中央環境審議会自然環境部会(第3回)議事録

開催日時

平成13年12月10日(水)17:00~18:02

開催場所

環境省第1会議室

出席委員

20委員

  • 辻井 達一 部会長
  • 安達 瞳子 委員
  • 岩熊 敏夫 委員
  • 岩槻 邦男 委員
  • 大沢 雅彦 委員
  • 奥山 文雄 委員
  • 川名 英子 委員
  • 熊谷 洋一 委員
  • 小塚  茂 委員
  • 篠原  修 委員
  • 鈴木 継美 委員
  • 瀬田 信哉 委員
  • 立花 直美 委員
  • 田部井 淳子 委員
  • 服部 明世 委員
  • 藤原 一繪 委員
  • 三澤   毅 委員
  • 鷲谷 いづみ 委員
  • 渡辺   修 委員
  • 和里田 義雄 委員

議事次題

  1. 開会
  2. 自然環境局長挨拶
  3. 議事
    1. (1)自然公園のあり方検討小委員会の設置について
    2. (2)自然公園のあり方検討の進め方について
  4. 閉会

配付資料

  • ○自然公園の今後のあり方について(諮問)
  • ○自然公園の今後のあり方について(付議)
  • ○自然公園のあり方検討小委員会の設置について
  • ○自然公園のあり方検討小委員会の運営方針について

  1. 資料1. 自然公園のあり方の検討について
  2. 資料2. 自然公園のあり方の検討の背景等
  3. 資料3. 国立公園に係る指摘課題一覧
  4. 資料4. 国立公園等に係る主要な行政動向等に関する年表

会議録

(午後 5時00分開会)

田部国立公園課長  時間が参りましたので、中央環境審議会自然環境部会を始めたいと思います。
 開催に先立ちまして、本日の出席委員数でございますけれども、所属委員30名のうち、現在過半数の20名の委員のご出席をいただいております。あとお二方ほどおいでになるということで、ちょっと遅れていらっしゃるようですけれども、この部会は成立していることをご報告いたします。
 では、辻井部会長よろしくお願いいたします。
 
辻井部会長  では、ただいまから自然環境部会を開催いたします。
 最初に、去る11月16日に環境大臣から中央環境審議会に対して自然公園のあり方についての諮問がなされました。またこれを受けまして、同日付で中央環境審議会会長により本件を自然環境部会に付議されましたことをご報告申し上げます。
 どうぞよろしくお願いいたします。
 本日、小林自然環境局長にご出席いただいていますので、ご挨拶をお願いしたいと思います。
 
小林自然環境局長  自然環境局長の小林でございます。本日は遅い時間にお集まりいただきましてありがとうございます。
 いろいろな意味で現在中央環境審議会にはたくさんの課題をご審議いただいておりますが、きょうは、今、部会長からお話がありましたように自然公園のあり方につきましてこれからご審議をいただきたいということで、先般環境大臣から諮問申し上げたとおりでございます。
 国立公園の制度が発足したのが昭和6年、1931年ですから、今年でちょうど70年になります。日本を代表する自然の風景地の保護と利用の推進ということを所期の目的として発足いたしました。近年は地球温暖化の防止、生物多様性の保全、それから環境教育の充実等々、地球規模でのいろんな環境保全対策が充実される中で、自然公園の役割についてもいろいろな国民の期待というのは幅広いものがございます。
 実は、まだ発表になっておりませんけれども、明日ですが、政府の総合規制改革会議がございまして、その中で答申が総理に対して行われる予定でございますが、その中で人と自然との共生を図る諸施策の充実ということが掲げられてございます。一つは自然再生事業の効果的・効率的な実施を直ちに取り組むべきであるとのこと。それから2点目は、実効ある外来種対策の制度の検討を14年度中にやりなさいとのこと。このような答申に加えまして、三つ目として、自然公園法に生態系保全の機能等を生かしなさいということで、次期通常国会にそれを出しなさい、こういうようなことを答申として盛り込まれる予定になってございます。
 そういう中で、環境省としましても、自然公園法において生物多様性の観点をどの様にとらえていくかというようなことが大きな政策的なテーマになってきております。そういう意味で、現行制度では十分国民の期待にこたえられていないという状況を踏まえ、全面的な見直しということも視野に置いてございます。21世紀の国立公園をつくっていく上で、どうしたらいいか、その重要な審議をお願いをすることになります。そういう意味で慎重な審議をお願いをしたいというふうに考えているわけでございますけれども、先ほどの総合規制改革会議でも、次期国会での自然公園法の改正を行うということで、どういうふうな形になるか、きょうまた我々の考えているところをご説明申し上げたいと思いますけれども、緊急に幾つか解決しなければならない課題がございますので、このことについて長期的な視点に立つご審議とあわせまして、少し早めに中間的な結果でもご答申をいただければというふうに考えております。
 差し迫ったスケジュールで、次の通常国会と申しますともう来年の1月の20日ぐらいから始まりそうな気配でございます。かなり差し迫ってご審議をいただいて、中間的な段階でも、こうあるべしということ、緊急にやる課題ということをご答申願えればというふうに思っているところでございます。先ほど一番最初に申し上げましたようにここのところ審議会を連日のように開催していただいておりまして、きょうも実は午後一番からつい先ほどまで、生物多様性国家戦略について第4回目の小委員会をしていただいたところでございますけれども、そういうことで大変先生方にはご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いを申し上げましてご挨拶にかえさせていただきます。
 どうぞよろしくお願いいたします。
 
辻井部会長  小林局長どうもありがとうございました。
 では、これから議事に入りたいと思いますが、まず川口環境大臣から中央環境審議会に対して諮問された「自然公園のあり方について」の諮問内容と、それから検討を行うための小委員会の設置について事務局からご説明をお願いしたいと思います。
 
