中央環境審議会自然環境部会(第8回)議事録

開催日時

平成18年12月1日(金)9:30~10:55

開催場所

中央合同庁舎第5号館6階 共用第8会議室(東京都千代田区霞が関1-2-2)

議題

  1. 開会
  2. 議事
  3. 国立公園・国定公園の公園区域及び公園計画の変更について(諮問案件)
    (1)上信越高原国立公園(草津・万座・浅間地域)の公園区域及び公園計画の
       変更について
    (2)吉野熊野国立公園の公園計画の変更について
    (3)霧島屋久国立公園(屋久島地域)の公園区域及び公園計画の変更について

  4. 報告
  5. (1)国立・国定公園の指定及び管理運営に関する検討会について
    (2)日光国立公園の拡張及び尾瀬地域の単独国立公園化について

  6. その他
  7. 閉会

配付資料

<国立公園・国定公園の公園区域及び公園計画の変更について>

資料1    自然公園制度の概要

資料2-1 上信越高原国立公園(草津・万座・浅間地域)の指定書及び公園計画書

資料2-2  吉野熊野国立公園の公園計画書

資料2-3  霧島屋久国立公園(屋久島地域)の指定書及び公園計画書

資料3   各公園の変更案説明資料

資料4   国立・国定公園の公園区域及び公園計画の変更に関するパブリックコメントの
      実施結果について

資料5   各公園の変更案の概要


<報告>

参考資料1 国立・国定公園の指定及び管理運営に関する検討会について

参考事項2 日光国立公園の拡張及び尾瀬地域の単独国立公園化について

議事録

午前9時30分 開会

○国立公園課長 おはようございます。定刻になりましたので、ただいまより中央環境審議会の自然環境部会を開会します。
 私は、自然環境局国立公園課長の鍛冶です。よろしくお願いします。
 本日は、所属委員44名のうち、ただいまの時点で27名の出席をいただいておりますので、本部会は成立しております。事前の連絡では、もう数名の方が出席してくださる予定ですが、時間になりましたので始めたいと思います。本日は、自然環境局長の冨岡、審議官の黒田以下、自然環境局の関係課長、室長が全員出席しております。配席表に名前が出ておりますのでご覧ください。
 それでは、熊谷部会長、よろしくお願いします。

○熊谷部会長 それでは、中央環境審議会自然環境部会を開催します。
 審議に先立ちまして、冨岡局長からご挨拶をお願いします。

○自然環境局長 おはようございます。9月5日に自然環境局長を拝命しました冨岡です。よろしくお願いします。
 本日は、多くの先生方に早朝からご出席いただきまして大変ありがとうございます。日頃から、自然環境行政の推進につきましていろいろ幅広くご指導を賜り、厚くお礼申し上げます。
 申し上げるまでもなく、国立公園が我が国に誕生してから75周年になり、また、来年は自然公園法ができてから50年になる非常に記念すべき時期に当たっています。この間、この前身であります自然環境保全審議会の当時から、先生方には国立公園・国定公園の指定・利用につきまして大変貴重なご意見を賜り、今日に及んでおりますことに心からお礼申し上げます。
 本日は、上信越高原国立公園、霧島屋久国立公園に係る公園区域及び公園計画の変更、それと吉野熊野国立公園に係ります公園計画変更について審議いただくことになっています。これらにつきましては、国立公園の保護と適正利用の推進を図る上で大変重要なものでございますので、ご審議賜りたいと思います。
 なお、国立公園に関しましては、一つは、報道等で先生方もご存知かと思いますが、現在、日光国立公園のうちの尾瀬の地域につきまして、拡張した上で独立した国立公園にするということで検討を進めており、関係方面との調整も大分進んでいます。来年度になると思いますが、この審議会において本件につきましてもご検討を願うことになるかと思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。
 もう1点は、冒頭申し上げました長い歴史を持ちます我が国の国立公園・国定公園の制度につきまして、今後のあり方を生物多様性の保全の観点から見直す必要があるのではないかという点と、利用につきまして、もうちょっと多様な主体が参加できるような仕組みを考えるべきではないかという点に重点を置きまして、ご検討いただく検討会を先日発足させました。この検討結果を踏まえ、ただいま申し上げたような方向でできれば法律改正をしたいと考えております。これも来年度になると思いますが、中央環境審議会にいてご審議いただくということになろうかと思います。今後ともよろしくお願い申し上げます。
 なお、最近の熊の大量出没とか動物関係で、本日の国会で大変多くの質問が出ており、ただいまから出かけますので、これで失礼いたします。

○熊谷部会長 どうもありがとうございました。
 本日の部会は公開で行いますので、報道関係者や傍聴の方も同席されています。会議録は後ほど事務局で作成し、本日ご出席の委員の了承をいただいた上で公開することになります。
 なお、議事要旨については事務局で作成したものを、私部会長が了承した上で公開することをご了承願います。
 それでは、事務局から配付資料の確認をお願いします。

○国立公園課長   お手元の机の上に資料がありますが、一番上に本日の議事次第が1枚あります。その下が委員の名簿です。さらに配席表、次に諮問書のコピーが2枚あります。その下に配付資料の一覧があり、以下に資料1自然公園制度の概要、資料2の枝番で1、2、3と分冊になっております指定書及び公園計画書(案)があります。その下に資料3、資料4、資料5、いずれもA4のコピーをとめたもの。さらに、その下に、最後に報告事項で使います参考資料1と2で全部です。
 資料に不備がございましたら、事務局にお申し出ください。
 熊谷会長、よろしくお願いします。

○熊谷部会長 よろしいでしょうか。
 平成15年6月30日に行いました「利尻礼文サロベツ国立公園の公園区域の拡張に関する審議」以降は、自然公園に関する審議は小規模な変更案件であったことから、当部会内に設置する自然公園小委員会において審議を行ってきました。現在の委員による当部会での自然公園関係の審議は初めてですので、審議に入る前に自然公園制度の概要と自然環境部会との関わりについて、事務局より説明をお願いします。

