけれども上手に自然をゾーニングしながら、奥山はしっかり守り、里山は持続的に利用し、人里の暮らしが恵みを受けて豊かになる。そういうところが日本の里山の非常に大きな特徴だと思っていますので、日本の里地里山の保全・再生をしていくときにも里山の部分だけ見るのではなくてそういう視点、それは言葉をかえれば、森から里、川、海の生態系のネットワークということにもつながると思いますけれども、奥山、里山、人里という関係を大事にしていきたいと思っています。また、COP10に向けて里山の考え方や外国にも役立つ点をまとめていく際には、そういった視点を大切にしていきたいと思っています。

○自然ふれあい推進室長 今まさに計画課長から話がありましたように、奥山地域、里山地域というのは一体的に流域でつながっておりますので、委員が源流域という言葉を使われたのはまさにそういった視点ではないかと思います。エコツーリズムの視点といたしましても源流から里、平地に至るような視点というのは非常に重要と思いますので、そういった点も踏まえて、地域を支援していきたいと思います。

○大臣官房審議官 里地の関係。どうぞ。

○森本委員 ちょっとだけ関連していることなんですけれども、このエコツーリズム法で考えている自然観光資源の定義、それから特定観光資源という考え方について質問しておきたいんですけれども、里地里山ということがかなり大きなフィールドになるだろうということはあるんですけれども、そのときは大概、寄るな、触るな、立入禁止型だけではなくて、適度に使っていくというか、そういう面が大変重要になるかと思います。
 それで、これは実は里地里山だけではなくて、野生生物そのものを地域の資源と位置づけてローカルな人々に管理をやってもらうことによって、逆に持続可能な管理のインセンティブが与えらられるというふうな、そんな事例もあると聞いております。
 そういうふうなことで、今回この資源の位置づけ方なんですが、例えば単純な例を申しますと、カブトムシとかホタルとか、適当にとってもかまわない的なやつがありますね。それから、もっとあるいは珍しいやつでも、厳密にうまく管理していけば、それがすごい資源になって活性化につながる可能性があると思うんです。それがまずると、先ほど言ったような絶滅につながるんですけれども、これ実は痛しかゆしなんですけれども、今後のあり方として、原則はやはり地域の資源で地域の人にそのよさを認識してもらって、地域の人に管理してもらうという方向じゃないと回っていかないように思うんです。それについてちょっとフォローしていただければと思います。

○自然ふれあい推進室長 まさに先生のご指摘のとおり、里地里山地域におきましてエコツーリズムが期待されている点は、今おっしゃられた点に尽きると思っております。
 それをコントロールする方々が、限界集落が増えている中でいかに糧を得ていけるかということも含めて期待がされております。先ほどの昆虫などを採ってもいいのではないかという点につきましても、これは一律に規制をかけましょうということではなくて、コントロールをしていきましょうということです。例えば業者が丸ごと持っていってしまうようなことは防ぎながらも、子供たちに適度な体験というのは必要かと思いますので、それはその地域ごとの状況を踏まえながら、ルールをきっちり定めていくということが求められるかと思います。そういったことで、地域の新しい共有化といいますか、都会の人たちも含めた共有化という、そういったことが実現できていく一助にエコツーリズムがなれればと考えております。