田部国立公園課長  国立公園課長の田部でございます。どうぞよろしくお願いします。
 
辻井部会長  田部さん、どうぞお座りください。
 
田部国立公園課長  恐縮です。座って説明させていただきます。
 まず最初に、お手元の資料でございますけれども、1枚目の「議事次第」、その裏に「御説明資料一覧」ということで資料の一覧表が入っております。2枚目の裏表、表の方が諮問書でございまして、裏が環境部会への付議書でございます。
 その次に「自然公園のあり方検討小委員会の設置について(案)」という資料が入っております。その裏が「小委員会の運営方針の(案)」でございます。
 次に、資料1とありまして、「自然公園のあり方の検討について」という資料が入っております。それから資料2で、カラーの資料でございますけれども、後ほどパワーポイントで説明させていただく資料でございます。その後、資料3といたしまして「国立公園に係る指摘課題一覧」さらに資料4といたしまして「国立公園等に関する年表」を入れさせていただいております。きょうは時間の都合で資料3、資料4のご説明につきましてはちょっと省略させていただきますけれども、また折を見て目を通していただきますよう、よろしくお願いしたいと思います。もし不備がございましたら事務局の方へお申し出ください。
 それでは、諮問事項及び検討小委員会の設置についてご説明させていただきます。
 2枚目の諮問書でございますけれども、先ほど部会長のご説明にもありましたけれども、川口大臣より中央環境審議会に11月16日付で「自然公園の今後のあり方について」ということでの諮問をさせていただいております。
 裏のぺージでございますけれども、中央環境審議会より当自然環境部会の方に付議されているという状況でございます。
 諮問事項につきましては、「自然公園の今後のあり方」でございます。現在生物多様性国家戦略の改定作業が本年度末を目標に進められておりますけれども、この新国家戦略に対応した各種保護地域制度の生物多様性の観点を入れた見直しというものが必要になると考えておりますが、加えて、国立公園など自然公園につきましては多くの課題がありまして、今回、自然公園の今後のあり方についての審議をお願いするものでございます。
 審議の進め方につきましては、当自然環境部会に小委員会を設置していただきまして、重点的にご審議願いたいと考えております。
 資料の3枚目でございますけれども、小委員会設置に係る部会決定(案)、さらに次のぺージに小委員会が設置された場合の運営方針(案)を入れております。
 小委員会の設置につきましては、諮問事項の検討のため、議事運営規則8条の小委員会といたしまして、自然公園のあり方検討小委員会を置くことでございます。
 小委員会の運営方針でございますけれども、今のぺージの裏にございます。これにつきましては部会長に決定していただくことになりますけれども、中身といたしましては会議の公開に関する事項ということで、会議は原則として公開とする。公正かつ中立な審議に著しい支障を及ぼす場合、この場合小委員長は小委員会を非公開とすることができる。公開する場合の必要な制限といたしまして、小委員長は入室の人数の制限その他必要な制限を課すことができる。それから出席者につきましては代理出席は認めない。それから会議録でございますけれども、会議録の作成、配布及び議事要旨の公開ということで、会議録は公開する。それから議事要旨を作成し、これを公開するといったような規定をつくっております。これは従来の小委員会の運営方針、いずれもこのような規定をつくっているところでございます。
 以上、諮問事項の今後のあり方とその審議に関します小委員会の設置についてご説明いたしましたので、どうぞよろしくお願いいたします。
 
辻井部会長  どうもありがとうございました。
 今事務局から説明がございましたけれども、自然公園のあり方検討小委員会の設置について、中央環境審議会議事運営規則に基づいて、自然環境部会として決定することにご異議ございませんでしょうか。よろしゅうございますか。――ありがとうございました。それでは事務局案のとおり決定いたします。
 次に、あわせて事務局から説明ありました自然公園のあり方検討小委員会の運営方針については、中央環境審議会の運営方針に基づいて、部会長として事務局案どおりとさせていただきます。
 次に、ただいま設置が決まりました自然公園のあり方検討小委員会に所属する委員については、中央環境審議会議事運営規則に基づいて私の方で指名させていただきますのでご報告申し上げます。それでは名簿をお配りください。
             (事務局 名簿を配布)
 
辻井部会長  ただいまお手元にお配りした委員の方々を小委員会委員に指名させていただきます。後ほど事務局から説明ございますが、日程がかなり詰まった審議をお願いすることになりますが、何とぞよろしくお願いいたします。
 次に、小委員会の委員長でございますけれども、中央環境審議会議事運営規則によれば、部会長が指名させていただくということになっていますので、渡辺委員にお願いをしたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、自然公園のあり方検討の進め方及び背景事情等について事務局から説明をお願いします。
 
