中央環境審議会自然環境部会(第5回)議事録

開催日時

平成14年1月29日(火)13:30~14:10

開催場所

KKR東京「孔雀」の間東條インペリアルパレス5階「曙の間」

出席委員

19委員

辻 井 達 一 部会長
安 達 瞳 子 委員
磯 部   力 委員
奥 山 文 雄 委員
川 名 英 子 委員
熊 谷 洋 一 委員
小 塚   茂 委員
鈴 木 継 美 委員
瀬 田 信 哉 委員
仙 田   満 委員
立 花 直 美 委員
服 部 明 世 委員
藤 原 一 繪 委員
三 澤   毅 委員
森 戸   哲 委員
山 岸   哲 委員
鷲 谷 いづみ 委員
渡 辺   修 委員
和里田 義 雄 委員

議題

  1. 開会
  2. 議事
  3. (1)「自然公園のあり方に関する中間答申」(案)について
    (2)その他

  4. 閉 会

配付資料

*自然公園の今後のあり方について(諮問)

*環境大臣より中央環境審議会に諮問された「自然公園の今後のあり方」にかかる中央環境審議会における審議経過について

*自然公園のあり方検討小委員会(第1回)12月18日配付資料

*自然公園のあり方検討小委員会(第2回)1月16日配付資料

*自然公園のあり方に関する中間答申(案)

会議録

(開会午後1時30分)

田部国立公園課長
 予定の時刻が参りましたので、中央環境審議会自然環境部会の開催をお願いいたします。
 本日は、所属委員30名のうち18名の委員のご出席をいただいております。この部会は成立いたしております。
 議事に入ります前に、お手元の資料でございますけれども、議事次第の後に配席表がございます。その後に、配付資料一覧ということで資料を入れさせていただいております。
 まず、今回の案件に関します諮問書でございます。次に、これまでの審議経緯をまとめました表を入れさせていただいております。その後に、本日の審議事項でございます「自然公園のあり方に関する中間答申」(案)が入ってございます。
  それから、茶色い封筒の中には、これまで2回の小委員会で提出させていただいた資料を入れさせていただいているところでございます。
 それでは辻井部会長、進行方よろしくお願いいたします。

辻井部会長
 では、これから自然環境部会を開催いたします。
 本日は、今も説明がありましたように、環境大臣から先に諮問を受けました「今後の自然公園のあり方」について自然環境部会に自然公園のあり方検討小委員会を設けて審議をしていただきまして、その中間答申案をまとめていただきましたので、この案についての審議を行うことになっております。
 それでは、早速ですが「今後の自然公園のあり方についての中間答申」(案)に関しまして、渡辺委員長からご報告をお願いいたします。
 どうぞよろしくお願いいたします。

渡辺委員
 それでは、私から中間答申(案)についてご報告を申し上げます。
 まず、作成に至るまでの経緯でございますけれども、昨年11月16日に環境大臣から中央環境審議会に「自然公園の今後のあり方について」の諮問がなされ、12月10日に開催されました自然環境部会におきまして、自然公園のあり方検討小委員会が設置され、私 ども15名の委員が辻井部会長からご指名を受けて、検討を行ってまいりました。
 これまで、昨年12月18日、そして平成14年になりまして1月16日、それから本日29日の午前中と3回にわたって委員会を開催いたしました。
 12月18日の最初の小委員会では、10日の当自然環境部会においてなされました自然公園をめぐる状況と課題についての全般的な議論を受けまして、特に生物多様性の観点から緊急に対処すべき問題と、その対策について検討を行いました。
 続きまして、1月16日の第2回目の小委員会におきましては、有識者、学識経験者、地方自治体、そしてNGO、この4人の方々からヒアリングを行いまして、その後、事務局においてまとめられました中間答申(案)の骨子について議論を行いました。この際、自然公園における利用調整や二次的自然の地域の保全など、緊急に措置すべき事項につきましては、特に異論はございませんでしたが、環境教育や公園ごとの調査研究の推進、あるいは管理体制の整備等、今後の自然公園のあり方を検討する上での重要な課題が十分盛り込まれておりませんでしたので、その点を中間答申に反映すべきことを事務局に要請をしたところでございます。
 そして本日午前中に開催されました第3回の小委員会におきまして、事務局から提出されました中間答申(案)についてさらに審議を行いまして、幾つかの修正を加えた上で、お手元の中間答申(案)として取りまとめた次第でございます。
 答申案の「はじめに」にも書いてありますけれども、今回の答申案は、生物多様性保全の観点から特に緊急の措置を必要とするものについての結論を取りまとめたものでございます。生物多様性保全に係るものでありましても、なお残っている課題、そしてその他の自然公園のあり方に関するもろもろの課題につきまして、今後さらに時間をかけて、小委員会で引き続き検討してまいりたいと考えております。
 それでは、答申案の内容につきまして、事務局の方から説明をお願いいたします。