○大臣官房審議官 どうぞ。

○速水委員 ありがとうございます。里地里山の話が出てきたんですけれども、それと廣瀬委員が奥山の話をされたんですけれども、私は森林を管理する業務をずっと仕事としてやっていく者として、いつも里山というもののとらえ方が、結構皆さん広くとらえてみたり、狭くとらえてみたりしているわけです。その辺を少ししっかりと押さえて、里山はどの辺まで里山として見ているのか、奥地とはどういうことなんだと、本当の奥地に限界集落なんてあるのかとか、当然あるところはあるんですけれども、そういうところを常にしっかり押さえておかないと、ただ里地というのは広葉樹が生えていて、何となく里に近いところが里山ですよということで終わってしまうのか、人工林も含めて考えていくのか、あるいは奥地の人工林はどっちで見ていくんだとか、多分皆さんほとんど頭の中にきっちり決めないまま使っているんです。特に里山の場合はそういう状態が出てきているなというふうに思いますので、その辺しっかりと認識を、どう見ているのかというところを押さえていただきたいなというのが希望でございます。
 もう一点、これは関係ない話なんですけれども、エコツーリズムの部分で、当然事業として成り立たせたいというのは地方の気持ちではあるわけです。そのときに、さまざまな場所を使っていくときに、特に舞台としての国立公園、国定公園を利用していこうというときに、やはり先ほどの説明にも少し出てきたように、国立公園の利用者の負担だとか、受益者の負担だとか、事業として考えた場合に当然事業の中には受益というものが目的としてあるわけです。その場合に、その国立公園というものを維持していくための費用というものをエコツーリズムの受益者に対してどうとらえていくのかというのは、多分早目に議論しておかないと、そういうシステムに関して、後では非常に難しくなってくるんだろうと思うんです。
 場所によってかなり頻度の高い国立公園の利用というのが行われているという実態もあるわけですから、その辺は多分、私はすぐに決めていかないとだめなんだろうというふうに思うんですが、地域によって違うのかもしれませんけど、そんな気持ちを持っております。
 以上です。

○審議官 関連。どうぞ。

○服部委員 エコツーリズムについて、ツーリズムだから行って帰ってというだけではなくて、動くこともイメージしているんですけれども、釈迦に説法的なので、意見だけ言ってお答えは結構です。推進協議会というのは市町村単位でやることが原則になっていますね。それを2つ以上の市町村にまたがると、知事じゃなくて即大臣になってしまう。県立自然公園の場合を含めて扱いをどういうふうに考えておられるのかというのがよくわからない。そのあたりを、協議会をつくるときに市町村単位でいいのかどうか、2つ以上というのはもっと市町村単位と同じぐらいのパラであるんじゃないかなというふうな気がするんです。そのときに、県知事がどうするのかというあたりを加味した検討をしていただいたほうがいいんじゃないかなというふうに思います。
 それからもう一つ。これは直接関連ないですけれども、洞爺湖サミットで環境問題が重要課題だったんですけれども、ちょうど一月後に北京オリンピックがあって、サミットの話題が消されてしまった。それまでは環境問題、洞爺湖サミットというのは物すごくマスコミなどでも扱ったんですけれども、終わった途端に何もなくなっちゃったというような印象を持っております。
 英国のブレア首相は、やめられてから、環境問題の伝道師としてイギリス国内はもとより世界各国でいろいろ活躍されています。ひょっとしてそういう伝道師的な役割を前総理あたりにしてもらうというふうなことも踏まえて、もっと一般へのPRが要るのではないかというふうに思います。
 北京オリンピックの成果というのは、いまだに継続して何か出てきますけれども、洞爺湖サミットの成果とか内容は、ここのところほとんど皆無に近いですよね。だから、折角ですから、それをもっと引き続きPRする何かの手だてを考えてもらえたらというふうに思います。
 以上、意見ですので、お答えは結構です。