○国立公園課長 資料1を使って説明します。
 自然公園制度の概要という資料がございますが、それの1枚目をご覧ください。
 まず、国立・国定公園の自然公園制度ですが、1番目の指定は、国立公園は我が国の風景を代表する傑出した自然の風景地として環境大臣が都道府県及び審議会の委員に意見を聞いて指定します。国定公園は、国立公園に準ずるすぐれた自然の風景地を、環境大臣が都道府県の申し出により、やはり審議会の意見を聞いて指定します。国立・国定公園の指定の解除あるいは変更する場合も、審議会の意見を伺う制度となっています。
 また、自然公園には都道府県立自然公園というのがございますが、これは都道府県が条例に基づき指定するもので、この審議会とは関わりません。
 2番目の管理ですが、これは指定された国立公園をどのように保護し、あるいは利用・整備していくかということで、国立公園の目的は大きく2つあります。1つは、優れた自然の風景地を保護すること、もう一つは、自然とのふれあい等利用を推進していくことです。この2つの目的を達成するために、環境大臣は公園ごとに策定する公園計画に基づき、各種の行為規制や、公園事業として施設の整備を行います。この環境大臣が策定する公園計画を決定したり、変更する場合も、審議会の意見を聞くこととされており、本日3件の案件の審議をお願いする次第です。
 規制の関係では、公園区域の中に特別保護地区、あるいは第1種、第2種、第3種特別地域、さらには海中公園地区を指定し、この中で開発行為を行おうとする場合は、国立公園においては環境大臣、国定公園では知事の許可が必要となります。この制度については、2ページ目に図化してありますので併せてご覧ください。
 次に、公園事業ですが、これは公園計画に基づき保護あるいは利用のために必要な施設を整備し、管理することを公園事業の執行と呼んでいます。この公園事業の執行に先立ち、事業のおおよその位置や規模などの概要を決定する手続があり、これを事業決定と呼んでいますが、国立公園の場合は環境大臣、国定公園の場合は都道府県知事が決定します。国立公園に関する事業決定に際しても、当審議会の意見を伺うことになっています。
 国立公園の事業は国が行うとなっていますが、都道府県や市町村あるいは民間も環境大臣の同意・認可を受けて執行することができます。国立公園の中にあるキャンプ場やビジターセンター、宿泊施設、登山道などといったものが、この公園事業に該当します。
 次に、国立・国定公園と当審議会の関係をご説明します。3ページ目をご覧ください。審議案件と部会、あるいは、その部会の中に設けられた自然公園小委員会の役割分担、仕分けを整理したものが3ページの表です。例えば、公園の指定等と書いてありますが、公園の指定については、新たな指定はこの部会の案件ですが、区域の変更についてはその広さ、規模によって、部会あるいは小委員会で分かれます。下の注にあるように、公園区域の変更される総面積が1,000ヘクタールを超えない場合は小委員会となります。審議会は年2回ほど定期的に開催しております。
 本日3件諮問いたします案件は、区域の拡張・変更が1,000ヘクタールを大きく超えるもの自然公園行政上重要な案件であり、部会で審議をお願いする次第です。
 以上です。

○熊谷部会長 ありがとうございました。
 それでは、早速審議に入りたいと思います。本日の審議事項は、諮問第196号の上信越高原国立公園の公園区域及び公園計画の変更、諮問第197号の吉野熊野国立公園の公園計画の変更及び諮問第198号の霧島屋久国立公園の公園区域及び公園計画の変更の3件です。
 諮問書の朗読は省略します。
 それでは、事務局から内容説明をお願いします。