渋谷自然ふれあい推進室長
 自然ふれあい推進室長の渋谷でございます。中間答申(案)の内容につきまして、ご説明いたします。
 まず、全体の構成でございますが、4章構成としております。第I章「はじめに」は、ただいま小委員長からお話がありましたけれども、これまでの小委員会の設置及び審議の経過を述べております。
 第II章では「自然公園をめぐる状況と課題」といたしまして、自然公園全体の課題について述べております。
 第III章では、第II章に示した課題のうち、生物多様性の観点から緊急に対応すべき自然公園の課題と措置について記述しております。
 第IV章では、今後の検討の方向などを記述しております。
 以上が全体の構成でございます。
 それでは、次に、各章ごとに主な内容についてご説明いたします。
 まず、第I章「はじめに」をご覧いただきたいと思います。
 第I章は、先ほど小委員長からお話があった部分でございますが、経過をお示しし、これまでの審議の中で自然公園をめぐる状況及び課題について概観し、特に緊急の措置を要する事項について一定の結論に達したので、次のとおり答申すると述べております。
 次に、第II章「自然公園をめぐる状況と課題」では、2つの項目に分けて記述しております。
 まず1番目「自然公園をめぐる状況」につきましては、自然公園が指定以来今日まで、日本のすぐれた自然風景地の保護と利用の増進に大きな役割を果たしてきた制度であること、今日、国民の自然環境保全に対する意識の高まりの中で、自然公園への期待がより一層高まりつつあり、保護の面では、生物多様性の観点から自然公園が積極的な役割を果たすことが求められていること、利用の面でも、原生的で神秘的な自然と触れ合うことや自然の仕組みを理解することへの要求が高まっているといった自然公園への期待、役割あるいは要求が高まっている状況について記述しております。
 さらに、なお書きとして、政府の総合規制改革会議の一次答申、及び現在、審議が進めれております生物多様性国家戦略改訂のための審議会などにおける議論でも、自然公園については生物多様性保全の観点から、機能を強化すべきことが指摘されているといったことについても記述しております。
 次に、1ページの下の方ですが、(2)「自然公園の課題」でございます。
 自然公園が、自然と触れ合い自然の仕組みを学ぶ貴重な場であること、国土の生物多様性保全に重要な役割を果たすべき地域であること、自然の風景地の中には世界的にも比類のない美しさを有するものがあるという基本認識を示した上で、2ページになりますが、自然公園を後の世代に日本の宝として引き継ぐことのできるよう、その役割、機能を強化すべきであるということを述べまして、このため、審議会ではこれらの視点に立って、国民の期待に応え、国民に支持される自然公園のあり方について、多元的な観点から、下にお示ししたような、1,保護及び保全方策に関するもの、2,自然公園利用の質的向上に関するもの、3,自然公園の整備に関するもの、4,自然公園管理・運営の基盤となる科学的知見の集積、提供に関するもの、5,自然公園の管理・運営を支えるための制度に関するもの、6,自然公園の管理・運営と各主体の参加に関するものといった6つの課題について、今後、引き続き十分な審議を行う必要があると述べております。
 次に、2ページの下段の方になりますが、第III章でございます。生物多様性保全の観点から検討した、緊急に対応すべき自然公園の課題と措置について記述しております。
 まず、前書きといたしまして、自然公園が国土における生物多様性の屋台骨としての役割を果たしていることや、人為的な管理により成立している里山、二次草原などが多く含まれており、特有で希少な動植物の生息、生育地となっていることなど、生物多様性の観点から量的、質的に重要な役割を果たすことが期待されていること、一方で、現在の自然公園では、原生的な自然が残る地域や二次的な自然の地域の中でさまざまな問題が発生していることから、第II章で示した課題の中でも特に早急に対策を講ずる必要があり緊急に措置すべき事項について集中的に検討し、次に述べますような6つの具体的な措置をとることを提案する旨、記述しております。
 その具体的措置の1つ目は、「利用の調整」でございます。
 近年、原生的な自然の地域を訪れる利用者が増加しつつあり、
原生的雰囲気や風致景観、生物多様性保全上の支障が生じていること、自然公園の利用の観点から見ると、これらの地域は、より深い自然との触れ合いと体験が得られる場として貴重であり、一定のルールとコントロールのもとで持続的な利用を図ることが有効であると考えられること、したがって、これらの地域では保護と利用の両面から、風致景観、生物多様性保全上の支障が生じない範囲内での適正な利用の推進を図ることが必要であり、利用者の人数を限定するなど、利用の調整を図ることができる制度を創設する必要があることを述べております。この事項は、自然公園法改正を検討している事項になっております。
 次に、2「特別地域等における規制の強化」でございます。