○浜本委員 1つは質問です。1つは希望なんですが。まず質問のほうから。
 生物多様性の国家戦略が出まして、それに基づきまして6月に基本法の公布というのが行われました。その中で地方行政、県だとかそういうレベルに関しての生物多様性に関する計画をつくることを推進するということだったんですが、私の今おります県においてもそうですし、ほかのところを回りましても、わかってはいるんだが手がつけられない。ほかにやることがいっぱいある、だれがするんだというので、先進的な県はあったとしても、国立公園や自然遺産保護地域なんかを持つところがたくさんあったとしても、なかなか進んでいないのが実情だと思うんです。
 これが各地方できちんと進んで、それなりの行動策や施策が立てられないと、ほかの省庁、農水省だとか国交省だとかというところにまたがって行われているようなものも進んでいかない、地域の中で。その中で、先ほどのご説明の中には、より強い推進を進めますということだったんですが、具体的にどのような形で各地方行政にかかわっていかれるのかというところをお聞きしたいと思います。
 もう一点は、これは希望でもあるんですが、私のところは干潟の保全活動というのを行っているんですが、うちの前の干潟、錦江湾の中にあるんですが、国立公園はおろか、国定公園も、県レベルの自然公園の対象にもなりません。鳥獣保護区にもなっておりません。なぜかというと、面積的にとても狭いからで、かといって天然記念物級の生き物が何もいないかというと、渡り鳥としてクロツラヘラサギなどは全国でも実はトップランクに飛来している地域はあるんですが、何と申しましょうか、海洋基本計画の中でも生物多様性の基本計画の中でも、浅い海の域の藻場、干潟、サンゴ礁の保護・保全活動については強く書いてあるにもかかわらず、国立・国定公園の中でも干潟に関するのは1割程度。保全活動も進んでいるのか進んでいないのかというのは、この面積的なものであるとか、わかりにくいというところであるとか、やっぱり人々の関心がないのではないかなというふうに思います。
 SATOYAMAイニシアティブで日本の国が世界の生物多様性に関してもイニシアティブをとっている。でも、日本は周りがぐるっと海ですので、この里山や奥山を流域でつないでいて、それの海の一番の入り口のところに当るのが干潟ですから、そういったものの保全活動とか再生回復にかかわることは、何かそういう保護法の枠だけではなくて、もっと地域住民や地方行政や研究者などがかかわりやすいような、人々の視点がそちらのほうに行くような、そういう環境省側としてのかかわり方、国立公園、国定公園のあり方の検討もされますが、面積的にもとても規模が小さいところ、ましてや景勝地でもないような干潟などというのは多分余り話題にも上らないであろうというふうに思います。
 ラムサール条約のように特定の渡り鳥がいるところだとか、ある程度基準が求められても、その基準に達しなくても、とても生態系的に重要な地域というのは日本国内にもたくさんありますし、回復をさせる、再生をするという意味でも、そういう干潟の役割であるとか、そういうことへのかかわりということをもう少し積極的に進めていっていただけたらというふうに思います。

○企画官 1点目の地方における地域戦略の策定について、環境省の取組みということでございますけれども、地方戦略の手引きということで、技術的な面でどういうものをつくっていったらいいのかというのを参考事例を色々と挙げたものをつくりたいと考えております。このような形で、どういうものをつくっていったらいいのかを示していきたいというのが一つでございます。
 それから、実際にそれは誰がやるのかというような話は、確かに自治体側でもあると思います。私どもで今、総務省に対し、地方戦略が今般努力義務になったということで自治体の基準的な財政需要であるということを主張して、地方に対する交付税措置という形を要望しているところでございます。
 そういった形が認められれば、自治体の一つの財政需要として地方戦略策定というのがあるということが地方自治体全体に受けとめてもらえるということになりますので、ひとつの推進力になるのではないかと考えております。

○生物多様性地球戦略企画室長 COP10の絡みで言いますと、都市と生物多様性も一つの議題になっておりまして、COP10に向けて、名古屋市なり愛知県、あるいは国も一緒になると思いますが、きっと自治体の集まりとして連携をつくってどういうことをしていくかという検討をすると思います。そういった中でも各自治体が自治体レベルで戦略をつくっていくというようなことも訴えていきたいと思います。
 一つ二つから始まって十、二十となってきて、半分ぐらいの都道府県なり自治体がつくるようになってきますと、余り意識のない県、力のない県も、もうつくらざるを得ないというふうになってくると思います。RDBの県版も鹿児島県を最後にやっと全都道府県でつくらせていただきましたし、稀少野生動植物保護条例も、終わりの方にあります。自治体レベルの戦略も最後までいくように頑張っていきたいと思っております。