田部国立公園課長  それでは、今回のあり方検討の進め方についてでございますけれども、資料1をご覧いただきたいと思います。
 先ほど諮問事項にありましたけれども、この1にございますように目的と背景でございます。新国家戦略に対応した保護区制度のあり方の検討の必要性がありますけれども、自然公園は我が国の自然保護区制度の中でも中枢を担っておりまして、新国家戦略に対応した検討は欠かせないものになっております。また自然公園に関します国民の要請は非常に多様化してまいっておりまして、その理念あるいは管理運営、利用の適正化などの課題が多く指摘されてきているところでございます。それらも含めまして総合的な検討を今回お願いしたいと考えております。
 これにつきましては少し時間をかけてご審議を願いたいと考えているところでございますけれども、この最後の3行にもございますけれども、環境省では、新国家戦略に即応できる自然公園法の一部改正を次期国会につくるというスケジュールという方針に立っておりまして、この関係もございまして、1月末を目途ということでの大変せいた日程で恐縮でございますけれども、中間答申をお願いしたいということででございます。
 緊急に検討すべき事項といたしましてここに四つほど記載されておりまして、この辺も法改正にかかわってくる内容になろうかと思っております。
 まず1番としましては、自然公園における生物多様性の保全等保護機能の強化。2番といたしまして、適正利用のための利用制限方策。それから3番目としまして、登山道等の自然公園施設の適正な整備。4番目としまして、地域、民間とのパートナーシップの確立による公園管理の充実ということで、この内容につきましては後ほどまた少し説明させていただきたいと思うところでございます。
 次に、裏をあけていただきまして、今後の日程等ということで、今後の小委員会、それから中間答申に係りますこの部会の開催日程を、大変僣越ですけれども、日にちまで入れた形で入れさせていただいております。
 まず小委員会でございますけれども、12月18日火曜日でございます。法改正事項など、緊急性の高い事項にかかる具体策について事務局案のご説明をさせていただきたい、さらにご審議をいただきたいと思っております。
 2回目ですけれども、年が明けて1月16日でございまして、この際は有識者の方々、今4名ほど予定しておりますけれども、ヒアリングをしていただきたいと思っております。またあわせて、中間答申案を提示させていただきまして、それに対する審議ということを入れたいと思っております。
 それから1月29日でございまして、この日の午前中に小委員会におきまして中間答申案の審議と、決議までいけばということで、もし決議をいただけるようですと、午後の会合で自然環境部会といたしまして中間答申案の決議をいただきたい。あわせて今後の検討の進め方についてもご議論いただきたいと思っております。
 4月以降になりますけれども、先ほど申しましたように総合的な今後の課題ということで、中長期的なものを含めまして検討を進めていきたいというように考えているところでございます。
 以上、背景の概要と日程でございます。
 続きまして、お手元の資料2に沿いまして、今回のあり方検討の背景等につきましてかいつまんで急いで説明させていただきます。パワーポイントの方をごらんいただきたいと思います。
 自然公園でございますけれども、すぐれた自然風景地を指定して、その保護と利用を図り、もって国民の保健、休養、教化に資するということが目的となっております。保護と利用の兼ね合い、バランスのとり方がこれまでも議論になってきたところです。また地域制公園ということで線を引いておりますけれども、公園を設置するというのではなくて一定地域を指定するという地域制公園の制度を我が国はとっておりまして、この辺が一つの特色ではございますし、また一方で管理の難しさの根っこにもなっているところでございます。
 自然公園の形態といたしましては、ご承知のとおり二通りの形態がございます。我が国やイギリスなどでとられている地域制公園と新大陸のアメリカあるいはカナダなどで採用されております営造物型公園の、二つタイプがあるところでございます。
 営造物の公園ですと、公園当局が土地の管理権を有しまして、公園専用の土地利用が公園当局の一元的な管理のもとに行われることになります。一方地域制の公園ですと、公園当局が土地を占有しませんで、土地の管理権を取得せず、土地利用に一定の制限を課すことで風景を保護するという手法でございます。
 このため、各種行為を規制するというやり方ですので、いわば守りの姿勢がどうしても強くなる。あるいは保護対策の実施、風景の修復・改善といった積極的な対策がとりにくいという面があります。また、土地利用をめぐっては、土地所有者の財産権あるいは諸種の公益に配慮し調整するという部分に大きな精力を使うことになります。また、土地所有者等の関係者が多岐にわたるということで、公園管理者の意思が発揮しにくいというような点も地域制公園には出てまいります。
 我が国の国立公園の土地所有者別の面積をお示ししたものでございます。全体といたしましては、黄色に塗っております国有地と公有地、国公有地で合わせて4分の3、民有地が4分の1というような形になっております。これはもちろん国立公園によりましてばらつきがありまして、山岳型の公園ですと国有地率が高い。海岸とか海洋、海の近くの公園ということになりますと民有地率が高くなってまいります。また、地域的に見ますと、北海道とか東北といった地域では国有地率が高く、歴史的にも土地利用が稠密に行われている西日本、九州では国有地率が低くなっております。
 国有地でございますけれども、そのほとんどは国有林で占められておりまして、その管理は林野庁が行っております。公園専用地として環境省が管理しております土地は0.2 %と書いておりますけれども、国立公園の面積の全体の0.2 %、面積でいいますと4,000 ヘクタールという程度でございます。
 自然公園につきましては、国立、国定、都道府県立、三つの自然公園に分かれております。国立、国定公園は自然公園法に基づきまして国が指定する自然公園でございます。都道府県立公園は条例で都道府県が指定いたします。
 次に管理主体でございますけれども、行為制限の許可権限などの管理を行う主体ですけれども、国立は国、国定公園ですと都道府県になっております。
 面積的には、三つの公園を合わせまして国土面積の14.2%になっておりまして、自然環境保全の制度といたしましてはかなり多くの面積が指定されております。
 一方、営造物公園ということになりますと、先ほどの0.2%にすぎませんので、これだけの面積にはならなかったという見方もできます。
 次に、国立・国定公園の配置状況でございます。脊梁山脈の奥地でありますとか海岸島嶼部に偏っているという傾向が見られます。これはやはり自然風景地、我が国を代表するという風景の観点で指定されているため、このような指定状況になっておりまして、現在里地とか里山などの中間領域が抜けているという点につきましてはまさにそのとおりではないかと思います。ただその部分については、都道府県立自然公園がある程度その辺をカバーしていると考えております。