 自然公園では、これまでもさまざまな規制が生物多様性保全に一定の効果を果たしてきましたが、従前からの規制では対応できない新たな問題が発生しており、適切な措置を講ずる必要があること、また、新たな事態に迅速に対応するための仕組みを検討す
る必要があるということを述べております。
 これは3つの小項目について記述しておりますが、まず、4ページの[1]「特別地域における動物の捕獲規制」では、自然公園の特別地域では動物の捕獲が規制されていないために、高山チョウなど一部の動物について捕獲による個体数の減少が問題となっており、各種行為規制による一層の生息環境保全を図るほか、著しく減少しつつある動物種については、特別地域でも捕獲を規制する措置を講ずる必要があること、[2]「特別地域における土石、廃棄物などの集積等の規制」についてでは、自然公園における廃土石、廃車など風致景観上、重大な影響を与えるおそれがあるものについて、その集積、貯蔵を規制する措置を講ずる必要があること、[3]「湿原など脆弱な自然環境の保護」につきましては、高層湿原や高山植物群落など極めて脆弱な自然環境は、人の踏み込みにより回復困難な破壊が生ずるために、地区を指定し人の踏み込みを禁止する措置を講ずる必要があることを述べております。
 これらも法改正の検討をしている事項でございます。
 次に、5ページの3「自然再生・修復」につきましては、自然再生型公共事業の推進が必要であることが「21世紀『環の国』づくり会議」でも報告されていること、自然公園内でも荒廃した場所や改変された場所については、順応的な手法によって自然環境の再生・修復を積極的に実施することが必要であり、自然再生事業が自然公園の事業として実施できるよう所要の措置を講ずる必要があること、なお、自然再生事業の実施に当たっては、生態系の機能を損なうことのないよう、さまざまな配慮を行うことが必要であることを述べております。
 4「自然環境情報の収集・提供」につきましては、自然公園の管理には、自然環境に関する科学的データの集積が不可欠であるが、公園ごとの体系的な情報収集体制は不十分であること、これらの情報は、生物多様性保全に配慮した公園管理・運営の充実、自然再生事業の推進に不可欠であり、情報収集体制の強化・充実が必要であること、また、これらの情報の発信、提供は保護、利用の両面から有益であること、以上のことから、自然環境情報の収集、提供を行うための施設の整備について、自然公園事業として推進できるよう、所要の措置を講ずる必要があることを述べております。
 この3と4につきましては、今後、政令改正等を検討している事項でございます。
 次の5「利用施設のあり方と整備の推進」につきましては、自然公園等事業は、公園利用上核心的な地域などでビジターセンター、歩道、トイレなどの基盤施設の重点整備により快適な利用が図られつつあること、しかしながら、最近では量的な充足に加え質的、技術的なレベルの向上が求められていること、利用施設の整備によって自然を損ねるといった状況も一部で生じていること、また、一部の山岳地に利用者が集中し、過剰利用による登山道の荒廃、トイレの整備の遅れによる自然環境への影響が発生ているといった課題があり、これらの課題に対して、施設の質的、技術的向上を図るとともに、自然公園にふさわしい施設のあり方や整備方法を早急に検討する必要があること、特に、登山道や山岳トイレについては環境の保全に配慮した整備促進を図る必要があり、助成措置の拡充など、所要の措置を講ずる必要があることを述べております。
 6「二次的自然の地域の保全」につきましては、里山や二次草原など二次的自然の地域は、さまざまな要因で土地所有者などによる適切な維持管理が行われなくなってきていること、7ページになりますが、一方で、二次的自然地域の保全を図ろうとする民間団体等の気運が高まっていること、また、二次的自然の地域の保全につきましては従来からの規制的手法では限界があり、人為による管理を継続して行うための新たな仕組みが必要であること、こうした状況に対応して、二次的自然地域の維持管理を行うためには、土地所有者と民間団体などの連携を図ることが有効であると考えられること、このため土地所有者と民間団体などの間で管理協定を結び、土地所有者に代わって民間団体などが維持管理を行う仕組み、及びこの制度の推進と民間団体の活性化を図るために、団体の管理能力を認定する制度を設ける必要があること、さらに、土地所有者の負担の軽減のための税制上の特例措置の検討、自然公園の管理充実に資する事業を拡充し、民間団体との連携の強化を図る必要があることなどを述べております。
 最後に、第IV章「今後の検討」でございます。
 まず、第III章に掲げた事項につきまして、自然公園法の改正、予算措置等の所要の措置によって早急に対応をする必要があることを述べております。また、第II章に掲げた課題につきましては、今後、21世紀における自然公園のあり方を目指し、ここに掲げたものを中心に幅広い点について、さらに議論を深めていく必要があることを述べ、締めくくっております。
 以上でございます。