○自然環境計画課長 もう一つ浜本さんのお話にあった、地域で活動している人たちへの支援というのも、とても大事だと思っています。お話にあったような干潟も含めてですけれども、地域の民間団体の人、あるいは地域の自治体と民間団体の人が協力して取り組むような活動で、生物多様性上大事な活動を応援できるようにということで、今年度から生物多様性保全推進支援費というのを立ち上げることができて、19カ所の地域に支援を始めました。こういった支援も拡大していければと思っています。
 それから、速水委員から、里山の定義のお話がありました。国家戦略をつくる時にも速水委員から、その辺をしっかりやりなさいというご指摘をいただいていたところでして、戦略の中でも大まかな考え方は書いたのですけれども、国内でも、それから国際的に説明していく時にも、その辺の定義というか概念が混乱しないようにはっきり説明をしていきたいと思っています。
 戦略の中では、「里山」と使った時は、集落を取り巻く昔から伝統的に自然資源を利用してきた場所で、二次林を中心として人工林も介在したような地域、大ざっぱに言って国土の2割ぐらい、「里地里山」と表現したときには、それに農地も加えたまとまりのある地域ということで国土の4割ぐらいというような大ざっぱな考え方は出していますけれども、より混乱のないように説明していきたいと思います。「SATOYAMAイニシアティブ」と、ローマ字で「SATOYAMA」と書いた時は、もうちょっと広く自然資源を持続的に利用しているような地域、2次的な自然資源利用をしているような地域のあり方というようなことを考えていけるようにということで、少し幅広いことが指せるようにしております。この辺もしっかりした定義が大事だと思いますので、説明をしていけるようにしていきたいと思います。
 服部委員から洞爺湖サミットの盛り上がりが下がっているのではないかというご指摘もありました。まさに2010年に向けて再び盛り上がりを高めていくことが国内的にも国際的にも大事だと思っています。冒頭の局長あいさつにありましたように、2010年は国際生物多様性年に国連総会で指定されました。2010年の9月には生物多様性をテーマにした首脳レベルの集まりをやろうということも計画をされています。そういうことに向けて国際社会の中でも、日本の中でも、生物多様性をキーワードにして、洞爺湖サミットで盛り上がった環境のうねりというのを、是非皆さんのお知恵をかりながら大きくしていきたいと思っています。よろしくお願いいたします。

○自然ふれあい推進室長 簡単に先ほどの速水委員のご質問に答えさせていただきます。維持管理費、利用者負担の問題でございます。全国的に一律にというのはなかなか大変難しい問題がございますが、そういう中でも、ある地域では既にガイド料の一部を里山の維持管理に使うということで利用者から料金を徴収をしていたり、あるいはサンゴの保全のために利用者負担がとれないか、それをルール化できないかといった議論が始まりつつある地域もございます。そういった地域を支援していきながら、考え方を全国に広げていきたいと考えております。
 それからもう一点、服部委員より、エコツーリズムを推進する地域が2つの市町村にまたがる場合は、いきなり国になるというご指摘がございました。ちょっと複雑な法律でございますが、2つの市町村にまたがるような地域でエコツーリズムを推進する場合には、2つの市町村が協働してそれぞれの協議会を運営しながら認定申請をしていくという仕組みになっております。法律上では県の役割というのは書いていないのですけれども、基本方針で県の役割は非常に重要であるということをうたっておりまして、県にも積極的に参画をいただきながら進めていきたいと考えております。
 以上でございます。

○大臣官房審議官 すみません、それでは、まだずっと待っておられて発言されてない委員がいらっしゃいますので、そちらの方を優先して発言していただくようにしたいと思います。
 石坂委員、お願いしたいと思います。