 国立・国定公園の推移でございますが、先ほど局長の挨拶にもありましたように昭和6年に法律ができましたけれども、昭和9年から国立公園の指定が始まっております。昭和20年までの戦前の時期には12カ所、約80万ヘクタールの国立公園が指定されておりまして、現在の4割ぐらいということになります。20年代から30年代にかけまして面積が急増しておりまして、現在では 205万ヘクタールということでございますけれども、この急増期といいますのは、観光開発の期待と結びつきまして地元からも非常に誘致が多かったということがございまして、支笏洞爺、磐梯朝日などの大規模な面積を持つ国立公園が新規指定されておりまして、箇所数が増加しているということ、それから戦前の十和田国立公園に八幡平が加わって十和田八幡平、あるいは雲仙国立公園に天草が加わって雲仙天草というような形で、既存の公園に新たな地域を追加するというような形でも面積が増えてまいっております。
 40年代までにほぼ指定が終わっておりまして、その後若干の追加があります。一番最新の指定ということでは、昭和62年の釧路湿原の国立公園指定、28番目でございますけれども、それが最後になっております。
 次に、利用者数の状況でございます。これは国立公園と国定公園に分かれておりますけれども、現在国立で 3.8億人、国定で3億人といったような数字でございます。やはり30年代の急増が一つ目立つところでございますけれども、その後、60年ごろから平成の時期にかけましても伸びております。これは、好景気に加えまして自然志向といったものが現れてきているのではないかというように見ているところがございます。
 次に、指定状況の話から公園の管理の仕組みの方に話を移させていただきます。
 自然公園では、法律に基づきまして公園計画という計画を定めておりまして、行為の規制や利用のための施設の整備を実施しております。この計画は、その目的、内容から、保護のための保護計画、利用のための利用計画というように分けております。
 保護計画でございますけれども、地域制の公園であるということで、開発行為規制について許可が必要な特別地域と一定規模以上の行為について届け出が必要であるという普通地域、大きくこの二つに分かれております。海中公園というのは、これは後から加わった制度でもございまして、海の中でも許可が必要な地区を定めております。
 さらに、特別地域を四つに分けておりますけれども、まず特別保護地区は原生的な景観を維持するために特に厳しい規制を行う地区でございます。特別保護地区ですと、特別地域では規制がない火入れ、たき火、あるいは物の集積、動物の捕獲、落葉・落枝、落ち葉、落ち枝ですけれども、落葉・落枝の採取などにも許可が必要となっております。
 それから特別地域でございますけれども、開発行為を許容する度合いに応じまして3段階に分けまして、第1種特別地域は極力現状の風致を保護する。第3種につきましては通常の農林漁業を許容する。第2種はその中間でございまして、調整をするといったような分け方で、普通の特別地域は3ランクに分けているところでございます。
 それから保護施設計画と言っておりますけれども、これは保護のために必要な施設を配置する計画もこの保護計画の中で位置づけております。
 次に、地種区分別の面積を全国の国立公園で分けたものでございます。特別保護地区が13%というところで、特別地域が第1種特別地域から第3種特別地域まで合わせまして約6割ぐらい、普通地域は3割ぐらいということです。
 動物の捕獲ということに関して申し上げますと、よく一般の方は国立公園では動物をとれないと思われているのですけれども、実は法律上は特別保護地区だけが規制の対象になっておりまして、特別地域では規制の対象になってないというような状況があるところでございます。したがいまして、国立公園の中の13%の地域のみで現在は動物の捕獲規制が行われているということをあわせてお話させていただきます。
 次に利用計画でございますけれども、利用計画も規制の計画と施設の計画がございます。利用規制の計画でございますが、利用の増大に対処して適正な利用等自然環境の保全を図るという目的で、制限方法、時期などを計画に定めるものです。代表的なものがマイカー規制ということでやっておりますけれども、しかしこの利用のための規制につきましては現在の自然公園法には規定はございませんで、マイカー規制も道路交通法などに根拠を置いております。立ち入り制限などを一部行っているところもございますが、これも法律に根拠を置くものではなくて、土地の所有者とか道路の設置管理者など、地元の関係者の方々との合意をとった上で行っているのが実情でございます。
 利用施設の計画ですけれども、利用の増進あるいは誘導を図るために公園施設を整備、運営する基本となる計画でございます。公園内のどこにどのような施設を置くかといったようなことを定めまして、総合的に施設を整備する拠点地区を集団施設地区という形で決定し、あるいは個別の利用施設の配置計画などを定めております。
 事業の執行ということでありますが、公園事業に必要な施設や保護に必要な施設を整備し運営することを公園事業の執行と言っております。計画を策定する段階で位置を定め、さらに事業が具体的になった段階で事業決定という手続きで具体的な場所でありますとか規模を決定しております。さらにその次の段階に事業執行ということになりますけれども、だれが事業執行するかということですが、環境省みずからが実施する場合、それから地方自治体が実施する場合、民間の事業者が実施する場合というように分かれております。地方公共団体ですと環境省大臣との協議、民間ですと認可といった手続きをとって行います。
 国立公園の施設ということで国が自ら整備しているというように一般の方はとられているのですけれども、実態は公衆トイレとか歩道、駐車場などの公共的な施設につきましては、地方公共団体が多くの部分を担っていただいております。この場合、国が補助金を出すというような仕組みがございます。また、山小屋などの宿泊施設や売店営業を含む休憩施設など営利的な事業につきましては、民間事業者に委ねられているというのが実態でございます。直接国立公園を利用する方々が接するこういった公園施設、その運営主体が国でありますとか都道府県でありますとか市町村、民間と、多様になっておりまして、統一性に欠けるとか、だれが管理しているのかよく分からないといったような問題がこの辺にもございます。
 次に事業予算の推移でございますけれども、公園利用施設の整備に係る予算、これを国費レベルで推移しているものをお示ししております。昭和50年代から長く40億円弱の低水準で推移してきておりましたけれども、平成3年度あたりから伸びが見えております。最初は公衆トイレの再整備ということで、生活関連枠の予算ということで認められ、さらに平成6年度からは公共事業に組みかえられたこともありまして、順調に伸びてきております。このために、老朽化した施設の再整備や、あるいは不足していた施設の整備といった面で大きな成果が上がっているところであります。
 しかし、一方で過剰整備ではないかという指摘でありますとか、量的な整備に追われて質的な面で配慮が不足しているといったような点を指摘されるような事例も出てきております。
 次に、一般の方々の国立公園に対する認識でありますとか国立公園像について、昨年来アンケートを行っている内容から一部ご紹介いたします。
 この一番上にあります国立公園の存在ということで、国立公園の存在をご存じですかといったような問いでございまして、97.1%と、ほぼ全国民の方が国立公園をご存じです。また、行為の規制、許可とか届け出が必要であるということとか、マイカー規制といったような規制が行われているということについても、 7割以上の方が知っている。しかし一番下の方になりますけれども、国立公園内に民有地があるということでは約4割の方しか知らない。あるいは地種区分ということで、先ほどの、規制に濃淡があるといったようなことについては2割程度ということで、具体的な規制の手法とか仕組みについては十分知られていないというのが実態でございます。