辻井部会長
 どうもありがとうございました。
 それでは、今、渡辺小委員長からご報告いただき、事務局から説明してもらった答申案につきまして、ご質問、ご意見をいただきたいと思います。
 それでは、どうぞどなたからでも結構でございますが、ご意見をいただければと思います。いかがでございましょうか。

山岸委員
 大変結構な答申案なんですが、実は私、若いころ国立公園の中に住んでおりまして、大学の研究所が国立公園の中にあって、そこで4年ぐらい過ごしたことがあります。そのときお隣に環境庁の管理事務所がありまして、そこの管理官と毎晩、夜っぴて酒を飲みながら自然公園のあり方について話し合いました。そのときに出た一番大きな問題は、ここに書かれたことなんですが、自然公園の管理官がとにかく少ないというのが、もう一にも二にもの話でした。そういうことは当然小委員会でも出ていると思うんですが、そのことはこの中のどの辺に位置づけられているのかということがわかりづらいので、ご説明いただけたら幸いだと思います。

田部国立公園課長
 今ご指摘の管理官の少なさ、管理体制の手薄さにつきましては、私どもも十分認識しておりますし、さらに、今回の小委員会におきましても随分ご指摘を受けたところでございます。
 そういう意味で、国立公園、自然公園の管理を充実していく中では大変重要な課題としておりまして、具体的には、第II章「自然公園をめぐる状況と課題」の(2)「自然公園の課題」、2ページの上から7行目になりますけれども、1「保護及び保全方策に関するもの」ということで、今後、引き続き検討する課題の中に「保護管理手法やこれを実施するための体制のあり方」として入れているところでございます。

山岸委員
 これはかなり大事な、大きな問題であるにもかかわらず、何かちょっと弱いという気が私はするんですが、そういうことはないでしょうか。もうちょっとはっきり書いてしまった方がいいのではないかという気がします。

田部国立公園課長
 今回緊急にやるものというのは、具体的な、早速やらなければいけないという制度の改正、法律の改正、政令の改正、そういったものを中心に書いております。大事なことは、ほかにもたくさんあるわけでございますが、幾つもある中で1つということで、この程度というか、並びの関係で、この中に含まれているという形にさせていただきたいとおもいます。小委員会の中でも、この部分については今後、特に重点的に検討する課題とはなっているところでございます。
渡辺委員
 同趣旨のご意見は小委員会でもたびたび出ました。これは2月以降じっくり検討する中で、そのようなご意見も体しまして、しっかり審議を行っていきたいと思っております。

山岸委員
 よろしくお願いします。
鈴木委員
 これは、このままの形でホームページか何かで公開されるわけでしょうか。もしそうだとすれば、お願いは、実は言葉について、説明をきちんとしておいてほしいなと思うことがたくさんあるわけですね。いわば、ごく普通に使っているときの言葉と違って、ある法令によって定義されてしまっているような場合もあるわけですし、そうでない場合もありますし、時には、今日の中間答申の範囲の中だけでも「ちょっと待てよ、ここの意味とここの意味はどういう関係になるのかな」なんていうふうに気になるようなところがないわけではない。そういうことを、もし一般的に公開して議論を求めるのでしたら、言葉については、用語集みたいなものをきちんとつくった形でつけてほしいものだと思うわけです。