○石坂委員 要望を一言、老婆心ながら申し上げるんですけれども、さっき生物多様性の神戸の呼びかけですか、この中にもSATOYAMAイニシアティブという言葉が入っていました。いろいろなところで、国際的な場でもSATOYAMAイニシアティブと言っているんですけれども、SATOYAMAイニシアティブとはどういうものかということについて、確かに里山というのは日本の過去においては大変立派な存在としてあったわけです。それがそれなりの役割を果たしてきたということはそうなんです。そのことを言うというならば、これはそうだなとみんな思うと思うんですけれども、今の日本の里山の状態が世界に例となるような里山の状態として発信できるかというと、それは疑問だと思うんです。
 国家戦略を議論したときも、この里山の問題、じゃ今、里山として有効活用されているものはどういうものなんだという例を幾つか、たしか説明を受けた記憶がありますけれども、それは探すのに苦労するほどなんですよ。そういうものを世界に発信していくというのは一体どういうことなんだという疑問を私はかねて持っているんです。にぎわいプロジェクトもいいですよ。これによって里山をこれから活性化していこうと、立派なものにしていこうと、そういうことはいいんです。
 ですから、日本として里山をいかに生物多様性という観点から活性化し、立派なものに育てて再生していくかということは、これは生物多様性国家戦略の問題として何の異存もないんですけれども、それを世界に発信していくというのは、一体何を発信するんだというのは、私はかねがね疑問に思っているので、ここでお答えは要りませんけれども、よくそこは考えて行動していただきたいと思います。

○総務課長 それでは引き続き、私が司会を引き受けさせていただきます。
 それでは磯部委員、お願いいたします。

○磯部(雅)委員 国立公園の総点検というところに関係するのかもしれませんけれども、前半、もっと前に、きょうの最初にご説明があった、国立公園、国定公園で海岸が少ないという件で、ご説明があったように、今指定されているのは岩石海岸がかなり多くて、干潟を含めた砂礫浜というのは極めて少ないと思います。それをこれからお考えになるのかと思いますけれども、言わずもがなですけれども砂礫浜は土砂が動いているので、その動きということを十分に考慮をしてやっていただきたいというお願いであります。
 言葉で言うと流砂系という概念がありまして、海岸だけではなくて、山の上から河川を通じて土砂が移動する全体を視点に置きながら考えていかないと、干潟というのは、あるいは砂礫浜というのは維持されないという点がありますので、そこはぜひお考えいただきたいというふうに思っています。

○総務課長 次に、川名委員お願いします。

○川名委員 余り重要じゃないのでパスしようかと思っていたんですけれども、エコツーリズム推進のところで、市町村が協議会を組織するとか、市町村が全体構想の認定を申請するとありますけれども、これは事業者とか、NPOとか、専門家とか、土地所有者、こういう人たちが協議会を組織したり認定を申請したりすることはできないのか。要するに、主体は市町村だけなのかということをお伺いしたかったんです。

○総務課長 では、仙田委員お願いします。

○仙田委員 私は建築家なものですから、自然環境の中における人工的な、いわゆる景観としての建築というか施設というところについて、これはたびたびこのような会議のときも発言していますが、日本の国立公園あるいは自然公園でも、かなり景観阻害要素として建築的な施設的な景観というものがあると。ぜひ、その評価というところにおいてはそういう、さまざま国立公園内における建築の規制というものがあるんですが、実際にはそれにおいても、やはりこの戦後の50年の中では、質的には余り高くない施設も相当できていると。それが今後変わっていくというか、いわゆる建物の寿命というところに来て、建てかえという部分もあるし、あるいはコンバージョンというか、躯体を残しながら少し改装していくとか、耐震補強をするとか、あるいは屋上緑化をしていくとか、さまざまな問題が出てくると思うんですが、そういう点でも建築あるいは施設景観という問題については、ぜひ評価の項目として厳しくやるべきではないかなという感じはしています。
 やはり今後、エコツーリズムも、あるいは日本の自然環境の国際性というような問題においても、アジアだとか、ヨーロッパ、アメリカに比べてもそういう、特に施設環境については非常に私は貧しいと思っています。今後も、アジアのそういう部分から考えても、日本の施設景観というところが非常に問題だと。かつ、里山の問題についても、特に今、日本の伝統的な民家というものがどんどん崩れておりますから、そういうような点も含めて、国立公園地内及びその周辺というような部分についても少し制御できるようなシステムを今後、私は日本では考えていく必要があるのではないかというふうに思っています。意見であります。