○事務局(千田) 自然環境局国立公園課で公園計画専門官をしております千田と申します。本日ご説明させていただきます。よろしくお願いします。
 それでは、公園区域及び公園計画の変更に関する諮問案件についてご説明します。
 これからスクリーンに映す内容は、資料3としてお手元にも配付しています。今回ご審議いただく案件は、1件目が、上信越高原国立公園の草津・万座・浅間地域における公園計画の再検討です。2件目が、吉野熊野国立公園における利用調整地区の指定です。3件目が、霧島屋久国立公園、霧島地域における口永良部島の編入についてです。
 最初に、上信越高原国立公園についてご説明します。
 上信越高原国立公園は、戦後間もない昭和24年に指定され、昭和31年には妙高・戸隠地域が編入されました。面積は約19万ヘクタール。大雪山国立公園に次いで2番目に広い公園です。浅間山等の火山と火山活動により形成された地形が見られ、温泉やスキーの利用も盛んなことが特徴です。
 上信越高原国立公園は、今回審議いただく草津・万座・浅間地域の他に志賀高原地域、谷川・苗場地域、妙高・戸隠地域の4つの地域に分けて管理しています。このうち、妙高・戸隠地域については昭和55年に再検討が実施されていますが、他の地域についてはまだ実施されていません。なお、再検討とは、公園の指定後初めて全体的に公園区域と公園計画を見直すことを言います。
 草津・万座・浅間地域では、昭和24年の公園指定時には公園の区域が定められ、昭和27年に特別地域が指定されました。昭和44年には浅間山に特別保護地区が指定されましたが、全体的な公園計画の見直しは公園の指定以来行われておらず、現在も特別地域の地種区分が未定のままとなっています。この間、山麓部では農地開発や別荘造成が進められ、山岳観光のための山越えの道路が建設される等、本地域の自然環境や社会状況は大きく変化しています。大きな流れとしては、昭和30年代から40年代にかけては自動車道等のインフラ整備がなされ、昭和50年から60年代にはスキー場等の観光施設の整備が進み、平成に入ってからは近くに高速道路や新幹線が整備され、首都圏から短時間でアクセスできるようになっています。
 次に、再検討の基本的な考え方をご説明します。
 公園区域については、原則として現状どおりとしますが、指定以降の開発により公園の資質を失った箇所は最小限の区域からの削除を行います。
 保護規制計画については、保護の対象を明確にし、保護の強化や緩和を行うこととし、特別地域の地種区分が未定であることから、第1種、第2種、第3種に区分します。
 利用施設計画については、当初の計画策定から数十年が経過し、例えば車道が整備されることにより日帰り利用が可能となったり、歩く利用がされなくなる等、利用状況が変化しています。このような利用状況の変化や公園利用上の必要性の観点から全体を見直し、必要に応じて施設計画の追加、変更、削除を行います。また、現在使われなくなった地名を施設の名称として用いているものについては、適切な名称に変更します。
 それでは、公園の区域と公園計画変更の内容をご説明します。
 今回再検討を行った草津・万座・浅間地域は、赤で表示している地域です。黄色で表示しているのは、志賀高原地域と谷川・苗場地域です。草津・万座・浅間地域を6つのエリアに分けてご説明します。まず、こちらの四角で囲っている野反湖、四万エリアです。黒の太線で縁取られているエリアが草津・万座・浅間地域の外周線になります。この太線内で黄色で表示しているのが特別地域、着色のないところは普通地域です。利用との調整を図り、風致の保護を図る野反湖及びその周辺と四万温泉を第2種特別地域に、野反湖に隣接する地域及び稲包山、赤沢山を第3種特別地域として保護を図ります。こちらが第2種特別地域とする四万温泉です。
 続いて、野反湖、四万温泉エリアにおける利用施設計画の変更についてご説明します。
 現在の公園計画上の車道を赤い線で、歩道を緑の線で表示しています。このうち、現地では既に道路が消失している四万花敷線の歩道計画を削除します。野反湖周辺の散策を楽しむため、野反湖畔線歩道の路線の延長及び野反湖周回線歩道を追加します。この赤いマークの表示が現在のその他の利用施設計画です。こちらの◎が利用の拠点となる集団的施設地区、こちらの2つの花のようなマークが園地、家型のマークが宿舎、三角のマークが野営場です。今回、利用状況の変化から整備の必要性が乏しくなった赤沢山園地と相倉山肩園地を削除します。野反湖の南側に野反湖休憩所を追加します。
 以上のような変更を反映した最終的な利用施設計画は、このようになります。
 古くから温泉地として親しまれ、昭和29年に国民保養温泉地の第1号の指定を受けた四万温泉を引き続き集団施設地区とし、稲包山や赤沢山への登山などの公園利用の拠点とします。また、野反湖の周辺に湖を周回する歩道と野営場、宿舎、休憩所を配置し、散策や宿泊の利用ができる計画とします。
 なお、これ以降の利用施設計画の説明におきましては、時間の関係上、現在の計画から何を削除し、何を追加・変更したかという個々の利用施設ごとの説明は省略いたします。
 変更のポイントと追加や削除による変更後の計画についてご説明していきます。
 なお、お手元に資料2-1としてお配りした施設計画変更図(案)に、個々の変更内容については表示しています。
 こちらが野反湖畔線歩道からの眺望です。
 次に、草津・万座エリアをご説明します。
 白根山と本白根山を第1種特別地域として厳正に保護を図り、その周辺の万座温泉や殺生河原を第2種特別地域に、公園区域外の草津温泉に接する地区を第3種特別地域とします。また、草津温泉の南側の普通地域では宅地開発が進み、公園としての資質が失われていることから、公園区域から削除します。こちらが第1種特別地域とする白根山、こちらが公園区域から削除する草津の住宅地です。
 草津・万座エリアの施設計画変更案がこちらです。白根山周辺の万座・草津渋峠では現況に合わせ、スキーや登山などの利用を推進するため、スキー場や歩道などの施設を計画に位置づけます。また、草津集団施設地区については、国立公園の区域外にある温泉街が利用拠点として機能していることから、公園利用上必要な施設のみを単独施設に振りかえます。こちらは本白根山に至る歩道です。
 次に、四阿山(あずまやま)・菅平(すがだいら)エリアについてご説明します。
 四阿山の山頂部は火口などの火山特有の地形や高山植物が見られ、周辺からの眺望の対象ともなっている公園の核心部であることから、特別保護地区として厳正に保護を図ります。その周辺の菅平や鳥居峠を第2種特別地域に、隣接する人工林は林業との調整を図るため第3種特別地域とします。また、公園区域外に接する普通地域では農地開発が著しく、公園としての資質が失われていることから、公園区域から削除します。
 こちらは菅平方面から見た四阿山と根子岳(ねこだけ)ですが、山頂部を特別保護地区に、山麓部を第2種特別地域として保護を図ります。
 四阿山、菅平エリアの施設計画変更案がこちらです。四阿山、根子岳の登山や菅平におけるスキー場などを施設計画に位置づけます。また、菅平集団施設地区は区域の大半が農用地であることから、さまざまなリゾート施設が混在する開発が進んでいます。菅平の広大な区域には高原野菜の農耕地があり、この中に公園事業施設と一般の建築物が混在していることから、計画的・集約的な整備が困難な状況です。このため、集団施設地区を削除し、公園利用上必要な施設計画を単独計画として計画に位置づけます。
 こちらが四阿山に至る歩道です。
 次に、鹿沢エリアについてご説明します。
 湯ノ丸山山頂部は高山植物群落が見られるなど優れた自然環境を有していることから、普通地域から第1種特別地域に、角間山、桟敷山と鹿沢温泉は第2種特別地域に、その周辺を第3種特別地域として保護を図ります。また、新鹿沢とその隣接地は宅地や農地として開発が進んでいますが、特別地域に隣接し利用動線も含まれている新鹿沢については普通地域として公園の区域に残し、その他のところは削除します。こちらが第1種特別地域とする湯ノ丸山、こちらが普通地域とする新鹿沢、こちらが公園区域から削除する宅地及び農地開発が進んでいる区域です。
 鹿沢エリアの施設計画変更案がこちらです。公園利用の拠点である鹿沢を集団施設地区とし、湯ノ丸山や角間山の登山やスキー等の利用を推進するための歩道計画やスキー場計画を位置づけます。湯ノ丸山に至る歩道です。
 次に、こちらの浅間エリアについてご説明します。
 浅間山山頂は昭和44年に特別保護地区に指定されていますが、その外輪山も同様に特異な火山景観を有するとともに、周辺からの眺望の対象となっていることや、高山に生息する貴重なチョウの生息地ともなっています。よって、普通地域から特別地域に変更します。浅間山の溶岩流によって形成された溶岩台地である鬼押出を第1種特別地域として、その隣接地は公園利用や農林業との調整を図るため第2種及び第3種特別地域とします。
 また、軽井沢の千ケ滝西区は法定受託事務として、県が普通地域と同等の取り扱いにより管理していたものです。なお、地域の自主規制により良好な環境が維持されていますが、周辺の普通地域と同様の別荘地として取り扱うため、普通地域とします。
 こちらが特別保護地区を拡張する浅間山の北斜面です。第2種、第3種をこのように指定します。第1種特別地域の鬼押出です。普通地域とする軽井沢の別荘地です。