辻井部会長
  何か具体的に「例えば、こういうことなんだ」というのはございますか。

鈴木委員
 例えば「自然公園」という言葉1つとっても、この中で、自然公園は制度であるというふうに読めるところと、自然公園と国立公園の関係がどうなっているのかわからないところもある等々、もう慣れてしまった方には、ごく当たり前の言葉なんでしょうけれども、一般的にはそうではない言葉がたくさん使われているのではないでしょうか。

辻井部会長
 その点、いかがですか。

田部国立公園課長
 今のご指摘につきまして、ついつい専門用語的な形になることはあろうかと思うんですけれども、具体的に「自然公園」ということでの意味につきましては、環境省あるいは我々の自然環境局のいろいろなパンフレットとか、そういう中で意味を説明するとか、そういうことはしているところでございまして、あえてここで、この答申の中の用例集というような形まで、今回しなければいけないのかなという感じが若干しておるところですけれども。

鈴木委員
 いろいろな局面で情報の公開という問題が出てきたときに、その情報が間違いなく伝わるためには、毎回丁寧にやらなければいけないと私は思っているわけですね。もう既にここでやってあるんだからわかっているはずであるというのは、これは私は賛成できない。

田部国立公園課長
 ホームページ等に出す場合に、個々に関して割と公園の専門的な用語等ございますようですので、その辺については参考的に解説を入れることを検討するということで、いかがでございましょうか。

辻井部会長
 よろしゅうございますか。

鈴木委員 はい。

辻井部会長
 ほかに、いかがでしょう。

仙田委員
 この中間答申は、例えば第II章の3「自然公園の整備に関するもの」のところで、「自然と調和した自然公園内の施設のデザイン、工法のあり方」と書かれていますが、緊急に対応すべき課題として、第III章の5「利用施設のあり方と整備の推進」では、簡単に言うと、山岳トイレというところにその部分が対応するというふうに考えてよろしいんでしょうか。

田部国立公園課長
 施設の整備の中でも、おっしゃるとおり、山岳地域の利用が非常にふえている中で、登山道、トイレの不十分さから来る自然の荒廃、それが周辺の自然環境にも影響を及ぼしている。これについては早急に対応をとらなければいけないということで、技術的な指針をつくるとか整備方針を固めていくとか、さらには山小屋等へのトイレの補助等の助成措置といったものを喫緊にやるということでございます。

仙田委員
 私、出身は建築でございますが、やはり自然と調和した、いわゆる建築だとか土木構造物の景観のあり方というのは非常に重要だと常々認識しているわけですが、そのときに、1つに景観的なものですね、いわゆる基準的な形でとらえていくことも必要ですが、それ以上に、やはり景観形成については規制だけでなくて誘導策が非常に重要だと思います。また、その誘導の方法におきましても、税制の問題だとかそういうものを非常に多様な形でやらなくてはいけないんですが、現在の自然公園内のいわゆる景観的な、あるいは建築物の形態、あるいは色等の審査の仕方についても、もう少しオープンな形で、外部の専門家を入れたような審査会的な方法を考えるべきではないかという意見を持っております。
 そういうような部分についても、ぜひ将来的に、第II章の3になるのかもわかりませんが、扱っていただきたい。  第III章の5についても、山岳トイレといえども、そのデザインというか、その重要性があると思いますし、また、そういう設計者の選定のシステムについてももう少しきちっと、従来どういうふうにやっているのかよくわかりませんが、多くは設計入札みたいな形で行われているのではないかと推測されるんですが、そういう形では、やはり景観に調和した建築物をつくっていくような形にはならないのではないかと考えているんです。そういうところまで踏み込んだ議論を、ぜひ期待したいと思っております。

辻井部会長
 ありがとうございました。
 ただいまのご指摘、非常に重要な問題だろうと私も思います。これは小委員会で次の段階のご議論をいただくときに、渡辺小委員長、どうぞお考えおきいただければと思います。  ほかに、いかがでございましょうか。

鷲谷委員
 第IV章「今後の検討」なんですけれども、第II章に残された課題も重要なものが多いと思いますので、ただ「幅広い論点について、さらに議論を深めていく必要」というよりは、できればもう少し、次に重要な課題についてはいつごろまでに結論を出すというようなことが、ここに書き込まれないまでも、ご説明があるといいなと思いました。
辻井部会長
 課長、いかがですか。いつまでにというのは私もわからないんですけれども。