 次に、自然公園が果たす役割ということでのアンケートでございますけれども、自然にふれ合う場ということでの理解が6割近くということでございます。優れた自然を後世に残すとか、野生生物の生息地といったような条項が続いております。野生生物の生息地、上から3番目ですけれども、これが前回の調査に比べますと結構伸びているといったような点に注目しております。
 次に、自然公園の自然保護と観光開発の重さをどちらに置くかというような問いでございまして、5年前でも観光開発を行うべきでないといったような声が5割を超えておりましたけれども、今回さらにその比率が伸びているといったような状況でございます。
 次に、開発に関する意見とも関連いたしますけれども、過剰利用に対する措置についての意見でございます。一般論としての過剰利用という問いをしておりますのでこのようなことになっているところがありますけれども、自粛呼びかけなどの啓発でとどめるという意見は少数でございまして、立入禁止、人数制限ということで合わせて5割強もあります。また、ガイドを伴う利用に制限するという意見が最も多い34%を占めているなどの結果が出てきております。
 一般アンケートとともに昨年自治体の担当者、それから有識者の方々に公園制度の課題について伺った資料が別添の資料3でございますけれども、本日は時間の関係で省略させていただきたいと思います。
 国立公園への期待ということでちょっと絵を描いておりますけれども、環境に対する意識の高まりということで、国立公園に対する意見や要望がさまざまな形で広がりと深まりを見せてきているという状況が見えると思います。期待が高まる一方で、現実の国立公園の運営の実態との格差が目につく、何とかすべきであるという意見が多くなっているのではないかということでございます。
 国立公園への期待という面で、国立公園の求められる風景地の保護、利用の増進といった当初の機能がさらに大きく拡大してきて、生物多様性への対応でありますとか、利用面ですと質の高い自然とのふれ合いといったようなものに変わってきているというところです。
 次に、自然環境保全面について特に見てまいりますと、まず、風景の保護に加えて生態系とか生物多様性確保の場として保護区の役割ということでの期待が増大しております。また、保護の仕方ですけれども、規制による開発の抑制という受け身の手段だけでなくて、積極的な維持・保全、修復、再生といったようなことへの期待も高まっていると思います。特に二次草原や雑木林などの、人の手が加わることによって維持されている自然の維持ということでは、開発抑制という手段だけでは対応できません。
 2番目に、風景のみならず、それを構成する生態系ということで、次世代に継承されるべく健全に維持されることへの期待が高まっているということがあろうかと思います。いわば保全の持続性でございますけれども、そのためには、利用を前提とする公園であっても、生態系に影響を及ぼさない範囲の持続可能な利用に限定するということが必要になってまいりますし、持続可能性を確認する上で科学的データに基づいた自然の管理が必要になります。
 利用面の期待について三つほど挙げておりますけれども、1番目ですが、まず、国立公園の資源ともいえます風景、自然への関心の変化があります。利用者の方々の関心は見た目の自然、風景だけでなくて、それを構成する生き物とか生態系に関心が高まっております。近年自然を対象とした多くのテレビ番組などが放映されておりますけれども、その内容も、風景の美しさというだけでなくて生き物あるいは生き物と環境とのかかわりに焦点を当てた内容が多くなっております。
 また、自然とのふれ合いの要求が高まっている中で、自然体験の場としての国立公園が期待されております。風景を見る、写真を撮るといったことにとどまらず、自然の中に入って、見る、聞く、触る、においをかぐなど、五感を通じての自然体験への期待が高まっております。
 これらを受けまして、施設の整備や管理のあり方にも要求の変化があります。自然とのふれ合いの場としての国立公園では、自然や生き物が主役でありまして、施設はそれとのふれ合いを行う上でのわき役ともいう存在でございます。観光開発に否定的な意見がふえている背景には、人工的な施設の過剰な整備を避けるべきとの意見と受けとめられております。
 従来自然公園では、管理の手が行き届かないということで、そのためにがっちりとした壊れにくい施設で対応するといった傾向も見られておりますが、これについては発想を逆転させて、極力自然に順応させた施設をつくる。その分逆に充実した管理で維持管理をしていくという必要性が出てきていると考えております。
 また、環境教育の場といたしましても、日ごろの生活から自然との距離が遠ざかっている中で、自然とのふれ合いの場としての国立公園ということで、自然体験の知識や技術習得の場としての施設、情報、人材の充実が求められております。また逆に、それらの充実が一般観光地との区別といいますか、国立公園のあり方の明確さを与えるという上で重要ではないかと思っております。
 次に、国立公園の課題ということで、大きな話をざっと書いておりますけれども、自然志向の高まりとともに、最近では海外の国立公園の情報もふえておりますし、また実際に体験している方もふえております。そのような中で、我が国の国立公園に対しましては、期待が高まる一方で、実情と期待とのギャップが増大しているのではないかと思っております。
 我が国の地域制公園という制度でございますけれども、営造物公園と比べると多くの面で公園運営の難しさ、限界を感じております。しかし、それを理由に改善を怠りますと、国民の期待は失望に変わり、支持を得られなくなるものとなります。逆に、国民の支持があれば、制度、予算、体制面での改善も可能となります。地域制公園の限界を理由に現状にとどまるのではなくて、国民の期待に応えるべく、可能性に挑戦すべきと考えております。国民の期待に応えられる国立公園づくり、国民に支持される国立公園の運営、そのための戦略をどうするか、これがまさに国立公園の課題であり、あり方検討のアウトプットになるのではないかと感じております。
 最後ですけれども、緊急に検討すべき事項として、自然公園法の一部改正を念頭に置いて、関連しそうな事項をお示ししております。
 保護の面では、風景保護に加えて生物多様性確保などの保護機能の強化に関する事項を検討していただきたい。
 利用面では、過剰利用対策の新しい枠組みとしての利用制限でありますとか、利用施設の整備のあり方に関する事項を検討していただきたい。
 それから管理の面では、地域制公園の管理水準を向上していくという上で、地域でありますとか土地所有者でありますとか、そういった方々とのパートナーシップの確立ということを課題として挙げております。
 今回予定しております法律の一部改正ということで、これらの事項を現在念頭に置いているところでございまして、次期通常国会に向けましてという非常にハードなスケジュールで切迫しておりますけれども、よろしくご審議いただきまして、中間答申をいただき、またさらに総合的な検討をその後していただきたいということをお願いいたしましてご説明とさせていただきます。大変急いで恐縮でございます。
 