 浅間山エリアの施設計画変更案がこちらです。浅間山や黒斑山、石尊山への登山や車からの眺望を楽しむための施設を計画に位置づけます。一方、活火山である浅間山の安全な利用を図るため、危険性の高い登山ルートは公園計画から削除を行います。また、小瀬集団施設地区については集団的な整備を行える場所がなく、集団施設地区の計画を削除し、必要性の高い施設計画のみを単独施設として位置づけます。黒斑山に至る歩道です。浅間山の眺望を楽しむのにすぐれた有料道路です。
 最後に、こちらの碓氷峠エリアについてご説明します。
 主要な利用動線である国道18号線沿線を第2種特別地域に、その周辺及び霧積温泉を第3種特別地域として利用との調整を図りながら保護します。
 碓氷峠エリアの施設整備計画変更案がこちらです。車道の整備等により必要性が乏しくなった歩道を削除する等の整理を行うとともに、鼻曲山に至る歩道など必要性の高い比率を計画に位置づけます。
 上信越高原国立公園に係る公園計画の説明は以上です。
 続きまして、吉野熊野国立公園の公園計画の変更についてご説明します。
 吉野熊野国立公園は、大峯山脈や大台ヶ原等の山岳、那智の滝、七ツ釜、与八郎滝といった幾つもの滝が連続する渓谷や、変化に富んだ海岸地形が特色の公園です。今回、公園計画の変更を行うのは紀伊半島の中央部、三重県と奈良県の県境にまたがる大台ヶ原です。その東側のエリアを東大台、西側のエリアを西大台と読んでいます。大台ヶ原は標高1,695メートルのヒデ岳として最高峰として、その周辺は急斜面のラインとなっています。年平均降水量は4,000ミリ以上という日本有数の多雨地帯です。トウヒ、ブナ、ウラジロモミなどの自然林が広がり、特に西大台のウラジロモミ-ブナ群落は、太平洋型としては西日本最大規模となっております。ニホンジカやツキノワグマの他多くの動物の生息地ともなっています。しかし近年、大台ヶ原の特に東大台では生態系のバランスが崩れ、森林の衰退が進んでいます。
 こちらの写真は1960年代の東大台の正木峠ですが、コケに覆われた林床の美しい森林でした。この同じ場所の30年後が次の写真です。1990年代には乾燥した林となり、全く様相が変わってしまっています。この主な原因としては、昭和34年の伊勢湾台風による大量の風倒木の発生、ドライブウェーの開通による入山者の増加、増加したシカによる食害といった複合的な影響によるものと考えられています。環境省では東大台を中心として、衰退してしまった森林を再生するため自然再生事業を進めていますが、一方、西大台にはブナ林から成る原生的な森林がまだ残されており、将来的にもこの良好な状態を保つことが必要です。
 大台ヶ原の利用者数は増加傾向にあり、年間30万人にも上ります。このうち大多数は歩道等の利用施設が十分整備された東大台の日帰り利用者ですが、西大台地区では年間5,000人程度の利用があります。東大台と比べれば西大台の利用者数はそれほど多いとは言えませんが、原生的な自然が残る西大台地域では利用施設の整備は最小限とする方針もあり、歩道を外れるなどの利用マナーの低下が自然環境に悪影響を及ぼす恐れがあります。このことから、自然環境に配慮した質の高い利用を推進するとともに、ゴールデンウィークや紅葉シーズンに集中する利用者数のピークカットと利用形態のコントロールを目的として利用調整を行うことが、西大台の森林衰退の未然防止に有効と考えました。
 平成14年の自然公園法改正において創設された利用調整地区制度を、全国で初めて適用します。この利用調整地区では利用者の立ち入りを制限することができ、指定認定機関の認定を受けない限り立ち入りができません。今回、利用調整地区の指定を行うのは大台ヶ原ドライブウェーの南側、西大台地区の周回線歩道を含む450ヘクタールの土地です。公園計画に定める内容は地域のみであり、利用調整を行う期間や立ち入りの認定基準は、別途地方環境事務所長が策定する利用適正化計画をもとに今後定めることとなります。
 参考までに、現在検討している内容については、利用調整を行う期間は大台ヶ原ドライブウェーの開通期間である4月から11月までの期間を予定しております。立ち入りを認定する場合の基準としては、人数の上限やペットを持ち込まないこと、いろいろなレクチャーを受けること等を定める予定です。
 以上で、吉野熊野国立公園の説明を終わります。
 続いて、霧島屋久国立公園、屋久島地域の公園区域の変更及び公園計画の変更についてご説明します。
 屋久島地域は、昭和9年に指定された霧島国立公園に昭和39年に追加指定されて霧島屋久国立公園となりました。屋久島地域においては、海岸から宮之浦岳にかけての植生の垂直分布や屋久杉などの巨樹が見られます。また、国立公園の一部が世界自然遺産地域に登録されています。今回変更を行う内容は、屋久島の西北西12キロに位置する口永良部島の全島面積3,577ヘクタールを、霧島屋久国立公園の公園区域に編入するものです。口永良部島は屋久島の北半分と同じ上屋久町に属します。人口は166人、83世帯です。島へのアクセスは、屋久島の宮之浦港からフェリーが就航しており、所要時間は1時間40分です。気候は屋久島と同じ亜熱帯性です。主要な産業は、放牧による子牛の生産です。そのほかウコンやシイタケの栽培、タケノコの加工、イワシ、アジ、サバ、イセエビ等の漁も行われています。写真は、口永良部島への町営船フェリー太陽と放牧されている黒毛和牛です。
 まず、保護規制計画についてご説明します。活火山である新岳・古岳の山容は口永良部島を特徴づけている主要な眺望対象です。当該地の火山景観の厳正な保護を図るため、このオレンジ色の区域191ヘクタールを特別保護地区に指定します。写真は、新岳及び古岳の火口付近の景観です。新岳・古岳の特別保護地区に隣接する山麓は、自然性の高いスダジイ等の照葉樹林となっています。また、海食崖地形が連続する海岸は雄大で美しい景観を有していることから、この紫色の区域705ヘクタールを第1種特別地域として厳正な保護を図ります。写真は、古岳の山麓部とフェリーから見た海食崖地形です。
 海水浴や温泉、車からの眺望等、利用と調整を図りながら風致を保護する必要のあるこのピンクの区域506ヘクタールを第2種特別地域とします。岩屋泊(いわやどまり)は海水浴場として利用されています。番屋ケ峰(ばんやがみね)は車でアクセスできる展望地で、島内の山や海が眺められます。古岳の麓には車道が整備されており、海岸を俯瞰(ふかん)することができます。寝待(ねまち)海岸では温泉と変化に富む海岸景観を楽しむことができます。島の北部には、なだらかな丘陵地が広がっており、牛の放牧に利用されています。植生は大半がリュウキュウチク群落となっています。農林業との調整を図りながら風致の維持を図るため、この緑色の区域2,111ヘクタールを第3種特別地域とします。写真のような草原景観が広がっています。
 口永良部島の東の端に位置するメガ崎と呼ばれる海域は、岩盤や転石の上などに多くのサンゴが確認されており、密度も高くなっています。このような海中景観を保護するため、56.5ヘクタールに海中公園地区を指定します。ダイノウサンゴやアザミサンゴなど多くのサンゴが観察できます。
 また、今回、島内の全域を国立公園に指定しますが、住宅等の計画の場となっている地区は普通地域とします。本村(ほんむら)は、フェリーの発着所を含む集落地で、島内では最大の集落です。そのほか湯向(ゆむぎ)等に集落地があります。島に1カ所あるヘリポートも普通地区とします。
 次に、利用施設計画についてご説明します。島の玄関口である本村には、利用者が島内の自然環境や観光の情報を得ることのできる博物展示施設と園地を整備します。海水浴に適した浜辺となっている岩屋泊には水泳場を、古くから温泉利用がなされている湯向には公衆浴場の計画を位置づけます。写真は、園地等の整備を予定している本村の一角と岩屋泊の浜、湯向温泉の温泉施設です。利用動線となる道路計画についてですが、車道についてはフェリー発着場の本村を起点とし、岩屋泊、湯向に至る路線とします。写真は、車道の様子です。また、歩道については車道から古岳の山頂に至る路線及びメガ崎に至る牧場周辺を散策できる路線を計画道路として位置づけます。写真は、古岳に至る歩道とメガ崎に至る歩道です。
 以上が、霧島屋久国立公園屋久島地域の変更案の概要です。
 続いて、パブリックコメントの概要についてご説明します。
 今回の案件に関するパブリックコメントに関しては、資料4として配付していますので参考にご覧ください。本年8月から9月にかけての1カ月間、意見を募集したところ、吉野熊野国立公園に関して2件、霧島屋久国立公園の屋久島地域に関して1件の意見をいただきました。吉野熊野国立公園に関する意見の概要としては、利用調整地区の指定は当然であり、もっと強い規制でもよい。森を守るための入山規制は必要だが、規制の内容がわかりにくかったというものでした。これらに対する回答としては、地元関係者や学識経験者などにより構成される利用適正化協議会において検討を重ね、公表されたものであること、具体的な規制内容については別途パブリックコメントを実施していくことを回答しました。屋久島地域に関する意見の概要としては、口永良部島の編入は賛成というものでした。
 以上で、3つの国立公園に関する変更案の概要の説明を終わります。ご審議のほど、よろしくお願いいたします。