○総務課長 中道委員、よろしくお願いします。

○中道委員 資料3の総点検事業のことについてちょっとお尋ねしたいと思います。回答はきょう要りません。
 風景地を評価するというのは非常に難しい作業だと思いますし、こういうことに挑戦されていることについて敬意を表しますけれども、2つほどちょっとお話させていただきたいと思うんですけれども、いろいろやって規模が上位なものに来るまでにいろいろな検討をされていると思いますけれども、どうしてこういう規模が上位なものを選ぶようになったのか。そういう話があったほうが次の検討に役に立つのではないかなという感じがいたします。
 それから、その裏のページに、地形と生態系、岡島委員も発言されたんですけれども、そこにプラスが入っているんです。多分これは地形で見た国立公園との重複、それから生態系で見た国立公園の重複よりは、地形と生態系の重複というのがもっと意味があるような感じがするんです。そういうものを見た上で国立公園との重ね合わせを議論するほうが、話としてはおもしろい、説得力あるものが出てくるんじゃないかと思いますし、もしかしたら既にそういうことをやられているんだろうと思いますけれども、何かの機会にまたご説明いただければと思います。

○総務課長 原委員、お願いいたします。

○原委員 エコツーリズムに限らないんですけれども、政策を施策化して提案してきた場合に、やはり予算と人の問題だと思うんです。だから、本省では担当者がいて、こうやっていますというのはここで説明してくれるからわかりますけれども、市町村レベルの話になったときに、そういう担当者がきちっといるのかどうかとか、どういうふうにそういう市町村レベルで対応するのかという話のあたりは、要するに金と人でどうなっているかということを、現在どうなっているかという話と、3年後、5年後にこうしたいという話をそれぞれの施策について提示していただかないと、ちょっと判断の基準がないと思うんですよ。
 先ほど、鹿児島県が遅まきながらできましたよという、それは10年かかりましたよという話でも、そういう事例もあるわけですから、これを何年ぐらいにどのぐらいにするかというような話も含めて施策化しないと、具体的になってこないんじゃないかという話で、盛りだくさんになるだけに、守備範囲が広くなるだけに、全部中途半端に終わっちゃうんじゃないかというのが、僕は40年環境省とつき合ってきて、不満というか、ちょっと心配なところなんです。お金と人の問題は必ず出すようにして、それで理解を求めるというのが僕はやっぱり手っ取り早いと思います。その辺を少し配慮してもらったらどうかなというご提案です。

○和里田委員 生物多様性基本法のご説明をいただいたんですが、その第10条を拝見しますと、年次報告等というところで、政府は毎年国会に生物多様性の状況及び政府が講じた施策について報告するというふうにありますが、今の原さんのお話にもちょっと関連すると思うんですけれども、生物多様性国家戦略をおまとめになって以来、この数年、環境省として点検ということでお進めいただいた中で、政府のこうしたことだけじゃなくて、地方自治体、あるいは民間、企業、それから地域の方々の活動状況もまとめて報告することをしてこられたわけですけれども、基本法に基づく年次報告という形で、白書という形で簡単に扱われてしまいますと、その辺が大いに欠落するんじゃないかということを非常に心配しております。その辺、どうフォローしていくのかということをお聞きしたいと思います。

○総務課長 他にご質問ご意見はございませんでしょうか。
 それでは、今委員の方々からいただいたご質問、意見について、事務局から発言させていただきます。
 まず、私からですが、原委員より非常に大きなご指摘を受けました。言い訳ということではございませんけれども、行政評価等で毎年点検することで着実に進めていくような取組みを進めているところでございます。引き続きそういった取組みを進めていきたいと思っているところでございます。
 それでは次に、磯辺委員、仙田委員、中道委員から国立公園関係についてご質問がありましたので、担当の神田課長からお答えいたします。