辻井部会長  どうもありがとうございました。最後の画面をちょっと出しておいていただいた方がいいのじゃないかと思います。
 国立公園への期待が大分変わってきたということを踏まえて、緊急に検討すべき課題、検討事項ということで、これを小委員会で検討していただくということになるわけですけれども、これにつきましてご質問、ご意見をいただければと思います。どうぞ、どなたからでも結構でございます。いかがでございますか。
 
三澤委員  念のため一つお伺いしておきたいのですけれども、今回の諮問の動機というのは、生物多様性国家戦略が見直される、国家戦略が見直されるということで公園もと、こういうことになっているように思いますけれども、諮問書を読みますとその関連だけというふうにもとれるし、今ご説明があった今後のあり方を検討する、すべて検討するというようなことについては、やや諮問書と離れているのじゃないかと私は感ずるのですが、そういうことはないというふうに考えてよろしいのでございましょうか。
 
辻井部会長  いかがでしょう。
 
田部国立公園課長  生物多様性の観点、国家戦略の観点からの見直ということとあわせまして、他にも総合的に今後の公園のあり方ということもご審議いただきたいということでございますけれども、ちょっと諮問書ではその部分が若干弱いかなという感じがしております。今申し上げましたのが我々の心でございます。
 
辻井部会長  多様性国家戦略だけではないと私も考えます。
 
三澤委員  いや、そういうことで結構でございますけれども、ただ余り逸脱したことをしてはいけないのではないかという思いがちょっといたすものですから、そこははっきりしておきたい。検討するにやぶさかでございませんし、委員としていろいろまた考えさせていただきます。ありがとうございました。
辻井部会長  どうぞよろしくお願いいたします。ほかにいかがでしょうか。どうぞ、どなたからでもご質問、ご意見をいただければと思います。
 細目については小委員会でご検討いただくことになりますけれども、殊にこの際なるべくご意見等をいただいておいた方が、小委員会としてもそれを踏まえてご検討いただくことになりますから、お気づきの点ございましたらおっしゃっていただきたいと思います。
 ちょっと私から質問させていただいてよろしいですか。先ほどの事業の執行のところで、環境省が直轄でやる場合と、3番目のところに民間事業者というのがあるのですが、これは現在いうところのNPO法人も含まれるのですかね。
 
田部国立公園課長  もちろん含まれるのですけれども、現実にはまだ事業をやっているという例は少のうございます。
 
辻井部会長  ないけれども、今後は。
 
田部国立公園課長  今後は当然出てくると思いますし、公園の管理ということでのかかわりというのを強めていきたいというふうに我々も考えているところです。
 
辻井部会長  わかりました。ありがとうございました。
 
瀬田委員  今の最後の表がありましたけれども、きょうの初めの方に生物多様性国家戦略の見直しへの対応ということで田部さんが話をしておられた風景保護に加えて生物多様性の保全等保護機能の強化というのは、加えて自然公園はすべてこれを強化するというふうに言っていいのかどうか。自然公園というものの持っている現状と、それから法律上といいますか、自然公園というのはこういうものであると言っているものの中に、今度の法律改正で自然公園は覚悟しなければならないというふうに考えていらっしゃるのかどうか伺いたい。
 