○熊谷部会長 ありがとうございました。
 それでは、ご質問、ご意見をお願いします。
 山極委員、お願いします。

○山極委員 京都大学の山極です。
 最後の霧島屋久国立公園への口永良部島の編入について、私は現地をよく知っているが、最近、非常に牛の畜産が盛んになり、牛の数が非常に増え、なおかつ牛の放牧地として予定されているところから随分牛が山の方に行っているということをよく聞きます。それが非常に今後の公園管理の運営上心配される。地元との話し合いがどの程度進んでいるのかという点と、この国立公園の管理について地元に誰か駐在員の方が常駐するのかどうか、その2点についてお聞きしたい。

○熊谷部会長 事務局、お願いします。

○国立公園課長 お答えします。
 口永良部島の国立公園化については、もう十年来環境省の方でも調査を含めて検討をしてきました。もう少し早い時期に指定できるかと考えていたが、やはり国立公園に指定するということで規制に対して反発があり、地元の了解を得るのに時間がかかったが、最近は地元でも、このような島の自然を活用したエコツアーのようなものを呼び込み、自然とともに生きていこうという理解が広まった結果、最近住民投票が行われ、国立公園化に賛成であるということになりました。
 今、先生から質問のありました牛や地元の産業との調整については、一般的な話として、国立公園の第2種特別地域になった場合は、農業ではこういうことは可能です、これは無理ですというような説明になっており、例えば後の草原の管理をどうするかというような具体的なことまではまだ話し合いはしていない。今後、農業との関係で島の自然をどうしていくかということは当然必要になってきますので、今後管理についてまた地元と相談しながらやっていくことになります。
 自然保護官はすぐ置くという計画はありません。屋久島の方で担当することになります。
 以上です。

○熊谷部会長 では、大澤委員お願いいたします。

○大澤委員 今の口永良部島との関連ですけれども、従来の第1種、第2種、第3種の指定というのは、この図にあるように山頂部を第1種として同心円状に取り囲むという指定の仕方が多いが、それが持つ弊害というのがいろんなところで出ている。屋久島本島の方の世界遺産の時にも海岸部まできちっと含めるようにというような指示があった。ヒトデ型でも足があればまだよいが、(現在の)ヒトデ型の公園ではまずいと。この場合のように周りは(海域のこと?)全部普通地域、一部南西側の海岸部まで第2種が入っているようだが、海岸の指定地があって、それは第3種の特別地域が取り囲んでいるというような形式だが、これも沖縄等のサンゴ礁地域では、サンゴ礁の維持にとって陸域の植生であるとか、集水域の影響が今後にとって非常に重要であるというようなことは、世界遺産のいわゆる完全性の確保というような観点からも重要であるという風に言われているわけだが、相変わらずこういう指定の範囲を設定するというのは、やはり余り先のことを考えていないのではないかと考えざるを得ないが、いかがでしょうか。

○熊谷部会長 事務局お願いします。

○国立公園課長 確かに、おっしゃるように特に富士山のような典型的な等高線の山は、どうしても同心円状に上の方がランク高いという公園計画の保護の一つのパターンはあります。これは、一つは上の方が非常に風景として珍しいというか、日常を離れたきれいな風景だということ、それから、ふもとの方は産業行為や経済行為が行われておりますので、そういうものによって既に土地利用が変わっているとか、あるいは、比較的自然状態はよくても厳しい規制にできないという調整の結果そうなっているが、そうではなく、やはり生態であるとか、あるいは自然性に重点を置いて保護の手だてをすべきだということは我々も十分認識している。可能なところは、例えば富士山であれば青木ヶ原のようなところは大変厳しい規制をかけており、また、今後はそういう方向にしていきたいと思っている。口永良部島の場合は一つは山頂部と、あとは海岸部を厳しい規制にしていきたいと考えている。推計や、植生自然度に応じた公園区域との関係については、先ほど局長挨拶の中にもあったが、今後の国立公園の指定あるいは管理・運営がどうあるべきかという検討会の中でも、多様性の観点からギャップがあるのではないかという指摘を受けている。そのようなことを至急分析して、今後の公園の線引きの仕方に反映していきたいと考えています。

○熊谷部会長 はい、どうぞ。

○大澤委員 先ほどのお話しだと、住民の方とこれからいろいろ協議をしながら検討されるということでしたので、是非お願いしたいと思います。
 それから、屋久島は後から霧島にくっついたような形で指定されたわけだが、先ほどの尾瀬の話があったが、一時新聞で屋久島も分けるというようなことが報道されたと思うが、それはご検討されているのでしょうか。

○熊谷部会長 事務局お願いします。

○国立公園課長 屋久島について分けるという検討はしておりませんが、国立公園としての一塊はどのようなまとまりが適当なのか、これはもちろん自然の一塊としてどれが良いのかというのを優先しますが、それ以外にもわかりやすいとか、地元に自分の財産だと思ってもらえるようなアイデンティティを持ってもらうとか、いろんな効果も期待できますので、国立公園としてどのような一塊がいいのかということは検討していきたいと思います。

○熊谷部会長 それでは浜本委員、お願いします。

○浜本委員 私の地元ですけれども、この口永良部島は火山活動によってできた高い山はあるのですが、ご覧になっていただくとわかるように、ほとんどリュウキュウチクが生い茂って海岸部まで近づいている。普通地域に指定されている本村とか湯向等の集落では、そのすぐそばに絶滅危惧種になっているエラブオオコウモリ等が生息し、夜になったら飛んできたりする場所がある。国立公園に指定されたとしても普通地域になっている集落内を生活域にしているエラブオオコウモリ等をはじめとするような激減種の生き物と住民の方々の考え方との調整を図り、保護という形の手を伸べていかければ。激減している状況もございますし、ここにしか生息していないものであるにも関わらず、その生息場所が普通地域のままでいいのか。先ほども出ましたように指定の範囲がとても難しい地域ではあるとは思うのですが、エリア分けをする指定の仕方と並行して特にこの絶滅危惧に瀕している生物の保護というものを、住民の方々と一緒にしていくシステムというものを早急に確立していただきたいという風に望みます。

○熊谷部会長 いかがでしょうか。

○国立公園課長 そのような生物の生息地、場の管理に自然公園法が大変すぐれた制度であるということは、私ども認識しており、そのような観点からも指定はどのようにしたら良いのかというのは当然検討していかなければならないと思っております。一方で環境省所管の法律だけでも、例えば種の保存法でありますとか、ほかの環境保全に関する法律ありますので、そういうものをうまく組み合わせてやっていきたいと思っております。