○国立公園課長 磯部委員からは流砂系、海岸における評価の仕方、区域のとらえ方の話だったと思います。これは既に海岸を評価する上で区域制をとっている私どもの制度上、非常に重要なポイントだと思いますので、総点検の中で、あるいはこの審議会で検討するような制度の中で、その点は十分念頭に置いて考えていきたいと思っております。
 それから、仙田委員からありました、建物について景観阻害要素にならないようにということでございます。まさにご指摘のとおりでございまして、国立・国定公園の建物は景観阻害要因であってはならぬ話でございまして、あるとすれば、それは景観を引き立てるようなものでなくてはいけないし、その辺はまさにこれは従前からやっております規制行政のやり方の話で改善すべきところは多々あると思います。その辺、通常の管理の中で、引き続き念頭に置いて十分反映させていきたいというふうに考えております。
 それから、その中で、質の悪い建物といいますか、典型例で言いますと廃屋みたいなものをどうするかというのも大きな課題になってございます。それについて自然公園の中でどうやって取り組んでいけるかという点についても、このあり方の中で検討していくポイントの一つだなというふうに考えております。
 中道委員から指摘ということでいただいております。先ほどのご説明でございましたとおり、今後、具体的に選定要領ですとか、調査基準ですとか、そういうものについて案をつくりましたら、また審議会のほうにお諮りをいたします。その際に、考え方について十分細かなところも含めてご説明させていただきたいというふうに考えております。

○総務課長 それでは、川名委員からエコツーリズムの関係でのご質問があったと思いますので、自然ふれあい推進室長よりお答えいたします。

○自然ふれあい推進室長 先ほどご指摘いただきましたように、既に民間ベースで協議会をつくっていらっしゃるところもございます。しかしこの法律では、ルールづくりといった公的な権限が絡んでまいりますので、市町村が事務局を務めることが求められており、エコツーリズム推進法の認定申請等につきましては市町村からしか申請はできないということになっております。
 しかしながら、市町村がやる気がなくて周りの民間の方々がやる気があるといった例もございますので、そういったことを想定して、この法律では、協議会をつくったり全体構想をつくるべきであるという提案を周りの民間の方々から出せるということになってございます。
 以上でございます。

○総務課長 それでは、和里田委員からの多様性白書につきまして、自然環境計画課長よりお答えいたします。

○自然環境計画課長 点検と白書の関係ということでご指摘をいただきました。点検についてはこれまで国家戦略の点検を毎年やってきたような形で、さらに中身は工夫しながら、地方の取組や民間の取組もカバーしたような形で進めていきたいと思っています。そういった点検の成果を、毎年作る白書にも、反映できるところは反映させていくという形で進めていけたらと考えているところでございます。
 里山についても色々なご指摘をいただきました。世界全体でも奥山と都市の間に挟まれた二次的な自然環境地域といった非常に広がりのある地域において、生物多様性の保全と持続可能な利用をどう両立させるかということが非常に大きな課題になっています。そのために必要な、共通認識として大切な考え方や計画づくりの手法を、モデル的にとりまとめていければと思っております。その際に、日本の里山の知恵で生かせる部分は何か、あるいは世界各地の知恵や伝統的な仕組みで生かせるものは何かということを考え、そうした知恵や事例を集めながら、意味のある、意義のある提案ができればと考えております。しっかり石坂委員のご指摘も受けて、今後深めて考えていきたいと思っています。よろしくお願いいたします。

○総務課長 以上、事務局から質問に対する回答をさせていただきましたが、それに対して追加、あるいはまた他にご発言はありますでしょうか。
 他にございませんようでしたら、これをもちまして審議を終わらせていただきたいと思います。事務進行上、不手際がありまして本当に申し訳ございませんでした。
 今回の自然環境部会の諮問にありました「自然公園法の施行状況等を踏まえた必要な措置について」は、本日設置をお認めいただきました委員会を早速午後1時から開催させていただきたいと思います。小委員会の方々には引き続きよろしくお願いしたいと思います。
 ありがとうございました。

○国立公園課長補佐 長時間にわたりご審議いただきましてありがとうございました。最後に事務局のほうからご連絡事項でございます。
 本日の出席委員でございますが、所属委員42名のうち24名の委員の方にご出席いただきましたので、定足数は満たしており、本日の部会は成立しております。
 お手元にございます資料送付について、郵送をご希望の委員の方は、お手元の用紙に記入の上、机の上に置いていただければ、事務局から後日郵送させていただきます。

午後0時09分 閉会