田部国立公園課長
 小委員会の中でも、まだ詰めた形にはなっておりません。かなり課題も多うございまして、また、課題の整理とか課題をどこま検討するかという深さとも関連しようかと思っております。
 ただ、我々事務局的には、今回、中間答申ということで大変急いでご審議いただいた後の進め方といたしましては、1年ぐらいの感じで精力的に、重点的にやっていきたいと感じているところでございます。

辻井部会長
 よろしゅうございますか。そんなに長いスパンでということではないという説明がございました。
 ほかに、いかがでしょうか。

森戸委員
 一番最後のところに「自然公園法の改正」と出ていますが、この改正は今回の緊急と考えられる生物多様性から見た部分の事項について改正して、また今後、第II章に挙げたいろいろな事項について法改正の必要があればさらに改正する、そういう流れなんですか。それとも、改正案はもうここだけでやってしまって、それ以外はほかの対応をするという意味で、生物多様性だけの部分を改正しようとしているのか、どちらなんでしょうか。

田部国立公園課長
 最初に言われた形での、今回もやり、必要があればさらにといふうに理解していただきたいと思います。
 今回は生物多様性の観点で、かつ現在問題があり、緊急に措置をすべきということを検討し、それに対応するためには制度的な改正、いわば法改正も必要であるという流れで、急いで法改正の作業も進めていきたいというところでございます。
 引き続き検討し、また同様の制度的な改正がある場合は、また法改正も検討していくことになろうかと思います。

森戸委員
 大体その手順といいますか、大体いつごろの時期なんですか、この今後の検討課題の関係の作業と、自然公園法の改正案を国会に出すとか、そういう手順との関係は。

田部国立公園課長
 今回の法改正につきましては、今、開かれている国会の中でやっていくというスケジュールに入っておりますので、実はもう大変急いでおりまして、2月中旬ぐらいまでには政府案としてまとめて、本国会の中でご審議いただき、成立させていく、そういう大変急いだスケジュールになろうかと思います。

辻井部会長
 森戸委員、よろしいですか。

森戸委員
 はい。

辻井部会長
 ほかに、いかがでしょう。よろしゅうございますか。
 いろいろなご質問、ご提案をいただきましたが、もしご異議がないようでしたら、本案について適当と認めることとしたいと思いますが、いかがでしょうか。
      (異議なし)

辻井部会長
 ありがとうございました。
 それでは、小委員会でご検討いただきました原案のとおり答申することといたします。 それから、先ほども申しましたけれども、今後とも議論すべき問題がございますので、それは小委員会に引き続きご検討いただくこととしたいと思います。
 渡辺委員長、どうもありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします。
 それでは、小林自然環境局長からご挨拶をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

小林自然環境局長
 中間答申をおまとめいただきまして、ありがとうございました。このお忙しい中に、特に小委員会の委員の先生方には何度もご検討いただきまして、本当にありがたく思っております。
 先ほど来ご説明しておりますように、私ども、この答申を踏まえて、今国会で自然公園法の一部改正を考えていきたいと思っております。先ほど国立公園課長からお話ししたように、2月の中旬くらいには政府案をまとめて出したいということで、特に今日ご答申いただいた自然の利用調整地区に関することですとか、特別地域の規制の強化のことですとか、それから自然保護協定、そういうようなことについては法律事項でもございますので、まとめていきたいと思っております。
 なお、法令に伴いまして、いろいろな意味での制度改正というのも今答申を踏まえて精力的に、積極的に取り組んでいきたいと思っています。
 今回は生物多様性で本当に緊急なところだけをまとめていただきましたけれども、本日の中間答申の第II章にございますように、今後、21世紀に向けた自然公園はどうあっていくのか、大きな課題が残ってございます。また引き続き小委員会でご議論をいただきたいと思っています。非常に大きな課題がそれぞれありますので、場合によっては分科会をつくって議論を深めるというようなことも必要かと思っています。とりあえず今回はこの答申をいただいて、法律というものにまず取り組んで、それから我々もまた改めて、気持ちを入れかえて、今後の自然公園をよりよいものにしていきたいと思っております。頑張りたいと思います。今後ともまたご指導賜れればありがたいと思います。
 本当にありがとうございました。お礼を申し上げて、ご挨拶にかえさせていただきます。

辻井部会長
 局長、どうもありがとうございました。
 それでは、これで閉会といたします。

(閉会午後2時10分)