○熊谷部会長 他にいかがでしょうか。
 仙田委員、お願いいたします。

○仙田委員 仙田でございます。専門は建築ですが、この特別地域から第2種特別地域とか、特別地域から普通地域、あるいは普通地域から公園区域外というような部分での変更の多くの部分が、景観的というより開発がなされてしまっているとか、あるいは景観的な問題も言われているが、景観形成についての問題は、やはり国立公園における建築的な景観についての規制であり、ある意味で計画の変更は、その規制の失敗の結果ではないかと言えなくはないでしょうか。私は多少生活であるとか、あるいは観光、あるいは農業というようなものと、やはり国立公園の景観的なものとは十分に共生することはできるという風に思うその部分が余りにも自由にというか、国立公園のガイドラインがあることはもちろん承知しているが、より強い措置等を考えていくことが必要なのではないか。あるいは、よりすぐれた建築的な景観をつくっていくような誘導策を考えていく必要があるのではないかという風に思うが、いかがでしょうか。

○熊谷部会長 事務局、お願いいたします。

○国立公園課長 小委員会ではいつも同じような指摘、つまり許可を積み重ねてきた結果、市街化したからといって削除するの良くないのではないかという指摘は受けているのは事実です。100%原因が今の管理にあるとは思っておりませんけれども、従来の風景を守る姿勢が規制一辺倒で、きれいなものをつくろうとか、つくり上げていこう、美しい風景にしていこうという働きかけの部分が自然公園行政に欠けていたということは十分認識している。では、どうすれば良いかということを、先ほど述べた検討会管理運営とまとめて検討しているが、なかなか政策に結びつかないということはある。予算的には、今年度景観マニュアルを作ろうとしており、少しでも良い例を参考にしてもらい、つくるなら良いものをつくってもらおうというものを現在作成している最中で、今の段階ではこのような考えです。

○仙田委員 そうですか。参考までに、この国立公園内もそうなのですが、台湾で私が関係した例で、やはりいわゆる規制だけでなくて、設計に対して、例えば設計料の補助というようなことを行政が行い極めて高い景観形成にプラスになっている例がある。ヨーロッパ等の場合には比較的建設費の何パーセントかを公的に補助することによって、町並み保全等を行っている例は非常に多いが、台湾の場合は設計費用を補助するという形で、例えばかなり高いランクの伝統的な建築様式を使った場合には、非常に高い補助をするというようなことをやっている場合もあります。
 もう一つ、景観をつくっていくデザインをしたりというような能力、人的資源が問題になるので、私は国立公園内でいわゆる設計行為をする建築家あるいは建築事務所、そういうものについて登録制度のようなものをつくるとか、そういうことについて何か少し考えていくという方向もぜひ検討していただければと思います。参考までに。

○熊谷部会長 ありがとうございました。
 それでは山岸委員。

○山岸委員 先ほどの山極委員の質問については、多分口永良部島にも公園を管理する人を置くべきではないかというつもりで聞いたら、配置しないという答えで終わってしまったと思うんですが、公園区域の線引きのあり方等を考えたりするのも大事ですが、再三再四申し上げていますが、やはり人だと思うんですよね、守っていくのは。例えば上信越高原国立公園は広いですよね。私はよく勉強していませんが、例えば、上信越には何人ぐらいいて、吉野の場合にはここに何人ぐらい管理者がいて、霧島屋久島の場合には何人ぐらいいらっしゃるんでしょうか。

○熊谷部会長 自然環境計画課長、お願いします。

○自然環境計画課長 まず上信越の先ほどちょうど公園計画の見直しをした範囲ですが、そこは正規のレンジャーが1人、それからレンジャーの数が少ないということもありまして昨年度から、非常勤の国家公務員ということでアクティブレンジャー、自然保護官補佐というのを導入しました。それを1人置います。その2人で先ほどの範囲を自治体等と協力しながらやっています。それから、吉野熊野の大台の地区ですが、大台を担当している職員(レンジャー)が1人おります。それから、それを補佐するアクティブレンジャーが2人おります。それから屋久島ですが、正規のレンジャーが3人、それからアクティブレンジャー2人ということで、どこの地区でもレンジャーとアクティブレンジャーだけでは不十分、それだけでは公園全体を管理できないということで、自治体ですとか、地元のいろんな団体ですとか、研究者の方たちの協力を集めながら管理をやっているという実情です。

○山岸委員 薄々わかっていて聞いたんですが、上信越高原国立公園、この広いところを1人のレンジャーがやれるはずないですよね、アクティブレンジャー2人雇ったとしても。少なくとも4つの地域になっているんですから。霧島屋久国立公園の場合だって霧島に行ってしまえば屋久島まで1日で行けないみたいなことになっているので。その辺について増員とか、そういうものに対する手だてとかはなさっているのでしょうか。

○熊谷部会長 それでは計画課長、お願いします。

○自然環境計画課長 レンジャーそのものの増員については、まだまだ全国で260人が国立公園や鳥獣保護区の管理を行っており、現状では260人です。10年ほど前と比べますと少ないながらも100人近く増やしてきたということです。
 それから、もう一つの工夫として、アクティブレンジャーという非常勤の職員をさらにそれに加えて、その数も少しずつではあっても増やしていこうというような取り組みもしてきています。それから職員自体ではないですが、国立公園の管理をしていく上で地元の技術を持った人たちの助けを借りようということで、グリーンワーカーという事業が数年前から始まっていまして、それは具体的に公園の管理のためのいろんな作業なり調査をするために、地元で技術とか知見を持った人たちをある期間雇用する形で行っています。そういうのも組み合わせて少しずつレンジャーの数を増やすというのが、今、国家公務員の数全体を減らすという動きが強い中で大変難しいんですけれども、その努力も加えつつ、例えば各省庁からの定員の振り替えという工夫も加えて進めていますけれども、それだけではなかなか一遍には増えないということがあって、いろいろな方法を組み合わせて少しでも公園の管理水準を高めるように努力をこれからもしていかなければならないと思っているところです。

○熊谷部会長 それでは、速水委員、中川委員、それから栢原委員というお3人に絞らせていただきたいと思います。

○速水委員 2点なんですけど、今のレンジャーの話で、国立公園の多くは林野庁管轄の国有林がたくさんあると思うのですが、その国有林の職員の方々と環境省の公園管理との調整というか、どう彼らに協力をしてもらっているのかというところをお教えいただきたい。私どもからすれば、国立公園の中にある国有林の管理をしている人たちというのは、同じ国の役人であって、同じように森林を扱っているというふうに見るわけです。環境省と林野庁からすれば、「いや、それは省庁違いますから」という返事になるのかもしれないですけれども、地域に住んでいるものにとっては同じように見えてしまうわけですね。その場合に、それを何らかの形で国有林の森林管理の中に環境配慮をした考え方というものを、やはり環境省からの影響はしっかり受けとめられていないとおかしな話だろうと思いますし、役割を何か果たしてもらってないとおかしな話だろうという風に考えるわけですね。それに対してどういう風にお考えを持ってらっしゃるのか。
 「ちゃんとやってます」か、「全くそんなことは関係ないです」と言われるのかわからないですけど、お話しを伺いたい。
 それから、私、大台は地元で地図の中に私が住んでいる家が映っているぐらいのところにいますが、東大台と西大台に分けてお話しされた時に、東大台は正木ケ原を含めてかなりトウヒが枯れたりして、ちょうど私は60年代よく行っていて、コケの中に足取られてうろうろした覚えがありますが、随分東大台の方が変化激しいと思うんですね。自然回復事業を多分やっていると思うが、それと西大台の利用制限の利用調整の部分と指定がやり方が変わっている。かえって東大台の方も例えば一部利用調整行ってもよい状況があるのかなというふうに思う。かなり東大台の方が一般の方の入り込みが結構多かったり、それこそ道を外れたりすることもよくある場所だと思っており、西大台の方はどちらかというと人が入る量が圧倒的に少ないと思うが、その辺の考え方というのは、どう分けていったのか。