辻井部会長  いかがですか。
 
田部国立公園課長  現在の自然公園法というのは、優れた風景地を守るという目的になっておりまして、優れた風景の中に生き物とか生態系でありますとか生物の多様性とかがどこまで入るのか、読めるのかというところが議論になろうかと思います。現在その辺のところを法制局のあたりとも下相談をさせていただいているところなんですけれども、何らかの形でより明確に自然公園の役割として生物の多様性の維持といったような要素を書き込めないかというところを検討しているところでございます。
瀬田委員  その際に、現在の自然公園のうちで、生物の多様性等が目的ではなくて指定されているものはどうされるかということなんですね。ですから、そういうものがあるということと、すべてそうでなければならないということとは違うのじゃないかという気がします。
 
田部国立公園課長  現在指定されている国立公園がすべてそういう役割を果たす、自動的になるというような……
 
瀬田委員  自然公園というのはもっと広くなるでしょう。
 
田部国立公園課長  自然公園全体を我々はイメージしているところなんですけれども、現在の指定されている自然公園がすべて同時に法改正した場合その役割を果たしていることになるかというような議論が当然出てこようかと思います。指定するに当たってはそういうような目的で指定されてないじゃないかということを言うような方も出てまいるというようなところでございます。ですからその辺の運用をどうやっていくかということも含めて、自然公園法の自然公園の機能でありますとか役割でありますとか、その辺をどう表現していくか、どう運用に当たっていくかということが今後課題になろうかと思っております。
 
辻井部会長  どうぞ、小林局長。
 
小林自然環境局長  瀬田委員のご質問につきましては、自然公園の当初からの目的を全くなくしてしまって、生態系、生物多様性の保全のための地域指定にしようということでは全くなくて、従来の役割を保ちながら生物多様性の視点、保全の役割をどう分担していけるかどうかということだと思います。もちろんそういう過程の中で公園区域の線引きの見直しということも含まれるかもしれませんけれども、我々としてはできれば公園計画というようなものの中で対応できる部分というのはないだろうか、そういうようなところを模索していきたいなというふうな気持ちでおります。
 
辻井部会長  ほかにいかがですか。和里田さん、どうぞ。
 
和里田委員  そうすると、イメージとしては生物の保護というのはまたいろんな法体系があるのでしょうけれども、それが自然公園の区域にこういうかかってきているものを、その法律効果を上げるために国立公園の管理の中でより進めていくといようなイメージというふうに理解していいのですか。
 それと、先ほどのご説明の関係予算の推移がありましたけれども、これはほとんどがハードなものをつくるお金なのか、それとも国立公園の管理に、いろんなソフトの面も含めて対応するための予算のウエートというのはどんなものですか。
 だから、これからそういうものに踏み込んでいこうとすると、それの予算的な確立も相当重要になるのかと思うのですが。
田部国立公園課長  今ご質問のあった事業予算としてお示ししております、先ほどの伸びている図表ですけれども、これは整備予算ということで出ております。ただ、整備した施設の管理費も若干含まれておりまして、それは1割には足りない、5%から7%ぐらいのあたりになっておるところでございます。
 先ほども若干説明させていただいたのですけれども、余り固いものをどんどんつくるのではなくて、柔らかい形での管理になじむような運営というのがどうしても自然公園の、特にデリケートな自然の地域では必要になってくるのじゃないかと思っておりまして、管理費的なものの比率を高めたいという感じは持っておるところでございます。
 
和里田委員  先ほどちょっと言いかけたのですが、そういう意味では相当NGOの活用だとか、管理費をふやすだとか、そういう形でアプローチしていかなきゃいけないとすると、相当な事業費も覚悟していかなきゃならないだろうと思いますけれども、そういうところも含めてお考えになっているということですか。
 
小林自然環境局長  この資料2の7ぺージの事業関係予算の推移のところは、平成6年度から公共事業に組み入れられました、従来でいきますと自然公園の国立・国定公園のいろんな利用の施設を整備するための事業費でございまして、順調に伸びてきました。それで、来年度からは、自然を再生していく、そういう事業も公共事業として認めていただきたいということで今お願いをしていまして、従来型の箱物の整備というようなことから少し脱却していこうかなと思っているところでございます。
 ちなみに、そのほか公共事業以外の非公共のいろんな行政経費というのは自然環境局で野生生物関係も含めましてですけれども、30億くらいしかないのです。そこをもっと充実しないと、いろんな管理の面でまだまだ手薄な点はあろうかと思います。
 
辻井部会長  どうぞ、大沢さん。
 
大沢委員  余りに無知な質問かもしれないのですけれども、例えば国立公園の現在の所有者というのは4分の3は国か自治体公有地になっているわけですよね。そうすると、例えば特別保護地区だけでも営造物公園という形に変えちゃうとか、そういうことはできないのでしょうか。全部がそうなれば一番いいのかもしれないけれども。
 
小林自然環境局長  いや、できないかと言われるとちょっとなかなか、将来の見通しなんですけれども、実は国有地のほとんどは林野庁の所管で、ほかの役所が管理しているところです。これは日本の行政組織の中でのあり方の問題で、将来どうなるかということはわかりませんけれども、この国の運営方向について、直ちに環境省の意向でどうなるものでもないということだと思います。そういう限界の中でどうもがくかというのが実は我々の課題だというふうに思っております。
 
辻井部会長  よろしいですか。ほかにいかがですか。どうぞ、服部先生。
 
服部委員  今のお話しに関連するかと思うのですけれども、今説明していただいた資料2の一番最初のところに、自然公園とはという講釈というか、定義が書いてありまして、赤字で書いてあるところを中心に検討するのかなというふうに思ったのですが、今の話、大沢委員に関連して、指定される地域制公園というのは赤になっていて、アンダーラインが引いてあるのだけれども、3番目の国民の保健、休養、教化は黒になっているというあたりは、意図的に何かされたのだろうと思うのですけれども、そのあたりはどういう意図だったのか。地域制を大沢委員が言われたような格好で、検討するのだみたいな下心がありやなしやみたいな感じなんですけれども、どうなんですか。
 