○熊谷部会長 事務局お願いします。

○国立公園課長 まず、国有林とどのように協力しているかというお話しですが、地方では職場も接近しておりますし、場は重なっております。それで国有林は自分の財産として山を管理しておりますし、こちらは自然公園法ということで規制をかけたりしているという関係にありますが、例えば、高山植物を守るということについては財産で守る、法律で守る、両方で守った方がより強力なわけですから、協議会ですとか、日常的な連絡をやりながら両方で一緒にパトロールしたり連携してやっております。組織としては地方連絡会議という森林管理局と私どもの全国に11カ所、7カ所というべきですか、あります出先機関が定期的に連絡調整の場を持つ。あるいは、もっとさらに出先でこのようなテーブルについて話をするという具体的な案件についての調整の場と、それから一般的に定期的に情報交換をやっている。両方でもちろんやっています。それから、今回のように公園計画を変更するときは利害関係もありますが、これは相当シビアにつき合っています。
 それから、東大台についても利用調整区域を考えたらよいのではないかというお話しですが、我々もそういう視点は持っております。今の時点では、東大台については荒れた自然を再生事業で回復し、人の立ち入ることによってこれ以上はそれほど荒れないだろうと考えています。といいますのは、歩道をしっかり整備してそこを歩いてもらえば、相当の人が入ってもこれ以上悪くならないと思っていますので、当面はこういう形でいこうと考えています。シカとか台風とか様々な原因がありますけれども、人間の入り込みだけでも抑えようということで、まだ残っている西大台は利用調整をかけるということです。

○熊谷部会長 それでは中川委員、お願いいたします。

○中川委員 大台ヶ原についてお尋ねをいたします。利用調整地区の指定を今回お考えになっているということですが、先ほどのご説明では初めてというふうにお聞きした。間違っていたら訂正していただければと思うが、利用調整地区の指定に当たって、どういうものが前提となって指定されるのかという基準のようなものがあるのか、ないのか。あるとすれば、その概要はどういうことなのかということを1点お聞かせいただきたい。
 もう一つは、この地区は、ドライブウェーのすぐそばであるので、どのような実効ある規制というのができるのかどうかというあたりがよくわからないので、例えば1日100人といわれているが、それはどういう形でカウントされて達成できるのか。あるいは、それが例えば車の入山規制というような形であるのであれば、例えば100人以上超えた時点でストップしてしまうのかとか、少しその実効性の点についてどのようなお考えを持っておられるのか、お聞かせいただきたい。

○熊谷部会長 それでは事務局お願いします。

○国立公園課長 2つありますが、どういう基準に基づいて指定するかということを私からお答えし、現地で具体的にどうやって制御をするかというのは、今日、自然保護官が来ていますので、彼からお答えさせます。
 指定の基準については、具体的な基準はありません。原生的なところが人の立ち入りによって生態に影響があるとか、利用環境が損なわれるというような抽象的な表現で、そのようなところを指定するという定めはございます。

○中川委員 初めてというのがあったでしょう。

○国立公園課長 初めてというのは、そのとおりです。

○中川委員 2個目、3個目といったのはどこかあるのですか。

○国立公園課長 知床でございますとか、まだ俎上には上っておりませんけれども、冬の上高地などというのも昔はエキスパートだけが入るところでしたが、最近はツアーで入ってきておりますので、早目に手を打たないといけないところだと思っています。
 具体的なコントロールの方法についてご説明いたします。

○自然保護官 吉野自然保護官事務所の羽井佐といいます。
 まず最初に、100人の上限設定の具体的な手続ですが、事前に申請をしていただくことになっておりまして、事前申請に基づき立ち入り認定証を発行し、立ち入ってもらう制度になっておりますので、100人の上限を超えればその時点で申請を受け付けませんので、実効性を確保できるものと考えております。
 それから、具体的な管理ですが、確かに道路沿いですので、道路からの入り込みが容易なところについては柵等を設置し物理的措置を講ずるとともに、きちんと立ち入り防止柵で利用調整地区だということを明示して、利用者に明示することによって抑止効果を持たせようと思っています。それと巡視計画を年度で立てて、綿密な巡視を行うことによって抑制していこうと考えております。
 以上です。

○熊谷部会長 はい。お願いいたします。

○栢原委員 時間が過ぎているのにすみません。パブリックコメントについてお伺いします。コメントがゼロだったとか2通だったというのを、事務局はどういうふうに評価をしておられるのでしょうか。これは調整がうまくいってよかったというふうにもしお考えでしたら、先ほどのレンジャーの予算もそうですし、公園のあり方の懇談会でもよく出ることですけれども、国民の理解、国民の支援というのがどうしても不可欠だということからすれば、やり方をもう少し工夫して、もっと本当に扱い切れないぐらいの意見が出てくるような状態をぜひつくり上げていただきたいと思います。
 以上です。

○熊谷部会長 ありがとうございました。今のご意見に対して何かございますか。

○事務局(千田) パブリックコメントの実施の方法なんですが、基本的には環境省のホームページにその内容を掲載するという方法で国民の意見を聞いております。今回の諮問案件につきましては、件数としては非常に少ないので、みんなそういうものは見ないのではないかというご懸念もっともですが、案件によりましてはそういった方法で実施しましても何百通というご意見をいただく場合もございます。今後、ただもう少し別の方法・手段についても、いただきましたご意見を踏まえまして検討してまいりたいと思います。

○国立公園課長 大台につきましては、私どもも大変少ないと拍子抜けしました。地元に大変自然保護に熱心な団体がありますので、そういう方からいっぱい来ると思っていたんですが、設定委員会の中にそういう方々も入ってもらってやっておりますので、少なかったのかなと思っています。

○熊谷部会長 瀬田委員、最後にさせていただきます。よろしくお願いします。

○瀬田委員 大台で先ほど中川さんがおっしゃった心配と、100人なら100人というのは、今後の時にはそれぞれのところによって人数が違ったり、あるいはシステムというか違ったりするんだろうと思うんです。したがって、いわゆる本省というか、あるいは審議会でこういう機構を設定することの基本として、私は一つだけ提案というか要請しておきたいと思うのは、書いてありますように、いわゆる個々の自己の責任でというふうに書いてありますね。それから申請をするということ。これをエージェントに代行させないようにしてほしい。それがあると必ずまた旗持ちのツアーになってしまうということで、そういうところだけはきちんとどの場所においても、それが何人を募集してどうだっていうふうにならないような、いわゆる個々の責任においてというふうになるように意思を決めておいていただきたいと思うんです。屋久島の例で宮崎駿さんが「もののけ姫」のときに書いているのは、屋久島がやっぱりどんどんと人が多くなることによってまずい景観になっているというときに幾つか、例えば入山例の話だとかやっているんですが、行きたい人は環境省にちゃんと手紙を書いて、なぜ私は屋久島のどこどこに行きたいのかというもので評価されるようにしてほしいというふうなことを書いておられたことがありますから、すべて自己責任というのは個々の意思、すなわち、その間にサービス業としてのエージェントが人を集めるという、その手段に使われるようなことのないようにしていただきたい。大台なり何なり、こういう利用調整地区になれば、そこへ行きたいという人間もある意味で呼び込むことになります。これは世界遺産効果と同じだと思いますから、その辺のところを十分に当初から注意していっていただきたいというふうに思います。

○熊谷部会長 ありがとうございました。
 大変貴重なご意見をいただきましたが、特に今回の案件に関しましてはご異議がないように存じますので、諮問第196号、第197号及び第198号の国立公園の区域及び公園計画の変更については適当と認めることとさせていただきたいと思います。
 よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

○熊谷部会長 ありがとうございました。
 以上で、本日の諮問事項についての審議は終了いたしました。
 続いて、報告事項について事務局から報告をお願いいたします。

○国立公園課長 私の方から、報告事項を2点報告いたします。
 一番下にお配りしてあります参考資料1と2をご覧ください。
 まず、参考資料1の「国立・国定公園の指定及び管理運営に関する検討会について」でございます。これ先ほどお答えした中で、今検討していますといったものでございますが、この検討会は今年度単年度で考えております。背景としましては、制度発足後75年あるいは自然公園法50年を来年迎えますので、大分時代に合わなくなってきているということです。時代の要請に応えるためにはどうあるべきかということを検討するという検討会です。
 特に、生物多様性の観点から手薄ではないかといわれておりまして、平成14年1月のこの部会の答申を踏まえまして、既に自然公園法の一部改正をしておりますが、まだまだ不十分だというご指摘はあります。また、三位一体改革がございまして、国立公園の整備なり管理について都道府県などの地方と国のより明確な役割分担が求められております。さらには、最近いろんなNPOでございますとか、企業活動で環境保全活動をやっておられる方々がたくさんいらっしゃいます。そういう人たちをどうやって国立公園の管理に協力してもらっていくかというような課題もありますので、私ども今年度指定はどうしていったらいいかということと、管理運営はどうやっていけばということを検討しています。その検討結果は、公園計画の選定要領、基準等に反映させます。それから現地の管理をよりみんなに参加してもらって、しっかりやっていけるような体系的なものにしていきたいと、そういうものにつなげていきたいと思っています。
 新たに国立公園の選定基準をこの結果つくるとすれば、その基準で全国を見直せば当然現在の区域を大きくはみ出して指定しなければいけないようなところも出てくると思いますし、一方では、国土は75年間の間に大変な変貌を遂げているわけですから、物差しが変わり、対象が変われば、また逆に不要であるというようなところも出てくるというのは、頭の中ではそう考えております。これが検討会の概要です。
 それから、参考資料2をごらんください。これは日光国立公園の拡張及び尾瀬地域の単独国立公園化についてです。先ほど局長もあいさつの中で申しました。日光国立公園の尾瀬地域に隣接します会津駒ヶ岳あるいは帝釈山という山がありますが、その地域につきましては、実はまだ厚生省時代、昭和46年のこの審議会で、なるべく早く日光国立公園に編入すべきだという答申をもらっております。その後、環境省では日光国立公園の公園計画の再検討作業とあわせて、今日上信越高原国立公園でやったようなことですけれども、検討をしてきましたが、なかなか関係機関、地元との調整がつかないまま今日に来ております。
 そこで、環境省では本年度日光国立公園を管轄する埼玉にあります関東地方事務所ですが、そこに「尾瀬の保護と利用のあり方検討会」というのを設置いたしまして、何回か検討会をやりました。その結果、自然環境の保護と利用の観点から見て、こういうところを含めた方がいいだろうと。尾瀬と一体的に国立公園にした方がいいだろうということがまとめられましたので、目下その取りまとめの内容を踏まえて、どこを拡張すべきかということを至急検討・調整しています。この参考資料の2枚目に地図がつけてありますけれども、この地図では少し見にくいんですが、赤いのが県境、黒い実線が今の国立公園の区域で日光国立公園、尾瀬地域と日光に分かれています。尾瀬地域の右上の方にウサギの耳のように点線で大ざっぱにゾーニングしてありますが、この区域を拡張したいということで、地元や関係機関と目下至急調整しているところでございますが、細かいところは別としまして、46年の審議会の答申にかなうような拡張はできるのではないかというように考えております。我々としましては、細部をさらに詰めまして、なるべく来年度の早いうちに皆様にお諮りして、拡張を実現したいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 来年のことですけれども、尾瀬の拡張でありますとか、そのほかにも西表に隣接します石垣島を国立公園にする。あるいは国定公園の丹後半島を拡張するというような新規国立公園の指定にも匹敵するような大きな拡張を、来年度は3つぐらい今のところ予定しておりますので、審議に先立っては皆様にぜひ現地を調査して、意見を伺いたいと思っておりますので、大分先の話になりますけれども、またその節はよろしくお願いいたします。
 以上でございます。

○熊谷部会長 ありがとうございました。
 ただいまの報告につきまして、特段のご質問がございましたらお受けしたいと思いますが。よろしゅうございますか。特にないようですので、また時間も押しておりますので、次に進めたいと思います。
 私の方から1件、ご報告をさせていただきます。
 11月8日、環境大臣より温泉資源の保護対策及び温泉の成分にかかわる情報提供のあり方等について、中央環境審議会に対して諮問が行われました。同日、自然環境部会に付議されました。これを受けて、当部会に設置されている温泉小委員会において11月21日から審議が開始されております。
 その他、事務局から何かございますか。

○国立公園課長 最後に私の方からお願いがございます。
 まず最初に、座長の方から説明していただきましたように、会議の資料も含めて公開でございます。本日の旅費の支払いの関係がありますので、お手元の書類にご記入いただきますようお願いいたします。また、資料は大変重たいものでございますので、送付の必要がありましたら手元の用紙にその旨ご記入いただければ、後で事務局の方から配送いたします。
 以上でございます。

○熊谷部会長 ありがとうございました。
 それでは、これをもちまして、本日の中央環境審議会、自然環境部会を閉会といたします。
 ご協力どうもありがとうございました。

午前10時55分 閉会