田部国立公園課長  最後のところでちょっと触れさせていただいたのですけれども、地域制を前提にし、その地域制であるがゆえにもうこれでいいというのじゃなくて、その可能性の部分、地域制であってもいろんなやり方でよりよい公園管理ができるというところを考えておりまして、地域制をやめて営造物型公園にしようというような発想ではございません。
服部委員  その3番目の方は。黒のままアンダーラインしてある……
 
辻井部会長  国民の保健、休養のところだけ、アンダーラインはしてあるのだけれども、赤になってないのです。何か意味があるのかということじゃないですか。
 
田部国立公園課長  保護と利用というところで、車の両輪のように保護と利用というところは常にあるということで、これまで苦労しているということもあったので、保護と利用のところに赤くしたのと、地域制というところを赤くしただけでございまして、目的ということでの保健、休養、教化というところは特に色を塗ってないというだけのことでございます。
 
辻井部会長  まあ営造物制という方がベターで地域制の方がそうではないという意味でもないだろうと思うのですね。その方がやりやすいという場合もあり得るわけですから、どっちが上かというのは簡単には決められないのじゃないでしょうか。
ほかにいかがでしょう。どうぞ、藤原さん。
 
藤原委員  お話を伺っていますと、二つぐらいにまとめられていいのかなと思ったのですけれども、今私、日本列島全部の国立公園を大体調査させていただきまして、実際には特別保護地区などは非常によく管理されております。皆さんが公園という指定の中で優れた自然、風景地を保護しということに何となく抵抗があり、今問題になっている生物多様性とか生態系という言葉を出したいのじゃないかな、そういう気がするのですが、それはいかがなものかと思います。入れることはいいと思います。
 ただもう一つは、実は特別保護地区は大変によく保護されておりまして、たとえ研究者であろうとも許可なしに何かをすれば必ず新聞ざたになったり、これだけのことをされるということでは私は日本列島をよく守られていると思うのですが、それ以外の地域、単なる保護地域という、そのあたりの、要は政策がきちんとできていないために、どのように規制強化をしていくかの問題ではないかという、その二つがあると思うのです。
 それから三つ目は、もし利用ということで、利用が管理で問題になるとしましたら、前回立花委員から出されましたように、施設を全部につくるのではなくて、例えば特別保護地区だったらこれ以上もうつくらずに、そこにはレンジャーが連れていってそこを見せるくらいに強化して、中には一切つくらないくらい、そのくらいの施設に関しては必要だと思います。自然公園というのはあくまでも人々が使う場所ですから、どこまで施設を管理するのか、その線をきっちりこれからしなきゃいけないのではないか。その三つが問題になってきます。
 もう一つ、里山が今大変管理をしなきゃいけないということで問題になっているのですが、これはうちの大学院生、ドクターをとる学生が、ある一定の地域を全部調べてみました。管理とそれから種の多様性で。動物は入っておりませんけれども、植物の場合。この場合は全部を管理する必要ないという結果が出ているのです。ランドスケープ・エコロジーの方に今投稿中ですけれども。ということはやはり目的に応じた管理が必要であるということで、全部を管理する必要はないのじゃないか。その点を申し上げたいと思います。
 
辻井部会長  ありがとうございました。今のご指摘、ご意見、十分にひとつ小委員会でもご検討いただければと思っております。ありがとうございました。
 
鷲谷委員  NHKの朝のテレビ小説、きょうごらんになった方はちょっと思うところがいろいろあったのじゃないかと思うのですけれども、主人公の恋人の松岡君という人が、金融会社に勤めるエリートでニューヨークに出張していたのですけれども、一時帰国しているとき、熊野の方の国立公園を歩きまして、いろいろ思うところがあって辞表を出してやめて、浪人をして1年間勉強して環境省に入るために国家公務員試験を受けるという、きょうはちょうどそういうところだったのですけれども、国民のイメージとして、国立公園のレンジャーというのは特に若い人にとても格好いい専門的な職業でというふうに映って、期待がとても大きいと思うのです。
 生物多様性の保全のための管理が始まると、ますます専門的な知識だとか経験の豊富なレンジャーというものが活躍しなければならなくなってくるように思うのですね。そういうような点での制度の充実とか、そういうようなことも考えていただけたらと思います。
 
辻井部会長  ありがとうございました。
 いろいろご意見をちょうだいいたしましたが、そろそろ時間になってしまいました。これでまとめてよろしゅうございましょうか。
 検討の進め方について一応事務局で準備しましたような考え方で進めていただくということでよろしゅうございますか。――では、恐れ入ります。次回の本件に係る部会は来年1月29日ということになります。これはまた事務局から改めてご案内を差し上げるということになると思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。
 それから、それまでにということになるわけですけれども、小委員会につきましては大変何回も続けての、1月に続けてのご検討をお願いしなければなりません。どうぞよろしくお願いいたします。
 それから、既に事務局からご案内がいっていると思いますが、12月18日には大山隠岐国立公園の公園計画の変更に係る部会がございます。公園事業の決定等に係る自然公園小委員会、それから本件に係る小委員会が同日に開催されるということになっております。これまた忙しい日程でございますが、どうぞよろしくお願いをいたします。
 それではこれで閉会ということにさせていただいてよろしゅうございましょうか。どうもありがとうございました。
 

(午後 6時02分閉会)